Falling down Sodomy city : MainLog


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目次

・導入
・【OP① 嵐を征く者達-tempester-】
・【OP② 力の責務-Sealer-】
・【OP③ 見えざる手-Tinker-】
・【OP④ 根無し草-Stranger-】
・【OP⑤ そして環は巡り行き-Testament-】
・【OP-Junction:欲望の果実-Shambalah-】
・【EXScene①/秘匿通信-1】
・【EXScene②/■■の夢-1】
・【OP-Junction②:楽園追放-Mission Start-】
・Information:ミドルフェイズSTAGE『United States』
・【MIDDLE ① - 熾火】
・【Interlude①】
・【MIDDLE ② - 流刑人】
・【MIDDLE ③ - 戦闘-強化猟兵部隊】
・【Interlude②】
・【EXScene③/■■の夢-2】
・【Interlude③】
・【EXScene④/秘匿通信-2】
・STAGE『United States』 Round2
・【Interlude④】
・【Interlude⑤】
・【MIDDLE ④ - 戦闘-機甲猟兵部隊】
・【Interlude⑥】
・【MIDDLE ⑤ - 血戦-千刃空夜叉】
・【MIDDLE ⑥ - 煌々凶星】




導入

SYSTEM :
201X/12/22
Location:UNKNOWN...

SYSTEM :
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SYSTEM :
指紋認証中……
声紋認証中……
網膜認証中……
Rパターン認証中……

SYSTEM :
ユーザのログインを確認しました。

SYSTEM :UNIVERSAL GUARDIAN NETWORK
DATABANK Bethesdaサーバに接続します……

SYSTEM :
閲覧する記録は以下でお間違いはありませんか
[y/N]:

SYSTEM :
事件記録:
200X
『Mission:PARADISE LOST』

SYSTEM :
閲覧権限を確認します。

SYSTEM :……
……
……
閲覧申請が受理されました。

SYSTEM :
作戦従事者のデータを確認しますか?
[y,N]:

SYSTEM :
XXXXX    Natalie Garcia
Rough Metal Syou Kain
White Sky  Dan Reilly
T3     "ATRA"
elvesSprite Blue Dickinson

SYSTEM :
パーソナルデータ:Rough Metal Syou Kain

のデータを確認します。

SYSTEM :
PERSONAL DATA:rough Metal Syou Kain
M/F:MALE
AGE:17
BREED:CROSS
SYNDROME:CHIMAIRA/BLACK DOG
WORKS/COVER:UGN AGENT/UGN AGENT
IMPULSE:SELF-INJURY
EROSION PERCENTAGE:36%

SYSTEM :
PRビデオを再生しますか?
[y,N]:

SYSTEM :エージェントPR映像を再生します:

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :「…………」

灰院鐘 :(カメラに映り込んだ青年がまっすぐカメラを見据えている映像が十数秒続く。椅子に腰かけた巨体がそわそわと落ち着きをなくしたところで、一言二言ほど音声が入り込む)

灰院鐘 :「えっ、もう撮ってる? ……えっ?」

灰院鐘 :「……困ったな。何を話したらいいんだっけ」

灰院鐘 :「あ──いや、自己紹介だったね。うん、そこは大丈夫。でもせっかく用意してきたのに、びっくりしたらすっぽ抜けてしまって」

灰院鐘 :「自分のことを話すのは得意じゃないんだ。ふかく考えたこともないし」

灰院鐘 :
「ええと……僕は灰院鐘。コードネームは"ラフメタル"。
 シンドロームはブラックドッグとキュマイラの混種で、特技は……なんだろう。頑丈なことかな。頭が吹き飛んでも死なないくらいの自信はあるよ」

灰院鐘 :
「一応、磁力使いで通ってるけどね。周囲の金属類を束ねて、力尽くでぶつけるんだ。あんまり難しいことはできないから。

 でも、こっちに来て学んだこともあるよ。僕は足が遅いけど、壁にはなれる。攻め手の安全を確保するのが今の戦い方だ」

灰院鐘 :「……実はまだちょっと慣れないんだけどね。立ち回りというよりは、気持ちの問題かな。…………」

灰院鐘 :「うん──でも、大丈夫。カタチは違っても、仲間のために尽力したいという思いに変わりはないから」

灰院鐘 :「ぜひ頼ってほしい。そして、僕にも君たちを頼らせてほしい。一緒にがんばろう!」

灰院鐘 :(ぐっ、と握りこんだ拳に電荷が走り、映像が途絶える。ホワイトノイズ。慌てふためく青年の声が入るが徐々に乱れていき、最後にはプツンと切れる)

ask2 :
というわけで、数年後と十何年か後にやらかすメットです。
ボスを務めた「Seek after spotlight」に始まり、PCとして参加した「紳士淑女は二度死ぬ」で再スタートを切り、地獄行きまでのモラトリアムをエンジョイしています。
そして今回若かりし頃の姿で登場させていただく運びとなりました。かんしゃ。

ask2 :
シンドロームは変わらずキュマイラ/ブラックドッグ……ですが、なんと生身。あたまがあります。いずれもげるあたまです。わびさびな。

ask2 :
固定値ガン積みの強制タゲチェン復讐マンだった現行時空から一変して、純正のガード屋となっております。
ガード値バフの重ねがけと高いHPで耐え、メジャーで自己回復! タフネスの程はダイスしだい!

ask2 :
ミドルは肉体に全ツッパです。筋肉はすべてを解決します。
とは言いつつDロイスの恩恵に加えて、EEが4つもあるので未来よりは役に立ちます。これもわびさびな。

ask2 :
何かあった未来の、何かある前のすがた。そんな鐘さんの、変わらない部分と変わってしまった部分、どちらも見せていけたらいいなと思います。よろしくおねがいしまあす!

GM :PODです。
響きが似てるので実質メットとニアリーイコールな存在かもしれない。
そんなアトモスフィアを感じる鐘さん、この過去編唯一の既存PCとなります。過去の姿ってワケ

GM :中々の転落人生を現行時空では満喫してたりちょっと浮き上がったりしていますが、この過去編ではまだまだピカピカの一年生!
フレッシュなところが必見ですな 期待しておりまする

GM :という訳で現代に繋がる過去の姿、その活躍に想いを馳せながら、次のPC紹介に移りましょう!

SYSTEM :
パーソナルデータ:White Sky  Dan Reilly

のデータを確認します。

SYSTEM :
PERSONAL DATA:White Sky  Dan Reilly
M/F:MALE
AGE:29
BREED:CROSS
SYNDROME:ANGEL HALO/BALOR
WORKS/COVER:"TEMPEST"/"TEMPEST"
IMPULSE:SELF-INJURY
EROSION PERCENTAGE:33%

SYSTEM :
PRビデオを再生しますか?
[y,N]:

SYSTEM :
作戦協力者のPR映像を再生します:

ダン・レイリー :
「意外な話だ。UGNにプロモーションなんてのがあるとは………。
 此方のような外様ならまだしも、身内相手にもコレを?」

ダン・レイリー :
「各方面を飛ぶ遊撃エージェントと、現地エージェントや協力者との円滑な連携のためか。
 指揮系統に明確な上下の乏しい組織ならではだな」

ダン・レイリー :
「いや、いい。
 本隊の機密に差し掛かるような話は出来ないが、大掛かりな作戦になるからな。
 僕がこれをやる必要性も理解している。始めよう」

Now Loading... :
 ………

 ………………
 ………………

ダン・レイリー :
「こちらは第三海兵遠征軍所属、テンペストの“ホワイト・スカイ”だ。
 此度は其方、UGNと共同して行われる『パラダイス・ロスト』作戦の指揮を務める運びになった」

ダン・レイリー :
「テンペストは、合衆国側の、レネゲイド案件に関わる部隊のようなものだ。
 日本では“嵐”と呼ぶ」
. ロマンス
「空想譚が本の外側に飛び出し、何もかも滅茶苦茶にしてしまえば世話はない。
 しかもそいつは、本の外側にあるほとんどのものでは抑えが効かない………何時でも自爆し得る、意思を持った不発弾だ。我々の過半数は、レネゲイドというのを、概ねそう認識している」

ダン・レイリー :
「それだけならまだしも、そこに人の悪意が纏わりついた時が、一番性質が悪い。
 そうなると、嵐は容易くバケモノになる」

ダン・レイリー :
「………それを制するための直属部隊。
 毒を以て毒を制する、レネゲイドって名前の嵐を抑え込むため、レネゲイドを遣おうというのが、テンペストの成り立ちだ」 

ダン・レイリー :
「所属についてはこんなところでいいだろう。
 その外部であるはずの自分が、今回貴方々にこうして自己紹介をすることになった発端………。
 シャンバラの一件は、まさに嵐の種だ。成すべきことを成さねば、多くの人命が失われる」

ダン・レイリー :
「我々の仕事は、それを本の内側に戻し、現実の箱に仕舞って鍵をかけたい。その部分において、UGNと目論見が一致する。
 少なくとも、上層部はそう考えたから、こうして僕が出向する運びになったんだろう」

ダン・レイリー :
「………そして作戦に従事する以上、僕にも役割があるわけだが」

ダン・レイリー :
「軍人だからな。命を長く使い、撃つべきを撃つのが仕事だ。役割も、それ以上でもそれ以下でもないさ。
 テンペストも、見方を変えれば次の軍事技術のテストベッド的なところがある…対オーヴァード用の装備の供与も万端だ。世界最強の軍隊は裏でも伊達じゃない。し過ぎない程度に、アテにして貰いたいな」

ダン・レイリー :
「それで、僕や其方のエージェント等のようなものを『オーヴァード』と呼ぶらしいが、あっちのスタッフが言うには、僕にはエスパーのようなものが備わっているらしい。昔より遠くが見えるし、戦っている奴の感覚も動きも、思ったように加速させることも出来れば、位置そのものを動かすような訓練もして来た。

 其方の資料で確認したが。この『バロール』とかいうのと『エンジェルハイロゥ』とかいうのが類似するか。
 CQBが得意分野で、多少のバックアップや長距離移動も手段として数えられる。そういう考えでいい」

ダン・レイリー :
「此方の流儀と、作戦に参加する者の流儀は、顔を合わせてから詰めていくつもりだ。
 ………尤も既に、作戦従事者の名簿は借り受けてあるが………」

ダン・レイリー :
「まあ。
 顔と名前だけで全てが分かるなら、世の中も今より余所余所しくなっているというものさ。
 お互い、第一印象が悪くならないことを祈ろう」 

ダン・レイリー :
「ここらでこちらの自己紹介を終わらせておこう。後もいるのだろ?
 では、よろしく頼む」

Now Loading... :
 ………

 ………………
 ………………

マックスウェル :
 HO③のPLです。
 この度はMGSやって貰いますと書かれたハンドアウトに打算10割で飛び込みました。

 よろしくお願いします。
 邪竜要素はありません。

マックスウェル :
 三行で要約しますと。

・僕はテンペストというアメリカのトテモスゴイ部隊から出向しに来ました
・シャンバラをバラバラに引き裂いてやるべく発令された作戦の指揮を任されました
・秘密兵器持ってますエンハイ/バロです

 以上になります。

マックスウェル :
 大尉はPRということでああいう言動をしました。実際の言動とは異なる場合があります。
 が、概ねモチベについてはストレートなものです。

 日本で頑張ってオーヴァードの屑を挽肉にしていたところ、その腕を買われたダン大尉は、
 その腕とたぶん忠誠心を買われ、米国の新しいオーヴァードの屑を挽肉にしに来たのです。

マックスウェル :
 ………とはいえ僕がこのHOで、このようにストレートな兵士にデザインしようとしたということは、概ね頭の差や内なる飛段との格闘に、そして軍人のメンタルという割と遠い存在に挑み、苦しむ覚悟が出来ているということです。
 まあ嘘ですが今から本当にします。変な事言ったらカルシウムよろしくね。

マックスウェル :
 キャラクターとしては

・日系人で、これでいて最古参だよ
・父親は合衆国議員だけどその関係性は良くないよ
・公人としては極めてストイックにやっていけるよ

 こんな感覚です。
 で、私人としてはどうなの? と言われると………。
 まあ、興味のあるないでちょっと態度が分かれるタイプかも知れません。

マックスウェル :
 戦闘面については三案出した中でも一番「これ持っていたら他PC便利だろうな」で固めています。
 単体判定切替のミスディレクション、火力用のマスヴィジョンやフォールンサラマンダー。
 赤方偏移でPC①の加速。EEは6点が趣味、2点が実用性に秀でたディメンジョンゲートとなります。
   イツモノヤツ
 あと時の棺です。最低限殴れ、行動の幇助が出来ます。
 火力周りは全部シナ3なので、ラスエリしない程度に使い潰していきます。
 しかもフォールンサラマンダーは味方にも付与できるため、状況次第で応用性も効くかと思われます。

マックスウェル :
 しかも脳波コントロール出来る。

マックスウェル :
 欠点は兎に角器用貧乏になりそうなのに究極魔法バンノウダイスがないこと。
 イコールでミドルは最低限、戦闘においても必要なだけ確保した固定値はあくまでクライマックス用で、命中ダイスは良くも悪くもまあまあになりそう、ということです。でも12dx7+5あれば十分じゃねえかなあ………どうかなあ………。

マックスウェル :
 最後に。
 このガワと言えばほんへでは別に叫ばないフィン・ファンネルですが、
 フィン・ファンネルと言えば自律砲台のようなもの。
 自律砲台のようなものと言えば、ブラックドッグのハードワイヤードで取れる小型浮遊砲ですね。

マックスウェル :
 以上の事実から「過去編なのに現代に繋がる要素は何処…?」というセルフ疑問に対して、
 僕はこの男のデータを帰還の是非問わず、
 自分を2歳年上と書いてお姉さんと思い込んでいる鯖読み娘のオリジナルとして扱うことで解答にしました。
 
 まあ特に本編に影響することはないと思います。
 ごま塩程度に覚えておいてくれ………。

マックスウェル :
 以上です。ご清聴ありがとうございました。
 HO③の大変さ…はさておき、楽しさを味わえたらなと思っております。
 よろしくお願いします。

GM :自己紹介お疲れ様です! 
素晴らしい大人の仕草 まだ三十も言ってないのにこの貫禄、酸いも甘いもかみ分けた第一線の軍人さんです。
MGSして貰うといったが 此処までイイ感じだとかえって注文付けた方が旨く味付け出来ているか色々不安になってきます きました

GM :今回はこのシナリオにおいては所謂支部長枠の、纏め役の側面を持ちながら話に関わっていくこととなりますが。
今回の事件、単なるテロリストの屑を蹴散らしてきた今までとはちょっと違う様子?
このシャンバラという嵐を、どのような舵取りで越えてみせるのか必見ですな

GM :というわけで、ビルド的にもキャラ的にも頼れる大人であり、一流の軍人として、一人の戦士としての動きを期待しながら、次のPC紹介に移りましょう!

SYSTEM :
パーソナルデータ:T3"ATRA"

のデータを確認します。

SYSTEM :
PERSONAL DATA:T3 "ATRA"
M/F:FEMALE
AGE:17
BREED:CROSS
SYNDROME:BRAM STOKER/SOLARIS
WORKS/COVER:INFORMANT/TRABELLER
IMPULSE:SELF-INJURY
EROSION PERCENTAGE:31%

SYSTEM :
PRビデオを再生しますか?
[y,N]:

SYSTEM :
作戦協力者のPR映像を再生します:

“T³”アトラ :
「ハイハイ、ハローハロー!おハロ~!情報の運び屋、風が呼ぶ旅人!人呼んで“T³”の───……」

“T³”アトラ :
「……あっ、真面目に自己紹介。自己紹介ね。
 どうしよう、撮るのは良いけど自分が写ってるの見るのはあんまりなんだよなあ~……、うーん……」

“T³”アトラ :
「まあいっそついでに売り込むのもアリか……。この際良いけど、ウチの情報売っぱらって尻尾切りに使うとかしちゃダメだぞ~。
 うっかり漏らしちゃったとかもダメだかんね~、ホントにね」

“T³”アトラ :
「……それじゃ、まあ。改めましての……私は郵便屋さんの“T³”、アトラさんです!
 Tが三つで“T³”、Tが三つで“T³”!トラブル・トラベル・トレーダー的な!三回言うほど真剣的な?
 とにかく、名前負けしない程度に危ない橋渡って見聞きした情報売って暮らしてまーす!……暮らしてるっていうと語弊あるかもなあ、別におうち無いし」

“T³”アトラ :
「何なら名前負けしないってのも怪しいけどね!便利だよ、頭文字がTならどこまでも応用できて」

“T³”アトラ :
「それでねえ。こういう仕事してるとやっぱり感謝も非難もあるからさ、環境ごと変えたくて旅やってんの。こそこそするよりは楽しいし。
 裏~な感じの仕事するなら名前売るのも大事だけど、同じくらい捕まんない方も大事じゃない?
 ま、それだけが理由で普段歩き回ってるわけじゃないんだけど……そこはこう、自己紹介って感じでもないから置いときまして……」

“T³”アトラ :
「……あ。逃げ回る以外何も出来ないとか思った?ノンノンだよ、ノンノン。
 うっかり捕まったりしてすぐ全部吐いちゃうんじゃ信用もなにもねー!ってね。
 ウチの手札は、ブラム=ストーカーとソラリス……って言うんだっけ?お名前。おかげでフツーじゃないって分かってるから、抵抗も出来ちゃう!」

“T³”アトラ :
「得意なのは血が混ざった弾丸だったり、お相手の装甲とかを腐らせちゃったり?
 ウチは別にヒト殺すなんてとこまでする必要ないからさ。そうやって諦めてくれたらヨシ、ってとこで!必要なら任せていこうかな~みたいな」

“T³”アトラ :
「……こんなとこかなあ。以上!」

覇王 :
覇王です。
今回は旅する情報屋さんの女になりました。明日のパンツとかは多分言いません。セクハラですよ!
一番やることは書いた通り頑張って相手の装甲とGを下げたいです。結果何かこんな感じになりました。
どうだ?どうだろう……まあどうにかなります。最悪みんなを一生頼ります。よろしくな!

覇王 :顔面白猫の女だから多分心も白猫の女を目指す 任せろ 任せられるかな 頑張ります 覇王です。覇王でした。

GM :お疲れ様です!
アトラチャンカワイイねえ!
正直このHOでこういう子が出力されて俺は恐怖しているよ(本音)。
今回は旅人兼情報屋ということで、情報を売りながら各地を旅して回っているという。この歳で!逞しい 実際

GM :命あっての物種か、見かけによらず技はデバフ祭りと中々のエグさ!
この人は現代時空にどういった繋がりを持っているのかは不明、逆に言えば幾らでもここを出発点として生き生きと活動できるということでもあります 可愛く活発なムーブに期待したいですな

GM :そんな、こんな元気な子でも実はHP最下位の貧血か弱いガールの可愛い所作を期待の眼差しで見つめながら次のPCの自己紹介に移りましょう

SYSTEM :
パーソナルデータ:XXXX Natalie Garcia

のデータを確認します。

SYSTEM :PERSONAL DATA:XXXXX  Natalie Garcia
M/F:FEMALE
AGE:15
BREED:PURE
SYNDROME:HANUMAN
WORKS/COVER:UGN ILLEGAL/HIGH SCOOLER
IMPULSE:DESTRUCTION
EROSION PERCENTAGE:31%

SYSTEM :
PRビデオを再生しますか?
[y,N]:

SYSTEM :
作戦協力者のPR映像を再生します:

ナタリー・ガルシア :

深呼吸、大きく吸って、吐いて、閉じていた瞳が開く。硝子のように澄んだ瞳の奥には、僅かな緊張と燃えるような意志の煌めきがある。レンズ越しに、今後この映像を見るであろう者たちを見据えて――少女は口を開く。

ナタリー・ガルシア :
「そ、それでは……こほん、私はガルシア・ナタリーと申します。未だUGNとしては見習いの若輩者、至らぬところも多々あるかと思いますが誠心誠意頑張りたいと思いますわ」

ぐっと両手の前で小さく構えた拳に力を込めて、カメラ相手に身を乗りだしそうなほど前のめりに続ける。

ナタリー・ガルシア :
「最近……というよりは、UGNに入ってからは概ね座学と訓練、力の扱い方をまずは学べということですわね。どうやら私は、ハヌマーン……音や風を操る力が特に秀でたシンドロームらしいですわ」

パチン、と指を鳴らす。小さなスナップ音になるはずのソレは、しかしクラッカーほどの大音量で響き渡る。

ナタリー・ガルシア :
「私は幼い頃からこの力自体には親しんできましたが、意識して扱うとなるとまた話は別――とりわけ、大きな力をきちんと使うときは集中しなければなりませんの。今は細かな能力の調整、自分の適性確認、大きな力の出力上昇……このあたりが課題でしょうか」

軽く瞳を瞑って集中――室内であるはずの撮影現場にそよ風が吹き、少女の鮮やかな紅を一房揺らす。

ナタリー・ガルシア :
「調整をして、素早く、狙った通りの結果を出す……なんとなくやっていたことを意識的にするのは難しいですわね」

ほう、と、吐息を漏らす。張り詰めた意識を緩めて、微笑みとも苦笑とも取れるような笑みをこぼす。

ナタリー・ガルシア :
「後先考えずに思いっきりやるのは得意ですが――昔、お部屋がボロボロになってからは気をつけるようにしていますわ」

このときばかりは、少し声を潜めてカメラから視線を逸らす。

ナタリー・ガルシア :
パン、と両手を体の前で合わせて、話題転換。

「――そういえば、私、この力に昔から親しんでいたと言いましたが……そのぉ~、えっと、お父様とお母様が大切に育ててくれていたお陰でお外のことをあまり知らないんですの」

ナタリー・ガルシア :
「ですから、今後、世界を守るために色々な場所に出かけたりするのが実は楽しみにしておりますわ――憧れる人も、目指すべき目標もありますから、一意専心、百折不撓、粉骨砕身、努力はかかさず熱意は絶やさず、多くの人を守りたいと思います」

ナタリー・ガルシア :
「お父様とお母様に恥じないエージェント目指して、頑張っていきますわ~!」

  :
宣言、というよりも宣誓に近いその言葉で映像はぷつりと途切れる。

キオ :
というわけで、お嬢様です。
普通に良家の箱庭で育てられた、純粋培養女の子です。
つまり普通お嬢様です。

キオ :
やることやれることは、概ねサイレンの魔女をぶん回すだけのビルドです。
サイレンの攻撃固定値30からの露払い、後半は出目次第ではるものの45~50くらいも目指せるので範囲焼きは任せてください。

行動値は…………仲間との絆って尊いですよね

キオ :
ミドルではピュアハヌであることを活かして、気持ち厚めにしたイージーエフェクトで広く浅くカバー。いいとこ育ちのお嬢様らしくお小遣いをここでばら撒いて、どんな判定でもある程度戦えるようにしたい。できたら良いな。

60%に乗りさえすればすべての判定で3DX以上を振れるので、ミドル後半では安定感も上がると思いたい。上がると良いな。

誰かに同行して援護ブレス役も担えるので、ミドルでは軽率に誰かと行動したいと思っている。誰かと行動できたら良いな。

キオ :お嬢様の知能と天然さはアドリブで決まります。
今は割りとインテリジェンス高めお嬢様です

キオ :というわけで、たぶん色々フォローしてもらうことも多いかとは思いますが、よろしくお願いします。

GM :
……思っていたよりIQが高い…
ゴホン。

GM :
お疲れさまでしたお嬢様! どこに出しても恥ずかしくない名家のお嬢様ですわ!
スガスガしいまでの極振りサイレンお嬢様にして、今回の物語の中心となるお嬢様でございます
インテリ度は上下するとのことだけども、最終的にどのぐらいのイントで収まるのだろうか? 期待ですなあ

GM :悪意を殆ど受けず、箱庭で育った深層のお姫様という感じの子でありながら、此度の騒動の敵はアメリカに巣食う悪の秘密結社!
悲しいかなこのゲームはダブルクロスであり、ニチアサの女児向け番組でない以上、波乱は必至であります。果たしてどう転ぶか必見ですな。俺もわかんねえよ。この調子だとPLもわかんなさそうだけど。

GM :そんな期待不安の未来が今動き出す中、最後の自己紹介に移りましょう!

SYSTEM :
パーソナルデータ:elvesSprite Blue Dickinson

のデータを確認します。

SYSTEM :
PERSONAL DATA:ElvesSprite Blue Dickinson
M/F:FEMALE
AGE:18
BREED:CROSS
SYNDROME:BLACK DOG/NEUMANN
WORKS/COVER:TINKER/JOURNALIST
IMPULSE:STRIFE
EROSION PERCENTAGE:44%

SYSTEM :
PRビデオを再生しますか?
[y,N]:

SYSTEM :
作戦協力者のPR映像を再生します:

:「あー……っ、テステス……」

BLUE JET SQUAD :
《──BJSの紹介ビデオをご覧になっていただき、ありがとうございます。

 このビデオは、私達の事業内容をわかりやすくお伝えするものとなっております。

 今回は、私達の───》

ブルー・ディキンソン :
「あ……違う? これウチんところのPVじゃないの?」

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :「があっ!
 最初から言ってくださいよぉー! 言った? アー、うん。
 それならあたしのミスです、ごめんなさい」

ブルー・ディキンソン :「ごほん、エー……。
 どーも、ブルー・ディキンソンと言います。あ、なんか聞いたことあると思った? 

 あたしの大好きなバンドの人から取ってんですよ……あ、すいません脱線しましたハイ」

ブルー・ディキンソン :
「”そっち”に登録してるコードネームは、
、  、  エルヴスプライト
 えーっと、”雷霆精”って言います。

 そうね、そうそう、カッコいいでしょ。ふらっと依頼を受けては、ふらっと解決する。

 まさしくスプライトってカンジです、悪戯はしませんよ〜!」

ブルー・ディキンソン :「やってることはー……まあ、色々やってるかな。
 色々って何かって? そりゃ色々ですよ。なんでも、って言い換えればいいかな。

 うん、何でも屋ってヤツですよ。猫探しから戦争まで、手広くやってまぁす」

ブルー・ディキンソン :
「まっ、小さな会社なんですけどネ。貧乏極まりないってとこです。
 手広くやってるつったって、実働員は実質あたし一人みたいなもんですからネ。

 ま、だから表向きの広報も欠かさずやっていきたいわけですヨ……ああいや、話聞いてなかったのは悪かったですってマジで」

ブルー・ディキンソン :
「依頼をするにはいくつかの代理人……カットアウトを通じます。
 あんまり顔を知られるのもなんですからねー。UGNさんは特別です。

 こうして直接ビデオ撮ってるの、結構珍しいんですよ?
 運が良かったと思っといてくださいな。

 んで、その年その年でロールを変えてます。今年は新聞記者。だから、依頼したかったら「新ネタ」として持ち込んでください♡

 ちなみに、去年は使用人でした。かしこまってお辞儀とかしてたんですよ? 給仕の服着て!」

ブルー・ディキンソン :
「───で!
 実働員としてのあたし様に関してですが。

 “ブラックドッグ”と”ノイマン”の混血、体をちょこっと改造(いじ)ってます。

 こう見えて意外と頭いいんですヨー、数少ない社員からは「バカっぽそう」って常に思われてるんですけどねアハハ」

ブルー・ディキンソン :「……面白くない? マジ? そっか……」

ブルー・ディキンソン :「ごっほん。
 逸れましたね話、二回目じゃん。
 やること自体は至極単純ですネ、特製の武器で相手をぶん殴っちゃいます。

 相手に対して、攻撃がよく通りそうなところを見っけて叩いたりも出来ちゃいまーす。

 当たるかどうかって? それについてはご安心、さっきも言ったけどあたしは体を改造してるんです」

ブルー・ディキンソン :
「服破れちゃうんで今は見せませんけどね。刺激強いですから!

 で、まあ、こう……色々体に仕込んだお陰で素早い戦闘機動ができるんですヨ。
 まあ瞬間的なものなので、常にはやーいってワケにはいきませんけどネ。

 一瞬だけ超加速したら、よほどのオーヴァードじゃなければ捉えられない。その一瞬で攻撃を叩き込む。
 ていうのが、あたしの得意スタイルです。
 っつーか、これしかやってきてないんですけどね」

ブルー・ディキンソン :
「そんなとこです。
 こんな生業してるんだ、お仕事はちゃ〜んとやりますよ。信用問題に関わる。

 私としても食い扶持……お得意様を失うのは嫌ですからネ。そこはま、心配しないでくださいな」

「その信頼を確固たるものにできるよう、馬車馬の如く働きますから!」

ブルー・ディキンソン :「それじゃービデオはこんなとこですネ。
 チャオ♪」

:
 ───……

オオトリ :
 ギョッニッソギョニソギョッニッソ……
 魚肉ソーセージです違うオオトリです。
 PC5「ブルー・ディキンソン」の自己紹介でした。
 ピンク髪のサングラスかけたチャイナドレスみたいな服着た語尾がカタカナになる女です。

オオトリ :
 白兵です。固定値で殴ります。
 デモンズシードを噛ませた武芸の達人と、ハードワイヤードでガン積みしたバトルマニューバくんに働いてもらいます。
 武器は決闘者の剣を選択、範囲攻撃は完全に捨て単体に特化しています。

オオトリ :
 移動エフェクトも装甲値無視も積んでませんが、仲間を頼ってこそパーティバトルだってダイの大冒険が言ってました。
 ミドル戦闘はコンバットシステムで殴るだけなのでヘルシーな上昇で済みます。

 100%になったらフェイタルヒットと雷神の降臨が火を吹きます。1人ずつ殴っていこうぜ。

 情報収集は白兵の因果でおしまいになっています。唯一コネを持っていますがキャラ補強くらいの意味合いです。輝く時はあるのか。

オオトリ :
 サングラスをかけて語尾がカタカナですが、きちんと協調性を持って挑みます。
 よろしくお願いします。ギョニソッソ。

GM :
自己紹介お疲れさまですです
サイボーグメイドもといサイボーグ華僑万事屋サン!
完成立ち絵は初めて見ましたが なんか電脳九龍城とかで妖しい仕事やってそうな胡乱アトモスフィアを感じますなあ

GM :しかしてその実態は如何なるものか、本編で明かされる事でしょう!アイヤー楽しみアルねー
このナリでやることといえば剣を持ってぶった切るのみ、多分指定してない方のMG仕草が見れるかもしれねえと今期待してたりもします ライジングメイド

GM :女は秘密の数だけ強くなる そんな秘密多そうな彼女の動向に注目しながらこれにて自己紹介を〆たいと思います

GM :いやはや、魅力なキャラが多い
此処からどう転ぶかを楽しみにしながら、トレーラーに移りたいと思いまあす

SYSTEM :作戦従事者の閲覧を終了します:

SYSTEM :
作戦内容を確認します。
当文書の秘匿レベルは5となります。
認証中……

認証に成功しました。

SYSTEM :
再現映像をロードしています……

SYSTEM :
再現映像の読み込みが完了しました。
まもなく再現映像を再生します。
所要時間は XX時間となります。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :【トレーラー】

語り部 :
少し昔の話をしよう。
今となっては懐かしい、私の思い出話だ。

SYSTEM :
それは今より13年前。秩序と混沌の均衡が、現代と比べて
そして世界の秩序の担い手たちが、国の垣根を超えて団結を始めていた時代。

SYSTEM :
各国の裏社会に、一つの情報が発される。
それは宴の時間を知らせる合図。

SYSTEM :
北米全土に広がるFHの主導する大型シンジケート、複合セル『シャンバラ』は
これまでにない大規模な動きを見せ始めた。
それは合衆国さえも、突き動かす程の巨大な揺らぎとして。

SYSTEM :
   シャンバラ
かくて理 想 の 都を求めて、多くの思惑が動き出す。
秩序も混沌も問わずして、多くのものが手を伸ばす。
生きるため。自らの証明のため。熟れた望みのため。

SYSTEM :
──────そしてソドムの街に悪徳が蔓延り、熟れた果実が落ちる時。
──────太古より眠り続けた裁きの時が訪れる。

SYSTEM :
 ダブルクロス The 3rd edition

SYSTEM :

 《Falling down Sodomy city》

SYSTEM :

──ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉──




【OP① 嵐を征く者達-tempester-】

SYSTEM :
【OP① 嵐を征く者達-tempester-】

登場PC:Dan Reilly
登場侵蝕:あり

GM :では登場侵蝕をどうぞ!

ダン・レイリー :了解した。

ダン・レイリー :1d10  (1D10) >

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 33 → 41

GM :侵蝕上昇確認! てところで

GM :コマの方を所定の位置に配置してくだせえ 今回は左端!

ダン・レイリー :右上のものを流用する形でいいかい?

GM :問題なし!寧ろその想定です

ダン・レイリー :よし。ではそのように。

GM :では今しばらく

GM :PS4でPS5専用機をプレイするぐらいのロード時間をお待ちください

ダン・レイリー :いやに具体的な長さだな… 

SYSTEM :
 ……そこは、嘗て潜り抜けた死線であった。
 昔に通り去った、嵐だった。
 
 いや、正しい意味でそれを克したという訳ではないのだろう。
 
 あの時は決着がつかず。殺し合いに矜持など持ち込まぬ身として、雌雄を決することに然程の意味を感じぬとしても。
 
 戦略的勝利はすれど戦術的勝利という面では惨憺たる在り様だった。

SYSTEM :
 米軍試用特殊部隊、対R処理班一個小隊。一騎の正式採用された米兵オーヴァードがSeals一小隊に匹敵するという試算を鵜呑みにすれば、実に精鋭一個大隊に匹敵する戦力と言える。
 

SYSTEM :
 ……その部隊が、全滅している。
 現存する戦力、実に六割未満。瞬きの如く先遣隊を瞬殺し、次なる獲物を求めて暗がりの中で影を揺らしている。

 ましてやその惨憺たる在り様が、たった一人の男によって引き起こされていたとなると、それはまさに悪夢と呼ぶ以外の何物でもない。
 

SYSTEM :
 最も悪夢であったことと言えば、その男が、今あなたの目の前にいて。
 明確に殺意を向けられていることだった。
            ・・・・
 それは嘗ての、まさしく焼き直しであった。

????? :
「──────────────」

SYSTEM :
 男の所持する武装はたった一振り。背に携えた中国剣と思しき得物だ。
 あなたは知っている。
 この男の戦術を。
 シンドロームは大別すると、ハヌマーンに相当する。恐らくここまで研ぎ澄ました殺意は、ピュアブリードに相違ない。

SYSTEM :
 戦闘続行可能な部隊メンバーは、一個分隊。救援の二分隊を集めるためには、最低でも2分弱もの時間稼ぎが必要となる。
            ・・・・
 そう、すべてが、嘗ての焼き直し。
 しかし、これから起こる作戦を考えれば、それにある程度の回答を持っておくことは必要だった。

SYSTEM :
 あれから相応の月日が経ち、経験も実力も積んだ現在で、あの「嵐」をどう超えるか。
 今の武装で、今の戦力で、どこまで犠牲を抑えられるか。

SYSTEM :
 それを……今、此処で発揮せねばならない。
 悠然と剣を携え、男は待つ。
 男は、酔狂を好む人間であった。
 ことに人斬りに悦を見出す人間であり、何かと戦いの最中に会話を求める相手であった。
 故に、先手はこちらから望める筈だ。

ダン・レイリー :
 ………海を隔てた向こう側の言葉に。
 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというのがある。

ダン・レイリー :
 皆、いい奴から先に死んで行った。
     ・・
 あの時はそれで学んだんだから、思うに自分は賢者ではないのだろう。

ダン・レイリー :
 それで覚えない軍人はいないし、覚えないような───死人と生者を隔てることに後ろ髪を引かれた連中は、概ねその仲間入りを果たしていたからだ。

 これがどうにも、言葉にするより難しい。
 今になって、ふと思う。

ダン・レイリー :
 今。
 あの刻の前にいる。

 先に逝った連中が呑まれて消えた、嵐の前。

ダン・レイリー :
「(“戦闘可能なのは1個分隊。
   救援の到着には最低でも2分”………)」

ダン・レイリー :
 いつかの焼き直し。
 悪い夢と遠ざけたものの再来。
 風が轟くたびに、幾人かの命が消えて行ったあの時と、奴の面は変わっていない。

ダン・レイリー :
 そう、変わっていない。

 ならば、動じるような表情は持ち合わせていない。

 必要なのは、この状況への判断。動ける兵士は、その義務を尽くす必要がある。

 構えられた剣の間合いは見た目よりも長い。悠長に銃を構え、撃つのに必要な工程は二つだが、生憎と奴の殺意が攻撃という形になるのに必要な工程はそれよりも早い。

 オーヴァードというのは、そのくらい横暴で理不尽な嵐だった。

ダン・レイリー :
 その嵐に対して、真っ向から構えた───嘗てとは規格も性能も違う、テンペストが開発した対オーヴァード用の自動小銃。

 手足に等しいこれの引き金を引くのにラグは要らず、またその銃口からマズルフラッシュを伴う形で鋼が飛び出すのも一瞬のことだ。

ダン・レイリー :
 それと同時に───恐らくは、
 それよりも早く迫る斬撃を予知する。

 酔狂を好む男の立ち振る舞い、戦い方。
 知らなかった以前とは違い、あるいは戦場で轡を並べ続けた友の如く知り抜いたソレは、此方のアドバンテージだ。

ダン・レイリー :
 銃弾の発砲と共に、空間が拉げる。

 派手さは要らない。
 位置をずらし、間合いを遠ざけ、感覚を狂わせる、重力制御の応用系たる空間移動。同時にそれは男を興じさせる餌でもあった。

ダン・レイリー :
 乗って来る光景を次に幻視する。
 いいや、あるいはエスパーめいた直感か。

 鎬を削り、一手を外せば即死の打ち合いに身を投じて来たと思わせる。
 それはわざと乗せるのではなく、必要通りの最善手。時間を稼ぎ、その上で此方から目を逸らさせない───逸らせば殺すと、シンプルな目標遂行に必要なだけの敵意を乗せて掃射が始まる。

ダン・レイリー :

 ───あの時と変わらない奴の表情は、あの時と変わらない仕草で踏み込んでくる。

ダン・レイリー :───此処だ。 

ダン・レイリー :
 掃射によって拉げた空間から空間を縫うようにして、光が駆ける。
 弾き落とすような音、すり抜けるような音。
 いずれも予想であり現実のものではないが、それだけにスムーズに展開は思い描ける。

 いざ踏み込み、自らに刃を届かせようとした“嵐”。

 再生の中心、ウイルスの患部の根幹たる頭を。
 あの時には供与されていなかった、第二、第三の牙が狙いを研ぎ澄ませる。

ダン・レイリー :
 トイ・ボックス
 秘密兵器───。

 人間/超人にすら原則二つの手足を、三にも四にもしてしまえるそれを、
 自分の持つ“レネゲイド”とやらは、理論上何処にでも飛ばし、展開出来る。

ダン・レイリー :
 ・・・・・
 回答の一つは、こうだ。

 一人ならば、興に乗らせる。
 死を厭わず真っ向から、生残の為の最善を打つ。


 それが奴にとっての本懐だと理解しているから、
 ・・・・・・・・・・・・
 最後の最後ではしごを外す。

ダン・レイリー :
 奴の殺意が膨れ上がり、喜悦が刃に乗る瞬間の間隙へ。
 死角に配置した己の第三の腕───EXレネゲイドなる未知のウイルスに感染した自律砲台が、あ空間を捻じ曲げて放つ凶光を捻じ込む。

 同時に、三方向。
 自身の掃射も合わせて四つ。

ダン・レイリー :
 殺意の後の先を取る───。
 研ぎ澄まされたオーヴァードの感覚というやつが、それを可能にした。

 しくじったとしても、奴のレネゲイドは一点特化。
 後ろに目はなく、鬼謀が俺を出し抜くことはない。

ダン・レイリー :
 勿論───しくじったならば死ぬが。

 オーヴァードにとっての死というのは、
 ある一線を越えない限り、致命であるが決定打ではないのだ。

SYSTEM :
 軍人とは、何も強靭な力により強靭な力で立ち向かうものではない。
 蓄積と統合、連携によって、多様な状況に対応することを是とする。
 規格化され性能を向上させた兵装を状況に応じて駆使し、即応する。
 それが"嵐を征するもの"……

SYSTEM :
               US.SOCOM
 今や世界最強の軍隊と名高き米軍特殊部隊、TEMPESTの。
 名声と相反する、研鑽の所業であった。

????? :
「─────」

 寝食を共にし、今や食器と同等に使い慣れた専用カスタマイズを施された試製自動小銃"ストームベアラー"が瞬きの間に銃火を噴く。
 恐らくそれを前に、剣士は嗤ったように見えた。数舜先を予見するという、その感覚をなぞるように、死の風を連れる凶剣士の影が揺らぐ。

????? :
 赤方偏移により歪んだ空域さえも見透かしたように、男は背に佩いた剣を抜き放つ。
 EXレネゲイドに浸蝕され、不遜にも同じく嵐に纏わるコードで呼称されるその妖刀が、赤色の残光を残して閃いた。
 このままならば、常に先手を取り続ける男の速度を上回るだけでは足りない。これもまた、想定していた通りの動きであった。

????? :
 牽制射撃を剣の一振りにて容易く防ぎ、一気に刃圏へ迫る。近接武装と射撃武器では、想定する間合いが違う。
 現代最強たる自動小銃という武器科の信頼など、オーヴァード同士の死合いでは何の役に立たないことが多い。
 たった一足で数百mを踏破できる人間にとって射撃の間合いなど考慮に値せず、使い手によってはそれより遥かに広範囲を一撃で爆撃できるレネゲイド・コントロールを操作できるものもいる。
 それは銃器という兵装が、根本では規格化した暴力であるという限界でもあった。

????? :
 故にこうした真っ向勝負となれば、必然的に一手遅れるのは道理。
 その刃に喜悦が乗り、一閃振り抜こうとした矢先に……
 

SYSTEM :
 意識の死角と物理的な死角から、全く予期しない第三の腕が火を噴く。
 かの男の剣がEXレネゲイドにて鍛えられた魔剣ならば、これもまたEXレネゲイドによって設計された『魔弾』。
             トイ・ボックス
 開発局から専用に設計した秘密兵器……第三の腕たるビット兵器。

SYSTEM :
自己に搭載した複数の兵装を展開し、その研ぎ澄まされた感覚力とニューロリンクによってガンビット全機を、一切の戦闘ラグを発生させず行使する。
"ホワイト・スカイ"が編み出し、研究を重ねて実用化に至った魔弾、変幻自在のCQBである。

SYSTEM :
 確かに、火器には常に限界がある。
 装弾数、射程距離、殺傷力、制圧能力……それらは、意識の多寡によって際限なく威力を増大する不安定故の力を持つレネゲイドの使い手にとって、枷となりうるものだ。

SYSTEM :
 しかし既存の技術を既存以上に扱い、再解釈し、新たな規格での戦闘技術として消化し、量産する。
 その一見して地味で武骨な技こそ、テンペストの黎明より戦い続けてきた軍人ダン・レイリーの見出した答えであり。

SYSTEM :
 それは結果となって確かに顕れた。
 単なる死角であったならば、容易にそれに勘付いただろう。
 しかし、意識の死角までは補うに足りない。それは、相手が衝動という、埒外の力の代償として受け入れざるを得なかった基本的な情動があった故の構造的欠陥だ。

SYSTEM :
 一度、"外れた"ものは衝動に逆らえぬ。故に、それを識ったならばそれを以て誘いに掛けるのは容易く。

 男の体が、殺到する銃撃を全身に受けて宙を舞う。
 死角二方向からの5.56mm高速弾のクロスファイアが、男の頭部を撃ち貫く。

 そして、やはり、一度"外れた"物は、その故にオーヴァードが有する基礎的甦生代謝能力、リザレクトを持ち得ない。

SYSTEM :
 命のやり取りとは、決まってこの一瞬によって決するものだ。
 あまりにあっさりと、越えるべき嵐は過ぎ去り……

SYSTEM :
 それを合図に視界が暗転した。

SYSTEM :
 それは意識のブラックアウトを意味しない。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 想定されたシークエンスを完了したということだ。

SYSTEM :
 暫しして、五感が復活する。
 それのみならず、R因子によって芽生えた第六感もまた、正しい空間認識に切り替わる。

SYSTEM :
 果たして、嵐を超え、生還を果たしたが。
 これは、演習だ。
 直面した人間の証言やこれまでに収集したデータを元に組み立てられた
 ヴァーチャル・リアリティ
 仮 想 現 実である。

SYSTEM :
200X/11/XX 
此処は 沖縄のキャンプ・コートニー海兵隊基地

 ……オーヴァード、わけてもジャームと呼ばれる変異体と交戦に入った場合、通常の訓練では役に立たないことが多く。
 ことに駐屯地である場合、近隣住民に対する秘匿の為にも大掛かりで実践的な訓練が行えないことが多い。

               D A R P A
 これは、そうした訓練の需要に国防高等研究計画局が答え、研究調整段階にあるオーヴァード戦を想定したVR訓練用プログラムであった。

SYSTEM :
 ソラリスシンドロームによって調整開発された五感と第六感を想定した形に変化させる、脳内薬物の中和剤をヘッドギアから注入される。
 暫く時間を経過した後、頭部にはめたヘッドギアから訓練終了のシステムメッセージが表示された。
 取り外して問題ない様子だ。

ダン・レイリー :
 ───曰く。愚者は経験に学ぶ。

ダン・レイリー :
 そして人間の大半は愚者であるからして、
 画一化された戦力を求める軍人というのは、愚者のためにマニュアルを作る。
 
 学ぶための経験をあらゆる手段で蒐集し、蓄積する。
 そうして、個々人の凹凸をなるべく均一化し、またそのアベレージを底上げする。
 そういうのが群で動く組織の、軍隊の常であることは、戦争が“戦後”にシフトした今でも然程変わってはいない。

ダン・レイリー :
 そしてアメリカが誇る米軍が最強の軍隊たる所以は、あらゆる敗北から学び、変革し続けることだった。

ダン・レイリー :
 真珠湾で日本から空母戦術を。
 ベトナムでゲリラ戦を。

 バケモノから、オーヴァードの力を。

ダン・レイリー :
 ………思うに“ヤツ”は、その学ぶべき敵としては格好の的だったのだろう。
 
 表示されたシステムメッセージ、ごく自然に移り変わる風景に順応する五感。
 それも含めて、この息の長いプログラムとは、まさに轡を並べた戦友めいた付き合いがあった。

ダン・レイリー :
 実物とは、どうか。
 言及は避ける。

 ヘルメットに隔てられた外の空気───基地施設内部である以上、屋内のそれだが───を、メッセージの表示から多少の間を置いて取り外した自分の鼻と口が吸い込む。

 予行演習としては、及第点か。
 いや。

ダン・レイリー :
「手間取ったか。
 あれの影から、僕も離れられていないらしい」

 お膳立てされたVRの空間。
 確定された状況ではないにせよ、
 あれは訓練だ。本物とは、違う。

 ………焼き直しの“嵐”を滞りなく消し去ることが出来るのは事実でも、新たに生まれるものを考えれば、満足など以ての外であった。

ダン・レイリー :
 ふ、と息を零す。
 訓練終了の合図を送る前に零したのはせいぜいが“ぼやき”だ。

SYSTEM :
 ……9.11から始まるイラクとの対テロ戦争と同時期に、世界にR因子が拡散して凡そ七年が経過する。
 米国政府は対テロ戦争内で暗躍する組織、そして自軍の兵士にも突如として発生したPTSD由来の身体変容の研究から、その精度こそ他の組織に劣る者の早い段階で対策機関を用意した。
 此処、第三海兵隊遠征軍に属する特殊部隊テンペストも、その一つだ。
 

SYSTEM :
 此処はキャンプ・コートニーの地下演習場。
 ダン・レイリー大尉が今回このプログラムを指定し、演習に入ったのは他でもなく。
 それが必要となる相手と、交戦する可能性があるためであった。

SYSTEM :
 及第点以下とぼやくダンの頭上から、訓練終了を見計らってか聞き慣れた声が届く。
 自身の後輩にあたる、軽薄な声音の男だった。

ディアス・マクレーン :
「……おーい! 訓練終わったかぁ大尉殿!
 上がって来いよ!」

ディアス・マクレーン :
 ディアス・マクレーン少尉。現在、彼の下に就く後輩であり、戦友ともいえる。

「エンジニアのミナセもあんたのVR再現度の精度が訊きたいってよ。まあ、あんなレベル高い訓練こなせるの、あんたぐらいしかいねえからな
 しっかし、毎度毎度見事なもんだ」

ダン・レイリー :
「ああ、今行く」

 その分では手持ち無沙汰だったようだな、と。
 待たせた、という意味合いを半分は持つ言葉を付け加えながら、地下演習場のVR訓練施設から、声の主の元へ靴音を鳴らす。

 ディアス・マクレーン。
 そのフランクな海兵隊少尉殿とはそれなりに付き合いも長い。

ダン・レイリー :
「何だかんだと言って七年前だぞ。
 スクールの学生が大人になって、企業詰めになる年月だ。
 アグレッサー
 仮想敵の時が止まっている以上、あれには勝たないと先輩風も吹かせられない」

ダン・レイリー :「ミナセには後で俺の方から伝えておこう。あのVRの件でも多少無茶を言ったことだしな」

ディアス・マクレーン :
「当たり前みてえに言うけどなあ、あんなスピードで接近するのに反応出来る奴自体、ウチには少ねぇだろ。
 増設した加速装置で辛うじて追っついても、頭が回らねえ」

ディアス・マクレーン :
              ACE IN THE HOLE
「全く大したもんだよ、ウチのとっておきの鬼札ってやつは」

 惜しみない賞賛と共に、タラップを昇ってくるダンにスポーツドリンクを一杯差し入れる。
 如何に仮想訓練とはいえ、差し迫った極限状態の戦闘行動であることに変わりはない。

「了解、まああいつのことだから、何か言う前に向こうから……って」

ディアス・マクレーン :
「ほら来た、噂をすればって奴だ」

ダン・レイリー :「ン、助かる───」 一言置いたのち、スポーツドリンクの差し入れを受け取りながら、うわさをすれば、の方を見る

水無瀬 進 :
 奥の自動ドアからやってきたのは、眼鏡をかけた冴えない風采の男性だった。
 やや興奮気味に、駆け付けた男のことを、ダンはよく知る、とまではいかずとも知っていた。

 水無瀬 進、一時期はDARPAに所属し、このコートニー基地の技術部門にてオーヴァード達のバックアップを担当してきた、自分と同い年の男だ。

水無瀬 進 :
「ご苦労様だ、レイリー大尉! 
 早速で悪いんだけど、再現度の方を訊かせてくれるかな? あれだけ無茶ぶりしてきたんだ、是非とも評価の方を訊きたいね」

水無瀬 進 :
「しかし、ほんとに倒しちゃうとは。結構殺意高めにAI組んだはずなんだけどなあ……
 まだまだ戦術AI方面の研鑽が足りないみたいだ。なあ、どうやったらあんな反射で反応するロジックを組み立てられるんだ?」

ダン・レイリー :
 タイミングを予期していたわけではあるまいに、まるで図ったかのような登場だ。
 行く手間が省けた。マクレーン少尉と顔を突き合わせて、ふっと口元を緩める。

 エンジニアのこの男のことは一定迄把握している。
 バックアップの有無は此方の命にかかわり、それを与る男には、命を半ば預けるようなものだ。
 それを抜きにしても、知っていることは知っていた。 

ダン・レイリー :
「七年前の“ヤツ”には随分と近付いた。
 VRによる状況変化の技術的な限界を除けば、
           リアル
 こちらの想定している現実ではあるよ」

ダン・レイリー :
「唯一違うところを挙げるとしても…。
 ・・
 それはまあ、道を踏み外したヤツ以外が再現し切っていいやつじゃないさ」 

ダン・レイリー :
 ………ヤツにはよく似ていた。仮想敵としては十分すぎるくらいだ。
 唯一違う部分を挙げるとすれば、その言動。あの底知れなさだが、それはシミュレートして得られるものでもないし、得て良いものでもない。

 この辺りは話を早々に終わらせるとして、疑問に答える方向にシフトしよう。

ダン・レイリー :
「そのための訓練だ。せっかく命拾いしてきた相手の一人だからな、馴らす時間もある。
Overed
 超人とかいうのを型に嵌めすぎるのも、却って危ないが………。
 ああいうのは分かってないと、遭遇した時の手段が神頼みだけになるからね」

ダン・レイリー :
「特に、おまえのような男に、やれるのが神頼みだけなど御免被るだろ。少尉。
 このニホンで言うところの“転ばぬ先の杖”だ。さっきの疑問の解答にはなったか?」

ダン・レイリー :
 ───少尉が日曜礼拝を欠かさぬ以上の敬虔なカトリックならば話は別なのだが、生憎とこの男からそのような話は聞いたことがない。

ダン・レイリー :
 代わりに聞く話は、刻一刻と変化する戦況を読み切れず、掴み損ねた女の話とかだ。

水無瀬 進 :
「ああ。なるほど」

ディアス・マクレーン :
「ナニがなぁるほどだ 今のどこに納得する余地があったオイ」

水無瀬 進 :
「結局の所、自己学習を積み重ねていくしかない。AIの基本でもある、何処まで行っても地道な道でしかないってわけだ…」
 訴追の言葉を無視し、感心したように頷く。前の話に殊更追求しなかったのは、彼なりに思う所もあったのを汲んでのことだろう。
 

水無瀬 進 :
「しかし、さっきのはいいデータが取れた。助かるよ、一応次の作戦じゃ僕は前線には出ないことになってるみたいだけど……
 必要なタイミングで支援が飛ばせなきゃ意味がないからね」

ディアス・マクレーン :
「パラダイス・ロスト作戦ねえ……テロ屋潰しに大層な名前使うもんだ。
 ま、うちらの仕事は専らテロ屋潰しだけどな」

ダン・レイリー :
「だろう?」

 一朝一夕で劇的な変化があれば苦労はしない。その意味で正しく伝わったようだ。
    ・・
 そしてそれが有り得るような世代が戦場に立つことなど、
 そもそもないに越したことはない。
 
 結局のところは、経験による一歩の更新だ。
 軍隊はそうして変わって行った。
 そこに新たな力を取り入れたとて、根本が崩れることはないのである。 

ダン・レイリー :………そしてその訓練の根幹的理由というのが………。

ダン・レイリー :
「米国の闇に通じる大型シンジケート………。
     シャンバラ
 身勝手な理想郷のテロ屋にぶつける名前にしては十分だろう。洒落を狙い過ぎではあるがな」

ダン・レイリー :

 パラダイス・ロスト作戦。
 大型シンジケート『シャンバラ』の掃討のため、我らがテンペストの総力を挙げての作戦となることが決まっていた。

 実働部隊である自分たち以外にも、この手の作戦には多くの後方支援や兵站、平たく纏めてバックアップが用意される。
 強力ながら不安定なオーヴァード兵士を運用し、最大効率で戦果を挙げさせるためのお膳立てだ。

「その規模は段違いだが、要求の根幹は何時も通りだ。
 そこはアテにしておきたいな、ミナセ」

 そしてミナセのようなエンジニアの本分も、そういう仕事だ。
 先の話じゃないが、預けた命を守って貰ったこともある。

ダン・レイリー :
「………そう。
 いつものテロ屋潰しなら、俺達も“何時も通り”で良いんだがな」

ディアス・マクレーン :
「ま……いつも通りならなぁ……」

 しみじみと復唱する。そう口にするのは、今回が"そうでない"ことの証左だ。

SYSTEM :
 いつも通りであるならば、気負う所は少ない。
 殊更に彼らが気をもむのは、その作戦がこれまでにない規模であること以上に、別の側面があったのだ。
 事の発端は現在から数か月前にさかのぼる……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
……戦争の形式は、時代に応じて変化する。

SYSTEM :
 世界大戦下では、物量とそれに抗する一撃の火力が追及され。
 冷戦下においては核による抑止力の元、イデオロギーを異とする傘下の国家による代理戦争が行われた。
 そして1991年、ソ連の崩壊を切っ掛けに、冷戦は終局。世界情勢は新たな段階に至った。

SYSTEM :
 国民を総動員した戦争体制の末に大戦は起き、その大戦によりイデオロギーによる結びつきが増え、そして今、敵となるイデオロギーが消えた。
 その時、次に皺寄せが来るのがどこであったのか、それは十年と経たず世界に知らしめされた。

SYSTEM :
 第三の時代……それはイデオロギーを紐帯とした民族の抑圧された声から始まる、ナショナリズムの時代であった。
 国という単位は本来、民族の単位でもあった。
 多くの民族は、これを皮切りに自らの主義主張の為に国家でなく民族、宗教という共同体の単位で大規模なテロルを行うようになった。
 その最たるものが2001年、9月11日。アメリカ同時多発テロ事件と呼称される大規模破壊であった。

SYSTEM :
 ……歴史学者たちの解釈は、そこに分析を加えはすれど、事実無根としてそれ以上を添えることはない。
 だが世界の裏側を知る者は、そこから先の事態に関して言及を避けられなかった。

SYSTEM :
 多くの陰謀がささやかれるこの事件の裏側、ほぼ同時刻にそれは起きていた。
 米国のフィランダー発掘隊が中東某国の遺跡より発見した遺跡が、飛行機事故と共に拡散するに至った。
 R解放。
 レネゲイドウイルスの拡散が、この『対テロ戦争の時代』の幕開けと同時に展開されたのだ。

SYSTEM :
 そこで何が起きたのかは重要ではないが、その時代が彼らにとって最も都合の良かった時期であることは明白だろう。

 情報化社会の到来。イデオロギーの形骸化。国家に対する不信感と、軍事力の需要。
     ・・・・
 ……即ち『個人の力』が最大化を迎える手前にあった。

SYSTEM :
 それはナショナリズムの時代、誰でも情報の発信者と成れる時代を前に拡散を余儀なくされた。
 ARPANETを下地に普及したWWWは、環境さえあればあらゆる人間が情報の海を潜れるようになった。
 そして発信した情報はリアルタイムで反映され
既に携帯端末による情報交換技術は開発局で試作に成功している。十年もすれば民間に流通するだろう。
 その後は、あっという間に世界は無数の目によるパノプティコンが成立する。

 世間は対テロ戦争の時代と嘯くその別の側面で。着々と因子を所持するテロ組織、FHの勢力は拡大しつつあった。

SYSTEM :
 これから言い渡される作戦も、その一端であった。
 テロの時代に癒着し、広がり行くFHという米国の癌を除くための

ヘルムート・ヘス :
 椅子に腰かけ、杖を突き、厳めしい口調で語る老年の男は、ダンと浅からぬ仲の人間だった。
 ヘルムート・ヘス。
 元DARPA局長であり、現在は米兵の教育プログラムに携わり、現在はダンの主治医でもある。
 

ヘルムート・ヘス :
 ……七年前、イラクの対テロ戦争に従軍し、その中で覚醒したダン。
 彼が医療機関をたらいまわしにされていた中、彼を見出し、その正体をアメリカの一科学者に過ぎなかったコードウェル博士の文献であると発見し、彼らオーヴァード達の速やかな分析と研究体制を作り出したのが彼だった。

ヘルムート・ヘス :
 かつての二次大戦期から軍役に就いた古参兵であり、当時の統合参謀本部職員を務めたという古参兵である彼は、退役した現在でもダン・レイリーを含めたオーヴァード達の研究の第一人者であった。

「早速だが、君には次の任務のため合衆国に帰国してもらう。
 国防省長官から、件の作戦の実行許可が下った。君が、その部隊の指揮を執ってもらう」

ダン・レイリー :
 ………ヘルムート・ヘス。
 眼前の男には、色々と縁がある。 

ダン・レイリー :
 元DARPA局長、米兵の教育プログラムに関与する重鎮。
 表向きの立場でも、公私に渡って付き合いのあるこの老獪な退役軍人は、
                             Overed
 裏向きの立場でもまた、自らにとっては渡りに船を寄越した、超人達の統括でもあった。

 紆余曲折をさておけば、彼がいなければ自分は此処におらず、
 またテンペストという、戦後の戦争を見据えた実験部隊の設立には、彼の手が多分に関わっている。

ダン・レイリー :
 そのテンペストの任務と言えば───。

 概ねは、こうだ。

ダン・レイリー :
..Yes,Sir
「了解」

 そう。
 戦後の戦争で軍人の生き方は、国と国の主義主張を解決する最終手段以上に、別の意味合いが強くなった。
 
 自分たちのような人間は、殊更にそうだ。
 ひとりの英雄を持て囃す時代は終わったのに、今や誰もが影響力だけはひとりの英雄と同じものに成ってしまえる。

 千人集めねば暴力を通せない時代は、
 少しばかり手に無形有形の力を持たせた十人もいれば、それ以上の暴力を振るえる時代になりつつあったわけだ。

ダン・レイリー :
「とはいえ、抜擢が俺なことも含めて急な話だ。
 テンペスト全体で蜻蛉返りでもするわけじゃなさそうだが、局長。作戦実行に際して、あんたの口から聞けることは聞かせて貰えるのか」

ダン・レイリー :
 ・
 元局長だが、少なくとも俺にとってのヘルムート・ヘスを指し示す呼び名は、今でもそれだ。
 特に、こういう場においては。

ヘルムート・ヘス :
「無論だ。順を追って説明しよう。
 
 今回の作戦はテンペストの一部隊を動員して実行される、米国のテロ組織『シャンバラ』の制圧を目的とする長期ミッションだ。
 仔細を省いて説明すれば、米国各州に配置される組織の拠点と、その指導者を叩くことを目的とする」

ヘルムート・ヘス :
                   F B I
「州を越えたシンジケートの摘発などは連邦捜査局の管轄だ。武力行使も多くはS.W.A.Tに一任される。
 情報捜査はラングレーが一任してくれるだろうが、あくまで武力行使はしない。
         U S M A R S O C
 それが立場上、マリン・レイダース麾下組織に所属するテンペストにお鉢が回ってきた理由は幾つかある」

ヘルムート・ヘス :
「一つはシンジケートの実態が、大型国際テロ組織FHのペルソナショップに過ぎないこと。
 つまりこの作戦は単なる違法薬物、違法武器の密輸組織を摘発することでなく……
 その首謀者を暗殺するアンカバード・オペレーションということだ。……投降する限りにおいては例外ではあるがね」

ヘルムート・ヘス :
「そしてもう一つ……こちらは単純にして明快な理由だ」
 それは分かるな? と、老兵は一拍を置く。

ダン・レイリー :
 シャンバラ
「理想郷とはな。
 随分な名前を付けてくれる」 

ダン・レイリー :
「………そしてオーヴァードはオーヴァードにしか倒せない。
 例外こそあれ、プロフェッショナルが例外をアテにするもんじゃない」

 言葉を変えると手に負えなかったか。
 このご時世ならではの、シンプルな理由だ。

ヘルムート・ヘス :
「そうだ。彼らの実態がFHである以上、オーヴァードによって編成されている。
 彼らに共通して備わるワーディング・エフェクトは、それだけでも大多数の兵力を無力化できる、現代の生きたEMPだ」 

ヘルムート・ヘス :
「主要都市のSWATには既に、アンチワーディングマスクの配備が進められてはいるが、それで対処できるのは地方の弱小セルに限られる」

ヘルムート・ヘス :
「理屈の上で言えば、リザレクト効力が付いているオーヴァードであれそれを追いつかない飽和火力によって攻撃を加えれば撃破が可能だ。
 ワーディング効果を無力化さえすれば、少なくとも同じ土台に立てる。
 だが……そんな前提以前に、基礎能力の桁が違い過ぎる」

ヘルムート・ヘス :
「加えて言うならば技術という面でも、聊か認めがたいことだが、DARPAの技術力を上回っていると認めざるを得ない。
 オーヴァードという存在は、あまりに個人の力を強め過ぎた」

ヘルムート・ヘス :
「その中でも大型シンジケート『シャンバラ』は、現存する米国内のFH組織の中でも非常に大規模な組織だ。
 ……君は2004年、約四年前まで、米国内でテロが活発化していることを覚えているかね」

ダン・レイリー :
「あれが戦場の常になれば、戦争は様変わりだ。いや、実際にそうなっている………」

 オーヴァードを戦場に投入するようなこと自体は、今はテンペストのような、明るみに出にくい場所に留まっている。
 それでいてコレだ。

 戦術レベルでの運用や訓練の立証結果でさえ、既存の戦術が役に立たない怪物こそ、
 次のアメリカ軍が取り込むべき対象になっていることなどは、俺や彼が論ずるまでもなく、ずっとお偉方を悩ませる内容でもある。

 万が一、これが戦略レベルでの運用となり、軍事の根幹となった日には、条約の要項は従来の三倍近くに膨れ上がるだろう。
 そんな具体例が生まれないことを願うばかりだ。

ダン・レイリー :───閑話休題。

ダン・レイリー :
「北米のFH組織の最大手が沈んだのが、その四年前だったか。
 ………シャンバラは後釜狙いか、そのものと?」

ヘルムート・ヘス :
 然り、と首肯して話を続ける。

「恐らくは前者だろう。後者は死亡ないし凍結されていると聞いている。……彼らの主張が正しければの話だが。
 だがそれを裏付けるように、シャンバラの本格的台頭は北米セルが壊滅した直後のことだ」

ヘルムート・ヘス :
「活動自体は遡れば七年から六年前、つまりR解放の時代には確認されたようだが。
 奴らは賢しく北米FHを隠れ蓑に陰で勢力を伸ばし、そして今その脅威が顕在化している」

ヘルムート・ヘス :
「彼らのR研究に必要な人的資源を求める人身売買。αトランス系R覚醒剤を製造するための化学物資。兵力増強のための武装、戦闘車両。
 勿論、それらを結ぶ技術力の提供など。
 それを求めるものは、この時代には大勢いる。それらに、禁断の果実を与え、勢力を伸ばし続けているのが『シャンバラ』だ。

 北米FHが当時最も強く武力を見せつけた組織であるならば。
 このテロの時代、誰もが力を求める時代に最も賢く立ち回った存在と言えるだろうな」
 

ダン・レイリー :
「…連邦捜査局は柔じゃない。
               C I A
 超人揃いのテロ組織だって、ラングレーもその尻尾を掴むだけに、七年も時間を掛けるというのは妙な話だものな」

ダン・レイリー :
 では、と。
 既に結論が出ている自分の言葉を続けて、繋げる。
 いいやそれは、このヘルムート・ヘスとて同じことだったのだろう。

 ………レネゲイドウイルスの存在は、毒にも薬にもなる。
 どんな力も使い方次第とは言うが、使い方を択べるほどの力を誰もが欲するのは、有史の成功者たちが、そしてその成功者たちの尻尾が示している事実だ。

ダン・レイリー :
「シャンバラは複合セルだったか。
 目に見えないうちに、随分と各所に根を張ったらしい………」

ダン・レイリー :
..   Officer
「一介の士官に現場の指揮を委ねるにしては、規模の大きい作戦らしいな。
 いや、だからこそ標的を絞ったか」

ヘルムート・ヘス :
「流石に察しがいいな。
 FHとは実力主義、個人主義という性質上、多くの場合縦の繋がりは薄い。『クラン』と呼ばれる勢力は例外であるが、多くの場合は素性も身分も宗教も問わず、ただ実力によってのみ選定される寄せ集めだ。
 これもまた、リーダーの性質によって変化する以上、断言はできないが……少なくともシャンバラに関しては、その性質は強い」

ヘルムート・ヘス :
「シャンバラは複数のセルと、上級セルリーダーからなる精鋭らが上に立ち、各地のセルを統括する。
 そのリーダー格の影響力によって成り立つ以上、彼らを潰せば複合セルを結びつける紐帯は解け、霧散するだろう」

ダン・レイリー :
「非ピラミッド型…クモの巣型というやつの構造だな。
 セル
 細胞とは言い得て妙だ。一つを潰しても、全体の活動が停止するわけじゃない。
 FHというのも、同じ名前の旗を掲げているだけで、そのイデオロギーはまるで違っていた………」

ダン・レイリー :
 最も効率の良い、この手の組織を崩壊させる術は一つだが、それが出来るほどアメリカの闇に通じ、かつその任務に相応しい人間を捜すことなど、砂漠で砂金を見つけるほどの難題だろう。

 だが細胞の中にも優劣があり、優先順位がある。
 その順位の高いものを潰せば、虱潰しには出来ずとも結合は解ける。
 殲滅でなくとも、組織としての影響力、脅威を減らすプラン───少なくとも上層部や彼は、そう考えたわけだ。

ダン・レイリー :
    ターゲット
「その中核となる人間は複数か。ますます、どういう連帯と切欠なのか疑問の残るところだが………。
 そいつらについては?」

ヘルムート・ヘス :
「CIAから送られる情報によると、現時点で確認されているものが二名。今回の作戦協力者の調べでは五名とされているが、そちらの情報は合同ブリーフィングの際に共有されるという。
 こちらで掴んだ二名はいずれもリーダー格であるが、それら全体を率いているような様子はない。
 ……君を指名したのは、その内の一人が無縁でないことが分かったのも一因である」

ダン・レイリー :「…俺が無縁でない?」

ダン・レイリー :
 この7年、仕留め損ねた者か、仕留めた縁者か。
 あるいは………。
 ………頭に一人の顔が過る。

ヘルムート・ヘス :
「一人はコードネーム"ラクシャーサ"。
 上級エージェント相当の権限を持つというFHマーセナリ……つまり雇われ兵だ。
 戦闘セルを統括する、サーベル状の武装を所持する、白い長髪の女傭兵という」

ヘルムート・ヘス :
「そしてもう一人が……この男だ。
 君も、見覚えのあることだろう。

 そう言って、懐から取り出した写真を見せる。そこに映っていたのは、黒い外套を被り、朱い剣を携え持つ、物憂げ名表情をした男だった。

ヘルムート・ヘス :
「……人呼んで"天刑府君"。中国FHにおけるコードネームだな。
 中国FHセルに所属したという殺し屋……
   ユン・ティエンシン
 名を元  天 刑という」

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :

 ───まさか、とは思ったがな。
 機会の巡り合わせというのは、どうやら予期しない時に限って来るようだ。

ダン・レイリー :
 その呟きは、言葉として発されたものではない。
 胸中に仕舞い込み、軍人としてのパーソナリティで上書きする感情だ。必要性は然程とない。

ダン・レイリー :
「………成程な。一人はともかく、こちらは知っている。

 名前は初めてだ。
 中国由来の男だとは分かっていたが、それが海を隔ててシンジケートの雇われとは」

ダン・レイリー :
「………いや。
 雇われと確定したわけでもなければ、そこを重んじるグループではないな。“ラクシャーサ”も含め、双方何時頃から?」

ヘルムート・ヘス :
「この男に関する交戦データの多くは君に依存している。
 君の証言と記憶、そして特徴。それらを、これまでの被害と照らして戦闘データにエスカレーションして、現在存在する訓練のAIを構築した。
 それだけ目撃者も生存者も少ないということだ。殺し屋と名乗るだけのことがある」
 

ヘルムート・ヘス :
「それだけに、彼が何時から所属していたかは不明だ。いつの時点で、あの組織とつながりを持っていたのか……初期段階から席を置いていたとは考えにくいが。
 ラクシャーサに関して言うならば、比較的最近……長く見積もって一年二年という所か」

ダン・レイリー :
「プロフェッショナルか。いや、ヤツはそうだった。
 あるいはシャンバラの潜伏に舌を巻くべきかも知れないが………」

ダン・レイリー :
「しかしもう片方………“ラクシャーサ”というのは、良くも悪くも外様のようだな。
 浮き駒で一年、二年とやって来たこと、その職務を思えば、やり手であることは間違いないだろうが」
 
 その外様が瞬く間に戦闘リーダーに成りあがる様は、正に外来種が原生種を食らうような、極めてナチュラルな弱肉強食だ。FHという組織の構造を反芻すれば、納得のいく理由ではある。

ダン・レイリー :
「残りは合同ブリーフィングで、だったな。
 ………局長」 

ダン・レイリー :
 ………優先事項の確認をし終えたところで、聞き捨てならぬもう一つの案件についてだ。

ダン・レイリー :
「合同の内訳を聞いて構わないか。
 察しはつくが、本国の身内だけに限った話でないのだろう、コレは」

ヘルムート・ヘス :
「うむ。今回は基本戦力に加えて、外部組織も参加することとなる。
     P  M  C
 それもブラックウォーターのような、一応は退役軍人の、その筋の人間が集まるという訳でもない」
 

ヘルムート・ヘス :
「専門家には、専門家を。
 国際NGOであるが、米国内においては既に各州で法整備が進んでいる。ペンタゴンの信用に堪える程度には実績のある、民間R研究の最大手……」

ヘルムート・ヘス :
「名をUniversal Guardians Networkという。
 北米FHセルの壊滅に尽力したコードウェル博士を指導者として持ち、各地の民間抗R組織を取りまとめて成立したという
           ロッジ
 公にはされていない秘密結社だ。君もこの仕事に関わる上で、話に伝え聞いたことはあると思う」

ダン・レイリー :
「………。そうか。
 もう半分の疑問は氷解してくれたようだ」

ダン・レイリー :
 
 如何に首狩りを大前提とした戦術と言えど、テンペストの一部隊だけを実働として、
 米国全土に根を広げたというシャンバラの摘発を行うのは、聊かに無理のある話だ。

 ならば、専門家には専門家。
 我々のR研究よりもFHは遥かに高いレベルを持ち、シャンバラという癌の摘出が、活動の中核となるアメリカで行われる以上、そこの協力を要請するのは当然のことと言える。

ダン・レイリー :
「アルフレッド・J・コードウェルを旗頭にした“ガーディアンズ”を束ねたものと聞いている。
       イデオロギー
 ………俺に彼方の流儀との橋渡しを兼ねろということか」

ヘルムート・ヘス :
「そういうことだ。
 UGNは現状、世界各地のR案件に関してFHと二分する形で各州に根付きつつある。彼らとて、精鋭を送り出すという一方で、一部登録済みの民間協力者も遣うという。
 特殊な作戦である以上、あまり人員を外部から供給するのは認めがたい行為であるが」
 

ヘルムート・ヘス :
「君の仕事は純粋な陣頭指揮者としての働きのみならず。
 組織間、人間間を繋ぐ鉄の歯車として動いてもらう
 ……あくまで"テンペスト"としてな」

ヘルムート・ヘス :
 嵐を超える者。それは単に抗いがたい敵との交戦をのみ意味しない。
 この嵐の中で、見極める必要がある。
 組織と組織が手を組む以上、そこに完全な調和などありはしない。相互の利益があり、それは外部から招くという点を考慮すれば個人単位にまで細分化されるだろう。

ヘルムート・ヘス :
 テンペストとしての立ち回りを期待するとはそういうことだ。
 ……この言動からして、このヘルムートという男はUGNに全幅の信頼を置いている訳ではないようだった。
 事実、軍役の人間からしてみれば、仕事を奪う彼らによい印象を抱いている人間は少ない。兵士の上では兎も角、より政府に近しい人間からすれば無碍にも扱えない、お互いにナイフを隠し持ちながらの外交の相手と呼ぶ方が正しい。

ダン・レイリー :
...了解した
「Yes,Sir。
 どうあれシャンバラ摘発の任務遂行に異存はない、ベストを尽くすさ」

ダン・レイリー :
 発言の意味を追及する必要はない。
 テンペストとして動き、その一線を越すべきでないという言葉に挟む余地など。

 大目標の利害は合致しているようだが、
 これが小目標となって来ると話が別だ。
 国家という母体を持ち、そこの貢献を前提とする我々テンペストと、個人の志をこそ母体にしたUGNでは、選択の土台が異なり………また、外部協力者に至っては、究極的にリターンがあってこその作戦参加となる。

 ………小目標がアメリカを害する場合、大目標にそぐわぬ行動をする場合の監視も、恐らくは俺やテンペストの派遣される部隊に課せられた任務だ。

ダン・レイリー :
「そうと決まったならば、人員の仔細についても確認が要る。
 それについては?」
 

ヘルムート・ヘス :
「UGNは各州、主要都市に配置したエージェントに加えて、メリーランド州の某所に配置した本部が存在する。
 よって作戦区域の自治体と提携した支部、及びに本部からの物資提供などのバックアップを取り付けるとのことだ。
 それに加えて、君の麾下に三名の本部エージェントが配備されると聞いている」

ヘルムート・ヘス :
「そして、これらが彼女らのデータだ」

 そう言って、彼は端末を取り出し、各人のデータを見せた。
 そこに映し出されていたのは──

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
200X/11/1X
アメリカ合衆国 ワシントンD.C

SYSTEM :
 数日後、支度を整えたテンペスト一個小隊は沖縄から合衆国まで飛行し。
 用意された仮の拠点まで移り、作戦開始までの準備を整えていた。
 ダンは、今回の面子をあらかじめ二人に紹介するために端末を広げていたのだが。

ディアス・マクレーン :
「……………おいおいこりゃあ」

 何とも言えない表情で、ディスプレイに映し出された人間の顔を見つめる。

ディアス・マクレーン :
「でっ

水無瀬 進 :
「なんてこった、まだ子供じゃないか」

ダン・レイリー :
「数ヶ月前の俺と、ほぼ同じ反応をしてくれて何よりだ。ミナセ」

 少尉の失言を力ずくで流しながら、
 俺は話を続ける。

ダン・レイリー :
「専門家には専門家とは言ったが、実力主義には実力主義で来たのかも知れない………。
     ・・・・・・・・・・・・
 とまあ、好意的に受け取った場合はそうなる」

ダン・レイリー :
 ………好意的に受け取らない場合は、いくつかの可能性を提示できる。

 捨て駒、侮り、倫理性のなさ、人手不足、その他渦巻く何某。

ダン・レイリー :
「だが使い捨てと侮りは先ず“ない”だろう。
 データは確認してある。見掛け倒しってことがなければ、気は進まないが計算には出来るはずだ」

ディアス・マクレーン :
「まあ……俺も超法規的な何某で、こいつらとどっこいの歳にはM4握っちゃいたさ。
 このご時世、先進国でも駆り出されるやつは駆り出されるとはいえなあ」

水無瀬 進 :
「まあ、若い時ほど、イメージの柔軟性が高いっていうからね。オーヴァードとしての能力が育ちやすい年齢なんだと思うよ、十代って。
 ……けど、だからってこれは」

ディアス・マクレーン :
「まあ、好意的に受け取るしかねえか。実際問題、問題が起きりゃ俺達でカバーしてやればいい。こちとら天下のテンペスト、子供の一人や二人ケツ持ってやれなくて、やってられっかよ。
 それで。データっていうと、こりゃ参加作戦についてか。何々……?」

ディアス・マクレーン :
「……なんかすげえこと書いてあるんだが? こっちの二人」
 モニターには直近の任務としてアラスカの20m相当、ミサイル迎撃能力を有する大型試製マーセナリと交戦、双方でこれの破壊に成功したという旨が記載されている。
 

水無瀬 進 :
「なんだこりゃ、こっちの界隈でいえば現役の戦車一台を単独撃破するようなもんだぞ?
 フカシにしては大仰過ぎないか? この……ショウ・カインって子と、イサナ=アルカンシエルって子」

ダン・レイリー :
「少尉の言葉も最もだ。
 問題が起きればカバーする、程度の意識で良い。
 侮りを気にする俺達が、無意識に侮りました、では本末転倒だ」

 とはいえ………データを見せた各々の反応を考えると、その線は外見上のものからくる無意識のソレを除けばないだろう。

ダン・レイリー :
「流石に、レネゲイドの分野では彼方に一日の長がある。火力の面については、むしろ市街戦に発展した際を懸念した方がいいかもしれんが………。
..Overed
 超人の持つ強みと弱みは、テンペストとして少尉もミナセも分かっているだろう。フカシでないなら、その方にも相応の警戒が要るぞ」

ダン・レイリー :データ上大仰な火力を持つ方にも、持たない方にもだ。オーヴァードはどれだけ強力でも、“安定”という言葉を付随させるのが難しい。

ディアス・マクレーン :
「マーベルヒーロー達が出てくるまでの咬ませ犬にだけはならんことを祈るぜ。
 或いはアレか? 日本のガッズィーラの吐息でぶっ飛ばされる戦車隊とか」

水無瀬 進 :
「縁起でもないことを言わないでくれ、僕も不安になってくる。
 が、しかしまあ、此処まで極端だと驚きだな。安定しないっていうのは聞いてはいるけども……
 僕ぁあの元ってやつがトップの上澄みとばかり思ってたけど、似たようなのはこっちにもいるらしい。いよいよこれはX-menとかその辺りの世界だ」

ダン・レイリー :「言葉は力を持つとか聞いた。シャンバラの奥深くには、テレビショウめいたモンスターがいるかもだ」 

ダン・レイリー :
「………それはさておくとして。そういう世界なのも今更の話だ。

 テンペストは、アメリカのお偉方が“それ”を欲した結果でもある。
 敵の前に、身内の嵐に吹き飛ばされないようにな。コートニーに戻って笑い話の種になりかねんぞ」

ダン・レイリー :………ところで配備予定の本部エージェントは3名いると言ったな。あと一人はどうだ?

ディアス・マクレーン :
「おお、こわっ。精々精進するしかねえかなあ
 しっかし、こんな子がねえ……もう片方のはなんつうか
 メトロセクシャル
 草 食 系っつうか、図体的にゃブラキオサウルスだが……
 戦争は変わるもんだが、嫌な時代は案外近づいてるかもしれん。その点で言えばこの子だって」

ディアス・マクレーン :
 言って、モニターを動かす。
 何かと派手なことが書かれているあちら方とは違って、こちらの担当してきた仕事は専ら教導のようだ。
 年齢は20代前半。本部に所属し、英国で要人警護の経験あり。流石に子供だけに作戦行動を任せる訳にもいかなかったのだろうか
     ベニ
「名前は……紅 ?ああいや、チャイニーズだから、えーっと……
 ホンか」

ダン・レイリー :
「子供は純粋だ。与えられた命令を与えられた通りこなすように育つ。
 スクールでもそうだろ。勿論、スクールで教えるのはそれだけじゃないが………」

 その純粋さは、育て方を間違えれば凶器になる。
 疑わぬ直線性に足を引っかけてしまえば、誰だって転んでしまうようにだ。

 ………。

ダン・レイリー :
「………それで、その紅というエージェントを含めて、UGNの本部から配備されるのは全部だ。
 強力とはいえ子供が二人だ。メンタルケアも兼ねた年長の身内が来ることは妥当ですらある」

ダン・レイリー :
「とはいえ、ここで分かるのは顔と名前と実績だ。
 思惑も込みで、ブリーフィングから気長に判別するしかないだろう」

ディアス・マクレーン :
「まんま同じことを向こうもしてくる可能性もあるのが、気が滅入るもんだ。
 味方でいるのも嫌だが、敵に回すのは猶更な」
 

水無瀬 進 :
「了解だ、隊長殿。
 出来る事ならこれ以上チルドレンが巻き込まれないことを祈るが、僕の予想だと外部の人間もティーンが多そうだ」

ディアス・マクレーン :
「何浮かねえ顔してんだよ! まだ会ってもいない段階でアレコレ悩んだってしょうがねえだろ?
 俺達のやることぁ変わらねぇし、俺達がヘナってる方がどうしようもねえだろって」
 ミナセの方を組む!

ダン・レイリー :
                   .ティーチャー
「だとしたら俺は隊長どころか、スクールの教師だな。
 とはいえ───」

ダン・レイリー :
「断じていつも通りではないが、成すべきことはいつも通りだ。
 大目標は合致する以上、気負い過ぎることはない」 

ダン・レイリー :
「シャンバラの頭を切除し、連結を排除する。
 任務の遂行において、各自のベストを尽くそう」 

ダン・レイリー :
「………というわけだ。
 会った後で二足の草鞋を履くというやつを実感することになっても、元よりそれが俺達の任務だ。
 高い金と期待の分は応えて見せないとな」

ディアス・マクレーン : Roger
「了解! 可愛い子ちゃん達のためにも、ばっちりイイトコ見せねえとなぁ!」
 

水無瀬 進 : Roger
「了解だ、隊長殿。
 何、僕のような凡人は元から、やれること自体が少ないんだ。善処するよ。
 向こう側の技術にも、大いに興味があるからね……」

SYSTEM :
 かくして……
 嵐を征く兵士たちは、為すべきを為す為に動き出す。
 それは戦地に赴く兵士というより、大時化の海を漕ぎ出す船乗りを思わせるものだった。
                   サルガッソー
 しかし彼らが進むは、シャンバラという魔の海域。

SYSTEM :
 何事も起きない道理などある筈もなく。
 そして嵐の先端を切る突風がうなりを上げるのは、これからわずか数日後の出来事だった……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【OP② 力の責務-Sealer-】

SYSTEM :
【OP② 力の責務-Sealer-】

登場PC: Syou Kain
登場侵蝕:あり

GM :ごほん では侵食チェックおねがいします

"ラフメタル"灰院鐘 :1d10 (1D10) >

"ラフメタル"灰院鐘 :ほどほどだね

GM :平常心!平常心はダイジ

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] 侵蝕率 : 33 → 38

SYSTEM :
200X/09/XX
アメリカ合衆国 アラスカ州 ジュノー上空

SYSTEM :
 時刻16:14
 FHセル『グリーン・リヴァー』の実験施設攻撃作戦中、開発途中とみられる検体のレネゲイドの暴発が発生。
 原因不明の超高負荷レネゲイドにより、作戦に従事したアラスカ支部エージェント5名が重傷を負い、戦線を離脱。

SYSTEM :
 急行した近隣のアラスカ支部エージェントらがこれらの対処に当たるも、現存戦力では打倒不能と判断。
 解析の後、暴走する機械化兵検体はEXレネゲイド、推定『遺産』を内蔵する躯体と判明。

SYSTEM :
 遺物探索局の管轄であると同時に、現場のエージェントでは対処が困難と判断したアラスカ支部長は本部の遺物処理班に支援を要請。
 これに応え、本部はエージェント二名を派遣した――

オペレータ :
敵ジャーム、ポイントLよりポイントXへの誘導完了。

ポイントXより半径500mの広範囲に空間剪定系のワーディングエフェクトを展開中……空間策定完了。

オペレータ :
非オーヴァード、並びに非レネゲイド物質の相転移を確認。隔離が完了しました。
民間人の避難、完了。
情報処理班、バックドアを通じジュノー内の電子機器系統を掌握。通信映像の改竄処理を完了。

オペレータ :
飛行中コンバットタロン、視界・感度良好。
同乗するエージェントの影響による誤作動はあれ、誤差の範疇。
作戦遂行に影響はありません。

オペレータ :
 ……間もなく作戦区域のワーディング圏内に突入。
 リリースポイント
 降下地点に接近します。
 強力な妨害電磁場が展開されています、レネゲイドコントロールを高めてください。

オペレータ :
 5秒前。3,2,1……

SYSTEM :
 そして、暗がりを破り、二人は輸送機から見下ろす形で敵の総体を視認した。

SYSTEM :
 全長20m相当の超大型機械化義体に、脳部を搭載して稼働させる。
                  サ イ フ レ ー ム
 現在の機械化義体技術の粋を凝らした鋼殻猟兵。FH研究セルがアラスカ支部解放の為に開発を進めていた最新モデルである。

SYSTEM :
 ハードワイヤードによって搭載されたアームブレードも、インプラントミサイルも、いずれも通常の機械化兵とはけた違いの規模と破壊力を有している。
 そして何より……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「外部兵装に反応は見られない、となると……
    コア
 やはり核ユニットか」

 検分して一言、あなたの隣から輸送機の上で見下ろしながら、彼女は口にする。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「突入時に地場嵐が起きましたが。無事ですか? "ラフメタル"」

 あなたの方角へ視線を合わせる少女。彼女は、次期作戦においてバディを組むことと成った相手だった。
 UGNでの経験の上では後輩にあたるが、年齢の上では3,4歳は年が離れた相手。名を、勇魚=アルカンシエルと呼ばれている。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「強大なレネゲイドと対する時、その影響によってレネゲイドの反応が乱れることがあります。
 瞬間的な活性化によって衝動が抑えきれない場合、一部の防御行動に支障をきたしますが……」
 まさかこの程度で揺らいではいるまいな。
 そう釘をさすように付け加える。
 まるで試すような言い分だが、それもむべなるかな。これは彼女なりに、"ラフメタル"が何処までやれる相手なのかを見定めるため、同行させた彼女との初任務なのだ。

灰院鐘 :
 ──遥か異国の上空。交わされる言葉の内容のほとんどは、そう遠くない昔には縁のなかったものだ。

 レネゲイド。ジャーム。ワーディング。
 ・・
 こうなった最初のほうで教えられた用語は、今や日常の一部だ。微分積分よりずっと分かりやすい。身体で感じて、意識して扱って。実践的なほうが馴染むのはかんたんだ。

灰院鐘 :
 だいいち。
 ・・
 こうなる前の記憶はたいしてないのだから、少しくらいは覚えが早くないと困りものだ。地頭はいいほうじゃないようだし。

灰院鐘 :
 目視──注視。
 晴れた視界の直下に、巨影を見る。
 五人ものエージェントを返り討ちにした最新鋭。

「わあ、おおきいな」

 率直な感想。もはや人としての運用を想定されていない巨体は、見たままの兵器だ。搭載された脳。動かしているのは人の脳(あたま)だと言うけれど。

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :
「うん? ──うん、だいじょうぶみたいだ」

 心配ありがとう、とおっとり微笑む。

灰院鐘 :
「調子は悪くない。朝ごはんも食べたし。新しいやり方にも早く馴染まないといけないからね」

灰院鐘 :
君はどう? と問い返す。年の離れた後輩さん。彼女の名前は──

「勇魚くん」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「結構。緊張感に欠けますが、物怖じしてないだけ及第としましょう」
 スン、と目を伏せて

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私は問題ありません。
 それより今は自分のコンディション管理に集中するように。でなければ、あなたを連れてきた意味がありません」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 直後、下方より鋼の稼働音が響き渡る。新しい侵入者をセンサーが捕らえた結果だろう、反射的にこちらに敵意を見せ始めているようだ。
 勇魚はそれを見とがめると、段取りを確認するように言葉を継ぐ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あのジャームは超大型の特殊外殻に脳部をAIとして搭載し
 動力源としてEXレネゲイドを核に取り込んでいます。
 恐らく動力はほぼ無尽蔵。ジャームである以上、浸食率が天井知らずに上がる性質を考えれば、動力切れは見込めない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「火力は高周波アームブレードが二本。対艦規格のインプラントミサイルが八門。
 そして20mmバルカンが二門。
 何よりこの機動力。放置すれば、あっという間に都市を焼き尽くすに十分でしょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル : 何より、この規模で暴れ回られれば間違いなく都市全土を焼き尽くすだろう。
 オーヴァードの存在の、露見と共に。
 それだけは避けねばならない、というのがUGNの立場だ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私一人でも破壊は容易いですが、コアユニットに遺物が搭載されている場合、聊か周囲の影響が気になる。
 ただ、勝つ。それだけでは、正しい勝利とは言えない。
 
 そこであなたには、露出した回路に対してゼロ距離で《セキュリティカット》を撃ち込んでほしい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 これだけ大掛かりな機械化兵となると、結合に粗が出るのは当然のこと。
 純粋な火力で圧倒するなら、別段勇魚一人で事足りる。それだけの「腕」を有している。
 だが、それで勝ったとしても、動力源たるコアが暴発でもした場合。そうした場合、ワーディングエフェクトを突き破って現実に影響を与えかねない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 それも、多少やり方を変えれば勇魚一人で出来なくもないことではある。が……
 電子系統を破壊し、コアからの動力供給を閉ざし『機械の義体』だけを停止させられる場合。
 その場合は、無力化された義体から安全にコアを摘出し、遺物を回収。封印することが可能となるだろう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「先行して私が出て、あちらの勢力を殺ぎます。
 あなたはあの機体に接近し、拳で直接叩いて回路を停止させてほしい。
 いいですね?」

灰院鐘 :
「まかせて」
 と言っても、コンディションの管理にとくべつ何かしたことはない。
 頑丈な身体に搭載されたいくつかの使い道を、必要な時に、適切に運用する。要はいつも通り「がんばる」だけだ。

灰院鐘 :
「それは……ものすごく物騒だ」

 困ったな、と眉を落とす。ああいうのは硬いし、近づくにも一苦労。なにより強引に殴り返してれば何とかなる相手でもない。

 だからこその適材適所で、役割分担。

灰院鐘 :
 ──焼け落ちる街を想起する。
 多くの人々の生きた痕跡が、跡形もなく消えていくさまを。訪れるはずの明日が、昨日今日と形を違えてしまう瞬間を。

灰院鐘 :
 ──瞼をもちあげて見据える。
 それを止めるために危険へ身を投じ、戦う人の姿を。

灰院鐘 :
「ええと……近づいてズドン、だね。うん、それなら」

 何とかなるし、何とかする。それが今日のお仕事だ。 

「それじゃあ一緒にがんばろう! 明日も平和で、世界が優しくあるように」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………」
 どうにも、この男といると調子が狂う。
 そんな何か言いたげな顔を一瞬してから、平静を取り直す。
 どこか気が抜けたような態度がそうさせるのか、勇魚はそのもや付きの正体を掴み損ねていた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「最後に」

 エ ア ボー ン
 空挺降下直前、タラップに片膝をついて右手を地面に触れながら、彼女は続ける。

「無理は禁物です。本来この程度の任務なら、私一人でも十分。余裕があります。
 こちらからもサポートします、その際は電波で合図をお願いします」

灰院鐘 :「助かるよ」のんびりと片手をあげる。

灰院鐘 :「じゃあ僕からも、最後にひとつ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「?」

灰院鐘 :「怪我には気をつけてね」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………」
溜息

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「自分の性能を出すことだけに集中を……いえ、もう結構。
 それを含めて、評価することとします」


 意識を切り替える。作戦に集中するように。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

「コード"炎神の士師"……これより状況を開始する」

灰院鐘 :
 コピー
「了解」

 覚えたての流儀を口にして、あとに続く。コード"ラフメタル"──と。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 言って、勇魚はついた片腕から熱を発する。
 彼女の能力。
 右腕に宿せし、破壊神の炎。触れるすべてを焼き焦がす必殺必滅の『遺産』。
 彼女の右手は、分子震動によりその温度を物理限界を無視して際限なく高めることを可能としている。
 しかし……放たれるのは、なにも敵を滅ぼす炎のみではない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 タラップより伸びた炎の線路。中空に燃えるラインが引かれる。
 《氷の回廊》、それに類する能力だろう。
 勇魚は先行して空中に描かれた白熱する線路の片輪に飛び乗ると、その身は線路沿いに高速で疾走を始めた。
 

SYSTEM :
 線路の熱源を追って敵が接近することはない。
 あなたはこの線路に乗って、既定のポイントにまで降下が可能となる。

灰院鐘 :
 遺産。こちら側に立ってからも、まだ馴染みの浅い存在。専ら危険物のように教え込まれたそれ──現に今も、対処のために訪れた──の類型を、傍らの少女が揮う。

灰院鐘 :
「……」

 かってに開きかけた口を、手で覆ってとめる。もご、と呑み込まれる無形の声。

 なるほど、と頷く。意識のスイッチ。作戦に集中するための切り替えの意味を、土壇場で学ぶ。

灰院鐘 :
「よし」

 空に引かれた燃える線路へ飛び移る。荷重に軋むことのない回廊に沿って、目的地へ。

 隠密行動は不向きだが、心配はない。……うさっきも言ったけれど。だからこその適材適所で、役割分担だ。

SYSTEM :
 そして、先行して飛び乗った勇魚の方を見ると。真っ先に敵の下まで降下する彼女に、しかし鋼の機体はそれを赦すことはない。
 

SYSTEM :
 反射的に、特殊外殻の背部装甲を展開する。都合八つのミサイルポッドが顔を覗かせ、一拍遅れで噴射音を立てながら仕込まれた殺意を激発する。
 街の被害などまるで想定しない八連装対艦ミサイル。それらはレーザー誘導によって的確に、疾走する二人に向けて殺到する。
 それを……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 翳した手から《閃熱の防壁》が展開される。熱に非ず、炎を擲弾として周囲に打ち放つ。
 それらは赤外線・R因子誘導ミサイルに対するフレアとなり、飛来するミサイルのすべてを街でも滞空するヘリにも当てることなく、上方に散開させた。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 線路の途中、勇魚は線路から飛び降り、そのまま敵機に向かって跳躍する。
 スライド移動で加速が乗ったその体はまるでカタパルトから打ち出されたように高速で飛来し、一気に大型機兵に肉薄する。
 機械化兵は咄嗟に、自己防衛のため電磁障壁と共に防御外殻を展開するが……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「遅い――――!」

 右手を伸ばす。前へ。
 磁気を持つ物体は、高度な熱量に晒されることでその磁性を喪失する。
 咄嗟に展開した磁圧防壁は、しかし一秒さえその進行を留めることなく、鉄壁の防御を粉々に粉砕する。
 

SYSTEM :
 ドォン、と。激しく、大地を揺らすが如き重々しい響きと共に。
 磁圧防壁の上から、その矮躯の繰り出した掌撃が貫通して直撃した。
 15から20mはあろう大型機体が大きくバランスを崩しかけるほどの衝撃と共に
 叩きつけられた右腕は敵機体の装甲を赤熱させ、溶解させていた。

SYSTEM :
 あなたが降下地点に到達するまでの八秒弱。
 その一撃によって、機体は致命的な隙を晒しながら、ゆっくりとあなたの降下する方角へ。
 

SYSTEM :
 示し合わせたように降下ポイントにその機体が降り立った。
 あとは、やるべきことを、やるだけだ。

機械化兵 :
 目の前まで迫った機械化兵。姿勢を崩しているといっても、何といってもその巨体と暴力性は健在だ。ただ伸し掛かるだけでも、並のオーヴァードならば拉げて終わりだ

機械化兵 :
 だが、此処までお膳立てが済んだならば。
 そしてあなたならば、打倒することはそう難しくないだろう。
 ただ、その身に宿る力を、ありのまま振るえばいい。

灰院鐘 :
「わあ……」

 適材適所とは言ったけども。
 役割分担とは聞いたけれども。

 すごいなあ、と素直に感想をもらす。

灰院鐘 :
 赤々と溶融した装甲は、外気による冷却では追いつかないらしい。傾き、倒れゆく機体の表を鋼が固まりながら滴り落ちていく。
 巨大な頭部まるで差し出されるように、目前へ。降りかかる巨影は隕石のようだ。

灰院鐘 :
「よし、それじゃあ──」

 やるべきことをやろう。
 今ここに立つ意味を果たす時だ。

SYSTEM :
 しかし、勇魚の一撃で大幅に装甲を消耗し、オーヴァードとしての稼働能力を削られてはいるものの……
 その機体は、EXレネゲイドを動力としている。必然、その装甲にもレネゲイドによる自己再生能力が備わっている。
 ならば、多少消耗していようともその身は動くのだ。

機械化兵 :
 《甦生復活》による予備電源によりREBOOTしたその巨躯が、接近する敵に対する危機感から反撃を開始した!
 

機械化兵 :
 接近するエージェントに対して、異形の多機能マニピュレーターを大振りに振るう。
 そのアームに装着された、高周波振動するあまりに巨大なブレードが、まさに斬り潰さんとして襲い掛かる!

SYSTEM :
【Action!】

 防御判定が発生しました。
   内容:機械化兵ジャームの攻撃を防げ!
 成功条件:以下の判定を行い、いずれかの条件を満たす
     ●エネミーの攻撃判定に対して任意の<白兵><射撃><RC>技能を使用し、対抗判定を行い勝利する
     ⇒失敗した場合のみ、振られたダメージ計算を行い、戦闘不能にならない。

機械化兵 :16dx7+4 高周波振動バイス (16DX7+4) > 10[1,1,1,2,3,3,3,3,3,4,5,5,5,7,8,10]+10[3,5,7]+10[10]+10[10]+10[9]+5[5]+4 > 5

灰院鐘 :〈白兵〉で挑もう がんばるよ

GM :了解!判定をどうぞ!

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 10[1,1,2,3,7,9,10,10]+7[4,7]+1 > 1

GM :失敗!だが、これは仕方ない!

灰院鐘 :うん、こればっかりはしかたない!

GM :では処理に則り、今度はさっき出した攻撃判定が命中した体で、ダメージ算出を行います!
これをガードで耐久出来れば、判定は成功となります

灰院鐘 :こっちは得意分野だ。まかせて

GM :流石にガード屋、自信がおありで
では喰らえぃ!

機械化兵 :6d10+9 (ガード値に-5) (6D10+9) > 30[8,6,1,10,3,2]+9 > 3

GM :ダメージは39 そして アームブレードの効果でガード値は5減ることとなる
これに対して、通常と異なり後からガードとその際に使うエフェクトを使用できるのだけど

GM :HPで受けるか、ガード値を上げて防ぐか、選ぶと良い

灰院鐘 :さいわい死なないしそのまま受けてしまおう

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 58 → 31

灰院鐘 :支給された装備の効果を適用しても構わないかな。アリベイトスーツでダメージを軽減したい

GM :それがあった!了解です!

灰院鐘 :ありがとう

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 31 → 36

GM :流石の硬さ!難なくクリアだ!

SYSTEM :振り下ろされたブレードを防いだ"ラフメタル"。
咄嗟の反撃で、遂に致命的な隙を露呈した。
一気に接近し、その拳を基部に叩き付ければ、任務は完了だ。

SYSTEM :
【Action!】

 判定が発生しました。
 
   内容:機械化兵ジャームを沈黙させる
 成功条件:「①」「②」のどちらかを満たす
    ①:任意戦闘技能を使用した20↑のダメージ
    ②:判定の成功⇒白兵or射撃orRC:15↑
 特殊ルール:勇魚=アルカンシエルの支援により以下のいずれかを使用できる
 ・ファイアドライブ:攻撃力を+10
 ・バディムーブ:判定後、固定値を+3

灰院鐘 :では今回も〈白兵〉で、勇魚くんのバディムーブもお借りしよう

灰院鐘 :うん、さっそくだけど助けてほしい!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :落ち着いてください。私の《バディムーブ》は『判定後』に加算を行います

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :つまり振ってから、足りない分を加算することが出来る、ということです。
先ずは振ってから。必要ならば、私がフォローします。極力自力で解決しましょう、助け合いは重要とはいえ

灰院鐘 :ううっ……おっしゃるとおりです……

灰院鐘 :では気を取り直して──

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 9[3,3,3,5,6,6,7,9]+1 > 1

灰院鐘 :……どうしよう!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :《バディムーブ》では難しそうです。
此処は《ファイアドライブ》で攻撃力を加算します。そのまま打点で突破しましょう

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :加算される攻撃力は+10。
2d10で10以上が出せるなら、十分打倒できる筈

灰院鐘 :歳を取って経験を積んだら自信持って挑める気はするんだけどなあ 

灰院鐘 :とはいえ仕方ない がんばってみよう

灰院鐘 :2d10+10 (2D10+10) > 8[1,7]+10 > 1

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :……

灰院鐘 :……うん! ごめん!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :うん、じゃない! 来ます、第二波!

SYSTEM :NPCカード:勇魚=アルカンシエルの
《ファイアドライブ》を使用しました
このラウンド中の攻撃力を+10します

SYSTEM :エネミーに18ポイントのダメージを与えました。

機械化兵 :――――――――

SYSTEM :
【Action!】

 防御判定が発生しました。
   内容:機械化兵ジャームの攻撃を防げ!
 成功条件:以下の判定を行い、いずれかの条件を満たす
     ●エネミーの攻撃判定に対して任意の<白兵><射撃><RC>技能を使用し、対抗判定を行い勝利する
     ⇒失敗した場合のみ、振られたダメージ計算を行い、戦闘不能にならない。

機械化兵 :16dx7+4 (16DX7+4) > 10[1,1,1,1,3,4,4,4,6,6,7,9,9,9,10,10]+10[1,5,7,7,9,10]+10[3,5,9,10]+4[3,4]+4 > 3

灰院鐘 :……〈白兵〉で! 守りに入るのはそれからだ

GM :了解!判定をどうぞ!

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 10[1,2,2,5,6,7,9,10]+10[10]+6[6]+1 > 2

GM :間が悪い・・・・・上振れ方が……

灰院鐘 :困ったなあ

GM :ではダメージ判定!

機械化兵 :4d10+9 (4D10+9) > 31[8,6,10,7]+9 > 4

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :……仕方ない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :NPC:勇魚=アルカンシエルが《閃熱の防壁》を発動しました。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :5d10軽減します。

灰院鐘 :ありがとう!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :5d10 閃熱の防壁 (5D10) > 12[1,1,2,5,3] > 1

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :少々出目は振るいませんでしたが。これでなんとかしてください

灰院鐘 :じゅうぶん助かるよ。気を落とさないで

灰院鐘 :では今回も装備の力に頼ろう。アリベイトスーツの装甲値とクリスタルシールドのガード値にアームブレードのマイナスを適用して……

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 36 → 25

灰院鐘 :うん、まだまだ大丈夫そうだ。ありがとう、勇魚くん

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :礼は、あれを仕留めてから受け取りましょう

SYSTEM :
【Action!】

 判定が発生しました。
 
   内容:機械化兵ジャームを沈黙させる
 成功条件:「①」「②」のどちらかを満たす
    ①:任意戦闘技能を使用した20(残り2)↑のダメージ
    ②:判定の成功⇒白兵or射撃orRC:15↑
 特殊ルール:勇魚=アルカンシエルの支援により以下のいずれかを使用できる
 ・ファイアドライブ:攻撃力を+10
 ・バディムーブ:判定後、固定値を+3

灰院鐘 :三度目の正直ならあと一回必要だけど、二度目でなんとかしたいところだ 素振りでいくよ

GM :了解!判定をどうぞ!

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 10[2,4,4,6,7,8,9,10]+10[10]+3[3]+1 > 2

GM :跳ねた!ここで!!

GM :②の条件を達成したため……

GM :ダメージ判定を行うまでもなく、打倒!

灰院鐘 :よし! ……いろいろあったけど!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :当然です。一先ずはこれで、無事任務は完了ですね。

灰院鐘 :
 高周波振動ブレードとは言うが、そも担い手が規格外だ。振るう獲物も重量とパワーだけで強引に押し切れそうなところへ、威力の上乗せ。
 だからこそ、"斬る"と"潰す"が両立する。崩れた姿勢からの一撃だろうと、そこに出力の低下は見られない。

灰院鐘 :
 ない、が──
 重くて頑丈なのは、お互い様だ。

灰院鐘 :
 上段から振りあげられたブレードを受ける。守りは一旦思考の外。ここで吹き飛ばされでもして、距離が離れるほうが厄介だ。
 抱えこんだ鋼の塊を起点に、全身の発条を使って身体を持ち上げる。着地点は問題ない。目の前にあるこれが、そうだ。

「よい、しょ……!」

 踏みしめた傍から焼けていく足と、断裂する神経が、瞬時に再生していくのを感じながら、ブレードの坂を駆け上る。
 目標めがけて一直線。あいにくと知っているやり方の中で、向いてるのはこれだけだ。

機械化兵 :
 振り下ろされる大質量。斬り潰す鋼の巨刃は、そのサイズからして敵戦車や列車砲、固定砲台といった防衛設備をシールドごと粉砕する要訣で装備されているものだ。断じて人に向けるものではない。
 咄嗟の攻撃であるならば先頭に備えた機銃掃射で制圧射撃に出ればよい。確実ではないが、それで事足りるものだ。
 それをしないのは……相手がどれだけ人間離れした容姿をしていても、鋼の殻を向けばその中には人間がいることの証左だ。
 

機械化兵 :
 人のみが持つ残虐性、その発露であり、
 危機に駆られた人間故の反応でもあった。

 先の闘いで、肉薄した白兵エージェントを一撃で黙らせた過剰火力の一斬が、今男の体を斬り潰す。
 一個人に向けられるには、あまりに巨大な暴力の塊。その筈だった。

機械化兵 :
 しかし……
 電子化された神経回路を伝って、機械化兵が鉄のゆりかごの中で眠る脳が、違和感を感じ取る。

機械化兵 :
 センサーを伝って確認する。
 男は、振り下ろしたブレードを両手で受け止めていた。
 地面のアスファルトがひび割れ陥没する中で、男は振り下ろされたブレードを受ける……のみならず。

 振り下ろされ、地面に突き刺さった状態のブレードに飛び乗って、一気に基部へ近付いてきた!

機械化兵 :
 すかさず頭部の機銃で掃射を試みるも、照準が定まらない。
 先の勇魚の打撃による熱でバレルが湾曲していたのだ。結果、着弾すれば生身の人間なら掠めただけで削り飛ぶ20㎜の殺意の雨も、いずれも男を捉えることはない。

機械化兵 :
 最早阻むものはない。後はこの拳を基部にたたきつけ、一気に機能停止まで追い込むまでだ。

灰院鐘 :
「────」

 手にした武器を振るう。人の動作、人の思考、人の反応。
 彼あるいは彼女は、一皮剥けば自分とそう変わらないことを再認識する。意識の容れ物が鋼か骨か。違いはそれだけだ。

灰院鐘 :
 ──だから、変わり果てた姿よりも。
 もう元に戻らない心を想うほうが、悲しかった。

灰院鐘 :
 追撃はない。鋼も肉も、熱に弱いのは同じ。一瞬投げた視線の先に、床に落とした飴細工のようになった機銃を見た。

 おかげさまで接近は容易だった。そして、近づいてさえしまえば後はもっと単純だ。
 お膳立てされた通り、露出した回路を破壊するだけでいい。

灰院鐘 : 
「痛まないといいけれど」

 拳を振りかぶって──いつもなら、それで済む。

灰院鐘 :
「……あれ」

 だが前提として、
 いつも通りの相手ではなかった。

 さすがに機体の要、とりわけ重装甲だ。あるいは此方の技量不足。
 ともあれ力任せの一撃二撃で陥没はしても、内部にまで衝撃が届いているという実感がまったくない。

灰院鐘 :
「──勇魚くん! すまないけど、ちょっと手を貸してほしい!」

 音の暴嵐──機械の駆動と銃撃と、それから爆発も混じっている──に負けじと声を張り上げる。
 ……叫んでから合図は電波でという話だった気がしてきたけどれど、たぶん届くだろう!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……全く呑気な」

 言いつつ、射出された状態から着地した勇魚が地面に手をつく。
 座標計測をコンマ数秒で終わらせ、すかさず右手を稼働させる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
  コンダクション
「《 奔 れ 》──」

 熱は分子の震動。分子結合が存在するいかなる場所にも伝導する。
 勇魚の足元から地面を伝い、地面から機械化兵の身体を伝い、そしてその上に乗るあなたの体に伝う。
 熱伝導第二力学の法則を無視して指定座標を輻射波動により熱を帯びさせる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 帯びた熱は両腕を白熱させ、身体を炎の如く滾らせた。
 勇魚の白熱する右腕に似た熱拳が双手に宿る。その掌が鋼の外殻を容易く打ち破るのは、先に実証した通りだ。
 しかし、打ち所が悪い、或いは撃ち込む手に躊躇いが乗ったならば、或いは……

灰院鐘 :
 腕に熱が灯り、輝きを帯びた。自然の摂理に反した熱の伝播は精密なレネゲイド操作の賜物だろう。

「……! ありがとう!」

灰院鐘 :
 これならばと灼熱を宿した両拳を組み、一息に振り降ろす。やっと手応えを感じるが、同時に直感する。まだ足りない、と。

「じゃあ、もう一回だ」

 再度振りかぶって──降ろしきるまでの間に、時間をかけすぎている、という理解が脳裏を過った。

機械化兵 :
 再び振り下ろされる灼熱の拳。双手を合わせ、力任せに振り下ろす。
 ただそれだけの所作。しかし……鍛え抜かれたキュマイラ・シンドロームが齎す膂力は計り知れない。

機械化兵 :
 鋼が大きく揺らぐ。
 まるで首を垂れるように、頭部を渾身の力で強打された機械化兵が地面に叩き伏された。
 殴りつけた鋼は陥没し、熱によって溶解する。が……まだ対EMP用のシールドを物理的に破るには至らない。その両手から走る電磁場に誤作動を起こさないのがいい証拠だ。

機械化兵 :
 もう一度……そう思って手を振り被るあなたの脳裏に浮かんだ懸念は、まさにそれを想起したと同時に結果となって起きた。
 頭部を強打されるも、戦闘AIは電子音を盾乍ら稼働し、理解より先の反射の域で反撃を開始していた。

機械化兵 :
 最初に勇魚が伝えたように、機械化兵の武装はミサイルポットが八門、アームブレードが二本。それぞれ双腕に搭載されている。
 今、追撃を防ぎ、凌いだのは一本に過ぎない。まだもう一本、鉄の殺意は息吹を残している……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そんな悠長に敵が待ってくれるわけがないでしょう──!
 来ます、第二波!!」

 言うが早いか、すかさず《閃熱の防壁》を展開。大きく踏み込んだことで地面に罅が奔り、あなたと機械化兵の左腕の前まで延びる。
 そのはざまから、噴火のように炎の壁が噴出した。

機械化兵 :
 虚を突く形で振り抜くブレード。しかし炎の幕を前に、振り払う動作で横薙ぎに払われるアームブレードの軌道が歪む。
 受け止めるでなく軌道を変える程度、しかし勢力を殺ぎ、必殺の威力をある程度削るには十分な干渉だった。

灰院鐘 :
 傾ぐ機体、熔けた装甲。だがまだ終わっていない。今この場に相互理解があるとすれば、その一点に尽きる。

「おっ──と!」

 飛ばされる叱咤と、続いて飛来する鋼と炎。一方は先んじて到達した護りの手であり、もう一方は抗いからくる攻めの手だ。

灰院鐘 :
 舞い散る焔を振り払って、巨大なブレードが迫る。咄嗟に受けるだけではひとたまりもないが、軌道の撓んだ一撃だ。

「これなら……なんとか!」

 ぎりぎり死なないくらいの感じで、耐えられる!

灰院鐘 :
 ──この身には。鋼で組み上げられた外骨格も、分厚く核を護る複層の装甲もない。
 あるのはただ、生身の肉体だ。血が巡り、膚に覆われた身体。だが頑丈だ。

灰院鐘 :
 横薙ぎの刃を、伸ばした両腕で抱えこむ。足場にした装甲が陥没し、支えそのものである脚は破壊と再生を秒速で繰り返した。
 問題ないし、心配もない。治るのは生きている証拠だ。だから──

「う、お、おおおおッ──!」

 丹田に力をこめて、受けとめたアームブレードを全身の筋肉で押し返す……!

灰院鐘 :
 ふっと開ける視界。ブレードが後方へ押し戻されたのだ。あの巨体にしてみれば少し弾かれた程度だろうが、十分だ。

「っ……どう、かな! その身体になってから、力比べするとは思わなかっただろ」

灰院鐘 :
 腕に残る熱が、急かすように温度を高めた──気がした。誰にともなく頷き、駆け出す。この僅かな隙が、互いの分水嶺だ。

「それじゃあ今度こそ」

灰院鐘 :
「近づいて──」

 陥没し、焼けた鋼に再度挑む。
 引いた肘を、ぎりぎりと引き絞った。イメージは杭打機。解き放たれる瞬間を今か今かと待つ力を、限界まで溜め込んでいく。

 そこに高等な技術も、複雑な計算も存在しない。
 単純単色、極めて原始的な能力の運用。
 極めつけは熱という絶対的な火力の乗算。

 これなら、と二度目の意気込み。先と違うのは圧倒的な確信だ。

 だから──あとは。
 破壊の一撃に、
 必要な一手を載せるだけ。

 複雑に組み上げられた電子の防壁を突破する、
  セキュリティカット
 問答無用の無知なる雷を!

「──ズドン、だ……!」

機械化兵 :
 振り払うように薙ぎ払ったアームブレード。
 その軌道を曲げたとはいえ、掠めただけで容易く人の体を挽肉に出来るだろう。
 純粋な物量と、駄目押しの高周波振動。それは巨大なチェーンソーに等しい。

機械化兵 :
 だが、それが巨人を打ち払うことはなかった。
 豈図らんや、荒唐無稽なことに、男はしっかりと両足を固定した上で、振り抜かれたアームブレードを受け止めている。

 超高速で脚部の再生と破壊を繰り返しながら、これに堪えているのだ。
 

機械化兵 :
 義体化したジャームである脳部は、センサーによって対象を捉えていた筈だが、その正体を正しく認識出来てはいなかった。
 身長、体重、体温、レネゲイドパターン。それらを掴んでいても、叩けど殴れど一向にその命脈が尽きない。
 常ならば病葉の如く蹴散らし、再生限界にまで追い込んできた無敵無双の刃が、文字通りに歯が立たぬ。

機械化兵 :      マ シ ナ リ ー
 そう、この機械化兵は判断を誤った。
            スケール
 自らが相手取る敵性体の規模を。

 これは人に非ず、巨人……巨人の生命力を持てる、生きた巨壁であることを、この期に及びようやく理解した。

機械化兵 :
 しかし理解した時には、既に遅く。
 横薙ぎに振ったアームブレードは、しかし力勝負で敗れ去る。超重量を誇る斬艦刀が、人型に押し返されるという不条理。
         レネゲイド
 だが条理、摂理に抗う力こそ、このオーヴァードという存在の本質だ。
 人として群を為し、規律によって統制する軍隊と異なり、彼らは寡兵であるが故に道理を捻じ曲げるだけの力を発する

機械化兵 :
 右腕のアームブレードは初撃で地面に埋まり、左腕は押し返され関節を歪ませ稼働が困難となる。
 両腕に搭載した刃がこの瞬間、漸く機能を停止することとなる。

 その致命的な後隙に。

機械化兵 :           パイルバンカー
 再度、拳が引かれる。杭 打 機を思わせるように、体を弦として引き絞る。
 今度こそ仕損じぬように念入りに貯められた力が、今……

SYSTEM :
 最後の一撃として叩き込まれる。
 計算も技術もない、力任せの一撃。
 しかし白熱した腕は、最後に残った装甲を容易く貫き。その膂力で弾き出された拳はその巨体を震駭させるには十分だった。

機械化兵 :
「縺薙?√%繧薙↑縺ー縺九↑窶ヲ──!!!」

SYSTEM :
 それは断末魔の咆哮だったのか。
 ただ単に装甲を拳で打ち破っただけでは、こうはならない。動的に回路をも自己修復する生きた鉄の獣と化したこの機体は、そうたやすくはいかない。
 そうでなければ先遣隊を蹴散らすことはできなかっただろう。だが……

SYSTEM :
 拳が直撃する瞬間。打撃の際、発していた"ラフメタル"の《セキュリティカット》の紫電が基部から各神経に通う電子回路を伝って疾走する……!
 

SYSTEM :
 本来ならEMPに対するシールドを基部に搭載しているため、この程度の干渉で機能が停止するはずがないが……
 此処まで走行をはがされ直接回路に流し込まれた場合、また本体が強い損傷を受け既に行動限界に近い場合は話が別だ。

SYSTEM :
 一斉に機器系統がショートし始め、計器が一斉にアラートを吐きだす。
 断末魔の如き機械音は、その影響で漏れ出たエラー音声だった。
 暫し狂ったようにその体を揺り動かすも……

SYSTEM :
 程なくして、ズシン……と、その巨体が機能を停止する。
 予備電源に切り替わる様子もない。
 

SYSTEM :
 そして巨体が頽れて間もなく、背面装甲のハッチが開く。
 廃熱機構がバグを起こしたのか、或いは脳部が咄嗟の判断で離脱を試みるために緊急で開いたのか。
 開いたハッチから、脳部を収めたカプセルと……

SYSTEM :
 黒白に輝く立方体がひとりでに排出された。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 それを確認するが早いか、勇魚はイヤーカフスに手を当て通信機器の周波数を都市上空のオペレータに合わせる。

「稼働部に搭載されたEXマテリアルRS492、摘出を確認!
 至急、簡易封印用マテリアルボックスを!」

SYSTEM :
 言うが早いか、滞空していたコンバットタロンの降下ハッチからアタッシュケースのような何某かが射出される。
 それを空中で受け取ると、内部の回収器具を取り外した勇魚は、その内のアームを素早く操作し、直接接触することなくキューブを掴み取った。

灰院鐘 :
 尾を引く断末魔は、すぐにもアラートに搔き消される。激しく揺れる身体は死に損なった人の姿に似て、すこし心苦しい。が、それも僅かのことだ。
 機能を停止して、今度こそ機体が大地に沈んだ。

灰院鐘 :
 あとは一瞬だ。手際良く処理していく皆をぼんやりと眺めて、はっ、と意識を引き戻す。
 傾いた機体の上を損傷部や熔解の痕を使って登攀して、のそのそと勇魚くんのもとへ。

「……今のが、例の?」

 動力源のEXレネゲイド──だったか。それにしては、なんというか。ころっとしていてかわいげがある。

SYSTEM :
 それを複雑な機構を持つアタッシュケースの中に収める。
 箱を蒐集したケースは二重三重に外気から隔離するようにキューブを格納する。
 最後に、金属音を立てて箱にロックを掛けて、終了。

 危険物を収納するように、『キューブ』は厳重に収められた。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「暴走ジャームの鎮圧、及びにマテリアルを回収。任務完了しました。
 こちらをフランスの探索局まで運送を願います」

 イヤーカフス越しの相手……恐らく遺物回収のため同伴した探索局のスタッフだろう……に一報し、一息つく。
 どうやらこれで仕事は完了したのは間違いないらしい。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……はい。お疲れ様です、エージェント"ラフメタル"。
 先に蒐集したのが動力と成るEXレネゲイド
          シ ー ラ ー          マテリアル
 今回、遺物探索局の封印者が派遣されるに至った物質です」

灰院鐘 :「うん、おつかれさま」

灰院鐘 :
「見かけは案外ふつう……でもないか、光ってるし。でも、あまり危険そうには見えないものだね。
 それとも君みたいな、その筋の人には分かるものなのかな」

灰院鐘 :そのあたりどうなんでしょう、と先輩に教えを乞う。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「確かに見た目ではそうかも知れませんが……
 これもまたレネゲイドに感染したマテリアル。EXレネゲイドと呼ぶものです。
        レガシー
 わけてもこれは遺産と呼ばれる、その中でも現存するレネゲイドより過去に存在したオールド・レネゲイドによって鍛えられた遺物……」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「の、模造品、いや複製品です」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ただ複製品と言え、つい先ほどまであの機械化兵の動力源として動いていた事実を加味すれば、その脅威の程が分かるでしょう」

灰院鐘 :
「複製品? ……すごいな」

 紛い物でああなら、実物はもっと──いや、それも現に目の当たりにしたけれど。

灰院鐘 :「……ええと」

灰院鐘 :
「回収して終わり、という話でもないだろう。複製元だとか、出所だとか、技術の確立だとか、気がかりはたくさんだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そうですね。
 FHセル『グリーン・リヴァー』は、UGNの調べの上では大したコネクションもなければ、規模も所属戦闘員が十数名、ネームドが約四名程度の、州全体からしても平均的な研究セルでした。
 地方のアラスカ支部が支援を要請する程の勢力ではなかった」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そうした勢力が、ここ最近急激に技術力と物資を得て、台頭している。
 今回の件もその一件である可能性が高い」

灰院鐘 :「……根が深そうだ。何より困る。あんなのがばら撒かれたら、アメリカ中が焼け野原だ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「こんな代物を、アメリカの片田舎で燻っていた程度のセルが手に入れられるとは思えません。
 やはりこれも"シャンバラ"」

灰院鐘 :「……"シャンバラ"」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「近年台頭した、アメリカ合衆国の闇社会を牛耳る国際的大型シンジケートです。
 非常に広範な販路と豊富な物品、現政府ですら持ち得ないR関連技術、そしてその開発の為の物資。
 それらを深層ウェブ上で売りさばき、暴利を得ていると言います。恐らくグリーン・リヴァーもそこから研究に関する技術、物資を仕入れたと予想できます」

灰院鐘 :「つまり大元の彼らを何とかしないことには解決しないわけだ」ざっくりと単純化。うん、分かりやすい。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そうできれば、或いは苦労はなかったでしょう」

灰院鐘 :

灰院鐘 :……やっぱり?

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……合衆国は移民の国です。だからこそ巨大な国を50もの州に分けた。
 そして州に応じた法律が策定されている」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「我々UGNには、州を越えて権限を行使する法的バックアップが出来ていません。寧ろ支部の活動が認められている州の方が少ないぐらいです。
 合衆国の何処かに拠点を置いているとしても、異なる州に逃げられれば、あくまで民間企業に過ぎない我々の手が届かない」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ルイジアナ、フロリダ、ミシガンなどは特に闇社会を通じて、北米FHの残党が逃げ込み拠点としているといいます。
 恐らくその何処かにシャンバラの拠点も敷設されている筈ですが、それが仮令分かっていたとしても手出しできない」

灰院鐘 :
「こっそり強引に、というわけには──いや、すまない。軽率だった」

 できるなら、そうしているだろうし。
 できない理由があるのなら、"そうしたくてもできない"が結論だ。

灰院鐘 :「困ったな。合衆国のほうがずっと広大なのに、日本より窮屈に感じる」

SYSTEM :
 途中で言葉を止めたのは、理由の幾らかに気付いたからか。
 UGNが強引にそうした手を取れないのは、当然ながら今後の国際的活動に支障をきたさないためだ。
 時間をかけた慎重な交渉を続けている最中、幕下のエージェントの勝手な行動が軋轢を生じさせることは、それら歩みよりの足が一気に遠のくこととなる。

SYSTEM :
 日常を寄る辺とする以上、生存権の基盤である国家に法的に認められることは避けては通れないのだ。無論、それとて手段を選ばなければ、洗脳なり虐殺なり理屈を通すやり方は幾らでもあるだろうが。
 それではいよいよFHのような危険思想を持ったテロリストと同じだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「勿論、指をくわえて見ているばかりではありません。
 このテロ組織の台頭に対して、米政府も重い腰を上げようとしている」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「米軍主導の国際テロ組織対策として、米軍所属の対レネゲイド特殊部隊と合同の"シャンバラ"掃討作戦の準備に取り掛かっています。
                   アドバイザー
 我々はUS.SOCOMの指示の元行動する協 力 者として、限定的に州法を超えた武力の執行を許可されます」

灰院鐘 :「現地の人と協力するなら、上も安心してくれるというわけだ。……そのわりにはあんまり浮かない顔だけど」君が。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……いえ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「その試用の為にあなたとの共同作戦を今回実施して、頗る不安が増して憂鬱なだけです。お気になさらず」

灰院鐘 :「う」

灰院鐘 :「返す言葉もありません……」

灰院鐘 :「うん──でも、さっきは助けてくれてありがとう」

灰院鐘 :「さっそく迷惑をかけてしまったのは不徳の致すところだけど……僕は君に会えてすごく嬉しい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「おだてても訓練の手は緩めませんよ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ですがまあ……此処は。
 素直に受け取っておきましょう」

灰院鐘 :
「うん、是非そうしてほしい!」
 もっと強くなれるのも、言葉を受けとってもらえるのも、どちらも喜ばしいことだ。

灰院鐘 :「……そういえば」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :「まだ何か?」

灰院鐘 :
「複製品と言えど、遺産は遺産。それは今日の一件で十分分かった……つもりだ」

 だからこそ、思うところもある。

灰院鐘 :

灰院鐘 :「遺産そのものと繋がりを持っている──ええと、契約って言うんだっけ。その状態にある君にかかる負担は、僕には想像もつかないものだ」

灰院鐘 :
「だから、助けになれたらいいと思うんだ。僕がそうするように、君にも僕を頼ってほしい。

 ……さっきの今じゃ説得力に欠けてしまうのは反省点だけどね。次に活かすとするよ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……」
勇魚はややどう応じたものか迷ったように、右手を開いて、掌を見せながら訥々と語り出す。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 コレ
「遺産は……特に強大なものは、それら自身の意志で契約者を選ぶといいます。
 道具が意思を持つというのはイメージし難いかも知れませんが……彼らは意志持ち、対価と共に常軌を逸した力を与えるもの。
 力の対価と共に」
 尤も力の対価を要求するのは、何も遺産に限る話ではありませんが、と付け加えて。

灰院鐘 :
 ……ちいさな手のひらを覗きこむ。大型機械化兵のミサイルを防ぎ、磁性障壁をたやすく突破するほどの火焔を操る手。

「力の……対価」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私はあなたと違う。だから、同じ土俵にはきっと立てない。
 でも、それでいい」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私は私の、あなたはあなたの為すべきを為し、任を全うすれば、それでいい。
 組織とはそうあるべきものです」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 どこか曖昧な、はっきりと答えることを拒むような、そんな暈した答えを返しながら、開いた手を握る。
 

灰院鐘 :
「そっか。それじゃあ、なおさら頼ってもらえるようにがんばらないと」

灰院鐘 :
「どうあるべきとか、何を為すべきだとか、あんまり考えたことはないんだ。それを決めるのが僕である必要も、さほどないし」

灰院鐘 :
    ・・・
「でも、君たちのことは好きだ。好きだから、助けになりたい。
 ……うん、そうだな。為すべきことは分からないけど、それが僕のやりたいことではあるんだろう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「道理で能天気に構えられるわけです」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「でも、確かに。"兵士"とは、そうあるべきなのかもしれません」

灰院鐘 :「そうかな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は何度目か分からない心底呆れた表情で男を見つめた。
 もう熱感知を一々挟むまでもなく、それが本心であると察していた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ある種、ムズ痒さを感じるような博愛と、暴力を振るうに適した体。
 才能を秘めながらも、本当に、彼は平和な場所からここまで降りてきたのだろう。
 勇魚は、それが猶の事、自分とは違う人間という実感を感じずにはいられなかった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ……ふと、何かを口にしようとして、やめた。
 素朴な疑問だが、詮索してどうするということもない。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ですがそのスタンスは、極力避けるべきです。
 ・・・・・・・・・・
 私たちに与えられた任を考えるなら」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「次に戦線を共にするのは、私たちに限る話ではありません。彼らは勿論、我々の支援にやってくるという協力者も」

灰院鐘 :
「いろんな人と会えるのはいいことだよ。こっちの挨拶はハグなんだろう? ずっと楽しみにしてたんだ」

灰院鐘 :というわけで一回どうだろうか。両手を広げてみる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……あの珍妙なコードネームの名の通りに抱擁して回るのだけはやめてください」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 結構です。のハンドサイン。

灰院鐘 :いいと思ったんだけどなあ、"フリーハグ"……実用的だし

灰院鐘 :しょん…… おとなしく腕を引っ込めよう

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「どのあたりが実用的なのか理解に苦しみます。精々文字数が少なくて呼びやすいぐらいでしょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「というか、警戒するようにという話を先程したつもりなんですが」

灰院鐘 :「意思表示だよ。いつでもどうぞ! っていうね」

灰院鐘 :「まあまあ。僕が気をつけて何とかなるくらいなら、最初から問題ないし。僕がだめでも、君が気付くだろう?」

灰院鐘 :「なんとかなるよ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………はあ。
 どうして教官は、こんな人とバディを……」

SYSTEM :
 ……以上が、米軍にて共有された大型ジャーム討伐の顛末であった。

SYSTEM :
 本部付派遣エージェント、"ラフメタル"と"炎神の士師"。
 軍隊とは異なる方向性で、その牙を研いだ精鋭たち。日常の裏側を守護する者。

SYSTEM :
 未成年という未成熟さと、それに見合わぬほどの力を秘めた二人は、これより数か月後、『PARADISE LOST』作戦に投入されることとなる。

SYSTEM :
 ──遺産は人を狂わせる。

 遺物探索局において、戒めの如く語られる言葉がある。

SYSTEM :
 望むにしろ、望まざるにしろ。
 彼らは、それを否応なく見せつけられることとなるだろう。
 『運命』が導く、その先に何を見出すかは、まさしく神のみぞ知ることだろう……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【OP③ 見えざる手-Tinker-】

SYSTEM :
【OP③ 見えざる手-Tinker-】

登場PC: Blue Dickinson
登場侵蝕:あり

GM :では登場時の侵蝕どーーぞ

ブルー・ディキンソン :はぁい

ブルー・ディキンソン :1d10 (1D10) > 1

GM :ぶわあああああああ

GM :たっけえ

ブルー・ディキンソン :あらら興奮しちゃってる〜

GM :バチバチに興奮してますな

system :[ "雷霆精"ブルー ] 侵蝕率 : 44 → 54

ブルー・ディキンソン :ま、出ちゃったもんはしょうがない。イカサマサイコロじゃないもんねぇ。

GM :1!1!1!!!!通るかこんなもん!!!!!!!(10にする

ブルー・ディキンソン :ノーカンっ・・・! ノーカンっ・・・!

ブルー・ディキンソン :はい。

SYSTEM :
【Information更新!】

エフェクト:RHO効果が発動しました。
 効果:▇▂▅█▂▇▇█▇▂▅█▂▇▇█▇▂▅█▂▇▇█

SYSTEM :
周波数 XXXX
地域特定不能

  :
 縺帙$縺ョ縺倥£縺槭≠縺上#縺ヲ縺悶♂縺倥o繧弱??繧峨?縺帙?縺九?縺ア縲?縺?m繝シ縺上n縺ォ縺壹←縲?縺槭≠縺ョ繧医♂縺槭k

  :
縺懊↑縺ョ縺ャ縺?〒縺壹∋縺ョ縺イ縺ュ縺壹?縺ォ縺阪※縺ゥ縺?n縲?縺懊b繧?℃縺ョ縺槭≠縺ョ繧医♂縺槭k
繧偵△縺壹?繧カ繝シ繝後ヰ繝シ繝」縺イ縲?繧カ繝シ繝後ル繝シ繧ョ繝シ縺

  : 縺ァ縺代?繧コ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺弱l繝ゅ?繧オ繝?ル縺ォ縺ュ繧弱?縺イ縲√ぇ繝、繝ュ繧ョ縺ア繝阪モ繝ュ繝シ繝サ繧ッ繝ョ繧コ繧・縺ォ縺?♂縺壹§縺ゅ℃縺ア繧?●繧?▲
 繧?〒繧後?繧ゅ¥繧後=縺弱£縺セ縺倥o繧上?縲√ぜ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺イ縺倥∞縺壹h縺峨e縺偵?繧翫♂縺√△縺ヲ縺槭∞縺懊n縺」繧舌♂

  :
 繧√◎縺イ縺弱?縺帙j縺ア縺?≠縺溘≠縺√℃縺偵∪縺壹←縺セ縺壹∞
 縺阪※縺ゥ繧コ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺ョ縺弱≠縺懊n縺帙j縺峨∪縺峨=縺?縺峨★縺ゅ●繧弱?

ブルー・ディキンソン :
 とん、とん、とん。
 こめかみを指で叩きながら、脳に直接インプットした内容を反復させる。
 乙女の神聖な領域たる頸から伸びている細いLANを介して、電気信号の一つ一つを読み取っていく。

 ──これは代理人を通した"ネタ"の到来である。

「……、……、……」

 外界から隔離された空間の中で、ただひたすらに電波の音だけが耳に聞こえてくる。

ブルー・ディキンソン :
「いやいやいや……」

 笑みを浮かべたいくらいだ。
 実のところ、ここ最近は資金に困っていた。
 数少ない従業員の給料を払ったりしてると、随分と懐が寂しくなっていくのだ。
 世知辛い世知辛い。

「アングラの更に下だ、おんもしろそ〜」

ブルー・ディキンソン :
 TTTT……、
 キーボードを通して電波に乗せた"音声"を向こうへ送る。
 傍受される心配はない、これらは複雑な暗号を介して送られているものだ。
 軍の敷地内でお電話しても、誰にも聞かれることのないホットライン。

 Yes.
 "承諾!"

 一言、それでいい。復唱の必要もない。

  : 縺弱?縺帙j縺ア縺壹j縺吶∞縺、縺ォ繧後▽繧九←縺?○縺悶£縺√□縺峨★縺ゅ●繧弱??縺ク縺舌≠縺ョ縺イXJQ繧ォ繝シ繧サ繧ェ繧「繝九¥縺励°縺?★縺ゥ縺?n
 縺偵o縺薙o繧?b縺ァ縺弱l縺ュ縺?k縺峨▽繧医♂縺?◇繧

  :
 繧コ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺?縺峨↓縺峨§縺偵◇縺ゅ¥縺イ縺帙a縺ヲ縺「縺?℃縺ァ縺舌?縺イ縲√□縺峨□縺峨?繧偵△縺壹?繧ゅ¥繧後=縺オ縺舌≦縺輔←繧?l縺?△縺
 窶ヲ窶ヲ縺?縺峨←縺?¥縺??縺壹℃縺斐¥縺?※縺「縲ゅ≦縺ゅ?縺ア縺イ縺ゅ□縺偵▲縲

  :
 繧√▲縺オ縺ォ縺ァ縺舌∞縺帙j縺峨?縺ウ繧上n縺上?√●縺ェ縺ョ繧偵△縺壹?縺斐∞縺弱∞縺√∞縺」縺舌?縺帙d縺「繧ォ繝シ繧サ繧ェ繧「繝九¥縺?n縲
 縺倥£縺槭≠縺上?縺帙a縺ヲ縺「縺ウ縺?∞縲√じ繝シ繝後ル繝シ繧ョ繝シ縺ア縺斐≠縺舌j縺√?繧弱⊂縺偵?繧?£縺?△縺ヲ縺ゥ縺セ縺壹∞

ブルー・ディキンソン :
 "あ〜らら……"

 受け取る情報を選別しながら、一つ「ゲッ」となる情報に目を見開く。
 結構面倒な仕事だ、色々と気を回さなくっちゃならないみたい。

 "大変ねえ、色々と"

ブルー・ディキンソン :
 "ま、こっちも大変だけどいいよ。
  相応のお金はもらってるわけだし?"

 "仕事はちゃんとやる主義だから、あたし!"

  :
 縺?○繧翫♂縲√〒縺峨★縺ゅ★繧医♂繧阪j縺峨?
 繧カ繝シ繝後=繧偵●繧上n縺ュ
 

  :

繧ウ繝シ繝峨?──

ブルー・ディキンソン :
 P……。
 エンターキーを押しながら、LANをひっこぬく。
 微弱な電波の感覚に身をちょっとだけ捩らせて、背伸びをする。
 直結通信は自身の自我を仮想空間内に形成し、電波に乗せて流す都合上、固めた通信内でないと外からの攻撃に弱い。
 天国は外敵に弱いものだ。

「いやぁ、結構結構。
 面白くなってきた」

 ちょっと蒸し暑い個室の中でへらへら笑いながら、寂しい預金口座と睨めっこを繰り返す。
 繰り返して繰り返して、ちょっと頭を抱える。

ブルー・ディキンソン :「と言いたいところだけど……」

 実際の仕事の内容を脳内に叩き込んで、ちょっとため息をつく。
 結局私が1人でいくハメになりそうだ、従業員のサポートは望めそうにない。
 もとよりそう言うのばっかくる仕事だからしょうがないのだが。

「えーっと……登録データ、データ……」

 最後に使ったのは何ヶ月前だったか。
 久しぶりに"セイギノミカタ"のお仕事だ。

SYSTEM : ごうん、ごうん、とファンが重々しい音を立てて回転する、清潔さとは無縁な何処かのセーフハウスの中。
 あなたはジャックから端子を引き抜いて、一時電脳域から離脱し、思案に暮れる。

SYSTEM : 此処が何処であるか。特定できる人間はそう多くない。多様なネットワークを形成する裏の勝手口、その一つ。
 B J S                 Tinker
 表の顔とは異なる、深層ネットに糸を張る仕立て屋としてのあなたは、『仕事』を承った。
 尤も、このビズは今回連絡が来る以前からある程度の打ち合わせは為されていた。時間をかけて敷いていた網、それに漸く掛かったというところだろう。

SYSTEM : 情報社会となった現代、あらゆる電子情報は様々な方法で遠隔での改竄が可能となる。少なくとも彼女は、それが出来る人間だ。
 しかるに、そうした社会の中で紙の情報は個人の証明や暗号鍵、符牒としては却って有用なものとなる。
 あなたはセーフハウスの中、身分資料を収納したケースの中を弄って、その名義を取り出した。

SYSTEM :
 取り出したのは国際NGO団体、UGNの現地協力オーヴァード……UGNイリーガルとしての登録の際の資料だ。
 その名義欄には『ブルー・ディキンソン』と名が記されていた。

ブルー・ディキンソン :
「あった〜」

 名義は幾つか作っているが、お気に入りはこれだ。
 "捩り"というのは秘匿性が高く、経歴を辿られにくい。
 特に著名人のそれを組み替えるのは効果的だ。酔狂に思われるのならば、より良い。

 名前というのはあくまでその個人を認識するための符号に過ぎない。
 一度口にした名前は、それを聞いた者の中で固定概念として残り、幻覚を作り出す。
 幻覚は、一度信じてしまえば中々消えない。信じなかったとしても、こびり付くように残る。

 ブルー・ディキンソン。
 1981年にイングランドのロック・バンド『アイアン・メイデン』にスカウトされたヴォーカリスト……ブルース・ディッキンソンから拝借したものだ。
 元々、好きで聞いていた、というのもあるのだが。

ブルー・ディキンソン :
 地元以外で動く場合はこれが結構効果的だ。
 人気のバンドはコピーが生まれやすい。ただの信者(ファン)かと思われることだってある。
 ある意味では好都合だ、著名人の名前にダブらせてしまえば、辿るにしてもノイズが出来る。
 
 登録先がNGO団体だったとしても、この姿勢は変えられない。
 ましてや表沙汰には決してならない裏の存在を取り扱っているのだ、より慎重になる。

 ……とはいえ、この名義を使う時は大体儲かる時だ。
 あちらさんは金払いがいい。量ではなく、"必ず支払う"という意味で。

ブルー・ディキンソン :
(……ま、そういう風に運ばれるんだから自然っちゃ自然だよネ)

 根気よく待っていたところに舞い込んできたもの。
 アンテナを張っては監視していたのだから、漸く成果が出てくれたというものだ。
 深層ウェブに木を一本生やすのは中々にリスキーな行為ではあったが。
 結局、枝はつけられていないのだから、ここまでは順調と言える。

「こういうことがあるから、方々に顔を売っておくのは大事だよにゃ〜」

 ぼやぼやと呟く。
 願ったり叶ったりだ、実入りが少ないのもあってこの網に引っかかってくれなかったらどうしようかと思っていた。

ブルー・ディキンソン :
 対テロ戦争の開始からもう6~7年余りだ。
  PMC
 民間軍事会社が爆発的に増殖し、そろそろ国際社会も無秩序な武装勢力の群れを無視できなくなっている。
 去年起きたブラックウォーターによる民間人発砲事件を経て、事業転換を考えざるを得なくなってきているのだ。

 まあ、うちは歴史の浅い会社ではあるのだが……。
 だからこうして、非合法の"超人"関連の仕事を積極的に請け負うようになった。
 クソッタレの親父の元から脱走した時は生きるために色々なことに手をつける必要があったが、取り捨て選択の末に今に至る。

 兵士という戦場の最小単位を最大化させる要因が生まれた以上、一個人の戦力は一つの民間軍事会社に匹敵、あるいは凌駕するほどになってしまった。
 そういう価値が生まれた以上、組織に身を寄せないものの生き方は、己の力を活かした仕事をすることにある。
 もう、普通の戦争では食っていけなくなってきているのだ。やんなるね。

 そしてUGNという組織に身を寄せない理由は幾つかあるが……まあ、ここでは割愛しておこう。

「さぁ忙しいぞ〜。
 チケット取って、えーっと着替えとか諸々……。
 ドルも落としておかなきゃ、無一文でいくのはナイナイ」

「アメさんなんて久しぶりっちゃ久しぶりだもんねえ、お土産も買ってっちゃおうかナ!」

ブルー・ディキンソン :
 表向きには"旅行"ということになるのだから、さっさと荷物の支度を済ませてしまう。
 あとするべきことは? 果たしてあっただろうか──。

SYSTEM :
 ……さて。
 現状あなたが頼れるものは何もない。自由とは多くの場合責任が伴う。その真の意味を知る者ならば、それを行使するにあたり用意を欠かさないものである。
 まして、個人の性能を鑑みれば、自分が荒事の方が向いているという意識は常にあるだろう。
 

SYSTEM :
 思考を必要としない『兵士』であれば、そのような決断など無縁でいられる。傭兵として戦地に駆り出されるだけならば、生き残るための最善をその場で選択していけばいいだろう。
 

SYSTEM :
 しかしこの激動の時代で、あくまで個人の能力を売り物とする場合、必要なのは商機を掴む力とそれを実行できる能力だ。
 R関連技術及びに人的資源は今や闇社会におけるレッドオーシャンだ。地方の小国は愚か、先進国すらもそれに手を伸ばそうとしている。
 必要とされる需要にどれだけの性能を提供できるか。それも、どれだけ少人数の規模で実行できるか。
 ……少なくとも、今回の依頼主はその性能に期待している。

SYSTEM :
 目指すは合衆国。
 だが、依頼を全うするためには下調べの必要があるだろう。
 或いは小道具の調達か。
 いずれにせよ、いざ入国してしまえば自由が利かなくなる。

SYSTEM :
 幸い今は資金も人的ネットワークも使える。唯一ないのが時間だが、そればかりはやむを得ない。
 今のうちに、やれることをやっておこう

SYSTEM :
【Action!】

・任意の調査項目に対する情報判定が可能です
・調達判定が可能です
・その他、RP上で行っておきたい行為、判定がある場合、GMが許可する限り実施可能となります

ブルー・ディキンソン :ん〜っと……そうだなあ。
「情報:裏社会」で振る場合、何かある? 例えば、これから首突っ込もうとしてるシャングリラのなんか、とかネ。
既存の情報だったとしても、私個人が知識として知っておけるかとか〜。

GM :了解デスデス
丁度その辺りが提示する予定の項目だったので、裏社会でも判定可能です。
目標値は7ってとこでしょう

ブルー・ディキンソン :Yeah! ……まあでも、あたしこう見えて社会のダイス1なのよネ。
怖いから「コネ:情報屋」さんに頼っちゃおうかナ〜!

GM :了解!ダイスを+2加算しての判定になりまあす

ブルー・ディキンソン :では……

GM :判定をどうぞ!

ブルー・ディキンソン :3dx+2 【社会(情報:裏社会)】 (3DX10+2) > 10[4,7,10]+4[4]+2 > 1

ブルー・ディキンソン :エー。

GM :成功!お見事!上振れましたなあ

ブルー・ディキンソン :まいっか! ごひーきごひーきってことで……

SYSTEM :
 では、あなたは一先ず裏社会のコネクションを利用してシャンバラに関する情報を漁っておくことにした。
 持つべきものは何とやら。捜した情報に関しては思いのほかあっさりと見つかった。

情報源 :
『一年ぶりの連絡となりますか。お久しぶりです……っと、いけない。
 カヴァーといえど、ここで軽々と名前を出す訳にもいきませんか。今はどのような名で活動を?』

 幾つかコネクションを探り、目をつけていたのは一年前のカヴァーとして使用した屋敷に潜伏していた同業者であった。

ブルー・ディキンソン :
 P、P……。
 再びのLAN直結で回線を開き、暗号通信を開始する。
 持つべきものはなんとやら、ちょうど去年の"身分"の繋がりを使う時だ。

「ヤホー、久しぶり。紅茶淹れるの上手なった〜?
 ……、……ああ名前! えっとぉ、そうネ。ブルー、ブルーでいいヨー』

情報源 :
『さて、どうでしょうか。今度いらした時にでも振舞いますよ。お互い生きていればの話ですが……
 ではブルーさん、このしがない女中に何か御用でしょうか? 仕事で用入りになったから、こうして一報下さったと存じておりますが』

ブルー・ディキンソン :「相変わらず物騒なこと言うナー。
 まあ、明日生きてるかわかんね〜って毎日ぼやいてたもんね2人で」

ブルー・ディキンソン :「ん、そうそう、本題に移りましょ!
 じゃなきゃ暗号通信で連絡なんてしないわけだかんネー」

「そうだねえ、最近ダークウェブ眺めた?
 超弩級の情報が転がってたんだけどサ。
 その件について、そっちで何か調べてないかな〜って」

情報源 :
『『シャンバラの門は開かれた』ですね。
 小耳にはさんでおります。具体的には存じ上げませんが、近々、大掛かりな動きに出るとの噂。生憎と、その正体までは掴み損ねましたが……』
 

情報源 :
『あちらの実態はFHと言います。そして、あのセルの原型……
 第三帝国の亡霊という点を加味すれば、単なる商戦という訳にはいかないでしょうね』

情報源 :
『ブルーさん。『オデッサ・ファイル』という言葉は御存じで?』

ブルー・ディキンソン :「フレデリック・フォーサイスの代表作のこと?」

情報源 :
『その原型のことですよ。あの小説は元SIS職員のフォーサイスが実体験した出来事に脚色を加えたもの。
 Organisation der ehemaligen SS-Angehörigen
 ド イ ツ の 元 武 装 親 衛 隊 の た め の 結 社……通称オデッサのメンバーに関する記録を記したファイル』

ブルー・ディキンソン :「あぁ……元の方か。
 SS隊員の逃亡支援の組織……、多くのナチス幹部を南アを中心として色々な国に逃してくれちゃったとこ」

「エー、何? ナチ絡みなの?
 確かに"オーヴァード"なんて代物、一番食いつきそうな連中だけどサ」

情報源 :
『はい。オーヴァードの存在が知れ渡ったのは2000年代初頭ですが……何もそれ以前に知られていない訳ではない。
 確証はありませんが、大戦期に纏わる多くの言い伝えに、それが関わっていると言います。SISには当時から活動しているオーヴァードを抱えているとも聞きます』

情報源 :
『彼らは第三帝国の夢が砕け散る間際、そのさまざまな技術や資本を帝国より持ち去り、方々に散っていった……という噂です。
 ですが、確実なこともあります』

ブルー・ディキンソン :「ってゆーと?」

情報源 :
『一つはその資金力と意志を持った人間がアルゼンチンなどの南米に姿をくらましたこと。
 そしてその南米は、現在でも多くの『遺産』と呼ばれるEXレネゲイドが眠る未開地であるとのこと。
 最後に……』

情報源 :
『そのアルゼンチンで死したという医者にして人類学者、元SS大尉『ヨーゼフ・メンゲレ』……
               カヴァーストーリー
 彼の死は界隈の人間を騙す為の偽 装 工 作で。その裏で、嘗ての研究施設で蒐集していたオーヴァード研究を当時のFHメンバーと共に行っていた、ということ。
 ……この折に、シャンバラの原型が構築されたということです』

ブルー・ディキンソン :
「うひゃあ。
 メンゲレって言えば、アウシュヴィッツのマッドの事だよネ。
 確かに1979年に脳卒中で死亡した、というのが公的記録だけど……ま、いくらでも隠せるよね、そういうのは」
 

ブルー・ディキンソン :「核兵器と同列の『大戦の亡霊』ってワケだ、じゃあその"シャンバラ"の皆さんは。
 ……原型っていうからには、時代を経て組織の思想や構造は様変わりしているのかもしれないケド」

ブルー・ディキンソン :
「人工シャム双生児じゃ飽き足らず、超人研究まで継続してた、か。
 盲信的な優生思想って怖いネほんとネー」

「……それが時を巡って超人テロリスト集団の一つ。
 とんでもないヤマに食いついちゃったなあたし」

情報源 :
『はい。あの『死の天使』です。
 ただ、この由来を鑑みればこそ、眉唾じみて見えた彼らの扱う商品が『遺産』であるという噂にも納得がいく。
 単なるEXレネゲイドならいざ知らず、あそこまで強大なEXレネゲイドを湯水のようにばら撒き、売り飛ばすのは、そうしたバックボーンがあるためなのです。
 私には到底、手に余る仕事ゆえ、遠巻きで観ているつもりでしたが……あなたも大概物好きですね、ブルーさん』

SYSTEM :
【情報開示!】

【シャンバラ/1】
<情報:裏社会>7
 母体はアルゼンチンのオデッサ、創設者は元ナチス高官ヨーゼフ・メンゲレを代表とするアルゼンチン・オデッサメンバー。
 かつてアウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所にて人体実験の数々を行ってきた彼は、そこに優勢思想の極致を垣間見たのか。
 非オーヴァードの身で南米に潜伏し、そこに集まった人間たちの研究が活動の起点となった。
 
 第三帝国の超兵軍団の遺産、南米に多く潜在するというアーティファクトの数々、ユダヤ資本より蒐集した莫大な資金源、
 それらを、かつての軍部のコネクション、及びにFH間のネットワークを通じて売買して、密やかに勢力を拡大していたという。

ブルー・ディキンソン :
「アハハー、仰る通りです。
 ……去年の収入、色々あってすっからかんになっちゃってさぁ。
 慣習で役割(ロール)も変えちゃったから、出戻りするわけにもいかなかったしぃ……」

「……ま、降りないけどネ! 別に1人で首突っ込むわけじゃないんだし」

ブルー・ディキンソン :
「これは紅茶飲めるかどうかは賭けになりそうだナー。
 私が生きて帰ってきたらタダでよろしく」

「……"オデッサ"のようにナチスの逃亡を支援した組織は、公的機関もあったと指摘されている。
 ヴァチカンや南米政府直属の機関……そしてCIA」

ブルー・ディキンソン :
 ラングレー
「中央情報局の皆さんも困り果てたんだろうねえ。
 噂が真実かそうでないかは、この際関係ない。
 こんな組織が出てきちゃった以上は、指摘に関して追求を受けるかもしれない。
 揉み消しが大好きな奴さん達のことだしネ、軍を動かす腹づもりでしょう」

「米国っていう長いものに巻きつけるのなら少しの保証はされてるしネ?」

ブルー・ディキンソン :
「……ま、それに今回はちゃんと"ネタ"ありきで動いてるからね。
 多少の確信は持って動いてるつもりだヨ。だからこうして暗号通信で連絡とったわけだしー?」

「結果として、期待以上の情報は得られたわけだけどネ」

情報源 :
『勿論でございます。料金は取り建てません。
 ……茶の席で話を伺えるなら、結構。この世界を取り巻く世界情勢がどう変わろうと、その起点を間近で見てきたものが語る真実を"買える"と思えば、安いものです』

情報源 :
『あら、お世辞がうまい。私が言い添えるまでもなかったかもしれませんのに。
 どうあれ……その規模間を持って動いている以上、彼らの討伐に当たる組織にも何らかのバックボーンがあるのは必然です』

情報源 :
『くれぐれもお気をつけて。
 この業界、自分が一番優位に立っていると思った瞬間から、蒼褪めた死が戸を叩くものと相場が決まっております』

ブルー・ディキンソン :
「あらら〜、でも確かにその通り。
 "真実は見るもの"だからね。事実を口で語った瞬間、物語になってしまうけれど……ま、限りなく真実に近いのだから、充分でしょ」

「……たはは、結構本気でありがたかったんだヨ。
 私はどっちかっていうと"お掃除"の方が得意だったからね、坊っちゃまの家庭教師はてんでダメだったじゃん?」

ブルー・ディキンソン :
「……うん、特にナイフとか舐めてケヒャヒャって笑うとデッド・オア・デッドだもんネ。
 常に後ろに気をつけろ! ……は、教訓だもんねえ。
 あとは、出る杭はナントカって、お隣さんの国の言葉もあるし」

ブルー・ディキンソン :
「──情報ありがとう。
 前に教えた口座、覚えてる?
 お金無いって言ったけど、その分の代金くらいはあるから。
 好きなタイミングで抜いちゃってネ。元々閉じる予定だったし」

ブルー・ディキンソン :
    ・・・・
「じゃ、また明日。
 チャーオ☆」

ブルー・ディキンソン :
 お返事があるのなら、それで。
 聞いた瞬間、LANを引っこ抜く。

情報源 :
『ではご武運を。茶会の準備をしてお待ちしております』

ブルー・ディキンソン :
 わお。楽しみ。
 直後にケーブルを引っこ抜いて、通信を閉じる。
 微弱な電波の流れに、また身をちょっと捩らせる。

ブルー・ディキンソン :
 ……さて、ナチ絡みという、簡潔にして最悪な情報を手に入れた。
 米軍がこれを掴んでいないわけがないだろうから、取り敢えずは同じ舞台の上に立てたことにしておこう。
 あとは……。

「……買い物でもしてくぅ?」

 独り言。

SYSTEM :
【Action!】

☑任意の調査項目に対する情報判定が可能です
・調達判定が可能です
・その他、RP上で行っておきたい行為、判定がある場合、GMが許可する限り実施可能となります

ブルー・ディキンソン :
 はいはーい。
 それでは調達判定しちゃおうかな。
 持ってて損のない「応急キット」で!

GM :了解!目標値は8です

ブルー・ディキンソン :ゆくぜ!

GM :さあこい!判定をどうぞ!

ブルー・ディキンソン :1dx+1 【社会(調達)】 (1DX10+1) > 7[7]+1 >

GM :ギリッッツギリセーフ!見事

ブルー・ディキンソン :1が活きた〜

SYSTEM :
……単独での作戦である場合、周りのバックアップは期待できない。自分の手でメンテナンスできる応急キットが必要だろう。
この義体にも使えるタイプのものとなると、出先で簡単に手に入るとも限らない。

SYSTEM :
 あなたは一旦セーフハウスを出て、応急キットと自身の義体の予備燃料をブラックマーケットから購入した。
 空港でのチェックはカヴァーの設定で如何様にでも躱せるだろう。

SYSTEM :
【アイテム:応急キット の調達に成功しました。
 キャラシートに書き加えてください】

ブルー・ディキンソン :
 オッケーオッケー、書き加えたよ。

SYSTEM :
【Action!】

☑任意の調査項目に対する情報判定が可能です
☑調達判定が可能です
・その他、RP上で行っておきたい行為、判定がある場合、GMが許可する限り実施可能となります

ブルー・ディキンソン :
 さ、て……。

ブルー・ディキンソン :
 いい感じの情報はゲットした。
 予備燃料……もとい、応急キットもゲットした。

ブルー・ディキンソン :
 いよいよアメリカ旅行、行っちゃおうかな!
 善は急げ、ってお隣さんでは言うもんネ!

GM :了解です。では……

SYSTEM :
そしてもう一つの意志。見えざる手が渦中へと伸ばされる。
第三帝国の夢の残骸、或いはそれを食い貪り育った背徳の理想郷に、波乱の予感を連れて。

SYSTEM :
 Tinker Taylor Soldier Sailor。
 役者が揃い、舞台が整い、世界を巻き込んだ欲望の坩堝が蓋を開けるまで、あと僅か。
 しかし、その開幕を紐解くには、もう一つの『意志』について語らなければならないだろう。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【OP④ 根無し草-Stranger-】

SYSTEM :
【OP④ 根無し草-Stranger-】

登場PC: ATRA
登場侵蝕:あり

GM :登場侵蝕の時間だ!

アトラ :ウオ~ッ

アトラ :1d10 (1D10) >

GM :クールなアトラチャンだぜ

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 31 → 34

アトラ :まあまあまあね

SYSTEM :
200X/10/2X
アルゼンチン 北西部 某所……

SYSTEM :
 ……荒涼の風が吹き抜ける。故郷の風に似た、熱風の吹き抜ける渓谷。
 自然の息吹を感じる大渓谷の集落。あなたが今、旅の最中に宿としていたのが、その場所だった。

SYSTEM :
 放浪の旅を続けるあなたに、その地がどのように映ったのだろうか。
 本来、あなたが道を行くのに理由は必要としなかった。年若いながら、僅かな荷を片手に国も民族も知らず、流離い続けてきた。
 

SYSTEM :
 しかし、今回に限って言えば珍しく、あなたには目的があった。
 それも、何時も旅の合間に設定するような短期的で、道草をゆっくりと食っていくような目的ではなく。
 明確に、それを目指して今、南米より北上するように道を進んでいる。

アトラ :
 自然の残る広大な土地。
 渓谷の中で生きる、集落。その最中で、吹き抜ける風を感じながら空を見上げて吹けない口笛を鳴らす。
 かすれた音も風に溶ける。どうせ自分以外には届かないんだから、気分を盛り上げる以上の意味はない行為になった。そこに上手いも下手も関係ない。

アトラ :
「……ぁあ~……」

 気の抜けた声。間の抜けた息。有り体に言えば、自分は今“慣れない”ことをしている。
 明確な目標と、外せない目的。普段であれば己の身体や気分と相談しながら取る舵も、今回ばかりはそっと置いておく。
 ……で。気分が勝手に盛り上がるでもないので誤魔化し誤魔化しテンションをあげようと試みている最中だ。
 気分にして興奮と不安が5:5。何とも言い難いコレ。

SYSTEM :
 暖かい風に気が緩んだ、というより……慣れない事をしている不安から弛緩しようとしているのか。
 吹き慣れない口笛を吹きながら、どうにかして心意気を上げようとしているあなたに向かって、渓谷の村落から見知った顔がやってきた。

SYSTEM :
 ……尤も見知った、とはいえど、知り合ったのはつい最近だ。
 ある捜し物を捜す折、深層ウェブ上にて知り合った情報提供者であり、今回旅にあたって協力することとなった、自分のコネの一人。

引退した傭兵 :
「もう、行っちまうのかい。
 どうせ根無し草なんだ、ゆっくりしてきゃいいのに」

 男の名は知れない。集落の人間にはジェイクと名乗っているが、偽名だろう。
 民間軍事会社の仕事の最中、様々な事由で公の社会で暮らすことの出来なくなった彼は、逃げるように南米を旅してまわっているのだという。

引退した傭兵 :
「まさか相手してたのがおたくみたいな歳の子だってわかった時には、正直驚いたが。
 おたく、悪いことは言わねえからやめとけ。"ラクシャーサ"なんて大物、たとえ見つかったって嬢ちゃんの手に負えるような相手じゃない。
 俺にはまるで、生き急いでるように見えるぜ」
 

アトラ :
「ちょわ」

アトラ :
 別に恥ずかしいわけでもないし、止めなくても良かったんだけども。
 いかにも用事がある風に近付いてくる人を前にピーヒャラ言ってるのは何とも良くない。怒られそうだ。
 つい先日からの長い付き合いとなっている自称ジェイクさんの言葉にまあまあ、と笑いかける。

アトラ :
「いやいや、根無し草なのは否定しないんすけど~。
 ゆっくりしたいのも正直山々なんですけどね~」

 不服そうに言葉を間延びさせつつ、首を横に振り。

アトラ :
「そうっすか?ウチは想像通りのナイスなミドルが居てくれてちょっと安心しましたけど……。
 けど、まあ、言いたいこともわかります。大体行ってみたって…… ……その、“ラクシャーサ”に出会えるか何か分かんないわけで。
 そういう意味じゃ生き急いでる風に見えるってのも分かるんですけども……」

アトラ :
「でもでも、ずっと引っ掛かってて取れなかった悩みというか。
 どうしても気になること放置したまま気ままにぶらつくっていうのも気持ち悪いでしょ。今そんな感じなんですよねウチ」

 この例えがウチの心境説明として合ってるのか合ってないのかはさておき、と後付けしながら頷いた。だから行くのだ、と。

引退した傭兵 :
「んん……ああー、すまん。
 悪かったよ、俺は何も聞いてない。
 掠れまくって殆ど息そのまんまで、そりゃあ懸命に何度も吹き直してるもんだから深呼吸してるものとばかり」

引退した傭兵 :
「悪かったよ。詫びに吹き方教えようか? 昔は俺も、4WDのカーゴに揺らされながら、見知って間もない奴等と国の詩を吹き鳴らしたもんさ」

引退した傭兵 :
「色んな肌の色の、色んな言葉を話す奴等と、色んな場所に放り込まれて、色んな歌を聞いたっけな……
 でまあ、今じゃこの通り、辺境でモグリの医者をやってるってわけだが。
 ……情けない話だが、ブルっちまった」

引退した傭兵 :
「正直やってけねえって思ったから、逃げるようにやってきたんだよ。
 一応家内もいた。離婚したけどな、尾を引かれる気持ちもないでもないが……
 何というか……怖くなったんだ。死ぬのが」

引退した傭兵 :
「だから、まあ、そのなんだ。
 もやもやした気持ちなんてのは、案外時間が解決してくれるもんだってことを言いたくてだな…」

引退した傭兵 :
「ああ、くそ、らしくもねぇ。
 悪いな、知らねえおっさんの自分語りをあてはめられるなんてのは、おたくにとっちゃいい迷惑だろうに」

 乱雑に頭を掻いてそっぽを向く。
 年端も行かない娘が、猟銃片手に戦地へ赴くことに、痩せた良心が痛むのか。
 妻子を棄てた後悔が娘の残影を重ねているのか。
 男はらしくもなく饒舌だった。

アトラ :
「オーイ 確かに空気は美味しいけども!深呼吸するだけの価値あるかもだけども!
 もうちょっとうら若き少女の気恥ずかしさとかに対する思慮とか無いのか!」

 吹き方はちょっと気になるけども!

アトラ :
「こほん。
 まーまー。ウチくらいの若輩者が何か言えた話じゃないんですけど…… ……そりゃあ、怖くもなるんじゃないすか?
 死ぬのは怖い。死にたくないと、戦ってる相手だって同じ風にビビってるように見えて殺すのも怖くなって、どっちもイヤで逃げちゃう。みたいな。
 いやウチ、戦争ビジネスみたいなのはやったこと無いから適当言ってるんですけど……話聞いてきた感じ?そうっぽかったんで」

アトラ :
「……いや、有難いんですよ。ウチ、商売柄怒られることだってないでもないし。
 こんな旅先でもそうやって考えてくれる人っているんだなあって。……優しいからこそこそひっそりで生きるんじゃなくてモグリでもお医者さんなんて人助けしてるんだろうし」

アトラ :
「でも、それでもです。これは……時間じゃ解決できないタイプなんです。……えーと。なんていうか。気持ち的にも。
 って言うかなんすかその反応。ウチがほんとに死にに行ってるみたいになってません?」

アトラ :
「場所も相手も状況も悪くたって別に絶対死ぬってワケじゃないし……。
 不安じゃなくて明るい感じを分けてほしいんすけどね!」

 そりゃ、まあ。何を隠そうウチ自身が最悪の状況に陥ることにビビってるから言ってるわけだが。

引退した傭兵 :
「はは、単にブルっちまっただけさ。それに人助けなんて高尚なことでもない。
 モルヒネ
 麻酔やら何やら薬品仕入れんのに、この辺りのスジモンとどっぷりだ。俺の拙い施術の金で中米の罪もない女子供が今も家の中で震えてんだ。
 結局怖いもんから逃げてるばかりの男さ。
 ……ああ、まあ、俺の話はどうでもいい」

引退した傭兵 :
「……そうだな、まあ、その通りだ。
 おたくが何の用で捜してるのか、俺は知りもしないんだ。
 止めやしないし、詮索もしない。こっち側で生きる上での最低限のマナーってな。俺の方が喋ったからって、おたくに喋れなんて強制もしない」

引退した傭兵 :
「色々売って暮らしちゃいるが、今明るい話題は品切れ気味でな。村の村長の娘が第一子を設けたとか何とか、おたくにゃ聞いても仕方のないことぐらいさ」

引退した傭兵 :
「俺がやれるのは情報と、寝床と、ついでに頼まれた器具を融通してやることぐらいさ。
 そう……前に伝えた通り、"ラクシャーサ"は今南米から合衆国の方だ。
 今じゃ、あの"シャンバラ"の幹部の席についてるって話だ」

引退した傭兵 :
「大方要職の用心棒か、或いは武闘派の連中の統括ってとこか。
 まあ意外に商才があって、そっち方面で動いてるかもわからんが」

アトラ :
「あー」

 そりゃそうだ。戦争でも何でも、普通の日常からドロップアウトした人が完全無欠のシロになるとは思わない。
 逃げて生きるなら、何処かに迷惑をかける。身を以て実行して今日まで来てる。
 だから否定も肯定も気持ちよくは出来なくて、変な声だけ漏らしてしまった。……その沈黙のまま話題が続かなくて良かった、と胸中で頷き。

アトラ :
「うす。ありがとうございます。
 何か礼言うのも違う気がしますけど一旦言っときます」

 同じように、表の世界を歩けるように動いてない自分たちが互いを使って生きる上のマナー。詮索はしない、という言葉に素直に有難がって。
 それから、明るい話題は品切れらしい旨を聞いてハァ~とわざとらしく溜息を吐いた。いや村長さんの娘さんの子どもは素直におめでたいが、此処でわーパチパチと手を叩いて祝福するのもなんか違う。

アトラ :
 ……それで、と。自分の目的───……“ラクシャーサ”と、彼女が身を置いてるらしい“シャンバラ”の話に帰ってくる。
 “シャンバラ”。……の、幹部。何度聞いても頭を抱えたくなる文字の並びだった。

アトラ :
「いやあ、前者だとは思うんすけどね。
 ただでさえ悪知恵働いてそうな連中が集まってる中に商売っ気で幹部まで行くの、相当だと思うし」

引退した傭兵 :
「まあ、だろうな。何せあの"ラクシャーサ"だ……界隈だと有名な、戦場の伝説みてえなもんだ」

SYSTEM :
  ラクシャーサ
 ──"千刃空夜叉"。
 
 戦鬼のコードを持つ、戦場の伝説の一つ。
 R因子が世に見出され、様々な国が内紛の中で超人たちと死合うこの時代において、彼女もまたそう語られる。

SYSTEM :
 銀の長髪、整った顔立ち。証言によると二十歳前後の娘であるという。しかし、オーヴァードという存在に年齢や経験の多寡で力量を測ることはできず。
 故にこそ、埒外の力を奔放に振るう『鬼』が生まれる。

SYSTEM :
 曰く、『目障りだから』の一言で紛争地域の街一つを片端から潰して回り。
 曰く、『力試し』と称して東欧ガーディアンズらの基地を滅ぼしたとか。

 それも兵力や組織的な力によるものでなく。
                シミター
 純粋に手に携えたたった一振りの曲剣によるものという。
 尾ひれの付いた、というのは簡単だが、それをあり得ぬと誰が否定できようか。

SYSTEM :
 送られてきた追手や恨みを買ってきたヒットマンも悉く切り伏せ、勧誘に来たFHらテロ組織も同様に退け、その道行きは常にただ一人。
 鬼に会わば鬼を斬り。
 仏に会わば仏を斬る。
 修羅の如く滅尽した、孤高の戦姫。

SYSTEM :
 現在、彼女は独り身のFHマーセナリでありながら、上級エージェントに匹敵する権限をFHから与えられて、一匹狼を貫いてきたという。
 シャンバラの幹部の座についたというのも、単に軍門に下ったという訳ではないのだろう。
 恐らくは彼女の『欲望』がそれに即していたというだけのこと。FHとは絶対的な上下関係によって成立する者でなく、実力さえあればあらゆる自由を買える組織だ。群れるを嫌う彼女が身を置くとして、不都合はなかったのだろう。
 

アトラ :
 うんうん、と。腕を組み、その名を轟かせた女性の伝説を反芻しながら頷いた。
 挙げられる暴力性は枚挙に遑がない。『鬼』とまで評され女性の“噂”はどれも空想じみていた。
 段々と頷きに勢いと力が無くなっていく。最後には力なく俯いて、そのまま5秒は固まっていたと思う。

アトラ :
 その後、息を吹き返すみたいに頭をあげて、整理するみたいに人差し指を立てた。
 おじさんに向けて、というより自分に向けての整理に近い。

アトラ :
「…… ……“噂”のまんまの彼女が、“シャンバラ”なんて大仰なお名前の集まりに混ざってるのも彼女の挙動としてはちょっと変な気するし。
 文字通り好きにやってきた人が、わざわざそんなとこに身を置いて……絶対、何か目的がある。そう言ってるようなもんだし。
 ……まあ、言っちゃえば、ウチの目当てはその……彼女の理由の部分なんすよね~……。
 現時点で分かる“シャンバラ”周りって他に何がありましたっけ……」

 ……実は彼女のこと結構知ってます、とか言ったら変に心臓に負担かけそうだし言わなくても良い気がするけど。
 そもそもピンポイントで欲しがってた情報な時点で、察されてもいそうだ。

SYSTEM :
 風に伝え聞く、戦鬼の話。
 まるでフィクションモンスター。映画の中か、アメリカンコミックのヴィランのように、或いは尾ひれも付けて語られる内容は、人というよりは嵐を彷彿とさせるものだった。
 その一端を聞いて、あなたがどう感じたのだろうか。測りかねて、やや訝しるように見つめ直すも、男は特に訴追することもなく続ける。
 

引退した傭兵 :
「理由ね……俺も多くを知ってる訳じゃないし、話に伝え聞く以上のことは知りやしない。見当もつかんね。
 陳腐な考え方で言えば『解放』衝動に呑まれでもしたか。そういうジャームになったかだが、なあんの確証もない」
 

引退した傭兵 :
「けどまあ、シャンバラ周りについちゃある程度話せんこともない。
 そうだな……今の所、連中が主な活動拠点にしてるのは三つだ。南米、中米は仕入れ先の一つに過ぎない」

引退した傭兵 :
「具体的な場所までは分からんが……
 間違いないのはルイジアナだ。ニューオリンズは、中米南米と北米を結ぶ裏社会の毛細血管だからな。スジモンの中でもやばい連中は大なり小なりそこを経由している」

引退した傭兵 :
「後妖しいのは、ミシガンか。
 あっち側ははガーディアンズが撤退して久しい。そっちの商売始めるにはまあまあ都合が良い場所だ」

引退した傭兵 :
「連中、アメリカで何かどでかいことをしようとしてるのは確からしいって噂だ。
 合衆国だけでもペルソナショップを全国展開してやがる」

引退した傭兵 :
「その何かだけはよくわからんが……その、国がひっくり返るような何かに期待してるんじゃないか?
 或いは、あの国を滅茶苦茶にしたいのか……」

アトラ :
 元傭兵のおじさまの見解を聞きつつ、うんうんと首肯する。
 実際のところ、掴めているものが所在以外何一つないのだから推察するにも材料が足りない。
 引き出せるのは、彼女のひととなりから想起出来るものだけだ。
 ……確かなものの少ない情報は、信用に値しないのだ。商売上身に染みて分かる。

アトラ :
「ふむふむ」

 言われた数をそのままカウントするみたいに指三本を立て、名が挙がるのに合わせ指折り畳んでいく。
 単純な話、連中にとって重要な場所を巡るだけでも遭遇できる可能性はゼロではなくなる───……の、だが。
 流石に悠長すぎるから、道行が絞れているに越したことはないのである。

アトラ :
「まあ、十分っすよ。事前に握れてる情報としては……多分。
 どでかいこと、って言うのは正直不穏ですけど……流れを追うに、色んなものがそこに絡んでるのは間違いなさそうですし。
 ただ滅茶苦茶にしたいってだけならホントのホントに大迷惑だし、そこに乗っかるのが居るのもメチャメチャ厄介なんですけども……」

アトラ :
「国、ひっくり返してどうするんすかね~。
 アメリカが転覆しちゃったらそれこそ大事件だし、もっと余所からこぞって人集まってより大事件になりそうで良くないし。
 その辺、やっぱり直で見聞きしないとどうにもこうにもっすね」

引退した傭兵 :
「ああ、連中の考えてることはわからん。
 相当キレた連中の集まりで、それだけならまだしも頭も腕っぷしも権力も一丁前の、出来る事なら関わりたくねえ手合いってことぐらいさ、分かるのは」
 

引退した傭兵 :
「だがまあ、流石にそいつをのんびり眺めてる程、ペンタゴンも呑気してる訳じゃないだろうぜ。
 奴らも面子をつぶされて、近いうち動くと思うぜ。満更無関係って訳でもなさそうだしな、あの組織とアメリカは」

引退した傭兵 :
「何か用事があるなら、北米のガーディアンズ……ああ、今じゃUGNって呼ばれてるらしいな。
 あそこに顔を売っておくと、運が良ければ一枚噛めるかもだ」

アトラ :
 そりゃあ、そうだろう。同時にありがたい話だ。
 ちょっと大きめに騒いでくれれば、それだけ自分にだってチャンスが巡ってくる───……いや、それにしたってリスキーだけど。
 でも、と。示された名にフムと尤もらしく息を撒く。

アトラ :
「それ…… ……も、まあ、アリっす。
 組織立って解決策練ってるようなところなら猫の手だって借りたくなってくれるかもしんないし!
 何より、“シャンバラ”の連中を煙に巻きやすそう!……は、ちょい楽観的すぎですけども」

アトラ :
「実際、お仕事として雇ってもらうにしても勝手に乗っかるにしても一枚噛めればオイシーっすよね~。
 公募とかないんですかね?流石に目立つような形でそういうのはないか」

 それはそれでリスクがないではないんだが、まず第一に近付く段階に行く必要があるのは間違いないし。

引退した傭兵 :
「生憎アンクルサムのポスターが貼ってある訳じゃない。それに、噂だと連中も超人の集まりだって話だ。
 それがマジだとしても、ただの人間の手が入らない訳じゃないだろうが……」

引退した傭兵 :
「国ぐるみなんだ。それこそ、超人以外の手は足りてるだろう。
          アベンジャーズ
 嬢ちゃんがその手の超 人 集 団に混じれるでもない限りはなぁ」

アトラ :
「あっはっは」

 超人の集まり───……まあ、そこに関しては持って来いだし願ったり叶ったりだ。
 何せ私も───とは、言い出さない方が良い。情報筋としてはお友達のままでいたいから、変に深いところまで潜ってもらうのはあんま良くない。
 だから冗談のように笑いつつ、芽はあるなあと脳裏で考え。

アトラ :
「でもウチ、ほら。“副業”あるんで!そっちで攻めたら案外うまいこと行くかもじゃないっすか!アングラ情報筋みたいな!」

 旅人、情報屋。どっちが主でどっちが副かなど決めた覚えはないが、それらしく言っておく。
 ……まあ、今しがた目の前の人づてで情報を得ていた少女が何を、と思われるかもしれないが。

アトラ :
(いやまあ、此処までの話聞いてる感じトラブル・トラブル・トラブルのT³って感じの案件が立ちはだかりそうだけど……)

引退した傭兵 :
「そう巧く行きゃあいいけどな……」

 顎髭を撫でながら楽観じみた言葉に難色を示す。

「それでも行くっていうんだろうけどな、おたくは」

引退した傭兵 :
「とにかく当たって見な。案外うまくいくかもだ。
         ココ
 無責任で悪いが、裏のルールはどうやったって自己責任だ。俺は忠告はしたからな」
 

引退した傭兵 :
「……嬢ちゃんにも恩がある。何処から拾ってきたかは聞かないが、この手引きだけでこの村の医療に必要な薬品を工面してくれた。
 結構ガメたつもりだったのによ。おかげで隣の村の餓鬼どもの治療にも余裕が出来そうだ」

引退した傭兵 :
「だから、こいつはサービスなんだが──」

そうして胸元に手を伸ばした、丁度その時。

  :

────一瞬、視界が眩んだ。

SYSTEM :
 ……ほんの少し、視界が揺らいだ。立ち眩みのようだ。
 どうやら一瞬で収まってくれたらしい。
 急かすような鐘の音を一拍鳴らした後に……

引退した傭兵 :
「──偽造パスだ。知り合いの技師に頼んで、おたくがこの村に滞在してる間に作ってもらった。
 こいつで向こうまで飛べるはずだ。腕は信用できる」

SYSTEM :
 そう言って男は一枚あなた用のパスポートを手渡した。
 これであなたは、合衆国のUGNの本拠地、メリーランド州までは向かうことが出来るようになるだろう。
 万が一検問で詰まったとしても、あなたにはそれを躱すだけの力がある。

SYSTEM :
 ……あなたは早々にこの村を出るつもりだったが、どうやら急いだのは正解だったらしい。
 得るものは得た。特別他にやり残しがなければ、もうここにいる理由はないだろう。

アトラ :
「やっぱ、悪い人ではないっすよ。おじさん。
 赤の他人にそこまで忠告出来るのって結構才能いると思うんすよね~……と、おっとっと」

 そう真っ直ぐと感謝を告げられると照れちゃうな、などと。笑顔のまま冗談めかしく言いながら。
 本当に、ありがたいことだ。願わくば彼の今後に今以上の困難が訪れないよう祈っても良いくらいには。
 自分の祈りにどれだけ効果があるかはさておき。そも、聞き届けてくれる神様だって不在かもしれない世の中で。

アトラ :
「それにそもそもウチも生きるために働いてるみたいなもんで!
 そうやって頑張る権利すら受け取れないまま病気で~って、子どもたちも大人たちもイヤでしょ。だから…… ……ぁ」

アトラ :
 立ち眩みみたいに視界が揺らぎ、そのまま一度瞑目。
 普段なら手の動きも目で追っていたところだが、一度それを流して……差し出された偽造パスを受け取り驚いたような顔を浮かべる。

アトラ :
「…… ……お、おぉ。同じく後ろ暗い立ち位置にいるウチが言うのもなんですけど、結構手が速いっすね。
 ありがとうございます。これ、おじさんとその友だちだと思ってウチが死なないようにお守りにするんで」

 いやそれは本当に冗談だけど、と。付け足しつつ。

アトラ :
「そんじゃ、まあ……行ってきます。
 朗報待っててくださいね。いや、次会うのとか普通に働いてもいつになるんだって話ですから、待ってなくて良いっすけど」

アトラ :
 ……さて。さてさて。
 場所を知ってから決意が鈍らないうちに、とか、余裕なうちに、とかいろいろと考えてたが、やっぱりそうも言ってられないみたいだから。
 “シャングリラ”でも、UGNでも、何でも。出来ること、行ける場所、全部、全部使ってみよう。
 それで、目標まで届かせる───……そのために。

アトラ :
    虎の尾を踏む
(“Tread on the Tiger's Tail”───…… ……とか。冗談にもならなさそう!)

 言ってるうちに、進んでしまおう。まず第一目標は、くだんのUGN本拠地!

引退した傭兵 :
「何。おたくには生きててほしいと、思っただけだ。
 …………ちまちまと薬を融通してくれるおたくには助けられてるからな。俺も生きて、働くためにこうしてんだ。
 だからやることやったら、今度はきちんと家に帰んな。
 良い年した娘が、何時までもふらついてるべきじゃない」
 
 ぽんぽん、と肩を叩いて、偽造パスをアトラに握らせる。

引退した傭兵 :
「おう。いざとなりゃ弾避けに使ってやれ。
 次に会ったら、今度は村のもんで旨い飯振舞ってやるよ。お互い生きてりゃあな……」

 そう言って、男は手を振り見送った。
 見えなくなるまで手を振っていた。
 旅の最中、幾つも繰り返してきた出会いと別れ。次に会う保証などないままに、別れの文句を口にして、幾度目か分からないそれを果たす。

SYSTEM :
 かくして、もう一つの意志が今、合衆国という巨大な欲望の力場に、引きずり込まれるように導かれていく。
 目指すはUGNの拠点。望むは戦鬼との邂逅。
 使えるものすべて、行ける場所のすべてを遣って、捜し続ける。今までそうしてきたように。今までそう動いてきたように。

SYSTEM :
 ──生きるために、当然のように成してきたように。
 Rover
 旅人は、苦難待つ合衆国の混沌へ足を踏み入れる。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【OP⑤ そして環は巡り行き-Testament-】

SYSTEM :【OP⑤ そして環は巡り行き-Testament-】

登場PC:Natalie Garcia
登場侵蝕:あり

GM :お嬢!登場侵蝕の時間です!

ナタリー・ガルシア :任せてくださいな!

GM :どうぞぉ!

ナタリー・ガルシア :1d10 (1D10) >

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 31 → 40

GM :お、お嬢!!!

ナタリー・ガルシア :……少しはしたないかもしれませんけど、ドキドキしてしまって

GM :キンチョーしますねえ

ナタリー・ガルシア :ワクワクもして……こほん、きちんとお務めを果たしますわ

"最後の一人" :

   ──君は運命というものを信じるか?

"最後の一人" :

 例えば、この出来事が予め設定されているとしたら。
 起きる前、起こす前に指定されているとしたら。
 誰かも分からない、名前も知らない。見たこともない。
 そんな連中の勝手な取り決めで線路が決められていたとして……
 君はそれを信じるか?

"最後の一人" :
                 プラン
 起こるべき物事、そのすべてが予め決定されているとしたら。
 起こすべき物事、その価値がすべて予定されているとしたら。

 多分、そいつが多くの場合の幸福の形なんだろう。
 エヴァンジェリン
  福 音 と呼ぶのもうなずける。

"最後の一人" :
 ある人間は言う。
 善とは見知らぬ他者に対して献身出来る存在と。
 またある人間は言う。
 悪とは欲望の為に他者を顧みない事が出来る存在と。

"最後の一人" :
 『正義』の定義はめまぐるしく変わる。それは多くは、『規範』と言い換えられるからだ。
 勝った奴が正義とよく言うだろう?
 正義の対義語は悪じゃない、もう一つの正義というだろう。
 要するにソイツは、人によってはあんまり重要じゃないんだ。勝手に勝ってた奴が陣取る場所なんだから。

"最後の一人" :
 ある人間は言う。
 善とは見知らぬ他者に対して献身出来る存在と。
 またある人間は言う。
 悪とは欲望の為に他者を顧みない事が出来る存在と。

 ……そいつは誰が、何時決めた?

"最後の一人" :
 意志がそういう巡り合わせで決まってるんだとしたら。
 善いだとか、悪いだとか。
 そいつに何の意味がある?

"最後の一人" :

 ────オレはそういうの、面倒だから。
 やることをやって、すべてにカタをつけたいんだよ。

SYSTEM :
 沈む。沈む。沈む。

 あなたは、最早見慣れた景色の中で、遠い水面を見上げて沈む。

SYSTEM :
 深い深い海の底へと沈みながら、ゆりかごのように波に揺られて。
 あなたは幾度目か分からない、安らぎの中に沈んでいく。

 これは、夢だ。
 あなたが何度となく見てきた夢。
 泳ぐこともできないまま、ただ安らぎの中に沈んでいくだけの夢。

SYSTEM :
 泡の音を聞く。水面を見上げる。
 海のように見えたそこは、しかし己を除いて誰もいない。
 魚もいない。海月もいない。鯨も。鮫も。
 きっと海の中に生きる、いと小さなものたちさえも。
 
 ──この夢には、自分を除いて誰もいない。

SYSTEM :
 けれど……
 不思議と不安感はない。
 ただ、母の胎内に在るような安心感があった。
 何かに守られているような、或いは求められているような。
 あなたが何度となく経験してきた、沈夢の中だった。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
 これは何の変哲もない彼女の日常。
 毎夜と言わずとも。いつだとて経験してきた、沈み続ける夢。
 別段、多くを語る必要はなかった。
 とくにナタリー・ガルシアの人生においては、見えた日はほんの少し運が良いというだけの一幕で。

SYSTEM :
 だからこそ。
 いつも通りの朝が来る。
 水面から浮き上がるように、その意識が浮上する。

SYSTEM :
200X/11/2X
アメリカ・メリーランド州 高級住宅街。

あなたはいつもの寝室で目が覚めた。

SYSTEM :
 目が覚めてしまった。
 幾ら今日が平日で、いつも通りに『朝練』の為に早起きが必要だからといって。
 布団の中のどこに夢の名残を捜しても、それは見当たらない。

ナタリー・ガルシア :指の隙間から零れ落ちる一握の砂のように、名残惜しい感覚は泡沫へ消えていく。

――小さな溜息、意識的な力を込めた瞑目。

ナタリー・ガルシア :            みどり
開いた双眸には春の萌黄の 翡翠。

         ルビー
朝焼けよりも燃える紅玉を慣れた手付きで纏めて、小さく伸びを一つ。
後ろ髪を惹かれる想いを、意図的に言葉で切り替える。

「きっと、今日はいいことがありますわ!」

小さなつぶやきは、己に言い聞かせるように。

ひわ
繊弱やかにすら見える少女の体は、しかし溌溂とした意志を宿している。

ナタリー・ガルシア :「お父様はまだ眠っているかしら……起きているなら、朝をご一緒したいのだけれど」

服を着替えれば微睡みは遠く後ろへ消え去って、目の前に広がる今日への期待に胸が高鳴る。

最近、お父様の真似をして飲み始めた珈琲はまだ苦いけれど――芳しい香りを二人で楽しむのは、いつもよりも贅沢な朝に違いない。

ナタリー・ガルシア :      リビング
部屋を出て、憩いの間へ。
一日の活力は朝食から。

――今朝は何をいただこうかしら、などと考えながら、キッチンを覗き込んだ。

SYSTEM :
 目覚めは快調。後ろ髪を引かれるような気持ちを、自分に活を入れるように一言呟き振り切ったあなたは、てきぱきと服をハイスクールの学生服に袖を通す。
 繊細で華奢で、まるで人形のような体。けれどその紅玉の瞳の中には、滾るような活力が今も籠っていた。

SYSTEM :
 颯爽と部屋を出ると、鼻腔を擽るのは芳醇な珈琲豆の香りと。
 それに混ざって流れてくるこの香りは、卵と肉の……恐らくベーコンエッグだ。

SYSTEM :
 特に意識せずとも、分かる。
 風に流れる匂いと、音。
 父は変わらず朝が弱い様子で、今ずいぶんと眠そうに寝間着のまま歯を磨いている。
 母はキッチンで、朝食の準備を進めている。

SYSTEM :
 ──あなたは、不思議な力を持っていた。
 それは普通の人の手にはなく、ただあなたが手にしたギフト。
 人よりほんの少し耳がよく、ほんの少し鼻がよく、ほんの少し足が速く。
 ……そして、誰にもできないようなことが出来た。

SYSTEM :
 それはあなたにとって当たり前のことで。
 それが当たり前でないと知った時から、あなたの内にその意志が芽生え始めたのだ。

SYSTEM :
 居間に向かう。
 そこにはあなたが、先んじて感じ取った通りの景色が広がっていた。
 母は鼻歌交じりにキッチンに立ち、今しがた焼き上がったベーコンエッグをトーストの上に載せているところだ。

ナタリー・ガルシア :意識せずとも声が弾んで、口角が上がる。

「おはようございます!お母様、お父様」

溢れる笑みそのままに、朝食が盛り付けられた食器を配膳する。そのまま、お母様がエプロンを脱いで食卓に就くまでに芳しい朝の香りをカップへと注ぐ。

お父様と、色違いのお母様のカップには八分目まで注いで、一回り小さな自分のカップへは半分だけ注ぐ。
残りは白いミルクを注げば、私の舌にも優しい珈琲が完成する。

ナタリー・ガルシア :私が椅子に座るのと同時、眠たげな目を擦りながらお父様が新聞を片手に現れる。

お母様とお父様、二人が席につくのはほぼ同時に待ちきれなかった私が口火を切る。

「それでは、いただきましょう!」

少しはしたないけれど、それを咎めるものはここにはいない。
なにより、目の前の朝食が冷めてしまうことのほうがよっぽど咎められる悪だ。

ナタリー・ガルシア :いつものように、いつも通りの団欒が朝のリビングに広がった。

SYSTEM :
 そうして、家族で食前の祈りの言葉を捧げる。ガルシア家はユダヤ教の家系でもあった。信仰深い訳ではないが、全く蔑ろにしている不信心でもない。
 いつも通りの朝の団欒だ。
 

ガルシアの父 :
 寝ぼけた様子を、珈琲を一杯飲んで目を覚まさせる穏やかな父と。

ガルシアの母 :
 いち早く手を付けるあなたを微笑ましく見守りながら朝食に手を付ける、闊達な母。

ガルシアの母 :
「こらこら、そんなに焦って食べたら火傷するわよ? ナータ。
 せっかちなんだから、もう」

ガルシアの父 :
「あ、今日も紅先生の所で朝練かい? 
 毎度ナータはすごいな、毎朝早いのに」

ガルシアの母 :
「……それに引き換えパパはちょっと朝弱すぎ。
 漸く上院議員にまでなったのに、朝弱いとこはほんと変わんないんだから」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「……ん、ぅ!?」

言葉を投げかけられた瞬間、口の中に朝食の味よりも熱が広がって目を白黒させる。

それでも、口の中のものを吹き出してしまうような醜態はなんとか回避。
呑み込んでから、今まさに身を以て味わったことを教訓として殊勝にうなずく。

「……はい、気をつけますわ、お母様」

ナタリー・ガルシア :ヒリヒリと痛むまではいかなかったけれど、目に見えて朝食を口に運ぶ速度が落ちる。

となれば、会話に割かれる口が空く。

「はい、お父様!今日はコントロールの訓練ですの!」

力を『使える』ことと、力を『使いこなす』ことは天と地ほどの差がある。物心ついた頃から慣れ親しんできた甲斐あって、力を使うことは無意識でも出来るーーでも、使いこなせているとはとてもではなけれど。

ナタリー・ガルシア :「お父様は、今日はこの後お仕事ですか?」

どういった仕事をしているのか、詳しくは知らないけれど、大切な仕事をしていることはよく理解している。

寝ぼけ眼が、いつも通りの優しく聡明な光を宿したのを見て、話を振る。

ガルシアの父 :
「ああ、あのベースボールの送球練習みたいに空き缶を撃っていく訓練だね。あれからすっかりうまくなったって先生から訊いてるよ。もう自分に傷をつけることもなくなったって。
 でも無理はしないように。使い過ぎると手元が狂う類の代物だって聞いているよ」
 

ガルシアの父 :
 ……時に、「力」に関する話を、日常家庭で訊くことは少ない。とくに後世においては、その手の力は秘匿され、或いは縁者自身の手で隔離されるのが常だった。
 部活動の進捗のように語られるのはごく少数だ。

ガルシアの父 :
 それも、この家庭がやや特殊な立ち位置に位置する故だろう。 

「うん。今日はベセスダ……紅先生の所属の施設まで見学会の予定だよ」

 現メリーランド州上院議員である彼は、ひいてはベセスダに拠点を置くUGNのレネゲイド研究に関して国家機密を閲覧し、その活動内容に大なり小なり関わっている人間だからだ。
 

ガルシアの父 :
 新興組織、UGN……メリーランド州ベセスダを拠点として米国各地の原因不明のR事件に応じた自警団『ガーディアンズ』の統括。
 一研究者でありながら各地に奔走したというアルフレッド・J・コードウェルは、各国政府に対してR因子に対する警鐘を鳴らしたという。

ガルシアの父 :
 一刻も早くの対策を訴えるコードウェルの声に、反応は大きく二つに分かれる。
 いきなり国家以上の技術力と軍事力、影響力を手に入れ始めた民間団体を警戒する声と。
 今なお増え続けるRテロ案件に対応するため、これと協力する声。
 ……今、ガルシアの父がいずれなのかは最早語るまでもない。

ガルシアの父 :
「……ああ、そうそう。
 いつもはコードウェル博士に案内されて施設の中を案内されたりするんだけど。
 今日は博士が出張してるみたいでね」

ガルシアの父 :
「今はJapanに出張してるんだって。
 少し手の込んだ案件らしくて、暫く帰ってこないんだとか。何でもクリスマスは向こうで過ごすって話だよ。
 ……だから、代わりに今回は本部を任されてるリリアさんに案内してもらうことになったんだ」

ナタリー・ガルシア :「百発百中ですわ!もちろん無理はしないように、怪我はしないようにしていますわよ?」

とりわけ私は、疲労で集中力が落ちると精度が甘くりますから――自らをも巻きこないように、無意識レベルで力をコントロール出来るようになるのは急務です。

ナタリー・ガルシア :「先生のところ、と言いますと――確かに、最近博士の周りも少し慌ただしいというか、忙しなかったかもしれません」

風が運んだものを常に精査し、理解しているわけではありませんが、私はその場の『雰囲気』を擦る力には秀でているようです。
……なんとなく、ではありますが。

ナタリー・ガルシア : Japan
「極東――海の向こうですわね。生誕祭も向こうでということは、来年までずっと?」

遠い異国の地、コミックではシノビやサムライが出てくることが有名な彼の地。私も一度探訪してみたくはありますが、博士はどんなご用事なのでしょうか。

ナタリー・ガルシア :「それにしても……リリアお姉さまに案内していただけるなんて」

お父様を見つめる視線に、少し羨望が混じってしまったのは仕方のないことですわ。

「その、お姉さまのご様子を今晩教えて下さいね……?」

思わず、付いていきたいと漏れ出しそうな言葉をぐっと呑み込む。それは、お父様にもお姉さまにも、誠実さに欠けてしまう。

ナタリー・ガルシア :今は、そう、目の前のことをきちんとこなしていくこと。

それこそが大切なのだと、自分に言い聞かせる。

ガルシアの父 :
「うん。査察、というと仰々しいけど、皆の仕事ぶりを見て回るのが今日の御勤め。忙しい所を邪魔して申し訳ないのだけどね。
 
 ……まだまだ、R因子に関して分かってないことも多い。誰を信じて誰を疑うべきなのか、区別がついてない人もたくさんいる」

ガルシアの父 :
「ただ僕は彼らが一生懸命、色んな人から後ろ指を指されながらも頑張ってることを知ってる。
 特に誰かが認めて貰えるでもなく、街を護ってくれていたことも、身を以て知っているつもりだ。
 だから……もっと多くの人に、彼らのことについて理解してもらうのが、僕のやるべきことなんだと思ってる」

ガルシアの父 :
「そのためにもまずは、僕が色々勉強しないといけない。
 腕っぷしも、頭もいい訳じゃない、そんな僕の頼みを彼らは喜んで引き受けてくれた。それに、出来る限り応えていきたいんだ」

ガルシアの父 :
 変わらず頼りない、しかし穏やかな笑みを浮かべて、父は続ける。
「博士も頑張っているみたいだ。内容までは教えてくれなかったけど、日本と言えばこちら以上に法整備が進んでいない。
 今回は、あちらの要請に応じて海を渡ったんだって」

ガルシアの父 :
「……うん。
 ナータはあの人のことがとても好きだから、折角だから何か伝えておきたい事でもないかなと思ったのだけど
 なら僕の方からよろしく言っておくだけにしておこうかな」

ナタリー・ガルシア :「皆さんも、そんなお父様だからこそキチンと知って欲しいと思っているはずですわ」

理解のできないもの、未知の存在、己よりも強大な暴力を持つ者――目の前に横たわる隔絶は一足で飛び越える事はできません。

だからこそ、歩み寄り、理解しようと努力する者にこそ、助けられていると感じている者も多く、だからこそ誇らしい。

「お父様は立派ですわ!私もお父様に負けないよう、より一層頑張ろうと思えるのです」

ナタリー・ガルシア :「私にとっては博士も、お父様も、お姉さまも、目指すべき目標なのです――お父様ももっと胸を張ってください」

未踏の荒野に足を踏み出すことの出来る、その強さ。
それは、目の前の相手を捻じ伏せる力とは別の――得難い力ですから。

その力を鍛えることは、私の特別な力の訓練よりもずっとずっと難しいのです。


ナタリー・ガルシア :「お姉さまが博士の留守を預かっている以上、浮足立つようなことはないとは思いますが――皆さんも、お父様の査察で引き締まるでしょう」

憧れのお姉さまへ話したい千の話題、伝えたい万の言葉をぐっと堪えて、瀟洒な澄まし顔ですわ。

「はいっ、お姉さまによろしくお願いしますわ!」

ガルシアの母 :
「うんうん。ちょぉぉーっと頼りないとこはあるけどねー。
 パパは私とナータの誇りのパパなんだから、もっと自信を持って」

ガルシアの父 :
「あっははは……うん、頑張るよ。目の前のことをきちんとこなしていく、自分に出来ることをする。
 何事も地道な積み重ねだ」
 

ガルシアの父 :
「うん、僕もあの人には、返しきれない恩がある。よろしく言っておくよ」

 その時、あなたのお澄まし顔を見て察したのか、母からアイコンタクトが父に飛んだのが見えた気がした。
 鈍感な父にくぎを刺すみたいに「ちゃんとあの子のこと色々話しておけよ」の合図。父はまたまた困ったような笑いを浮かべながら珈琲を一杯口にする。
 

SYSTEM :
 そうして朝の団欒、穏やかなひと時はあっという間に過ぎていき。
 朝食を平らげたタイミングで、丁度いつもの出る時間だ。普通の学生よりは少しばかり早い、まだ隣のお兄さんが朝のランニングを始めている頃。

SYSTEM :
 訓練の定刻には間に合うだろうか? きっと問題ないだろう。
 あなたは足の速さにおいては、少なくとも自分の中で自信がある方だ。

ナタリー・ガルシア :「お母様、とても美味しかったですわ!」

朝食を食べ終えた時間は、普通であれば遅刻が確定する時間――けれど、わたくしにとっては時間通りですわ。

「それではお母様、お父様、行ってきます!」

時計を横目に、玄関の姿見で己の姿を確認。いつも通り、見慣れた己の姿がそこにある。
変わらぬ毎日、昨日よりも胸躍る今日に期待を膨らませて、朝練に遅れないように玄関の扉を開く。

ナタリー・ガルシア :朝の日差しは、わたくしの心を映したように燦然と輝いて――今日もきっと、素敵な一日が待っていますわ

ガルシアの母 :
「はぁい、お粗末さまでした……ああ、ちょっと待って」

 玄関を出る前に席を立つと、長身の母は少し屈んでその小さな体をぎゅっと抱きしめる。母は挨拶のハグを欠かしたことはなかった。

ガルシアの母 :
「ん、それじゃ、行ってらっしゃい!
 気を付けてね!」

ガルシアの父 :
「行ってらっしゃい。学校が終わったら寄り道せず帰ってくるんだよ」

SYSTEM :
 そして変わらぬ朝から、また一日が始まる。
 希望と期待に満ちた面持ちで、あなたは明日の扉を開く。
 今日もまた、きっといい日になる──根拠もないが、そんな確信を抱きながら……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
 ナタリー・ガルシアはUGNエージェントを目指し、日々研鑽を摘んでいる。
 確かな愛情に包まれながら。

 人間関係に恵まれ、金銭に恵まれ、環境に恵まれ。
 概ね欠けることのない、良好な関係の中で、彼女がそれを目指すようになったのは、一つの景気がある。
 単なる力を持つ不思議な娘でなく、それを人の為に使おうとしたことには、一つの由来があった。

SYSTEM :
 その時、目は何も見えなかった。口も利くことが出来なかった。体も動くことが出来ない。唯一自由な聴覚と、風を感じる体の感覚だけが、この暗がりの中であなたに今の状態を伝えてくれた。
 ……後で聞いた話によれば口を塞がれ目を塞がれ、拘束衣で体を拘束されていたという。
 それだけ厳重に縛っているのは、恐らくナタリーの不思議な力を、あらかじめ知っていたからだろう。

SYSTEM :
 外の空気と隔絶されているのは、車の中にいるからだろう。音の籠り方が昔乗ったバスのものと似ていることから、恐らく大型車両のようだった。
 

  :
『足止めの連中が利いたな。追手は来てねえ。
 後は目的地まで付けば、そっから拠点までひとっとびだ』

  :
『案外ラクな仕事だったな。オーヴァードとはいえ小娘一人、こうなっちまえば可愛いもんさ。
 おい、もっと飛ばせねえのか? さっさとずらがろうぜ。州さえ渡っちまえば連中は追ってこれねェ。
 便利だねえ、バロールってやつァ』

SYSTEM :
 それは、当時のあなたが知らない概念だった。
 生まれてから不思議な力から守るため……その力が人を傷つけず、自分を傷つけないように護るため形成された箱庭の中、あなたを害する悪意は何もなかった。
 父の愛と母の愛、決して甘やかすだけでなく正しい善悪を学びながら、時には大きなけがまで負いながらも決してあなたを傷つけることはなかった。

SYSTEM :
 そのあなたにとって……
       ・・
 このように、モノを扱うような。無関心の悪意が突き付けられるようなことは初めてだったのだ。

  :
『身代金、いくらブン取れっかなぁ。
 百万ドルぐらいポンとくれそうだ』

  :
『バカが、今回は身代金目的じゃない。
 あの図体だけは達者な日和見主義に、少し脅しをかけてやるだけだ』

  :
『面倒なのに居座られてちゃあこっちも商売あがったりだからな。
 俺達が気前よくうまい汁を啜るためにも、そしてリーダーの言う新時代のためにも、奴等には消えて貰わないとだ』

  :
『んあ、そーだっけ?
 まあ、いいや。俺ぁ銭とまんまがもらえりゃそれでいいワケだし、ウチが儲かるってのに変わりはねえか』

SYSTEM :
 ……箱入り娘で、年端も行かないあなたには、言葉の内容は何一つ分からない。
 分からないが一つだけ理解したことがある。
 彼らは純粋に、単純に、自分のことを『モノ』として扱っていること。
 人としての愛情や、同じ痛みを感じるものに対する情の類は一切ない

SYSTEM :
 金銭の代わり。道具の代わり。
 精々がその辺り。
          ファンタジー              エ イ リ ア ン
 ……それはあなたの 箱 庭 の中に土足で踏み入った『理解しえない存在』だったのだ。

ナタリー・ガルシア :辛うじて、息と微かなみじろぎだけが許された世界。
それでも、少女に宿る力を全力で振るえば抵抗自体は出来たかもしれない。

それをしなかったのは――それが出来なかったのは、少女が己の価値を理解し、すぐさま害されることがないと理解していたから……ではなかった。

ナタリー・ガルシア :
少女の体を真に戒めていたのは、拘束衣ではなく耐え難い程の恐怖だった。

息を一つすることさえ、躊躇うような恐れ。
初めて触れる、人の悪意――それも、己へと向けられる剥き出しの感情。

目は見えずとも、少女は己の力が故にそれを理解していた。
  ・・・・・・・・
理解してしまっていた。

ナタリー・ガルシア :悪人というものが居ることは知っていた。
人が悪意を以て人に対することがあるということも、両親から教育として、外の世界の知識として、よく知っていた。
          そとのせかい
けれど、それは所詮『 箱庭の外 』のお話でしかなかったから。
少女は知っていても、理解してはいなかった。

ナタリー・ガルシア :寒い冬よりも、氷に触れたときよりも、手足が凍えるように冷えて震える。

思考が虫に食まれたように黒く塗りつぶされて、ただ助けを願いを乞うことしか出来ない。

どうして、という不理解と、理不尽からの自己逃避。

――わたくしは何も悪いことをしていないのに。

ぞんざいに扱われたせいか、背中と手足がジンジンと痛む。
それ以上に、初めて世界に独り取り残されたような心細さに――縋るものさえない闇の中に取り残される絶望に、少女の心が悲鳴をあげていた。

ナタリー・ガルシア :
それは、これまで少女が知らなかった『傷』として深く刻まれた。

SYSTEM :
 そんな底冷えするような、温かさと無縁の暗がりの中で、話し声は続く。

  :
『それより段取りの方、確認しとけよ』

  :
『へいへい。えーっと、とりあえずゲート貼っておいたポイントDまで向かって……
 それから倉庫にぶち込んで交渉役に連絡。定番のアレをするわけだなぁ。もしもぉ~し』

  :
『ああ。そいつの応答が来るまでは、暫くベイビーシッターの真似事ってわけだ。
 コレは仮にもオーヴァード、癇癪で暴れられたら困る。見張りがいるだろう。尤も……』

  :
 ・・・・・・・
『生死は問わない。あんまり暴れるならその場で殺っとけ』

  :
『あり、いいのかそれ?』

  :
『要求は身代金じゃない、奴らが退陣すればそれでよし。
 首を縦に振らなきゃあそれまで。
 縦に振る迄渋ってもそれまで。
 管理が困るならその場でやっちまってもいい』

  :
『ってえと……
 ・・・・・・・・・・・・・
 面倒になりゃぶっ殺していいってコト?』

  :
『そうだ。殺して埋めちまえば人質の生死が分からん奴らは一生生きてる可能性に縋り続ける。
 とっくにくたばってるだろうって脳みそで分かっても、僅かな希望に縋って要求を呑み続けるしかなくなる』

  :
『なに、このレネゲイドの時代、声でも何でも偽装するのは難しくない。ありもしねえ人質のことを仄めかす手段は幾らでもある
 そうなれば、俺達は蛇口をひねる感覚で金も権力も引き出せるって寸法さ』

  :
 Gotcha  ダーティ・シティ
『やりぃ!  D . C のブタ共から財布くすね放題ってわけだ!
 っと、そうじゃなかった。とりま目的はガルシアの退陣だったよな』

SYSTEM :
 ──金銭は大切なものとは教わった。
 ──命はそれ以上に大切なものと教わった。
 ──それをないがしろにすることは悪いことで、天罰が下ると教わった。

SYSTEM :
 今起きていること、話の内容は、まるきり真逆の内容だった。
 何もしていない筈なのに道具のように扱われ、気まぐれに殺される立場に置かれることも。
 そんな『悪いこと』を、暇つぶしの談話の中で平気で口にし、実行することも。

SYSTEM :
 ────死。
 想像すらできない深い暗がりの中、空想の中に等しい『いつかは辿る場所』として聞いたに過ぎない冷たさ。
 それが、いま、見えない背中にぴったりとくっついて離れない幻覚を感じさせた。

ナタリー・ガルシア :少女にとってのこれまでの常識が揺らぐ。
何よりも尊いと教えられ、自身もそうであると疑いすらしなかったものを雑談の中で踏みにじられる。

少女に向けられた言葉ではなかったが、その悪意の刃が放たれるたびに少女を確かに傷つけていた。

話の内容まではわからない、けれど、少女自身の命と、少女が何より敬愛する両親が踏みにじられようとしていることは理解できた。

ナタリー・ガルシア :・・・・
それでも。

それでも、少女は抵抗らしい抵抗を――抵抗しようとする思考さえ、自身の中で持つことはなかった。

ナタリー・ガルシア :死神の鎌が押し当てらたことに気付きながら。
ここで立ち上がらねば大切なものが脅かされると分かっていながら。

幼い少女は、向き合わなければならない恐怖から目をそらして、耳をふさぎ、蹲った。

自分は悪くない。その言葉に縋って、言い聞かせて――ならば、『誰かが悪い』のだろうと。

己の不幸を押し付ける先を探してしまう。

ナタリー・ガルシア :それは、奇しくも父にしてはならないと教えられていたことであり――恐怖から、困難から、逃げるための自己正当化でしかなかった。

痛みも苦しみも知らない、世界を知らない少女がそう考えてしまうのも無理はない話だ。

これまで善く生きてこれたのは、ただ単に恵まれていただけなのだから。

ナタリー・ガルシア :けれど、少女はそんなことには気づかない。

少女を害した者達も同じく、『悪者を押し付け続けた』末にこうなっているのかもしれないということも、己が恵まれていたがゆえに悪意を知らなかっただけだということにも――

ただ、己とは『違う』ものだとして、悪意を――現実を遠ざけた。

ナタリー・ガルシア :それこそが、少女の父が戦っていたものであると、気づきもせずに

SYSTEM :
 ……初めて感じる恐怖。恐れ。極限まで狭まった視野の中で、恐れ故に逃げ道を捜す。
 それは超人の力を持つ者でも金銭に恵まれた上流階級の者でもなく、ただの人間として当たり前の行為だった。
 屹立する問題から目を逸らし、無意識に悪を捜し続ける。それを見出すことで快を得て、一時の恐怖を紛らわせる。
 

SYSTEM :
 そして普遍的なもので、誰もがそこに流れるが故に、それは父から強く戒められてきたものでもあった。
 閉ざされた中。望みが断たれゆく中、自ら深みにはまりながら、それは呪いとして澱を作っていく。

SYSTEM :
 その澱が、心を染めていく中で。
 しかし確かに、明確に。あなた個人を呼ぶ声がした。

  :
「……よく頑張りました。
 少しだけ、遅くなりました」

  :
「ごめんなさい。悪を捜すなら、それは私ということにしておきなさい。
 そして、その罪は、これから清算しましょう」

SYSTEM :
 聞き覚えのない声だった。女性の声だ。この車内には、女性は乗っていなかった筈なのに。
 恐怖から鋭敏になった感覚で、載っている人間の頭数すら把握していたのに、その存在にあなたは全く気づけなかった。
 そして、それは恐らく他の者達にとってもそうで。

SYSTEM :
 ゆっくりと、拘束が解かれるのが分かる。
 ガムテープがはがされ、拘束が解かれ、最後に目隠しが外される。

SYSTEM :
 瞼を開いた先。数十分か、数時間か。分からないが、時間を経て開いた瞼に、光の如く舞い込む金砂の髪
 凛々しい顔立ちをした女性は、見覚えのない人物だったが。

金の髪の女性 :
「遅れてごめんなさい、可愛いあなた」

金の髪の女性 :
「もう大丈夫です。
 さあ、私の手を取って」

ナタリー・ガルシア :その声を、少女は最初、聞き間違えだと思った。
車内の状況は把握していて、それ以上に両親以外に少女を助けようとする者がいると思ってもいなかったから。

手を差し伸べてくれる者がいるとするならば、両親しかいないと思っていた。

だから、続く言葉には混乱が先に来た。

ナタリー・ガルシア :
己が悪かったのだという、その言葉に。
そんなことはないと、そう告げることも出来ず。

――気づけば、誰かが戒めを解こうとしていた。

ナタリー・ガルシア :
視界に飛び込んだのは、月明かりを受けて輝く金細工。
そして、その声に、その姿に、直接触れて、少女は二つの確信を抱いた。

もう大丈夫だという安堵、自分は助かったのだと、理屈抜きにそう確信出来た。

ナタリー・ガルシア :
そして、同時にこうも思った。

ナタリー・ガルシア :
――この光景を、きっと自分は生涯忘れないだろう、と

ナタリー・ガルシア :「ぁ、お…お姉さまは、だれ?」

差し伸べられた手を取っていいか、逡巡した末におずおずと触れて、漏れた言葉がそれだった。

リリア・カーティス :
「──私は、リリア」

 彼女はほんの少し間を置き、薄らと微笑んで名乗り上げる。
 リリア
 白百合の名。しろがねの甲冑と、金細工のような髪をしたそれは、まるで光が降りてきたよう。
 
 差し伸べられた手を。彼女は力強く握り返し……

リリア・カーティス :
 そのまま、ぐい、と抱き寄せた。
 
「しっかり捕まって下さい。離れないように」

 有無を言わさぬ語調。その理由は、すぐに理解させられる。

武装した男たち :
『こいつ、どこから湧いてきやがった!?』
『UGNエージェントか!
 クソ、陽動の奴ら、一体何してた!』

 トラックで見張りを続けていた男たちが、慌てた様子で提げ持った小銃を構える。
 どうやら、全く神出鬼没にその場に現れたようだ。

武装した男たち :
 bullshit
『クソがッ、くたばれバケモン!!』

 74年式カラシニコフ自動小銃。……とは、当時の自分も知ることはなかったが、少なくともその口から吐き出された炎と激しい音は、それだけで人を害する何某かであると否応なく分からされる。
 

リリア・カーティス :
 テレビジョンの中、ハリウッド映画も見たことのない子供にすら分かるような暴力の嵐。

 ……しかし、飛来する礫の悉くが直前で停止した。
 殺到する銃弾の悉く、まるで見えざる壁に阻まれた。
 

リリア・カーティス :
 ばち、ばち。と、稲妻のようなスパーク音と共に、それら礫が床に転がる。
 何発撃ち放とうと、例外はない。それを、彼女は全く相手など意に介さない様子で、ただ抱き据えた少女の身だけを案じて見下ろしていた。

ナタリー・ガルシア :両親以外に抱きしめられたことも、銃を向けられたことも、少女にとっては初めてのことだった。

耳が痛いほどの音の連なり。過敏になった感覚にとっては、もはやそれは衝撃に全身を叩かれているようなものだった。

そして、向けられた害意。
無関心な悪意とは違い、明確に傷つけるための意識がいくつも向けられているのを感じて、少女は――

ナタリー・ガルシア :
――どうしようもない状況のはずなのに、ただ、己を抱きしめる人を見上げていた。

ナタリー・ガルシア :
見下ろすように向けられた視線と己の視線が結ばれる。
月を背に、此方を案じるその眼差し。
向けられた脅威も、害意も、全てその眼差しの前では意識の外にあった。

「……リリア、リリアおねえさま」

呟く、その名を己に刻むために。
離れないように、自らも抱きついて目の前にある他者の体温に安心する。

ナタリー・ガルシア :「……絶対、離しませんわ!」

指が白むほどの力で、すがりつくように抱きつく。
けれど、そこにはもう、怯えはない。

リリア・カーティス :
「よろしい」

 くすり、と微笑み返し、慈しむようにその赤い髪を撫ぜる。
 縋る小さな命を手に抱えて、彼女は漸く視線を敵に切り替える。

リリア・カーティス :
 騎士の装いの彼女は、しかし徒手だ。
 左の手で少女を抱き据え、右の手でその髪を撫ぜる。得物たるべきものを何も持っていない。
 ただ、ゆっくりと敵意の眼差しをそちらに向け……一喝する。

リリア・カーティス :
     ・・
「──────去ね」

リリア・カーティス :
 それに刃は伴わなかった。
 それは暴力性を伴わなかった。
 そこに力が発現することはなく。
 ただ、その視線を向け、一喝した。
 

リリア・カーティス :
 その人睨みを利かせたというだけに過ぎない筈だ。
 にも拘らず……
 

リリア・カーティス :
 一喝と共に迸る気迫。それは中空を走り、車内の悉くにを振るわせて。
 

武装した男たち : 
「か────」

 何が起きたのか、さえ理解できなかったのだろう。
 ただ茫然と声を漏らした男たちは、立ちすくんだまま、手元から銃を取りこぼして。
 一斉に倒れていった。

リリア・カーティス :  Faith
「……信念なき力。芯なき力など、脆いもの。
 ですが……この様子ではまだまだ、皆に前線を任せてはいられませんね」

 一仕事終えたように目を伏せて独り言つ。
 それは一つの力の結論でもあったかもしれない。

リリア・カーティス :
 ──強者の一喝は、武威を示すまでもなく退けるものだ。
 力を極めたものに、もはや力は不要。
 暴力でも、兵器でもなく、滅ぼすでなく。
 ただ、矛を交えるまでもなく……膝をつかせるのみ。

リリア・カーティス :
 誰一人傷付けることなく戦いを終わらせる。
 しかし、ハンドルを失ったことが影響したのだろう。急激に車体が傾ぎ、コントロールを失い始める。
 
「少し揺れます。
 この手を、離さないで」

リリア・カーティス :
 言って、彼女はその手に抱えながら、強く踏み込んだ。
 鋼の鎧、鋼の体。重い装甲に身を包んだ彼女は、けれどとても身軽に少女を抱えて天高く跳びあがる。

 イオノクラフト……磁圧の反作用によって射出し、電磁力によって作り出したイオン風により浮遊する御業。
 まるで翼を以てゆっくりと降り立つようにナタリーを抱えて騎士は天から降りていく
 

リリア・カーティス :
 横転したトラックを傍目に、月明かりの夜空の街をゆっくりと下降する。
 

リリア・カーティス :
 すべての責務を為し終えた彼女に喜びはなく、悲しみはなく。
 ただこの手に収まった小さな命に対する慈しみだけがあった。

 ……それが、あなたに鮮烈に刻まれた、英雄の記憶だった。

ナタリー・ガルシア :その行いの全てが鮮烈な光景として――何より、向けられた慈しみの瞳こそが少女の原体験。

月夜に舞う、英雄の姿。
誰も届かぬ頂にいながら、他者を慈しむ者。
たった一人で、想像すら出来ないほどの責を背負って、それでもなお気高く立つその姿。

ナタリー・ガルシア :その姿に憧れて、その姿が目標になった。

閉じた箱庭。優しく穏やかに、ずっと続くと思っていた世界――それでいいと、それ以上を望むつもりもなかった小さな『私の日常』。

目指す場所は遠く、超えるべき困難は多く、そびえ立つ壁は高い。

けれど、けれども。
目指すべき場所は、目指すべき人は、己の中に刻まれている。

だから、もう、決して迷わない。

ナタリー・ガルシア :箱庭を飛び出し、外の世界に踏み出すことも厭わない。

暖かな庇護の下で生きることよりも、己の足で立って進むことを選んだのだから。

この先に何が待ち受けていようとも、この道を選んだことに後悔はない。

ナタリー・ガルシア :刻み込まれた英雄の姿。

その隣へとたどり着くまで――

SYSTEM :
 その日、抱いた決意の炎は、紅玉の瞳の奥で今も滾り続けている。
 あれから七年。
 追い続けた背中は未だ遠く、影すら踏めないまま時が経つ。

SYSTEM :
 確かに進むことが、出来ているのだろうか。不安に駆られた時間も、決してないわけではなかっただろう。
 けれど、出来ることから一歩ずつ。地道な道のりでも、確かに。
 敬愛する父から教わったように、あなたは努力を続けてきた。
     いま
 そして、現代もなお……

紅 蘭芳 :
「……そこまで!」

 ぴしゃり、と張った制止の声が響く。それは、訓練終了の合図だった。

紅 蘭芳 :
 RC……特に、広範囲に同時に干渉を可能とする風力の制御。今日は週に一度の、教官指導の元で一週間の成果を見せる日だった。
 とても広範囲に及ぶ風を御する力。それをどこまで正確に、同時に干渉することが出来るか。
 必要なだけの出力を出すことが出来るか。妨害の中でも性能を落とさず行使できるか
 

紅 蘭芳 :
 それらを見るために、公園一つを借り、人払いのワーディングを広域に展開していた。
 各所に当てていい的と、当ててはならない的を公園に配置し、どれだけの時間差を詰めて当てることが出来るのか。
 それを試すものだった。

紅 蘭芳 :
「……うん! 上出来!
 随分上達してきたね、もう風を遣うのに余分な力みも見られなくなってきた。
 やっぱり筋がいいなーナタリーちゃんは!」

ナタリー・ガルシア :研ぎ澄ました意識と、集中のせいで、僅かにあがった呼吸。軽く額に滲んだ汗を拭うよりも前に、数回、意識的に深い呼吸を挟んで落ち着ける。

               せんせい
「はい!ありがとうございます、 師匠 」

訓練と同じだけの実力を本番でも発揮できるかどうか。気質の差はあれど、反復試行の回数だけその誤差は収束する。

極論、いつでもベストを叩き出せるのが一番良いが――

ナタリー・ガルシア :形のないものをカタチを与え、意識して干渉する――それは、頭の中で精緻な絵画の始まりから終わりまでを描くような精密作業だ。

ほんの少し、制御が甘くなる瞬間はあったものの、それをカバーする形で軌道修正出来たので、自分の中では及第点。

ミスらしいミスもなく、完成までこぎつけたのを尊敬する『師匠』に太鼓判を押してもらえれば否応なくその口の端はほころんでしまう。

ナタリー・ガルシア :とはいえ、あくまでまだ訓練の時間。
緩みかける表情を、キリリと引き締めて姿勢を正す。

「教えてくださる方のおかげですわ――私に適切な訓練と、私に合った鍛錬方法、そこまで心を砕いて貰えば、応えたくなるというものです」

しかし、引き締めた表情とは裏腹にその喜色を隠し切ることは出来ず、口調には喜びが滲んでいる。

紅 蘭芳 :
「ふふ、どういたしまして! 私としてはちょっぴり出来過ぎた教え子を持って教え甲斐がないくらい。
   シンドローム
 同じ系統能力だから、ある程度メニューは揃えたけど、それを継続したのはナタリーちゃんだよ」

 喜びと達成感に、つい口調に喜びが出るのを、朗らかな笑顔で返す。

紅 蘭芳 :
「これもあなたの頑張りの成果です。正直、もうエージェントとして通用するぐらいだと思うな、私は」

 彼女は、ナタリーの能力の指導としてナタリーに付いている本部出身のエージェント。
    ホン・ランファ
 名を、紅 蘭芳という。かつては中国支部に属し、末席といえど中国の精鋭武闘派チーム『武林』エージェントに名を連ねたという。

紅 蘭芳 :
 イギリスに渡り、UGNの出資者の重鎮であるランカスター家の護衛にもあたった経験のある彼女は、その経歴からナタリーの教導に相応しいとされたのだろう。
 ……尤も、教官と教え子……という程の綿密な仲というと、やや関係は異なる。

紅 蘭芳 :
 RC制御に関する指導をしているが、『矯正』などを行っている訳ではない。
 チルドレンにするように、ある種「荒事で使い物になるよう」な教練をさせている訳ではなかった。
 

紅 蘭芳 :
 風の御し方、能力の使い方、知識面などを、週に一回やってきて、ハイスクールに行きしな、帰りしなに数時間、見てもらいながら課題を貰う……
 例えるなら家庭教師や塾講師というような立場だ。

紅 蘭芳 :
「そろそろ実戦を意識して立ち回りの練習の回数も増やしていこっか。
 でも、あんまり怪我することは平日にはやりづらいかなあ。
 ハイスクールの冬休みの間なんかはみっちり仕込めそうだから、親御さんに掛け合ってみるね」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「……そこまで褒めれると、流石に照れますわ」

満更でもないような、はにかんだ笑顔を返して佇まいから力を抜く。

      
「それに、私(わたくし)の目標を考えればまだまだ頑張らなければいけません」

それは謙遜や卑下ではなく、ただの事実として受け止めて、その上で目標を見据えた言葉だった。

ナタリー・ガルシア :「――合宿修行というわけですわね?」

ぐっと、両手を拳の形にして体の前へ、気合を入れるポーズ。

「楽しみですわ!お父様とお母様にも、それとなくお話しておきますわね!」

紅 蘭芳 :
「あっははは、あの人みたいにかぁ……」

 彼女は決まってリリアの話題となるとやや視線を逸らす。英国にいた頃、彼女はリリアから指南を賜ったこともあるという。
 その彼女が目を逸らす。その理由を直接ナタリーに話したことはない。恐らくナタリーもそこまで察してはいないのかもしれないが。

紅 蘭芳 :
 要するにキツいのだ。壮絶に。
 名前を聞くと夜に悪夢となってみる程度には。それはそれは過酷な訓練なのだとか。
 

紅 蘭芳 :
「でも目標は高い方がいいって言うしね!
 確固たる目標があるのはいいことです。うんうん」
 

紅 蘭芳 :
「ん、合宿! でも遊びに行くわけじゃないのと、きちんとメディカルケアの器具を持っていくとは言えそこそこしんどい訓練になると思うから、そこは注意!」

紅 蘭芳 :
「それに、別件でご家族と話しておきたいこともあったしね。丁度いいタイミングだと思う」

ナタリー・ガルシア :「はい!とりあえずは次の課題、ですわね!」

目標は遠く、目の前の課題は膨大だ。一つ山を越えれば、すぐに次の山が聳え立つ――それでも、その山を着実に超えて、己に力がついていくのを実感するのは確かな充足でもあった。

「もちろん真剣に取り組みますわ!せっかく忙しい中、時間を作ってくれた『師匠』につきっきりで教えて貰えるんですもの」

ともすればシャドーボクシングを始めそうなやる気を見せながら、意気込みを語る。

ナタリー・ガルシア :「お父様とお母様……と言いますと、お仕事の話でしょうか?」

それなら、と、頭の中で両親の予定を確認する。近いうちに、長期間家を空けるような話は聞いていないし、ちょうど良い時期かもしれない、と結論付けて言葉を続ける。

「それなら、ディナーでもご一緒にいかがでしょうか?」

ナタリー・ガルシア :いつもお世話になっている人を招いて持て成すいい機会となれば、両親もきっと賛成してくれるに違いない、と目を輝かせる。

「お母様から後でお電話してもらいますわね!」

紅 蘭芳 :
「おお、やる気十分ですなあ! 私もこれでも丐幇で(そこそこに)名を馳せた武辺者!
 早々に師匠の威厳は崩させはしませんよー!」

 得物の鞘の付いた斬馬刀を掲げ、片足を上げ、銅鑼の音でも鳴りそうな勢い!

紅 蘭芳 :
「ん。そうだけどもう半分はナタリーちゃんに関わることかな。
 ずばり、進路に関することなんだけど」

紅 蘭芳 :
 あなたが教官付きで教練していないのには幾つか理由がある。

「んとね、先にナタリーちゃんにも紹介しておくと……
 教官が付いて指導するのは、多くの場合チルドレンなの。成りたてのエージェントは同じエージェントの人が先輩として教育に当たることも多くて、そういう人は実戦で仕事を覚えるみたいにして学んでいくんだけど」

紅 蘭芳 :
「イリーガルの子がしっかりとオーヴァードに関して教育を受けるっていうのは結構難しいんだ。まあ大抵の場合、早いうちにエージェント登録してそれを仕事に動いていくことになるんだけど、家の事情がある子はそうもいかない。
 だからイリーガルの子でもオーヴァードの高等教育を受けられる、そういうのが今まではなかったんだけど……」

紅 蘭芳 :
「なんと! 来年からオーヴァードの子たちが集まって力の使い方を学ぶための學園が開校するのです!
 その名も『オーヴァードアカデミア』!」

紅 蘭芳 :
「あなたとご両親さえよければ一期生として、入学することが出来ると思うんだ。ナタリーちゃんなら私が推薦してあげられる。
 此処ではたくさんの同じ境遇の子たちと切磋しながら、力の使い方、制御について学んでいけると思うの……まだほんとに出来たばかりの学校なんだけどね」

紅 蘭芳 :
「だから、うん! ちょっと畏れ多いけど、そういうことなら一緒に夕餉の席でその辺りの話を少し詳しくさせてもらおうかなって。
 えへへ、なんだか申し訳ないなあこの上ごちそうまでいただくなんて……」
 
 一通り説明を終えて、夕餉の誘いに素直に乗る。
 この紅 蘭芳、空腹に彷徨った記憶の故か、馳走の誘いを断った試しはない。

ナタリー・ガルシア :「……オーヴァードアカデミア」

口の中で呟くように繰り返す。オーヴァードは、その力と出自の特異性故にまともな社会生きることは難しい。
もちろん、どのような環境でも勉学に励むことは出来ると、そう切り捨ててしまうのは簡単だけれど――

「素晴らしいですわ!これまで青春を送れなかった皆さんが、学戦生活を送れる場が出来るなんて!」

ナタリー・ガルシア :自分の進路、それは両親ともじっくり話し合って決めることではあるけれど――今聞いた話は、少女の胸をときめかせるのには十分だったらしい。

「もちろん、お父様お母様とは相談しますが、私はぜひ!前向きに検討いたします!」

それは、とても夢のある話だと、失われるはずだった青春を想う。

ナタリー・ガルシア :「それでは、詳しいお話はディナーの後にでも!その、パンフレットがあればその時にでも見せて欲しいですわ!」

まだ見ぬ学園を想いながら、一方でこれまで通りに進学することも捨てがたい。父の母校で学びたいという気持ちはもちろんあるし、勉学以外にもその場所でしか学べないということも多々あるだろう。

嬉しい悩みのタネがまた一つ増えてしまった、と少女は微笑む。

紅 蘭芳 :
「……! うん、ありがとう! うん、勧めた甲斐があったなぁ!
 それじゃあパンフレットの方、ちゃんと用意して持っていくね! 寮生活で暫くご家族とは離れ離れになるけど、絶対絶対、良い所になると思うから!」

 話を切り出すか、少々考える所もあったからだろうか、好意的に受け取ってくれたことに胸をなでおろしながら、表情を綻ばせる

SYSTEM :
 あなたには、たくさんの未来が約束されていた。
 多くの人に愛され、多くの人から背中を示され、或いは背中を押されて、箱庭から出たあなたの道行きを見守ってくれている。

SYSTEM :
 或いは人は可能性という言葉をありがたがるという。少なくとも今、少女に示される様々な道行き、憧れを目指す進路は順風の兆しを見せていた。
 とても高く遠い場所にいる彼女の姿。いつかきっと、目の前の出来ることをこなしていった末に、そこに辿り着く未来がきっとあるだろう。

紅 蘭芳 :
「それじゃあ、今日の朝練はここまで!
 おつかれさま! 学校の勉強も欠かさないように!
 今週の課題のメニューは夕方の訓練までに作っておくね」

紅 蘭芳 :
「あとあと、教えた軽功術は遅刻しそうな時便利だけど、ちゃんと見えないところでやるようにね!
 それじゃあ解散!」

ナタリー・ガルシア :「お手伝い程度ですけれど、お母様と一緒に私も腕を振るいますわ!」

お待ちしておりますわ、と最後に笑顔と共に付け加える。

「それでは!放課後にまた!」

ナタリー・ガルシア :返事の代わりに、風のように走り出した少女は人目を避けるように駆けていく。

「今日の小テストでも、満点をとりますわよ……!」

呟いた言葉は、誰の耳にも届かずに風の中にかき消えて――けれど、呟いた本人の胸には決意として宿る。

ナタリー・ガルシア :やるべきことは多く、やりたいこともたくさんある。
忙しなくも充実した日々。
暖かな家庭と、目指すべき目標、育て指導してくれる先達。

――それが、少女にとっては当たり前で、かけがえのない日常だった。

紅 蘭芳 :
 風のように走る彼女を、後ろから手を振る。見えなくなるまで。
 教官の真似事も板についてきた様子で、二人はすっかり師弟のような仲に落ち着いている。
 この後姿を見る度に、自分の仕事が誇らしくなるようで、紅は嫌いではなかった。

紅 蘭芳 :
「…………まあ」

 ──もう既に、私よりずっと強いかもなんだけどね、あの子。

紅 蘭芳 :
「眩しいなあ、若い子には負けてられないや。
 やっぱりリリアさんの言ってたみたいに、功夫がまだ足りてないんだな私も」

 自嘲するように、聞こえないように口にしながら、手に携えた棒を手元で回しながらその場を去る。
 こんな調子で巧く進めば、彼女はアカデミアで初めての寮生活で、上流階級でもオーヴァードでもない一人の女の子としての貴重な時間を過ごすこととなる。

紅 蘭芳 :
 そうなれば名残惜しいが、この教官の真似事のような仕事も終いだ。
 やり残しがないように、画竜点睛を欠かないように、あの人から貰った仕事をやりとげなくては。

「よし、やるぞー!」

SYSTEM :
 大きく伸びをして一言、公園に展開したワーディングを解除。
 彼女もまた、自らの務めの為、その場から去っていく。
 
 一人、また一人、舞台から降りていく。

SYSTEM :
 ────そして最後の一人。
 ・・・・・・・・・・・
 誰にも気づかれないまま監視の任を終えた一組もまた、車の窓を閉じて走り出す。

????? :
「ふうん」

 疾走する車内で検分するように嗤う女の声。
 ナタリーにも、紅にも気付かれることもなく、彼女は軽く監視を終えて自動車を走らせていた。
 

"ラクシャーサ" :
「可愛い子じゃない。
 アレが今度のうちらの標的ってわけだ。名前、なんて言ったっけ、ナタリー?
 スペイン系?」

"天刑府君"元 天刑 :
「"ブラックモア"からはユダヤ系だと聞いている。
 アレの役割を考えれば妥当な所か」

SYSTEM :
 車内、二人の男女が車を走らせる。
 片や戦鬼。片や剣鬼。
 此処に人間は一人としていない。
 その形を取りはすれど、皮をむけば宛ら欲に飢えた獣の如しもの。
 数多の戦地を血で染めて、自らの欲を満たす為すべてをねじ伏せてきた本物の殺人鬼たち。

"ラクシャーサ" :
「まあでも、確かに。護衛はヘボかったし、あの子自体も筋自体は悪くない。枷を外せばあっという間に化けるタイプとみた。
     シャドウブリゲード  レ イ ヴン ス
 向こうの黒 禽 旅 団の強化猟兵じゃ手に負えないのもうなずけるかなあ」

"ラクシャーサ" :
「同じ純正ハヌマーンの使い手として、どうよ。
 キミがやってみる?」

"天刑府君"元 天刑 : ・・・・・・・・・・
「斬るべき星が定まればな。
 俺に虐殺の趣味はない」

"ラクシャーサ" :
「またまたぁ。口で言ってる割にウズウズしてんのバレバレだぞー。
 ま、いいよ。作戦が本格的に始まったら、後はもううちらに協力する義務なんかないしねえ」

"ラクシャーサ" :
「どうしよっかな。取り敢えずイラんことしてきそうな"コードトーカー"あたりからさっさと潰しとこうかな。
 キミが向こうの米兵さんにお熱な間にさ」

"天刑府君"元 天刑 :
「────既に警告はした。今一度告げておくぞ。
 今、俺が狙う獲物はあの男だ。
 邪魔立てすれば、それもまたおまえの星が定まることになる」

"ラクシャーサ" :
「はいはい。そんなこと言って勝手に獲物増やして暴れ回るつもりの癖にさ。
 あたし、勘違いされやすいけど結構一途な性格なんだよね。誰彼構わず殺しちゃうような、そんな手の早い女じゃないし」

"ラクシャーサ" :
「でもまあ、キミがやらないならしょうがない。
 どの道あの子は必須条件だ。少なくともあたしの欲望としてはね。
 ま、おぜん立てはするよ。あとは"エヴァンジェリン"の動き次第かな」

"天刑府君"元 天刑 :
「だろうな。尤も、小娘の命なぞ俺の欲望にとっては小目標に過ぎん」

"天刑府君"元 天刑 :
「おまえや"コードトーカー"……あの女狐は兎も角、俺の望みは"ブラックモア"の望む先とそう変わらん」

"天刑府君"元 天刑 : そうてんすでにしす こうてんまさにたつべし
「  蒼 天 已 死   黄  天  當  立  ……そろそろ、時代がそれを望んでいる。
 それが天命というものだ」

"ラクシャーサ" :
「あっそ。まああたしはそういう主義主張はどうでもいいけど……
 けど参ったなあ、あたし壊すの以外得意じゃないんだけど」

"ラクシャーサ" :
「この一仕事を終えたら、ようやくこのかったるい役職から逃げられると思えば気楽なもんってね。
 ……じゃあ、そろそろ行こうか」

SYSTEM :
 ……尊い日常、と人は言う。
 そう。日常とは常に、水面下で絶え間ない争いの中、薄氷の上に立っているものだ。

SYSTEM :
 水面の下には鬼が棲む。修羅が棲む。善人の踏み台と成った悪鬼羅刹と鬼畜外道が、今も絶え間なくひしめいている。

SYSTEM :     Revolution
 これは、 革 命 だった。
     Rebellion
 或いは、 復 讐 か。
        Riot
 または、単なる暴動を望む故か。

SYSTEM :
 そう。
 愛されし者。灯りに人は退かれ、おのずとそこに集っていくが。

 地の底で犇めく醜き羽虫たちは、その灯りに向かって群がっていくものだ。
 焦がされながらも。きっと、善き者の何十倍もの質量を伴って。

SYSTEM :
 かくして自らの運命を知らざる娘を中心に、環が回転を始める。
 時代を動かす歯車の軋みと共に、理想郷の幻影に手を伸ばす欲深きソドムの末裔たちが、此処に新たなる天地を求めて動き出す。

SYSTEM :

 ────そして都市に悪徳が蔓延り、熟れた果実が落ちる時
 ────太古より眠り続けた裁きの時が訪れる。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【OP-Junction:欲望の果実-Shambalah-】

SYSTEM :【OP-Junction:欲望の果実-Shambalah-】

 登場PC:Natalie Garcia
 登場侵蝕:あり
 

GM :さて合流になりますが

GM :最初のプレイヤーはお嬢からですわよ そこから要所要所で搭乗して貰い、登場侵蝕を振ってもらうことになりますわよ

ナタリー・ガルシア :了解いたしました!

GM :では早速登場侵食ダイスをどうぞ!

ナタリー・ガルシア :1d10 (1D10) >

GM :クーーール

ナタリー・ガルシア :それなりに落ち着いた心持ちですわ!

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 40 → 43

SYSTEM :
200X/11/2X
アメリカ・メリーランド州 高級住宅街……

SYSTEM :
 ……そして、一日が終わる。

SYSTEM :
 ハイスクールの勉学を終えて、午後の訓練を終えて、夕餉を終えて。
 輝かしい時間は瞬きのように過ぎていき。
 すっかり夜も更けてきた。

SYSTEM :
 あなたがやや興奮を抑えきれないままに話した進路の話に、両親は好意的に見てくれたようだった。
 無論、即決する訳ではなかった。父の名門校に通って欲しいという願いも、生まれたての学校に対する不安感もなかったわけではなく。
 それでも二人とも、頭ごなしに否定するでもなく、全肯定するでもなく。娘の提案を真摯に選択肢として考えてくれているようだった。

SYSTEM :
 暫し将来に思いを馳せているうちに、時間は流れて。
 母が作ってくれたホットミルクを戴いた頃には、ゆっくりと眠気が出てきたところだ。

 それがナタリー・ガルシアの日常。
 ほんの少しばかり、人と変わった不思議な日常生活の一幕で、
 それも緩やかな時の流れと共に終わろうとしている。

SYSTEM :
 日が暮れて、眠りにつき、目を覚まして。
 少しずつ、一歩ずつ、目指した場所に向かって進んでいく。
 満ち足りた一生を、しかし多くの人がより良く過ごせるために歩んでいく。
 そんな"モラトリアム"の日々だった。

ナタリー・ガルシア :友好度を増した瞼を意識して開く。
時計を見やれば、いつもの就寝時間までもう少し――この時間でこんなにも眠いのは、朝練分の疲労と眠気が呼び寄せた結果だろう。

普段であれば素直にベッドへと向かうコンディションではあるが、今日は別だった。

「……それで、その、お父様」

空になったマグカップを両手で包むように握りしめて、おずおずと――ずっと機を伺っていた話題を切り出す。

ナタリー・ガルシア :
「お姉さまは、お元気そうでしたか……?」

ガルシアの父 :
 うん? と、改まっておずおずと尋ねるナタリーに対して、父は穏やかな、しかしほんの少し影が残るような微笑みを浮かべて答える。

「……うん。彼女は相変わらず、毎日忙しそうだった。あの時から変わらずだよ」
 

ガルシアの父 :
「ナータのことも言っておいたよ。その時は珍しく、ちょっと困ったような嬉しいような、そんな表情をしてたっけね」

ナタリー・ガルシア :言葉の裏に、ほんの少しだけ滲んだものを、しかし少女は感じ取った。
嘘をついて取り繕うことも出来ただろうが、その父親としての優しさと誠実さ故に隠さずにいてくれたことを――少女は嬉しく思いつつも、視線が落ちる。

「そうですか、私も、はやく……お姉さまの力になれたら良いのですが」

オブラートに包むことなく吐露されたその言葉は誰かに向けたものではなく、憂いと口惜しさを僅かに内包していた。

ナタリー・ガルシア :続く言葉に、あえて常のような明るい声を出す。意識的にそっぽを向いて、分かりやすくプンプンという擬音が付いていそうな怒りの格好(ポーズ)

そうすることで、己の弱音に活を入れて吹き飛ばす。

「私(わたくし)の事は言わなくても良いと言ったはずですわ……もう、お父様ったら、まったく」

もっとも、そのそっぽを向いた口の端が円弧を描いているのをごまかすことは出来ていなかったが。

ガルシアの父 :
「あっははは、ごめんごめん……
 でも、きっと大丈夫。ナータのことを彼女もちゃんと覚えて、応援してくれてるよ。
 ……応援が信頼に変わるのは、もう少し先になりそうだ」

ガルシアの父 :
「なあに、時間はまだまだあるよ。
 今は慌てず、しっかり目の前のことをこなしていこう。
 そのためにも、来月の合宿は頑張らないとね」

ナタリー・ガルシア :「ええ、もちろんですわ――信頼とは勝ち取るもの、努力と実績を積み上げていくしかありません」

ナタリー・ガルシア :「ですから!許可をありがとうございます!師匠(せんせい)にしっかりと鍛えてもらいますわ!――今日もお墨付きを頂きましたし、そのうちお父様にも私の成果を見て欲しいですわ」

ガルシアの母 :
「でも残念……暫くナータの顔が見れないなんて。
 辛くなったらすぐ家に戻ってきていいのよ? ばびゅーんって! いつでも温かいココアを作ってあげる!」
 

ガルシアの母 :
「それに、合宿が終わったら丁度クリスマスよ!
 今年も腕によりをかけて、盛大にパーティの準備をしておくから、楽しみにしてなさい」

ナタリー・ガルシア :「私もお母様に会えないのは寂しいですわ――ですから、合宿明けにはお母様のハンバーグがを期待していますわ」

ナタリー・ガルシア :辛くなっても帰る場所がある。再び立ち上がるまで、優しく見守ってくれる人がいる。
それがどれほど恵まれているか――どれほど力になるか、少女は知っている。
だからこそ、母親の言葉に返すのは微笑みのみで――続く言葉は、困難の後のご褒美の話だった。

ナタリー・ガルシア :「スクールのお友達も呼んで、師匠も時間が合えばお呼びしたいですわね!私もケーキ作りをお手伝いしますわ」

ガルシアの母 :
「ええ!
 だから、無茶だけはしないでね。
 私もパパも。ナータが一番大切なんだから」

 ゆっくりと屈んで、ぎゅっと抱きしめる。
 これも欠かしたことがほとんどない、おやすみのハグだった。
 じかに触れる手からは、少しずつ親離れしていく娘への複雑な思いが少しだけにじんでいるように思えた。

ナタリー・ガルシア :「ええ、無茶はしませんわ。無理に手に入れたモノは、必ずしわ寄せが来ますもの」

ナタリー・ガルシア :己よりも大きな腕の中、自分以外の体温を感じながら自らもハグを返す。
母親の背中に腕を回して、己の思いも伝える。

「私、お母様とお父様の娘ですから――安心してください!お母様とお父様に頂いたものが、私を守ってくれています!」

SYSTEM :
 お互いに抱擁を交わして、おやすみの言葉を交わす。
 ナタリーの言葉に、母も父も嬉しそうに微笑みを返した。
 この気持ちがある限り、きっと如何なることがあっても乗り越えられるだろう温もりがあった。

SYSTEM :
 階段を上がり、床に就く。パジャマに着替える前にあなたはほんの少しだけ横になる。
 今日は訓練や嬉しいことがたくさんあったからだろうか、いつにも増して瞼が重いようだ。

SYSTEM :
 洋服にしわが付くからいけないことだと判っていながらも、迫る衝動には抗えない。
 ……後に思えば、不自然なぐらいに。あなたは布団の上に寝転んで、ゆっくりと意識が落ちていく。

SYSTEM :
 布団の中、ゆっくりと眠りにつく。
 今日ぐらいは、多少の粗相も許されるはずだ。
 
 昨日のような今日と、今日のような明日が続くゆりかごの中。変わらないようで、少しずつ進み続ける日々。
 そうして一日は終わり、また明日が始まっていく

SYSTEM :
 眠る。眠る。眠る。
 昏々と眠りについて、閉ざされた瞼の奥で、あなたは再び夢を見る。
 深い深い海の底へと沈みながら、ゆりかごのように波に揺られて。
 あなたは幾度目か分からない、安らぎの中に沈んでいく。
 

SYSTEM :
 不思議と不安感はない。
 ただ、母の胎内に在るような安心感があった。
 何かに守られているような、或いは求められているような。
 何時も見る、ゆりかごの夢。
 浮かび、揺蕩い、揺られ続ける。

SYSTEM :
 眠る。眠る。眠る。
 昏々と眠りについて、閉ざされた瞼の奥で、あなたは再び夢を見る。

 時折見る、吉兆の夢。それが二日続くのは珍しいことで。

SYSTEM :
 けれど…………
 今日だけは。
 今日だけは、違った。

SYSTEM :
 海の中、揺蕩い続けるその渦中で。

 誰一人として介在する余地のない水底で。

 初めてあなたは、人の声を聴いた。 

????? :


The land whereon you lie, to you will I give it, and to your seed.
「汝 が 偃 臥 す 処 の 地 は 我 之 を 汝 と 汝 の 子 孫 に 與 へ ん

????? :

Behold, I am with you, and will keep you, wherever you go,
ま た 我 汝 と 伴 に 在 り て 凡 て 汝 が 往 ま う 処 に て
and will bring you again into this land.
汝 を 護 り 汝 を 此 地 に 率 返 る べ し

????? :

For I will not leave you, until I have done that which I have spoken of to you.
 我 は 我 が 汝 に 語 り し 事 を 行 ふ ま で 汝 を 離 れ ざ る な り 」

????? :
「──遅くなって、すまない」

????? :
「約束の地へ、君を迎えるために。
 さあ────行こう」

????? :
「■■。私は、今度こそ成功してみせよう」

SYSTEM :
 …………あなたの目が覚めたのは、それと全く同じタイミングだった。
 海月のように揺蕩う海の中、叩きつけられた思念、情念は、悪意ではなかった筈だ。
 しかし、そのあまりに強い思念はあなたの意識を現実に起こすには十分すぎた。

ナタリー・ガルシア :「――ッ」

意識が急速に浮上する。安寧の中で脱力していた体へ覚醒した意識が戻ったせいか、意識とのギャップで体が泥のように重く感じる。

遅れて、滲み始めた汗を拭うことも忘れて――落ち着くために深呼吸。
早鐘を打つ鼓動を宥めるように、深く吸って、ゆっくりと息を吐く。

二呼吸ほどのクールタイムを経て、ようやく落ち着いて……己が得た衝撃の元を探ろうと、思考を回す。

ナタリー・ガルシア :それは、衝撃。
理解できても、処理しきれないほど膨大な数を前にしたような――津波のようなソレに、しかし恐怖は抱いていない。

受け止めきれなかったのだと、なんとなく理解して――何を受け止めきれなかったのか、そこがわからない。

SYSTEM :
 布団の中に体を横たえて、あなたは思案した。
 まるで突如として津波のような情報量を叩きつけられたような違和感。それは何時も見た静謐の夢とはまるで異なり、しかしそこに邪念がないことが「受け止めきれなかった」という理解に達したのだろう。
 その理解に達して、あなたは気が付く。
 その体が、起き上がらない。瞼を開いたとて、体が起き上がらない。口が利けたとて、腕が上がらない。

SYSTEM :
 金縛り……意識と体の乖離によって起きる睡眠麻痺のような現象がある。このように起床した場合は、時折あることだ。彼女の短い人生でも一度は経験があったかもしれない。
 だが……それも違うと気付くのは、その直後。

SYSTEM :
 ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 体が、自分の意志に反して起き上がった瞬間のことだった。

SYSTEM :
【Information】
エネミーエフェクト《シャドウマリオネット》が発動しました。
使用者:???
対象者:ナタリー・ガルシア
効果:宛らそれは、紡がれし運命の糸。
   対象を任意に移動させる。

SYSTEM :
 体は……意識や意図に反して動き始める。
 まるでそれは、何かに導かれるようだった。
 それは人形のように、体の四肢に糸をつけられたように。ひとりでにベッドから起き上がった。

ナタリー・ガルシア :「……ッ、これ、は」

混乱する頭を、しかし切り替える。
原理や理屈は重要ではない、今何が起きているか――そして、何が自分にできるか、それが重要だ。

己の意志を離れて、体が動く、ならば――己の力は?

ナタリー・ガルシア :体は己の意志を受け付けない――ラジコンのように、全く別の意志を受けて動いている。

だが――

「(力は、使えますわね……)」

室内にそよ風が吹く。
肉体以外の己の手足は、問題なく動く。
ならば、今は。

「……私を、どこかへ連れ出す気でしょうか?」

思考を口に出して、整理する。恐怖や不安を抱く自分を、俯瞰的に捉えるように努力する。

ナタリー・ガルシア :「――ここは少し、守るものが多すぎますわね」

己と、父親と、母親。
もしも全力で、なりふり構わず暴れるのであれば――ここは少々手狭で、気を使わなければならないものが多すぎる。

「大丈夫ですわ……あの時とは、違います。だから大丈夫です」

ナタリー・ガルシア :言い聞かせるように呟いて、大きく息を吐く。
相手の思惑に乗るのであれば、意識を研ぎ澄ませて、けれど体からは脱力――なるべくの自然体、いつでも動けるように、師匠の教えを思い出す。

ナタリー・ガルシア :
「良いでしょう……誰かは知りませんが、貴方の思惑に乗ってさしあげますわ」

SYSTEM :
 理解の埒外の事象に対しても、落ち着いて応じることが出来たのは、恐らくこれまでの訓練の賜物と。
 ただ一度抱いた恐怖から、抗体が出来ていたからだろうか。不安を抱いた心を抑え、暴走する力を意志によって抑えつけるメンタルセット。
 そう……あなたは、あの時とは違う。
 七年もの月日に掛けてきた時間と、真摯に積み上げてきたものは、着実に血と成り、肉となっていた。
 

SYSTEM :
 尤も、それはあくまで恐怖を感じないという訳ではなく。なればこそ、口に出すという直接的な行為を必要としたのだろう。
 生まれついてより、伴としてきた体が随意に動かない恐れをかみしめながら、あなたはその体に任せて、階段を一段ずつ降りていく。

SYSTEM :
 階段を降りて、リビングに辿り着く。
 どのぐらいの時間が経過したのだろうか。作為的な者であったかは不明だが、動かされた体は都合よく時計に目が行かないように体を操作されていた。
 しかし少なくとも、両親は既に眠っているようだった。或いは眠らされたのか、それは定かではない。

SYSTEM :
 あなたの体はそのままリビングから夢遊病のように、あるいは導かれるように進み、玄関まで自ずから進んでいった。
 鍵をその手で開いて、ゆっくり戸を開く。

 ……ただ、家を出る。いつもしてきたことだ。いつもの日常の始まりにしてきた行為。
 だが。恐らくはこの奥に仕掛け人がいることを考えれば、とても日常のようにいかないことは容易に想像がつくだろう。

SYSTEM :
 あなたは意を決そうが、決すまいが。
 その意志を無関係にして、その戸を開け放った。

ナタリー・ガルシア :靴を履き、玄関の鍵を開け、扉を開く。

いつも殆ど無意識で行っていることなのに、己の意志ではないと言うだけでこんなにも違和感を覚えるということを少女は初めて知った。

ドアを開いた瞬間、少し肌寒い夜気が流れ込む。
幸いなことに、夜とはいえ未だ凍えるような寒さではない――寒さのせいで動きが鈍るようなことはないだろう。

ナタリー・ガルシア :冷静に、冷静に。
己の中に積み上げてきたものを反復する。
いつでも銃爪に指をかけるために、戦うための意志を形作っていく。

下手に見えてしまう視界。
それだけに頼らずに、五感全てで世界を観る意識。脱力からの瞬発、風の収束、使える武器を数えていく。
いつでも使えるように、覚悟を固める。
恐怖からは目を逸らさず、けれど、受け入れずに脇に置く。

ナタリー・ガルシア :怖いということは、警戒しているということ。
恐れはセンサーであり、忌むべきものではない。
それは無視してはいけない感情で、その感情を踏まえて何をするか決める。

教えは正しく己の内にあることを確かめながら、少女は進む。

ナタリー・ガルシア :いつもよりも、少し早い鼓動。
聞こえるのは己の息遣いのみ。

寝室にいるはずの両親が気にかかったが、それは『今の自分に出来る事』ではない。
だから、まずは――眼の前のことにだけ集中する。

――あれから、いつもそうしてきたように、今度もまた全力でそうするだけだ。

SYSTEM :
 そうしてあなたは戸を開く。夜風が動かない体の、朱い髪を揺らしていく。
 務めて冷静を保とうとしながら戸を開いた先、鋭敏な感覚が目に飛び込んだ相手方の勢力をつぶさに観察していた。
 目でなく、風を感じて、それを掴む。

武装した男たち :
 ドアを開けた先には、見知らぬ男たちがいた。
 それは、全く見知らぬ世界の住人とは言い難い。あの日に経験した類の暴力に近いモノなのだと、今の自分なら理解できた。
 

武装した男たち :
 近世欧州のペストマスクを思わせる意匠のガスマスクを装着し、肩に下げているのは小銃と、手斧のようだった。
 奇怪な姿であったが、別段それが洒落というものではない事は、男たちの息遣いが非常に安定していることから伺い知れた。

武装した男たち :
 ……呼吸の制動によって、人の強弱は理解ると、紅は語る。詰まる所鍛え抜いた武力とそれを御する精神性は、呼気に現れるという。
 彼らは皆、そういう道のプロフェッショナル……ということなのだろう。

 頭数は全部で五名。いや……

SYSTEM :
 もう一人いた。それが、風を感じながら、今目の前にするまで察知できなかった。
 それは呼気を感じなかった、という訳ではない。その気配ごと隠すだけの身のこなしを自然に行えるというだけ。

"ラクシャーサ" :
 銀の髪をした女……独特なつかみどころのない雰囲気は、そのまま人となりとして現れたように。
 女は兵たちの前に出て、恭しく……というより、どこかおどけた様子で一礼する。

「お待ちしていました、お姫様。
 ささ、どーぞ中へ」

"ラクシャーサ" :
 下知に従って、家の前に留めた黒塗りの車の戸を兵の一人に開けさせる。
 一緒に来てもらおう、ということなのだろう。

「あ。一応言っておくと抵抗は無意味だから。
 そこのところ変な気は起こさないでね」

ナタリー・ガルシア :その立ち姿、振る舞いに相応しい暴力を予感させる装備。
訓練を受け、鍛えられた武力の担い手。
見えて、感じる範囲には5人――否、もう一人。

そこに“いる”のに、気配を感じない女が一人。

喉が渇く。
乱れそうになる呼吸を捻じ伏せて、呼吸の継ぎ目をなるべく気取らせないように努力する。

ナタリー・ガルシア :
   ・・・・・
それは無駄な努力だということは理解している。
マスクの男たちは強いことがよく分かる。
精強で、その動きには乱れも無駄もない。

だが、目の前の女は――どれだけ強いのかもわからない。

いくらこの場で積み上げようとも、それだけでこの差が埋まるわけがないことを理解した――理解させられた。

ナタリー・ガルシア :けれど、出来る努力を放棄することもまた、するべきではない――したくない。
そこにどれだけの隔絶があろうとも、積み上げられるものを積み上げ、努力しなければその差は絶対に埋まらない。

つまるところ、いつも通り。

だから、その声に緊張はあれど怯えはなかった。
恐怖は感じていたけれど、恐怖に呑まれてはいなかった。

ナタリー・ガルシア :「――ナタリー。ナタリー・ガルシアですわ。以後お見知りおきを……これでは礼も出来ませんわね」

見上げるように、銀髪の女を見据える。敵わぬと理解していても、諦める理由にはならないということを宣言するように。

"ラクシャーサ" :
「うんうん、素直で大変よろしい。ついでに中途半端にメンタルも強くておねーさん助かるなあ。流石お嬢様、礼儀がなってる。
   ラクシャーサ
 私は"千刃空夜叉"の……ま、名前は良いか」
 

"ラクシャーサ" :
 喉がカラカラに乾き、今にも息が切れそうなぐらい緊張している、いくら緊張しても身動きが取れないことをからかうように、彼女はすたすたと近付いて覗き込むように視線を合わせる。

「まるでお人形さんみたい。今となってはほんとにお人形さんだけどね。
 たくさん恵まれて慕われて育ったって、顔に書いてあるみたい」

"ラクシャーサ" :
 無遠慮に華奢な指先で顎に、頬に指を這わせて、女はどこかあどけなさを感じる悪童めいた笑みを浮かべた。

「でもうちらはアウトサイダーでね。
 だから名乗りもコードだけだし、キミにもその流儀に付き合ってもらうよ。今のうちになれた方がいい」
 

"ラクシャーサ" :
     シャンバラ
「キミは、 楽 園 に見出されて。
 これからそこでずっと、生きていくコトになるんだから」

"ラクシャーサ" :
 意味ありげな言葉を吐きながら、飽きたように手を離したと同時、あなたを操る意志はそのまま戸を開けた車に向けて再度、歩を進め始めた。

ナタリー・ガルシア :「……ラクシャーサ」

呟き、少女は己を覗き込む瞳を真っ向から受け止める。

「ええ、お陰様で――私(わたくし)、とてもとても恵まれていますわ」

害意もなく、ただ己の誇りとするものを誇るように、その言葉を肯定する。

ナタリー・ガルシア :「コードネーム……それは困りましたわ。私、コードネームがまだありませんの。大丈夫でしょうか」

会話を続けながら、己の意志を無視した体は車へと乗り込んでいく。
ラクシャーサの話す言葉の意味は分からないので、頭の片隅に留めて考察は後回し。
ニュアンスで捉えたところ、少女を歓迎――ないし、己の身柄が『必要』なのだろうということはなんとなく理解できていた。

「ラクシャーサ、貴方もその『楽園』を目指しているんですの?」

ならば、会話での情報収集くらいであれば、余程の地雷を踏まなければ大丈夫だろうか。
そうでなくとも、この丁重な扱い――そこまで重要性の低い存在、というわけでもないだろうと思考を回してラインを見極める。

"ラクシャーサ" :
「ふーん。じゃ、そろそろ振り戻しだ。
 恵まれた分、いつかは返さなくちゃいけない。わかるよね?」
 
 言いつつ、あなたの体は後部座席へと吸い込まれるように向かう。意志を無視して、椅子へ座り込むのを確認して、ラクシャーサはその隣の席にひょいと座り込んだ。

"ラクシャーサ" :
 どうにも逃がす気はないらしい。女は何やら片刃の刃物のようなものを鞘に入れて隠し持っているようだが、射程にナタリーを収めておくためなのかもしれない。

 ナタリーの問い賭けに対し、戸を閉める片手間でラクシャーサは答える。

「うーん、あたしはぶっちゃけ興味ないかな」

"ラクシャーサ" :
「強いて言うなら、あたしは単にその楽園に生えてる果物に用があるってとこ。
 特にこだわりないんだよね正直。住めば都って言うでしょ? 此処から出たコトのないお嬢様にはピンと来ないかもだけどさあ」

"ラクシャーサ" :
「だから群れるの嫌いなのに、あの暑苦しい連中とつるんで悪事にセコセコ励んでいるってわけ。こんな風に部下なんか連れてさ。
 ……じゃ、出して。飛ばしなよ、"コードトーカー"が手ぇ回してるとはいえ、もたついてると別の奴が引っ掛かる」

 堰について深々と座り、頬杖をついてラクシャーサは指示を出す。運転席に座っている兵は静かに首肯して正面に向き直り、車を走らせた。

ナタリー・ガルシア :「ええ、私も沢山与えられた分、きちんとお返しをするつもりですわ――誰かに奪われるのではなく、私自身の意志で、ですが」

体の戒めは解けず、解けたとしても隣に座るラクシャーサから逃れられるとは思えない。
その気になれば、少女が指一本動かす暇もなく制圧することも可能なのだろう。

「――知恵の実でもお探しなんですの?」

だからこそ、意識的に集中を緩める。
ラクシャーサが、少女へと意識を注いでいる限り逃げることも抵抗も出来ないのであれば、その間ずっと神経を張り詰めさせるのは得策ではない。
と、少女は自分に言い聞かせる。
そんな少女の小さな涙ぐましい努力、その全てを見透かされ――あるいは相手にされていないことを知っていても。

ナタリー・ガルシア :「安全運転でお願いしますわ。他の方に迷惑をかけるのも申し訳ないですし――私の帰ってくる場所の近くで事故を起こされても敵いませんわ」

発進する車の中、少女は遠ざかっていく我が家を想う。
両親の安否への不安、心細さ、己の心から活力を奪う諸々の情動。
瞑目して、ゆっくりと目を開いて切り替える。
――切り替えられたと思い込む。

師匠の教えの一つ、まずは『思い込む』ことから始めること。理想の型、想像通りに体を動かせるように――能力を、己が意志の通りに形作れるよう、思い込むこと。

理想を抱き、それに己を近づけようとする第一歩――それを出来ると思いこむこと。

ナタリー・ガルシア :「ラクシャーサ、貴女も大変なんですわね――その果実を探すのをお手伝いしますから、私の味方になってくれたりはしませんの?」

慎重に言葉を選びながら――そうとは気取られないように努力しながら、軽口を叩く。
車は進む。
安寧と日常を離れて、非日常に向けて走り去っていく。

"ラクシャーサ" :
 恐怖を押し込めて気丈にふるまう様を、ラクシャーサはどう感じたのか。少なくとも、彼女の悪童めいた笑いを収めることはない。

「……だってさ。
 参ったね。お姫様の命令だ、しっかり守らなきゃ楽園に連れてってはくれないぞぉ」

 けたけたと笑うラクシャーサに、しかし兵たちの感情は読み取れない。マスクの下に覆い隠したまま、彫像のように動かない。

"ラクシャーサ" :
 慎重に意志をとがらせて語るナタリーに対して、ラクシャーサは相変わらず気楽な様子で続ける。

「んー。それはキミ次第でもあるし、キミとは無関係な所にあるかもしれない。
 その時キミがどうなってるかもわかんないし。
 でも、あたしはキミの敵ってワケじゃない。用が済んだら駄賃ぐらいは払ってあげるかもね」
 

"ラクシャーサ" :
「ま、今からその拠点に連れて行こうとしてるわけなんだけど。
 取り合えず、着くまで大人しくしていられたら……ってことにしとこうかな?」

SYSTEM :
 車は進む。日常の景色を遠く置き去りにして。
 寝静まった街から進む先は、ネオンの光が夜の都を照らす闇世界。人造の光によって照らされる退廃の時間だ。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
 "ラクシャーサ"とナタリーを乗せた車は、そのまま深夜帯にあって尚も輝き眩い光に包まれたハイウェイを進んでいた。
 周囲を見る限り、この車を追尾する者は誰一人としていない。

SYSTEM :
 勿論UGNにも、これは伝わっていないということだろう。
 或いは何らかの手段で足止めを喰らっているか……
 明確に敵意を察知しているものは、今此処には居ない。
 誰にも頼ることが出来ぬまま、のっぴきならない闇の深みに進んでいく。

SYSTEM :
 ……否。
 しかしここに例外がいた。

SYSTEM :
・・・・ ・・・・・・・・
そろそろ、予定された時間だ。

あなたは所定のポイントに陣取り、時を待っていた。

GM :という所で

GM :
ブルーさんのターンです
登場侵蝕をお願いします

ブルー・ディキンソン :は〜い。

ブルー・ディキンソン :1d10 (1D10) >

system :[ "雷霆精"ブルー ] 侵蝕率 : 54 → 56

GM :クールだ

ブルー・ディキンソン :イエス、クール!

ブルー・ディキンソン :
「───お、アレかな……」

 紫煙を吹かせながら、風変わりな格好の女がいた。
 誰にも頼ることのできない深く暗い夜の闇の中で、微かな街灯の下で、女はずっと待っていた。
 

ブルー・ディキンソン :
 黒曜を思わすボディに身を包んだ鋼鉄の馬──って表現はちょっと過剰か。
 わざわざ用意させた二輪に跨り、エンジンを吹かす。
 
 背には己の得物。
 夜風に靡く煙と共に、ギアを上げていく。

(さて……私一人か。いつものことだけど)

ブルー・ディキンソン :
「しかし回りくどい事すんネー。
 ま、隠密性という意味じゃ確実か……」

 UGNも、ひいては軍もまだいない。
 ここには私一人。ミッションはすでに始まっている。
 敵は複数、おそらく"ヤバい"駒が一人はいる。

 ま、この為にギリギリまで頑張ってるのだから、それに見合うだけの仕事をしなきゃあならない。

ブルー・ディキンソン :
 煙草を携帯灰皿に投げ込み、闇への突入劇の幕を開ける。
 いつにもなく、ノッていた。
 アドレナリンが噴き出るように、これから起きることへの何らかの"期待"があった。

「──さぁて行きますか、お嬢様救出ミッション。

 すこぶる滾ってきたッ!」

 笑いと共に、アクセルを踏む!

SYSTEM :
 女中の服に身を包んだ風変わりな風采をした女は、快哉の声と共に街灯のブリッジの上からバイクを疾走させ、夜のハイウェイへ入り込む。
 

SYSTEM :
 目指すのは先頭を走る黒塗りの車だ。
 既にUGNらに『ラクシャーサを偶然見つけた』という体で報告は済ませている。怪しまれるような余計な情報を垂れ流しても仕方がない。
 喫緊に動けるのが自分しかいないのは、一応事実ではある。

SYSTEM :
 凶悪指名手配犯を見つけた一般通行人……
 そういう体で一先ず話を進めた上で……
 今やるべきことは、決まっていた。
 法定速度をぶっちぎり、車を右へ左へ掻い潜りながら、黒い車へと近づいていく……

"ラクシャーサ" :
「ありゃ」

 だがその違和感に真っ先に気付いたのはラクシャーサだった。
 ミラーから後方をちらと確認して、明らかにこちらを目指して突っ込んでくる無謀な機影を見とがめる。

"ラクシャーサ" :
「おっかしいな。流石に今来るのは早すぎでしょ。
 安全運転の約束しちゃったんだけどなー」
 
 やれやれ、という様子で大仰に溜息をつく素振り。
 しかし、困ったという様子ではない。面倒事が増えた程度で、寧ろ少し楽しそうですらあった。

ブルー・ディキンソン :
 さてさて、報告も済ませた。
 これで彼方さんも動けるようにはなるだろう、一度見つかればワラワラと集ってくる。
 アメリカのハイウェイの個人的な走りづらさを頭の中で愚痴りながら、
 スピードをひたすらに上げて上げて、上げていく。

(ミラーに映ったかな。
 これだけ爆走してれば誰か気づく。気づく速さが違うくらいで……)

ブルー・ディキンソン :
 ま、いっか。
 誰が気付こうとも問題ないし、ヤバい奴が誰だろうと関係ない。
 最重要項目は乗せられたお嬢様の保護と安全の確保!
 それさえクリアできればなーんにも問題ない。

 なのでそれを解決するために、こちらも色々準備してきたのだ。

ナタリー・ガルシア :「……………………」

隠すつもりもないラクシャーサの言葉。
何が起きているのかは分からないが、彼女たちにとって不測の事態が進行しているのは間違いない。

集中。意識を先鋭化させ、五感を拡げる。
五体の制御を確認、能力の撃鉄を上げるイメージ。
弾は装填済み、後は銃爪を引くだけだ。

ラクシャーサの意識がこちらから外れるタイミング――あるいは、訪れるかもしれない好機を逃さぬように。

「――ラクシャーサ、なにかありましたの?」

"ラクシャーサ" :
「さて、どうだろう。
 ちょっと暇な仕事が楽しくなりそうってだけかな。
 キミも望むままに動くと良い。尤も……」

"ラクシャーサ" :
 ちら、と。目を細めて徒に笑う。

「あんまりお転婆なことすると、ゲンコツでは済まないかもだ。
 実はキミの意志ってあんまり重要じゃないからさ。そういう手段も取れる訳。
 お互い、ハッピーなままやること終えて楽になりたいと思わない?」

ナタリー・ガルシア :
「――さあ、どうでしょう。私は、私に背くことは出来ませんから」

ですから、と。

「お互いに、悔いなく生きましょう」

ブルー・ディキンソン :
 スリリングな遣り取りで、張り詰めた雰囲気に満ちた黒い車。
 それを追い続ける、狂人としか思えない服装の女が駆る黒いバイク。
 
 ……少しだけ空気が変わった。
 身を包んでいた紫煙の匂いなんてかき消しながら、風が吹く。

ブルー・ディキンソン :
 接敵距離に到達した瞬間がキモだ。
 あちらは複数、こちらは一人。
 ……いや? くだんのお嬢様がガッツある子だったら、二人かも?
 
 とにかく、今は追跡を続ける。
 続けながら、自分が何かされた時のための手数を用意しておくのが重要。

 背に手を伸ばし、得物を掴む。
 掌から流し込まれた"情報"を帯びた電流を放出し、青く輝かせる。
 

ブルー・ディキンソン :

、  、 ロック・オフ
「───"認証解除"、いくよライキリ!」

 女中の手にはナイフではなく。
 ただ一振りの、紫電の刀が握られていた。
 夜闇の中で悪戯のように輝くスプライトのように。

SYSTEM :
 深夜のハイウェイで、夜闇に輝くウィル・ウィズ・ウィスプが光を放ちながら魔剣を引き抜く。
 紫電を纏い、稲妻を断つ。
 片手で超高速のバイクを操りながら、ブルーは雷霆となって黒い車へと追いすがる

武装した男たち :
 だが、その間際で第二座席の窓がゆっくりと開いた。
 まるでそれは砲門がゆっくりとハッチを開けるように。
 ペストマスクを被った男が身を乗り出すと、手に携え持った得物の銃口が鉄馬を駆るブルーに向けられていた。
 アサルトライフル
 突 撃 銃のマズルから、息吹のようなフラッシュの明滅と共に5.56mm高速弾が連射される。
 片手撃ちであったとしても、手にした武装を電子回路でリンクさせている高精度の銃火に打ち損じはあり得ない。

ブルー・ディキンソン :

「あぶな!」

 5.56mm高速弾! 
 西側ではごくごく当たり前の弾だ。
 小口径ゆえに当たれば運動エネルギーで体をズタズタにされてしまう。
 
 片手撃ち、そしてカーチェイスという軽い弾丸にとっては最悪とも言える状況でありながら、
 有効射程距離まで私が接近していたと言うのもあり──当たればそこで任務失敗となりうる。
 
 が。

ブルー・ディキンソン :
 そこはそれ、私もそのためにライキリを抜いたのだ。
 認証完了をしたライキリと私は文字通り一体となっている。
 最適化された動作で得物を振るい、高速弾そのものを叩っ斬る。

 遠距離で威力・精度が落ちやすいほどに軽い弾丸なのだ。
 オーヴァードという超人相手ならば、その弾丸の破壊力に耐えうる武器を使えば容易に落とせる。
 軽いがゆえに、弾かれもしやすい。

ブルー・ディキンソン :「……ま、こんなの互いに牽制よネ!」

SYSTEM :
 引き抜いた紫電の剣は、連続する高速弾を難なく弾き落としていた。
 超人とて穿たれれば必然、苦悶に操縦を誤り転倒は避けられまい処であったが……
 最適化された動きは、片手の自由が利かぬ状況であろうとも問題なく。それらすべてを打ち払い、捌ききっていた。

武装した男たち :
「────」

 効き目がないと判断したのだろう。
 制圧射撃用にマガジンの弾丸を吐きだしきった後、小銃を掲げて素早くマグチェンジを行った後、男の目が行ったのは果たして相手の方角の逆方向。

武装した男たち :
 即ち、前方を走るキャリアカーだった。
 超人は、超人の能力のみが頼みという訳ではない。詰まる所物量で押せばよいのだ。

 目敏くそれを見つけた男は小銃のアタッチメントに搭載したグレネーダーをタイヤに向けて発射。

武装した男たち :
 直後、爆裂。
 バランスを失って崩れたキャリアカーから、宛ら零れ落ちるように何台もの車が転がり込んでくる。
 それらは物量で遮る壁となって、ブルーの前に立ちはだかる。当然この速度で突っ込むと爆破横転の憂き目は免れない。

SYSTEM :【 CAUTION! 】

 判定が発生しました。
 技能;<白兵>or<運転>
 目標値:10

GM :という訳で判定をどうぞ
失敗した場合には

GM :回避に失敗して巻き込まれて2d10ダメージです

ブルー・ディキンソン :クレイジー……んじゃ、白兵でいきまーす。

GM :了解!宣言はあるかな

ブルー・ディキンソン :なし!節約節約。

GM :おーけー では振り候へ

ブルー・ディキンソン :3dx+17 (3DX10+17) > 9[1,5,9]+17 > 2

GM :余裕!

GM :ではブルーは鮮やかに殺到する車を叩き斬って道を押し作った!
引き続きRPからどうぞ! 

ブルー・ディキンソン :
「おーん……?」

 弾いたはいいものの、第二撃が来ない。
 なるほど、一射目で無駄だと判断したか。
 リソースを無駄に使い切らない姿勢は流石に訓練されている、って言えばいいかな。
 じゃあどうする? 敵はどう仕掛けてくる?

 考え自体はすぐに思い浮かぶ。取り捨て選択が重要だ。
 こちらの乗り物を攻撃する? 否、避けることはできる。
 なら簡単だ、他の車を撃てばいい。

ブルー・ディキンソン :
 紅い炎と共に風が揺らぐ。
 視界に広がる鋼鉄の花々を見て、思わず呆気に取られたが。
 全く、無関係な犠牲を増やしていくとは罰当たりな連中だ。

「スマートにやれないかなこういうの」

ブルー・ディキンソン :
 しょうがない。
 気は進まないが、ここでもたつくわけにはいかない。
 ライキリを振るって、振るって、振るって、雪崩のように横転してきた車達を叩っ斬る。
 
「……ごめんねえ、スマートにやれてないのはあたしのほうだナ」

 追跡継続。
 爆発を背にしながら、アクセルを踏む。

SYSTEM :
 横転する車が、次々と連鎖してハイウェイの車を巻き込んでいく。
 ハンドルを切り損ねた車が、なだれ込む車に呑まれて拉げ、更にその後部の車を玉突き事故のように巻き込んでいく。
 仕損じていれば、あの玉突き事故の先頭に自分がいたことだろう。尤も……
 それは、あくまで仕損じていればの話だ。

SYSTEM :
 バイクにまたがり、ハイウェイを疾走する蒼い燐光。稲妻を伴う光の残光を刻みながら、携え持った妖刀が今一度振るわれる。
 時速百キロを超えて走る二輪の上で迸る音越えの剣閃が、稲妻の軌跡を描き十重二十重に切り結ばれる。
 

SYSTEM :
 雷光の瞬きの如き、刹那の内に雪崩れ込む無数の車体は膾に切り刻まれ、鮮やかに妖精の道を形作っていく。
 まさに早業。剣を振るうのに、殊更にエフェクトを必要としなかった。集中さえ必要とせず、道を開くに必要な場所を的確に断ち切っている。

SYSTEM :
 それはまるで、斬られたことに後で気が付いたように。
 瞬きの間に吹き飛ばされた車が爆轟を放ち火柱を立てた。
 爆風に背中を押されるように、踏み込んだアクセルはさらに速度を増して、誰阻むものなく目指す車体に肉薄する。

SYSTEM :
 押し出されたバイクは、遂に走る車の側面にまで近づいた
 その最後部。ブルーは後部座席のガラス越しに、遂にそれを目にする。

"ラクシャーサ" :
 視線の先にはどこか楽し気な様子で嗤いながら視線を合わせてきた戦鬼の影と。
 その奥で、隠し切れない戦慄を抑え込み、落ち着いた気丈な様子で佇む少女がいた。

"ラクシャーサ" :
「なに、家政婦さん? 
 子守りの面倒にわざわざこんなところまでご苦労なことで」
 

ブルー・ディキンソン :
 ──見っけ!

 後部座席に二名。
 保護対象と、推定"ヤバい”駒一人。
 合わせた視線の一瞬で、無限に続くような会話をした気分になる。

ブルー・ディキンソン :
 思わず、笑った。
 馬鹿げた話だろうが……、シンパシーを感じる部分があったのかもしれない。
 あるいは、レネゲイドが満たす衝動のようなものかもしれない。
 いずれにせよ、この目でターゲットの確認はできた。

ブルー・ディキンソン :
「勿論。
 仕える者の危機には地の果て海の果て南極まで!」

「正義の家政婦参上です♡」

 にっ、とした微笑みを見せる。
 小さな視線を保護対象──"お嬢様"に向けて、無言の意思表示。
 ・・・・・・・・・・・・
 そういうことにしておいて、というネ。

ナタリー・ガルシア :後方で起こる爆発音に衝突音。
何が起きているか想像するに難くない。

だが、巻き込まれた者達に心を痛めるのは後回し。今できることはどうすればこれ以上被害を抑えることが出来るか、だ。

追跡者――おそらく、イレギュラーの原因となった人物と車の硝子越しに視線が合う。
味方かどうかは分からないが、敵の敵ではあるようだった。

ナタリー・ガルシア :
「――――ッ!」

・・・・・
合わせます、という意志を込めて、小さくうなずく。
なぜメイド服を着ているのかは分からないが、なにか意味があるのだろう。

"ラクシャーサ" :
「自分から正義を名乗る奴に、正義もクソもないと思うけどなあー」
 
 どこか呑気な、緊張感を感じないやりとり。やってきたものが、よりによって女中の服を着ているとなると猶更だ。
 しかし、それは彼女らに刃を扱うのに緊張する必要がないというだけだ。
 生まれついてからそれを振るってきたものにとって、もはや刃とは体の一部に等しい。
 無論、それを振るう軽さも。

ブルー・ディキンソン : 

"ラクシャーサ" :
「ま、なんでも構いやしないけど……デートの邪魔だから取り敢えず帰って下さる?
 うちら、これから家出して楽園にリンゴ狩り行くコトになってんのよね」

ブルー・ディキンソン :「メルヘンですねえ。
 ずいぶん血生臭い楽園なことで」

ブルー・ディキンソン :
「デートにしては人手が多すぎません?
 物言わなそうな変なマスクしてる男たちも居ますし。
 お嬢様つまんなさそ〜ですわよ?」

"ラクシャーサ" :
「詮索とお小言の多い家政婦さんって嫌~い」

 しっしっ、という手の動きに合わせて、再び自動小銃の矛先がそちらを向く。

武装した男たち :
 今度は助手席からも窓が開き、その銃火が殺到する。
 通じぬことは既に先に見たが、制圧効果が完全に損なわれているかと言えば否だ。防御に回るならばそれだけでも意味がある。
 飽和火力で寄せ付けないつもりか。

ブルー・ディキンソン :「うわっ悪い女!」

ブルー・ディキンソン :
 口で悪態をつきながら、弾丸を切り飛ばしていく。
 まずいな……こう至近距離でこれをやられると、結構難しい。
 バイクの維持にも気を回さなくちゃいけなくなるし。
 流石に一人だときびしーなー?

「まったく『待て』のできないお犬様が多い事!」

"ラクシャーサ" :
 すかさず銃撃を弾きながら何とかして近付こうとするブルーに対して、ラクシャーサの右手が音もなく伸びた。
 緩慢な仕草で伸びた先には、鞘に納められた彼女の剣柄が収められている。

"ラクシャーサ" :
「仕方ない。じゃあ家政婦さんもちょっとだけ遊んだげる。
 言っとくけどあたし、結構強いよ」

 そして、引き抜かれる剣。ブルーの使うような日本刀をベースとした得物ではない。
              シミター
 寧ろ湾刀……中東で観られた曲剣に近い形状をした軍刀の一種であった。
 何より特徴的なのは、その剣先がまるで蛇の舌のように二つに分かれていたことだ。

"ラクシャーサ" :
 ラクシャーサは抜剣しながらも、しかし相変わらず席を立とうとしない。
 直接打って出る……そんな雰囲気を見せながらも、しかしその場から欠片も動こうとせずに、ただゆっくりとその剣先を後方に向ける。

ブルー・ディキンソン :
(───なんだっ?。

 剣に手をかけながら動こうとしない。
 ……その場から攻撃を? 居合の要領で?)

"ラクシャーサ" :
 剣先を向けたまま、女は小さくその銘を口にする。

"ラクシャーサ" :
      ゾルファガル
「────奔れ、骨 喰 み」

"ラクシャーサ" :
 その銘を口にする刹那。
 切先を向けた剣は、弾速を遥か超える速度で剣先から何かが伸びた。
 ……否。
               ・・・・・・・
 詠じると同時に、剣そのものが超高速で伸びた。

"ラクシャーサ" :
 それは無限長の射程を持つ、不意を打つ刺突となってブルーに襲い掛かる……!

SYSTEM :【Action!】

 防御判定が発生しました。
   内容:ラクシャーサの攻撃を防げ!
 成功条件:以下の判定を行い、いずれかの条件を満たす
     ●エネミーの攻撃判定に対して任意の<白兵><射撃><RC>技能を使用し、対抗判定を行い勝利する
     ⇒失敗した場合のみ、振られたダメージ計算を行い、戦闘不能にならない。

"ラクシャーサ" :というわけでいっきまーす 第一投!

ブルー・ディキンソン :ぎゃ〜!

"ラクシャーサ" :15dx7+5 ちなみにコンボ構成はまだ秘匿だよ (15DX7+5) > 10[3,4,5,5,6,6,6,7,7,7,8,8,9,9,9]+10[1,1,2,4,7,10,10,10]+10[3,3,8,10]+6[2,6]+5 > 4

GM :ちなみに

GM :シーン入りしているのでお嬢の援護は受けられます

ナタリー・ガルシア :任せてくださいまし!

ブルー・ディキンソン :ありがて……

ナタリー・ガルシア :では、私は援護の風とウインドブレスをメイドさんに使用したいですわ!

GM :がっつり使うねえ

GM :ではブルーさんの方の判定をば

ブルー・ディキンソン :はぁい、白兵で!

GM :

ナタリー・ガルシア :《援護の風LV7》+《ウインドブレスLV5》
メイドさんの達成値に7d+15ですわ

GM :では援護の風によるバフが乗ります

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 43 → 47

ブルー・ディキンソン :お〜!

ブルー・ディキンソン :じゃいきます、すごい数値だ

GM :宣言はないですな よござんすか よござんすね

ブルー・ディキンソン :ん!そうね

GM :ではどうぞ!

ブルー・ディキンソン :10dx+42 <白兵> (10DX10+42) > 10[1,2,3,3,3,5,6,7,8,10]+8[8]+42 > 6

GM :でかい!

ブルー・ディキンソン :ひゃっほう! ナイスよお嬢様〜

ナタリー・ガルシア :援護は任せてほしいですわ!

GM :では第一条件で判定成功!
剣で防御するRPをどうぞ!

ナタリー・ガルシア :
  ・・・
――ここだ、という直感。
励起した力。すでに銃爪(トリガ)には指をかけている。

蛇の舌のように伸びる剣の軌道、その出掛かりを止める。
極限まで圧縮された風の弾丸を剣の切っ先へ――ほんの一瞬の拮抗の後、それは極小の嵐を生みながら弾け飛ぶ。

瞬き一つの遅延、爪先ほどの軌道ブレ、完全に防ぐことも、逸し切ることも出来ない不完全な援護。

それでも――

ブルー・ディキンソン :
 ───充分!

 僅か。
 僅かミリ単位の"ズレ"さえあれば、迎撃自体は容易だ。
 コマ送りのように、脳が瞬間瞬間を認識していく。
 それさえあれば刀を構える動きは完璧に行える。

「──っせい!」

 ライキリを垂直に構え、無限に伸び続ける蛇の牙を上へ弾くように力を込める。
 片腕できる最小動作がこれだ、バイクはゆらぎもしない。

SYSTEM :
 ゆっくりと向けられた剣先が、空を飛ぶが如くに宙を斬り疾走する。
 弾丸より早く、鋭く、何より的確な剣刺の一撃。
 ゾルファガル
 脊髄砕きの名に相応しく、それを躱し損ねれば髄をその二股の剣先に捕らえられ、地面へと縫い付けられていたやもしれない。

SYSTEM :
 だが、その剣先が槍の如く延びる直前に神風は吹いた。
 体も動かず、目も動かず、それを確かに視認することも出来ない。風も、これだけの速度であれば読むことは困難を極めた。
 それでも……辛うじて放つことが出来た風弾は、これまで懸命にイメージを練り、銃爪に指をかけて待ち続けていた成果であった。

SYSTEM :
 延びる骨喰みの刃は、無情にもナタリーが護るために差し出した風塊をせめぎ合うことさえなく打ち砕いた。
 だが……何の成果もなかったかと言えば、決してそうではない。

SYSTEM :
 僅か数ミリのずれと、着弾迄の隙。剣士、特にオーヴァードにとって、その僅かな間隙が如何程に意味を持つのか、知らぬ者は少ない。ましてや、ナタリーは兎も角実戦で経験を積み続けたブルーにそれが分からぬ道理もない。

 ナタリーの援護によって、不意を打つように延びる剣を、すかさず上に弾くことに成功していた。

SYSTEM :
 そして……危機を超えた先に、何時だとて勝機がある。
 剣が伸びて攻撃を弾き、制圧射撃もリロードタイムに入った。
 延びた剣を戻すにしろマグチェンジにしろ、バイクを犠牲にすれば辛うじて車に飛び込むこともできるはずだ。

ブルー・ディキンソン :
「───ちょいさッ!」

 どうせ安物のバイク!
 製造した日本の会社に心で謝罪!
 アスファルトに熱烈なお礼をしながら車体を蹴っ飛ばし、空いた窓に飛び込もうとする。
 
 無謀? ……知ったことか!

SYSTEM :
 ノイマンの演算力によって速度、跳躍距離を素早く無意識レベルで演算し、決死の思いで飛び込む。
 刀を持たない左手を伸ばすと、空の五指は過たず窓辺を掴んだ。

"ラクシャーサ" :
「ひえ~……よくやるねえ」

 呆れ半分関心半分の様子で、飛び込んできたブルーに対してラクシャーサはブルーの様子をしげしげと見つめる。
 その剣の間合いは元のサイズ、いやそれよりわずかに縮んだ、室内戦で取り回しの良いサイズにまで縮小されている。
 どうやらこの剣、間合いは自在とするらしい。

ブルー・ディキンソン :
「便利な武器ですこと。
 羨ましいですわ、持ち運びできて」

ブルー・ディキンソン :
(さて、リーチの関係でむしろこっちが不利。
 一番いいのは……)

 一瞬。
 一瞬だけ、ちらりとお嬢様に視線を向ける。

ブルー・ディキンソン :
 おっと。
 気が緩んでら。

「……なかなか快適な車内だこと」

ナタリー・ガルシア :飛び込んできた闖入者を視界の端に捉えながらも、そちら向いて礼を尽くすことすら出来ない現状での最適解――即ち、

「私、いま身動きが取れませんの!少々手荒でも構いませんわ!!」

虎の子の一発はもう使い果たした。次の一撃のためには、少なくとも数呼吸分の集中が必要になる。
個人で動いているのか、組織で動いているのか、何か算段があるのか、問いたいことは山ほどあれど状況は流転する。
――チャンスは今、ここしかない。

ブルー・ディキンソン :
「!」

 なるほど、こちらの意図をちゃんと汲み取ってくれるか。
 この緊張状態で思考を維持してくれているのは助かることだ。
 当然私もそれを望んでいたし──何より、あっちは人質という重荷がある。

「いい子ね」

 ならばよし。
 ぐっと腕を伸ばし、荒々しくもその身柄を抱え込もうとする!
 ……問題は、あの鬼っ娘が逃がしてくれるかだが。

SYSTEM :
 そう、まさに一髪千鈞を引くタイミング。
 身動きが取れない状態のナタリーにとっては、此処を置いて助かる道筋は浮かばないところだ。
 ずっと隠し持っていた頼みの一発も、此処に繋げるために使いきった。

SYSTEM :
 すかさずそれに応じて、ブルーの身体が動く。
 この場は狭く、武器の取り回しを考えると不利なのは自分の方だ。
 時間をかければかけるほど不利になる。ならば、電撃戦に臨むのが吉。最悪ナタリー一人担いで此処から飛び降りれば、後で車に轢かれながらであろうとラクシャーサの元から離れることが出来る。
 今、彼女を縛っている何某かの束縛も、解けるかもしれない。

"ラクシャーサ" :
「無視は困るなぁ……」

 しかし、それに立ちふさがるのはやはり戦鬼。
 ぺろりと舌なめずりをして室内用に調整した剣を携え持ち、構えに入る。
 結局の所、この女の手元からくすね取るという一番の難所を潜らねば重ねた計算も机上論に終わる。

SYSTEM :
 まさにここが天王山。
 一瞬の油断、一瞬の隙が勝負を別つ鍵となる。

 極限の集中状態で、視界がゆっくりと動く最中。

SYSTEM :
 静かに、その声は何処からか響いた。

????? :
 
『────"ブラックアウト"』


SYSTEM :
【Information】
エネミーエフェクト《ミッドナイトシネマ》が発動しました。
使用者:???
対象者:シーン
効果:
   Black more
   より深き闇へと。
   シーン内の光を奪い、あらゆるエフェクトが自分と同一のエンゲージにいる
   キャラクターにしか使用できなくなる。

SYSTEM :
 刹那……あらゆる光が、何処かへ吸い込まれる。

SYSTEM :
 ネオン街の光も。
 街灯の光も。
 人造の光のすべてが、瞬きの内に失われる。

SYSTEM :
 何も見えない無明の闇。
 それは夜の闇とは異なる、より深き闇。
 深き闇に、人の眼が慣れることはない。闇とは人ならざるものの世界。深海であり、洞窟であり、それは人が決して相容れぬ未知の領域
 

SYSTEM :
 それを示すように……

 闇の中、喧騒を破るように、鴉が鳴く。
                    フッケバイン
 屍を食い、貪り、肥え太り、何処かへ飛ぶ凶鳥。

"ラクシャーサ" :
 その鴉の声と、諸行の中で怒声が混じる。

「ああもう……"ブラックモア"! 今いい所なのに、邪魔しないでくれる?」

"ブラックモア" :
『煩ぇ。遊び過ぎだぜ"ラクシャーサ"。
 たらたらやりやがって』

"ブラックモア" :
『初撃から"アレ"でも使って適当に消しゃあこんなにもたつくことァなかったんだぜ。
 餓鬼連れて、さっさと出ろ』

"ラクシャーサ" :
「冗談。アレ使うとあっという間に戦い終わるから使いたくないんだっつの。
 あーあ、怒られちった。折角良い所だったのにさぁ」
 

"ラクシャーサ" :
「じゃ、悪いんだけどメイドさん、火遊びはここまでね」

SYSTEM :
 直後、夜の闇に紛れて無数の鴉が鳴く。

 夜よりなお暗き闇のレイヴンが、無明の凶兆を伴って空を舞う。

SYSTEM :
 そして羽ばたく音を耳にしたと同時に……
 ゆっくりと、視界に光がともる。
 ネオンの光が、街灯の光が、行き交う車の光が、後方で爆発した車の火柱が、輝きを取り戻す。

SYSTEM :
 再度、視界が戻った。
 しかしその時、ブルーと、ナタリーが目にしたものは全くの別だった。

 掴みかかろうとしたブルーは、車の後部座席に覆いかぶさる形で倒れている。気を失ったという訳ではない、単に躍りかかろうとした結果、空を切ったというだけだ。

SYSTEM :
 その一方、ナタリーは……

"ラクシャーサ" :
「悪いねえ、ほんとに」

 身動きが取れない状態のまま、その体はラクシャーサに担ぎ出されていた。
 一応、女中の方が見えるように顔を向けてやっているのは彼女なりの情というものなのか。

"ラクシャーサ" :
 ハイウェイの車中、アクセル全開で進む中、ラクシャーサは通り過ぎた表札の上に立ち、ナタリーを抱きかかえている。

「もうちょっと遊んでいたかったけど、煩いのがちょっかい掛けてきたみたい。
 まったく、アイツの射程範囲は広すぎる。
 ・・・・・・・・・・・・・
 ルイジアナからメリーランドまで、一体何キロあると思ってるんだか」

"ラクシャーサ" :
「けどまあ……追ってきたいなら、ちゃんと引き続き追ってきてほしいな。
 あたし、まだ不完全燃焼だからさ」

"ラクシャーサ" :
「そういうわけだから、デートは続行。
 残念だったね、お姫様」

 に、と抱えたナタリーに笑いかける。
 一応これまで危害を加えられてはいない。だが、今までのやり取りに加えて先の干渉。

 まだ仕掛け人がいること。
 恐らくは、彼女と同格の相手が、未だ相当数いることは容易に想像がついた。

ナタリー・ガルシア :
「…………デートというのであれば、もう少し優雅にエスコートして欲しいですわね」

返す言葉にも、先程までの力はもう、ない。
己の置かれた状況、最悪を想定していたと思っていたが――それを超えるほどの絶望的な現状に、歯噛みしたい気持ちを押し込める。

絶望も、悲嘆も、諦念も、全てが終えてからするべきだ――今は、そう言い聞かせることしか出来ない。

ブルー・ディキンソン :
「!」

 一瞬、一瞬だ。
 僅かに目線をずらしたのが悪かったのか?
 いや、それとは違う、別の力からの干渉だ。

ブルー・ディキンソン :
 後部座席に身を預けてしまっている状況。
 身を起こし、車内の窓から見えるのはお嬢様を抱えた戦鬼のお姉さん。
 ……ファースト・コンタクトは失敗ということか。
 立て直しをするためには足がない、さっき蹴飛ばしてぶっ壊したばかりだ。

 ……ちょうど、顔を見ることのできる位置ではある。
 何をするべきか───

ブルー・ディキンソン :

(──待ってて)

 四文字。僅かな口の動き。
 遠くではあるが、彼女の目はまだ諦めてもいなければ絶望もしていない。
 先程のナイスなアシストをやってのけた度胸は、まだ残っている。
 希望があるのならそこだ。

 ならば追いかける。あらゆる手段を持って追いかける。
 それがミッションであり──何よりあたしにとっての『使命』だ。
 
 年下見捨てるような腐った根性してないのよ、こっち!

ブルー・ディキンソン :
 ……とりあえず出よう!

 さっきやったみたい、今度は内側から蹴破ってゴー!

"ラクシャーサ" :
「あっははははは……ほんとごめんね?」
 抱きかかえながらけらけらと嗤う女からは、未だに心の内が伺えない。
 自分にその価値があると、そう理解していても、気まぐれに手を掛けそうな恐ろしさがある。

"ラクシャーサ" :
「代わりにそのお高いリムジンはあげ……ようとしたけど、さっさと出ちゃった。
 ま、いいけど。高かったのに……」

 少し口を窄めながら、わざとらしく大仰にラクシャーサはハイウェイの標識から飛び降りる。
 目指した√とは違う方向だが、恐らくトラブルから合流地点を買えたのだろう。
 それをするだけの通信網が備わっていることは、先の"ブラックモア"なる人物が証明している。

SYSTEM :
 ブルーは内側から戸を蹴破り、外に出る。勿論高速道路で走行中であるため慣性はすさまじいが、ブルーの肉体なら耐えられないこともない。
 そんなことより敵の逃げて行った方向に向かうのが先決で。それを他の面子に伝えることもまた肝要だった。

SYSTEM :
 時に。車を出る際、他の武装した兵士による足止めは一切なかった。
          ・・・・・・・・・・・・
 いや、正しく言えばそこに誰も存在しなかったのだ。
 ラクシャーサと、それに足並みを揃える五人の兵士たち、その悉くがいつの間にか消えてなくなっている。

SYSTEM :
 何をされたか、誰であったのか。
 掴んでおくことは必要だったが……

 今は、それより目の前のことを優先すべきだろう。

ブルー・ディキンソン :
わざわざ使うことないかもしれないけど、一応。
<タッピング&オンエア>を使ってUGNに一報を入れたい。
<アンテナモジュール>もセット! こっちは常時だけど。

GM :
了解ですです では侵食の支払いをお願いします

system :[ "雷霆精"ブルー ] 侵蝕率 : 56 → 57

SYSTEM :
 あなたは体内に搭載した体内通信機構を用いて、即席の回線を作りUGNに通信を試みた。
 ここは本部、地下に広大な基地を持つベセスダの拠点のビルのお膝元だ。連絡を取ると、速やかに本部オペレータが応答した。

ブルー・ディキンソン :
 頸のソケットにケーブルを直結させる。
 
 自分の体にインプラントした空間多重アンテナを介して、先程”目撃証言”を送った秩序の守り手さん達に通信を飛ばす。

 既に「なんか居たよ!テロリストが!」と報告しているので……。

ブルー・ディキンソン :
、  、  、 エルヴスプライト
「──登録コード”雷霆精”! 
 先に目撃したテロリストを追走中! 人質一名! 
 この通信は限定逆探知可能! 其方が動くまでは開きっぱにしとく!」

 まず、こう叫ぶ。

オペレータ :
『了解!
 今は現場へ急行できる応援の派遣の準備が整った段階です。
 専用回線なので傍受の心配はないでしょうから、座標の送信も併せて状況の報告をお願いします!』

 女性オペレータの声だ。どうやら向こうもあちらも相応に騒がしい様子だった。

ブルー・ディキンソン :
「はい了解! 手早くて助かる!」

「このまま追跡は続行するから、リアルタイムで位置情報は送り続ける!」

ブルー・ディキンソン :
 
 応答を繰り返しながら戦鬼のお姉さんと、持ち帰られてるお嬢様を追って私も降下(ダイヴ)。
 待ち伏せの可能性もなくはないのだが、リスクは承知の上だ。
 スーパーハイリスクではあるがリターンもスーパーデカい。頭悪い言い方したな。

 オペレーター曰く、もうすでに派遣の準備は整っている。
 ならば最低限達成するべきことは"ラクシャーサ"をロストしないこと!

ブルー・ディキンソン :

(いつのまにか歩兵が居なくなった──いや”消えた”?
 つまりアレは自前で用意していた生の軍隊ってワケじゃあない。
 ……血液、あるいは別の何かで作り出した人形。または人造人間の類)

、  、  、  、 フ ィ ア レ ス
(大元がナチ公だから、”死を知らぬ軍隊”を作っててもおかしくない。
 ましてや連中はR技術において”激ヤバ”な代物をいくつも研究してるって話だし──)

ブルー・ディキンソン :
 と、一歩二歩踏み出すあたりで意味があるのかないのか考察を繰り返す。

 “動く”事に関しては最小限の思考リソースで行えるわけだから、移動中にするべきことをして、余剰リソースで色々考える。

 意識と思考を分割して脳内ディベートを行い、今の状態から推察できるだけのことをしていきたいが……。
 
(流石に追いながらはちょっとキツイか。
 落ち着けばいつでも出来る事だしネ−)

ブルー・ディキンソン :
「───とにかく急ぐか!」

 リミットはあっちが合流地点につくまで。
 それまでに何かしらの妨害を行うか、ズラさせるか。
 ……全くとんでもないネタだこれ。今は女中服だけどサ!

SYSTEM :
 あなたは機敏な動きでラクシャーサが後にした道を辿って、炎上するハイウェイを横切り移動する。
 多少リスクはあるが、このまま彼女を連れた"ラクシャーサ"をロストする方が危険なことは明らかだ。
 それに、見方を買えれば『時間稼ぎ』という点では役割を果たしている。あちらがルートを変更せざるを得なくなったことは、少なからず予定を狂わせ時間的猶予を生んだはずだ。

SYSTEM :
 ……などと、楽観論が浮かばなかったのは、ケア手段など幾らでも持ち合わせているであろう敵方と後手に回っている自分たちを比較したが故のことだろう。
 今はやれることをやるほかはない。それに基本的に一人ではあるが……自分が此処にいる意味を考えれば、全く無意味ではない筈だ。

SYSTEM :
 思考を切り替え、ただ進む。
 相手は気配を消すのが巧い。足音も小さく、生態電気を感じ取れるような距離でもない。ふと目を話せば本当にロストしかねない。
 全神経を集中させなければ、到底追うことなど出来なかった。

SYSTEM :
 ……今暫く孤独な戦いが続く。
 敵の合流を妨げるために、再び追走が始まる。

 その一方で、あなたが通信を飛ばしていたUGN本部においてもまた、事件は並行して進んでいた。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
 同時刻
 アメリカ合衆国 ワシントンD.C

SYSTEM :
 作戦前夜。拠点の設備も完了し、作戦に加わる面子が本国入りを果たし、最初の合同ブリーフィングが行われる前のことだ。
 勿論沖縄でのスクランブルに備えて全全力を投入するという訳にはいかなかった。日本のFHは高度に組織化されており、全戦力を日本から傾けるという行為は難しい。

SYSTEM :
 国際情勢の基本として日本はロシア・中国の防波堤であり貴重な防衛の要衝。レネゲイドが徐々に勢力を拡張しつつある現状、その戦力を総べて一時でも撤去する訳にはいかないのである。
 

SYSTEM :
 そうして作戦投入される面々、基地防衛に当たる面々はある程度ダン・レイリーの裁量で選定され、入国したテンペスト小隊はこの基地で活動を続けている。
 だが……

SYSTEM :
 深夜帯、基地内で休みを取っていた小隊の面々と、見張りをしていた面々を叩き起こしたのは、突如として鳴り響くサイレン音だった。

SYSTEM :
 その中でダン・レイリーが夜番をしていたのか、通常通りの睡眠をとっていたのかは定かではないが。
 鳴り響くアラートには否応なしに、状況を確認する必要に迫られた。

GM :
というわけでこちらダンさんの登場シーンとなります
搭乗時侵蝕ダイスをお願いします

ダン・レイリー :了解した。作戦前夜でフライングとはな。

ダン・レイリー :1d10 侵蝕 (1D10) >

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 41 → 44

ダン・レイリー :ここで自分に急かされないというのは不幸中の幸いだが、さて。

GM :落ち着いている!流石だ

ダン・レイリー :時間が時間だ、寝ていたとしても別に不自然じゃないが…起きていたことにしよう。手持ちの端末やらなにやらで、管制室に連絡は取れるか?

GM :取れますね。まだ通信機器は生きている様子です

ダン・レイリー :よし。それならば…。

ダン・レイリー :
 軍人にも破ってはならない絶対の規律があるが、
 その規律の中に「起きている間に行儀よく攻めて下さい」という紳士協定はない。 

ダン・レイリー :
 ましてや相手はテロリスト。国際法の適用されない相手だ。
 ………アメリカ本土に深々と根を張る敵性勢力が、よもや真正面から堂々と乗り込みを掛けるような、稚拙なギャング紛いの真似はするまいが。

 依って、夜間の警戒が基地内で行われるのはこの前例を抜きにして当然のことだ。それを厳と成すのも。
           ・・
 自らの当番時間の時にそれがあったのは、不幸中の幸いだろう。

ダン・レイリー :
『───レイリー大尉だ。
 アクシデントは何処で?』

ダン・レイリー :
 即座に連絡を取れるか確認。
 通信設備は生きている───些細なことや“やらかし”でこのレベルの警戒態勢にはならない以上、此処の判断は必須だ。
 問題がない以上、先ずは状況判断に努める。

水無瀬 進 :
「こちら技術班のミナセ!
 結構マズいことになってきた、急いで管制室に集合してくれ! 状況は走りながら聞いてほしい!」

 すかさず応対したのは、恐らく夜なべして管制室に座っていた水無瀬だった。

ダン・レイリー :
 Aye
『了解、すぐに向かう』

 対応してきた知人/部下の声に間髪入れず応じ、少しは見慣れて来た活動拠点となる基地の廊下を駆け抜ける。

 ………やつがあの声色だ。
 尋常じゃない事態なのは間違いない。

水無瀬 進 :
 駆け抜ける中で、やや焦り気味の声で水無瀬は続ける。

『端的に状況を説明すると、今、この基地の基幹システムがハックされてるんだ。
 その影響で真っ先に既知の防衛システムが動き始めてる』

水無瀬 進 :
『今、こっちで手を回してるが……クソッ駄目だ、手が回るのが早すぎる! 
 今、各所の通路に敷設したハッチが閉ざされようとしてる。最悪の場合、一緒に非常事態用の防衛機構が展開される……』

水無瀬 進 :
『つまり退路を塞がれた状態で各個撃破ってわけだ……!』

ダン・レイリー :
『………典型的なサボタージュだ。合理的でもある。
 やられる側はたまったもんじゃないが、ここまで綺麗に行かれるとはな』 

ダン・レイリー :
『連中に一日の長がある…。
 長官殿の言葉を実感することになるとは。すぐに行くが、専門家から見た対処療法はどうだ』

 だが、基地内の人員は自分が信用できる者を選定し、
 基地施設自体もこちらは本場の米軍───加えて予算喰いのテンペストだ。

 自らはそうでないものの、この手の電子機器に精通するオーヴァードの存在や、その能力傾向も理解されつつある。

ダン・レイリー :
 ………それが突破されたと見ていい現状は、レネゲイドにおけるFHの優位性というのを改めて見せつけられたも同然だった。

 フライングとはいえ手厚い歓迎である。
 最悪の場合、自らで基地機能の始末を付けねばなるまいが、最悪のことなど最初から考えるものじゃない。

水無瀬 進 :
『今やってるのが精一杯だ! ハッチの制御はなんとか確保したけど防衛機構は既に向こうにコントロールを奪われてる!
 そっちの通路は安全そうだが、別の通路では一部テンペスト隊員が撤退戦を展開してる状態だ』

水無瀬 進 :
『全員が集まり次第ハッチを下ろす、けど……
 そこから先はわからない。通信機器だけ最優先で護ったおかげで、なんとかこうして命令の伝達が出来るのは不幸中の幸いってとこだけど』

水無瀬 進 :
『しかし、何が目的なんだ。十中八九FHなんだろうけど、そもそもこのサーバのどこに、いやいつの間にそんなバックドアが……
 作戦の事、もしかするともう向こうにバレてるんじゃないか……?』

ダン・レイリー :
『それでいい! 現状のベストだ。
               ・・
 そしてそちらは後だ、ミナセ。何故を命のやり取りで考えるのにリソースを使えと、俺達は教官連中から教わったか?』
 
 人員は補充が利かない。
 設備は最悪破壊しても次善がある。

 となると問題は二つだ。
 隔壁閉鎖のち、主人を間違えた防衛機構の停止をどうするか、
 そして───撤退戦の連中をどうするか。

ダン・レイリー :
『必要なのは防衛機構の停止と、隊員の合流だな。
 順序を考えるなら後者からだ』

水無瀬 進 :
『う、そりゃそうだ、失敬……
 うん、確かにそうだ。設備は勿体ないがまた作りゃあいい、なにせ大量消費で栄えたウチの国(カンパニー)だ!』

水無瀬 進 :
『一先ず管制室まで来て指示を……って、なんだなんだ
 こんな時に通信だ。しかもこれ……ベセスダからか!』

水無瀬 進 :
『この状況で嫌な予感はするけど、暗号鍵は合ってる。UGNを騙る連中の者じゃないことは間違いないようだけど……
 よし、一先ず向こうと接続する』

ダン・レイリー :
『ベセスダからか、間の悪いところに…』

 例の配備予定のエージェントが、予定時刻より早く現場に到着した、などであれば、連中の状況把握もタスクになるところだ。

ダン・レイリー :『頼む、其方にはすぐに向かう』

SYSTEM :
 そしてダン・レイリー大尉は通路を駆け抜けて、管制室に乗り込む。水無瀬の情報通り、通路に防衛用ドローンの類は起動しておらず、管制まではすぐに到達することが出来た。
 

SYSTEM :
 丁度その折、大型モニターに通信相手のUGNとのディスプレイが表示された。
 UGN本部ビルディング、その地下に敷設されているという管制室と、そこの状況が写されている。
 ……どうやら様子を見る限り、こちらとそう変わらない状態であることはすぐにうかがい知ることが出来た。

SYSTEM :
 つまりは、これはUGNに関わる組織全域への攻撃。
 非常に大規模なサイバーテロであることを意味する。

 モニターに映し出された金髪長髪の女性は、しかしその中でも落ち着いた様子で語る。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
『テンペスト小隊隊長、ダン・レイリー大尉……此度の作戦の陣頭指揮ですね。
 私はUGN本部のリリア・カーティス、コードウェル博士の不在の間、この本部を任された代理人(エージェント)です』

ダン・レイリー :
 ………到着直後、モニターに表示されたUGN本部の様子を伺う。

『こちらがそのダン・レイリーです。
 お互いアクシデントのようだ』

ダン・レイリー :
 うちがピンポイントで狙われたということではないならば、これは作戦前夜のこのタイミングを狙った大規模かつピンポイントのサイバーテロだ。

 実際に起こり得る破壊は現地の心血注いだ防衛機構がやるのだからローコストだが、それをやれるポテンシャルの持ち主など考えたこともない。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
『我々本部の座標は既に実地訪問で確認済みと存じています。
 一旦そちらの拠点を投棄して、本部まで移動していただきたい。
 今回攻撃してきた相手の情報が正しければ、そちらの設備は投棄するほかはない』

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
『恐らく今回の首謀者は『コードトーカ―』と呼ばれるFHの人間の手によるもの。
 かつてUGNの捕縛の手より逃れたFHの純正ノイマンにして、希代の科学者……』

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
『捕縛し、ヨーロッパの監獄に捕らえた中、巧みに牢より逃げ出し、行方を晦ませたと聞いています。
 彼女の性能を考えれば、この規模で攻撃を仕掛けられるのはあり得ない話ではない』

ダン・レイリー :
『コードトーカー…。
 ・・・・・
 未知の言語ですか。プライドが高いのか、視野が違うのか』

ダン・レイリー :…少なくとも後者ではあるな。ノイマンシンドロームか。

ダン・レイリー :
『已むを得ないか。
 部隊の撤退・合流後に其方に向かいます』

ダン・レイリー :
 不可抗力とはいえ、イニシアチブを取られたとも取れる判断だが、間違ってはいない。

 少なくともテンペストの対電子・ブラックドッグ装備は、どうも試合のフィールドに立つ前に一発退場だ。私情としては、此方の不備より相手の上手と言ってやりたいところである。

 ………。

ダン・レイリー :
 ………それに。俯瞰でなく。
     ・・・・
 俺自身がこの状況を見た判断としては、
 恐らく最善だ。

ダン・レイリー :
「聞いたな、ミナセ。
 遺憾ながら金喰い虫の実績も一つ増えるぞ。景気よく行く」

ダン・レイリー :管制室だ、撤退が遅れている隊員の確認も並行して進めたい。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「迅速な対応と判断に感謝します。
 今あなた方の協力を失うのは我々としても大きな損失です」

水無瀬 進 :
 その応答を傍らで観ていた水無瀬は、はあ、と大きなため息をつく。

「ジーザス……やっぱ棄ててかなきゃいけないんだなあ……」

 そこそこ手間暇をかけて調整したデータを手放すことに心底勿体なく感じながら

ダン・レイリー :
「苦労をかけるな。
 立て直しはいつも億劫だ。あるいは俺の思うよりも」

ダン・レイリー :『ともあれ、こちらはそれで纏めます』

ダン・レイリー :
 通信は以上でいいだろう。
 あれこれとコードトーカーのことを聞くだけで現状に劇的な解決方法が出てくるでもない。

SYSTEM :
 それを聞き届けると、リリアは健闘を祈る、と一言告げて通信を斬った。
 ……さて。

SYSTEM :
 管制室の様子を確認すると、小隊の内管制室に戻ってきているのが半数、残る半数は管制室へ遅れて移動しているのが四割、防衛ドローンと交戦中が六割。うちディアスはその殿を務めている様子だった。
 苦戦の色は見られない。幾ら不意を打たれたとはいえ、これで一々苦戦しているようではテンペストの精鋭は務まらない。
 

SYSTEM :
 手慣れた戦闘員よりも問題なのは多くのシステムを投棄することと、そして戦闘慣れをしていない技術スタッフの方だが。
 現状、被害者は見られない。防衛システムから逆算した即席の避難経路を先んじて渡せていたことが幸いした。通信を確保し各地に命令を伝達することを優先した水無瀬の判断の賜物であった。
 情報は軍行動の血液のようなもの。撤退はそう難しくはない様子だ。

ダン・レイリー :
 撤退そのものは幸い難しくもない。
 やつが死守した通信の賜物か。

ダン・レイリー :
 ………あとはマクレーン少尉等の交戦する六割だな。
 苦戦はしていないようだが、ハッチ閉鎖で退路が断たれる危険もある。そちらは?

SYSTEM :
 隔壁の制御に対するハックも進んでいるが、セキュリティカットすることにより進行を食い止めているようだ。
 尤も、これも時間の問題ではある。

SYSTEM :
 あまり撤退に時間はかけられない。
 一番手っ取り早い手段もあるにはあるが、消耗を気にするならば多少混乱を招くが別ポイントでの合流に切り替え、撤退ルートを敷くべきだろう

ダン・レイリー :
 ミナセの判断とモニターの表示から考えたなら、時間の猶予はそうない。
 連中が退路まで撤退することは難しくないだろうし、非戦闘員の被害も幸いにしてない。

 だがそれは現時点の話。
 軍人である以上、損耗は不可避であり、今は多少の混乱か、自らに依る行使かを天秤にかける状況だ。

ダン・レイリー :
 ………自分の価値が安いとは思わないが、それも小隊や、今後のテンペストを担うシステムスタッフ等と丸ごと引換えには出来まい。ここは拙速だ。

「予定通りこちらの“ゲート”を使う。
 エスコートする立場が逆になったがな」

ダン・レイリー :《ディメンジョンゲート》を使用するぞ。

GM :問題ありません!浸食のお支払いをお願いします!

ダン・レイリー :了解だ。これから付き合いが長くなる

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 44 → 47

ダン・レイリー :
 この“ゲート”と呼称したエフェクトの存在は、
 能力開発の賜物だった。
 バロールシンドロームから来る重力の門はどのような形にもイメージ出来るよう訓練したが、このように構造に拘る必要がなければ、シンプルな「重力の門」を作るだけでいい。

ダン・レイリー :
 ………昔、母の出身では、遥か未来に“思った先に道を繋げる”扉なんてのが出来るほど、人間の技術は進歩すると───空想の話の種にされていたことがあるそうだが。
 図らずとも、それは現代で実現したというわけだ。

ダン・レイリー :
 万人に再現可能なものでなく、個人の資質に依る、なんとも歪な進化の形である。
 オーヴァードというのはこういうものだ。
 遥か未来に辿り着く“かもしれない”ものをすっ飛ばして、現実に招き入れる。
 培われていく技術、見つけられていく物理法則、そういうものを捻じ曲げる………。

ダン・レイリー :
   レネゲイド
「………背教者か。
 皮肉なもんだな」

ダン・レイリー :
 ………こいつも、その象徴だ。

 とはいえ、便利なことには変わりはなく、使えるものを使えるようにと取り込んだのがテンペストである。
 今更なんで躊躇いが生まれようか。

 自ら開いたゲートは、予定通りその機能を果たした。
 あとは部隊の到着と本部への移動を待って閉じれば問題なく、有人の進行でないからゲートを通じた本部での第二戦を警戒する必要もない。

ダン・レイリー :
「───総員退避!
 貸しを作った嵐の名は覚えておけよ!」

水無瀬 進 :
 Aye, Sir
「了解!」

 武装したテンペスト隊員と、最低限の事後処理……機密データや作戦に必要なディスク媒体など……を素早く回収して、水無瀬含む技術班が後に続く。

SYSTEM :
 テンペストは神話に登場するような、一騎当千の英雄ではない。
 多くの場合、その歴史に名を残すこともない。
 華々しく犯罪界に名を残すこともない。

 国の義の為にただ忘れられた地で戦い、任務を果たして跡形もなく消える。
 その積み上げた轍、積み上げた敗北が精強さへと繋がっていったものだ。
 たとえ撤退しようとも、最後に勝ればよい。

SYSTEM :
 その為に集積し、その為に異端を使い、その為に動く。
 故にこれは敗退ではなく反撃の狼煙を上げるための一手であった。
 開いたゲート……道理や条理を捻じ曲げてこじ開けたUGN本部エントランスに続く扉へ、最後に殿を務めたディアスがPDW片手に中に入り、撤退が完了する。

SYSTEM :
 尤も、気が抜ける状況は依然として終わっていない。寧ろこれからが本番である。
 夜は長い。UGN側の対応というものも、これから確認する必要もあった。
 テンペスト一同は警戒を解かないまま、招かれるままに本部の管制室へ急ぐ……

GM :ではここで、ダンさんが本部にやってきた流れで鐘さんが合流します

GM :早速登場時の侵蝕率のお支払いをお願いしまあす

灰院鐘 :1d10 はりきっていこう (1D10) >

GM :高!

GM :落ち着けぇ!

灰院鐘 :ちょっとやりすぎちゃったかな

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] 侵蝕率 : 38 → 47

GM :では配置についてくだサイヤ

灰院鐘 :登場前に《鋼の肉体》を使っても構わないかな 万全にしておきたくて

GM :いいでしょう!

灰院鐘 :ありがとう

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] 侵蝕率 : 47 → 49

灰院鐘 :5d10+6 (5D10+6) > 24[5,2,6,3,8]+6 > 3

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 25 → 55

GM :素晴らしい回復力!過不足なし!

灰院鐘 :いつでもばんぜん!

SYSTEM :
 そして招かれる形でダン・レイリ―及びにテンペスト小隊は本部内のスタッフに案内され、怪我人の手当て、また戦闘後の影響確認のために医療班の元へ。
 技官である水無瀬とダンの補佐のためディアスが輔弼するように随行し、本部のコントロールルームまで急行する。

ディアス・マクレーン :
「……しかし聞いちゃいたが、多いな、女子供は。オペレータにもまだ10代の子が何人かいるみたいじゃねえの。
 さっき通信に出てたパツキンのチャンネーだって、見た感じあんたと差して変わらん年齢に見えたぜ」

 内容とは裏腹に、それは侮りや憐みからくる言葉ではなかった。まして下心から来るものでもない。
 言うなれば異国を見ての感想のようなものだ。

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :
「もとは民間の企業、有志の集まりだ。
 ましてやレネゲイドというのが表に出てから、まだ七年だぞ。年齢が重要なファクターになるってことはないんだろうさ」

ダン・レイリー :当然こちらとも主義は異なるわけで、異国のように見るのも無理はないがな。

水無瀬 進 :
「実際今常識では考えられないことに片足突っ込んでる訳だから。
 ……冗談じゃない。ホワイトハウスにだって潜り込める、なんてのは技師(エンジニア)の謳い文句としちゃ憧れの代物だけど、こうもあっさり実行されてたまるか。
 それも話によると、たった一人相手にだ!」

ダン・レイリー :
「憧れは憧れのままの方が良かったか?
 フライングで歓迎会とはとんでもないやつだったが、あれも氷山の一角と来ている。驚き過ぎると後で困るかもしれんぞ」

ダン・レイリー :
 それにしても───。
 受け入れ先となるベセスダの本部と諍いなく粛々と負傷者の手当て、
 並びにコントロールルームへの移動が成ったまでは不幸中の幸いだった。

 不祥事は不祥事だ。
 イニシアチブは彼方にやったも同然だが、任務の達成を考えるならまだ支障はない。
 あくまでも、まだだ。着いた先で本来此方に赴く予定だったエージェント等、そしてあのリリア・カーティスという代行エージェント………彼女らの態度と判断如何では、漕ぎ出す前から山に登ることになりかねない。

ダン・レイリー :…こればかりは個人の問題ではなく、もっとマクロな視点の話だから始末が悪い。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──そうしたフィクション・モンスターの存在があり得るのが、この世界ということです」

 粛々とした態度で話に割って入る声が一つ。振りむけば、そこには見覚えのある顔が、二人並んで立っていた。
 勇魚、そして灰院……二人はこの緊急事態にあたり、すかさず召集された人員だった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「お初にお目に掛かります。
 テンペストのダン・レイリー大尉ですね。私は勇魚=アルカンシエル。こちらは……」

灰院鐘 :「灰院鐘。初めまして。君たち──ううん、あなたたちかな。話には聞いていたけど、会えてよかった」

灰院鐘 :
「……こんな状況でなければ、もっと良かったんだけど。歓迎の挨拶は後に取っておいたほうが良さそうだ」
 お互い大変だったね、と眉をさげる。

ダン・レイリー :
「合っている、僕がそのダン・レイリーだ。
 テンペストの」

「そして、そういうきみ達が………」

ダン・レイリー :
「………勇魚=アルカンシエル。
 そちらの少年がショウ・カインか」

ダン・レイリー :
 ………そう在ることを疑いもしないさま。
 情報通りのティーン。
 長身に見合わぬ温和/暢気さと、矮躯に見合わぬ怜悧/苛烈な佇まい。
         バディ
 ずいぶん対照的な二人組だ、と一人内心で納得する。 

「全くだ、手ひどくやられたよ。
 潜伏するテロ屋狩りと思ってかかったわけでないが、お蔭で其方にアポもなくお邪魔することになった」

灰院鐘 :
「ダンさん。……うん、本当に会えてよかった。なんとなくだけど、僕はあなたが好きだと思う」

灰院鐘 :
「いらっしゃい」

 ワンテンポずれた返しのあと、おっとりと微笑む。

「基地のことは残念だったけど、あなたたちが無事でよかった。ここなら安全──と言える状況でもないけど、手当のことなら安心してほしい。
 僕もよくお世話になるんだけど、みんな優秀な人たちだよ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……問題ありません。我々は同じ敵を相手に戦う相手。
 貸しは、渦中で支払っていただければ」
 それに、と付け足して。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……彼が言ったように、まだ状況が安定した訳でもありません。
 我々も一旦暴走しかけたシステムの処理に奔走していたところです。
 少なからず、そちらよりは対処が出来てはいますが」
 

灰院鐘 :なんだか棘があるなあ……

ダン・レイリー :
「では、その第一印象が覆らない程度の善処はするさ」

 少年の言葉にそう返す。
 少年、というには俺よりも背丈の高い様子だ。日本名の者にしては珍しいことに、少し見上げるようにはなったが。

ダン・レイリー :
「それに………そうだな。
 完璧に凌げたわけではないのだろ? 厄介になるだけのつもりはないから、先ず認識の共有はしたい。構わないか?」

灰院鐘 :「困ったときはお互い様とも言うしね。この場合お互い困ってるって感じだけど」

ダン・レイリー :「違いない。しかし、泣き寝入りはしたくないだろ」

ダン・レイリー :………。

ダン・レイリー :
         ・・
 ………初対面の俺にそれか。

 軍では育たない感性だ。
 厳密には───。
 芽生えたら、引き摺られる感性だ。

ダン・レイリー :
 テンペストの物差しを忘れてはならないとはいえ、
 それでなんでもかんでも測っては本末転倒だ。が………。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :使うつもりはなかったが………七色の直感を使う。

GM :ほうほう

ダン・レイリー :対象者はショウ・カイン。今の発言の感情を知りたい。

GM :この場合、PCがそれに対して対抗しない場合、開示してもらうことにします

灰院鐘 :構わないよ

ダン・レイリー :分かった。僅かだが手間をかけるぞ。

灰院鐘 :あなたが誠実そうな人で安心したんだ。少なくとも、いま僕たちと向き合うあなたは軍人さんの顔をしていたしね

灰院鐘 :そういう人は好きだよ とてもね

ダン・レイリー :男だからさ。張れない見栄は張らないが、張れる見栄は張るよ。

ダン・レイリー :
 薄々察しは付いていたが、嘘ではない。
 
 もし、万が一………悪意を絡ませていたのならばすることがあったが、どうやらこの方面に際して勘は鈍っていない。
 
 この時点で、俺には二つの選択肢を脳裏に過らせた。

ダン・レイリー :
 拍子抜けするような毒気のなさ───。
 年にして17とは思えぬ、言ってしまえば老成したかのような穏やかさ。
 言い換えれば組織人としては容易く譲歩する隙間だ。

 テンペストの“ホワイト・スカイ”は、
 時としてアメリカの小目標をUGNの小目標より優先する必要性がある………。

ダン・レイリー :
 ………。

ダン・レイリー :「それで───一先ずは話を戻すか」

灰院鐘 :実際どうなんでしょう、と隣の勇魚くんに助けを求めるよ

SYSTEM :
 ……そうして勇魚が口を開こうとした手前、遮るように突如としてモニターの画面に砂嵐が起きる。
 システムのモニターに対して行われるタッピング&オンエア。或いはそれに類似する事象が、中央モニターから起きている様子だった。

????? :
『あら、あら、あら……ごきげんよう! 随分大変そうで、いい気味ね』

 モニターのジャミング音をかき分けて、聞こえてきたのは女の声だった。
 やがて砂嵐の中から、ゆっくりとその像が姿を現す。

SYSTEM :
 女は、或いは既に一度捕らえられ姿を知られているからか、それを隠そうとはしなかった。
 そして彼女は周到な性格だが、決してそれを忘れることはない。

SYSTEM :
 即ち加虐。
 圧倒的優位を確保し、絶対的安全圏から弱者を虐げ、甚振り、腑分けする。
 やがてモニターに映った画面は、一人の女の像を紡ぎ出した。

"コードトーカー" :
『私のレネゲイズワームの調子はどうかしら?
 苦しんでくれると嬉しいのだけれど……残念。意外と皆余裕そうじゃない』

ダン・レイリー :
「………其方が“コードトーカー”か。
 贈り物と犯行声明をどうもと言っておこう」

灰院鐘 :
「いや、とても大変だった。いくらシンドローム上の適性があっても、僕みたいな門外漢では手に負えないし。できればやめてもらえると嬉しい!」
 だめだろうか、と交渉。

ダン・レイリー :「念のため聞くが、きみの経験にそれで止めてくれたやつがいたりしたか?」

灰院鐘 :
「いない……と思う! けど、彼女は彼女だから」
 ね、と"コードトーカー"氏に同意を求める。

ダン・レイリー :
「そうか………」

 ………しまった、逆効果だぞ。
 自ら獲物の面を見たがる手合いにその態度、火に油を注ぐアクションだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………こういう人です。既に察していると思いますが」

ダン・レイリー :
「大丈夫、差し当たって今問題はない」

 どちらかというと問題があるのは、この主犯のリアクションが予測不能なことだ。

"コードトーカー" :
 その様子を見て、見下ろすコードトーカーは一瞬目を丸くしたものの、一層楽し気に嗤い

『まあ。かわいい子もいるじゃない!
 それに頑丈そう。
 ええ、ええ、あなたみたいな子、丁度ほしかったのよ』

"コードトーカー" :
『うーん、どうしようかしら。
 あなた一人のカラダとココロ、じっくり堪能させてもらうのが対価として差し出せるなら……
 考えてあげてもいいかしらねえ どうしましょう?』

灰院鐘 :
「えっ? ええと 僕でよければ……?」
 システム中枢に易々と介入する相手からの要望がそんなもので済むのなら安い取引だ。……だけど、なんだろう。背筋に冷たいものが走る!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「………………」

 真に受けるなよ、という表情。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
「───詭弁だな。
 もしもきみがそれで満足するなら、コードネームは今すぐ“青髭”に変えるのがいい」

ダン・レイリー :
 誰が聞いてもお似合いだろう。
 純粋な未成年の解剖に喜悦を覚えるものの名など、隔絶した言語の操り手より其方が適任だ。

 ………同時にこの反応だけでも分かることはある。
 凡そ電子戦のスペシャリスト、稀代の天才、奴の態度が崩れないのも当然だとは思っていたが。

「そして………きみが言わないなら僕から言おう」

ダン・レイリー :
「真に受けるなよ。
 個人と組織の交換が割のいい取引だと思ったのなら、きみは頷く前に考える癖が要るぞ」

"コードトーカー" :
『……あら、あら。やだ、ちょっと本気にしちゃってる?
 ……嘘。
 嘘よ、嘘嘘! 本気にしないでよもう、莫迦ねえ!
 本気で欲しくなるじゃない!』

"コードトーカー" :
『でもダメ。
 ほんとはね、あなたみたいな子は欲しくて仕方がないの。私、強い子は嫌いだけど……自分の言いなりになる強い子は大好きだから!』

"コードトーカー" :
『こんな基地一つ手慰みに潰すのをやめるだけでそれが手に入るなら私は全然それで構わないのよ?
 だけれど……残念。今回はお仕事ですもの。そうでなきゃあなた達みたいな強いお歴々の前に顔を出したりしないわ』

 強い子、嫌いだもの。などと付け加えて

灰院鐘 :「嘘かあ……」

灰院鐘 :
「そうでもないよ。他の人なら話は別だけど、僕の使い道がそうなる分には了承できる」

 べつだん自虐的な素振りもなく、素直な気持ちを口にする。

「でも忠告はありがたく受け取らせてもらおう。……ところでそれはあなた個人の意見とテンペストの思想、どちらと受け取るのがいいかな」

灰院鐘 :
「……ううん、ますます困った」

 眉と肩がいっぺんに下がる。手慰みひとつで基地ひとつひっくり返されるのも、あの交渉が冗談に過ぎないことも困りものだけど──

「その観点でいくと、僕はあなたに嫌われてしまうね。お仕事を大事にする大人は好ましいけれど、きっと方向性は噛み合わないし」

灰院鐘 :
「お互い別の道を行けたらいいけど、うん、そうはならなそうだ。……目的は? これで終わりじゃないんだろ」

ダン・レイリー :
「受け取りたい方で受け取って貰って構わない。
 この言い方を好かないなら、僕個人の感性だ」

 一時でも指揮を与るものとして私情を優先し切られては困るし、
 そのやり方への躊躇いのなさは屡々死者とすれ違うからだ。 

ダン・レイリー :
 ………そして此方から彼女に述べることはない。
 述べて応える育ちではないだろうし、仕事ならば無駄話で油を売りに来たわけではないと見た。粛々と本目標を達成するだろう。

 あるいは………。

ダン・レイリー :「(嫌いを呑み込むほどの予定が、シャンバラとしてあるか?)」

灰院鐘 :
「ううん、そうじゃないんだ。あなたがああ言ってくれたことはすごく嬉しい。
 だから……そうだな。とりあえず今は、両方と受けとめておくよ」
 僕もそうしたいし、とおっとり微笑む。

"コードトーカー" :
『そうねえ。あなたたちの流儀と私の流儀、擦り合わせて合うようなものじゃなかったみたいだもの。
 多分だけどあなたって、『自分で考えない』タイプだと思うから。その癖ちょっぴり鋭い所もある』

"コードトーカー" :
『でも……ここに来た目的も、私の目的も。あなた達なら想像がつくんじゃない?』

"コードトーカー" :
   コードトーカー
『私は"秘匿破り"。その名を冠する通りに
 遍く隠された秘匿を暴くもの。
 レネゲイドの摂理、人の摂理。可能性の海に連なる数多の宝石たち……
 科学者たるもの、それを欲し求め探るのは道理。違って?』
 

"コードトーカー" :
    レガシー
『特に……遺産と呼ばれる数多の人類の秘宝たちとなれば、猶更ね』

灰院鐘 :
「────」

 半歩前に出かかった身体を、その場に縫いとめる。訓練の賜物だろう。以前の自分なら今よりもっと安直だったという自覚を思考の片隅に持つ。

灰院鐘 :
「……否定はしないよ。今の僕には縁遠いものだけど、好奇心が原動力になる人は多く見てきた」

灰院鐘 :
「でも、ごめんね。あれはそういう気持ちで触れていいものではないというのが、僕の感想だ」

"コードトーカー" :
『あら、あら、あら。いやな子ね。
 あなた達ばかりが『選ばれた』からって、私や他の子にその権利がないからって、近付くことすらやめろと言うの?』

"コードトーカー" :
『偶然に。選ばれて。恵まれて。与えられて。
 そうして口にした棚から牡丹餅で神秘に与った、御偉い御身分であなた達は『やめろ』と言うのね?』

ダン・レイリー :
 レガシー
「遺産………」

 作戦行動中、物珍しくも強力なオーヴァードに対し、この単語が上官から使われたことはある。
 言い換えれば、自らのこのカテゴリへの知識は“それ”くらいだ。

 しかし意味合いとしては分かる。
 この女の言葉を紐解くのに、これへの理解は最重要のファクターではない。

ダン・レイリー :
「大した知的好奇心だ。個人としては端くれだけでも分からないではない。
 尤も………其方が“ノイマン”なら、僕の解答も、UGNの回答も、分かっていて口にしたはずだな」

ダン・レイリー :
 であるから重要なのは意思表示で、別に其方の意思など興味はないというところなのだろう。

 それは此方も同じだ。
 どちらに対しても、何故と問う間に人が死ぬ。機会があるなら、それはあとで檻越しにだ。

灰院鐘 :
「うん」

 底意地の悪い笑みに、素直に応じる。
                                ・・
「とりわけ強力な遺産は、自らの意思で持ち主を選ぶと聞いた。だから彼らとの関係を契約と呼ぶんだろう?」

灰院鐘 :
「選ばれなかったことを嘆くのはやめろと言わない。それは持たざる者の権利だ。
 だけど、暴くため、奪うために手を伸ばすのはやりすぎだ。相手も黙っていない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………」

 眼差しに、少し柔らかなの色が浮かんだのは気のせいだったか。
 無論、そんな様子は画面にも移さなければ、本人に見えるようにはしないのだが。

"コードトーカー" :
『ええ、勿論残念ながら。だから私はあなたに同意を求めないし許可を必要としない。
 プロトコル         コンフリクト
 言 語が違うのよ。必然、衝 突は起きて然るべきでしょう』

"コードトーカー" :
『けど、それで? 結局の所失敗した子は、やり方が間違ってたというだけでしょう?』

"コードトーカー" :

『自分が最強であろうとするからいけないのよ。
 私が欲しいのは知識だけ。それに、結局一番強いのは主導権を握ってる側でしょう?』

"コードトーカー" :
『この星には……何万人も、何億人も。
 至る地域の、至る国に。
 鬱陶しいぐらいの『資材』が、腐るほど満ち満ちている!』

"コードトーカー" :
『辛いのも苦しいのも全部そんな子たちにやらせればいいじゃない。簡単なことでしょ?』

"コードトーカー" :
      ルール
『つまらない規範に縛られているあなた達では難しいことを、私が代わりに実践してあげましょう』

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「────どうだか。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 私には、探求の名目で自分の趣味を満たしたいだけに見える」

灰院鐘 :
「……できるかぎり尊重してあげたかったけど、やっぱり難しいな。きほん僕たちは主導権を握られている側の味方だし」

灰院鐘 :
「なにより。あなたが簡単だと言うことが僕たちには一番難しくて、認めがたい」

灰院鐘 :
    コンフリクト
「つまり衝突だ。うん、単純でいい」

ダン・レイリー :
「………。
 いつ何時のナプキンだろうと、最初に取るのは自分で居続けたい。そういう話か」

ダン・レイリー :
   ちえ
 ………言語の違いを厭わず、折り合わず。
    みち
 なれど遺産を握る他人には、嫉妬めいた言い回し。

 そうも見える様子だが、
 紐解けばこんなところだ。

ダン・レイリー :
 プロトコル
「言語が違っても、そこは一介のテロ屋と変わらない………。
 いまの言葉は理解出来て安心したよ。嬉しくないことに。
 貴様が、あれだけのプロフェッショナルだということも、心底から残念になってくる」
 
 それだけに気にかかる。
                   ・・・・
 傍観者でいたがるこの女、それにしては勝利宣言めいて随分長々と自分のホワイダニットを話してくれたが、何が目的だ?

"コードトーカー" :
『ふふ、ふふふふふ……趣味と実益の折り合いをつけていると言って欲しいわね、お嬢様』

 女はくすくすと嗤いながら続ける。それは特にその本性を否定する気もないということだ。
 確かに探究心もある。多くを知りたいという欲求に否やはないが……それは根底には『衝動』がある。

"コードトーカー" :
 一方的に、奪う側でいたい。
 主導権は常に自分が握っていたい。
 上から搾取し続けたい。
 詰まる所、その優越感。

"コードトーカー" :
『ええ、そうね。だから私が此処に顔見世に来たのも、時間稼ぎ。とくに割れても困らない顔ではある、というのもあるけれど。
 何より……あなた達が慌てふためく様を……私が見ていたいから』

"コードトーカー" :
『ええ、ええ、あなた達は強い。身も心も。
 とってもゴリッパね、感心しちゃう。
 あなたみたいなのと争えば、私なんかあっという間よ。
 だから私、あなた達みたいなのは嫌い。

 でもね────────』

"コードトーカー" :

『────────他の子たちはどうかしら?』

灰院鐘 :「何を──」

ダン・レイリー :「───」 

ダン・レイリー :
   ・・・・
「───負傷者は!」

"コードトーカー" :
【Information】
エネミーエフェクト《組織崩壊》が発動しました。
使用者:"コードトーカー"
対象者:シナリオ全域
効果:
   嘲弄する加虐の声が、電子の海を席巻する。
   シナリオ内での財産点の使用及びに
   財産点を使用できなくなる。
   +ETC……

SYSTEM :
 その『能力』こそが、彼女の放ったウイルスの真価だった。

SYSTEM :
 闇社会を通じる数多のネットワーク。
 表世界に生きる幾多のネットワーク。
 ……アメリカ社会全土に広がる都市に、一気呵成に放たれる。
 これは、ハッキングなどという生易しいものではない。

SYSTEM :
 反撃するルービックキューブ。
                      ワーム
 これは、電子回路を通じて際限なく拡散する『蟲』だった。

"コードトーカー" :
『あは……やっちゃった。
 解き放ってしまったわ! 私の可愛いレネゲイズ・ワーム!』

"コードトーカー" :
『あなた達、自分たちの尺度でモノを見過ぎじゃない?
 上ばかり見てないでもっと下を見つめて見なさいな……
 今このアメリカにはたくさんの、それはもうたくさんの餌がいる!』

"コードトーカー" :
                      ワーム
『私がこのボタンを押しただけで、ばら撒かれる蟲は五十の州という葉を着実に蝕み分断する貧困の胤となる……

 けど安心なさいな。私が此処に来たのはさっきも言ったけど、詰まる所画時間稼ぎなの。滅ぼすことが目的じゃない』

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :「そっか、それじゃあ少しだけ安心だ。……気がかりは増えたけどね。
 あなたのことだ、何のための時間稼ぎかも聞かせてくれるんだろう?」

ダン・レイリー :
「………まだ下を見る羽目になるとはな!
 思った以上に良い性格をしている!」

 ち、と軽く舌打ち。
 ローコストだ、ローコストだ、とは言ったがこれは極めつけだ。
 1ボタンで、あるものをそのまま利用して、生命線がそっくり国の破滅と分断を促す道具になる───と、いう部分だけが脅威ではない。

ダン・レイリー :
   ・・
 ………それを実行するならば、此方は少なからず対処に追われる。対処を放棄したならば、より致命的な部分が分断される。

 好悪を彼方に遠ざけたならば良い手だ。
 つくづく、乗らざるを得ない方/やられる側はたまったものでない!

"コードトーカー" :
『そうね。今金融危機で疲弊したこの国なら、最低でも一か月程は持つでしょう。この私の見立てだから、そこは信頼しなさいな。
 けど……そもそも、その間あなた達はまともに活動できるかしら』
 

"コードトーカー" :
『私の時間稼ぎの目的が何かは…ううん、教えてあげません。
 これから時間をかけてあなたを蝕むワームの影響、思い知ってもらえたところで……』

"コードトーカー" :
『そろそろ私もおさらばしようかしら。
 じゃあ精々がんばりなさいな。今すぐ対処したなら、もしかすると拡散する前に何とかできるかも……なあんて』

"コードトーカー" :
 くすくす。くすくす。
 人を子馬鹿にしたような笑い声を残して、コードトーカーを写した画面の砂嵐が濃くなる。

"コードトーカー" :
 ゲーム・スタート。
 それを告げるために来たとでもいうかのように、女との通信が途切れていく。

ダン・レイリー :………生憎だが言うことはない! 見送りの言葉を考える手間が惜しくてな!

灰院鐘 :「……うん、ありがとう。せっかくのお言葉だし、がんばらせてもらうとするよ」

灰院鐘 :「それじゃあ、ええと──また今度。次は負けないから、そのつもりで」

SYSTEM :
 最後の言葉に対して、くすくす、と癇に障るような笑いを残して。
 そうして通信は途切れた。

ダン・レイリー :
「───先手を取られたか………。
 目的が他にあったとして、目を向けざるを得ない」
 
 ………これでは大目標も小目標もない。
 目下のこれを阻止しないことには、
 シャンバラの掃討が成ったとしても、帰るべき本国は焼け野原だ。

ダン・レイリー :
 ………問題は、目に見えず、手でも触れられず、拡散すれば取り返しのつかない蟲とやらをどう対処すればいいのか───それを、俺の経験上の何に当てはめるべきか、という点だ。

「あれが“コードトーカー”か………。
 二人は知っていたが、シャンバラの氷山の一角を最悪の形で認知させられたな」

灰院鐘 :「……州を跨いで活動する彼らにようやく追いついたと思ったら、全州を人質に取られるなんてね。おまけに万全の備えも形無しだ」

灰院鐘 :「まあでも。大変だろうけど、そこはそれ。なんとか乗り越えるのも僕たちだ」

灰院鐘 :「……ええと。今のはダンさんたちも含んでるつもり、なんだけど。かまわない?」

ダン・レイリー :
「………いいや。
 それで含んでいないと言われたなら、改めて自己表明の必要があったな」 

ダン・レイリー :
「何より、その取られた人質を守るのが軍人の仕事だぞ?
 そういう意味では、いまきみに僕は先手を取られたわけだ」 

ダン・レイリー :
 ………流石に自分の帰る国をタイタニックには出来ないし、作戦の出鼻を挫かれた以上は、長い付き合いにもなるだろう。

 僕の方から手を差し出す。意味は分かってくれるか?

灰院鐘 :
 軽口をのせた応答と差し出された手に、高い位置にある顔が綻ぶ。

「うん──やっぱり、あなたで良かった」

 手を重ねる、かたく握る。ふつうなら上下に揺するところだが、自然とそれは選ばなかった。

灰院鐘 :というわけで! 引き寄せておもいっきりハグさせてもらおう!

ダン・レイリー :…うん? ああ、いや。そう来たか。

ダン・レイリー :
 多少困ったように口元を緩め、ずいぶん本国の親愛表現に慣れた日本人のそれを受け入れる。

「此方慣れしているな、ショウ・カイン」

 意外ではあったが、困るほどでもない。割り込むほどでもだ。
 尤も時間の猶予がある、長くはやれないが。

ダン・レイリー :
「改めてよろしく。
 お互いの領分に踏み込み合うとしよう」

灰院鐘 :
「うん! アメリカに来るときに一番たのしみだったのが、実はこれなんだ」

 ほくほく顔で身体を離す。存分に親愛を示せてとってもうれしい!

灰院鐘 :
「こちらこそ、よろしく」

 踏み込むほど、重なり合う。そこで衝突するか、折り合えるかで、相関図は決まる。

 もし完全に一致するのなら、初めから同じ場所にいたはずだ。いつかは何かが、どこかでずれる。

 ……それでも、あんまり心配はしていない。勇魚くんには悪いけど。

灰院鐘 :順序が前後するけど、ダンさんにロイスを取ってもいいだろうか。〇好意/猜疑だ。

GM :オウケイ!キャラシートに記載お願いします!

灰院鐘 :ありがとう!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……互いの了解は得られたようですね」

 その様子を少し遠巻きで眺めていた勇魚は、一通りの了解を得られたことを確認して切り出す。
 彼女は彼女で、一先ずの交友関係はあちらに任せるのが適任だろうと理解したようだった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 とはいえ。
 現状この支部に対する攻撃が止んで、行動可能になった訳でもなく。
 この影響は間違いなく他のUGNにすら及び、周囲を埋め尽くそうとしている。

「────教官。この場の指示を戴けますか」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「──────」

 教官……そう呼ばれたリリアは、静かに瞑目していた。何かを考えるような仕草か、或いは何か気を入れるための前動作にも見えた。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「……成程、そういう手で来ましたか。
 舐められたものです」

 一拍置いて眼を静かに開いたリリアは、手を翳す。翳した手からは、紫電を纏い槍の一振りが顕現した。
 身の丈以上はある馬上槍。前時代的な武装に見えたそれは、恐らくはEXレネゲイドの一種……或いは遺産と呼ばれる遺物の一種であったかもわからない。

ダン・レイリー :
「(───ずいぶん前時代的だな。
        ..レガシー
  先の話にあった遺産とやらの一種とみるか)」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 静かに告げてリリアはその槍を逆手に持ち直し、地面を穿ち、貫いた。
 貫き、告げる。

「少々気を強く持ってください。
 ・・・・・・
 手を打ちます」

ダン・レイリー :「ン───」

ダン・レイリー :
 ───待て。
 ・・・・
 手を打つだと?
 ブラックドッグ・シンドロームだという予想は付くが、それにしたって………。

灰院鐘 :「? うん」

灰院鐘 :頷いて──ちょっと反省だ。いまのはほんとうに何も考えていなかった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 瞬間、刺し貫いたリリアの槍先を伝って光の速度でコントロールルームの一帯を駆け巡る何某かが迸った──!

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
【Information】
エネミーエフェクト《通信支配》が発動しました。
使用者:リリア・カーティス
対象者:範囲不明
効果:あまりに広大な稲妻の網が世を縫合する。
   コードトーカーの放ったワームで分解された回路を部分的に接続する

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
【Information】
イージーエフェクト《人間発電機》が発動しました。
使用者:リリア・カーティス
対象者:
効果:シャットダウンした本部機能を再起動させる

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 リリアが刺し貫いた個所を起点として、駆け巡った電流が、宛ら浄化するが如く凄まじい勢いで本部の全域に駆け巡る。
 瞬く間に、本部のシステムは正常値を取り戻す。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「間に合わせですが、一先ずウイルスの拡散に対処しました。一先ず本部とメリーランドの主要都市、及びに周辺の最低限のインフラはこれで確保できます」

ダン・レイリー :
 ………ブラックドッグ・シンドローム。
 資料情報にある特徴性の発露は、
 生体電流の異常増幅、ならびに、機械技術や兵器技術との親和性………言うなれば“サイボーグ”というアレだ。

ダン・レイリー :
 それに照らし合わせたのならば、人数を揃えれば、規模と時間によっては出来ないこともないだろう。

 ない、が、コレは───。

ダン・レイリー :
             ロスタイム
「…すごいな。助かります。延長時間があるとないでは大違いだ」

ダン・レイリー :
 ………一人で、本部どころか最低限でも主要都市をと来た。
 とんでもない。
 戦略を戦術で覆す人間なんてのが、“やつ”以外に平気で転がる世界なのは知っていたが、ここまでの練度・規模は初めて見る。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
                                ・・・・・・・・
「規模や威力こそ図抜けているでしょう。ですが、それも煎じ詰めればレネゲイドの事象に過ぎない。
 UGNの機能さえ保てるならば、現地のブラックドック・シンドロームが連携して間に合わせの回路を敷設することも可能なはず」

灰院鐘 :
「……驚いた。君の教官さん、ほんとうに凄い人だ」
 傍らの少女にちいさく感嘆をこぼして、改めて現状に向き直る。一先ず応急措置は済んだと捉えていいだろう。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「UGNやテンペストとしての活動に聊かの負荷は生じるでしょう。ですが相手の狙いは時間稼ぎ。
 少なくともこれが本当の狙いでないことは彼らの語った通り。
 街を護る役目、国を護る役目は、今は彼らに任せていい。延長時間は、彼らの真の狙いにのみ絞るべきです」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「刻は一刻を争いますが……先の行為はブラフ。大尉殿、あなたが想像した通り、あれは大規模テロによって本来の目的を覆い隠すもの。
 尤も、決してその場で付いた虚構ではないのでしょう。寧ろ大目的と反しないからこそあれだけの大胆なテロに走った」
 

ダン・レイリー :
「此方は“シャンバラ”のホワイダニットを知らない。
 その大胆なテロに目を向けさせ、覆い隠したいものがあるとして───」

ダン・レイリー :
「………単純な破壊、あるいはそれを可能にする道具ではない。思いつくのはそのくらいですか」
     ・・
 恐らく、それがやりたければ正面からやる。
 直感だが、連中の多数派はそういう感性だ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「当然です。未知ならばいざ知らず、既に手の内が割れた相手に教官が後れを取る訳がない」

 腕を組み、すん、と言い切る。

「……詰まる所目的の為の手段。そのために今、並行して別の作戦が走っている。そういうことですね」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「そのとおり」

 然り、と首肯を返す。単純な破壊も、不可能ではない。
 間接的な破壊でも、やろうと思えば今そうしたように片手間に出来る。それが成功するかどうかは兎も角、放っておくだけで時間をかけて粉砕することが出来る。
 それら、到底見逃し難い、囮と判っていても手を打たざるを得ない……そして同時にそれが大目標の達成に繋がる一手と成る。
 だからこそコードトーカーはそれを押して手を打った。

 

灰院鐘 :

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「だとするなら、本当に通したいのはこの事件のどさくさにまぎれた、それも小さな事件となる。
 オペレータ、直近でUGNへの報告は?」

オペレータ :
「は、はい!
 今しがた登録済みUGNイリーガル"雷霆精"より『指名手配中のFHエージェント『ラクシャーサ』を発見、追跡する』旨の報告が!」

ダン・レイリー :「“ラクシャーサ”…シャンバラの上級エージェント、戦闘セルの統括か」

ダン・レイリー :
 交戦中ではなく追跡中と来た。
 …無関係ではないだろう。彼女とオペレーターの交信の続きを待つ。

灰院鐘 :「追跡? ……その"雷霆精"さんが心配だ」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「それです。確証には至りませんが、幹部格を直々に動かす以上それだけ重要度の高い任務である可能性が高い。
 ラクシャーサが戦闘向きエージェントであり、大々的に動いていない点を考えれば、本命の動きの可能性は十分にある」

ダン・レイリー :「彼の言葉を借りるではないが、単独での追跡なら、"雷霆精"が例外でない限り戦力に不安が残る。
 ない場合においてもそうだが、本命であるなら、よけい手は要るな」

灰院鐘 :「よし、じゃあ早速合流しよう! 善は急げだ」

灰院鐘 :「……ところでそのイリーガルさんはどちらに」

オペレータ :

                  エルヴスプライト
「……いえ、待ってください、今しがた” 雷 霆 精 ”より続報が!
 『ラクシャーサ』と経度の交戦、及び追跡を続行するとのことです。
 また位置情報をこちらに送信する、と!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「もう少し回復が遅れていたら危ない所でした。
 コードトーカーは腐ってもノイマン、減らず口も時間稼ぎのためか……。
 教官」

 ざ、と前に一歩。明確な意思表明だ

灰院鐘 :「交戦って」

灰院鐘 :「──しかも追跡続行ときたか! ますます心配だ。無茶しないといいけど」

灰院鐘 :
「とはいえ、おかげさまで対応できるのも事実だ」
 意気込むように一歩踏み出すすがたへ、同意するように頷く。こちらもいつでもばんぜんだ。

ダン・レイリー :
 Aye
「了解した。
 ならば、こちらも現場に赴きたい。此処で勝手の違う本部詰めをするよりは役に立てるだろう」

ダン・レイリー :
「ここでの最悪は、その追跡情報が途絶える事だ。
 掛かった魚の大小を検めるのは後で良いと判断する。僕以外のテンペスト隊員には、街の方を恃もう」

ダン・レイリー :
 現場判断の裁量権はあるが、この状況で強行する意味はないだろう。
 現時点、内情的にも、本部の裁量権を持つ彼女の判断も合わせておきたいところだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。……心配だからこそ、私たちが向かわなければ。
 ダン大尉も。テンペストの実力、この目で拝見させていただきます」

ダン・レイリー :「勿論だ。先の約束は果たすよ」

灰院鐘 :「それじゃあちょっと寂しいな。握手はお互い手を握ってこそだ。僕たちの実力も見てもらおう!」

灰院鐘 :がんばるぞー、というジェスチャー。

ダン・レイリー :
「資料では見たが、僕は顔と名前で全てが分かるほど賢い人間じゃない。
 では…その言葉の通りにさせてもらおう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「受諾しました。エージェント"炎神の士師"並びに"ラフメタル"の出撃を許可します。
 ダン・レイリー大尉の同行についても許可します。寧ろ、今回はあなたに同行して頂きたいと思っていたところです」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「元より指揮下に置くのは『パラダイス・ロスト作戦』のメンバーでもあります。
 顔合わせ直後で不便はあるとはいえ、あなたはR解放当時からの古参と伺っています。
 此度の作戦に選出された貴官の能力に疑いがないか検めさせていただきたい」

ダン・レイリー :
「了解。
 其方の第一印象を裏切ることがないように善処しましょう」

ダン・レイリー :
「何より、其方のカードを見せて貰った手前だ。
 此方のカードを見せる機会がないでは、今後に差し支えもある」

ダン・レイリー :
 ………本国とUGNの折り合いは良いとは言えないが。だからとて、此処でふんぞり返る選択は悪手だ。

ダン・レイリー :
 R案件において彼らの力は不可欠だが、彼らだけで済むと思われてもならない。
 公的にも私的にも、エスコートの借りくらいは返すのが第一歩というところだろう。

灰院鐘 :「任されました。よし、はりきっていこう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 各々の返答に首肯で返し、リリアは火蓋を切って落とすように告げる。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
    ガーディアンズ
「────守 護 者、出撃!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 コピー
「了解!」

灰院鐘 :
 こぴー
「了解」

ダン・レイリー :
.Aye, ma'am
「了解した」
 ・・・
 守護者という言葉を択んでくれたならば、
 意思表示の形はこれでいい。

 この二人よりほんの一拍置いて応じる。
 応じない、余所の礼儀を形だけ真似る、それよりはよほど誠実にだ。

灰院鐘 :「────」

SYSTEM :
 そしてUGNとテンペスト……
 立場の異なる混成部隊が出陣する。
 それは何かの引力に導かれるようにして、巨大な力場に役者が集う。

SYSTEM :
 そして、最後の欠片を埋めるために、最後の役者と最初の役者が此処に接触を果たそうとしていた──

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
 同時刻
 アメリカ合衆国 メリーランド州 モントゴメリー郡。
 あなたは端的に言って混乱していた。
 

SYSTEM :
 アルゼンチンの田舎から数週間かけて移動し、手に入れたパスポートで州都ボルチモアへの便をで飛び。
 暫し休息UGN本部と接触を取るため休息と情報収集を終えて、あなた……アトラは仮の宿を取っていたのだが。

SYSTEM :
 先に起きた超大規模停電の影響で街中はちょっとした騒ぎになっていた。
 如何に情報通であるといえど、先程コードトーカーから放たれたワームウイルスによるサイバーテロによる影響だとは、その時点ではまだ知る由もない。

SYSTEM :
 現在は再び都市機能が再開し、人々は日常を取り戻しつつあったが、先に垣間見えたものが何かの予兆であることはあなたにも勘付くことが出来ただろう。

GM :
というところで

GM :アトラチャンの登場です 登場時侵蝕率チェックをお願いします

アトラ :うお~

アトラ :1d10 (1D10) >

GM :たっけ!

アトラ :アア……

GM :みんな高いなあ

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 34 → 42

アトラ :
(ウチ、そもそも人混みイヤなんだよなあ)

アトラ :
(街だって好き好んで行く場所じゃないし 縁のアリナシで言ったらナシだし)

    シャンバラ
(大体“楽園”がなんなんだよぉ 大仰な名前しちゃって)


 ぐずぐず、と。マイナス感情の愚痴を零しまくりながら。
 でも、それらを飲み込んででも果たすべきことがあるから、我慢する。

アトラ :
 ぺちぺちと頬を叩き、軽く動くためだけの荷物を纏めていく。孤独の身には送り出してくれたおじさまやその友だちの偽造パスの暖かみが染みる。
 うーん言い過ぎか。言い過ぎではあるんだけど。

アトラ :
「……とか余計なこと考えてる場合じゃなーい!
 普通に考えて今の普通じゃないし!……何か出遅れたかなあ……!?」

アトラ :
 とりあえずはいそいそと、仮宿を飛び出そうと準備を進める。
 あずかり知らぬところで何かが起こっているなら……売り込むにしても、巻き込まれるにしても、ぼうっとしていられないし。

SYSTEM :
 本来ならば不本意ではない街中での行動。それを呑み込んででもやってきた最中に起きたこの事態。
 それが常ならぬことであるのはすぐに察しがついたであろうし、十中八九レネゲイドに関連する世界の裏側と繋がっていることは予想が付いた。

SYSTEM :
 こうしてはいられない、と人込みを避けた仮宿の中、武器の猟銃と持ち込んだ備品、偽装パスポートなどの準備物を確認している最中のことだった。

SYSTEM :
 あなたの体の中で蠢く因子が、一際大きな鼓動を上げる。
 それはまるで、因縁が引き寄せた共鳴のようなものであったのか。

SYSTEM :
 この感覚を、あなたは知らない筈がなかった。
 幾度となく経験してきたはずだ。忘れる筈もない。
 ・・
 彼女だ。今、この街に……『ラクシャーサ』が来ている。

アトラ :
「ああ、もう!
 武器くらいはコンパクトにしとくべきだっ──…… ……」

 悲鳴にも似た嘆きを漏らしながら、さっさと抱えて歩きだそうとして。
 どくん、と。思わず動きを止め、勢いよく振り返る。そのまま、周囲を見回して。

アトラ :
「…… ……」

 ……──いる。ビンゴ。……ビンゴどころか大当たり。
 探し回ること、聞いて回ることを前提にしていたのに……それをする前に、『ラクシャーサ』は此処に居るという確信を得た。
 まだ、感覚ではあるが。

アトラ :
(……余計に、うだうだしてられないじゃん。
 何処だ、……もしかしてさっきの停電にも絡んでたり?あっでも ……理由も分かんないな……)

SYSTEM :
 彼女は、何処か。感覚を研ぎ澄ませれば、その場所はおのずと伺い知れた。
 ……此処まで敏感に気配を感じ取れるのは初めてだ。戦闘を終えたところなのか、あるいは。

 恐らく向かっているのは噴水広間の方向だ。

SYSTEM :
 ……向こうが走る速度はすさまじいが、アトラの位置からなら先回りが出来るだろう。

アトラ :
 ……すう、と深呼吸。
 こんなすぐにチャンスが来るとは思っても見なかったから、実は心の準備が出来てない。
 でも───……気付いてしまった。気付けてしまった。『彼女』の気配に。だから。

アトラ :
「……」

 ……うん。地図を確認して、気配の向かう先を読む。
 噴水広場。……待ち合わせ場所としては定番っぽい場所だな、などと呑気なことを考えてから首を横に振る。そんなこと、考えてる場合でもないし。
 ……此処からならば、彼女が辿り着く前に待ち構えられるだろう。

アトラ :「…… ……大丈夫。大丈夫」

 すって、はいて。
 後は落ち着いて、会って、話して。……驚かせるだろうが、無視はされないと思いたい。
 ……頭の中でのシミュレーションはやめておく。怖いから。

アトラ :
「……よし。行くぞ!」

 気合を入れて……向かってみよう。此処で何が起こるのかも、ある程度分かりそうだし。

SYSTEM :
 そうしてあなたは所持品を備え持って、広場までやってきた。
 一歩、進むごとに感じる、共鳴じみた感覚。
 それは確実に相手の姿が近づいてきている証拠に他ならない。

SYSTEM :
 ……あなたが先回りして広場にやってくるのと。
 彼女が、そこまで走る……というより、建物を乗り継いで軽快にやってきたのは、丁度同じタイミングだった。
 

SYSTEM :
 ラクシャーサは……その手に肩に載せて持つように何かを担いでいた。何か、というより、誰か、だろう。一見して何であるか見違えたが、それは赤い髪の少女だった。

"ラクシャーサ" :
 ラクシャーサは、相も変わらずどこかあどけなさすら感じる好戦的な笑みを浮かべながら、背後を気にするように後ろを振り返りながら飛び交っていたのだが。
 ……あなたの姿に気付くや、その体は突如として止まった。
 

"ラクシャーサ" :
 一転して焦ったように冷や汗をかき、ラクシャーサは

「────げ、やっべ」

 などと、心中で留めておけばよいものを、うっかり口に溢すのだった。

アトラ :
 ……ぜえ、と。息を吐き、膝に手をついて呼吸を整える。
 間に合った───……と言うには、タッチの差だ。目を細めて、跳ぶように現れた女性の姿を視界に収める。
 情報通り。というか、覚えている通りだ。その笑みにも、その雰囲気にも。
 きゅ、とウェポンケースの肩紐を握りしめる。

アトラ :
 「……っ」

 動きを止める“ラクシャーサ”に呼応するように、思わず固まる。
 ……相手の口から洩れた焦りの言葉に、何か、勢いにまかせて飛ばそうと思っていた怒りの言葉を見失って。
 言葉探るように視界を右往左往させる。

アトラ :
「……え、っと。
 剣の鬼が、ヒトほっぽって怪しい組織の幹部にまでなって……人さらいとかボロいことしてんの?」

 探るように。おずおずと。握った荷物からは手を離さずに備える。

ナタリー・ガルシア :己を担ぐ女性の足が止まる。
続いて、漏れた声は先程までの飄々としたものとは違う、素に近い――悪戯が見つかった子供のような、そんな言葉だった。

「…………」

ゆっくりと、伺うように女性が相対する者を見つめるために顔を上げる。
どうやら、ラクシャーサと全くの他人、というわけではないようだ。

"ラクシャーサ" :
 あっちゃああ……などと口にして顔を空いた片手で覆う。
 如何にも今すぐ怒鳴り出したいが、別の気持ちの方が勝ったというような返答。

「ぐ、そんなおずおずと言われると却って困るんすケド……
 ていうか言い方! もう少し容赦してくれないかなぁ!?」

 なんともバツが悪い様子で頬を掻く。

"ラクシャーサ" :
「だいたいあんたの方こそ何しに来たわけ!?
 追うなっつったでしょうが!」

 その折のラクシャーサの素振りは、これまでの様子とは一転して,知己にあたる様子の素振りだった。それも多分、そう浅からぬ仲という様子の。

ナタリー・ガルシア :「……え、っと、すみません。お知り合いでしょうか?その、積もる話があるようでしたら、私(わたくし)はそこで待っていますが……」

チラリ、と近くのベンチを見やる

"ラクシャーサ" :
「うっさいわね舌縫ったげよか!?
 人質は大人しく運ばれてなさいな!」

ナタリー・ガルシア :「その、聞いている限りでは、お二人の間で合意があったようには思えませんでしたので……」

ラクシャーサを至近から見つめて、困ったように相対する少女を見つめる。

「その、聞かれたくない話でしたら耳を塞いで――と思いましたが、私、今動けませんでした。すみません、このままでお話をお願いしますわ」

アトラ :
「いやいやお気になさらず。……っていうか攫われてるんだよね……?」

 ……いや、こんな状態でも礼儀正しいなこの子。本当にどこの子だろう。
 彼女や“シャンバラ”の関係者ではないように見えるが……。いや、気を取り直して。

アトラ :
 相手よりとんだ怒鳴りにム、と口を曲げつつ、言葉を返す。
 気になること───……の前に、抗議だ。心の整理のための抗議。

「いや、どの口でそんなこと……!人さらいってのも事実だし!その子は何?!
 ウチだってギソーやら何やら必死にやってやっと足取り見つけて追って…… ……。
 大体、何しにって、そっちが何もいってくんなかったからじゃない……!?」

ナタリー・ガルシア :「絶賛さらわれ中ですわ!助けていただけると、とてもありがたいですが……」

"ラクシャーサ" :
「言ったらついてくるでしょうが……って」

 声を荒げた最中、はっとしたように背後を向く。背後には、あれやこれやと障害物を叩き込んで追う手を塞いできたメイドが近づいている。

「ああもう、後ろから来てるじゃない追手が!
 お願いだから何も聞かずに見逃して!このとーり!ちゃんと話すから今度!」

アトラ :
「えっ……その割には結構元気だなきみ……。
 いやそれなら助けたい気持ちは山々だけども……って」

アトラ :
「うえっ……!?」

 あれはあれで何!?と更なる抗議の目を“ラクシャーサ”に向ける。
 聞いたところで教えてくれなさそうな焦り具合だ。けど、此処で見逃すのは多分……悪手。
 彼女は足が速い。ウチより。絶対もっと遠くに行く。……二度は追い付けないかも。

アトラ :
「いやいやいや、そー簡単に信じるかっての!
 こっちがどれだけ、何も知らずに独りでいたと……!」

"ラクシャーサ" :
「ああもう、仕方ない。そんなに聞き訳がないならいつも通り力づくで──」

 背後から迫る女中服は、遂にこちらの見える範囲まで来ていた。
 のっぴきならない事態を予見し、ラクシャーサは逆手で柄頭に手を伸ばす。

SYSTEM :
 そして同時期……
 ブルーは何の理由か不明だが、立ち止まり何やら口論になっているところに漸く辿り着く。
 肉体の値の差か、エフェクトの差か、これまで差が開き続けていた間合いをようやっと狭める機会だ。そのまま突っ込むか様子を見るべきかは、彼女の判断にゆだねられている

ブルー・ディキンソン :
(あ、ン───?
 なんだアレ、……喧嘩?)

ブルー・ディキンソン :
(……知り合い? 一目見ただけでもヤバオーラ出してたウォーモンガーに?
 あんな可愛い子が? ……まじ?)

ブルー・ディキンソン :「───……」

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :(───ッていやいや!)

ブルー・ディキンソン :
 胸中の困惑を蹴っ飛ばす。
 同時に詰めかけた間合いを、さらに縮めるために踏み出していく。
 奴は逆手で得物に手を伸ばしている! 知り合いだろうと力づくで突破する腹づもりだ!

ブルー・ディキンソン :
「───失礼し、まァす!」

 どんな関係かは知る由もないけど、
 というか"痴話喧嘩"だけど、申し訳ないけど乱入乱入!
 第一お嬢様抱えてる時点で割り込みもクソもあるかい!

 ───てなわけで、ライキリ片手にスライディング! 転べ鬼っ子剣士!

SYSTEM :
 ブルーが取ったのは、あくまで全力の攻勢。
 飽く迄仕事が優先であるとする、至極真っ当な反応であった。
 だが……

SYSTEM :
 その刹那、ブルーはあくまで生物的な勘……或いはこれまで修羅場を生き続けてきた感性からか。

 弛緩した姿勢で構えるラクシャーサと、彼女に抱えられたナタリー。それと応対するアトラ。
 その三者は……

SYSTEM :

 宛ら、電撃が走ったか如き衝撃を感じた。

"雷霆精"ブルー :「───!」

"ラクシャーサ" :
「!」

 それに対して、まず真っ先に反応したのは"ラクシャーサ"だった。
 しかしその表情に困惑はなく。彼女は真っ先に頭上を見上げていた。

SYSTEM :
 そのような経験をしたことは、アトラは一度としてなかった。
 しかし、ナタリーであるならば、その感触が……この夜の始まりと成った、あの気配に似ていることが察せられよう。

ナタリー・ガルシア :「――ッ!!」

アトラ :
「……っ!?」

ブルー・ディキンソン :
 女中服に仕込んだ──乙女の秘密の推進器──で宙返り。
 スラディングを中断し、釣られて上を見上げる。

「……今度は何!」

"ラクシャーサ" :
「ワーディング……いや、それだけじゃない。
 『共鳴』……ああ、そういう」
 

ナタリー・ガルシア :
   ・・・・
とても懐かしい感覚。
ラクシャーサと同じように、空を見上げたいが、自由の効かない体ではそれも適わない。

けれど、これまで軽口を叩く際も張り詰めていた緊張の糸が緩む。


アトラ :
「ちょ、ちょっと。何なになに……」

"ラクシャーサ" :
 一人納得した様子で、ラクシャーサは嗤う。

「悪いねメイドさん。どうやらさっきの鬼ごっこ、辛うじてタッチの差でこっちの勝ちってコトで」

 気が付けば、周囲の音がパタリ、と消えている
 先程彼女が口にした、ワーディングの影響もあるのだろう。
 だが、それだけではなく……

ブルー・ディキンソン :「勝ち誇んなっ!
 まだ缶蹴ってないっつーの───ッ」

 (……音が消えてる! ワーディングだけじゃないな!?
  もしかして"さっき"のか!? また鴉の影に追いつかれたとでも!)

SYSTEM :
 強大なワーディングが描き出したのは、まるで何かが降り注ぐが如き光の景色。
 空間剪定系の強固なワーディングによって、周囲は別領域に塗り替えられていた。

SYSTEM :
 恐らくラクシャーサは、それを為すためにこの誘拐に及んでいたのだろう。
 まるで天使でも振ってくるような大仰なワーディングの中で、何かが影を為し、形作られていく。

????? :
「──我に求めよ。されば我は諸々の国を嗣業として与え、地の果てまでおまえに与えよう」

????? :
「おまえは鉄の杖をもて彼らを打ち破り、陶工の器物の如くに打ち砕かん」

????? :
 光の中、血を這いずる蛇の如き影はシルエットを為し、徐々に人のカタチを為して変化する。
 光の中、形銅鑼れていくその様は何処か神々しさすら感じられる。

 形作られた姿は、女性だった。
 小麦色の肌と、異なる光彩を持ち、輝ける剣を佩いたそれは、まるで古き聖書に登場する士師のそれを思わせた。

????? :
 ナタリーは感じただろう。
 彼女は。

 どこかリリアと雰囲気が似ていたが。
 致命的に何かが異なっていた。

 遠くを見つめているような眼差し。
 けれど──それを始めて目の当たりにした時。その見据える先は真逆に見えたのだ。
 

????? :
「───────────────────」

????? :
 瞑目し、相対する。
 すべてを浄化し、清める塩の光を纏って現れる。
 その様はナタリーにとっては、恐ろしい筈であるのに穏やかな気持ちにさせた。
 その様はアトラにとっては、慣れ親しんだはずであるのにとても恐ろしい気持ちにさせた。

????? :
 女は、光の中で。ゆっくりと眼を開き、告げる。
 他のものなど意中にない、と。そう告げるように、ただナタリーに対してのみ向けられている。
 

????? :
「────おまえを、迎えに来た」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「――ッ」

視線の先、見下ろす者がいる。
知らない相手のはずなのに、本能が慣れ親しんでいるかのように、心が穏やかに凪いでいる。

思わず息を呑んだのも、そんな自分の感情の動きに混乱したからだ。
頭では理解しているのに、衝動とも呼べるような己の奥深い部分が彼女を認めてしまっているような――

「わ、私は……」

ナタリー・ガルシア :  
   ・・
「な、なぜ……?どうして私なんですの!?」

飛び出したのは、純粋な疑問――というよりも、応えを先延ばしにするための質問だった。

ブルー・ディキンソン :
(……ふざけた女! この私の前で聖書から引用するなんて!
 ……しかしまずい、まずいぞ。
 あの目は魅入ってしまっている目だ……!)

"ラクシャーサ" :
「──────アトラ、目を合わせちゃ駄目」

 囁くように、咄嗟にラクシャーサはアトラに向けて語る。

アトラ :
 ……何、これは。
 一人勝手知ったるように、追って現れたメイド服に語りかける“ラクシャーサ”を思わず縋るように一度見て、天より降りし女性へ視線をうつす。
 この感覚はなんだ。あの女性はいったい。……この人質さんが目的なの?なんで…… ……。

アトラ :
「……えっ」

"ラクシャーサ" :
「私もよく分かってないけど、アレは普通の尺度で測っちゃ駄目なやつだ。
      ・・・
 とくに──私たちにとっては」

ブルー・ディキンソン :
  バロール
("魔眼遣い"ってことか……? 
 ……こっちもそれに甘えちゃうけど!)

アトラ :
「それって、…… ……」

 口を紡ぐ。……真剣なときの彼女を疑うことは、多分ない。人質の少女を気にするように其方を見ておく。

????? :
 女は動じる相手に対して、諭すように続ける。

 ・・・・・・・・・・・・・
「おまえが最後の一人だからだ」

????? :
 女は、ゆっくりとその手を差し出す。
 掌を開いて、ナタリーの元へ。

「帰ろう。我らは、おまえの帰りを待っている」

????? :
「最後の一人の帰還と共に、旧約は果たされる」

????? :

「────さあ。私の手を取って」
     ・・・
 奇しくもあの時と同じ言葉で。
 彼女は、手を伸べる。

 それと同時に──自由意志を確かめるが如くに、あなたの体を動かす何某かは、解かれていた。

SYSTEM :
【Information】
エネミーエフェクト《シャドウマリオネット》が解除されました。

ナタリー・ガルシア :思わず、誘われるがままに手を伸ばしそうになる。
何の確証もなく、それどころか初めて目にする相手のはずなのに――遥か昔からの盟約を果たすべき時が来たような、そんな不思議な感覚。

ナタリー・ガルシア :
奇しくも、その言葉は――あの時と同じもの。

きっと、これもまた己の『運命』なのだと、本能が理解していた。

ナタリー・ガルシア :   
   ・・・
「――いいえ」

だが、だからこそ。
伸ばしかけた手を下ろして、まっすぐに見つめる。

「私には、しなければならないことがありますの――与えてもらった多くのものを返しもせず、貴女と共に往くわけにはいきませんわ」

ナタリー・ガルシア :静かに、瞑目する。
その手を取りたいという想いは、今なお胸の内で静かに脈打っている。

あるいは、こちらの『運命』の方が先であったのならば手を伸ばしてしまっていたかもしれない。

「私の帰る場所は、私が決めます――だから、すみません」

誘惑を断ち切るように、自らの決断を確かめるように、真正面から視線を捉えて言葉を返す。

????? :
「――――そうか」

????? :
 ・・・・・・・・・・・・
「おまえも私を拒絶するのか」

????? :
 淡々と語られた言葉。そこに情を感じ取るのは難しかっただろう。
 ただ事実を確認しただけのように聞こえる呟きのようにも聞こえ。
 或いは別の試案を働かせているようにも見えた。
 女は、差し伸べた手を。しかし降ろすことはない。
 

????? :
「………………。
 おまえが私を拒むならば、それで構わない。
 旧約を諦めることは出来ずとも。
 おまえの意志を、今は尊重したい」

????? :
「──故に、これは私にとっては不本意だが」

????? :
 手は差し伸べられたまま。形を変える。
 それは差し伸べるというより。
 翳す、というべきであったろう。

????? :

「私は新約を契った。故に、それを果たす義務がある。
 おまえが望まずとも。おまえを望む声がある」

????? :
 彼が、そうであるように。
 彼女が、そうであるように。
 別の約定故に、彼女は退けぬと。そう告げて……

ナタリー・ガルシア :「――貴女にも果たすべきものがあるということは分かりました」

その古風な言い回しと、知りもしない約定、彼女が知ることの欠片しか理解できないが――その誠実さには同じだけのものを以て応えたい。

ナタリー・ガルシア :
「では、私(わたくし)を見定めてください――貴女の譲れないものを曲げて欲しいとは言いませんが、私の意志を知って欲しいのですわ」

アトラ :
「……ねえ、何かよくないこと言ってない?
 何か、結局あの子の意思とかあんまり関係なさそう、って…… ……」

 言われた通り、目を合わせないようにあまり上は見ないようにしつつ。
 そも、あの様子では眼中にあるのは人質の少女だけのように思う。が……。
 ……差し伸べられた方も、並じゃないらしい。端的に言って、心根が強いのか。

ブルー・ディキンソン :
「(し、芝居がかった意味のわからんこといっているやつに対して、
  図太いんだか世間を知らないんだか……胆力だけなら一人前以上ってとこかしら)」

「……以前状況は変わらずか───?」

????? :
「残念だが。
 それを識る必要は、新約に必要ない」

"ラクシャーサ" :

????? :
「このような形になるのは、不本意だが是非もない。
 ──赦しは請わぬ。只受け入れよ。
 そして嘆きの中、我が名の意味を識るが良い」

”預言者”エヴァンジェリン :

     エヴァンジェリン
「────" 預 言 者 "の名の意味を」

”預言者”エヴァンジェリン :
 エヴァンジェリン。
 そう名乗った女の手から、再び満ち、溢れる影。

 それは見紛うこともなく、先程体を縛った力の正体に他ならない……!

”預言者”エヴァンジェリン :
「──抵抗は意味を成さない。
 足掻かねば、瞬きのうち楽になろう」

ナタリー・ガルシア :
「ええ、足掻いてみせますわ――たとえそれが無意味であろうと!」

”預言者”エヴァンジェリン :
「──飽く迄、足掻くか。その意志を、あくまで赦そう。
 
 ただ、受容せよ。
 私が──おまえの運命を導く」
 
 最早、言葉は命令と化していた。
 それは抗いきれないまでの凶悪な意志によって導かれ、今力を発現させる。
 

SYSTEM :
 …………………………………………
 ……………………
 …………
 ……

"最後の一人" :
 …………………………………………、まあ。

"最後の一人" :

 ────そういう反応だろうな、そりゃそうだ。

"最後の一人" :
 ────成程しっかり、受け継がれているらしい。
 

"最後の一人" :
 ────ま。どう応えようが彼女はそうしていたし。
 
 ────それにオレがそうするのは、特に変わりやしないんだが。

"最後の一人" :
 ────さて、何だったかな。

 ────筋書きによると確か、こういう時はこう言うんだったか。

"最後の一人" :

      לָּ֑יְלָה הֹוצִיאֵ֣ם אֵלֵ֔ינוּ וְנֵדְעָ֖ה אֹתָֽם
     疾く去ね 我、彼等を識らん

SYSTEM :
【Information】
エフェクト《▂▇▅》が発動しました。
使用者:
対象者:
効果:

SYSTEM :
 瞬間────

SYSTEM :
 その一瞬。
 恐らくは、誰もがその状況を正しく理解できていなかっただろう。

SYSTEM :
 今まさに解き放たれようとしていた"エヴァンジェリン"の力が、文字通りに霧消して。
 同時にワーディングによる領域が解かれていた。

 いや、解除されていたというよりは、別のワーディングに書き換わったというべきか。

"ラクシャーサ" :
「は…………?」

 ただ、茫然と声を上げたのは"ラクシャーサ"のものだった。
 周囲に人の姿はない。ただ、あなた達を除いて。

”預言者”エヴァンジェリン :
「────────────、」

 表情にこそ出さなかったものの。
 それはエヴァンジェリンも同じだった。
 ──エヴァンジェリンが放とうとしていた力は。或いは意志によって解除することのできる『力』だった。理屈の上では、それは間違いない。だが、違う。恐らくそれは。

”預言者”エヴァンジェリン :
 恐らくこの場で最も素早く状況を理解したのが、彼女であったが。
 同時にその彼女さえも『何をされたか』までは、理解していない様子であった。

「…………」

SYSTEM :
 まるで、舞台を観劇する第三者に、突如として横槍を入れられたような、そんな異常事態。
 それを前にこの場にいる面々が理解の追い付かないままに、立ち尽くしていた。
    ・・・・・・・・
 …………ただ一人を除いて。

アトラ :
「……!?」

 いやな圧が、人質の少女に向かった。
 自分たちには分からない何か……近くにいる唯一の顔見知りですら動かない中で。
 突如としてそれが立ち消える。声をあげた“ラクシャーサ”の横顔を見て、更に首を傾げる。
 ……どういうこと。何が起こった?

ブルー・ディキンソン :
「……っ、さっきから何がどうなって───」

ブルー・ディキンソン :
 ……いや、まずは自分の安否確認ではなく!

 ・・・
「お嬢様無事か───ですか!?」

ナタリー・ガルシア :「――ッ」

狼狽えそうになる己を律し、原因の理解よりも前に現状把握に努める。

「ええ、大丈夫ですわ!!」

ブルー・ディキンソン :
「なら良し!」
 ……半分はネ!

ナタリー・ガルシア :「そちらの貴女も大丈ですか!」

視線は預言者を名乗る女性から外さず、声をあげる。急変していく状況に、それでも己が何をすべきかを自らの中で自問自答する。

――今は、何がどうなっているのかわかりませんわ。けれど、全てはここを乗り越えてから。

「――そうでなければ、何も始まりませんもの!」

小さく、しかし確かに呟く。見上げる視線に敵意はなく、けれど決して陰らぬ意志を湛えていた。

ブルー・ディキンソン :
(……怖いくらい強い子だな!)

 内心で舌を巻く。
 あれくらいの意志が強い子っていうのは、最初は頼もしく見えるのだ。
 ……とはいえ! 今はその健気さとまっすぐさに救われたと思っておこう!

 ライキリを再度構え、お嬢様をすぐさま庇えるような立ち位置と姿勢を維持する。

SYSTEM :
 そして、呆然と立ち尽くす中。
 空気を断ち切ったのは、遠方から聞こえる聞き慣れない声だ。
 次から次へと状況が当人たちを置いて進み続けるが……少なくともこちらはブルーにとっては僥倖と言えた。

アトラ :
「えっ ウチも心配されてるこれ!?」

 手を振り返しつつ、次の状況に思考を切り替え切り替え。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──ワーディング領域圏内に熱源反応、都合四体確認!
 うち一人は"ラクシャーサ"です!!」

 

ブルー・ディキンソン :「っぽいよ可愛こちゃん!
 ちょうど援軍も来たみたいネ!」

SYSTEM :
 高く、響き渡る声。その意図するところは、ブルーにはすぐに察せられた。
 先に呼んでおいた増援のエージェント三名が、漸く現場へと到着したのだ。

SYSTEM :
 恐らく敵もそれを承知で短気で作戦をきめるつもりだったのだろう。丁度ワーディングが展開していたのが決め手となった。
 

SYSTEM :
 ワーディングの発動は同時に敵に自信の居場所を知らせる合図であり警告。
 一際強いそれを展開されれば、必然周囲から気取られるものだ。

SYSTEM :
 それは結果として派遣された三人のエージェント……正確には二人と一人の外部協力者だが
 ダン・レイリーと、"ラフメタル"。そして、勇魚=アルカンシエルの三名は、広間の公園へ次々と駆け付けてくる。

ダン・レイリー :
「───」

 熱源反応は四つ。
 うち一名が件の“ラクシャーサ”であるというのが事実であるが、しかしそれ以外は敵とも味方とも分からない状況である。

 判断をややこしくさせるのは、そのラクシャーサの間近に控えている10代半ばの少女の存在か。
 
 これを傷つける意図のある立ち方とは思えない。

ダン・レイリー :
       サーチアンドデストロイ
 ………で、あれば先手必殺は好ましくない。

 混乱のうちに仕掛け、諸共始末する。そういう任務ではない。
 必要なのは───。

ダン・レイリー :
   エルヴスプライト
「───“雷霆精”。
 ・・・・
 きみの敵はどれとどれだ?」

ダン・レイリー :
 ・・・・・
 これでいい。

 いずれかがシャンバラの本命であるならば、彼女が追跡していた存在の保護と救出が最優先。

 手にした愛銃を構える矛先は、
 目下最も“敵対”を確定させたラクシャーサ。

 撤退準備および、火力となり得る“炎神の士師”/護衛役となる“ラフメタル”を起点としたレネゲイドの展開準備も怠ならない。

ブルー・ディキンソン :

灰院鐘 :
「おや、思ってたより大所帯だ。怪我人は……うん、見たところ居ないようだ」

 やや遅れて追走してきた長身が、広場に長い影を落とす。よかったと胸を撫でおろす仕草は、わりと余裕があるのか、事態を正しく把握できていないのか。

灰院鐘 :
「というわけで、UGNです。援けにきました」

 よろしくね、と傾くあたま。おそらく無害っぽい少女たちへ向けて。

灰院鐘 :
「“雷霆精”──君がそうか。その勇気ある行動に感謝を。おかげさまで、やっと追いつけた」

 言いつつ、残りの二名へ視線を運ぶ。
 一方は、油断ならないとお墨付きの相手。
 もう一方はあいにくと見覚えがないが、この場を支配しているのが誰か一目で理解させる威風がある。それは危機感の欠如した灰院鐘をして、なにか良からぬ空気を感じさせた。
 同じ地面の上で相対しているとまるで感じさせない、隔絶にも似た感覚を。

ブルー・ディキンソン :
「やん。
 私の無謀な行動が”勇気”になったのは、そちらが間に合ったからですよ。
、   、   、   、   、    鐘
 追いついてくれてありがとう。助かるわ、優男さん♡」

 一人はジャパニーズ・アニメーションめいたスタイル。
 一人はザ・軍人といったスタイル。
 一人は体格に見合わぬ柔らかなスタイル。

 その最後の一人の、おそらくは心からの”お礼”に思わず軽口を叩く。
 といっても、”ラクシャーサ”の追跡が無謀に等しい行動であったのは事実だ。
 それを勇気ある行動に変えたのは、女中服の変人が言った通り、彼らが間に合ったからである。

 むしろ礼を言いたいのはこっちだ、さっきから何が何だか分からぬままでちょっとビビってたんだぞぉ。

ブルー・ディキンソン :
、   、   、   ダン
「さてさてさて──暫定”リーダー”さん!
 今のところの敵はアレとアレ!」

 指とライキリを、それぞれ”ラクシャーサ”と聖書女に向ける。
 両手で足りる数でちょうどよかった。前者と知り合いっぽい子は、様子からして”まず敵ではない”。

ブルー・ディキンソン :
、  、  、アトラ
「で……そっちの可愛こちゃんはどうなんでしょうね?
 あたしからしたら敵でも味方でもない。今のところは。

 ……ま、身の振り方を決めるなら”今しかない”と思うヨー」

 ついでに呼びかけもする。
 “ラクシャーサ”と何らかの親密な関わりがあるようだが、それは問わない。
 今問うのは──「子供を誘拐しようとしてる奴ら」と一緒に見られたいのかどうかって事。

アトラ :
「う、うおお……!?」

 援軍……と、言うと。この状況で現れるのだから、恐らく“普通じゃない”寄り。どころか───……。

アトラ :
(UGNって言った!願ったり叶ったりかも───……と思ったけど)

 次々現る影、影、影。少女が一人、男性が二人。自己申告の通り、UGNなのだろう。此処に駆け込むのに嘯く理由はないはずだ。
 そこと話しているメイド服もまた、関係者。困ったように三人の順繰りに見て、メイド服を見て、人質の“お嬢様”と出現した女を見て。
 最後にもう一度、唯一の顔見知りを見た後に、あ、と間の抜けた声が出る。

アトラ :
 この場で現れるのだから目的は明白。『楽園』絡みの彼女らをどうこうするためだろう。自分も其処に一枚噛むために彼らに近付きたかったわけだが。
 そこに、イレギュラーが重なって今だ。……だとしたら、困る。色々と。だけども……値踏みの目も感じる。 

アトラ :
「まっ……待った!ウチ、こっちの人には用事があって!
 捕った捕られたは、ちょ、ちょい待って……!人質さんの方もほら、元気そうだし ねっ」

 ……いや、怪しいよなあ。自分でも思う。でも今はそっちより気にすべき存在がいるはずだし。

ダン・レイリー :
.ラクシャーサ  .アンノウン
 アレ と アレ───。

「了解した」

ダン・レイリー :
 本題のみに絞ればシンプルな解答だが、指示したのは二人だ。
 ………これが殊の外、自分の中にある状況をややこしくさせた。

 身なりの整った温室育ちと、少なくとも旅装と呼んでいい人物。
 後者も指差してくれていた方が、個人的な好悪はさておき状況は素早く整っただろう。 

ダン・レイリー :
 そして、その後者の返答はこうと来た。

 用事があるので待って欲しい、だ。
 クロの反応ではないが、シロと呼ぶにはややこしい。

 尋問の場ならば気長に聞き意思の疎通を促すところだが、
 生憎と此処は一触即発の現場だ。

ダン・レイリー :
 そしてこうもなれば、まず先手は打てない。

         ・・・・・・
 射線が重なる───諸共撃ち殺す、は選択肢としては論外。
 両者を「シャンバラ」の同列と見るには違いがあり過ぎるのもあった。

 だがそもそも………追跡を完了させ、交戦状態とした時点であるべき争いの痕跡が、奇妙なほどになく。
 にらみ合うほど拮抗した状況に見えないことは、不必要な可能性を幾つも提示させるものだ。

ダン・レイリー :
 ………。
 戦闘行為に発展していたというよりは。
 
 何らかの形で膠着状態になっていた均衡を、自分たちの到着が呼び水になって崩したと見る。

ダン・レイリー :
「(そして…。
  その中心となっているのは、)」

ダン・レイリー :
 アンノウン
 後者の存在が齎したものが、誰にとってもアクシデントだった───。
 確証はないが、最も可能性の高い“状況”はそれだ。
 そして………一瞬一秒が生死を分ける状況で、暢気に可能性を一つ一つ腑分けするなど贅沢が過ぎる。これを本線とするべきだろう。

ダン・レイリー :
「───そこの二人は保護対象、ないし共闘可能、最悪でも非敵対分子として見る。

 優先順位は間違えるな!」

ダン・レイリー :
 此処であわよくば頭を潰す、など虫の良い話は考えない。
 ア ク シ デ ン ト
 偶発的な遭遇で仕掛けることが効果的な相手とそうでない相手がいるとして、こいつらは恐らく後者だ。

 自分が優先して行うべきは…。

ダン・レイリー :
 予定通り七色の直感を使用する。
 対象は“アレ”と指差された標的のうちラクシャーサでない方。
 確認内容は「現在意識の向いているもの」。

ダン・レイリー :
 それから、必要ならば赤方偏移世界を使用し、恐らく最も近い位置にいる、先程返答しなかった方…「アトラ」と呼ばれていなかった方の元に移動する。
 無論、コストが必要なのかどうかも判断したい。ないなら言葉に甘えよう。此処まで問題ないか?

GM :
一連の処理に問題ありません。
赤方偏移世界の使用の際のコストについては、此処では不要としましょう。

ダン・レイリー :助かる。景気よく行くと言った手前だが、命綱まで若気の至りで景気よく使う気にはなれなくてな。

ダン・レイリー :
 最も重要な敵対存在にとって、
 何に一番意識が行くか/何を抑え、何を避けるべきか判断するのと同時に───。

ダン・レイリー :
 この場で、最も被害者/本命の可能性が高く、同時に危険性の高い彼女の守りにつくことだ。
 それも、1名でも早く、可能な限り。

ダン・レイリー :
 重力制御の応用系たる空間移動。
 数秒後に辿り着く自分を、現在へと歪曲して再配置する。

 射線を塞ぎ、また自らが射線に躍り出られるように配置して、目標と最大の敵性存在の間に割り込む。

ダン・レイリー :
「不躾は後で詫びよう。邪魔をするぞ」

ナタリー・ガルシア :「――いいえ、エスコート助かりますわ!」

ダン・レイリー :「ならば安心して騎兵隊をやらせてもらうよ」 

ブルー・ディキンソン :(ほ〜手際がよろしいですこと!
 大助かりだけどネ)

SYSTEM : 
 ダン・レイリーの持てる能力がこれまで生存を助けてきた最たる要員。
 それは瞬間的な空間把握能力と、その先を詠む直観力というべきものだ。
 だが何より秀でているのは、それだけの収集した情報を即座に切り分ける彼自身の即応力というべきだろう。

SYSTEM :
 正体不明の女……女は、煙を上げる己が掌を見つめていた……に感情の向きを直感する。
 何かを思案している様子であったが、その内容までは伺い知れない。……しかし、その色から分かることもある。
 彼女の意志は、ナタリー・ガルシア……赤毛の娘に向いているものであった。少なくともこの場で他の人物に対し、何らかの指向性がある反応を、この女は示していない。
 

SYSTEM :
 構えを取る敵の布陣を前に大胆に割って入るという行動をとった、その英断に踏み切ったのは、恐らくその情報も加味してのものだったのだろう。
 そして、当然、割って入るならば何らかの追撃を免れ得ない筈だが……

"ラクシャーサ" :
「──一応確認。
               ・・・・・
 そっちが止めないってコトは、用は済んだってコトでいいんだよね」

”預言者”エヴァンジェリン :
「ああ。
 聊か、事情は変わってきたようだが」

”預言者”エヴァンジェリン :
「失敗したようだ。
 しかし分かったこともある」

”預言者”エヴァンジェリン :
「決して無駄足ではない。順番が前後するだけだ。
 運命に導かれ、新約は必ず果たされる。彼女は自らの意志で、約束の地を踏むだろう」

 灼けた手を、握りしめる。それと同時に、オーヴァードが誰しも持ちうる自然治癒によって焼け跡は跡形もなく消え失せた。

ダン・レイリー :
  ・・・
「(やはり狙いは彼女か、だが………)」

ダン・レイリー :………火傷跡だと? 誰の手で?

ブルー・ディキンソン :
(……あの一瞬で"何か"が起きた。
 それで手傷を負ったって事?)

"ラクシャーサ" :
「……………………ふうん。
 じゃ、こっちは後番に回ったってコト?」

ナタリー・ガルシア :「――……」

なにかを、言おうとして口をつぐむ。
どうやら此度はこれで終わりなのだろう。

だが、エヴァンジェリンのその言葉に嘘はないように思えた。

灰院鐘 :「はい」ちいさく挙手。

灰院鐘 :「よく分からないけど、お互い状況は変わったと見ていいのかな」

”預言者”エヴァンジェリン :
「そうなる。
 まずはおまえたちの望みを叶えるがいい。
 その間、契られた新約は全うすると誓おう」

アトラ :
「…… ……」

 ……不味い。か?これは。状況的にも。

ナタリー・ガルシア :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

ナタリー・ガルシア :「あっ、私からも!」

ダン・レイリー :「………」

ブルー・ディキンソン :「(……質問コーナーかぁ?
  律儀に答えんのかな、アレ。
  お嬢様と鬼っ子以外見えてね〜って感じだぜ?)」

ナタリー・ガルシア :「そこのラクシャーサ、どうやらそこの私を助けてくれた人のなんというか――こう、駄目なお姉さんのような気配がしますわ!」

だから、と息をつなぐ。

「出来ればお説教の機会を与えて上げて欲しいですわ!」

ダン・レイリー :…念のため聞くが これは誰に向けて言った?

ナタリー・ガルシア :全員に向けてですわ!

ダン・レイリー :そうか。

ブルー・ディキンソン :デジマ〜?

ダン・レイリー :
 ・・・・・・・
「約束は出来ない」

ナタリー・ガルシア :努力はしてくださる、と……誠実な方ですわね

ダン・レイリー :それでいい。思うことも、望むことも自由だ。責任を伴えば。

アトラ :
(…… ……いや、そうだよねえ。
 あの人、やることはやってるわけだし……でもなあ でも……)

ブルー・ディキンソン :「難しそうですねえ……やらないよりは、まあ?」

"ラクシャーサ" :
「ま、確かにお互い状況は変わったみたいだけど……参ったなあコリャ」

 やれやれ、とかぶりを振って

"ラクシャーサ" :
       ・・・・・・・・・・・・
「もしかして、もう命握った気になってる?」

ダン・レイリー :

灰院鐘 :
「うんうん。保証はしてあげられないけど、僕としても願いには応えたい。そこの彼女も、"ラクシャーサ"に用があるみたいだし」

 ……と。

灰院鐘 :
「さあ、どうかな」

「できないつもりで立つことはないし、できないから諦めるということも、別にないからね」

ダン・レイリー :
「それこそまさかだ。獲物を前に舌なめずりをして死にましたと報告されたのでは、墓石に何を書かれるか分かったものじゃない」

ダン・レイリー :
「古くの縁も含めて一度や二度では利かぬほど、これだけ“やんちゃ”をした人間の集まりには痛い目を見せられた時分だ。
 ただのテロ屋と、有象無象と、嘗めてかかると思われたなら、それこそ心外だぞ」

ダン・レイリー :
 ………尤も、だからこそいま交戦を急ぎたくはないところだが。

 逆上して最大出力を振り回すほど短絡的にも見えない。考えるのは進むか退くかではなく、奴がどう出てくるか。

ブルー・ディキンソン :
(……鋭いな、どっちも。
 さっき追いついた時に起こった"干渉"、あれが二度起きるとも考えづらい。
 ましてや今はカバーできる位置に、軍人さん(推定)が立っていらっしゃる。
 ……杞憂になるか? なってくれるといいネ)

("ラクシャーサ"は『後番に回った』と言った。
 少なからず、こちらに状況が好転したのも事実……)

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……期待に沿えるかは相手の出方次第か」

 勇魚は地を蹴り、すかさず攻撃を加えられるよう警戒した体制でダンの傍らに立つ。
 彼女もダン同様の対応なのだろう。そして、それは一つの事実を示していた。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
               ・・・・・・・・・
 それはUGNで掴んだ情報の中に彼女の姿はなかったことを意味している。
 エヴァンジェリン
 "預 言 者"などという人間がいること自体、認識していなかったということだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 集中状態に入った勇魚は、滾る右手に反して極めて怜悧な目で敵対する双方を観て、口にする。

「それに交戦した場合、加減が出来る相手でもない。
 『右手』が共鳴している……
 ・・・・・・・・・・・
 あちらは双方遺産継承者と見て間違いありません。
          キューブ
 それもあの紛い物の 匣 とは異なる、本物の」

灰院鐘 :
「それはまた、気合が要りそうだ」

 右肩をかるく回す。先日の傷は大方癒えている。自身のコンディションを検めて、無造作に腕を下ろす。

 構えのひとつもないのは、不戦に期待してのことではない。彼には元々ないものだ。
 ふと、アラスカで意識した切り替えスイッチを思い出す。オンオフの手間が省けるのは、まあ利点だろう。

灰院鐘 :
「……さて。もしものときは、彼女たちは逃がしてあげたいけど」

 ちらりと視線を後方へ流す。

ブルー・ディキンソン :
「い───遺産っ? ヤバくね?」

ダン・レイリー :
 レガシー
「遺産………。
 縁のない言葉だと思いたかったが」

 昨日の今日で此処までとは。

灰院鐘 :「うん、ヤバいです」

ブルー・ディキンソン :
「うおォい笑顔で言うことか〜っ!」

ナタリー・ガルシア :「足を引っ張りそうなときは、教えていただければありがたいですわ――なにぶん、見習いの身の上ですので」

少し悔しさを滲ませて、けれど、それが今の己の立ち位置だと正しく理解している。

アトラ :
「…… ……」

 どうも思い通りには事が進まない。当然だ。
 UGNとしては此処を逃す手はないだろうし、彼女の方だってこの数差を引っ繰り返すことも考えられる。おまけに、良く知らないと宣った褐色の女もいるのだ。
 不味いな、困ったな、と双方を交互に見て。それでも抱えた得物入りの荷物は手放さず引き寄せておく。

ダン・レイリー :
「その気ならばそうさせてもらうが、
 ステイツ
 本国の人間なのを差し置いても、エスコートの二言を翻すほどじゃない」

アトラ :
「……やっぱ穏便に~っての、ダメ?
 “楽園”のお二人も色々説明してくれたりは……なし?」

 ……遺産。遺産の共鳴とか、聞こえた。
 ってことは、緑の少女の方も抱えてるんだ、そんなもの。

灰院鐘 :「そうしてくれたら嬉しいけどなあ」

灰院鐘 :だめ? と便乗しておこう

ダン・レイリー :
「出方は不明だが。やつの狙いはきみだ。

 ───“いざという時”はそれでいいが、個人の判断でそれを取るなよ。
 あれが最後の挨拶だと考えては、後ろ髪を引かれてしまうかもしれん」

ダン・レイリー :………そしてそこで頷き矛を収める無欲さがあれば、彼女らはFHなどやっていないぞ。その発言は敢えてしない。

ブルー・ディキンソン :
「いやぁ、やりあっちゃったからなあ、
 あたしとそこのお姉さん(ラクシャーサ)は」

ブルー・ディキンソン :「必要もないのに自分から剣を納めるの、嫌なタイプじゃないの?」
 ……適当こいている自信はあるけど、一応スタンスの確認。

「さっき横槍入った時、悔しそうにしてたもんネ」
 
、  、   あたし
 とりあえず"こっちに目が向いてくれるのなら"いいんだけど……。
 ふふっやばいカモ。

"ラクシャーサ" :
「………………………」

"ラクシャーサ" :
「で……作戦に失敗したエージェント"エヴァンジェリン"。
 この状況は半ばキミの失態みたいなもんだけど」

"ラクシャーサ" :
「どのようにして汚名を返上するのかな」

ブルー・ディキンソン :「(……意外に冷静! 評価更新しとこ)」

”預言者”エヴァンジェリン :
 ・・・・・
「こうしよう」

 言いつつ、女は手を前にかざし、それを握り潰す。
 瞬間──

”預言者”エヴァンジェリン :
【Information】
エネミーエフェクト《ワーディングキャンセラー》が発動しました。
使用者:"エヴァンジェリン"
対象者:シーン
効果:楽園に迫る罪人、炎の剣にて砕け散るべし
   シーン内のワーディングが無効化される。

”預言者”エヴァンジェリン :
 握り潰したと同時に、空間が軋みを上げて。
 そして、砕け散るような音が響き渡る。

SYSTEM :
 それと同時……周囲の喧騒が一気に舞い戻る。
 それが何を顕すのか……

灰院鐘 :「──!」

ダン・レイリー :「(“ワーディング”エフェクトの強制解除!)」 

SYSTEM :
 それはワーディングエフェクトの解除に他ならない。
 ……本来、そのような能力はどのようなシンドロームでも確認されていない。アンチワーディングエフェクトであるならばいざ知らず、これは更なるワーディングの上書きすらも無効化する神の毒。

 そして何より不都合なのが、ここは深夜帯ではあるが、つい先ほどまでは一定の数の民間人が行きかっていたことだ

ブルー・ディキンソン :「(っつ、イカれてんのコイツ───!?)」

SYSTEM :
 そして何より決定的なのが……


 それが解除されると同時。
 鴉の鳴き声と共に。

 非常に分かりやすい暴力のカタチが、この場に顕現していたことだった。

アトラ :
「…… ……な、なに!?」

武装した男たち :
 冷たい撃鉄の音が響く。
 それは、異能の力や摩訶不思議な超能力などより余程明快な死のカタチ。
 それが……
           ・・・・・・・
 あなたたちではなく、民間人に向けて複数銃口を向けている

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

「ッ、こいつら……
 飽く迄民間人を盾にする気か!」

 再度ワーディングの展開を試みる勇魚であったが、それも空しく無効となる。
 例え、どれだけ一撃で吹き飛ばせる相手であったとしても……こうなれば対処をそちらに回さざるを得ない。

”預言者”エヴァンジェリン :
「潮時だ。用も済んだ。
 ……"ブラックモア"も用入りと見る」

”預言者”エヴァンジェリン :
「何より活動限界も近い。
 ……此処は退く。おまえも、好きにすればいい」

"ラクシャーサ" :
「おお、了解~。
 じゃーあたしもやりづらいし。この辺で撤退ってコトで」

 背中を向けて歩き出すエヴァンジェリンと、それに便乗するようにラクシャーサも戦意を失った様子だった。

灰院鐘 :
 ワーディングが解除されると同時、凶兆のように鴉の鳴き声が降ってきた。……同時に。獣の直感が、冷たい鉄の気配を感じとる。

 それは質量を持たない光子の剣でもなければ、捉えた相手に呪いを残す魔眼でもない。
 見てくれ一つで死を連想させる、現実的な暴力の具現。

灰院鐘 :
 握れば折れそうに細い筒の向く先は、ここにいる6人ではない。不可視のバリケードテープを解かれて、無自覚に危険域を歩く民間人だ。

 武装した男たちが指先に力をこめる僅か一瞬で、誰もが思い描く地獄が現実となる。

灰院鐘 :
 いま大事なのは間に合うとか助けられるとか、そういう結果の話じゃない。

「──よし」

 根が単純な人間の面目躍如、とにかく難しいコトは終わってから考える──だ!

灰院鐘 :
 闊達な一声、その直後。
 およそ日常的ではない音を立てて、彼の背後でコンクリートが捲れ上がった。
 引きずりだされたパイプに、看板、マンホール、空き缶だろうとお構いなし。無造作に磁力で捉えられるものは片端から引き寄せて、壁を急造する。 

灰院鐘 :と──いうわけで、ちょっと目立つが人命第一! 銃口と民間人の間に割って入ることはできるかな。必要ならカバーリングを使おう

ダン・レイリー :…“ラフメタル”の行動、そしてこれから行動するエージェントのエフェクトを、映像だけでもEE『天使の絵の具』で民間人から隠蔽する! 出来るか!?

GM :双方問題ありません!ナイス判断!

灰院鐘 :お世話になります!

ダン・レイリー :フォワードを任せるんだ、バックアップはな!

ダン・レイリー :
 ワーディングエフェクトの強制排除───。
 この状況での伏兵───。

 連鎖的なアクシデントの発生。
 ただでさえ荒れた海に訪れた嵐は、嵐を制し突き進むテンペストの経験と照らし合わせても、眩暈さえ感じるほどだ。

ダン・レイリー :
「(敵! 何処から現れた! 
  ………いや、今意識すべきは其方ではないぞ………!)」

ダン・レイリー :
「───そのままだ!
 眼は俺が塞ぐ!」

ダン・レイリー :
 指揮下にある“ラフメタル”の判断はベストでないがベターだろう。
 ベストが択べない中ならば、尚のことだ。

 あの状況で、見逃したから連中が引金を引かない理由はない───。
 嵐の余波を適切に防ぐ分、先に動き出した盾と、後から動き出すだろう矛の活動余地を作らねばならない。

ダン・レイリー :
 エンジェルハイロゥ・シンドロームの特性は感覚強化が主だが、使える手札を増やすべく、その余技の研究を行ったこともある。

 直接戦闘中、オーヴァードの五感さえ晦ますほどに役立つわけでないが………。
 今しがた、非日常を垣間見ることになりかねない本国の人間に、起こり得る光景から目を“逸らさせる”だけならば、片手間でさえ可能だった。

ダン・レイリー :
 半径は噴水広場、今まさに“ラフメタル”が行動を起こした周辺区域。
  カモフラージュ
 人通りの少ない広場のテクスチャを上から被せる。ワーディングで事足りるものに過ぎないそれは、ワーディングが機能しない今だからこその即応だ。

 ………遺憾なのは、これでシャンバラの首級と、あの兵士の手掛かりを逃がすことだが………。

ダン・レイリー :
 そもそも指揮下ではない者らのうち、何名かは撤退するアレらに縁ないし警戒があると見える。

 ………阿漕な話だが、何も指示しなければ何らかのリアクションは起こそうとするはずだ。

灰院鐘 :「──! ありがとう!」

ダン・レイリー :「礼は後で聞こう! やれるな!?」

灰院鐘 :「もちろん!」

ナタリー・ガルシア :「(流石ですわ!これがUGNエージェント……!)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 コピー
「了解!」

 応答するが早いか、勇魚は初撃に使う脚力を以て一団に肉薄し、炎陣を敷いて敵方からの射撃から民間人を護っていた

アトラ :
 砕け散る《ワーディング》と現れる黒い使徒。
 構えた得物は間違いなくヒトに向けられている。実質的に行動を封じられた。少なくとも、UGNの者らは。
 ……、と思っていたが。そこは手慣れているのか、彼らの性分か。守りの手が早い。思わず驚く。

ブルー・ディキンソン :  ・・・・
「(活動限界?
  また妙なことを口走ってら……いや、むしろ好都合)」

「(連中……"遺産持ち"2名は仕掛けてこない。
  イニシアチブを取った上で、そういう選択をしたワケだ)」

ブルー・ディキンソン :
 双方の戦意が消えた。
 僅かな”衝動”がそれらを感じ取り、次に自分がするべき行動を考え出す。
 ──あのハイ・テック衣装の子の感じからするに……、

 エヴァンジェリン
 偉そうな面をした方は、情報が少ないとみた。

ブルー・ディキンソン :
「(出来てるな……思考から行動へのタイムラグの少なさは見事なもんネ。

  アレなら任せても大丈夫かな。)」

ブルー・ディキンソン :
「(……後ろ姿でもいっカ。だって今年はパパラッチ!)」

 私は私のお仕事をしよう。
 あちらが、あちらのお仕事をするようにだ。

ブルー・ディキンソン :
 ドサクサ紛れてあたしは<タッピング&オンエア>を使いたいな。
 これでエヴァンジェリンの姿を画像として一枚撮っておきたい。

GM :了解! 勿論可能です

ブルー・ディキンソン :よーっしゃ♪

system :[ "雷霆精"ブルー ] 侵蝕率 : 57 → 58

ブルー・ディキンソン :
 一瞬、ほんの一瞬だ。
 私が今の一年間で使っているカヴァーを、この場にいる誰にも明かしていないからこそ。
 その一瞬を捉えることができる。

、   、   、   、     撮る
 たった一回の瞬きで”預言者”の後ろを視る。

 ……一枚の写真から国そのものがひっくり返ることだってあり得る時代だ。
 姿形を何らかの形で保存されると、何かしらの埃が出てくる。
 今年の私は、こういう仕事ばっかりしてたワケだ、安金で!

 カメラは持たない、なぜなら自分がそうだから。

SYSTEM :
 ワーディングの解除、再展開を封じられはしたが、固有能力まで封じられたわけではない。
 鐘、勇魚、ダンの三名の素早い連携によって敵の射線から民間人を護りつつ、同時に能力使用痕の足跡対応を試みる。
 視覚情報による露見はこれでなくなるだろう。加えて音や触感に関しては、打ち放たれる銃声とそれに伴うパニックが些細な異常をかき消してくれた。

SYSTEM :
 人間というものはその筋の人間でなければ、視覚情報に多くは重きを置くものである。
 後々に映像資料を検めれば、或いは違和感に気付きその正体に近付く者もいるかもしれないが……映像や音声などは本部の膝元メリーランドでは直ちに改竄処理が行える。
 彼らの対応は急場の緊急事態でありながら非常に鮮やかなものであった。

SYSTEM :
 そして同時期。既に用を済ませたとしてその場から退こうとした二人の影に、すかさずブルーの仕込んだ義眼が光を放つ。

SYSTEM :
 義眼に内蔵した最新型ナイトビジョンに対応した小型カメラが視線の先の敵影を写し出す。
 
 エヴァンジェリン……そう呼ばれた女の後姿を確かに捉え、メモリーに記録されたことの確認が取れるだろう。

”預言者”エヴァンジェリン :
 間際……女は僅かに振り向いて、視線のみをナタリーに向ける。

「そう遠くない先、また相見えよう。
 約束の地で、君を待つ」

"ラクシャーサ" :
 それと別に"ラクシャーサ"も、また振り返りながらアトラに告げる。

「最後にこれだけは言っとくね……『帰れ』。
 ……ああ、まあ、多分この先エラい時代が来ることになるのは変わんないけどね、踏み込まない方がマシなことだってある」

"ラクシャーサ" :
「それにまあ……
            ・・・・・・・
 思った通り、事が進めば何とかなりそうなのは分かって来たし。今いいとこだからさ」

"ラクシャーサ" :
「……確かに言ったからね!
 ホントについてくんなよ!」

ナタリー・ガルシア :
「――はい、また会いましょう!」

確信めいた言葉に、同じく断定を返す。
不思議と敵とは思えない彼女――何の確証もないが、また近いうちに出会うような気がした。

アトラ :
「んなっ……」

アトラ :
「……ってぜんぜん説明になってないんだけど!
 そもそも訊き足りない!ウチの用だって言い切ってないのに……!」

 去る姿を指差しながら怒声をあげる。けど、子どもみたいにむくれたって何も変わらないだろうとも思う。
 ……気になることも、言ってるし。ホントはそこも問い詰めたいけど、足を止めるに足る言葉はない。

アトラ :
「……そんなん聞いたって、此処でふつー帰るわけないじゃん……!ばーか!」

灰院鐘 :
 対敵は去った。死傷者もない。

 安堵に胸を撫でおろしたあと、同じく人命保護に向かった勇魚へ向けて、怪我人の不在を示すためにぶんぶんと手を振る。

 そして。

灰院鐘 :
「──ダンさん!」
 表情いっぱいに喜色を溢れさせ、両腕をかるく広げてずんずん直進してくる巨体。意図と意思はこの上なく明白だ。
 が、両者の距離が空いていたのが幸いして、止めるだけの猶予はじゅうぶんにあった。

ダン・レイリー :
 …これでいい。
 対処療法に過ぎないが、煙に巻かれた上、みすみす行きがけの駄賃を赦す最悪は避けられた。

 そもそも、これは嵐が去る間際に気紛れで巻き上げた余波だ。
 これすらも凌げないほど、無為に年月を重ねたつもりはない。

ダン・レイリー :「(とはいえ………)」 

ダン・レイリー :
 この状況を指して、ベストと呼ぶのは憚られる。
 無論ベターではあるし、此処で得られるベストとは机上の空論に過ぎないことも、また間違いではないが。 

ダン・レイリー :
 状況の前後関係から、間違いなく“本命”に該当する筈の娘に対し、
 少なくとも連中は要件を済ませた旨を残している。

 試合開始前、ルール破り/フライングの一つはするだろうと思っていた前評判で素行の悪い相手チームが、フライングどころではない真似を仕掛けたような奇襲で先手を打たれ、此方は踏み込む第一歩を挫かれた事実は変わらない。 

 それにあの突然現れた敵兵についても。
 懸念事項、不足は山積みである。

ダン・レイリー :………しかしだ。

ダン・レイリー :「───“ラフメタル”」

ダン・レイリー :
「労いと叱責を同時にさせるな、僕にもキャパシティというものがある。
 半分は杞憂だろうが、第二波はそういう緩みを狙うぞ」

ダン・レイリー :     
     ・・
 しかし、詰みは防いだ。
 問題ない。

 ………それのため尽くした彼の行動に、労いの一つでも先にかけてやりたいところではあるが。
 あの本部室内と、状況が継続する此処は流石に認識が違う。

「状況終了を確認次第、次に備えよう。
 そちらの二人のこともある。“雷霆精”といったか、其方に異存は?」

ブルー・ディキンソン :

灰院鐘 :
「おっと」

 進撃、急停止。
 浮足立った雰囲気を消沈させて、しおしおと頷く。

「……それもそうだ。うん、反省します」

灰院鐘 :
「でも、ありがとう。これだけは、もう一度すぐに伝えておきたくて」

 初めての共闘、一度目の協力。後先を度外視した行いの、後と先を援けてくれたくれたことが嬉しいと微笑む。

灰院鐘 :よし、それじゃあ鋭敏感覚で周囲の様子を伺っておこう。いったん集まって話し合えるだけの猶予はありそうかな

SYSTEM :
 敵対者は去った。
 ワーディングエフェクトが効果を取り戻すのも、そう時間はかかるまい。彼らの目的は幹部の撤退である。この場での戦術的勝利など意味はない。

武装した男たち :
 故に足止めに参じた兵士たちは、ただその命を果たすため動くのみ。
 小銃の第一波を防がれた時点で彼らの最低限の役目は終わっていた。注意を引くことが出来ればそれで上等。
 だが、そこで彼らは撤退することはなかった。

武装した男たち :
 飽く迄足止めに徹するつもりだろう。ここで退けば部隊を温存できもしようが、その選択肢を蹴って迄作戦の為に攻撃を続行した。
 第二波が来る。当然狙うは彼らに非ず民間人だ。人質を狙い続けることで撤退を確実なものとするのが彼らの役割。
 それを……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──二度目があると、思うな……!」

 勇魚の炎神の右手が息吹を上げる。
 熱エネルギー。分子震動。それらは分子結合により成るあらゆる物質を伝播する。

 地面を伝い、公園の地表を伝導したエネルギーは、あらゆる物質の結合を破壊する破壊神の炎と成る……!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
【Information】
エネミーエフェクト《フレイムディザスター》が発動しました。
使用者:勇魚=アルカンシエル
対象者:武装した敵部隊
効果:
   公園一帯に密集した敵部隊の足元を爆撃する

SYSTEM :
 ────瞬間、爆轟。

SYSTEM :
 大地を疾走する熱の伝播が、宛らひび割れ砕ける大地の如く白熱した紋様を描き出し……
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 この噴水公園全域に展開された部隊のみを狙い、公園全体に放たれた。

SYSTEM :
 火山の噴火を思わせる火柱が、瞬きの内に幾つも放たれる。
 ワーディングは程なくして効力を復活させると見ての大胆な一撃でありながら、ひび割れ陥没する地形も、伝播した高熱が民間人を呑み込むこともない。

SYSTEM :
 ワーディングの展開に成功したのは、それと同時だった。
 余熱に焼かれないため強度のワーディングを張り、レネゲイド罹患者以外を再度隔離する。

 一撃の下で、決着はついた。抗う余地もないままに、兵たちは炎の息吹に焼かれるのみ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……敵性存在の沈黙を確認。
 尋問のため、非殺用の火力で応戦しました」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ワーディングも再展開を確認。
 ……敵に逃げられたことの証左でもありますので、手放しでは喜べませんが。今度こそ完全に敵方の干渉はなくなったようです」

ダン・レイリー :
「(───少尉らと話していた内容、杞憂では“ない”な)」

ダン・レイリー :
 状況終了の確定を見届け、炎風にあおられる中一人呟く。
 広範囲に影響を及ぼすエフェクトの出力を制御し、最適な敵性存在だけを狙うことは、実を言うと不可能ではない。出来ないことではないのだ。

 つまり、驚くのはそこじゃない。
 
 あれが非殺傷用で、
 それを涼しい顔で制御するという部分の方だ。

ナタリー・ガルシア :「…………す」

ナタリー・ガルシア :「凄いですわね……!完璧な焼き加減ですわ!」

ダン・レイリー :
   レガシー
 ………遺産の賜物は出力。
 ………ならばその生業と向き合った修練こそが、制御の部分とみるべきか。

 その様子ならば暴走のリスクは限りなく低いだろうが、仮に“それ”が起きたことは頭の片隅に入れておく。

ナタリー・ガルシア :「それに、このバリケードとブラインドのコンビネーション!これがエージェントの実力というわけですわね!!」

ナタリー・ガルシア :パチパチと、拍手すら贈りそうな勢いと声音。
瞳を輝かせながら、多くの人々を人質に取られた絶体絶命を切り抜けた三人を順繰りに見つめる。

アトラ :
(アレの直後にその元気さ、マジぃ?
 めちゃ素直なのかな……お嬢様とか言われてたし……)

ダン・レイリー :
「ワーディングの再展開確認。
 状況終了だ。警戒は僕がやる、構成員の確保に掛かろう」
 
「末端だろうが、意味はある」

ダン・レイリー :
「それから、褒め言葉をどうも。
 僕が二人に言いそびれた。どうやら今日は機先を制される日だな」 

ダン・レイリー :…そうだ。ないとは思うが、以後は撤退まで偏差把握を使用したい。別のアクシデントを警戒する。

ナタリー・ガルシア :「とりあえずは、乗り切った……ということでよろしいんですの?」

ブルー・ディキンソン :「みたいネ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「………………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「賛辞は受け取ります。
 ただ世界の盾たろうとするならば、出来て当然のことをしたまでです」

灰院鐘 :
 一方、凛とした立ち振る舞いで賛辞を受ける姿をにこにこと見守っている。こっちもこっちで拍手しそうな雰囲気。

ナタリー・ガルシア :そうですか、と、小さく呟いて、ここまで張り詰めていた緊張の糸がようやく途切れる。

というよりも、己の命を瞬き一つで奪える相手に、体の自由を奪われたまま拉致される恐怖とストレス――それを抑えつけて、ここまで気を張り続けたことを考えれば当然だった。

ナタリー・ガルシア :
ぽすん、と力が抜けてその場に座り込む。
極限状態の中で集中力と意志をこれまで保ち続けた故の疲労は、心身を確実に削っていた。

ハイスクールに上がったばかりの少女が、一夜で経験するにはあまりにも過酷な経験――ナタリー自身も気づかぬ内に、とっくに体力は限界を超えていた。

「あら……ん、ぅ」

立ち上がろうとするナタリーの意志を、震える両足は汲んではくれない。
誤魔化すように、少しぎこちない笑みを浮かべて、続ける。

「――申し訳ございません、誰か運んでいただけるとありがたいですわ」

ダン・レイリー :
「そう見ていい。
 シャンバラは上級エージェントの存在で連帯が成り立つセルだ。
 その中核が意味なしと退いた今、組織的な襲撃はないだろう」

ダン・レイリー :

 ただ、それは組織的な追撃の話だ。
 顔を出していない上級エージェント、ないし弁えなかった者。
 自分は、そうした散発的な襲撃のリスクを頭に入れておく必要がある。 
 
 自分は、だ。
 その警戒意識を、少なくとも戦いの場で“見習い”を自称したものに、敢えて告げて懸念させる意味はないだろう。

ダン・レイリー :
「───お疲れ様。
 中々の胆力だった。立ち続けられたら、“それ”は卒業して入口だ」 

ダン・レイリー :
 彼女が目を輝かせたUGNでなくてすまないが、その手を取り支えになる程度はやっておこう。

 この位置ならば、本部の二人も、此処で居合わせた二人にも、意識は向けられるはずだ。 

ナタリー・ガルシア :「まだまだ未熟で恥ずかしい限りですわ……」

差し出された手を取って――震えていることには、気づかれてしまっただろうが――気丈に微笑む。

そのまま、縋り付くようにしてようやく身を起こして、もたれ掛かるようにして立ち上がる。

ブルー・ディキンソン :
「胸張りなさいな。
 あなたの度胸と"眼"の良さがなかったら、あたしは追跡出来てなかったんですからネー」

ナタリー・ガルシア :「これでも、内心はずっと怖がっていましたのよ?貴女が助けに来てくれて、どれだけホッとしたか――私が頑張れたのは貴女のおかげでもありますわ」

アトラ :
「うへー、じゃあUGNです!って名乗りもちゃんと本当だったんだ。いや疑っても無かったけど。
 そこの人質さんがお嬢さまっていうのもマジな感じ?」

 ……言ってから、あんまり知ってる風を出すのも悪手じゃないか、と思ったが。
 今更だ。彼らにとっての敵、その一幹部である“ラクシャーサ”を名乗る彼女と何かしら接点があることは見られてるのだし。

灰院鐘 :「あ」

ダン・レイリー :「厳密には2/3がそうだが…」

ブルー・ディキンソン :「あは!
 ま、この超人世界で"運の強さ"は大事だからね。
 お嬢様は、そういう意味ではとても運が良かった。
 見るからに怪しい車に、見るからに手配犯の顔だったからネ」

 グーゼンですよ。ということ。
 実際、あたしが通ってなかったらかなりヤバかった。
 ここにUGNが居ることもなかっただろう。危なかった。

ダン・レイリー :「どうした、“ラフメタル”?」

灰院鐘 :「うん、それなんだけどね」

灰院鐘 :
 たいへん神妙な顔で頷いて、同行者──ダン・レイリーを手で差し示す。

「彼はテンペストだ」

 空いた手でもう一人の同行者──勇魚と自分を順番に指差す。

「で、僕たちがUGN」

灰院鐘 :「よろしくね」

ダン・レイリー :
「その通り。この場ならば僕がマイノリティになる。
                 イリーガル
 広義、同じ目標のために肩を並べた外部協力者だ」

アトラ :
「おっ……おお。丁寧にどもっす」

 そんな懇切丁寧に説明をせんでも、と思うが。
 別に疑うこともないだろう。今詮索をするのは藪をつついてなんたらかんたらな気がする。

ブルー・ディキンソン :「(……ほー。
  ってことは、この手の事件にしては"まばら"な構成なんだナ)」

 ……タバコを取り出しかけて、「ヤベ」としまう。
 世間的に喫煙への忌避感が増えてきているしナー。やめとこやめとこ。
 未成年もいるしね。あたしは除外で。

SYSTEM :
 ナタリーの小さな体を抱えながら、ダンは油断なく偏差把握によって周囲の状況を確認する。
 空間を把握したところ、これ以上の伏兵は見られない。
 
 ……ワーディング展開前であったならば、万が一程度には隠れ潜む隙もあったやもしれないが、非レネゲイドの物質を相転移するこのワーディング下ならば見逃す心配もない。

ダン・レイリー :
「(………とはいえ、その心配もないのは幸いしたか)」

ダン・レイリー :「詳しい話は後でしよう。先ず───」

SYSTEM :
 しかし……獣がそうするように、鋭敏に研ぎ澄ませた感覚が周囲を観察して、灰院鐘はそれを察知した。
 尋問用に取り押さえた兵士の一人に、異様な雰囲気が伴うことを。

灰院鐘 :「……おや?」

SYSTEM :
 炎に焼かれて倒れ伏した兵士たちは、最早戦線に復帰できるような手傷ではない。無論立ち上がる様子もないのだが……
          ・・・・・・・・・・・・・
 その中で、一人……首が異様な位置に振り向いた。

SYSTEM :
 振り向いたペストマスクの暗視ゴーグルが貫く視線の先にあったのは。
 話を切り出そうとした、ダン・レイリーに向けられたものだった。

武装した男たち :

「………………だン、」

武装した男たち :

「……レイリー……」

SYSTEM :
 譫言のように、ペストマスクの奥から声がする。
 それは、死に体の兵士に相応しい、今にも途切れそうなか細い音だった。

SYSTEM :
 その筈だったが。
            ・・・・・・・・・・・
 一言、口にするたびに、その声質が変わっていく。

灰院鐘 :「──君、」

????? :
「──"ホワイト、スカイ"……テンペストの。

 ああ、そうか、おまえか」

"ブラックモア" :
「ハ、ハ、ハ、ハ!
 ・・・・・・・・・・
 あの時の新兵の餓鬼か! ハ、ハ、ハハハハハ! こいつはいい!」

ダン・レイリー :「………………」

"ブラックモア" :
「天命というヤツを俺も信じたくなってくるぜ!
 そいつが今、俺たちの戦争の相手になるわけだ!」

 嗤う。嗤う。嗤う。
 嗤う男の声は、既に全く別の者に変じていた。

"ブラックモア" :
「ハ、ハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

SYSTEM :
 それは、ブルーであったならすかさず判別しただろう。
 あの時聞こえた「ブラックモア」と呼ばれた男の声に相違ない。
 それがこの、名も知れぬ兵隊の中から声が響いている。

ダン・レイリー :
 あれはいつのことだったか。
  /自問する。

 まだテンペストという部隊が成立して間もない頃のことだ。
  /自答した。

ダン・レイリー :
 僕には確かに、その記憶がある。
 失敗と敗北から学ぶ米軍の生んだテンペストの一員として、確かに“それ”を学んだ。

ダン・レイリー :であれば。

ダン・レイリー :
「理解した。
 だが、僕は口の上手い方ではないんだ」 

ダン・レイリー :
「………借りは返す。
 名も顔も知らなかった貴様たちとは、ああ、それだけだ」

ダン・レイリー :
 どうせ冗句の類が欲しいわけでも、
 対話に興じたいわけでもあるまい。
 ・・
 それを持ち出した何某に言いたいことはなくはないが、
 此処にいる俺はテンペストの“ホワイト・スカイ”だ。
 
 これ以上に、言うことはない。

"ブラックモア" :
「ハッ! ツレねェな小僧!
 見知った相手とまた殺し合えるなんて、最高の贅沢をしてるんだぜ手前は!
 アソコ
 戦場じゃあ俺達はドッグタグに掛かれた単なる記号、相手の名前も顔も一々見やしねえのになぁ!」
 

ダン・レイリー :
「テロリストと興じる趣味を持ったことはない。その贅沢で、死人に引っ張られるのもな」

ダン・レイリー :
「そうだ。そして、見解の一致を得るのはそれが最初で最後だ。
 貴様たちの口からソレを騙られるほど、ズレたものを覚える瞬間もない」

ダン・レイリー :
「そのつれない小僧も、今日まで死神が来ることのないまま生き延びた身だ。
 戦争を教えられる覚えはないし、貴様たちのホワイダニットを聞いて覚える義理もない」

ダン・レイリー :
   ・・
 ………ヤツにもだが。
 伝えておいてもらう必要はない。

"ブラックモア" :
   ・・・・・
「その手前の戦争も、まだ終わってないんだろうが! よく言うぜ」

"ブラックモア" :
「だが、なら丁度いい。望外に面白いことになってきやがった。
 俺が一方的に語って気持ちよくなっから手前は黙って耳かっぽじって聞いておけよ」
 

"ブラックモア" :
 他人? 知らんよどうでもいい。
 日常? よせよせ興が削げる。
 道理? 関係ないだろうそんなもの。
 善悪? それを決めるのは己だけだ。

"ブラックモア" :
 是なるはソドムの末裔。
 我欲のすべては、ただ力を以てこそ叶えられる。
                 ・・・・・・・・・・・・
 その果てに何も残らず続かずとも、己の欲さえ果たせればよい。
 

"ブラックモア" :
「宣戦布告はしねぇ。俺達は国家ではないからだ。
 兵士は敵の名も、素性も知らぬまま、ただ出逢った何者かを殺すもの。
 それで良い。十分だろう? 男がソイツを抜く時は、そのぐらいの理由で良い。
 飢えて渇いて手を伸ばし、ぶつかり合う。
         ・・・・・・・・・
 その束の間だけ、俺達は自由に成れる」

"ブラックモア" :
──自由を。

──自由を。

「自由を」

      シャンバラ
 ──自由の楽 園を。


「築き上げようじゃないか。
   ユ ナ イ テ ッ ドス テ イ ツ
 この仮初の自由の国に」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
          ブレーキ
「そうだ。貴様たちに国際法はない。
 そして…そこまで分かっているなら話は早い」

ダン・レイリー :
 あの時から、何時かはと思っていた。
 こんなに早いものだとは思わなかったが、訪れたのならば話は早い。

「こちらは国家を背負う代理だ。
 その自由に伴う責任を忘れた貴様に免じて、一言付け加えておいておく」

ダン・レイリー :
「───俺はそれにケリをつけに来た」

ダン・レイリー :
 ………俺の戦争は。
 7年前に始まって、今も終わっちゃいない。

 飽く迄戦争の真似事がしたいならば、此方も一方的に宣戦布告を表明しよう。

"ブラックモア" :
「そう来なくっちゃなぁ。
 期待してるぜ。尤も……」

"ブラックモア" :
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
「案外おまえはこっち側かも知れねえが」

"ブラックモア" :
 嗤う。嗤う。嗤い声と共に、鴉たちが哭く。

 それは激戦の後の戦場にて、屍を啄む凶鳥たち。

"ブラックモア" :
 彼らは欣喜雀躍する。
 死を。
 ネ バー モ ア ・ ダイ
 二度とない死を。

 屍を晒す者共に向けて、呪いの嗤い声が響き渡る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 そして、その予兆を感じ取った故に……

「ッ、拙い──!!!」

 考えるより先に勇魚の身体が動いた。

灰院鐘 :「──勇魚くん!?」

"ブラックモア" :
【Information】
Eロイス《アバドンの顎》が発動しました。
使用者:"ブラックモア"
対象者:勇魚=アルカンシエル
効果:死を想えと、凶鳥は鳴く。天より屍を晒す者どもを嗤いながら。
 

SYSTEM :
 それは恐らく、とっさの判断であり、それは紛れもなく功を奏した。

SYSTEM :
 兵隊たちの体の奥から、無数の鴉の嘴が突き出た。
 それはまるで屍を啄むように。貪欲に。
 兵士たちの肉体を跡形もなく食いちぎりながら、無造作に弾け飛ぶ。
 

SYSTEM :
 呪詛はこの場に立つ全員に向けられていたものであったが……その激発の間際、勇魚が先行してその道を遮ることで彼らへ向けられた呪いを防いだのだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ちぃ……!」

 傷を負いながら勇魚は、その能力の性質を理解する。
 ドレイン
「収 奪 ──本体にエネルギーを供給するための、機構、この兵士の本質はそれか…!」

灰院鐘 : 
 咄嗟に駆け寄って、小柄な身を背に庇う。手遅れだという理解は、行動しない理由にはならない。
 そもそもからして、彼は理由に縛られるほど上等な身の上でもなかった。

「……すまない。本来なら、僕がするべきことだった」

 悔いの滲む声色が、重く落とされる。

灰院鐘 :「酷いことをする。宣戦布告にしては趣味が悪いよ、君」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……いえ、私とてUGN。あの人の教導を受けた身です。
 あなたにばかり引き受けさせる訳にもいかない」

"ブラックモア" :
「ちっとばかし狙いは逸れたが。まあいいさ。

 しかし、可愛いこと言ってくれるじゃねえの。この程度で悪趣味?」
 

"ブラックモア" :
「カッハハハ、人の悪意って奴にゃまだまだ慣れねぇか?
 今のうちに楽しめるように、センパイが揉んでやるよ」

"ブラックモア" :
「ツラ見りゃわかる。
       クソヤロウ
 手前は、いい戦奴になれそうだ」

灰院鐘 :
 この場の誰よりも先に彼女を行動させた、強い意志と確かな教導。勇魚が師への信頼を表出するたび綻んでいたはずの顔に、懊悩が浮かぶ。

「……それは違う。僕が望んでやっていることだ」

 項垂れるようにかぶりを振る。彼にしてはめずらしい明確な否定のしぐさは、しかし、言葉を打ち切るための動作として誤魔化された。

 無数の嘴に荒らされた死骸に、人の死に伴うべき尊厳は見られない。傷つき、削がれ、暴かれた肉の塊。それは喪われたものへの悼みよりも、生理的な嫌悪感を喚起させる、酸鼻の情景だった。

 それをまだ序の口だと、屍の口を借りた語り部は嗤う。

灰院鐘 :
「それはどうも。形はどうあれ、教えを施してくれる人は得難いものだ」

「だから……あなたが"先輩"をしてくれるなら、余所見はナシでお願いするよ」

灰院鐘 :
「────」

 僅か、こぼれる吐息。
 彩のない、無色透明の貌。
 くすんだ鏡面じみて鈍い反応。
 
 ……揶揄の言葉は、どうしてか。
 託宣のように重く彼の心に沈みこんだ。

灰院鐘 :
 軋むような静寂のさなか、苦痛に乱れた呼吸を聞く。滞っていた意識を現実に引き戻すには、それは楔として十分すぎた。

「どうだろうね。先のことはあまり考えたことがないから。

 ……でも、そうだな。長く生きていれば、そういうこともあるかもしれない」

"ブラックモア" :
 語るブラックモアの声が少しずつ遠のいていく。狂ったように貪婪に、死した屍を食い散らかし、生者すらも見境なく食い散らかした凶鳥たち。
 彼らが羽搏きと共に去り行くと共に、声は遠のいていく。

 ……恐らく、アレを攻撃しても大した意味はないだろう。本体であると確かめるために潰しておくのも手だが、その行為に然したる意味はないことは確かだ。

"ブラックモア" :
「俺の経験上、手前みてえなタイプは大きく分けて二通り居る……
 ・・・・・・・・  ・・・・・・・・
 最初に死ぬタイプと、最後に死ぬタイプだ……ッカハハ、類は友を呼ぶもんだなァええ?」

"ブラックモア" :
「合衆国解体まで、約一か月……
 それまで精々気張れ、足掻いて見せろや、小僧共ォ!」

"ブラックモア" :
 嗤う。嗤う。嗤う。
 嗤い声と共に、彼方へと鴉たちが彼方へと飛んでいく。
 民は消え、街は砕け。
 残るのは燃え滾る炎と、打ち捨てられた屍のみ。
 それはまるで、シャンバラという災厄が過ぎ去った後に残るであろうものを暗示させた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……対象、ロスト。
 残る敵性体の熱源反応ありません」

 緊張を含んだ声で周囲を確認した勇魚が告げる。今度こそ害ある存在はこの場から消えてなくなった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 あれを追っても益はないとした故だろう。勇魚は飛んでいく鴉を追うことはしなかった。

「……"ラフメタル"」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 珍しく明確な否定の意を示した巨躯の相方に対して、静かに少女は告げる。

「これも私の望んで為したことでもあります。
 私は得た力も鍛えた力にも矜持がある」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「此度は私が動けたが故にそうしたまでです。
 あなたが責を感じることはない」

灰院鐘 :
 後に残ったのは、無数の屍と……焼けつく臭気と、羽搏きの残響。
 いっとき取り戻された静けさは、安息の時間ではない。嵐の訪れを予感させる、不吉な静寂だ。

「うん、そうだったね。君は、君の意思と理由で戦っている」

 それは彼も例外ではない。まだ黎明期にある小さな組織は、そうした意思の灯火が集まって生じた、新たな篝火だ。

灰院鐘 :「でも反省は反省だ。あそこで間に合わなかったら、僕は何のために新しいやり方を憶えたか分からなくなってしまう」

灰院鐘 :
「……いや、すまない。かえって気を遣わせてしまったようだ」

「調子は大丈夫かな。よければおぶっていくけど」

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :その様子を、僕は何も言わず遠くから見ていよう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……不要です。驚きはしましたが、然して大きな傷ではない。それより……」

 後ろを振り返り、此処に集まった一同に向き直る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「今はこの場を収め帰投しましょう。事後処理はこの近辺の職員に任せればいい。
 皆、疲弊しています。肉体的にも……精神的にも」

 毅然とした様子で……或いは、そう見せているだけなのか……勇魚は周囲を観て口にする。
 次から次へと劇的に変わる状況、規格外の連続。そして状況の裏で、複数の人間が複雑に絡み合っている。
 中には職員と異なる人間もいる、その筋の人間ですらないものも含んだ中だ。
 どんな人間だろうと疲弊するのは道理であったろう。

灰院鐘 :「賛成だ。お客さんも多いことだし、戻ったら温かい飲み物でも出そう」

灰院鐘 :
「一緒に来てもらるかな。お互い聞きたいことも、話したいことも多いだろう」

 外部の三人へ、どうかな、と首をかたむける。

ダン・レイリー :
「こちらも異議はない。
 アクシデントはあったが…テンペストの方から迎えを寄越す」

 そう口にしながら、“ラフメタル”…。
 ショウ・カインと同じように、彼らに視線を向ける。ひとりは間近だ。先の“置き土産”の怪我も、お蔭でない。

ダン・レイリー :
   ・・・・・
 ………ああいうのは軍人の理屈だと思っていたが。

ダン・レイリー :
「…敢えてこう言おう。
 ───同行を要求する。赤毛のきみは狙われる危険性から。“雷霆精”は、事態の関係者として情報共有のため」

ブルー・ディキンソン :
「ラージャ。
 状況が目まぐるしく変わってたから、言えなかった事もあるしネー。
 喉も乾いたし! 走って疲れたし!」

ダン・レイリー :
「ん。迅速で助かる」

「そしてラクシャーサの近くにいたきみ。

 ───端的に、僕はきみを事実から疑い、印象から信用する。丁度イーブンだ。
 目当てがUGNなら、外様同士望むこともあるだろう。信用に傾けさせて貰えるか?」

ナタリー・ガルシア :「はい、お父様とお母様にも無事を伝えたいですし……温かい飲み物でしたら、私はコーヒーをお願いしますわ」

ミルクとお砂糖はたっぷりで、と付け加えるのも忘れない。自分のものよりも大きな手に縋り付くように握りしめる力を、少しだけ強くする。

「それに――私がなぜ狙われていたのかも気になります」

ナタリー・ガルシア :「私(わたくし)のお父様を標的にしてのものかと思っていましたが、どうやら私自身が狙われていたようですし……その他にも、いくつか気になることがあります」

それに、朝からの疲労と、ごく短い睡眠時間で起きていたせいでもうくたくただという弱音は胸の内にしまい込む。

思考するのに普段の倍ほども難儀するような睡魔が手をこまねいているが、こんなところで全てを放り出して眠るわけにもいかない。

アトラ : 
「うす」

 目まぐるしく変わる状況と、因縁浅からぬ様子の彼らを順繰りに視線を向けつつ、言いながら自分を指差して応える。
 ……彼らの言葉通りなら、少なくともついていって悪い目には合わないだろう。おもてなしさえ期待できる。
 だろうが、今後の自分の身の振り方もここで決まって来そうで緊張もする。

ブルー・ディキンソン :「(思ったより返事がフランク!)」

アトラ :
 一つ目のプランとして置いてあった「情報通のオーヴァードなので役に立つぞと売り込む作戦」は逸った自分のせいで消失。
 今は今で、状況に乗っかる他ない。此処で「ハイお疲れ様ではサヨナラ!」は許されないだろうし、関係者として余計に追われる可能性すらある。
 ……そも、先ほどまでの状況を見て単身で彼女らに近付けるとも思わないし。

灰院鐘 :「決まりだね」

ブルー・ディキンソン :「あら、お嬢様はコーヒー派で。
 落ち着いたら美味しいのを淹れましょう、気分もリラックスするはずです」

「私も所持品などはこの武器くらいですから。
 早いところ移動してしまいましょう。
 あちらは───……ずいぶん遠く、広い“射程距離"をお持ちのようですからネー」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ではその場で暫しお待ちを。時間が来るまでワーディングはこちらで維持します」

SYSTEM :
 そう告げて数刻ほどで、救急車や消防車に偽装したUGNの運搬車両が駆けつけてくる。ワーディングの解除と共に事態をカムフラージュするためのものだった。
 事後処理から設計したカバーストーリーを演じるための仕掛けだ。
 一同はその車の中に乗せられて、再びベセスダのビルに向かう。

SYSTEM :
 あまりに多くの事態が立て続けに起こる中、休息は必須だった。
 しかし、エージェントやアメリカ軍海兵隊といった職業軍人たちは兎も角、関係者迄にそれを強いることはない。

SYSTEM :
 何よりナタリーや勇魚など敵の干渉を受けた人物については検査の必要もあった。
 それらの要因からブリーフィング並びに事態の状況整理については、一旦休息を設け……翌日に回される運びとなる。

SYSTEM :
 ……或いは、その方が都合がよかったがために、各々か、それよりもっと上の意志が誘導したのか。
 だが様々な意志が錯綜する中、一つだけ間違いないことがあるのは、確かだ。

SYSTEM :
 ──シャンバラ。
 五十の州により成る葉を貪る蟲と、その屍を食い散らす鴉たち。
 既にかれらとの開戦の号砲は打ち鳴らされ、この世界に住まう限り……今一度それと対峙する運命は、もう避けようのないということだ──




【EXScene①/秘匿通信-1】

SYSTEM :
【EXScene①/秘匿通信-1】

登場PC: Blue Dickinson
登場侵蝕:なし

???????? :
繧コ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺ア縺帙j縺峨$繧翫♂縺√△縺ゅ←縺舌?繧√↓繧?n

???????? :
繝阪モ繝ュ繝シ繝サ繧ッ繝ョ繧コ繧・縺ォ縺ア縺槭※縺壹j縺偵?縺槭∞縺悶♂縺壹△繧九♂縺」縺斐〓縲√□縺ア縺峨°縺ェ縺壹※縺エ縺?★縺「繧?k縺峨?
縲?縺ュ縺ョ縺弱←縺帙h縺ゅ¥縺弱r縺ヲ縺「縺悶↓縺上°縺?$繧翫♂縺壹←繧弱?縺弱e縺壹o縺ュ縺?¥
縲?縺偵r縺壹∞縺悶↓縺イ繧偵℃繧後?縺

???????? :
繧√▽縺上∞縺ュ縺??縺イ縲√□縺偵★繧医♂繧阪j縺峨?縺帙j縺峨$繧翫♂縺√℃縺??縺懊n縺悶↓縺イ縺ェ縺舌△縺ォ縺?♂縺悶↓

ブルー・ディキンソン :
「みたいだねえ。
 いやあ、アレに関してはこっちも少し焦ったけど……」

ブルー・ディキンソン :
「とりあえず、最低限のやるべきことはやれたって感じかな?
 中古車とはいえ一台無駄にしちゃったからね、私のお財布はなかなかピンチなのヨー」

ブルー・ディキンソン :
「ま、うん。
 少なくとも、"成るようには成った"ってとこかにゃ?」

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 縺?縺峨?繧弱?ゅ#縺ャ縲√●縺シ縺ゥ縺上℃縺?#縺ァ縺壹△繧偵#縺帙f縺ュ縺??
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ブルー・ディキンソン :
「……マージィ?」

ブルー・ディキンソン :
「それはそれは。あたしも綱渡りどころの話じゃ収まりなさそうだ。
 それこそ高層ビルの間に鉄骨をかけるくらいの腹積りでいかないとダメそーネ」

ブルー・ディキンソン :
「ま、あたしの方は上手くやるよ。
 聡い奴は何人か居るけど……視界に入れたいのはシャンバラのバケモン共だろうしにゃ」

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ブルー・ディキンソン :
「オーケー、任せなさいな。
 丁度彼らの方針というか、行動や思考の傾向もある程度把握できた。
 後は少しの"調味料"を混ぜてあげるだけ。甘くて香りのいいやつをね」

ブルー・ディキンソン :
「丁度大義名分も出来てるからね。
 難しい事じゃないはず……ので、兎ちゃんの首根っこを掴みにいこうか」

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???????? :
『?キ?鯉ス托ス趣ス茨ス輔???キ??ス擾ス趣ス茨ス』

???????? :
『?カ?抵ス擾ス?ス鯉ス茨ス ?カ?難ス』

ブルー・ディキンソン :「…………」

ブルー・ディキンソン :
「"包帯ぐるぐる巻き"にはピッタリだ。
 オーケー、そういうことにしておこっか」

ブルー・ディキンソン :「それじゃ、また後で?」

???????? :縺?○繧翫♂縲√〒縺峨★縺ゅ★繧医♂繧阪j縺峨?

ブルー・ディキンソン :
 ……。
 ケーブルを、頸から抜く。

「……点灯屋は魔女になり得るか、か……」

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【EXScene②/■■の夢-1】

SYSTEM :
【EXScene②/■■の夢-1】

登場PC: Natalie Garcia
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 沈む。沈む。沈む。

 あなたは、最早見慣れた景色の中で、遠い水面を見上げて沈む。

SYSTEM :
 深い深い海の底へと沈みながら、ゆりかごのように波に揺られて。
 あなたは幾度目か分からない、安らぎの中に沈んでいく。

 これは、夢だ。
 あなたが何度となく見てきた夢。
 泳ぐこともできないまま、ただ安らぎの中に沈んでいくだけの。

SYSTEM :
 泡の音を聞く。水面を見上げる。
 海のように見えたそこは、しかし己を除いて誰もいない。
 魚もいない。海月もいない。鯨も。鮫も。
 きっと海の中に生きる、いと小さなものたちさえも。
 
 ──この夢には、自分を除いて誰もいない。

"最後の一人" :
 ────と、キミはずっと思って毎夜、褥の上で観てきたわけだ。

"最後の一人" :
 非道い話だ。オレはキミの傍らにいたはずなんだがね。
 此処まで降りてくるのに随分掛かったじゃないか。

"最後の一人" :
 にしても、こんな死に腐った海の中でよくもまあ穏やかに眠れるもんだ。我ながらキミの胆力には恐れ入る。
 ……いつまでシカトこいてる気だ? 流石に気付くだろう。

"最後の一人" :
 コイツが、キミの内から聞こえるものだって。

ナタリー・ガルシア :そう喧嘩腰にならなくても、きちんとお話は聞きますわ――さっきのことも含めて、知りたいことは色々ありますし

"最後の一人" :
 漸く答えてくれたか。
 うん、呑み込みが善くて助かる。実際これはキミの身の振り方にもかかわることでね。

"最後の一人" :
 語るべきコトは色々とあるが、その前に。
 キミの意志を聞いておくとしよう。

"最後の一人" :
 キミは今、命を狙われている。
 ……エヴァンジェリンはああは言ったが、周りの連中がどのぐらい本気かわかったもんじゃない。

"最後の一人" :
 否応なくキミは巻き込まれることになるだろう。
 キミがそこから逃げたとして、逃げた先を先回りして攻撃しに来るだろう。勿論、お優しい彼らの手がキミのゆりかごを護ってくれることは間違いない。
 

"最後の一人" :
 けれどキミにも出来ることがある。いや、キミにしか出来ないことがあるから、誰も彼もがキミを中心に据えたがる。舞台の上に起きたがる。
 ……まあかくいうオレもその意志の一つだが。だからこそきちんと自分の意志を聞きたいんだよ。

"最後の一人" :
 キミは、どうしたい?
 ああ、『詳しい話を聞いてから』なんて眠たいコトを聞いてるんじゃない。

 キミが、キミ自身の意志で、『識る』ことを望み、行動したいと欲するか。

"最後の一人" :
 要点はとどのつまりそこさ。
 進むか、下がるか……
 決めるのはキミだ。いつだとてね。

ナタリー・ガルシア :――私、今日はとても怖い思いをたくさんしましたわ。攫われたり、怖い人に囲まれたり、もっと怖い人にまた攫われたり。

こんな思いをするのはコリゴリですわ

"最後の一人" :
──ふぅん? それで?

ナタリー・ガルシア :お父様やお母様を悲しませたり、不安がらせたりはしたくはありませんし――UGNの方々に守ってもらうのも心苦しいですわ

それでも、私を狙う方がいる以上は彼らを頼る他ありません。私が逃げるにしても、どこに逃げても、隠れても、見つかって捕まってしまうかもしれません。

それなら、私に選択肢なんて殆ど残っていないようなものじゃありませんの?

ナタリー・ガルシア :
――そうやって誰かを、環境を、運命を、呪うことはしたくはありません

ナタリー・ガルシア :怖いですわ、当たり前です。
死ぬかもしれません、痛い思いも苦しい思いも、たくさんするでしょう。

不安ですわ、当然でしょう。
お父様やお母様が、私を守るために多くの方が、私のせいで傷つくかもしれません――それが彼らの意志であっても、私の心が痛まないということはありませんわ。

ナタリー・ガルシア :
・・・
だから、私は知るべきなのです。

私が、何を背負い、何を運命づけられているのか。
私が、これから誰に何をして、何をされるかを。

ナタリー・ガルシア :何も知らず、目をつむり、耳を塞いで、善人であると信じることは――とても、とても楽ですわ。

けれど、残念ながら私は善人ではありませんわ。

      ・・・・・・・・・
けれど私は、善人であろうとする人でありたいと、そう思っています。

ナタリー・ガルシア :これから先、誰かにとって酷いことを私がすることもあるでしょう。
誰かに傷つけられることもあるでしょう

ナタリー・ガルシア :大切なのは、きちんと識ることです。

貴方の言うとおりですわ。
――進むためには、識らなければいけない。

善悪の判断や、正誤は分かりません。
私は、すぐに答えを出せるほどの積み重ねを持ちませんから。

ですから、私は私がこれから触れるものをきちんと識りたいと思います。
どちらか片方からだけではなく、きちんと両面を識って――その上で、私は進みます。

ナタリー・ガルシア :私の目標と、私の信念、それを果たすために誰に何を強いるのか――私がどんな代償を支払うのか。

それを識らずに、己を善人だと勘違いして進むのは嫌ですわ。

ナタリー・ガルシア :ですから、教えてください。
私が挑まなければならないものを。
私に課せられた運命を。

貴方が識ることを、私が正しく前に進むために。

"最後の一人" :
 ………………………………。

"最後の一人" :
              ミーム
 ──それがキミの受け継いだ規範か。
 
 ……いやはや、わかっちゃいたが。

"最後の一人" :
 コイツは致命的だ。心中でもそんなキモいコトを淀みなく言えるとはね。

ナタリー・ガルシア :褒め言葉として受け取っておきますわ。

"最後の一人" :
 ああ。そうしてくれ。実際そのつもりだ。
 何にせよ希少なのは良いことだ。善し悪しに関わらずね。まあ……

"最後の一人" :

   ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
 ──そんなキミが普通でいられるために、彼らは頑張ってるんだと思うけど。

"最後の一人" :
 けどまあ──うん。そうだね。

 悪くはない。寧ろ良い言葉だ。そうこなくっちゃ。

"最後の一人" :
 殉教の道なんぞに惹かれる奴は、大抵が何処かがぶち壊れてるが。
 それでもそれゆえの、識りたいという望みがある。
 キミもそいつをキッチリ受け継いだ末裔であるならば、食うなと言われたリンゴだって味を確かめたくはなるものだよな。
 

"最後の一人" :
 ──結構。
 では、これはキミとオレとの間の新約だ。

"最後の一人" :
 オレは……うん、そうだな。
 とくに必要としなかったが、他者と関わる以上識別の名が必要だな。
 

"アダム" :
 そうだな。
 月並みだが──アダムとしよう。土より取られたものを意味するそうだ。
 そちらの国でニンゲンに付ける名前としては結構ポピュラーな名前らしいしね。
 

ナタリー・ガルシア :――知恵の実を食べるように唆した蛇の間違いではなく?

いえ、いけませんわね……貴方の皮肉が感染ってしまいましたわ。

ナタリー・ガルシア :それではアダム、貴方の言っていた『都市』とはなんですの?

"アダム" :
 おやおや、早速お嬢様の教育に貢献出来て、オレも嬉しいよお嬢様。
 
 そして、その話からだったね。

"アダム" :
 ・・・・・・・・・・・・・
 それはキミの運命のカタチさ。

 眠れるうちにキミが見ることとなる、忘らるる場所の追憶だ。
 

"アダム" :
 いいかい、よく聞くんだ──

SYSTEM :【INFORMATION】

トリガーRHOが発生しました。

"アダム" :
 ……とまあ、今話せる部分はそんなところだ。
 そして、分かるだろう。
 オレがそこを目指す理由も、キミがそこを目指す理由も。或いは一致していると思う。

"アダム" :
 その詳細については、キミが路を進むにつれて明らかになっていくだろうさ。
 キミは現実で約束の地を目指して進み……
 その折に、キミは夢見に運命のカタチを垣間見る。

"アダム" :
 オレの望むものは、その果てだ。
 その為に……オレと共にシャンバラに立ち向かう、その道を進んでほしい。

"アダム" :
 引き受けてくれるかい?

ナタリー・ガルシア :協力者にして共犯者といったところですわね……

――良いでしょう。

ナタリー・ガルシア :立ち向かうのであれば、一人より二人ですわ。

貴方の方こそ、引き受けてくださいまし――私の進む道は、退屈な道ではないのでしょう?

ナタリー・ガルシア :では、約束しましょう。
貴方が目指す場所と、私の進む道――道が重なる限り、共に行きましょう。

もちろん、他の方には内緒の『契約』ですわ

"アダム" :
 オーケイ。そうこなくっちゃ。
 そういうところは奴等の末に連なる片鱗って奴を感じるよ。

"アダム" :
 こいつは新約……いや、幽契って奴かな。古いいいつたえに則れば。
 約束だ。互いの道が、重なる限り──
 運命の導くままに。

 為すべきことを、為すとしようか。

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :貴方、嬉しいなら嬉しいと言ったほうがコミュニケーションは上手くいきますわよ……!

ナタリー・ガルシア :……こほん、そうですわね。

為すべきことを、為しましょう――お互いに。

"アダム" :
 伝わってるじゃないか。じゃあ何の問題もないな。意思の疎通がスムーズで助かるよ。
 これからもいい塩梅で空気を読んでくれると助かる。ホラ得意だろうキミ。風を読むヤツ。

ナタリー・ガルシア :ここ、水中ですわよ……!

ナタリー・ガルシア :まったく、もう……ええ、ええ、合わせてあげますわ。
先程助けて頂きましたから、それくらいは大目に見てさしあげます。

"アダム" :
 これはこれは、寛大な措置、痛み居る。
 ああしなくちゃいけない理由もあったからね。どうあれキミは向こうに捕まるとアウトなことは、理解してくれたと思うが。

"アダム" :
 それについても、夜ごとに話してゆくとしよう。
 さあ……そろそろ時間だ、朝が来た。
 ニンゲンの少年少女は風の子ということわざがあるらしい。いつまでもだらだらとしてる余裕はないぜ。

"アダム" :
 起きたらお楽しみのブリーフィングだ。
 目覚めと共に、キミの巡礼の旅が始まる。

ナタリー・ガルシア :その点に関しては重々承知しております――もしものときは容赦なく叩き起こしますので、貴方ものんびりしていられるとは思わないでくださいまし

ナタリー・ガルシア :
巡礼の旅……なんですわね

"アダム" :
 長くて一月程度の、俗世を渡るだけの旅ではあるが……願わくばキミの旅路が祝福に満ちていることを祈るとしよう。

 ……あと

"アダム" :
 オレは起きてる場合であろうとも気分で面白そうと思ったら出たり入ったりするから。
 そんな感じでよろしくお嬢様。

ナタリー・ガルシア :なんでそんな不安要素を、このタイミングで言うんですの!?

"アダム" :
 おっそんなこと言ってるうちに意識が浮上してきたぞう
 オレは頭脳労働担当ってコトで。オレの分も肉体労働頑張ってくれよお嬢様! 何事も気合だ気合

ナタリー・ガルシア :ちょっ……今夜を覚えておいてくださいまし!!!

ナタリー・ガルシア :あと、私の中に間借りしているんですから、あまりサボるようなら賃料を請求いたしますわよ……!

"アダム" :
 なんだ気前の悪いな、こんな殺風景な海の中で賃料なんて。
 やんごとなきお嬢様たるものもっと心の豊かさというやつをだ────…………

SYSTEM :
 …………その言葉は、最後まで届くことなく。
 あなたの意識はいつも通りに浮上する。
 それは何時も体験してきた目覚めとは少し異なる。奇妙な朝と、共生の始まりであった……




【OP-Junction②:楽園追放-Mission Start-】

SYSTEM :
【OP-Junction②:楽園追放-Mission Start-】

 登場PC:ALL Member
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 アメリカ・メリーランド州 モンゴメリー群 ベセスダ 高層ビル街の一角

SYSTEM :
 NIHやロッキード・マーティン本社などを含む、政府の重要機関が林立するというベセスダのビル群の中。
 UniversalGuardiansNetwork本部はその中に位置していた。あなた達が件の夜を超えて搬送されたのは、その大型ビルの中だった。
 

SYSTEM :
 UGNとはレネゲイドウイルスの治療や利用、及びにそれを用いた犯罪の対策など総合的な目的から、アルフレッド・コードウェル主導で設立されたものだ。当然本社にも、それらを取り扱う研究施設、療養施設の機能も備えていた。

 あれ以降、襲撃を受けたテンペスト精鋭一個小隊、及びに拉致と何らかの間接接触を行われたナタリー、勇魚はこの施設の中で検査を受け、療養のための睡眠を。
 協力者または重要参考人として搬送されたイリーガルの二名と前線に出陣した灰院鐘、ダン・レイリーの二名も同様に療養のための寝室で一夜を過ごし、休息を取った。

SYSTEM :
 件の一件から夜が明け、約六から八時間が経過する。
 ……それだけの時間があれば、その暇に出来ることは多いだろう。或いは中で何らかの行動をとっていた人間がいたやもしれないが。
 兎も角。

SYSTEM :
 嵐のような……いや、まさしく嵐そのものと言える数時間を越えて、現在。
 現場に集まった五人のメンバーと、作戦に参加予定のエージェント、及びにテンペストのメンバー……戦闘班代表のディアス、及びに技術班代表の水無瀬が出席する形で……が集い、本部のブリーフィングルームの一室で一同に会することとなる。

ダン・レイリー :
「これで全員か」

 改めて見る顔、昨日見たばかりの顔。
 一堂に会した“パラダイス・ロスト作戦”の関係者の顔ぶれは、UGNイリーガルや、シャンバラの“本命”であるところの少女によって、幾分か想像と違うもので。
 テンペストの作戦予定基地で行われるはずのミーティングは、前夜の天候の気まぐれで彼らの本部ビルを前借りする形となったが………。

ナタリー・ガルシア :かしこまった雰囲気を繕いながらも、周囲のあれこれに興味津々なのか、視線が右往左往している

ダン・レイリー :
「予定は修正不能なほど外れてはいないということだ。
 ───先日は良く眠れたか?」

ダン・レイリー :
 一先ず、アクシデントの第一波。
 嵐の先触れに触れるだけで転覆…などという体たらくは晒さずに済んだようだ。

 視線を右往左往させる彼女に一声かけてから、各々の様子を見る。

ブルー・ディキンソン :
 サングラスをかけ直し、服もきっちり整える。
 何? 場違いにも程があるんじゃないかって?
 それはそれ、これはこれだ。
 ある種のカムフラージュにもなってるんだからネ。

「いやーとてもよく眠れましたヨー」

 いつも事務所のソファだし。

ダン・レイリー :…念のため…有り得ないと思って聞くが遅刻者はいないな? よし。

ダン・レイリー :「よろしい。連中が守るルールは二つだけ、いつたたき起こされるか分からん状況だからな」

ブルー・ディキンソン :「早起き大得意!」

アトラ :
「いや~宿までお世話になっちゃって」

 とりあえず言っておく。まあ実際、こそこそ動くよりは快適ではあったし。

灰院鐘 :窮屈そうに座席におさまって、何が楽しいのかにこにこと全員を眺めている。

ダン・レイリー :
「その礼はUGNの方にだな。
 何なら僕も間借りする身だ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ナタリー、アトラの二人のイリーガルの処遇や"シャンバラ"の対処を決定する必要もあったが
 同時に目前に迫ったパラダイス・ロスト作戦の決行の為のミーティングも兼ねていた。

 UGNと米国海兵隊の合同特殊作戦のブリーフィングに参加させる……それは当人の意志を汲むとしても……イリーガルとして集った人間たちを今後起用するつもりであることを暗に示していた。

 勇魚は灰院鐘の横で、対照的に澄まし顔のまま腕を組んでブリーフィングの開始を待っている様子だ。
 

ブルー・ディキンソン :
 ……少年少女をこき使ってる組織だから自重はしたけど、ややニコチン切れだ。
 シラフを装い後でなんとかしよう。ふすー。

SYSTEM :
 UGNは、ことに本部となれば人員が不足しているということはないが、今回ばかりは話が別である。
 如何せん作戦内容とそれに必要なヒト・モノ・カネ……それらに対して、先日のワームウイルスによるサイバーテロ攻撃は最悪の事態こそ免れたが、覿面に効果を発揮していたのだ。

SYSTEM :
 各支部へと繋がるマザーコンピュータ、及びに中枢のサーバとそこに繋がる各米穀主要支部のネットワークこそ保持され、心臓部はほぼ無傷に抑えられたが、それでも支部間の連携が難しい状況であることに変わりはなく。
 加えて言うならこの作戦は多人数でなく少数精鋭で行われる。関係者か、或いは交戦経験のある人間であるならば、それは渡りに船というものであった。

灰院鐘 :
「よく眠れたのならよかった。部屋を用意してくれた職員さんに伝えておこう。……それで、ええと」

 いいかな? と首をかたむける。

ダン・レイリー :「ン」 構わない、の意

ブルー・ディキンソン :「どーぞー?」

ナタリー・ガルシア :「ええ、ベッドメイクも完璧でしたわ!お陰で、今日も一日頑張れそうですわ!」

灰院鐘 :「うん、それはいいことだ。君が元気そうでとても嬉しい」

灰院鐘 :「でも、せっかくならデータ上の安心もほしくて。ふたりの検査結果はもう出たかな」

ダン・レイリー :「“炎神の士師”とナタリー・ガルシアのか」

ダン・レイリー :「………」

ナタリー・ガルシア :「私は特に問題なしでした――疲労も、一晩経てばすっかり全快ですわ」

ダン・レイリー :
「しかし、先日聞いてよもやと思ったが…ガルシア議員の御息女だったか。
 痛感した。存外世界は狭いな」

ブルー・ディキンソン :「(マジお嬢様だなぁ……)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私についても同様に。
 多少傷は負いましたが、付帯する特殊なエフェクトもなし。自己治癒力で再生可能な範疇です」

アトラ :
「おお~、良かったね。
 確かに意味わかんないことばっかだったし、何かあっても良くなさそうだし」

"アダム" :
──ふむ、成程バレてないね。
  確かに大掛かりな組織であるが、まだ発展途上らしい。

ナタリー・ガルシア :「…………」

ナタリー・ガルシア :「……お父様のことを知っていますの?」

一瞬、ほころびかけた表情を取り繕うように問いかける。

"アダム" :
──あ、オレのことは気にせず、どうぞ続けて。
  気になるコトがあったから少し顔を出しただけで、キミに用があって来たわけじゃない。馬に蹴られる前に退散するさ。

灰院鐘 :
 じ、と顔を覗きこむこと数秒。灰色の双眸に、探るような色はない。

「……そうか、安心した」

 眦をゆるめて、肩の力を抜く。

灰院鐘 :狭い座席のなかで姿勢を正して、大尉と少女に目を向ける。議員──と言われても、きほん情勢に疎い彼にはぴんとこなかったけれど。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
「そりゃあ自分の国だ。
 勤め先は海向こうの方が多い身だから、スキャンダルのあった議員ほど知っている程度の知識だが、知らんわけじゃないよ」

ダン・レイリー :
 比較的良い方の評判を聞く方だ───。
 非の打ち所がない、っていう話じゃないが。

 とりあえず、前者をほどほどに伝える。

ブルー・ディキンソン :「(……ますます謎だ。
  議員の娘ってだけで箔はつかない。
  彼女が狙われた理由は──……もっと深いところにある、か?)」

ナタリー・ガルシア :          グリズリー
「貴方も……ええっと、灰色熊のような大きな方も、元気そうで何よりですわ」

裏表のない笑みを受けて、同じく含みのない笑みを返す。

ナタリー・ガルシア :「お父様は有名人で、私の誇りですわ……少し気は弱いですが、そんなところも可愛らしいとの噂です」

灰院鐘 :
「ぐりず──」

 があん、と無音の空間に奔る衝撃。

灰院鐘 :「そっ……そんなに……?」

ブルー・ディキンソン :「(純粋な例えゆえの刺さり具合!)」

ダン・レイリー :
「気にしていたのか」

 悪意がないのは誰が見ても分かるから、尚のこと残酷だが。 

ナタリー・ガルシア :「……? ええ、おおきくて、あったかそうで、力持ちに見えますわ」

アトラ :
「なるほど、本物のお偉いところのお嬢様……」
(……いや落ち着かねー!)

 つまるところ、議員の娘さんと、UGNと、そこに協力して率いている人、協力者のメイドさん。
 考えれば割合異質なのは自分なのか。あの人との会話聞かれてなかったら潜り込めていたかも怪しい。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 安堵する鐘に、当然です。と言わんばかりにふん、と息をついて、

「体形は恵まれていますね。打撃に秀でた良い体付きと思います」

アトラ :
「人褒めるのに出てくる動物でもない気はするけど……」

ダン・レイリー :
「悪いことではないだろう。熊は豊かさの象徴とも、大は小を兼ねるとも言う」

 だが例のニホンのコトワザ、反対の言葉がないのが不公平だと思わないか。

灰院鐘 :
「う……うう……」

 恥ずかしいやら照れくさいやら、遣り場のない気持ちで肩を縮こまらせるが、いかんせん土台(ベース)がおおきい。あんまり意味はないようだ。

灰院鐘 :
「……い、いや、僕のことはいいんだ。うん。大きいのが役に立つのはほんとだし、うん」

うんうん。……うん。

ブルー・ディキンソン :
「(……体格はジョックなのに、
  心はどちらかというとナード寄り)」

ディアス・マクレーン :
「わー、すげーギャップ。
 まあまあそう落ち込むなって、デカいのはいいことだってのは祖国のことわざだろ?」

 ぽんぽん。

水無瀬 進 :
「それことわざでも何でもないんだけどね」

ダン・レイリー :「感想だな。少尉の背も悪くないが、一番手は譲ることになりそうだぞ」 ついでに俺が言った…と横から割り込むのは大人げないな。やめておくか

ブルー・ディキンソン :
「(こっちはこっちで、陽気な軍人三羽烏ってとこかにゃ。
  連帯感は強そうだ、それぞれのバランスも取れているし……。
  
 ……。

 ……取れてるな、ウン。誰がどの扱いなのかよくわかる)」

灰院鐘 :「ううん、あんまり実感できたことはないんだけどなあ。でもありがとう」

灰院鐘 :「思えば、日常的に便利なこともあるんだ。待ち合わせ場所とか、得意だよ」

ナタリー・ガルシア :「確かに、NYでもすぐに見つけられそうですわ!」

水無瀬 進 :
「最初に出てくるの、ソレなんだ……」

ダン・レイリー :「待ち合わせ場所に“なる”のは初めて聞いたな」

ブルー・ディキンソン :
「得意で良いのそれ───」
 おっと無垢な言葉が飛ぶぅ!

ダン・レイリー :………きみ自身が遅れて到着した時が大変ではないか? いや。この話をしたが最後、何もかもがズレる。

灰院鐘 :「こ……こっちはまだ同じくらいのひと、結構いるから……」

灰院鐘 :「服も買いやすくなったし……入り口に頭をぶつけることも減ったんだよ……」

アトラ :「入口に頭を」

ダン・レイリー :「ナタリー、身長の話は彼にとってデリケートな問題のようだ」

水無瀬 進 :
「オオウ そりゃ大変そうだ……この話もうやめにしよっか」

ブルー・ディキンソン :「難儀だなあ……」

ダン・レイリー :具体的に言うと3発目が刺さった時あの大きな体に哀しい風が吹くかもしれん

ナタリー・ガルシア : 
「その風貌で、その大きさの方は珍しいですわよ?私も始めて見ましたし――こほん、確かに、気にしていることをとやかく言うのはよくありませんわね」

ダン・レイリー :「よろしい」

ダン・レイリー :
 ………元々あるタイムリミットがフライングの歓待で早めに点灯し。
 はじめの一歩でアクシデントが起きたとあっては、正直時間を無駄にしすぎるわけにもいかない。

 ただこれを俺の口から出すとすれば、緩むべき時でないタイミングに、自らの予想よりも気が緩んでいる場合だ。 

ダン・レイリー :
 ………となれば今は、
 わざわざ提示する必要性もないだろう。

 前夜ゆいいつ幸いと取れるところがあったのは、指揮下に入れる人間のパーソナリティ───例を挙げるなら、いまその巨体に見合わぬ繊細な仕草を披露した少年───を、多少汲み取れたことでもあった。

ブルー・ディキンソン :
「(……と、そろそろふざけるのも終わりかな?)」

 そっと後髪を弄る仕草をして、頸のソケットに爪を挿し込む。
 ちょっとした微弱な感覚規管への擽りを経て、意識を一瞬シャットアウト。
 ワーク用のアカウントにチェンジ。

ナタリー・ガルシア :「それでは、少し前後してしまいましたが――」

ナタリー・ガルシア :「先ずは、昨晩のことについてお礼を申しあげますわ。紳士な軍人さんにUGNの方々、メイドさんと……(ラクシャーサの)妹さん?」

ナタリー・ガルシア :「貴方がたが居なければ、私はいまここにはいないでしょうから」

スカートの端を持ったうやうやしい礼ではないが、深々と頭を下げる。

アトラ :「いっ……………妹さん……!?」

ブルー・ディキンソン :「どういたしまして──」

ダン・レイリー :
    Sure.
「どういたしまして。
 追跡の功労で言えば、“雷霆精”だが………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「当然のことをしたまでです」

ダン・レイリー :………。

灰院鐘 :
「そうなの?」きょとん、と訊ねる。推定妹さんに。

ブルー・ディキンソン :
「外野から申すとすれば──……、
 まさしく"痴話喧嘩"のように見えましたけれどねえ?」

アトラ :
「そ、そういう風に見えた───……っぽい?この感じ……?」

ダン・レイリー :
 メイドさんか。

 ………思えば彼女、恰好以上に妙なことがあるな。

ダン・レイリー :
   ・・・
 ………お嬢様と彼方側から呼んでいたはずだが、今日の様子を見る限り、この二人、顔見知りだな。前夜の急展開での口裏合わせだったか?

灰院鐘 :
「ああ、それと……さっきのは彼女流の"どういたしまして"だよ。僕からも同じ言葉を贈らせてほしい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……………」
イマイチ釈然としない顔

ナタリー・ガルシア :
            グリズリー
「メイドさんの刀捌きも、熊さんのバリケードも、軍人さんの高速移動と隠蔽も、小さな彼女の炎のコントロールも、どれもこれもとても素晴らしかったですわ……あと、ラクシャーサの足止めに一番貢献してくれたのも感謝していますわよ?」

ブルー・ディキンソン :「日本のティーン雑誌でいう"ツンデレ"って奴でしょうかね?」
 茶化した。06年あたりに立ち寄った際に、雑誌にそんなことが書いてあった。

ナタリー・ガルシア :「きっとシャイなのではないでしょうか」

ダン・レイリー :「………」 ちら、と会話の中心に視線を向ける。

ブルー・ディキンソン :「なるほどシャイ、そちらの線が濃厚かもしれませんね──」
 お嬢様のお褒めの言葉に会釈、そして追従の納得。

ダン・レイリー :
「しかし、そうか。
 思えばカインの時からそうだったが、僕らは誰でどういう人間か名乗っていないな」

 だからグリズリーの悲劇が起きてしまったわけだが。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「解釈はお任せします。好きにとっていただいて結構」
 不服気な目

アトラ :
「う、う~ん。状況的にはウチも御礼を言う立場なんだけども」

 誰があんな鬼と~、などと反射気味に叫び掛けるが、それはもう正解の反応だ。
 一旦置いておきたいところでもあるけど、もう完全に“そう”見られている気がするし。
 言った内容は言葉通り。おかげ様で自分は此処に混ざっていられる、と。

灰院鐘 :「そ……そうだね、名乗りは大事だ。あまり気にしてこなかったけど、今ものすごく痛感した……」

ディアス・マクレーン :
「……………………………………名乗りと言えば。
 うん。間違いねえ。俺が女の顔を忘れるわけがねえし」

水無瀬 進 :
「?」

灰院鐘 :
「?」

ディアス・マクレーン :
「うん、やっぱ一人足りなくないか?」

ダン・レイリー :「どうした少尉………」

ダン・レイリー :「………………」

灰院鐘 :
「えっ」

ダン・レイリー :名簿はあるか? 確認する。

ブルー・ディキンソン :「そうなのですか〜?」

アトラ :「ほや」 マジ?

ナタリー・ガルシア :「遅刻ですか?それは、少し……大事な場面ですのに」
ほんの少し、非難するような声音

灰院鐘 :
「……あっ」 ……あっ

ディアス・マクレーン :
「うん、これこれ。UGNの名簿、確かタブレットにあったろ、渡米する前に見たやつ」

ダン・レイリー :
「UGNも先日のワームで多忙だ。
 それがあってもおかしくない」

 ………フォローはしておこう。
 それから同時に、作戦従事者の記載にざっと目を通す。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :俺は心の中で“しまった”と口にした。この空気で迎え入れるのは良く済んでも罰ゲームではないか。

紅 蘭芳 :
「…………ぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

 矢庭に戸の奥が騒がしくなってきたのは、丁度その頃だった。

紅 蘭芳 :
 自動ドアが開くと同時、ダン! と、スタントマンもかくやとばかりの飛び込み。そして前転して着地!

「っくれて、ない! セーフ!!
 ……あれ、セーフですよね?」

ダン・レイリー :「スリーアウトだ」

ナタリー・ガルシア :「……」

ブルー・ディキンソン :「アウツ! チェンジ!」

ナタリー・ガルシア :
            せんせい
「もちろんセーフですわ! 師匠 」

アトラ :「おぉう」 元気なねーさんだ。

ブルー・ディキンソン :「あらまあ甘々審判でいらっしゃいますね!?」

ダン・レイリー :「………」 この娘しれっと先刻の宣言を翻したな。

灰院鐘 :「……せんせい?」おや、と意外そうに持ち上がる眉。

紅 蘭芳 :
「うぐ、容赦のない審判……!
 ご、ごめんなさい!! こちらも任務で色々ありまして……って」

紅 蘭芳 :
「あれっ、なんでナタリーちゃんがいるの!?
 此処本部なんだけど!?」

ダン・レイリー :
「イヤ、今はアメリカ全体が渦中、UGNの多忙は理解しているつもりだ。
 幸い始まる前だった以上は問題も…」

アトラ :
「ってあれ?つまり知り合い───……」

 っぽいなコレ。

ダン・レイリー :
「………。
 ・・・
 見習いと言っていたな、そう言えば」

 その見習いを一人前にする先生…。
 というところだったのか? 答え合わせをするべく、ナタリーの方を向いた。

ブルー・ディキンソン :「(……あーん、そういう繋がりか?)」

ナタリー・ガルシア :「はいっ!実は私、昨晩事件に巻き込まれまして――その流れで、今ここにいるのです!」

自然と姿勢がピシッとする。心持ち大きな声で、キビキビと答える。

灰院鐘 :わあ、すごく分かりやすい……

紅 蘭芳 :
「へぇー……そうなんだ奇遇!」

紅 蘭芳 :
「……………」

紅 蘭芳 :
「えっ、えっ!?
 ナタリーちゃん巻き込まれたって、その……昨晩!?よりによってこの事件絡みの案件で!?」

ブルー・ディキンソン :あらまあいいリアクション!

ナタリー・ガルシア :「この、作戦……?」

ダン・レイリー :
「その辺りを説明すると長くなる。
 お互いにな」

ダン・レイリー :
「僕らもたまたまあの事態で集まったわけじゃない。

 昨夜“ラフメタル”も言ったが、少なくとも僕やマクレーン少尉、ミナセはUGNでないしな。立場として大雑把に括ると、そちらのメイドさん等と恐らく変わらん」

灰院鐘 :
 ……ふむふむと至極まじめに頷いて、隣の少女へささやきかける。

「なんだか賑やかな人だね」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「立場への自覚が足りないと思います」

ブルー・ディキンソン :メイドさんです☆

紅 蘭芳 :
「ぐっ、ギッ…………!」

ダン・レイリー :
「そしてその昨晩の出来事について、彼女…ナタリーは少なくともシャンバラからの明確な他意を以て干渉されていたようだ」

紅 蘭芳 :
「……! 無事なんですか、彼女は?」
 その言葉に一層神経をとがらせたように、真面目な面持ちで問いかけ

ナタリー・ガルシア :「え、ええ、私は見ての通り無事ですわ……怪我も特にありませんし」

ダン・レイリー :
「検査の結果も、本人の言動も。
 現在は無事だそうだ」

 当人の言葉に少し遅れて出す。
 間違っても促したようには見られないようにだ。

ダン・レイリー :
「そしてこの仔細を話すとなると、
 昨晩の出来事が重なりややこしいことになる」

ダン・レイリー :
「その前に………(改めて)全員揃ったことだから、先ずはお互いの名程度は知り合っておきたい。そう思っていた矢先だったわけだ」

ダン・レイリー :
 問題ないか? と聞く。

 実を言うと少尉の言葉がなければ始めかけていたのも事実であるが、
 バレなければイカサマではない。おくびにも出さない。

紅 蘭芳 :
「…………そう、でしたか……。
 面目次第もありません。こういう事態に備えてリリアさんは私をあの子の傍につけていたというのに……」

紅 蘭芳 :
「でも……、無事でよかった……!
 私の方からも、どうかお礼を言わせてください! 皆様、ありがとうございます!」

紅 蘭芳 :
「その頃私が何をしていたかというと……いえ、私の申し開きなどは自己紹介の後の方でもよさそうですね。
 はい、問題ありません」

ダン・レイリー :
    Sure.
「どういたしまして」

ダン・レイリー :
「………つい先程、早速名の分からぬ不便が生じたところでもある。
 きみやこの場の幾人かについても、僕は資料でしか知らない。逆も然りで、そのままやるには不便以前の問題だからな」

ダン・レイリー :周囲の反応を見る。何ら異存がないなら、僕からやるか。

ナタリー・ガルシア :「そうですわね、私も皆さんのお名前を知りませんし……先程のように、不用意に傷つけてしまうのは心苦しいですわ」

灰院鐘 :
「傷つくだなんてそんな」
 おおげさなことではないから、とかえって申し訳なさそうに肩を縮こまらせる。
「……まずは自己紹介、というのは賛成だ。こうして出会えた君たちのことを、ぜひ教えてほしい」

アトラ :
「一理ある!……っすね!
 ウチとか完全部外者ですし?まずはお名前だけでも知ってもらわにゃ」

ブルー・ディキンソン :「あた…私も賛成ですよ。
 コードネームだけで呼び合うのも味気がないですし」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「同感です。身許情報、性能、知っておきたいことは、お互い多いでしょう」

灰院鐘 :
「あとはそうだな、好きな食べ物とか……趣味とか……」

ナタリー・ガルシア :「休日の過ごし方も大事ですわね!……このミーティングの後で教えてほしいですわ!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………遠足に行くんじゃないんですよ」

ダン・レイリー :「…そうだな、それはミーティングの後でな」

アトラ :「するのはするんだぁ……」

ディアス・マクレーン :
「ま、俺達運命共同体だからな! 故郷の飯、好きなバンド、色々話すことァあらぁな」

ダン・レイリー :
「話すなとは言わないさ。
 肩肘張って生き急いでも、何にもつながらない時はある」

ブルー・ディキンソン :
「私的なコミュニケーションを取るのは我々オーヴァードにとっては重要なことだと思います。
 ま、そこはそれ。ボスの言う通り、言う言わないは自由でしょう」
 そこの軍人さん(ダン)のこと。

ダン・レイリー :
「………ただ其方に脱線し過ぎないように。
 余裕を持つのと楽観するというのは、少々意味が違うからな」

ナタリー・ガルシア :「親密になればなるほど、連携にも深みが出るというものです――ミーティングの後は懇親会をする時間があればしたいものですわ」

ダン・レイリー :「(ボス)」 僕かそれは 根拠を聞いていいかどうか悩むな

ブルー・ディキンソン : 

灰院鐘 :「ボスかあ。かっこいい響きだね」

ダン・レイリー :「止してくれ。上にも隣にも、聞かれたら物笑いの種だ」 

ディアス・マクレーン :
「うーっし、じゃあボス?
 まずはうちらから先陣を切ろうぜ、こういうのは先手必勝だ」

ダン・レイリー :
「そうだな少尉。話題を切り出した人間の責任もある。土足で上がり込んだ側から事情を明かすとしよう」

ダン・レイリー :それと僕をボスと呼んでも奢りはないぞ。

ディアス・マクレーン :
ちぇー

ダン・レイリー :アテが外れたか? 財布の中身で見栄を切らない隊長で残念だったな。

ダン・レイリー :
「第三海兵遠征軍所属、テンペストの“ホワイト・スカイ”だ。
 正式に名乗るなら、ダン・レイリー大尉というのは僕を指した言葉になる」 

ダン・レイリー :
 既に名は、懇切丁寧に宿縁らしきもののひとつが語ってくれたところであるが………。
 名乗りはしておくに越したことはない。

ダン・レイリー :
「テンペストというのは、要はR案件に対する米軍の備えであり、
    テストチーム
 一種の実験部隊のようなものだと思ってくれればいい。
 あとで本人も言及してもらうが、そちらのマクレーン少尉や、そちらにいるミナセもそうだな」
 

ダン・レイリー :
「此度はテロ組織『シャンバラ』の制圧を目的とした長期ミッションの発令に伴い、僕含めた一個小隊が其方に出向する運びとなった。

 …此方はテロ狩りの専門家であっても、レネゲイドの専門家ではない。
 UGN
 其方の流儀や知識を仰ぐこともあるだろう。むろん、逆も然りだ」

ダン・レイリー :
「資料で確認した内容と照らし合わせるなら、僕は“エンジェルハイロゥ”と“バロール”の二種を備えたオーヴァードということになるか」

ダン・レイリー :
「濫用出来るってわけじゃないが、目立たず、かつ長距離への移動手段を賄う術も持ち合わせている。
 その他は概ね想像された通りだが、この二つのシンドロームから連装されるRCでの直接的攻撃は不得手だということも、あらかじめ述べておこう」

ダン・レイリー :
 逆に出来ることについては、先程、特に強調するでもなく宣言した通りだ。

 こちらはテロ狩りの専門家。
 超人の土俵に上がったところで、特にすることは変わらない。見た目が派手になり、年齢の敷居が低くなり───ラベルがどう変わろうが、本質は何も変わらない。

ダン・レイリー :
「本国からは対シャンバラを目的とするこの『パラダイス・ロスト作戦』において、任務遂行のための作戦指揮を任されている。
 そこについては、そちらの流儀、専門分野もある。重んじろとは言わないが………軽んじろとも言わない。無論、前提として的外れな指示は出さないよう鋭意努力するがね」

ダン・レイリー :「よろしく頼む。───僕からはこんなところか」

ナタリー・ガルシア :「こちらこそよろしくお願いしますわ!昨夜お世話になった分は、必ず報いてみせます」

ダン・レイリー :「その意気だが、元々軍人の義務なんてのはああいうものだからな」 モチベーションになるならいいが気にし過ぎることはない、と暗に。

アトラ :
「海兵。軍人さんだったんすね~。
 まあ確かに如何にも~って感じだ。此方こそヨロシクしときます!」

 なるほど傭兵などじゃなく、しっかりとした軍人。好悪で考えるなら苦手な方ではあるが……まあ、良いだろう。

紅 蘭芳 :
「はい、よろしくお願いします。
 腕前については直接見た訳ではありませんが、エージェント・リリアの見立てであれば信用できる。
 こちらUGNとしても、全力を以て協力させていただきたいところです!」

ダン・レイリー :
「そりゃあそうさ。
 こっちの世界でも七年以上だ。軍人に見えなければショックを受けていたかも知れん」

ブルー・ディキンソン :
「(WWIIのマンハッタン計画に匹敵するコストを掛けられているR実験部隊……、
  ま、この手の事件に米軍が関わってる以上、居ないわけはないと思っていたけど)」

「(初っ端から大物だナー。
  ということはDIAも一枚噛んでる……ってところか)」

ダン・レイリー :
「助かる。僕としても先日の一件で、其方の援けが必要なことは痛感していたところだ」

 無論、その彼女についても。

ブルー・ディキンソン :
「なるほど。
、  、   "大尉"
 ボスよりはキャプテンとお呼びする方が正しいかもしれませんわね」

ダン・レイリー :
「先程の名前では僕はギャング・チームのリーダーになってしまうからな。それならまだ抵抗が薄い」

水無瀬 進 :
「違いない。キャプテンかあ、確かにピッタリかもだ」

ダン・レイリー :「煽てには乗れないぞ。それには痛い目を見た記憶もある」

灰院鐘 :「うん、そうしてくれると嬉しい。でもひとつだけいいかな」

灰院鐘 :「共同作戦だ。あなたの指示は重んじるけど、あなたも僕たちの判断も信じてほしい。僕は部下ではなく、仲間としてこの場にいるつもりだから」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「同感です。指揮系統の統一は必要ですが、我々の見地から裁量で行動させていただく場合もある。
 言葉を借りるようですが、重んじろとは言いませんが、軽んじられては困る」

灰院鐘 :「つまり……お互い仲良く!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………………………………………まあ、そういうことです」

ダン・レイリー :「きみの纏めはいつも警戒心のようなものが抜けているが、正論ではある」

ダン・レイリー :…あの釈然としない顔、何度見るやら。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :なんでしょうか。何か落ち度でも。

ダン・レイリー :僕は何も言っていないが、そう見えたなら失礼したな。

ダン・レイリー :さて…。

ダン・レイリー :
「二人とは先日から改めてになるが………。
 きみの言い分は分かっているつもりだ、ショウ・カイン」 

ダン・レイリー :
「そのつもりだよ。だから、繰り返すがさっきのは的を射ている。スクールの学生の標語めいてはいたが」

「船頭に立つ権利を争って沈没しました、では本末転倒だろ?」

ダン・レイリー :………

ダン・レイリー :
 僕個人としては、“それ”に聊か馴染みすぎるこの二人に何も思わないわけでないが。
 ………測るのはお互い様か。少尉じゃないが、つくづくシンプルなゲームじゃないぞ。 

紅 蘭芳 :
「…………………………」

 ──わー、小さいのに私よりしっかりしてるなぁ二人とも……
 などとはおくびにも出さない。出さない。ホントに出してないったら。
 

ダン・レイリー :………

ダン・レイリー :この人、教官役のはずだが、第一声は“ああ”だったな………大丈夫だろうか。

ブルー・ディキンソン :
「(……へえ。
  米国という国の性質を考えると、意外な返事だな)」

「(それもそうか。
  レネゲイドの技術・知識面において米国は、非合法組織にイニシアチブを握られている。
  常に陣頭に行きたがる合衆国としては腹の立つことだろうに。よく自制できてるネー)」

アトラ :
「ほへ~。
 そんじゃウチもキャプテンって呼んじゃいますか!仲良く仲良く」

 便乗しておこう。便乗。

灰院鐘 :「よろしく、キャプテン」

ブルー・ディキンソン :「定着しちゃいました♡」

ダン・レイリー :「そのようだ。名前負けしないようにしよう」

ダン・レイリー :「そういうことなので…切り込み役の連帯責任と行こう、ディアス、ミナセ」 これがキャプテン権限だ 

ディアス・マクレーン :
「アイアイサー、キャプテン・レイリー!
 じゃあ次は俺からだな!」

ディアス・マクレーン :
「俺はディアス・マクレーン。
 所属は第三海兵遠征軍、特殊部隊TEMPEST、階級は少尉だ。さっきのキャプテンの二つ下だな。歳もだいたい四つ下ってとこだ」

ディアス・マクレーン :
 シンドローム                       ピュアブリード
  症 状 は、あんたらの命名で言うならブラックドッグの 純 血 種 ってとこか?。   フォアード
 能力傾向は肉体寄りだが、基本兵装は射撃武器だ。空挺降下から素早くPDWで敵陣系を崩す先鋒ってとこか。

ディアス・マクレーン :
「武器便りって訳じゃないが、超人の世界でも基本兵装を性能以上に生かすのがうちらの流儀だ。遅れは取らねえ。

 ……まーアレを見せられてでかい口は叩きにくいんだが」

灰院鐘 :「近づいてズドン、だね。僕も得意だ」握手!と伸ばした手が遠い。

ナタリー・ガルシア :私も、もっと功夫の修練を積めば……

ディアス・マクレーン :
「作戦の陣頭指揮は隊長が取るが、隊長が単独作戦行動の間は俺がテンペスト一個小隊の戦闘指揮を執ることになってる。
 市街戦想定の訓練も日々こなしてる連中だ。SWATが裸足で逃げてくような鮮やかな連携で救援に駆け付けるぜ」

ブルー・ディキンソン :
、 、 、SEAL
「流石は"アザラシ"一個小隊クラスの戦闘能力の持ち主。
 キャプテンともども期待しても大丈夫そうですネっ」

ディアス・マクレーン :
「あっっっっったぼうよ! お呼びとあらば即参上、期待に応えますぜメイドの嬢ちゃん!」

ダン・レイリー :
「このように当てにしてやってほしい。
 やりすぎた見栄を張らない限り有言を実行できる男だよ」

ブルー・ディキンソン :「あらあらこれはご親切に♡」

水無瀬 進 :
「張るんだよね、これが……」

ディアス・マクレーン :
「なにをぅ!?」

ナタリー・ガルシア :「見た目からタフなナイスガイですもの、さぞや頼りになるお方と見ましたわ!」

ダン・レイリー :「な」 心当たりのあるヤツの反応だろ

ブルー・ディキンソン :ですネー。

アトラ :
「ほ~。というか……。
 軍人さんってもっとおかたいイメージだったんすけど、お三方はけっこー仲良いんすね?」

灰院鐘 :「仲良しさんが多いと場が明るくなっていいね」

水無瀬 進 :
「まあね、共同生活も長い方だし、戦友みたいなものさ。
 でもお嬢さん? 頼りにしてもらうのはうれしいが、コイツに関しちゃ程々にね」

ナタリー・ガルシア :そうなんですの?

ブルー・ディキンソン :「今ので大体♡」

ダン・レイリー :「お嬢さんに目がないのさ」

アトラ :「あぁ~」

ダン・レイリー :ちなみに撃墜率も低いが、これは言わない。おまえの名誉に対する追い打ちをかけるのは酷だ。

水無瀬 進 :
「そういうコト。君みたいな子からエールを貰い過ぎるとあれだ。
 豚もおだてりゃ木に登るというけど、勢い余って自由の女神ぐらい登って行っちまいそうだ」

ナタリー・ガルシア :「なんとやらとハサミは使いようと言いますし、応援して頑張っていただけるのであればいくらでも応援しますわ」

ディアス・マクレーン :
「おぉんさり気無く嬢ちゃんからも刺された気がする!」

ブルー・ディキンソン :「登りすぎて幻のアポロ18号にならないように、ってとこですネ」

ナタリー・ガルシア :「素直な殿方は大事にしなさい、と、お母様から教えられていますので」

にっこりとすまし顔

灰院鐘 :「素敵なご両親なんだね」よく分かっていない顔

水無瀬 進 :
「よし、じゃあディアスの奴が終わったところで……
 次は僕かな」

ダン・レイリー :「そうだな。孝行出来るうちに───などというのはお節介か」

ダン・レイリー :「では頼んだぞ、ミナセ。僕らの中のトリだ」 

水無瀬 進 :
「僕は水無瀬進。ああ、国籍はアメリカだが日本人だよ、一応ね。
 所属は同じく第三海兵遠征軍、特殊部隊TEMPEST。とはいえ僕は技術班の人間だから、戦闘員ではないんだけど」

水無瀬 進 :
  D A R P A
「国防高等研究計画局の一般公募に受かった折に長官から引き抜かれてね。
 僕はそっち系担当のエンジニアさ。主にテンペストの装備の整備やら開発を担当してる」

水無瀬 進 :
 シンドローム
「 症 状 はブラックドッグ。純血種だけど、然程強い能力じゃない。
 まあ僕はユーティリティ重視ってとこかな。後方支援については任せて欲しい」

水無瀬 進 :
「これから作戦が行われる中、君たちの装備を強化支援してあげられる。
 今のワームウイルスによって国中が大変なことになってる中でも、君たちの行動は僕特製《サードウォッチ》で追跡、適宜エフェクトを介して補助することが出来る。
 探索から戦闘迄幅広い支援が可能だ。巧く使って欲しい」

灰院鐘 :「助かるな。僕もブラックドッグだけど、そういうのはからきしだから」

ダン・レイリー :
「ミナセには色々と手の回らないところを任せている。
“コードトーカー”のちょっかいの際も、こいつが居なければ今合流の席にはいなかったろう」

ブルー・ディキンソン :
「ああ……そういえば、あそこは一年半だか二年の周期で、
 DARPATech
 一般公募をしていますわね。そこからですか、なるほど〜」

ナタリー・ガルシア :コード・トーカー……?

ダン・レイリー :
「まあ、そこは適材適所だ。
 器用な男だから、当てにしていい。その分は働きでというやつだな」 

アトラ :
「おー……なんかカッコイイっすね!
 ウチもその辺全然わかんないからなあ」

ダン・レイリー :御息女には“そいつは後で話す”のジェスチャー。 

ブルー・ディキンソン :
「あそこの一般公募には軍も同条件、というのが有名ですからね。
 そこから直々にスカウトがあったとなれば、期待もできるというものです」

水無瀬 進 :
「詳しいね、君も応募したことあるの?
 昔からドローンを作るのが好きでね、まさかそいつが転じてこんな力にまで目覚めるとは思わなかったけど」

ブルー・ディキンソン :「DARPAが生み出したGPSには大変お世話になっておりますので♡」

水無瀬 進 :
「そう言われると自分の事のように思えて鼻が高いなあ。
 ま、当初は制服さんに囲まれてどうなることかと思ったけど」

ダン・レイリー :「今ではすっかり軽口の一つも返せる有様だ」

水無瀬 進 :
「そういうこと。大変だけど、合理的な上司の元でのびのびとやれるのはいいもんだ。うん、理に適うってのが一番大事なんだよね、こういうのって」

ブルー・ディキンソン :「どうやら環境が適していたようですね」

アトラ :「おぉ~……」

水無瀬 進 :
「そうそう、UGN回りは合衆国でも追いつかない技術力を持つって聞いてるよ。その辺りも一緒に学んでいきたいところだけど……
 流石に企業秘密を盗み見たりはしないさ。代わりに向こうの連中の技術は色々参考にさせてもらおう」

水無瀬 進 :
「モチベーションは十分ってコトさ。責務を果たす以外にね。
 勿論、そっちの分野で後れを取ったって意味でも」

アトラ :
「おお!偉いっすね。ウチならうっかりちょろまかしそうだけど……」

 やる気も十分だと。あんな感じでもしっかり男の人って感じだ。

ブルー・ディキンソン :「なるほど。考え方はかなりアメリカナイズされたようで」

水無瀬 進 :
    States
「うちの 会 社 は怒らせると怖いぜ? 報復のえげつなさは特にね」

ダン・レイリー :
「やられても泣き寝入りするのが利巧とも、隣人愛を銃口を向ける相手に適用しすぎろとも、教わってはいないことだからな」

ダン・レイリー :
「ここはミナセだけに抜け駆けさせることじゃない。
.. テンペスト
 嵐を制する嵐の看板を背負い込んで来た身としてはな」 

ディアス・マクレーン :
「違いねぇや。あのまま上等くれて勝ち逃げは赦さねえ、ましてウチの国も家族も人質っつうんなら猶更な」

ディアス・マクレーン :
「と、まあ……
 うちらの自己紹介はそんなところだ。
 これからは命を預け合う仲だ、よろしく頼むぜ!」

灰院鐘 :「嵐を制する嵐──か」

灰院鐘 :
「くり返しになるけど、こちらこそだ。預かったぶんは働きで応じよう」
 預ける分については、言葉にするまでもないだろう。彼の微笑がなにより雄弁に示している。

灰院鐘 :「さて、次は僕たちの番かな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「では、私から行きましょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
                   シ ー ラ ー
「UGN本部直属機関『遺物探索局』所属の封印者
    アータッシュバフラン                       バフラン
 コード"炎神の士師"……勇魚=アルカンシエルと言います。長い場合は"士師"で構いません」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 シンドローム         ピュアブリード
「 症 状 はサラマンダーの 《 純 血 種 》……右手を触媒とした熱量操作、主に発熱の分野を得意とします。
 徒手格闘を得意とする反面、レネゲイドコントロールの面では聊か不得手な分野となります」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「性質上、隠密行動による単独任務を多く経験してきました。
 戦闘、補助、防衛、回復。一通り修めています。巧く使ってください。
 ただ……」

灰院鐘 :ただ? と隣で傾ぐ首。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私の能力は私の権限で開示できる情報が限られている。その理由が、この右手……。
        レガシー
 私の右手は、『遺産』の右手です」

 言いつつ、右手を開き、手の甲を翳すように見せる

ダン・レイリー :「………」

ブルー・ディキンソン :「……ふむ」

ダン・レイリー :「遺産というのには、専門的知識はないが………」

ダン・レイリー :「そいつが“ジョーカー”なことは、分かるつもりだ」

アトラ :
「……」

 ……おぉ。そういえば広場のときも共鳴が云々とか言ってた。
 “遺産”か。……“遺産”……。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「その通り。
 その真名は開示できませんが、カテゴリは『イフリートの腕』と総称される炎の手。
 徒に解き放つことはしないよう対処しますが、運用には気を付けていただきたい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……あれが一度迸れば、公園一つ程度では済まない。
 行動の裁量権をある程度委ねる以上、出来る限り、適した場所で使用させるようお願いします」

ダン・レイリー :
 そう。
 奴らのうち二人もまた“遺産”の所持者だった。
 その振るいようによっては鍵となることも、また然りだ。

 ………後は。
 ・・・・・・
 それをするかというだけの話。

ダン・レイリー :
「そこは、信じてもらうより他ないな。
 僕らは軍人だ。合衆国の人間で、合衆国を守る義務がある」

ダン・レイリー :
 ガーディアン
「守護者と呼ばれたことを裏切るつもりはないよ」

灰院鐘 :
「────」

ブルー・ディキンソン :「(……ステレオタイプ)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「能力の面では信用に足ると判断します。
 その動機も同様に」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「どうかそのまま、信頼のおける関係が続くと、私としても重畳です」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………………………………」
 

ダン・レイリー :「それがいいだろう。お互いにな」 

ダン・レイリー :
 それくらいが、却って健全だ。
 ………ショウ・カインは、“幸い”僕の懸念とはズレていたが。 

灰院鐘 :ニコ……

アトラ :
「何となくこっちのがイメージの中の軍人さんっぽいなぁ。というか。
 若そうなのにしっかりしてて偉いんだぁ」

 それを言い出すと、“テンペスト”の面々以外は結構年齢低めかなあ、とも思うが。

ナタリー・ガルシア :「はいっ!宜しいでしょうか!」

まっすぐに手を挙げて、授業でそうするように問いの許可を求める。

灰院鐘 :「どうぞ!」なんでか返事する

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 探りを入れるような勇魚の眼差しがダンを見つめた。
 それは疑惑の故のようでもあり。
 或いは何か違和感の由来を探るようなまなざしでもあった。

ブルー・ディキンソン :「おや……積極性に満ちてますねえ」
 ぼそぼそ。
 ……彼女の質問は初々しさに満ちているだろう。
 猫を殺す好奇心じゃないといいが。

ナタリー・ガルシア :ありがとうございますわ、の微笑みを向けて、真っ直ぐ手を挙げたまま尋ねる。

「遺産には、何かしらの代償があると聞きます――不躾な質問で申し訳ありませんが、それはどういったものでしょうか」

灰院鐘 :「えっ……とお」

灰院鐘 :おとなりをうかがう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 しかし、それもつかの間。割って入った質問に応答する形で、振り切るように視線が切られる。

「……詳しいですね。何処からそれを?」

ナタリー・ガルシア :「オーヴァードやレネゲイド、色々と分からない事は多いですが、わからないなりに勉強中ですので」

敬愛するお姉さまが関わっているものについて調べていたことに、多分な私的好奇心があったことも確かではあるがここでは伏せておく。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :ショウ・カインの方を見たのち、二人の様子を見るが、“まだ”止めない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「その点についても禁則となります。この力は、私の一存で振るっていいものではない。
 ……ただその代償は、精神的な要素に関わるものという答えで、此処は収めていただきたい」

灰院鐘 :気遣わしげに伺っているが、こちらも口を挟む様子はない。

ナタリー・ガルシア :「……そう、ですか」

ゆっくりと挙手を下ろして、ほんの少しの逡巡。

「いえ、すみませんでした……禁則であれば仕方ありませんわ」

ナタリー・ガルシア :「……………」

ナタリー・ガルシア :「ですが、お姉さまの部下ですもの!あの公園でのお手並みも鮮やかでしたし――己を見失うような方には見えませんわ」

それに、と。
大人と子供程も差のある、彼女の隣に座る青年を見やる。

    パートナー
「貴女の 相棒 も頼りになりそうな方ですし、私も……私達も、精一杯お手伝いしますわ!」

"アダム" :
 ──まあ、言えないだろうね。そりゃそうだ。

"アダム" :
 遺産の代償とは、理論の上では『衝動』と同じだ。
 ジャームの中にはそいつの余波だけで相手の衝動を一時的に書き換えるモノもある。強力な外付けのレネゲイドが特定の指向性を以て干渉する、言ってみりゃあ衝動が二つ存在するようなものなんだよ。

ナタリー・ガルシア :「…………」

表情を動かさず、内心でなるほど、と首肯する。
それ故に強力で、それ故に不安定。

"アダム" :
 そして衝動はオーヴァードなら大体は知られたくないもんだ。
 連中だってそうだったろう? だいたいの奴らが隠してた。キミもお澄まし顔でほんとは全部ぶっ壊したいなんて、病気のせいだからとて言いにくいよな。
 おいそれと自分の恥部を晒せるもんか。

ナタリー・ガルシア :「………………」

もう少し言い方というものがありませんの?

SYSTEM :
 言うだけのことを言うと、アダムはさっさと気配を消してしまったようだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……当然です。
 私はあの人から薫陶を授かった身。鍛えた力にも矜持がある。
 寧ろ、あなた達こそ前に出過ぎないように」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「テンペストや我々UGN本部と違い、あなた方は民間人だ。あなた方にはあなた方の生活がある。
 飽く迄そのために戦ってきた人間とは違う。
 ……正式に力をお借りする身ではありますが。保身を第一に考えるように」

ブルー・ディキンソン :「(……こっちもステレオタイプ)」

灰院鐘 :「……君のことが心配なんだって」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「勿論ですわ、私自身を守れずして誰かを守れるはずもありません――ですが、今は力及ばなかったとしても、貴女のいる場所はいつか越えなければならない場所です」

称賛と尊敬、ほんの僅かに滲む幼い嫉妬。
未熟な己を受け入れて、それでもこの身に不相応な願いを唱える。

「ですから、頼りたくなったら頼ってください――とりあえず、世間話でもストレス解消にはなるかもしれませんわ」

アトラ :
(にしても、遺産。代償かあ。そういうの、管理する側もやっぱ大変なんだ。
 使うのだって当然、…… ……うぅん)

 それだけの力ある代物でもある、ということだ。そんなものに頼る勇気は自分にはない。
 己の心の在り方にまで作用する、というのが最も怖い。そりゃ、どうしても必要なら手は伸ばすのだろうが。

ダン・レイリー :
 ………越えなければならない場所か。
 自ら此処に踏み込んだ曰く“見習い”の切欠と関係があるのか?

ダン・レイリー :
 それに………。
 いいや、止しておこう。
 今言うべきがあるとすれば。

「僕は彼女の意見がズレたものだとは思っていない。
    ・・
 僕らはそれが仕事で、それが生業だ」

ダン・レイリー :
「………だからイーブンとしておこう。ナタリー・ガルシア。
 とりあえずのところは、忠告は忠告と受け取れ」 

ダン・レイリー :彼女が民間人のきみに出した忠告も聞いてやれと、その気があるなら意気は汲んでやる(やってくれ)の意思表示で、纏めのお節介は焼いておく。

ナタリー・ガルシア :真っ直ぐな視線を、移動させる。
向けられた言葉は正しく、我儘を言っているのは己であるということも、少女は理解していた。

   ・・・
「――いいえ、大尉。私は私の目的があって、この作戦に参加している、参加するつもりです。そうである以上、貴方達に庇護される存在であってはいけません」

ナタリー・ガルシア :「役割として守られることはあっても、民間人として保護してもらうためにここにいるわけではありません――私にも出来ることがあり、成せることがある、だからここにいるのです」

ナタリー・ガルシア :
ですから、と、少し困ったように眉を下げる。
己の言葉が感情論であり、彼らの誇りを軽んじたい訳では無いことを上手く伝えるにはどうしたら良いか

灰院鐘 :
「いいよ、話して」

 言葉みじかに背を押す。

ナタリー・ガルシア :背中を押されて、小さくうなずく。

「戦うことは、当然のことではありません――それが仕事で、自ら選んだ道で、心身ともに強く、鍛え上げられていたとしても、傷つけば痛く、苦しいのですから」

言葉を選び、区切るように、ぽつりぽつりと、話す。

「ですから、頼ってください。傷を癒やすためでも、戦場を一時忘れるためでも、戦うための意志を再確認するためでも良いのです――ただ、私は、全ての責任を背負わないで欲しいのですわ」

灰院鐘 :
「……だって」
 勇魚に水を向ける。まるで彼女にこそ、その言葉を届かせたがっているように。

ダン・レイリー :「………そうか」

ダン・レイリー :
 ………なにか理由があるという部分は、
 嘘ではないな。

 それはオーヴァードのレネゲイドなんていう、御伽噺の空想を使わずとも、目を見れば、言葉を辿れば、わかることだ。

 そこだけに限れば、彼女は“ガルシアの御息女”なんていう守られる人ではない。 

ダン・レイリー :
 ………。
 ・・・・・・・・・・・・
 ただし俺はそれに頷かない。
 

ダン・レイリー :………少なくとも話すべきことは出来たがな。GM。

ダン・レイリー :気の早い話だが、ここでナタリー・ガルシアにロイスを取得したい。出来るか?

GM :問題ありませんが、一応ミドル直前に全員にPC間ロイスを取る予定となってます
枠を気にするなら先んじて取得する形で行けますが如何しましょう

ダン・レイリー :…そうだな…

ダン・レイリー :分かった。

ダン・レイリー :先んじて取得する枠にするかは一先ず保留にさせてもらうが………僕自身、いまの彼女に思うところがある。

ダン・レイリー :取得内容は ○P有為/N憤懣。

GM :了解ですです
キャラシートに記載お願いしまーす

ダン・レイリー :ありがとう。手間を取らせたな。

ダン・レイリー :
「…分かったよ。
 その点の誤解に関しては、僕も詫びよう」

ダン・レイリー :………言った言葉が聞こえなかったわけでも、完全に無碍にするわけでもない。それは“覚えておく”の意思表示だ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「………………」

 相手の頑なな様子に訝しる視線をわずかに向けはしたが、それもつかの間。
 この言葉が自分に向けた言葉であり、彼女なりにどうにかして届かせようと慎重に言葉を選んだ結果のものであると理解した勇魚は、静かにそれを受け止めた。 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 相手の善意に気付かない訳ではない。己を案じるものであることも、彼女は分からないでもなかった。
 しかし……
 ・・・・・・・・・・・・・・
「私はそれを当然としてきました」

 静かにその言葉にかぶりを振る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

「この苦しみ、この痛みが、特別なものと思ったことはありません。
 王には王の、戦士には戦士の苦しみがある。私のそれは、あなたの抱えるものと形が違うだけ」

灰院鐘 :「…………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あなたに為せることがあり、私に為せることがある。
 すべての責任を負う訳ではありません。その時が来たら、きっと頼ることになると思います。
 ただ……」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
「王の苦しみと戦士の苦しみは、きっと分け合うことは難しいでしょう。
 所感ですが、そういうものだと思います」

ナタリー・ガルシア :
         ・・・・・・・・
「――はい、それもよく知っています」

少し、悲しそうに微笑む。

「ですが、諦めるつもりもありませんわ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「強情ですね。
 ……分かりました」

ナタリー・ガルシア :
「……私は、こう見えて欲張りですから」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そのようだ。……けれど、あなたを拒む理由も私にはない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「考えておきます。恃みとさせていただくと言っても、私はまだあなたの名前しか知らない身だ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「話を戻しましょう。
 今はお互いを知る場の筈」

ナタリー・ガルシア :
「はい、私も、今の私では誰にもこの言葉が届かないことは心得ています――そうですわね、話が脱線してしまいました」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「いえ。ただ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「手を伸ばしてもらったこと。
 ……そのことについては、どうか礼を言わせてほしい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ありがとうございます。
 今後状況がどうなるとしても、それだけは伝えておきたかった」

ナタリー・ガルシア :「いいえ、こちらこそ――ほんの少しでも貴女が立つ助けになれたのであれば幸いですわ」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
 ………こういう娘か。
 ナタリー・ガルシア。

 戦う人間の苦しみに寄り添う善意を否定はしないが、問題はその自覚だ。
 少なくとも僕にはそう映った。

ダン・レイリー :
 彼女も、その繋がりにあの”リリア・カーティス”がいた………。
 俺自身の逸りや、下衆の勘繰りであればいいが。

ダン・レイリー :「本題に戻ろうか。それでいいかい?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「構いません。寧ろ脱線させて申し訳ありませんでした。
 次は、順番から言って……」
 ちら、と相方の方を向く

ダン・レイリー :
「ン。僕もいらない世話を焼いた。
 老婆心だ」

ダン・レイリー :「…ショウ・カインだな」

灰院鐘 :
「──」

 わずかな空気の揺らぎに溶け込むほど、ささやかな吐息があった。安堵か、微笑か。誰に拾われることもない、安穏の色。

灰院鐘 :「えっ 僕?」

灰院鐘 :「……僕?」

灰院鐘 :この流れから……僕……? という心細げなまなざし。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :僕は無言できみの肩に手を置く。

ダン・レイリー :すまん。順番から言ってそこが自然なのは事実だ。

灰院鐘 :チラ……と隣に救いを求める。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :何か問題でも。

灰院鐘 :ありません……

紅 蘭芳 :(助けを欲してるのわかってない面)

灰院鐘 :3dx+4 ふくつのいし (3DX10+4) > 7[2,3,7]+4 > 1

灰院鐘 :……よ よし! がんばるぞ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :はい、頑張ってください。

灰院鐘 :
「灰院鐘、コードネームは"ラフメタル"。日本の京都支部で訓練を受けて、少し前に本部へ異動になったんだ」

灰院鐘 :
「オーヴァード歴は一年もないから語るほどの経歴もない。僕のほうこそ、君たちから学ぶことも多いだろう。
 いろいろと至らない身だからね。ぜひとも助けてくれるとうれしい!」

灰院鐘 :
 本部エージェントにあるまじき発言に、ややあって気づいたらしい。あ、とまるく開いた口に手を当てる。こほんこほんと慣れない咳払い。

ダン・レイリー :「(………一年もない………?)」

灰院鐘 :
「もちろん僕のほうも、君たちの援けになりたい。うん──前後したけど、一番はそれだ。遠慮なく頼ってね」

 おおらかな微笑。何かと手伝おうとしては返って仕事を増やす男だと知っているのは、この場では勇魚ただひとりだ。

アトラ :
「結構風格あるのに意外っすね……」

 1年。でも確かに体格の割にほわほわとしている。

ブルー・ディキンソン :「(……異色の経歴ってやつ)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……教導にあたった身として所感を述べさせていただくと」

 補足するように付け加え

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 シンドローム
「 症 状 の傾向からして身体能力に長けています。
 主に膂力面で大きな恩恵を授かっていますが、半面力を御しきれていません」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「彼個人の性質的な面もありますが、あまり細やかな作業は得意とするところではないということです。
 レネゲイドコントロールの訓練課程のキュマイラ罹患者にまま見られる傾向ですが、その点はご留意を」

 ……流石に直球で『手先が不器用である』などという訳にもいかない。彼女なりに可能な限りオブラートな言い方で付け加える

ダン・レイリー :
 訓練期間があると考えたなら、その実戦経験は然程でもないはず。
 UGNの活動範囲も、本人が語るように地方の支部があり、此処は言うなれば最前線だ。

 置く理由は三つある。
 天性の才能、庇護の必要性。そして───。

ダン・レイリー :
 ………最後については、考えるだけ、ない影を訝しむことになる。悪魔の証明だ。
 ・・
 アレは言わされている台詞ではなかったように思う。今は置いておくか。 

ダン・レイリー :
「参考にする。それに適材適所だ。
 前夜の行動力を思えば、活かせる長所の方が多かったよ、ショウ・カインは」

「僕からも、改めてよろしく頼む。
 きみの素直な感受性は分かって来たつもりだ」

アトラ :
「ああ~。でもちょっとわかる、こまい作業得意そうには見えないもんなあ。
 確かに確かに、咄嗟の動きはすごかったし」

 完全に見た目で判断してる素振りではあるが。

ナタリー・ガルシア :「昨夜の対応はたしかにパワフルでしたわ!」

うんうん、と大きくうなずく

ブルー・ディキンソン :「ええ、充分期待できる働きでした」
 見た感じでは──この編成で重要なパワー特化というところだ。
 そこはさすが、キュマイラの能力を持つゆえだろう。

「活かせるところで活かせるから、それは得意な力なのです」

灰院鐘 :
「お恥ずかしながら……とはいえ、向かないことのほうが多い身だ。何事もやれと言われたらがんばろう」

灰院鐘 :
「……そうかな、そうだといいな。……ちょっと照れくさいね」
 くすぐったそうに肩をすくめる。

灰院鐘 :
「ああ──それと。みんなとは歳も近いことだし、気軽に接してほしい」

 この場合の"みんな"はナタリーやアトラにかかっていることは、視線の動きからも明らかだった。
 おそらくは外部協力者たちに気を遣った自己申告。

アトラ :「えっ」 そうなの?

ナタリー・ガルシア :「……ちなみに、何歳ですの?」

ダン・レイリー :ティーンだと事前の資料で確認しているので静観。

ブルー・ディキンソン :「(……外見で見抜かれた? それとも資料に目を通してた───まあ後者か)」

灰院鐘 :「ええと……17歳!」

ブルー・ディキンソン :「じゅう───なな」

紅 蘭芳 :
「じっ……!?」

アトラ :「うそぉ!」

ナタリー・ガルシア :「2つ年上ですのね!」

灰院鐘 :「そん……なに!」そんなに……!

灰院鐘 :「そうなの? それじゃあ君は2つ年下さんか」

ブルー・ディキンソン :「驚いた。雰囲気も大人びてるからもう少し上なのかと……」
 はたちくらい。
 朗らかさが子供のそれとは思わなかったからだ。

ダン・レイリー :「背恰好で言えば立派な大人だからな。資料で見た時もそうだが、実際に挨拶を交わした時にも驚きはしたぞ」

ナタリー・ガルシア :「ええ、15歳ですわ!」

紅 蘭芳 :
「大学生くらいかなーーー、なんて思ってたのに、はえ~……」

ナタリー・ガルシア :「……ということは、ハイスクール通いですか?」

灰院鐘 :「挨拶の……ああ、うん! あのときはお世話になりました!」つやつやした笑顔

アトラ :「そう言われてから聞くとこの雰囲気も納得かも」 納得かなあ……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
   シンドローム キ ュ マ イ ラ ブラ ッ クドッグ
「彼の 症 状 は代謝強化と磁 力 制 御。
 得意とするのは治癒力と生命力を活かした前衛です。高身長と筋肉も、症状から来る身体的特徴として顕れたものでしょう」

ダン・レイリー :
「その二つか。
 後者の能力傾向とは組んだ経験も多いが………先の戦闘を見る限り、テンペストでは見ないタイプだな」

ダン・レイリー :それから“お世話になりました”には軽く笑って返す。親愛を受け取らないほど器量の狭い男でもないからな。

灰院鐘 :
「ううん、覚醒したときに記憶と認識に齟齬が出るようになったから──」

 ええとと思案するしぐさのあと、まあいっかと放棄する笑顔。

「──戸籍の処理とか、まあいろいろあったんだ。ほとんど人に任せきりだったから、詳しいことは知らないけど」

灰院鐘 :なんとなくジャケットの前を寄せて背もたれに深く背中を押しつける。はじらい。

ダン・レイリー :「覚醒した時に? …」

ダン・レイリー :
「ないものはない、というのも前を向く手段のひとつだ。オーヴァードの目覚めというのはともかく、目覚めの影響は予測もつかない。
 取り戻す機会が巡るか…仮に巡らずとも、培っていけるものがあるといいな」

灰院鐘 :「特に不便もしてないしね」ありがとう、と首肯。

灰院鐘 :
「昨晩のやり方もあまり馴れてはいないけどね。前はもっとシンプルにやってたから。……と、話が脱線してしまうね」

「あんな風に守ったり庇ったりが今のお仕事です。勇魚くんの真似ではないけど、巧く使ってくれるとうれしい」

ダン・レイリー :
「了解した。
 付き合いも長くなることだ。先の言葉を反故にはしなくないからな」 

ダン・レイリー :
 ………しかし、当人がその膂力を、直接的な武器として使う発想はないのか。
 あるいは、それを戒めとしているのか? 出来たとしても、誇るものではないと。

ブルー・ディキンソン :「立派なガードマンですねえ」

ナタリー・ガルシア :「頼りにしていますわ!けれど、ご自分の体も大切になさってくださいね?」

アトラ :「アテにしちゃおう!実際凄いの見せてもらったし」

灰院鐘 :「大丈夫! 頑丈だから!」ガードマンです、のうごき。アテにしてもらえてたいへん嬉しげ。

ダン・レイリー :「…し過ぎない程度にな」

ブルー・ディキンソン :「程々です、程々♡」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ダン大尉の言う通りです。
 性能という面で観れば得難いものがありますが、それに胡坐を欠いていては瞬く間に打ち破られかねない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ペース配分について、しっかり意識して立ち回ってください、"ラフメタル"」
 

灰院鐘 :「がんばります……」ション……

紅 蘭芳 :
「まあまあ、前線でうまくやっていけてるぐらいには実績のある希代のルーキーってことで、私も頼りにさせていただきます。
 よろしくおねがいしますね」

灰院鐘 :「! がんばりま──」さっきも言った! ので、ちょっと黙考して「……す!」思いつかなかった!

ブルー・ディキンソン :「あらあら」
 微笑ましい顔。

紅 蘭芳 :
「うんうん、元気があってよろしい!
 よし、じゃあ次は私の番ですね」

ナタリー・ガルシア :

紅 蘭芳 :
「私はUGN本部所属。人呼んで『飄颻天華』……
 コードの通り、元香港特別行政区ガーディアンズ"丐幇"、戦闘部隊『武林』出身のエージェントです。

紅 蘭芳 :
    ホン ランファン
「本名は紅 蘭芳といいます! よろしく!」

灰院鐘 :わ~、と拍手

紅 蘭芳 :
「あ、補足すると『武林』というのは中国ガーディアンズの侠客達が集う戦闘組織のことです。
             リバースクーロン
 香港九龍城塞跡地、今では裏 九 龍って言われてる特別区で集まった自警団"丐幇"から派生した……拳法家たちの集う戦闘組織なのです!」

ダン・レイリー :「前身からそのまま在籍か…古株かつ出世株だったわけだな」

ブルー・ディキンソン :「……へぇ、中国の。
 如何にもといった感じですね」

アトラ :「戦闘部隊」 ほへ~

灰院鐘 :すごそう!

紅 蘭芳 :
 シンドローム  ハヌマーン  ノイマン クロスブリード
「 症 状 は軽身功と聴勁の混 血 種、白道峨眉派槍術による白兵戦を得意とします!
 長物を遣う関係から要人警護などをこなしていました。多対一であれ、《獅子奮迅》で一気に敵陣を吹き飛ばして見せます!」

紅 蘭芳 :
「元々はナタリーちゃんの能力指導員としてついていましたが、エージェント・ハーヴァマールの意向により今回の任務に抜擢される運びとなりました。
 今回はUGNの大人代表として……
 の名目は既に瓦解し始めてる気がするケド……
 この軽業で皆をサポートしていきたいと思います。
 では皆さん、よろしくおねがいします!」

ダン・レイリー :

灰院鐘 :
「僕たちは同じ本部所属だけど、一緒の任務につくのはこれが初めてなんだ。顔見知りなのはたぶん、そこの彼女……ナタリーくんだけかな?」と周囲に補足しつつ。

灰院鐘 :
「うん、よろしくおねがいします。担っている分野も近そうだし、後輩としていろいろ学ばせてもらえると嬉しい」

ナタリー・ガルシア :「はい、折を見て能力の訓練をしていただいています!師匠(せんせい)にはよくお世話になっていますわ」

ダン・レイリー :
「成程、彼女の教官だったか。
 あらかじめ受け取っていた情報では、主に教導役とは聞いていたが………同じ職場だからとて、同じ任務に就くわけではないからな」 

ダン・レイリー :
 10代の人間のみを出向させることを避ける建前の役、という可能性も考えていたが………。

 設立者を思えば親欧米的な節のあるこの国に、彼方のガーディアンから抜擢される人間だ。
 考えられる可能性は二つあるが、恐らく悪い方ではないだろう。

ダン・レイリー :
「此方こそよろしく頼む。UGNの流儀について、各々すり合わせの必要もあるしな。
 瓦解しかけと自覚がある分については、ゆるりと挽回してもらおう」 

紅 蘭芳 : 
「そうですね、レネゲイドコントロールの分野で私が教導にあたっています。
 民間人のレネゲイド操作に関して教えるのも我々UGNの重要な任務ですし、何より彼女はエージェント志望ですから」

紅 蘭芳 :
「未だ化境に至らぬ不徳の身ですが、そこそこ色んな立場を転々とした経歴もあります。
 色々教えられることもあると思いますから、そうした面でも頼って行ってくださいね」

紅 蘭芳 :
「……! はい、しっかりばっちりこなして、是非とも挽回させていただきます!」

ダン・レイリー :
「それについて右も左も分からぬにさせては、撃ち方の分からない銃を持ったままうろつかせるようなものだからな」

ダン・レイリー :「その言葉、覚えておこう」 信用させてもらうよ、の意。

アトラ :
「センセー役かあ お嬢様もけっこー志高い感じだし、第一印象とはちょいズレてるけど……。
 ヨロシクお願いします。折角なんでウチも大人たち頼りますよ~」

ナタリー・ガルシア :「師匠はとても教えるのが上手で頼りになりますわ!私がここまで能力の熟達出来たのは師匠のおかげです」

ダン・レイリー :「…そこは生徒のお墨付きのようだな」

ブルー・ディキンソン :「みたいですね〜」

紅 蘭芳 :
「えへへ、ありがとうございます。
 バリバリ頼られちゃいますよ!」

 ……けど、この場で自分はどのくらいなんだろう。もしかして一番弱かったりしない? などという心の声はおくびにも出さない。

灰院鐘 :「勇魚くんもほら、挨拶挨拶!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……よろしくお願いします。
 彼女たちはイリーガルです。自衛能力を有するとはいえ、不意に対処する力は我々と比べて低いと言わざるを得ない。
 今度こそ警護についてはきちんとお願いします」

灰院鐘 :「……! ……!!!!」

 勇魚くん……勇魚くん……!

紅 蘭芳 :
「が、ガンバリマス……」

 刺さる!刺さる!!棘が!!!
 声にならない悲鳴は風に乗ることもなく心中に留め置かれる。

ダン・レイリー :
.   アメとムチ
「(“Carrot and Stick”だな)」

灰院鐘 :
「ええと! 気を……気を確かに じゃない 取り直して 続き、やっていこう!」ねっ!

紅 蘭芳 :
「ハイ、オネガイシマス……」

灰院鐘 :アア……

ナタリー・ガルシア :「そうですわ、元気をだしていきましょう!いつものように」

ダン・レイリー :
「そうだな、続きと行こう。
 イリーガルの二人のことも、きみ自身…ナタリー・ガルシアについても知る番としたい」

ダン・レイリー :
 ………どちらかというとイリーガルの二人が気になるからだが、これ以上続けていると、どちらが大人で子供なのか分からない背丈になってしまいそうだ。

アトラ :
「ほんじゃまあ、ウチから!
 つっても恥ずかしいところ見られた人らもいるから、此処に居る事情は概ねバレてそうなんですけども……」

アトラ :
「んで……え~っと……実は世界各地を股にかけて練り歩いてるような放浪者なので、職とか階級とかは別にないんすけど……。
 所謂旅人っす。おかげさまで色んな話やら噂やらを耳に入れることが出来まして……」

アトラ :
「その関係で、……ええと、あの。“ラクシャーサ”の情報に行き着きまして。
 偶然あの場に居合わせた感じで。此処に置いて貰ってるのも多分その関係っすよね……?」

 あの人との関係……は、既に妹と判断されてた。否定も出来ないし、そこは一旦良し。

ダン・レイリー :
             ストレンジャー
「見かけによらないな。各地で旅人をやっていたか」

ダン・レイリー :
 後半については無言の肯定を答えとする。少なからずその部分があることを否定はできないからだ。

 ………その年だ。
 レネゲイドに魅入られたのも、今より若いとなれば、触れてやる話題ではないことも想像に難くない。

 だが、ラクシャーサとの関係は“何故”だ?
 噂に聞くテロリストの急先鋒が子連れ狼だったとでも?

ナタリー・ガルシア :「どうしてお姉様を……ラクシャーサを追いかけていたんですの?」

喧嘩でもいたしましたか?

灰院鐘 :
「旅人さんかあ。こっちには何の……」

 土地土地を渡り歩いて、人々の暮らしとすれ違う。青年には想像もつかないが、空想ほど気儘なものではないだろう。

灰院鐘 :
 用事で、と言いかけたところで自己申告と追及。

「……そうか、そういえばそうだった。君、彼女に何か用事があるふうだったね。わけを聞いても?」

アトラ :
「っす。これでも今日まで生きてこれてるんで旅人の才能はあるっすよ!」

 まあ才能とかそういう話でもないが。こればかりは。

「それで、…… ……」

アトラ :
「まあ、その~……見てたら分かっちゃってるかもなんだけど、実は喧嘩別れ……というか、置いてかれちゃってまして。
 ウチとしては、その原因をはっきり聞くまでは納得のしようもないから追っかけてたと言いますか……」

 本当は、その原因の方にアタリがついているのもあるが。
 そっちに関しては不確定だ。全然、自分の言葉に嘘はない。

ブルー・ディキンソン :「あらあ。
 だからあんな痴話喧嘩を? 
 正直"ラクシャーサ"を追いかけてきた私の目に、ずいぶん微笑ましい光景が飛び込んできてしまったもので……」

ダン・レイリー :
「………」

ダン・レイリー :
 ・・
「彼女はFHの大型セル、シャンバラの上級エージェント。
 平たく言えば、テロリストの一大派閥の幹部格だ」

アトラ :「うす」

ダン・レイリー :
「そして少なくとも僕は、きみが軍人と見立ててくれた通りの行動をする。
 ………どうするにせよ、そのことだけは覚えておいてくれ」

ダン・レイリー :
 つまり、原因をはっきり聞くために此方を利用し、その後でもなお連れ戻すようなのを望むならば、叩きのめした後で僕をうまく欺けよ、という話。

灰院鐘 :「それは……つらかっただろう。よく一人で来たね」

灰院鐘 :
「……"ラクシャーサ"の実情に関しては、ダンさんの話してくれた通りだ。そして、そうである以上、僕たちは相応の対処をすることになる。……」

 ううん、と眉を寄せて唸る。かと思えば、

灰院鐘 :
「いや、今はよそう。君も僕も、話せないことは多そうだし。憶測で悩んだって仕方ない」

ナタリー・ガルシア :(無言でにこにこ)

灰院鐘 :
「──結論から言うと、たぶん僕は君を応援したいんだと思う!」

 それが結論で、今のところの決定だと笑う。

ディアス・マクレーン :
「オーケーオーケー。
 なーに、まだ向こうの調査だってロクに済んじゃいねえんだぜ?
 ここで悩んだって仕方ねえし疑ったって仕方ねえ! いっちょ当たって砕けようぜ!
 事情は分からんが、どうあれモチベーションがあるってんなら無問題よ」

灰院鐘 :そうそう! 

ナタリー・ガルシア :「そうですわ!それに、だと思う……ではなく、したい!と言い切りましょう!私は応援いたしますわ!」

灰院鐘 :ディアスさん……! ああ、席が遠くなければなあ!

ブルー・ディキンソン :「お優しい方々で良かったではありませんか」

ダン・レイリー :…二人、いや三人か。

ナタリー・ガルシア :しようとしていませんか?ハグを……

アトラ :「うお……」

ダン・レイリー :それがそのスタンスで居るのを、僕は表情は変えないで見ておく。

水無瀬 進 :
「中立意見を置くとしても半々ってとこかな。
 コリャ旗色が悪いねキャプテン」

ダン・レイリー :「…そのようだ。では、聊かの考慮をする他ないな」

ブルー・ディキンソン :「大変ですねえ」

灰院鐘 :ダンさん……!

灰院鐘 :届くんだけど いいかな……

ダン・レイリー :「そうでもないよ。自分で望んだ仕事だ」 

ナタリー・ガルシア :してませんか?ハグをしようと

ブルー・ディキンソン :「あは。
 望んだ仕事なら、責任を果たすのが大人ですものねえ」

ダン・レイリー :ミーティング中だぞ 今は落ち着きなさい

ナタリー・ガルシア :そうですわ、会議中は手を膝の上に、ですわよ

灰院鐘 :キュッ……

ダン・レイリー :「そういうことだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :それでよろしい。

ブルー・ディキンソン :「……ということみたいですよ、旅人さん?」

アトラ :
「いや…… ……まあ、うす。分かってます。皆さんの言うことも、その通りって思います。
 やることやってるのは知ってるし、……ウチの立場で、それを何とかするのを止めるのもおかしな話ですし。
 だから、ウチをこの作戦に混ぜてくれてる時点でハッピーってわけで」

アトラ :
「まあ、何とかしたい分は隙見て何とかします!伊達に一人で生きてきてないし!
 応援分は無駄にしないように頑張ろ!って感じで!」

 うーん、善い人たちだ。逆に申し訳なくなってくる。

アトラ :
「……あっ、それでそれで。一応続きっ───……の、前に!
 ウチの名前!知らんヤツの名前知らんままなのは良くないと思うんで……アトラって呼んでください!
 もしくは……皆さんに合わすなら“T³”?で……」

アトラ :

               ブラム=ストーカー   ソ  ラ  リ  ス  
「ええっと……シンドローム?は血に関してと、薬品作りとかなんとかっす!
 でも見ての通りの細腕なので、もっぱら他人の血とか使わせてもらう方が助かっちゃいます!」

 そんときは誰かヨロ!

ダン・レイリー :
「安心した。
 これで名前を名乗らず自己紹介を終えたら、どう反応したかと思っていたところだ」 

ブルー・ディキンソン :「へぇ、そのコードネームはなんの略称で?」

灰院鐘 :「有り余ってるよ! ぜひどうぞ!」

ナタリー・ガルシア :「私、A型ですが大丈夫ですか?」

ダン・レイリー :(先程のペース配分という言葉をもう彼方に飛ばしたのかもしれん)

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「まったく……」

アトラ :「わはは」 良かったぁ名乗るの思い出せて。

アトラ :
「トラベル・トラブル・トラベラー!みたいな感じっすよ!
 血の種類にも問題なし!そのときにはまあ、有り余ってるらしいショウさんから借りちゃおうかな」

 意味が重複してるのは一旦はわざとだ。
 あんまり現時点では深い意味を持たせてるつもりはない。……と、しておこう。

ブルー・ディキンソン :「素敵」

ナタリー・ガルシア :「そういえば、トラベラー……世界を股にかけていると仰っていましたが、これまでどこに?」

アトラ :「此処来る前はアルゼンチンかなあ 色んな人のお世話になっちゃってたよ」

アトラ :(……あっパスポートとか見られたらウチも晴れて正真正銘犯罪者か?)

ナタリー・ガルシア :「アルゼンチン!とても遠くから来ましたわね……向こうは暖かそうですわね」

ブルー・ディキンソン :「あの国は広いですしねえ」

灰院鐘 :会話が弾んでいるのを楽しく見守っている。

アトラ :
「言って、あんまりお嬢様みたいなカッコの人が行く土地でも無かったかなあウチが居させてもらってたとこは」

ブルー・ディキンソン :「パタゴニアの方でしょうか。砂漠の多い地方ですし、確かに不釣り合いではある……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :腕を組みながら黙って話を聞いているようだった。
少なからず彼女らが何かして利益不利益が生じるなら、その時に然るべき行動を取ればよい。彼女もそう考えているようだ

ダン・レイリー :「ともあれ…」

ダン・レイリー :
「そう名乗るなら厭はない。
 暫しの仮家の主とも、概ねは打ち解けたようだからな。改めて、よろしく頼む」

アトラ :
「うす!ウチからは~……以上で!」

 ……彼女との関係と、自分の云々。まあ、一旦伝えておくのはこんなものだろう。

ブルー・ディキンソン :
 "ラクシャーサ"との繋がりが、具体的にどのようなものであるか、彼女は敢えて言及を避けた。
 そして、あの剣鬼への対応・処遇も含めて、ケースバイケースという形で落ち着く。
 ……落ち着かせた、という方が正しいだろうか。
 マジョリティはいつの時代も、必ず勝つものだ。

「……さて、次は私がご挨拶を」

ブルー・ディキンソン :
「既に"識別コード"は周知かと思われますが、改めて。
エルヴスプライト
 "雷霆精"ブルー・ディキンソンと申します。いわゆる、"イリーガル"としてこの場に出席しております」

ブルー・ディキンソン :
「とはいえ、この度は偶然の接触でしたので……些か、部外者ではないかと思いはしますが。
 事の経緯としては、そちらのお嬢様を誘拐途中の"ラクシャーサ"を発見、追跡に至り……というところでございます。
 
 なにぶん、私はフリーで色々やらせていただいてもらっている者でして。
 その時も、運送依頼を終えたばかりだったのです」

ブルー・ディキンソン :
「東の言葉で言うと──"棚からぼたもち"という奴でしょうか?
 合ってるかはわかりませんが、ともかくUGNの皆様が口酸っぱく指名手配していた者の顔を"見ちまった"もので。
 
 物騒な兵に少女と女が一人。犯罪の匂いがするのは当然かと」

ブルー・ディキンソン :
「なので、完全な部外者と言いますか。
 いわば"成り行き道"で紛れ込んだ次第でございます。
 もちろん、知ってしまった以上は、ご協力させていただくつもりですがネ」

ダン・レイリー :「ブルー・ディキンソン………か」

ディアス・マクレーン :
「あっ!
 聞いたことあると思ったらアレだろ、『アイアンメイデン』の!」

灰院鐘 :「あいあんめいでん?」

ブルー・ディキンソン :「あら、ご存知で?」

アトラ :
「……おお~、じゃあ立ち位置的にはウチとそんな変わらないんだ。
 いやイリーガルだかなんだかは違うけど…… ……なんすか、それ???」

ダン・レイリー :
「あれはブルースだがな。
 ───そういうボーカリストがいるんだ。知り合いに、よく言及されないか?」

 ディキンソンと言えば、アイアン・メイデンのヴォーカリスト。
 ずいぶんあからさまな名前だ。
 そりゃあ、何十億と生きる以上、偶然ってこともあるだろうが。

 ………少なくともお嬢様との直接的関係は“ない”らしい。そんな便利で物騒な家政婦やいない。
 最も軽い可能性に照らし合わせたならば、この人なりの冗句と判断していいか。

ブルー・ディキンソン :「"世界で最も著名なハードロック・ヘヴィメタルバンド"の名前でございます。
 私の両親、どうも大ファンだったらしくて。生まれた子供に、ヴォーカルの名前を捩って付けるなんて酔狂ですよねえ」

ブルー・ディキンソン :「ま、有名人の名前に肖って、というのは珍しくもない話ですが」

ダン・レイリー :
「そりゃあな。ジンクスはジンクスだが、誰もがそう切り分けられるほどだったら、世の中もう少し息苦しいさ」

アトラ :
「ほへ~」

 あんまり触れてきていない分野の話だ。さっぱり知識がない。

灰院鐘 :
「ほあ~」

 なるほどなあ、と頷く。まったく分からないけど、感覚的にかっこいいものという感じはする。

ダン・レイリー :合唱か?

アトラ :歌トークって意味じゃ間違ってないんじゃないすか?

ディアス・マクレーン :
「"第七の予言"は名盤だぜ、いっぺん聞いてみるか?」

ブルー・ディキンソン :「ふふふ! 両親が酔狂で付けた名前とはいえ、私も今や立派なフリークなもので。
 ディアス様とは後ほど話が盛り上がれそうですわ♡」

ダン・レイリー :
「鉄火場の真っ只中でなければいいだろう。
 そういうのは、やつが一番詳しい。接点があって何よりだ」 

灰院鐘 :なかよし!

ディアス・マクレーン :
「車ン中でよく聞くんだよ、歌は世界を繋ぐってな!」

アトラ :
「良いっすね、そういうのも。
 ボディランゲージとか以外で通じ合える部分があると色んなとこで役に立ちそうで」

ブルー・ディキンソン :「ま、そうですね。
 何かしら文化的接点の一つでもあれば、このような混成部隊でも"まとまり"が出来るかと」

「仲良くやれるのなら、それに越したことはありませんもの」

ダン・レイリー :
「そうだな。夢のある話なのは間違いない。
 分からない言語だろうと、雰囲気だけでも伝わるものもあるからね」

ダン・レイリー :
     .        エルヴスプライト
「時に───聞いて構わないか、“雷霆精”。
 いや、ブルー。きみを称する呼び名はこれで三つ目だな」

灰院鐘 :……みっつ? 首を傾げる

ブルー・ディキンソン :

ブルー・ディキンソン :「ええ、どうぞ?」

ダン・レイリー :
「三つだったろ。ほら、メイドさん」

 最もその呼び名は諧謔と受け取って良さそうだが。
 ナタリー・ガルシアは彼女をそう呼んだ。知っている家政婦の呼び名ではなく、職業を指す名として。

灰院鐘 :「ああ」ぽん、と手のひらを打つ。

ダン・レイリー :
「………僕個人が聞きたいことは、それから引いて二つだな。
 運送依頼というのは?」

アトラ :「そういえば確かに」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
    カヴァー
「確かに偽装にしては目立つ格好です」

ダン・レイリー :正直に言えば、恰好はもはや趣味と言ってくれた方が余計なことを考えなくて済んだんだが

水無瀬 進 :言ってるこの子も大概目立つ格好してる気がするんだよなァ

灰院鐘 :あったかくしてほしいってお願いしてるんだけど 聞いてくれなくて……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :何か落ち度でも。

灰院鐘 :ないです……

ダン・レイリー :押しきれなかったな

アトラ :おお、押し負けてる

ブルー・ディキンソン :……苦労してるんですねえ。

ブルー・ディキンソン :
 ごほん。

「ああ、それですか。
 ……実は、大変恥ずかしいお話なのですが……」

ブルー・ディキンソン :
「私、今、大変ド貧乏でございまして」

アトラ :「ド」

ダン・レイリー :「貧乏」

灰院鐘 :「ド貧乏」

ブルー・ディキンソン :
「先ほど、"色々やっている"と言ったでしょう?
 実は、会社という形でいわゆる"何でも屋"を営んでいるのですが……まあ、絶不況という次第で」

「お恥ずかしい話、表向きのアルバイトでもしないと割と大変なんです」

ブルー・ディキンソン :「それで……この格好なのも、そこに関係すると言いますか……」

ブルー・ディキンソン :「そこそこアングラの形態でしか仕事をさせてもらえず。
 2001年頃から日本で流行り出した、所謂"コスプレ"をして接客を行うところで少々。
 また、デリバリーの運送手も兼業しておりまして。運送依頼とはそのことです」

ブルー・ディキンソン :「まあ、簡単に言うと……」

ブルー・ディキンソン :「着替えてる暇がなく☆」

ダン・レイリー :「………そこまでか………」

ブルー・ディキンソン :「ついでに着替えも置いてきたままでした!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……UGNイリーガルの制度は国内のオーヴァードの管理の為という名目もあります。
 あまり公でない事業を営む人間も一部雇用しているのはそのためです。そも、オーヴァードという時点で、コミュニティから排斥されるというケースも決して少なくはない」

灰院鐘 :「ご……ごくろうさまです」

ダン・レイリー :
 仕事の内容はあくまで“貧乏だから”で通したか。
 この分では突っ込んだところで、次に出るのは守秘義務か───いま、彼女が出した理由に乗っかるか、だろう。

 そもそも、経済的余裕のある人間とみるには、
 違和感のあるところだ。 

ブルー・ディキンソン :「よよよ……痛み入ります……」

アトラ :
「おあ~ お金ない辛さはちょっと分かるけども、そんな切迫しちゃうとなあ」

 まあこっちは個人営業の情報取り扱い専門だ。あんまり同じとは考えない方が良いのだろう。
 ……それとも生活の問題か。分からないけど。

ブルー・ディキンソン :
「……ま!
 その分、偶に入ってくるUGN様からのご依頼ではお世話になっておりますから」

 ちらちら……。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :(UGNの三人の顔を、横目にすることなく思い浮かべる…)

灰院鐘 : 

紅 蘭芳 :
「はい、勿論今回の件についても報酬については出させていただきます。
 今回はおかげでナタリーちゃんの身の危険から守っていただいたこともありますし!」

ブルー・ディキンソン :
「! 
 ありがとうございま〜す!」

 アンテナのように髪の毛が回った。

ダン・レイリー :「(愉快な癖毛をしているな、この娘…)」

アトラ :生きてるんすかね?これ

ダン・レイリー :僕の知る限り、エグザイル・シンドロームというのにはそのケースがいるらしいが

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「契約の問題に関しては私からは何も。 
 先の行動は兎も角、作戦への参画を望むなら相応の危険が付きまとう故、おすすめはしませんが」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
     シンドローム
「それで、 症 状 と得意技能については?
 帯刀しているということは白兵を得手とするようですが」
 用はどの程度出来るのか。勇魚は敢えて自分の領分だけを訊ねるにとどめた

ダン・レイリー :
「契約問題については、UGNの話だからさておいて………。
 一つ目はそれで納得する。若い内の苦労は買えというが、する側からすればたまったもんじゃない」
       Mule 
 そも、饒舌な運び屋などそうはいない。
 見方を変えれば、    フィクサー
 こいつは信用の価値を知る請負人だ。

「二つ目については…先に言われたが“それ”だな」
 
 もっとも本当に妙な部分はそこじゃないが、
 これを精査する必要性は今はないだろう。

灰院鐘 :
「……うん、確かに危険だ。昨夜の件もそうだ。あなたが交戦の上、追跡を続行したと聞いたときは驚いたよ。おかげで彼女を救えた手前、えらそうなことは言えないけど──と」

灰院鐘 :だいじなことだね、と隣で頷く説明丸投げ男。

ブルー・ディキンソン :
「……」

 ───オフ。

ブルー・ディキンソン :
「……勿論、報酬目当てという側面がないわけではないですが」

ブルー・ディキンソン :
「私が"ラクシャーサ"の追跡を続行したのは、
 ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
 あの時、ナタリーさんを見捨てられなかった。
 それだけですよ」

「追跡を切り上げて以降を委託することもできたとは思いますが。
 一度切り結んだだけでも彼女は恐るべき強敵──故に、何もケアがないわけではない。
 リスクを冒してなお、伝え続ける行動に意味を見出したからです」

ダン・レイリー :………

ダン・レイリー :僕はそのまま様子を見ていよう。二つ目の返答もまだだからな。

ブルー・ディキンソン :
「それにご安心を。
 私の"会社"は何でもやります。何でもというのは雑事から荒事に至るまで。
 社長の私と、社員数名、相応の訓練とかしちゃってますから」

「さてさて! そんな私の実力と能力の程についでですが〜?」

灰院鐘 :「ですが~?」

アトラ :「ですが~~?」

ブルー・ディキンソン :
「──この通り☆」
 席を立ってくるん、と一回転。
 彼女の身に纏うメイド服の──主に肩周りの小さなスリットから、二基ほどの"推進器"が展開される。
 
、   、  、 サイボーグ
「私はある程度、体を義体化しております。
 即ちブラックドッグ、それが私の一つ目の症状<シンドローム>です。
 私の場合は、いくつか自分の体にこのような装備をインプラントしてあります」

ダン・レイリー :
          ハードワイヤード
「ブラックドッグの…機械化分野か。
 仕事道具の持ち運びに困らない理由は分かった」

アトラ :
「おぉ~ カッコよ~い」

 同時に便利そうだとも思う。まあ、自分でそういった拡張パーツを扱い切れるとは思わないが。

ブルー・ディキンソン :
「いえーい、ぴーす☆
 ええ、という感じでオーヴァードとしての身体能力を、義体によって更に補強しております。
 そして、その体を駆使するための頭脳を兼ね備えちゃってます。
 カテゴリとしては───ノイマン、というところですね」

ブルー・ディキンソン :
「私、仕事の都合上──自分の脳を介してネットに繋ぐことも無くはないので。
 高度な情報処理能力が求められますから、うってつけの症状だったと言えますね」

「もちろん、戦闘行動においても頭脳の良さというのは強みになります。
 勇魚さんがご指摘なされたように、私の得物は刀。白兵戦を得意とします。

 ま、ちょっとした"剣術"というものを習っていたものでして。
 自称するのも変ですが───達人といっても差し支えないかと」

灰院鐘 :「達人! すごくロマンのある響きだ」

ブルー・ディキンソン :「でしょ〜? 
 ま、流石に"遺産”を持ち出されるとどうしようもないのですが。
 それでもある程度、いえ及第点以上の活躍は保証できるかと」

 ……要するにラクシャーサのことだ。
 あのカーチェイス中の一幕は、あちらが本気でなかったと言わざるを得ない。
 どこまで通用するかはさておき、ぼろ負けすることはなかろう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「重心の置き方でそれとなく分かりましたが、ノイマンによる処理能力で義体を精密動作させているということですね。納得がいきました」

紅 蘭芳 :
「うんうん、中々の功夫を感じました!」

灰院鐘 :功夫! 達人同士だと感じとれるものなのかな

灰院鐘 :あとで僕のぶんも測ってもらおう 勇魚くんもどうかな

紅 蘭芳 :え、あ、いや

紅 蘭芳 :(自分のみじめさが浮き彫りになるからやりたくない……!!!!!!)

アトラ :
「あ~。経営者やってるんなら賢さも要りそうとか思ったけど……そういう使い方かあ。
 ウチは撃ったら終わりだしやって弾道はかるだけだしなあ。大変そうだ」

アトラ :功夫ってからだのつくりとか健康状態とかも分かるもんなんすか?便利だなぁ

ダン・レイリー :
「ノイマン・シンドロームの常として、スペックの引き出し方の手慣れたやつが多いというが………」

灰院鐘 :すごいね 功夫

ダン・レイリー :
「きみもその部類か。理解した。
 彼女もそうだしな」

 功夫…というより“あちらの国”に、
 あまり良い思い出はないのだが。

ブルー・ディキンソン :「功夫……ええ、そういうものですネ!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :あなたに足りないものです。他人事と思わないように。

ダン・レイリー :
「であれば、重荷を乗せ過ぎない程度にアテにしたい。
 その偶然を切り抜けた判断のお蔭で、いまこの状況があるのも事実だからな。よろしく恃むよ」 

灰院鐘 :(があん……)

ブルー・ディキンソン :
「ま、頭の使い方は人それぞれですがネ。
 アトラさんの言った通り、社長としても使える症状であることに間違いはありませんから。
 全ての症状から伴う能力は適材適所、使い所の見極めが大切といいますから───……」

「……ええ、わたしも正しい判断ができたと実感している次第です」

ブルー・ディキンソン :「ああ、後──」

ブルー・ディキンソン :
     ・・・・・
「──実はさっきまでの敬語も、このチョー良い頭で仕組んだものなの。

 こんな服装だからね、メイド喫茶の口調に矯正してたらそれが維持されちゃったみたい。
 
 皆さんよろしくネ?
、   、   、   、  ・・・
 時と場合によるけど、なるべくあたしは堅苦しいのはナシでいきたいナ!」

ブルー・ディキンソン :
 ぶい。

ディアス・マクレーン :
「おおおおおー!」

ダン・レイリー :
「ああ。………構わないよ。
 それできみの義心がそっぽを向かないなら安いものさ」

水無瀬 進 :
「外人二コマみたいな身の乗り出し方したね……」

灰院鐘 :「ぜひ! 僕も気軽に話せたほうがうれしい。よろしくね」

灰院鐘 :真似して身を乗り出す。握手の流れかな

アトラ :
「ウチもあんまカタいの得意じゃないし、年上でもない限りは良いかな~って思ってるよ。
 いやまあ皆さんに対してそうではあるけども!よろしく!」

 ホントにガタッってしてる。分かり易いなあの人。ついでにもう一人身を乗り出してる。こっちは多分意味が違う。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………成程、《完全演技》」

 その時、彼女の言葉に応じて切り替わる雰囲気ががらりと変化したのに気付いたのは、熱感知知覚による心理探知を行えるからだろうか。一歩引いた位置で、彼女は相手を静かに見据えるにとどめた。

ブルー・ディキンソン : 

ブルー・ディキンソン :
「ん!」

 身を乗り出した二人のうち、サングラスをかけたナイスガイには手をひらりと振って。
 自慢の力を持つ青年には小さく──しかし、義体化していることを窺わせる、適切な握力での握手を行い。
 そのままメイド服の女は、握手をしたまま青年の肩をこつん、と小突いた。

「よろしくネ、カイくん。
 それにぃ、トラちゃんにキャプテンに、シエルさんにナッちゃんに……」

 にこ! とつらつら並べたのは……、
 本人曰く「堅苦しくいきたくない」ことを表す、あだ名での呼びだった。
 ちなみに残りは……ディアさん、ミナさん、ランちゃんと行こう。

灰院鐘 :
「カイくんかあ。あだ名で呼ばれるのなんて初めてだから、ちょっとくすぐったいな」

 細い手指を握り、かるくシェイク。……触れ合わなければ気付けなかった、生身ではありえない金属のこわばり。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そういう略し方をされたのは初めてです。
 もしやこれから先、ずっとそれで呼ぶ気ですか」

 『演技』をそれとなく披露したのは別の意図があってのことであろうが、この場でそれを詳しく語って聞かせても話を混ぜ返すだけだと判断したのか、勇魚は追及をする様子を見せなかった。
 

灰院鐘 :「かわいいと思うよ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「特にこだわりがあるわけではありません。好きに呼べばよいと思います」

ブルー・ディキンソン :「じゃ、シエルさんね!」
 カイくんの援護射撃に乗じちゃう。

「悪いもんじゃないよ、あだ名」
 くすぐったい、という彼に少し得意げな笑顔を見せた上で。

ダン・レイリー :「………」 軽く笑って様子を見守る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「既にコードネームがある筈ですが」

ブルー・ディキンソン :「堅苦しいから!」

ブルー・ディキンソン :「……ま、鉄火場ではちゃんとそっちで呼ぶから安心してよ。
 我々には必要な交流の第一歩なんだからサ〜、ニックネームって」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そういうタイプの方がいることは承知しているつもりです。
シエル
 空、というのは私というより友人を思い出すだけで」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「いえ、些事です。一先ずそれで行きましょう」

灰院鐘 :「────」

ダン・レイリー :
 ………その様子を微笑みと共に見守っていたのは僕だけでもなかったらしい。
 どうもブルー・ディキンソンは、個人としては感謝するべき善意と義心の持ち主だった。

ダン・レイリー :


 そうだ。

 あまりに、此方に都合の良い、命綱のような偶然を運んだ義心だ。

ダン・レイリー :
 個人としては感謝するべき善意でも、テンペストのいち部隊長として、その違和感を拭い去ることは致命的な楽観だった。

ダン・レイリー :
 とはいえこのブルーというイリーガルがそうである可能性はあまりに考え難い。
 もしも潜り込ませた“ダブルクロス”だとして、こんな行動に利益は見込めない。
エルヴスプライト
“雷霆精”の存在抜きでは、恐らくナタリー・ガルシアの捕捉は不可能だった。
 この一点と“エヴァンジェリン”なるエージェントの存在が、
       ボーカリスト
 この貧乏な言葉の運び屋は埋伏の毒ではないと、僕に伝えてきている。

ダン・レイリー :
 自問───
 このような思考を巡らせることの意味。

 自答───

ダン・レイリー :

「(“T³”と逆だな)」

ダン・レイリー :

 ・・・・・・・・・・・・・
 こいつは行動が信用に足るが、
 ・・・・・・・・・・
 人柄が信頼に傾かない。

ダン・レイリー :
 衣食住の足りない人間から発されたその台詞は、
 必ずしも無償では“ない”。
 俺はこれを手放しで信用するほど、希望のあるものばかりを見ていなかった。

ダン・レイリー :
 最も………疑う意味はあっても、決めつけて掛かる意味は薄いだろう。

ダン・レイリー :
 自分の仕事は、このイリーガルの小目標が反米的な行動に傾かず、
 大目標へのサボタージュを起こさせないよう、その利害を調整することであって。
                ホームズ
 犯人を暴き立て、真実を推理する探偵ではないからだ。

ダン・レイリー :
「(こっちはそれで終わりだな。
  ………問題は………)」

ダン・レイリー :
 戦場で必要になったことのないそれを不要とする結論を頭に入れて、片隅に置いたその思考について一旦区切る。

ダン・レイリー :
 そしてテンペストとしての僕が頭を捻らせる原因がその二人ならば。
 俺が頭を捻らせる原因の一人は、間違いなく、最後に控えた彼女の方だったからだ………。

ナタリー・ガルシア :「――はい!最後は私の番ですわね」

皆の意識と視線を意識的に集めるべく、立ち上がる。
しっかりと、皆の顔を覚えるように視線を一巡させてから、少女は口火を切った。

「ナタリー・ガルシアです!ゆくゆくはUGNに関わりのある仕事に就きたいと思っていますが、現状はイリーガルという扱いですわ」

ナタリー・ガルシア :       せんせい
「今はそちらの 師 匠 の下で修行中の身ですわ――未熟な身ですが、なぜか昨夜の方々は私の身柄を狙っているようです。そのあたり、心当たりは全くありませんが……あちらにも何かしらの事情があるのでしょう」

途中、少し言葉を選ぶように口調を緩め――しかし、言い淀むことなく言葉が続く。

ナタリー・ガルシア :
「私のお父様が上院議員をしておりますので、そちらで私の姓を聞いたことをある方もいらっしゃるかもしれませんが……その点で私に阿ったり、気を遣うようなことは出来ればやめて欲しいですわ」

にっこりと、微笑んで、意識して強く言い切る。

「私のことはナタリーでも、ガルシアでも、愛称でナータでも、好きに呼んでください」

ナタリー・ガルシア :「シンドロームはハヌマーンのピュア、風と音を操る力に長けていますわ。とはいえ、昨夜のような状況で咄嗟に力を使うのはまだ難しく……その点では皆さんのようになれるよう反復あるのみですわ」

ナタリー・ガルシア :「足を引っ張らないようがんばりますので、よろしくお願いしますわ!」

ペコリと、頭を下げて、再度視線を一巡させる。

「さて、ここまでで質問はありますか?」

灰院鐘 :「はい」挙手

ナタリー・ガルシア :「はい、『ラフメタル』さん!」

灰院鐘 :「ありがとう、ナタリーくん」

灰院鐘 :「ご両親へ連絡はした? 君がいきなり消えて心配してないかな」

ナタリー・ガルシア :「一応、お互いに安否確認の連絡はしていますわ――この後、時間があれば直接お電話させて貰う予定です」

灰院鐘 :「是非そうしてあげて」

ナタリー・ガルシア :「はいっ、お気遣いありがとうございます」

ディアス・マクレーン :
「それにしても、なんというか、こう……落ち着いてますなお嬢さん。
 あんなことがあった割に。ああいや、大した肝っ玉だなあってよ」

アトラ :
「まーまー、咄嗟の判断って意味じゃウチもナタリーちゃんより甘いかもだから。
 それに……確かに。もっとパニックになっててもおかしくなさそうなのにね~」

 少なくとも自分はほぼほぼ通りすがりのオーヴァードだ。
 きっちり師事して鍛えてる子と比べるのもまあナンセンスではある。……いや、鍛えてないわけでもないが、置いておき。

ダン・レイリー :
「勉強の成果か?
 此方には手解きを受けたてでも、短すぎはしないと見える」

ブルー・ディキンソン :
 ぱちん。

「ええ、彼女の冷静さには私も助けられました。
 むしろ、そのお陰で"ラクシャーサ"の追跡を継続できたとも言えます」

ナタリー・ガルシア :「……そうですわね。驚きが一周して落ち着いてしまったのかもしれません」

それに、と、少し照れながら続ける。

「普段の訓練どおりに動けたのは幸いでしたが、次も同じように動けるかは分かりませんわ」

ナタリー・ガルシア :「それに、こう見えて今も緊張していますわ……緊張とのお付き合いをする方法を教わっていたのは幸運でした」

ダン・レイリー :
「そんなものだよ。やったことが裏切らないとは限らない」

ダン・レイリー :
「ただし、やらなかったことは決して変わらない。
 きみがそのように感じたのなら、どうあれ成果ではあると僕は思う」

ダン・レイリー :
「………時にナタリー。一つ質問をして構わないか?」

ナタリー・ガルシア :「はいっ、『ホワイト・スカイ』さん!」

ダン・レイリー :
「分かった。では、端的に聞こう。
 ………序でに言っておくが、特に意図がないならこういう場では“それ”でなくても構わないよ」 

ナタリー・ガルシア :「そうなんですの?こういう場ではコードネームで呼び合うとばかり」

そちらのほうがかっこいいですし

ダン・レイリー :
「まあ、そのためのものではあるんだが。
 ………いや、話が逸れた。端的に聞こう」

ダン・レイリー :「きみのUGNに対する感情は、憧れと見ていいのか?」

ナタリー・ガルシア :「……憧れ、というよりはもっと私自身に近い感情でしょうか」

逡巡して、たっぷり二呼吸。自己確認して己の気持ちを確かめる。

「尊敬と目標――憧れが無いとは言いませんが」

紅 蘭芳 :(ちょっとうれしそうな顔)

ダン・レイリー :「………目標か」

ダン・レイリー :
    ・・・・・
「きみの先程の発言は、それに依るものか?」

ナタリー・ガルシア :
「……参加するとまずかったでしょうか?」

なにか思い違いをしてしまっただろうか、と、視線をわずかに落とす。

ダン・レイリー :
「いや。興味本位さ。
 あれが自発的に出たのかどうか、正直を言うと図りかねた」

紅 蘭芳 :
「……一応、イリーガルという体ではありますが」

 補足するように彼女は続ける。

紅 蘭芳 :
「年齢や学業、ご家族のご意向からエージェント希望の所を、成人まで通常通り学業に励めるようイリーガルにおいているというだけで
 実の所、練度や伸びしろは平均的なエージェントよりずっと高いんです」
 なので、彼女がそうした面で実力が不足している、ということは、本部エージェントの目からしてもない、ということを伝えた上で、続ける

ナタリー・ガルシア :(ニコーッ)

灰院鐘 :(ニコ…!)

紅 蘭芳 :
「ですが、彼女はまだ実戦経験と呼べるものを積んでいません。私との模擬戦程度なら何度か行いましたが、そのぐらいで。

 つまり土台が出来て、後は対応力と判断力を養う段階。即戦力とは言い難いのも事実です」

紅 蘭芳 :
「なので……どうしてここに招かれているのか私にとっては疑問なんです。個人的に勧めは出来ない、というのも。
 もちろん、あくまで参画依頼ということで、事前に参加意志の是非を問うとは思うんですが……」

 実力も才能も、十分にある。
 ある上で、それでもまだ早すぎる。彼女はそう言っている。

ダン・レイリー :「………」

ナタリー・ガルシア :(ションボリ)

ダン・レイリー :
「そういう人材を今、遊ばせておく余裕もないということも。
 狙われている以上、手元に置いておくことが一番の保護であるというのも分かる」

 そしてそういう話ならば、正直に言って、オーヴァードの時点で一定まではケリがつく。
 いくら枕詞に不安定という言葉がついたところで、オーヴァードの存在は文字通り戦後の戦争を変えてしまった。

ダン・レイリー :
 ………つまり俺が気にしているのは、
 ・・・・・
 そういう話ではない。 

ダン・レイリー :
「だが、招致したのはUGNの側だな?
 意図は推薦者当人に聞く。

 それに、きみ自身の意思も、彼女の言うように是非を問うことはあるだろう」

ダン・レイリー :
「………聞き流してもいいが、僕は義務として釘を刺すぞ。
 ナタリー・ガルシア」

ダン・レイリー : 
        ・・・・
「シャンバラは、テロ組織だ」

ダン・レイリー :
「もし是非を問う時が来て、きみが頷いた時、この言葉の意味が分かっていることを願う。
 ………」

ダン・レイリー :
「説教めいて来たな。
 質問というより、老人の押し付けがましくなってしまった。僕からは以上だよ」

ナタリー・ガルシア :「いえ、昨夜もそうでしたが誠実な方ですわね――これでも、分かっているつもりですわ、ダン大尉」

けれど、それはあくまでもつもり、なのだということもまた、ナタリーは理解していた。
眼の前の軍人が、己よりも遥かに多くのものを見て、経験していることも、己の見識が足りないことも、どちらも正しい。

ナタリー・ガルシア :「傷は、負ってからしか痛みは分かりませんもの――ましてや、想像もできないような傷は」

甘いことを言っているのでしょうね、と、己の未熟への悔しさと悲しさ、自嘲が綯い交ぜになった言葉を呟く。

「けれど、ありがとうございます――私は子供ですが、傷付いたとしても進むことを決めたのも私です」

ナタリー・ガルシア :「大丈夫、とは言えませんが――『覚悟』はしています、これが回答では不足でしょうか?」

それは、ずっとずっと前から。目指すものが定まったその時に――己の信じるもののために、他者を踏みにじり、奪う覚悟を。

ダン・レイリー :
「僕も、そろそろ青年の呼び方が苦しくなる年だ。
 そうなると、見栄の張り方は誰でも、嫌でも巧くなるのさ」 

ダン・レイリー :
 ………そして、それが取り返しのつくものであるかは、傷を負う本人には分からないものだ。

 特に。心を強く占めるものを、泥に塗れさせる時は。

ダン・レイリー :
「少なくとも、きみが尚そう呼び、此処で保護という選択をする気がないなら………」

ダン・レイリー :
「不足ではない。テストでもないから、答えは僕が出すものでもない。
 それに………そう簡単に負わせることもないさ」

ダン・レイリー :意地の悪い質問はこのくらいにしておこう。実際、彼女を招致した人間の意図がどうあれ、この娘は意図を察さないような類でもなかった。

ナタリー・ガルシア :「――はい、ありがとうございます。私も、傷つかないよう努力はするつもりですわ」

自分も、相手も、誰もかれも――そんな都合のいい世界はないということを知っていても、願ってしまう程度には。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……………………」

 腕を組んだまま勇魚は静かに相手の様子を見ながら、告げる

「では、存じているでしょうが。
 我々を頼るようにお願いします」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「自分が傷付かない努力をしてください。
 人々を護るのが戦士の役目とて、自分が生き残るために最善を尽くすのは最低限の責務です」

 たとえ自分の目の前で、味方が血を流し、倒れそうになっても。飽く迄自分の助かる道を模索しろ。それに責を負おうとするな。
 そう彼女は告げる。

ナタリー・ガルシア :
「……………………」

ナタリー・ガルシア :
「はい、私も勿論、出来る限り誰も傷つかないように努力いたしますわ」

優先順位は違えるつもりはない。

灰院鐘 :
「みんなで協力して、最善を尽くす。今はそれでいいんじゃないかな」

灰院鐘 :
「こう言うのもなんだけど、怪我担当は僕のようなものだし。君たちが流す血を少しでも減らせるよう努力するよ」

ダン・レイリー :
「………役割に誇りを持つこと自体は構わないし、昨夜で分かっているが」

ダン・レイリー :
「自分の血もその中に含めるようにな?
 前半に異議はないよ。元よりそのための場だ」

灰院鐘 : 

ナタリー・ガルシア :したいと思いましたわね?ハグ

灰院鐘 :会議中なのが残念だよ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :自制心がついて何よりです

ダン・レイリー :(残念そうな顔をしたな、今…)

ダン・レイリー :(…これがブリーフィングでなければ、大型犬のようなものだったんだが…さておき)

アトラ :
「……」

 ……護る者か。心であれ身体であれ、それをするのがUGNという組織。ということなんだろう。
 “テンペスト”も、そう。……一旦は、自分のようなのもその輪に入っているわけだ。

「まあウチみたいな元々部外者みたいなのはハナから素直にお世話になるだけなんで!」

ブルー・ディキンソン :「いやぁ、全くですねえ」
 ははは。

水無瀬 進 :
「適材適所って言葉もある。僕もその恩恵に与らせてもらう身だからね。
 安全圏でデスクワークに勤しませてもらう分、仕事はきっちりこなそう」

ダン・レイリー :「ああ。何人も担ごうというわけではないからな。あてにするところはあてにするさ」

灰院鐘 :できるよ 物理的に

ナタリー・ガルシア :わたくしなら五人は担げそうですわね

ダン・レイリー :物理的に担いでどうする気だ

アトラ :力持ち~

灰院鐘 :そうだなあ うーん

灰院鐘 :もし歩き疲れたときは言ってほしい!

ブルー・ディキンソン :リアルテクシー……。

ナタリー・ガルシア :目線が高くなりそうですわね

アトラ :絵面けっこー怪しいけどな

SYSTEM :
 さて。
 一先ず全員分の自己紹介と、軽いアイスブレイク。
 それを通じて、大まかな人柄と、性能を掴むことは出来ただろう。

 各々信頼を置くもの、己の思惑を抱えしもの、それらの思索が錯綜する中で、一先ずの合意が取れたということになる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 という段階で、勇魚はモニターの時計を観た。

「レイリー大尉……そろそろ時間のようです」
 

ダン・レイリー :
「分かった。
 土台の確認は出来たことだ、すぐにでも始められるか」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。
 ではこれより作戦内容の説明を兼ねたUGN-米政府共同の特殊任務『パラダイスロスト』作戦のブリーフィングに入ります。
 各自、座席のモニターの状態を確認して下さい」
 

SYSTEM :
 言いつつ勇魚はモニターのタッチパネルに手を触れて、中央パネルを操作し始める。
 備え付けた小型モニターから補足情報、資料の入ったデータが送付されると同時、明かりが消え、大モニターの蛍光色が周囲を薄暗く照らし出す。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……以上が本作戦の概要になります。
 一先ず、質問についての時間を設けます。が……その前に」

 一通りの説明を終えた勇魚は、しかしやや怪訝そうな表情で話を切り出した。

灰院鐘 :「?」

ナタリー・ガルシア :「?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「FHが進駐する主要な州はこちらでも把握しているつもりです。
 ニューオリンズ、デトロイト。ここはまだわかる」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……何故カリフォルニアが作戦区域に? ロサンゼルスはUGNの支部が配置され、LAPDとも連携して活動している、他と比べれば安定した地域の筈。勿論、全く暗い噂を聞かない場所という訳ではありませんが……
 少なくとも、私もこの情報については事前に知らされてはいなかった」
 

ダン・レイリー :…念のため確認するが、僕はこれを聞かされているか?

GM :前もっては聞かされていないようですが、今朝確認した時にはきちんと追加されていたようです

ダン・レイリー :ありがとう。…此方にさえ伝わっていないとは…

ダン・レイリー :「…」

灰院鐘 :「どうかした?」

ダン・レイリー :「いや」

ダン・レイリー :
「そいつについては、今朝に作戦地域に追加されたばかりなんだが。
 上には上の考えがある───これ以外の意味を思いつこうとしただけだよ」

ダン・レイリー :
「見ようによっては、悪影響が表社会にも伝播しやすい場所が此処だから、とかな。
 実際…後ろ暗い噂とて零じゃない。全く無視していい地域ではないのも確かだ」

灰院鐘 :
「大丈夫! 全部なんとかしちゃおう」
 べつに得策とかはない笑顔。

ダン・レイリー :
「ああ。心意気はあった方がいいな。
 …とはいえ、気持ちだけで守れるなら、俺やマクレーン少尉、ミナセのような軍人仕事はお役御免だ」 

ブルー・ディキンソン :「──カリフォルニアといえば、ロサンゼルスは犯罪件数が約6万件数もあるとして有名ですねぇ」

アトラ :
「む~ん。そういう組織の足元でもキャプテンさんたちも知らないくらいのところに何か裏があるかもって話?
 まあない話でもなさそうだけど……。暗い部分が目につかない人たちってわけでもないっすもんね、皆さん。多分」

ブルー・ディキンソン :「ニューヨークに次いでもっとも多いとされているわけですが。
 さて……犯罪は犯罪を呼ぶと言いますね。カリフォルニアにターゲットが入っているのは、そういう点もあるかもしれませんが──」

ダン・レイリー :
「そうだ。
 ニューオリンズ、デトロイトについては其方でも認識していると聞くが………。
 連中、この本土のどこに網を張ったのか分かったものじゃない。ただのダミーとも思えないし、調査の意味はあるだろう」

灰院鐘 :ふんふん、と頷く。

ダン・レイリー :
    Go abroad to hear of home.
「………外国に行けば自国の噂が聞ける、じゃないがね。
 裏をかきすぎればキリがない。人員も余裕があるわけじゃないが不足してもいない。カリフォルニアを無視することはしないが、此処に意識を裂き過ぎるわけにもいかないな」

ブルー・ディキンソン :「……そうでしょうか?」

ダン・レイリー :「気になるか?」

ブルー・ディキンソン :「ええ」

ブルー・ディキンソン :
「火のないところに煙は立たぬ、という言葉があるそうですね。
 事実、カリフォルニアがピックアップされているということは、そこに重要なファクターがあるということ──」

ブルー・ディキンソン :

「たとえば───、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 "シャンバラ"の構成員がそこに潜伏している、とか」

ダン・レイリー :「…仮定に仮定を重ねていやしないか、“雷霆精”」

ブルー・ディキンソン :「ああ! 仰る通り。
 ひとつ、すっ飛ばしちゃってました」

ブルー・ディキンソン :
 ・・ ・・・・・・・・
「それ、追加したの私です」

ダン・レイリー :「…」

灰院鐘 :「えっ」えっ

ダン・レイリー :
 目の前でコレを言うか。
 予想通りミスリードは目的でないようだが、しかしこれは………。

紅 蘭芳 :
「はえ、どゆことどゆこと??」

アトラ :「…… ……」

アトラ :「なんで?」 言った通りの情報に確信があるから?

ナタリー・ガルシア :「その価値がある、と判断したわけですの?」

SYSTEM :
 その時、突如メインモニターの表示の隣のウィンドウが展開される。
 タッピング・オンエアによる画面の割り込みであろう。しかしジャミング音と共に発された声は、聞き覚えのあるものだった。

「そこについては、私からも確かであると補足させていただきたい」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 モニターを一部借りてウィンドウに表示されたのは、UGN側の責任者の一人でもある現本部を預かる人間、リリア・カーティスに他ならなかった。

ナタリー・ガルシア :「…………!!」

ブルー・ディキンソン :「この通り」

ダン・レイリー :
「………───リリア・カーティス。
 “雷霆精”の行動には、其方の意図があるということですか?」

灰院鐘 :あ、という顔をして一先ず成り行きを見守る。

アトラ :
「……」

 ……多分、結構えらい人だ。ちらっと周りを見て同じく黙っておこう。

ナタリー・ガルシア :何かを言おうとして……ギュッと膝の上で拳を握りしめて黙り込む

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「初めて見える者もいるでしょう。私はUGN本部のエージェント、リリア・カーティス……指導者コードウェルに代わってこの本部を預かる者です。
 ……そして、そこは彼女“雷霆精”の情報提供を受けて、審議の後追加された区域です」 

 モニター越しに静謐な眼差しで、現場の人間を一通り見渡す。ナタリーに対して、ほんの少し目を留めて。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「現地のエージェントと裏取りを行ったところ、符合する内容がある程度発見出来ました。
 この慎重な対応と、ネームドエージェントのいずれかと考えれば恐らくは"コードトーカー"のそれと符合します」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ノイマンはワーディング等を行使しなければ、最も一般社会に紛れやすいシンドローム。加えて主要な作戦エリアから距離を置き、かつある程度の戦力を手元に置いていける。
 それを踏まえて考えても、当たる価値は十分にある」

ダン・レイリー :
「まさにそこが灯台の下だったということですか。
 ………」

ブルー・ディキンソン :「カリフォルニアを選んだのも、
 シエルちゃんが言った通り。
 比較的安定している場所だからでしょうねえ」

ダン・レイリー :
“雷霆精”の情報を元に精査したというが、此処では彼女の瞳に宿る感情は推し量り切れない。これが芝居の類である可能性も。

 ………だが、まあ。潜伏そのものは事実だろう。
 先程の僕の結論が、全くの節穴でないなら。 

ダン・レイリー :
「裏取りも行われ、確定した箇所なら言うことはないですね。
 コードトーカー自身の齎したプログラムは合衆国にとって目下最大の癌だ、そちらにも摘発のための戦力を割きましょう」

ダン・レイリー :
 ………こいつの意図がどうであれ、少なくとも敵ではない。

 ない尻尾を疑って、諸共沈めば本末転倒だ。ここは乗せられていいだろう。これ幸いと受け取る。

ダン・レイリー :

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「残る二つの地域についても纏めておこうと思いますが、それは一旦置きましょう。その前に……」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :

ダン・レイリー :

"高き者の箴言"リリア・カーティス :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……はい。次に、現行の敵対勢力について纏めていきましょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 即ち此度の作戦において、必ず相対することとなるだろう『敵』に関する情報だ。
 "シャンバラ"……米国に巣食い、北米FHの後釜として頭角を現しつつある巨大な勢力。
 既に実際に対面した者達もいるが、その幹部クラスと思しき面々について。今分かっている情報を一通り説明しておく必要があった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「既にレイリー大尉に説明が言っているように、我々が把握した人員は五名。そして……“雷霆精”より報告があった、昨晩邂逅した『エヴァンジェリン』を含めて、六名」
 

ダン・レイリー :「やはり…彼女は全くの“アンノウン”ですか」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「──はい。我々のデータバンクには彼女の存在は見られませんでした。
 ・・・・・・・・・
 該当するデータさえも存在していないということです。彼女は本当の意味でアンノウンな人物ということになりますね」

ダン・レイリー :
「…どのパターンにも該当しない。ですか」

 幹部格と見られるエージェントではない。
 ………ラクシャーサは彼女を“エージェント”と呼んでいたが、考えられるケースはいくつかある。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あの場に居合わせたということは、重要な役割を担っているように見えました。
 全く情報がない点を考えても、彼らが作り出した何らかの検体であるのかもわかりません」

灰院鐘 :
「作り出した……か」
 ……ありえない話ではない、と頷く。先日も遺産の複製品を目の当たりにしたばかりだ。何が起きても不思議ではない。

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :
「ただのいちエージェント…。
 一個の戦闘単位だというのがある意味最悪のケースだが、それは考えなくてもいいだろう」

ダン・レイリー :
 …あれに、彼女が“遺産”とやらの共鳴を見出したこともそうだが。
 ナタリー・ガルシアを本命とし、それに執心だったのが“誰”なのかを考えていけば、明白でないにせよ、答えは自ずと絞れる。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ですが彼女が此度の敵の一人であることは明白。どのような立場であれ立ちふさがることになるでしょう。
 その時の我々の対応を置いても、これから数える重要人物の一人に含めて、話をさせていただきます」

灰院鐘 :「よろしくお願いします」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「先ず一人目……これは昨晩交戦したこともあり、記憶に新しいでしょう」

 言いつつリリアは画面の奥からモニターを操作し、一人目のプロファイルを表示させていく。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
       ラクシャーサ
「コードネーム"千刃空夜叉"。
 上級エージェント相当の権限を付与された戦闘専門のマーセナリ。
 活動自体は古くから行っていたものの、本格的に頭角を現してきたのは近年になってのことと伺っています」

アトラ :「……」

ダン・レイリー :「先の一件で遭遇したエージェントだったな」

ブルー・ディキンソン :「あら、鬼っ子」

ダン・レイリー :「追跡していたのもきみだった。本当の意味で記憶に新しいと言えるのは“雷霆精”だな」

灰院鐘 :「……大丈夫?」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「推定症状はエグザイルシンドローム。自らの肉体の一部と得物を融合させる能力を持つと言われています。自らの気配を消し、様々な場所に神出鬼没に顕れるという特性も。
 ・・・・・・・・    ・・・・・・
 無尽蔵に伸びる剣、そして気配遮断能力。
 そうした点で、彼女は隠密起動に向いている。そして何より厄介な点について」

アトラ :
「……うえっ ウチ?ウチはこの通り、全然大丈夫だけど、…… ……」

 流石にこんな顔しといてそれは苦しいか、とも思うが。そうは言いつつ、情報を聞き逃さない。

ブルー・ディキンソン :「やられましたねえ、前者。
 射程距離(レンジ)も何もない。困ったものです」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
   メカニズム
「……仕組みは定かではありませんが。彼女と相対した者の多くが、「重圧」を受けた際と同じ負荷に襲われていると言います。
 そして、それと同様の効果が一部"シャンバラ"拠点で発動している」

ダン・レイリー :
「…厄介ですね。
 経験はあります。無意識的、反射的なエフェクト・パターンの発揮に、どうしてもラグがかかる」

ダン・レイリー :
「“炎神の士師”からの言及もあったが、“遺産”というのが持つ力の一種か…。
 ………いや。此処は本題ではありませんね」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「その可能性は見ておいた方がいいでしょう。
      LIBERATION
 推定衝動は  解放  。これは彼女が見境なく能力を振るうという性質から導き出したものです。
 確定的な情報ではありませんが、彼女の手で破壊された支部があることは事実です。
 ジャームであるか否か、それは調査を進めて判定されるべきものですが、それだけの広範囲にわたる攻撃を、躊躇なく放つ危険性がある。
 そこは覚えておいてください」

灰院鐘 :「ジャームであるか否か……」

灰院鐘 :
「……うん、そこはよく見極めたいところだ」

ダン・レイリー :「異議はない。それに…」

ダン・レイリー :「どちらだとしても脅威は事実だ。戦闘の性能を買われた幹部というなら、猶更にな」 それは“ヤツ”と同程度の戦力保障ということになる。僕にしかない物差しの測り方だ。

ダン・レイリー :…敢えてアトラの方には一度だけ視線を向ける。言及するつもりがあるならするだろうし、しないにしても、今はいい。

アトラ :
「…… ……」

 モニター越しに流れてくる彼女の情報を見て、微妙な表情を浮かべ。ふう、と気を落ち着けるように深呼吸。
 これが、UGNやテンペスト───……所謂、“私たち”が掴んでる情報だ。あとは、彼女の居る場所を当たって探るしかない状況。
 確証を得ている情報が少ない、というのもまあ……分かる話か。自分だって此処に至るまでの動向は知らないんだし。

ナタリー・ガルシア :「…………」

視線と意識が、一人に注がれているのを感じる。
けれど、気遣いを向けるのはなにか違う気がした。
彼女は――彼女もまた、自ら選んでこの場にいるのだろうから。

ブルー・ディキンソン :「……ですねえ」

アトラ :
「……まあ、暴力的なのは確かっす。ウチも保証します」

 注がれる視線には、当たり障りなく変な受け答えをするしかなかったらしい。
 事実ではあるし、別に彼女のイメージ払拭とか今更考える必要もない。

灰院鐘 :「そっか。それはちょっと困りものだ」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「どうあれ、結論を急ぐべきではない。実際に合って、確かめるべきでしょう。
 今気をもんだところで、否応なく対面することになるのならば、猶更。
 ……では次に向かうとしましょう」

アトラ :「……うす」 頷き頷き。

灰院鐘 :うんうん。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「──二人目。
 こちらは我々UGNの方が知識が多いところでしょう。業腹ながら、先程煮え湯を飲まされた相手でもある」

ダン・レイリー :「………“コードトーカー”ですね? 確かに、此方では初耳のエージェントだ」

ブルー・ディキンソン :「ナバホもお怒りな名前をお付けになって……」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 然り、と首肯を返し、彼女は続ける。
       コードトーカー
「コードネーム"秘匿破り"。元々ヨーロッパを中心に活動していたFHエージェントです。
 当時のドイツ支部によって拘留されていましたが、数年前に脱獄を達成。
 恐らくオデッサを通じてシャンバラに合流し、そのまま技術顧問として要職に就いたのでしょう」

ナタリー・ガルシア :「(こちらの方は、初めて見る顔ですわね……)」

アトラ :
(結構美人めなのに……普通に悪いことってしちゃうもんなんだなあ)

 それを言い出したら“ラクシャーサ”もそうだ、などとツッコまれそうなので声には出さない。

ダン・レイリー :
ピュアブリード
「純血種か………」

 経験上、一方面の症状のみを持つこの形態は、その一方面の中において幅広く、かつ強力な能力を持つ。
 コードトーカー
 秘匿破りの名が示す通り、奴の言語は奴のみの専売特許だ。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 シンドローム
「 症 状 は純正のノイマン・シンドローム。こちらは当時の記録からして間違いありません。
 ただ捕縛した段階ではまだジャーム化はしていなかったと記録されています。
              SADISM
 今は、どうか。彼女の衝動は 加 虐 です。あの様子ではかなり危ういラインに立っているか、既にそう成っている可能性もある」

ダン・レイリー :
「先のラクシャーサと同じですね。ジャームか否かについて、確定したことは言えません。

 ですが用意周到と聞かされた性格、本人の自覚に反して、此方の様子を見るため“だけ”に姿をさらしたというのは………。
 ある種の付け入る隙ではあるかと」

ダン・レイリー :
 奴はそのリスクを冒すより、獲物を前に舌なめずりをするリターンを優先した。
 それが持つ意思の難さは警戒するべき脅威であり、また同時に飛び込むべき虎穴だ。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「そのようです。尤も彼女は科学者であり、狡猾な人物。何処から何処までが虚であり実であるのか、その見極めは重要でしょう。
 既に合衆国の各所に散布されたワームウイルスは勢力を抑えられているとはいえ、今も拡散を続けている。
 ですがあれもレネゲイドによって練られたものであるならば。彼女を直接叩くのが、ウイルス騒動を止めるのに最も最適な行動となるでしょう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「それらを築き上げ、自身の地盤を補強するのみならず、純正ノイマンとしての戦闘能力が全くないという訳ではない。
 如何に地力が弱くとも、行動を読んでの反撃は通常兵器であっても超人を斃しうる。それは、あなた方テンペストもよくご存じの筈。
 追い詰めたとて、用心してください」

ダン・レイリー :
「………仰る通りだ。本人の戦闘能力がないわけでないとしても、秀でたところがないようなのは厄介です。その手の奴は“考える”」

アトラ :
「物好きというか、衝動通りの危ない人っていうか。
 一見簡単に挑発とか乗ってくれそうなのにそうでもないってことかあ。普段なら近付かないんすけどねえ……」

灰院鐘 :「すごいひとだったなあ」すなお

ダン・レイリー :
   ・・・・・・・・・・・
 ………自分の超人性に驕らないからだ。
 そういうやつは、戦う時、考える。
 考えて、勝ち目を探る。

 である以上、此方の土俵に易々と乗るタイプではない。だからこそ、あの反応は付け入る隙であり、罠でもあるのだが。

灰院鐘 :
「優先的にどうにかしたい相手ではあるけど、そこはそれ、既にダンさんが言ったとおりだ。一点にばかり気を取られるわけにはいかない」

ナタリー・ガルシア :その言葉をしっかり頭のメモに書き留める。
油断出来るほどの実力はないが、最後の瞬間まで用心を決して怠らないこと。

諦めない、ということは、何よりも強い武器になるのだから。

ダン・レイリー :「ああ。最も表面化した時限爆弾ではあるが、爆弾がこれ一つではないからな」

水無瀬 進 :
「問題は山積みだからね。実際、こっちでも引き続き調査は続けるが、あんまり期待は出来ないと思って欲しい。
 アリャ駄目だ。物理的な媒体の演算速度を超えて変形し続ける多形性コード。あれはもう科学面した科学の冒涜だよ」

灰院鐘 :「ええと……つまり」

灰院鐘 :「ものすごくめちゃくちゃ?」

水無瀬 進 :
「ものすご~~~~~~~~~~~~くめちゃめちゃ」

灰院鐘 :わあ~

アトラ :「うひゃ~」

ダン・レイリー :「医者が匙を投げるというやつだな」

水無瀬 進 :
「そうだな、百倍ぐらいの速度でインベーダーゲームやらされるようなもんだ」

ブルー・ディキンソン :「めんどくさっ……」

水無瀬 進 :
「もちろん自機の速度は素でね!クソッタレ!」

灰院鐘 :……わかる? とナタリーくんとアトラくんに視線を向ける。

ダン・レイリー :「(だいぶ自棄になってるな、後で差し入れのひとつもやるか…)」 

灰院鐘 :僕はわからない!

アトラ :わからん。

水無瀬 進 :えっわかんない? マジで?

ダン・レイリー :ミナセ 傷は深いぞ 

アトラ :まあウチそもそもその手のもん置いてそうなハイカラそーな場所とか知らないんで!

ブルー・ディキンソン :ゲームはそこまで浸透してないみたいですねえ

ナタリー・ガルシア :え~~~~っと……あれですわよね、レトロゲームというやつ

灰院鐘 :れとろげーむ

ナタリー・ガルシア :はい、お父様が少年だった頃に流行った類の

灰院鐘 :歴史があるんだねえ

アトラ :わあ~ ウチら生まれてないかもってこと?

ナタリー・ガルシア :私は生まれていませんわね……一度遊んでみたいとは思います

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「とにかく」
流れを切るように咳払いして

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「彼女の居所と思しき場所が既に割れていることは、不幸中の幸いといえるのでしょう。
 まだ確定ではないにせよ、先手を取りたい所です」

ダン・レイリー :
「そうだな。好ましい手段じゃないが、インテリに覿面なやり口は古来から決まっている」

灰院鐘 :「それは?」

ダン・レイリー :「考えさせない」

灰院鐘 :……!!!!!!!(背後に電撃が走る)

ブルー・ディキンソン :「思考パンクと」

ダン・レイリー :「が、こいつを俺達のホームでやろうってなると少し難儀な話だからな。それが覿面なのは事実だが、手段は択ぶ」

ナタリー・ガルシア :「……戦場においては、巧策よりも拙速を尊ぶ、ということでしょうか?」

ダン・レイリー :「そういう話だ。同じ時間で思考したら分が悪いが、こっちはその拙速に慣れているつもりだからね」

アトラ :
「おぉ……」

灰院鐘 :「……近付いてズドンだね!」それならいける! と無根拠の笑顔。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「適切な対処です。幸いにも彼女の陣地にラクシャーサの能力は及んでいない。
 それが展開されていれば、一目でシャンバラの陣地であると悟られるからでしょうね。
 ですがそれが却って相手の油断となる」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「すかさず対応に出るのが望ましいでしょう。  
 ……では、次に行きましょう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「三人目になります。
 こちらは、昨晩に姿を見せることはありませんでしたが、要注意人物として牢記するように」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「コードネーム『天刑府君』。
    ユン ティエンシン
 本名、元 天刑。
 中国にて活動が確認されていた凶手です。
 彼については、彼女が詳しいですね」

ダン・レイリー :「紅さんが?」

紅 蘭芳 :
「……はい。武林においては、有名な人ですから」

ダン・レイリー :
「(………奴は中国FHセルの殺し屋だった………)」

 そこで活動していたガーディアンズの紅蘭芳が知らない道理はない。か。

紅 蘭芳 :
「元 天刑。中国FHの凶手であり、当時の武林に名を連ねたエージェントたちの悉くを葬った化境に至った剣鬼……」
 

紅 蘭芳 :
「知らない筈がありません。
 ……彼は幼い日、あの九龍の貧民たちが憧れた剣侠だったんですから」

灰院鐘 :「……紅さんも?」

ダン・レイリー :「………。剣侠だった、か」

ブルー・ディキンソン :「………」

ナタリー・ガルシア :「憧れた……」

アトラ :「……」

紅 蘭芳 :
「まだ我々がガーディアンズと呼ばれていた頃。
 政府からも存在が認められず、貧困の街であった丐幇の中で、彼は何処の所属にも属さないまま風と伴に現れ、それを斬り捨て何の見返りも求めず去って行きました。

 人は彼のことをこう呼んだと言います」

紅 蘭芳 :
「剣侠……
       ジャーム
 またの名を、"神魔狩り"とも」

灰院鐘 :「ジャーム……狩り──」

ナタリー・ガルシア :「それが、なぜ……いえ、今は考えてもしかたのないことですわね」

そう、独りごちる。

ブルー・ディキンソン :「………」

ダン・レイリー :「物語ならば、名高き剣侠は好漢として幕を下ろすさ」

ブルー・ディキンソン :
 ・・・・・・
(イカれてるな……)
 心中に抱いた、心にもないことは黙っておいた。
 見返りを得ないこともそうだし、やっていることもそうだが。
 どのような結末にせよ、出だしから既に私にとっては気に入らないものになりそうだ。

ダン・レイリー :
「………そうではなかったのだろ。
 何があったにせよ、な」

アトラ :「……そこで終わらないのが現実だった、と。……ううん」

紅 蘭芳 :
「……はい」

 少し項垂れた様子で

ナタリー・ガルシア :「……相対する以上、私達はそこを知らなければなりません」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :「任せる。そもそも内面を明かす男ではなかったように聞こえたが…」

ナタリー・ガルシア :「ええ、ですから努力しますわ……私、積み重ねることだけは自信があります」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
 ………。

 きみはこれから銃を向けて殺し合う相手の、事情を理解した後でも同じことが出来る気か?

灰院鐘 :
「知れば分かり合えるわけでもないよ。譲れない理由が増えるだけかもしれないし」

灰院鐘 :
「君は、それでも知りたいんだろうね」

 あるいは"だからこそ"なのかもしれない、と青年は予感した。
 和解だけが理解ではないように。
 敵対だけが不理解ではないように。

「……困難な道を、あえて進もうとするのは性分かな。それとも自らに課しているのかな」

灰院鐘 :
「……ああ、ごめんね。責めてるわけじゃないんだ。ただ、」

灰院鐘 :
「…………」

 鋼を束ねる無手に僅かだけ力がこもり、すぐに弛緩する。行き場のないもの、かたちのない何かを握りつぶすように。

灰院鐘 :
「応援したいなって思ったんだ。できることはそう多くないのが、申し訳ないところだけど」

ナタリー・ガルシア :
    ・・・・・・
「はい、奪うからこそきちんと知らなければいけないのです」

決して許されないことだからこそ、せめて自分が行ったことから目を逸らさないために。

「何も分からず、何も知らず、自分だけを信じて他者を踏み躙る──私が誰かにとっての悪者であることの自覚もなしに進むのは、奪われた者への最大の非礼ですわ」

ナタリー・ガルシア :「ですから、ええ……貴方の手を借りることも沢山あると思いますわ」

困ったように眉尻を下げて、言う。これから先に広がるのは、想像すら出来ないほどの困難で苦痛が溢れる道だということは少女の身であろうとも想像出来ていたから。

「疲れて、悲しくて、辛くて、痛くて、もう立ち上がれなくなった時──私を支えて、とまでは言いませんが、傍で見守ってください」

ナタリー・ガルシア :「私は必ず、立ち上がりますから」

それまでの、少しの間だけ。

「──お願いしても、いいかしら?」

灰院鐘 :
「────」

 鮮烈な意思のこもった言葉を、穏やかな笑顔が受けとめる。立派だねと褒めることも、背負わなくていいと諭すこともせず。

灰院鐘 :「いや」

灰院鐘 :「どうせなら、支えてとまで言ってほしい」

灰院鐘 :
「代わってでも、守ってでも、構わないから。今ここで頷く必要はない。僕が……いや、君の傍にいる人たちがそう思っていることは、どうか忘れないで」

ダン・レイリー :
「それは正しいものの言い方だよ、ナタリー。そしてショウ」

ダン・レイリー :
「個人として是非を問われたのならば、頷くことも吝かじゃない───が。
 今はシャンバラ、そして“天刑府君”の話だ。矛先を戻す」

ダン・レイリー :
 言葉を借りれば、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 自分だけを信じて他者を踏み躙る組織の話をしている。

ダン・レイリー :
「構わないね。…紅さんも。
 件の男が内面に饒舌な性格だったとは思わないが、豹変の理由は話せるものなのか?」

"アダム" :
 ──だ、そうだが。
  

"アダム" :
 背伸びせず餓鬼の振りしてればいいのに。ホラ、どうせキミがしんどい思いするのは何しようが変わらないワケだし。
 歳食った連中が良く言うだろう、仕事は適度に手を抜くべきとね

"アダム" :
 まあ、子供にはわからないか……この次元の話は……

ナタリー・ガルシア :「(貴方にはキリキリ働いてもらいますわよ!それこそ馬車馬のように!!)」

ナタリー・ガルシア :と、そこで、小さくコホンと一区切り。
姿勢を正して話の続きを聞く体勢に移る。

紅 蘭芳 :
「……はい。
 ただ、今彼がああなったことまでは、何とも。
 それに、長らく姿を消して昨晩漸く目にしたぐらいですから」

灰院鐘 :「昨晩?」

ダン・レイリー :「………成程。もしや先刻の?」

紅 蘭芳 :
「その、大変申し上げにくいのですが…
 私があの場で姿を見せなかったのはそういうわけでして」

紅 蘭芳 :
「指名手配犯、凶手『元天刑』。
 彼の姿を見かけ、少々深追いしてしまったというか……向こうはこっちのこと、まるで相手にしてくれなかったんですけど……」

ダン・レイリー :
「このタイプの人間が、次も同じ気紛れを働かせるとは限らない」

ダン・レイリー :
「…だがそれを差し引いても、よくぞ無事だったと思う。
 概ね陽動か下見程度だと思うが、何をやらかしていた? “天刑府君”は」

紅 蘭芳 :
「はい、おっしゃる通りです……」

 やや縮こまって

紅 蘭芳 :
「…コレといって特に何か、工作をしてるようには見えませんでした。私程度の陽動に来てたとは、その、思えませんし。純粋に下見をしていたように見えます。
 ラクシャーサ
 "千刃空夜叉"は相手を選ばずという風でしたが、彼は凶手です。斬る相手を、少なくとも向こうの道理で選んでいるってことですから」

ブルー・ディキンソン :「プロですねえ」

ダン・レイリー :
「気持ちを何も推し量れないわけではない。
 其方にとっては何人も隣人を手にかけた相手だ。平常心で居ろと言う方が難しいさ」

ダン・レイリー :
「………そうだな。
 専門知識を持ち、比肩する者の無い腕前をそう呼ぶならば、この男はプロフェッショナルだろうな」

ダン・レイリー :
「奴が合衆国の何処に潜伏し、どう行動しているかは分からない。が。
 言い変えれば、そいつの道理で択んだ相手は何を置いても斬りに来れるってことだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そして恐らく、この作戦が始まった段階で、向こうも積極的に動くようになる、と。
 既にこちらの面子に狙いを絞っているかもわかりません。……それで、戦闘面での特徴は?」

紅 蘭芳 :
「はい。戦闘プロフィールは概ね盤面のデータ通りです。
 純正ハヌマーン、朱い剣を用いた白兵戦を得意とする、近接戦闘型です。
 内家拳法、元式六合八法流を修めた剣法の達人であると」

灰院鐘 :「ないか……」

ダン・レイリー :「太極拳というやつは分かるか?」

ナタリー・ガルシア :たぶん思ってるものとは違いますわよ

ダン・レイリー :なるほど、そもそもそれ以前だったか

アトラ :
「…… ……う~ん」

 まあ教えてもらう方が早いなあ考えるより。みたいな顔をしておく。

ダン・レイリー :
「専門家のいる前で素人知識を披露したくないが、力押しではない、内面やしなやかさを重視した拳法というやつだな」

ダン・レイリー :
「それとだ───ひとつ訂正を。
 構わないか?」

紅 蘭芳 :
「はい。内功というのは外部破壊より内部破壊を要訣とするものが多いんですが、彼もまたそれを修めています。
 ワンインチパンチ
 浸 透 勁ってやつですね……はい?」

ダン・レイリー :
「ああ。訂正というより付け加えか」

ダン・レイリー :
「奴のその剣。
 其方で言うところのEXレネゲイドだよ」

灰院鐘 :
 力尽くではなく、的確に内部へ衝撃を通す技術。なるほどなあ、と感心混じりに頷いていた矢先、聞き逃せない言葉が飛び込んでくる。

「──!」

アトラ :「おぉ……?」

ブルー・ディキンソン :「……ふむ」

紅 蘭芳 :
「! あの剣気、只ならぬと思ってはいましたが……」

ナタリー・ガルシア :「EXレネゲイド……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……"シャンバラ"はその手の技術の流出元。確かに武装に関して一枚噛んでいても可笑しくはない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ですが大尉、何故それを?」

ダン・レイリー :「当然の疑問だ。解答しよう」

ダン・レイリー :
「僕が実際にこの目で見たからだ。
 実際に出会い、過去を知る彼女がいる以上、言及は蛇足とも思っていたが………情報の伝達不足が何を起こすかも分からない。それを承知で言わせて貰いたい」

ダン・レイリー :
「奴のその剣は、シャンバラの脅威が活発化する前からのものだ。
 最初から幹部であった、豹変の事情に一枚噛んでいた、などという話でもない限り………手を加えたというケースは“ない”だろう」

紅 蘭芳 :
「……そうですか」

紅 蘭芳 :
「……まるで妖刀に魅入られたみたい。
 彼に限って、そんなこと信じたくはないですが」

灰院鐘 :「少なくともシャンバラから支給されたものではないわけだ。……」

ダン・レイリー :「その認識でいい。恐らくな」

ブルー・ディキンソン :「それはそれで厄介な代物ですねぇ」

アトラ :
「……剣がそーゆー代物なら、ちょっとはありそうな話ですけど……。
 知ってる人らから見て違うって言うなら淡めの期待っすよね。大体そういうの、得物の方をどうにかしたらどうにかなるってのも分かんないし」

ダン・レイリー :
     オーヴァード
「………だが、超人というのはそうだろ。
 根底を揺るがされた時、価値観を変える出来事があった時、どんな人間でもそうなってしまう可能性が転がっている」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……どうあれ。あちらから襲ってくるならば、望むところです」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あちらの手の内が分からないうちは慎重を期した方がいいとしても、いずれは雌雄を決さねばならぬ相手。
 手の内の程は、シャンバラを追ううちに明るみになるでしょう」

灰院鐘 :「それに戦闘の専門家っていうならこっちも同じだ。遅れを取るつもりはない……は言いすぎにしても、気後れはないよ」

ダン・レイリー :
「尤もだ。
 奴の道理を紐解く事は出来ないし、するつもりもない。狙われるようなことがあった以上は相応の用心がいることも、事実だが」

ダン・レイリー :「これで3人目だな。あと2人か」

アトラ :
「まー、確かに!ぶつからんうちに心配しても損……って程じゃないけど、皆さん的には放置は出来ない相手なわけだし。
 何か出来ることがあるにせよ、知れること知ってからの方が良いか。……それで……」

 モニター見。次は……?

ナタリー・ガルシア :出会ってすぐにずんばらりん、は避けたいですわね

灰院鐘 :すんばらりん……

ブルー・ディキンソン :「んネクスト〜」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「そうなります。四人目……この暫定セルリーダーとして据われた男です。
 データは取れていますが、顔のデータに関してはまだつかめていません」

ナタリー・ガルシア :「ということは、顔以外のデータはあるのでしょうか……?」

疑問を独りごちる

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 首肯を返し、それを証明するようにモニターを操作する。
       ブラックモア
「コードネーム"尽き喰む死禽"。現時点でセルリーダーといわれている、シャンバラのリーダー格の男……」

アトラ :
「うへ、リーダーなんだ」

 もうロクでもなさそう。というか昨晩の様子からしてロクでもないのは確定だ。

ダン・レイリー :
「───“ブラックモア”。
 昨夜のあの男か」 

ナタリー・ガルシア :「……あの、カラスの」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「本名ヴォルフ・カミンスキー。
 かつてはロシア連邦内部のFHセルを主だった活動圏内としていたようですが、その時点からシャンバラとつながりがあったと言われています」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「シャンバラの組織の母体は別にありますが、シャンバラ幹部らが主に連れている近衛の戦力は彼がFH時代に鍛えた精鋭たちといわれています。
 現在では『ムーンドッグ』と呼ばれ運営されるFH精鋭部隊から派生した強化猟兵部隊……彼はその統率にあたります」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「彼らの戦力の中枢を為す、総勢規模約3000人からなる一級オーヴァード空挺旅団。
 通称『カミンスキー旅団』……
    シャドウブリゲード
 彼らは『黒禽旅団』などと称するその統率であり。
 彼自身はその戦力と共に語られるのみで、姿を見せたこと殆どないといいます」
 

灰院鐘 :「……確かに。昨夜も干渉はあったけど、彼自身は姿を現さなかった」

ダン・レイリー :
「そこだ。
 干渉の中継となったのはその猟兵部隊だとしても、奇妙な部分があった」

ダン・レイリー :
「………ただのエンジェルハイロゥ・シンドロームの延長線ならいいがな。
 そこも含めて、これが暫定でもリーダー格と思われる動きをしているというのも厄介極まる」

灰院鐘 :「? ……ああ、望遠。遠い場所からでも指揮が取れるわけだ」

ブルー・ディキンソン :「インチキでしたねえ……、
 ナッちゃん追跡劇のとき」

ナタリー・ガルシア :「奇妙な部分、と言いますと……?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「エンジェルハイロゥ・シンドロームの中には、遠きを見下ろす千里眼を持つものもいます。
 尤も、あれほどの精度の使い手が世に二人といるとは思えません。別の絡繰りがあるとして……」

ダン・レイリー :
「有り得ない方向に首を曲げて動きだしたアレだ。
 少なくとも、僕はこの能力が“そういう方向”に使えた試しはない」

灰院鐘 :あったなあ ぐりん!って

灰院鐘 :びっくりした

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
      エナジードレイン
「加えてあの生命収奪能力。
 ブラックモアの別の能力が、部下にまで及んでいる可能性はあります」

アトラ :
「むーん。リーダーだけあって面倒な……」

ナタリー・ガルシア :
        クロスブリード
「……で、あれば、二つ以上の力の可能性も十分にあるわけですわね」

ダン・レイリー :「長期戦はそれだけ奴の資源を継ぎ足すことに他ならないか」 

ダン・レイリー :
「可能性だけだが、他のシンドロームを秘匿しているセンも気にするべきではあるよ。
 ………尤も昨夜の言動を鵜呑みにするならば、ああいう男の恐ろしい部分はそこじゃない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ブレーキの利かない衝動。
 底なしの食欲」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「アレの攻撃を受けて感じたのは、そうした人間というよりは、そのカリカチュアを見ているようでした。
 恐らくはジャーム化している」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……」

 勇魚はそれに何か付け足そうと口を動かし、止めた。

「雑魚とは言えない規模とはいえ、本命ではない以上消耗戦ではあちらが上です。オーヴァードのリソースは厳密に言えば戻って来られるか否かだけ。
 青天井となった敵の燃料は無尽蔵です。無用な消耗は避けたい」

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :「そうだね。こっちが消耗戦に弱いのは向こうも承知の上だろうし、居場所を突きとめて一息にズドンといきたいところだ」

ダン・レイリー :
「元よりFHというのはそういうのが舵を切ることが多いが………。
 ああいうのは格別に拙い」

ダン・レイリー :「引き摺られないよう、気をつけて欲しい」

灰院鐘 :「うん!」

アトラ :「うす!」

ダン・レイリー :「よろしい。何なら最もそれを聞くべき人間がきみだ、ショウ」 

灰院鐘 :「そうなの?」

ダン・レイリー :「勘だ。深い理由はないよ」

灰院鐘 :「勘かあ」

ダン・レイリー :
 ………奴の目的は、口調を鵜呑みにするなら誰より刹那的で、破滅的な兆しを含んでいた。

 なら、あれはテロリストですらない。
 目的と手段がすり替わり、奈落の底に落ちるまで地獄の伴を増やしていくもの………。 

灰院鐘 :「大事なことだ。気をつけるよ」

アトラ :言われとるけどそこも素直に受け取るんだなあ。

ダン・レイリー :
     ・・・・・・
「(あれは死にぞこないだ)」

 俺の目が節穴でないのなら。
 そいつに、こういう若いやつが巻き込まれるのは避けたい。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……………………」

ダン・レイリー :「心配と小言は聞き飽きてるかもだがな、そのくらいがちょうどいい」 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「………差し出がましいことを申し上げますが」

ダン・レイリー :「ン」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ・・・・・・・・・
「アレはジャームです。
 ・・・・ ・・・・・・・・
 あなたと、同類などではない」

ダン・レイリー :「………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……少なくとも私は、そう思いました」

 その時の勇魚は、彼女にしては珍しく、やや語気の強いものだった。

ダン・レイリー :
「“ブラックモア”の言葉なら気にしていないよ。
 仮令どちらだろうと、僕には軍人の職務というのがある」

ダン・レイリー :
「それを忘れた時は、遠慮なく同類扱いして貰っていいさ。
 気を遣わせたな、”炎神の士師”」 

ダン・レイリー :
 ………不義理かもしれないが、
 心の中でもう一つ解答しておくとだ。

ダン・レイリー :
 ・・
 それについての答えなどは、
 もう過去に出た後だった。

ダン・レイリー :
「………しかし。4人目にしてセルリーダーということは、あと一人はどうだ?」

ブルー・ディキンソン :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……いえ。
 ……やはり余計な一言でした。話の腰を折って申し訳ありません」

 そう答え、次を促すように再び口を閉ざす。

ダン・レイリー :「余計ではなかったさ。言わなければ感情は伝わらないし………」

ダン・レイリー :「自分のことなど、自分では分からないからね」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「…………」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「五人目は……。こちらは逆に、パーソナリティは割れていますがデータの上でしか存在が確認されていません。
 直接行動してはいない様子ですが、その影響力は紛れもなく存在し、今も継続している」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ブラックモアがセルの実質的リーダー格なら、こちらはそのスポンサーとでも言いましょうか。
 シャンバラの母体となる組織を作り、資金の土台を集め、ネットワークを形成した第三帝国の亡霊……」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
        トーデスエンゲル
「当時のコードは"死の天使"。
 様々な手法を用いて現在まで生きながらえてきた元SS親衛隊大尉……本名ヨーゼフ・メンゲレ」

ブルー・ディキンソン :「───……」
 やっぱ出たか、その名前。

ダン・レイリー :「………SS親衛隊………」 

ダン・レイリー :
「子供にすら言い聞かせられる、
     ハーケンクロイツ
 悪名高き“鉤十字”か。連中の与太話も極まって来たな」

アトラ :「……わあ 何歳になるんすかね」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「歴史上では70年代に死去していますが、それはあくまで世を忍ぶためのもの。
 彼は『遺産』を継承するために、自らの肉体を作り替え、当時の機能を維持したまま活動を続けているといいます」

ブルー・ディキンソン :「さすがにジジイじゃないですか?」

ナタリー・ガルシア :若作りする力もあるかもしれませんわね……

ダン・レイリー :
「例外なんてものは往々にしてある。
        オーヴァード
 常識を語ったら、超人は基本的横槍を入れられることになるさ」

灰院鐘 :「ご長寿さんだ。……ところでその、遺産って」

ダン・レイリー :
「そうだな。継承したのか、継承するつもりなのか………。
 前後関係も合わせて知っておきたい」

アトラ :「って言うかここも遺産!うーん他人事じゃないとはいえ人外っぽさ極まるっすね」

灰院鐘 :ねー、と顔を合わせる。

アトラ :ね~。うんうん。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ナチス・ドイツ、第三帝国はアーネンエルベと呼ばれる機関を擁し、その中で研究を続けていた。
 彼は人類学の研究と共に、ヴォルフラム・ジーヴァスらが蒐集した遺物の一部を手に南米へ飛んだと言います」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「その実態までは掴めていませんが……
 シャンバラが今まで持続していることには、彼の意向が絡んでいる筈。
 遺物、或いはそれに関する彼の研究結果が、セルの活動と相関していると我々は見ています」

ダン・レイリー :
「………選民主義のインテリが、逃げ延びた先で夢みたいな目標を実現できるかもしれない手段を南米で手に入れた、ということですか」

ダン・レイリー :
「実際に花開いたのだから始末に負えない。
 どんな目的、どんな経緯かはさておき………危険な人物ではあるようですね」

ブルー・ディキンソン :「マジモンの、"戦後の亡霊"ですねえ」

ダン・レイリー :「亡霊の送り返し方は知っているか、“雷霆精”?」

ブルー・ディキンソン :「う〜ん、お線香上げるしか思いつかないですね」

灰院鐘 :「お塩もあるよ」

ブルー・ディキンソン :「ナムナントカ!」

ダン・レイリー :「同感だが、それで帰ってくれるほど妄執の易い男ではないだろうな」

アトラ :「呪術めいてる~」

ダン・レイリー :それにショウのことだ 恐らく返せると言えば本気で塩を持って………

ダン・レイリー :………

灰院鐘 : 

ダン・レイリー :そういう場面での彼は正確かつ迅速だった 流石にないか………(力ずくで押し流す)

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「彼は情報によると機械化手術、即ちブラックドッグによる改造手術を経ていると調べがついています。
 恐らくはそれが現代まで義体化して生きていられた主因であるのでしょう」

ブルー・ディキンソン :「ま、お線香をあげるにしてもとびっきりデカいのが良さそうですけどね。
 派手に花火にもできそうなくらいの───……こほん」

「なるほど? 確かに脳が焼き切れなければ生きれますねえ」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ただ、その性質上コードトーカー同様、積極的に仕掛けてくるとは考えにくい。
 先んじてあげた四名とは別ベクトルの脅威、と認識してください」
 

ダン・レイリー :
「了解しました。
 名は片隅に置けということですね」

ブルー・ディキンソン :
、    、    、 ハッカー
「ま、体を弄る奴の半分は覗きが趣味ですからネー」

灰院鐘 :「そうなの?」

アトラ :
「自分から改造人間になったってことですよね。物好き……で片付けるのも違うか。やりたいことあってやってんだろうし。
 ともかく了解す!」

ナタリー・ガルシア :「流石に偏見では?」

ダン・レイリー :「だから半分さ。だろう?」

ブルー・ディキンソン :「主観よ主観、まあ当たってると思うけどね。経験上」

ブルー・ディキンソン :「そ!」

水無瀬 進 :うんうん、と激しく頷く

アトラ :どっち側なんすか?

灰院鐘 :? なるほどなあ、と一緒になって頷く

ディアス・マクレーン :
「まあこいつハッカーでやんちゃした経験普通にあるんだけどな」

ダン・レイリー :「適切なタイミングで、痛烈な意趣返しだな」

水無瀬 進 :
「言うな!!この流れで!!」

ナタリー・ガルシア :「もしかして、昔はヤンチャをしていた……と?」

若干の白い目

灰院鐘 :わあ~

アトラ :そういう趣味なんすか~?

水無瀬 進 :水に流した昔の話!はい、次々!!

ブルー・ディキンソン :あっはっは〜

ダン・レイリー :さて、そろそろ助け舟を出してやるか…

ダン・レイリー :
「ともかく………このヨーゼフ・メンゲレが先程の四人を直接統括出来るほどのカリスマ性、ないし利益を提示し続けられるとは思えない。一時は可能であってもね」

ナタリー・ガルシア :皆さん、我が強そうでしたものね……

ダン・レイリー :だろう? 少なくとも1人はそういうのに興味があるとは思えないしな

アトラ :…… ……うんうん。最低一人は確かにと頷ける話だ。

ダン・レイリー :
「だが、アーネンエルベの与太話が現実なら、そこにいたというこいつの知識は厄介だ。
 ………ましてや元SSなら怨念返しをしたがらないとも限らない。ブラックドッグから連想できる遠隔干渉に注意しつつ、目下は先の四人の対処を優先ということでいいだろう」

灰院鐘 :"我"が肥大化したのがジャームなわけだしね

ダン・レイリー :手に負えないから放し飼いというのもズレたセンではないだろう? そう考えると

ブルー・ディキンソン :「……全く"らしい"組織ですこと」

灰院鐘 :頷いて先の方針に了解を示そう

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「FHはどれも、大なり小なりそのようなものですからね」

ナタリー・ガルシア :ですが、組織である以上は共通の目的くらいはありそうですわね

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そして、その共通の目的があればこそ結託している。
 或いは、この男がそれを握っているのかもしれません」

アトラ :う~~~~ん どのくらいの利害の一致なのやら

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「以上が我々が事前調査の段階で掴んでいた、大型シンジケート『シャンバラ』の幹部格FHエージェント五名になります。
 そして…」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「最後の一人。
 関係は不明ながら彼らと行動を共にしたオーヴァードの女性。彼女もまた暫定の重要人物として、六人目として数え、この場に並べておきましょう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
        エヴァンジェリン
「コードネーム『 預 言 者 』。
 本名、素性、経歴不詳。加えてオーヴァードとしての症状も、実際に発動の瞬間を目にしながら特定不可能のアンノウン」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「現場にいた面々は既にその顔を知っている筈ですが、"雷霆精"の情報提供によって得られた写真を添付しています」

ブルー・ディキンソン :「実はこっそりと〜」
 ぶい。……しない。

灰院鐘 :しないの?

ダン・レイリー :「あの瞬間か。抜け目のないことだ」

ブルー・ディキンソン :なんだか憚られまして……

ナタリー・ガルシア :「……昨晩の方ですわね」

奇妙な縁を感じる相手だった。

ダン・レイリー :勢いに身を任せていいのは成人するまでだ…とは蛇足だな

灰院鐘 :じゃあ一緒にやろう! あなたのお手柄なんだ、胸を張ってほしい

ブルー・ディキンソン :「"覗きが趣味"ですから。
 ……冗談です」

ダン・レイリー :「5割側ということかい」 

ブルー・ディキンソン :わお大胆! そう言われるとやりたくなる。
……後で受けるリリアさんからの目線には耐え難いかもしれませんが……!

灰院鐘 :ぶい!

アトラ :
 ……そう、こいつ。この女だ。
 先の“ブラックモア”や“死の天使”らの側についた、というよりも……彼女と、彼女のしようとしていたことに、自分の目的───……もとい、あの人のやることが付随してるように感じた、のだが。

ナタリー・ガルシア :(一緒にやろうとしていたけれど、お姉さまの前だと言うことを思い出して踏みとどまる)

ブルー・ディキンソン :「ま、そんなとこです。
 ……しかしまあ、"預言者"ですか──」

 ぶいぶい。両手のピースマークと共に。

アトラ :
「場所が場所ならアウトっすよ~」

 まあ我々的には助かってるわけだが。ウチもぶいしとくか、流れに乗って。
 嘘です。しません。

ダン・レイリー :
「レネゲイドの研究が始まって10年にも満たない時期だ。
 アンノウンのひとつやふたつがあってもおかしくない───」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ワーディングを無効化する能力を有していました。重圧状態を作り出せれば或いは可能かもしれませんが、あのような発動を後から無効化する技術は殆ど確立されていない」

ナタリー・ガルシア :
              エヴァンジェリン
「そのまま言葉通り受け取ると 『福音』 ですわね……一体、誰の言葉を報せる方なのでしょう」

ダン・レイリー :
「そうだな。”おかしくない”で済ませるには少々難があるか。
 ………あの時のエフェクト・パターンを此方は知らない。そして其方すらも知らないのであれば、考えられるのは二つある」

ブルー・ディキンソン :「アレはまんまと為出来されましたねえ。
 その後の対応の迅速さが無ければ、結構な事になっていたでしょうし」

ブルー・ディキンソン :「ふむ、二つ?」

ダン・レイリー :
「個人の素質に依るものか、全くの新しいエフェクト・パターンであるかだ。
 今この段階で、どちらと特定することに意味はないし───後者の生まれる余地があるとはあまり思えないが」

ナタリー・ガルシア :「レネゲイドの世界も日進月歩ですわ、突然新しい力に目覚める方が出てきてもおかしくないのでは?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……或いは、彼女の存在そのものが、彼らにとっての福音……
 そう語るだけの重要な役割を担うのかもしれません。そして、いずれであろうともその希少価値が"シャンバラ"に何等かの寄与する存在だったと」

アトラ :
「どっちかというと後者がイヤっすねぇ。
 皆さんでも対応が確立されてない~ってことになっちゃうと、しっかりと面倒そうで……」

ダン・レイリー :「それこそ“そうなってもおかしくない”、というやつか………」 

灰院鐘 :
「どっちにしても……彼女が役割を果たした結果起きることが、誰にとっても良いほうへ転ぶとは思えない」

ナタリー・ガルシア :(そして、私の巡礼の目的地にいるかもしれない方……ですわね)

ブルー・ディキンソン :「その"福音"とやらと合わせれば、後者の可能性も無くはないというところでしょうか。
 ……"だったばあい"は……トラちゃんの言う通り、対応が後手後手になりそうです」
 考えるだけ無駄ネ!

"アダム" :
──そういうことさ。
 少なくともキミとはそう無縁の存在ではないかもだが……

ナタリー・ガルシア :(ええ、あの方が私を尊重してくれていたのは本当だと感じますもの……打算ではなく、誠意からの尊重だったと、不思議ですが確信できましたわ)

"アダム" :
 確信ねえ。
 ま、そりゃそうだろう
 

"アダム" :
 ある意味ではあれとオレは近いモノだからね。
 しかし、まあそれにしても

"アダム" :
 ……何すまし顔してんだか。
 知らないうちに面倒な奴になっちまって。

ナタリー・ガルシア :(……随分と仲がよろしいようですわね)

"アダム" :
 さてね。
 でも、ここはあんまり本筋とは関係のない話だ。オレの気が向いた時にでも話してあげよう。

ナタリー・ガルシア :(貴方の気分ではなく、私の知りたい時に教えて欲しいですわ!!一連托生なんですのよ、私達!)

"アダム" :
 キミが望むなら今此処で話してあげてもいいけど?
 勿論、今、この場で。

"アダム" :
 会議中のBGMとして延々と

"アダム" :
 心行くまで聞かせてあげよう、出会いから別れまで、それはもう濃密な日々をみっっっっっちりと

ナタリー・ガルシア :(わざと言っていますわね……!!)

ナタリー・ガルシア :(トールキンのお話ではないのですから、要点だけ話して欲しいですわ!)

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 そんな内情を知ってか知らずか……
 リリアは僅かにモニターの前で映像の女性を見つめた後に、切り出す

「事情は不明ですが、彼女がナタリー・ガルシアという個人を求めた事実は変わりません。それが何を意味するのか。その結果として何が起きるのか。
 確かめる必要があるでしょう」

ナタリー・ガルシア :「…………そう、ですわね」

アトラ :「そっすね。何か……他のメンバーとかとも繋がるような結果が出るなら、もっと気にしなきゃですし」

ブルー・ディキンソン :「そういえば気になることを言ってましたねえ、幾つか」

ブルー・ディキンソン :
「"作戦は失敗"、だとか。
 "無駄足ではなく、順番が前後しただけ"とか……」

ブルー・ディキンソン :
「あとはそのくだんの"預言者"サマ、
 キャプテンやカイ君達が合流した直後、どうも手傷を負ったようでしたネ。
 "何故"は未だに分からなさそうですが」

ダン・レイリー :
「ああ。それは確認した。
 “エヴァンジェリン”はその事実をまるで想定していなかったが、その状態でさえ…奴の感情の矛先はナタリー・ガルシア、きみにだけ向いていた───と感じたよ」

灰院鐘 :
 うーん、と首をかたむける。彼は彼なりに現状把握などにトライしてみたが、べつだん何も浮かばなかった。

ナタリー・ガルシア :「そう、ですわね……私も、なぜあの方が私を求めたのか心当たりは……」

向けられた言葉に、視線を落としそうになるのを意識して堪える。不安や一抹の罪悪感を表に出さないよう、しっかりと前を向く。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「……そうですか。彼女がそういうのなら、間違いではないのでしょうね……」
 
 何かを考えるように静かに瞑目して

ダン・レイリー :
「………そしてコレを確かめるということは、彼女を改めて『パラダイス・ロスト作戦』に放り込むということでもある」

ダン・レイリー :

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「故にこそ、私には問わねばならないことがあります」

 言葉を継ぐようにして、彼女はモニターの画面を切り替える。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「我々はUGNとして、確認しておきたい事があります。
 いざ戦地に飛んでしまえば、もうそこから先は戻る余地などないのですから」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 そして意思を確認する言葉の代わりに、彼女は静かにこう告げる。

「ナタリー・ガルシア。
   ・・・・・・
 ……あの時の言葉を、覚えていますね?」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「――――」

その言葉、その問の意味を違えることなく、少女は理解した。
その重大さ、これから待ち受ける困難と苦難、その全てを想う。
軽々しく勢いだけで答えて良いものではないということは、少女が誰よりも理解していた。

ナタリー・ガルシア :だからこそ、モニター越しに真っ直ぐな視線を返す。
逸らさず、陰らず、その重さを背負う覚悟を宿した瞳がただ一人に向けられる。

「はい、お姉様――しっかりと覚えていますわ」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「よろしい」

 その言葉の内容を改めて問うでもなく、彼女は静かに頷きそれを認めた。
 リリアは、それが避けられぬものだと予め知っていたかのようだった。
 複雑な心境と背中を押す気概のないまぜになった表情だった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「ならば私は、あなたに言葉を送りましょう。

 UGNとなる者に、私が最初に告げる言葉を」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「君よ、戦士たれ。
 我々は義務によって力を遣い、使命によって行動する。
  
 ────為すべきことを、為す時です」

ナタリー・ガルシア :その表情を、その言葉を、その内心を想う。
気にかけてもらえる嬉しさと、そんな顔をさせてしまう己への憤り、背中を押して貰える誇らしさ――その全てを、取り繕うことは出来ずに、少し困ったように眉が下がる。

ナタリー・ガルシア :
「私は、多くのものを与えられてきました。お父様に、お母様、師匠に――お姉様」

今このときから、守られる側から守る側へ――ほんの少しでも、お姉様の力になれるならば良いと思う。
これまでお世話になった人々の幸いを、少しでも守れるならば自らが全てを尽くす意味はある。

「――為すべきことを、為しますわ」

ナタリー・ガルシア :「私は、私が背負う責務を、きっと果たしてみせます」

噛み含めるような、自らに言い聞かせるような言葉。何度も己の中で形にし、何年もかけて己の芯にしていった言葉の一つ。

 ノーブレスオブリージュ
与えられた者の責任――それを、果たす時が来たのだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「────────、」

 その言葉に、勇魚は静かに息を呑み、ほんの少し驚いたように眼を開いた。
 ……それは、その言葉の意味するところを知る故だったのだろうか。

灰院鐘 :
「それが君の選択か」

 そうか、という頷き。おっとりとした微笑みはどこか観念したふうなとこがある。

 富める者の責務。生まれ持った幸福に対する返報。青年にとっては何ひとつ無縁な、宿命のかたち。

 その重さを思い、その先を想うには、彼はあまりに若かった。彼の目に映るのはただ、少女の直向きな心だけだ。

 ──だから、そう。為すべきを持たない戦士は、苦難の道行きに際して、ただ盾であればいい。貴石には貴石の、卑金には卑金の役割がある。

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :
 それは。当たり前に愛され、当たり前に明日を生きてきた人間が…。  
 当たり前のように、命を以て義務を果たす決意を述べる瞬間だった。

ダン・レイリー :
 それは戦士の言葉だ。
 今日を生きて、明日死ぬ人間の言葉だ。

ダン・レイリー :…僕はそれを何も言わずに見つめる。

ダン・レイリー :…俺が持っていた猜疑心が膨らまない理由は、最初に確かめ、また、偶然にも手に入れた後だったが───それとこれは、別だった。

ブルー・ディキンソン :
 特段、何かを表情に浮かべることはなかったが。
 アレが普通に愛された人間がする答えか、と。純粋な疑問だけを抱いた。

 秩序という言葉の"気持ちの良さ"と、それと表裏一体の"残酷さ"に、顰めっ面になりたい気持ちはあったが。
 無駄だろう──あれは多分、誰の言葉でも曲がらない。
 そりゃあそうだろう、義務とか使命とか……耳障りのいい言葉だろうて。

 ……それをどう思ったか? 答えは決まっている。
 が、ここでは言わない。面倒だ。軋轢を生むのはごめん被る。
 
 ……それにしてもまったく罪深い女だ。
 誰のことなのかは、ご想像にお任せしますけどネ。
 

アトラ :
「…… ……」

 外様の……あるいは、逃げるように旅をする自分とは立場が違う。決意の言葉を耳にただ黙するのみだ。
 外面の言葉ではない。先までの言葉も含んで、真摯だから余計に言葉も見つからない。茶化すように出る言葉も普段の間の抜けた音も出さずに様子だけ見ておいた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は視線を落とし、うつむき加減にそれを見届けた。
 
 宛らに、騎士の叙任のようなそれを、とくに何かを告げることなく……或いは告げる言葉が見つからぬまま、見守るのみであった。

"アダム" :
 …………
 
 病んでるな、まったく。

SYSTEM :
 語り部の語る言葉は彼方に消えて。
 此処に意志の確認は為された。
 この時より、少女を中心とした運命の輪は、多くの思惑を載せて回転を始める。

SYSTEM :
 そうして今、米国全土を股にかける戦争が開幕する。
 ──PARADISE LOST作戦。
 その口火が、今切られようとしていた……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




Information:ミドルフェイズSTAGE『United States』

SYSTEM :
【Information更新!】

これよりミドルフェイズSTAGE『United States』の説明を開始します
 
 長く覚えることが多い内容で困惑するかもしれませんが
 適宜質問等は雑談タブにて受け付けます。

SYSTEM :
[0/はじめに]

 STAGE『UnitedStates』ではローカルルールでの探索を行います。
 何度かテストプレイは行いましたが、ガバがあった場合には都度対応していこうと思います。

SYSTEM :
[1-1/概要]

・STAGE『UnitedStates』は、ステージ内のFH勢力を駆逐する陣取り合戦の形式で行われます。

・プレイヤーたちはアメリカ合衆国に巣食う三+一つのエリアにキャラを配置し、その中で敵対FH勢力の行方を調査、最終的に検挙を行っうこととなります。

SYSTEM :
[1-2/エリアマップ]

 エリアマップは以下の四つとなります。
・メリーランド・ベセスダ/危険度:-
・ミシガン・デトロイト/危険度:中
・ルイジアナ・ニューオリンズ/危険度:高
・カリフォルニア・ロサンゼルス/危険度:低

 メリーランド・ベセスダは例外的にセクタは存在せず、メリーランド州内を自由に移動できます。
 ここでは後に記載するバッドステータスの影響などを一切受けず行動することが可能です。

SYSTEM :[1-3/マップ内訳]

・STAGE『UnitedStates』はマップ上に4エリア存在し、ベセスダを除く1エリアごとに4セクタ、つまり12セクタ+1存在します。
 (マップ>エリア>セクタ)
・各PCはマップ内のセクトにユニットを配置し、そこで指定技能による判定を行うこととなります。
 判定が成功すれば、対象のセクトは攻略済み状態となります。

SYSTEM :
・4つのセクタすべてが攻略済みとなることで、イベント『対決判定』が発生します。
・ここで、エリアを陣取るボスエネミーと判定で勝負し、クリアに成功すれば、エリア一つが攻略済みとなります。

 すべてのエリアを攻略することが、PC達の目的となります。

SYSTEM :[1-4/エリアの扱い]

・異なるエリアは異なるシーンとして扱う為、プレイヤーは異なるエリアに干渉することはできません。RP上、通信するだけなら問題ありません。

・同一エリア内は同一シーンとして扱います。つまり同一エリアにいる限り支援エフェクトを掛けて補助することが可能です。
 セクタでの判定を済ませて合流し、シーンを展開するのもいいでしょう。

・一方、配置されたセクタの判定は配置されたキャラ以外で行えません。確実に通したい場合は二名以上で当たるのが良いでしょう。

SYSTEM :[2-1/進行]

 進行は以下のプロセスに分けて実行します。
 フローチャートを用意してますので、そちらと併用してご確認ください。

SYSTEM :
 ・セットアッププロセス
 ・メインプロセス
 ・イニシアチブプロセス
 ・クリンナッププロセス
 
 ※なお、これらは従来のゲームシステムに落とし込むために便宜上呼んでいるだけで
  エフェクトのラウンド1等の使用条件とは無関係です。

SYSTEM :[2-2/セットアッププロセス]
 此処では二通りの行動が可能です。

○情報調査
・判定技能:<情報:UGN><情報:テンペスト> <情報:裏社会>
 目標値:7(1段階目)/10(2段階目)

 指定エリア内の各セクタにおける判定内容を二段階に分けて調査を行う。
 成功した場合、内容が表示され、探索が可能になる。(一段階目)
 二回目に成功した場合、小規模戦闘セクタにおけるエネミーの情報を確認可能となる(二段回目)

SYSTEM :○調達判定
 判定技能:<調達>
 
 『組織崩壊』解除後に使用可能。調達判定を行い、必要なアイテムを工面できる。
 原則、このタイミングでしか調達判定は行えないものとする。

SYSTEM :
 これら各PCが行動を行った後、そのラウンド内で行動する場所へ駒を配置する。

SYSTEM :[2-3/メインプロセス]
○作戦行動
・判定技能:場所によって変化

 PCは配置されたセクタにて、そのセクタ内で要求される技能で判定を行います。
 判定内容は大きく分けて三通り存在します

SYSTEM :
 ・通常判定
  指定された技能での判定に成功する。

 ・攻撃判定
  <白兵><射撃><RC>のいずれかによる判定に成功する。

 ・小規模戦闘
  セクタに配置されたエネミーと戦闘を行う。

SYSTEM :[2-4/イベント]

 セクタ内の判定を終了させると、イベントフラグチェックが行われます。
 以下の条件を満たしている場合に発動します

 ・特定のPCが、特定のセクタ内にいる場合
 ・1エリア内のすべてのセクタをクリアした場合

 イベントフラグを踏んでいる場合、判定終了後にイベントが発生します。
 なお、イベントが発生しない場合、キャラが登場するRPは基本的に短く扱います。

SYSTEM :
 尚、登場シーンが発生しない場合においても宣言することで交流の為のRPを行うことは可能です。
 その場合は適宜宣言をお願いします。

SYSTEM :[2-5/クリンナップ]

○エネミー行動
 すべてのPCが行動した後はエネミーのターンとなります。
 エネミーは各エリア内の危険度を高めるために工作を行います。
 これによってエリア全体の危険度が[高]より上に高まった場合、条件を満たさない限りエリアへPCの駒配置が行えなくなります。

SYSTEM :
・防御判定
 エリアの防衛には防御判定を行います。

 マップ内に存在するキャラで、エネミーの攻撃判定ダイスと、PCの攻撃判定ダイスで対決判定を行います。
 →対抗判定に勝利した場合、防衛は成功となります。
  →失敗した場合、その攻撃判定によるダメージ判定を行います。
   これでHPが0にならなければ、防衛成功扱いとなります。
    失敗した場合、防衛は失敗となり、エリアの危険度が上昇することとなります。

SYSTEM :
 また、これら防御判定の際に攻撃を仕掛けるエネミーは「小規模戦闘」に登場するエネミー+一般トループ『強化猟兵』となります。
 そのため、「小規模戦闘」にてエネミーを討伐済みの場合、防衛判定のエネミーを減らし、防衛しやすくすることが出来ます。

SYSTEM :[3-1/エリアごとのデバフ効果]

 各エリアには、エネミーが陣取ることによってマップ全体にデバフ効果がかかっています。
 これらはエリアボスを討伐することで効力を無効にできます。
 
 かかるバッドステータスは以下となります。

"コードトーカー" :
『組織崩壊』
 財産点の使用、及びに調達判定が使用できない。

"ラクシャーサ" :
『??????』
 エリア「カリフォルニア・ロサンゼルス」以外で、オートアクションが使用できない

"ブラックモア" :
『アバドンの顎』
 小規模戦闘を行ったPCはシーン終了時に1d10ダメージを受ける
 ダメージ量分だけ"ブラックモア"のHPが加算される。

SYSTEM :[4-1/NPCカード]
 プレイヤーは友好NPCを自由な位置に配置することが出来る。
 そこでは各所持NPCユニットの得意とするエフェクトを借りることが出来る。
 NPCは最初の割り振りの段階で任意のエリアに配置し、仕事をさせることが出来る。絡みたい場合自分の位置において同席させることも可能。
 
 以下に、各NPCの使用可能技能を列挙する。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
・勇魚=アルカンシエル
 『火の鳥の加護』……エリア内ユニットのHPを15点回復する(シナリオ3/ラウンド1)
 『ファイアドライブ』……同一セクタ内ユニットの攻撃力を+10する(シナリオ3/ラウンド1)
 『バディムーブ』……エリア内の判定の固定値を後出しで+3する(ラウンド1)

水無瀬 進 :
・水無瀬進
 『サードウォッチ』……オートアクションで任意のエリアに登場できる。
 『オーバーウォッチ』……エリア全体にダイスバフ+3 (シナリオ2/ラウンド1)
 『強化の雷光』……エリア内ユニットの判定ダイスを+5してくれる+移動距離を5m増加する(ラウンド1)

ディアス・マクレーン :・ディアス・マクレーン
 『支援要請:空母機動部隊』……防衛判定を成功させる(シナリオ1)
 

紅 蘭芳 :・紅 蘭芳
 『獅子奮迅』……防衛判定を成功させる(シナリオ1)

SYSTEM :
 尚、NPCカードは特定条件を満たすことで使用できるエフェクトが拡張される場合があり
 そのほかストーリー進行によって隠しNPCカードが加わる場合もあります。

SYSTEM :
[雑記]
 状況に応じてイージーエフェクトの使用により判定にボーナスを得られる場合があります。
 加えこのステージ内において特定のEEに以下の付帯効果を与える。

 ・ディメンションゲート
  1度でも行動したエリアが存在する場合、そのエリアに移動して駒を再配置し、ラウンド中に2度目の行動が可能となる。

SYSTEM :
 登場侵蝕については特殊な判定形式を行うため、シーン開始時の登場侵蝕は発生しないものとする。
 よってエフェクトの行使、またはリザレクトに直結するHPリソースがそのまま消耗となります。ステージ内では慎重に管理しましょう

SYSTEM :
 エフェクトのタイミングについて
 セットアップ・クリンナップなどのエフェクトはタイミングが難しいためオートで使用可能とする。ただし、使用回数は元の設定どおりとする。

SYSTEM :
 終了条件は『5ラウンドが経過する』こととなります。
 5ラウンド経過時点で自動的にこの判定は終了とし、この段階で未攻略エリアが存在した場合
 そのエリアの数×3d10侵食率が上昇します。
 逆に攻略に成功している場合、クリアしたエリアの数×2経験点ボーナスが加算されます。

SYSTEM :
 当作戦の概要説明は以上となります。
 各エージェントの健闘を祈ります。

GM :というわけで

GM :ミドルフェイズ、開幕!!の前に……
ここでPC間ロイス取得の時間です

キオ :うおおおおおおお

ダン・レイリー :了解した。作戦開始時刻だな(見なかったことにする)

灰院鐘 :(とげとげの球体をそっと拾いあげてダンさんに手渡す)

灰院鐘 :落ちてたよ

ダン・レイリー :そうか………………

GM :なんださっきのいがぐり。
ともかく 今回のPC間ロイス取得については任意のキャラに取得可能となっております

ブルー・ディキンソン :いたそ〜

アトラ :前衛的なグッズっすね!と

ダン・レイリー :野生の生物だ 元の場所に帰してやりなさい

ダン・レイリー :さて…話を戻そう PC間ロイスだ

ブルー・ディキンソン :なんか、ああいうのを投げ入れるクイズ番組が、東の国でやってましたねえ……

ブルー・ディキンソン :とと、はいはい。

GM :OPのやり取りの間で気になった相手に撮るのも、従来通りPC番号順で取るのもいいでしょう

灰院鐘 :僕はOPで取得済みだからこのままで

ダン・レイリー :GM。取得の順番はあるかい?

ダン・レイリー :これは「右隣に」という話でなく、「誰から宣言するか」の順番の話だ

GM :ありません 決まった人からお願いします
鐘さんはもう撮ったので、残る四名の方先着順で!

ダン・レイリー :先着順だな? 此処は僕から行こう。

ダン・レイリー :
 アトラに「P:尽力/N:不信感」。
 表に出る感情をNにする。

ダン・レイリー :
 理由は既に語った通りだが………。
 人格的な意味での不信感ではないよ。

GM :了解です!
ンでは早速キャラシートへの記載をお願いします!

アトラ :ほんじゃ流れでウチもいこうかなあ~

アトラ :
 ブルーさん宛に「P:好奇心/〇N:不安」で。
 同じ外様だけどウチよりよっぽど嗅ぎ回ってる感じあるし、組織の人らやお嬢様とは違った変な感じがあってちょっと今後の動きに支障出ちゃうならイヤかなって感じっすね!

GM :なるほどお了解です!キャラシートに追記お願いします

ブルー・ディキンソン :それではネクストいっきま〜す

ブルー・ディキンソン :
 あたしはナッちゃん──……ナタリー宛で。
 「○P:好奇心/N:嫉妬」で!

 ……え? 理由? 
 そりゃあ、この子の立場もそうですし、この作戦における意味もそうですし、彼女本人の覚悟の理由とか、色々……

ブルー・ディキンソン :
 後者? やぁだぁ、乙女の心をそうズケズケ聞くもんでもないですヨ。
 ……大丈夫大丈夫! 怖い意味じゃないから!

ブルー・ディキンソン : 以上です!

GM :怖いぜメイドさん! 了解です!
ではキャラシに記載おねがいしまーす

ブルー・ディキンソン :はーい、オッケーでーす。

ナタリー・ガルシア :それでは、私は灰院鐘さんに取らせていただきますわ

ナタリー・ガルシア :「○P:くまさん/N:甘やかさないでくださいまし、ですわ」

GM :なるほど。

ダン・レイリー :(何を以て「成程」とした????)

ブルー・ディキンソン : 

ナタリー・ガルシア :くまさんは大きくて強いですわ

灰院鐘 :えっ

灰院鐘 :あっ

アトラ :Pかなあそれ!

ブルー・ディキンソン :あ……憧れ? みたいな感情?

GM :何かわからんが了解です!(キングクリムゾンでチョップする

GM :反論の余地を時間を飛ばして消し飛ばし、キャラシの方に記載お願いしまあす!

GM :というところでPC間ロイスの取得は完了 では

GM :では、ミドルフェイズStage[United States]を開始します

SYSTEM :
-SETUP PROCESS-

SYSTEM :各PCは行動内容を選択し、判定を行ってください

アトラ :
ほいじゃ~……まあ、まずはサクッとどうにか危険域の情報でもさらってきて、手腕の方も認めて貰っちゃおう!
情報判定を裏社会でやりたいです!目標はルイジアナ!

GM :宣言を確認しました!
情報は得意のアトラちゃん、第一投ビシっとおねがいします

アトラ :レッツ……

アトラ :4dx+5 ダイスロール! (4DX10+5) > 8[4,4,7,8]+5 > 1

SYSTEM :
【判定:情報判定 ルイジアナ-第一段階 に成功しました】

GM :では更新しまーす

GM :ルイジアナの判定内容はこんな感じとなります

SYSTEM :
【Check!】
ルイジアナのボスエネミーが開示されました。
ボスユニット:"ブラックモア"

ダン・レイリー :…ルイジアナは“ブラックモア”の牙城か。他の危険要素があるうちには手を出せないな。

GM :お、次はダンさんですかな 何処を捜しまするか

ダン・レイリー :
 ああ。次は僕が情報調査を行おう。
 場所はデトロイト。使用判定は「情報:軍事」。
 可能ならば「コネクション:傭兵」を使用する。

GM :宣言を確認しましたー
コネの使用も問題ありません、エフェクトではありませんからな

ダン・レイリー :よし。後は天命だな。

ダン・レイリー :では…

GM :はい、判定をどうぞ!!

ダン・レイリー :3dx+1 (3DX10+1) > 10[5,8,10]+5[5]+1 > 1

GM :余裕の音だ 馬力が違いますよ

ダン・レイリー :………その幸運は後にとっておきたかったが、まあいい。

SYSTEM :
【判定:情報判定 デトロイト-第一段階 に成功しました】

SYSTEM :
【Check!】
デトロイトのボスエネミーが開示されました。
ボスユニット:"ラクシャーサ"

灰院鐘 :それじゃあ僕はカリフォルニア方面を調べよう。技能は〈情報:UGN〉で

GM :宣言を確認しました
ではダイスをどうぞ!

灰院鐘 :3dx+1 (3DX10+1) > 6[2,4,6]+1 >

GM :ギリセーーーーーーーーーフ

GM :やりますねえ

灰院鐘 :よかった!

SYSTEM :
【判定:情報判定 ロサンゼルス-第一段階 に成功しました】

SYSTEM :
【Check!】
ロサンゼルスのボスエネミーが開示されました。
ボスユニット:"コードトーカー"

ナタリー・ガルシア :それでは、次は私が行きますわ

カリフォルニア・ロスを<情報:UGN>で調べますわ

GM :了解!第二段階ですね
判定をどうぞ!

ナタリー・ガルシア :2DX+1
私の力…… (2DX10+1) > 9[6,9]+1 > 1

GM :や、やったッ!

ナタリー・ガルシア :これが私のコミュ力ですわ

GM :流石OJO!俺達に出来ないことをry

SYSTEM :
【判定:情報判定 ロサンゼルス-第二段階 に成功しました】

SYSTEM :
【Check!】
ロサンゼルスの小規模戦闘エネミーが開示されました。
ユニット:"強化猟兵"×8

強化猟兵 :
四体の一個分隊を二つのエンゲージに分けて配置されているようだ。

強化猟兵 :各ユニットのステータスは以下を参照する。
https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/dx3rd/?id=Dakm6V

ブルー・ディキンソン :では私はデトロイトを。
二段階目になりますね……<情報:裏社会>で。
コネはOKでしたね? <コネ:情報屋>を使って、ダイスを+2個したく。

GM :おっけーです! デトりましょう

GM :さあ判定をどうぞ!

ブルー・ディキンソン :3dx+2 <情報:裏社会> (3DX10+2) > 9[3,7,9]+2 > 1

GM :おおーー

GM :まさか初旬で此処までガッツリと開けてくるとは 成功です

GM :メイドの姐さん!! 情報屋ァ!!!

ブルー・ディキンソン : 

SYSTEM :
【判定:情報判定 デトロイト-第二段階 に成功しました】

SYSTEM :
【Check!】
デトロイトの小規模戦闘エネミーが開示されました。
ユニット:"機甲猟兵"×1
     "強化猟兵"×2

機甲猟兵 :
各所で研究開発されていた複製遺物『ミュートスキューブ搭載型機械化兵』と、それを援護する歩兵分隊からなる戦闘形態のようだ。
同一エンゲージで固まって戦陣を敷いている。

機甲猟兵 :
機甲猟兵のステータスは以下を参照する。
https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/dx3rd/?id=sVphbO

SYSTEM :
セットアッププロセス内の全ユニットの判定が終了しました。
各ユニットは配置に就いてください

SYSTEM :
ユニットの配置を確認しました。

SYSTEM :
DETROIT:
A:ブルー
B:アトラ
C:ディアス
D
New Orleans:
A:
B:紅
C:灰院鐘 勇魚
D:
Los Angeles:
A:
B:
C:ダン ナタリー
D:

SYSTEM :
-MAIN PROCESS-

SYSTEM :
各セクタに配置されたユニットの判定を行います。

GM :という訳で今回は色々リアル事情との兼ね合いの影響で

GM :触れる人から順番に振って行こう
第一投の方は挙手お願いします

ブルー・ディキンソン :はいはい、いっちゃいまーす。
デトロイトのAで!

GM :了解! 使用技能と使用する場合はエフェクトを選択して振ってくださいな
目標値は開示情報の通り、20!

GM :けっへっへ メイドさんが負ける訳ねえぜ

ブルー・ディキンソン :はいはい、では白兵で〜そのまま行きますね。

GM :オーケー!どうぞ!

ブルー・ディキンソン :3dx+27 <肉体:白兵> (3DX10+27) > 8[2,7,8]+27 > 3

SYSTEM :
判定に成功しました。
DETROIT:sectorAを制圧しました。

GM :んお見事!

ブルー・ディキンソン :ふっふっふ これが固定値の力ですネ〜

GM :これでエリアAの制圧は完了! 
幸先良いところで

GM :次の判定に進みましょう!次の方あ

アトラ :ほんじゃまあ~ 行こうかな!デトロイト並びだし!

GM :デトろ!

アトラ :開けロイト市警だ!

GM :いぇーい(PODからアームが生えてきてハイタッチ

GM :ではでは判定は情報<裏社会>でしたな

アトラ :さっき小耳に挟んだんだけどEE《竹馬の友》が有効だそうで……(ぱしぃん)

GM :いえーす 固定値を1上げちゃいます

アトラ :ヨシヨシ。ダイスもたくさんだし固定値も6だし……

GM :勝ったな、ガハハ

GM :フラグを積んでおきました。
さあ他に宣言がなければ判定をどうぞ!

アトラ :4dx+6 ウチの社会は4くらいあるぞ。 (4DX10+6) > 10[1,1,4,10]+4[4]+6 > 2

GM :うおおおおおおおお

GM :俺のフラグが木っ端みじんに……!

アトラ :わーっはっは

SYSTEM :
判定に成功しました。
DETROIT:sectorBを制圧しました。

SYSTEM :
【CAUTION!】

 イベントフラグを経過しました。
 判定一巡後、イベントシーンを開始します。
 指定PC:アトラ
 

GM :という訳でイベントフラグを経過したため……

GM :本来ならこのままイベントシーンを展開するのですが(その予定でしたが)
一旦判定を優先します

アトラ :まああるよね おひざ元だもんなあ

GM :勿論このイベントシーンには同じエリア、デトロイトのシーンにいるブルーさんも参加していいし、しなくてもよい

GM :というところで

GM :戦闘組は一旦置くとして残すは鐘さん!

灰院鐘 :はーい

灰院鐘 :では僕はニューオーリンズに向かおう。セクトAで調達判定に挑戦するよ

灰院鐘 :勇魚くんと蘭芳さんにも来てもらっていいかい

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :了解しました。フォローはします。

紅 蘭芳 :頑張って! フォロー出来ないから、突っ立ってるだけだけど……

GM :ではでは指定技能は調達です
宣言はありますかな

灰院鐘 :Dロイスの効果が載るくらいかな 

GM :組み合わせるエフェクトがないままにダイスバフが得られるのは良い事です 実際イイ

GM :では無宣言での一投おねがいしやす!
へっへっへあの本部無双といわれた鐘さんが負ける訳ねぇだろ!

灰院鐘 :そうなの!? よ……よし、がんばるぞ

灰院鐘 :3dx+7 (3DX10+7) > 9[1,2,9]+7 > 1

GM :ほんとに無双する奴がいるか!!!成功です!

灰院鐘 :よかった 流石にこのくらいはね

灰院鐘 :応急キットくらいなら余裕だとも

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :そうですね

紅 蘭芳 :買い物上手!すごいねえ!

灰院鐘 : 

SYSTEM :
判定に成功しました。
NEW ORLEANS:sectorCを制圧しました。

SYSTEM :【CAUTION!】

 イベントフラグを経過しました。
 判定一巡後、イベントシーンを開始します。
 指定PC:灰院鐘

SYSTEM :
イベントシーンを開始します。
イベントを展開しています……




【MIDDLE ① - 熾火】

SYSTEM :
【MIDDLE ① - 熾火】

登場PC: Syou Kain
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 アメリカ合衆国ルイジアナ州州都ニューオーリンズ。
 ここはメキシコ湾に面する大型港湾都市であり、広くはジャズ発祥の地として知られている。此処に灰院鐘含め本部のUGNエージェントが派遣されたのは、その危険度の故だろう。
 

SYSTEM :
 この地にUGN支部は現時点で存在していない。
 既にFHが司法にまで手が及んでいるからだ。彼らはUGN設立より以前から……或いはレネゲイド解放以前から州法によって自らの利となるようにこの都市を設計した。
 恐らくは米国進行への最前線として。

SYSTEM :
 あなた達はこの都市の状況を調査、及びに体勢の変化を慣行されるのを未然に防ぐため、この地まで赴いていた。
 ……何もUGNという組織がなければ、彼らへの対抗勢力がなくなるわけではない。あなたが先ず行ったのは、そうした現行FH勢力と対立する対抗馬への援助。不安定化工作であった。
 尤も、本人にそのような意図が正しく伝わっていたかどうかは本人のみぞ知る所ではあったが。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「これでひと段落、というところでしょう。
 既に壊滅寸前だった、現地のガーディアンズも、これでもう暫くは持つ筈」
 
 今、あなた達は現地での活動のために撮った仮宿で休息を取っていた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 UGNとの合流が未だ以て完了していない、現地のレジスタンス組織、ガーディアンズとの接触と援助。
 引き換えの情報提供を受け、粗方この都市の情勢を把握した二人は、その状況を整理していたところだった。

灰院鐘 :
「……それでも延命治療みたいなものなんだろう? 負担を強いることに変わりはないし、危険なはずだ」

 難しそうな顔で俯く。彼は彼なりに理解に努め、分からないなりに指示に従って役目を果たした。
 その成果に不満はないし、出来ないことを嘆くほど器用でもない。ないが、

灰院鐘 :
「困った。組織がどうこうとなると、どうも」

 ふくざつだ、と溜息をつく。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「表面上は平和なこの港湾都市も、平和なのはうわべだけ。
 コードウェル博士の活躍で、この地を支配していたマスタークラスのエージェントを打倒したとはいえ、頭を潰しても他の細胞が生きていればすぐに建て直せてしまう。ことに、此処は南米ともつながりやすい地」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「この地の窮状は兼ねてから伝わっていたとはいえ……
 今の今まで手出しが難しかった。或いは今、この作戦が決行されたのが不幸中の幸いというべきなのかもしれませんが。一手遅ければ、この都市全域が彼らの手に落ちていたかもしれない」

灰院鐘 :
「……そうか、確かに」
 そういう見方もできる、と頷く。

灰院鐘 :
「じゃあやっぱり、ダンさんたちがいてくれてよかった。彼らが僕たちを監視してくれるおかげで、州を跨いで活動できるわけだし」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そうですね」

 言葉と裏腹に珍しく俯き加減な表情からは、どうにも腑に置ないという様子がありありとうかがえた。

灰院鐘 :
「……納得いかない? それとも彼らが信用できない?」
 よいしょ、と膝を折って視線の位置を低くする。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……人柄に信を置けても、立場に信を置けない、ということは往々にしてあります。
 それが噛み合わない場合などは、とくに質が悪い」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………ことに、この遺産が絡む事物においては尚の事。国が動いていると考えた方がいい。
 それは"死海文書"に関わることからもそう」

灰院鐘 :
「米国政府もUGNも、より多くの人のための組織だ。内に閉じているか外に向かっているかの違いでしかない」

灰院鐘 :
「……違いそのものは悪ではないはずなんだ。その差異が衝突や齟齬を生むというだけで」

灰院鐘 :
「まあ、もっと上の……顔も見れない人たちの思惑はともかくとしてだ。ダンさんたちは大丈夫じゃないかな」

灰院鐘 :
「勘なんだけどね。べつに思い込みと言ってもいいけど。彼らは立場じゃなくて、信条で戦ってる人だと僕は思う」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そうかもしれません」
 ふと、その視線を自らの右手に落とす。
 組織が重んずる方向が異なるだけで、その実態は人々の為の組織である。その点について異議はない。
 だが。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ですが、有り余る力は善意悪意に依らずして災いをもたらすこともある。
 私の持つ、右手についても同様に」

灰院鐘 :「……遺産」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……私はこの真名を禁じられています。故にその名を明かすことはできませんが……
 この戦いでは、多くの力を解き放つこととなる。私一人であるならば気にする必要もなかったことですが、それゆえに伝えておきたいこともある」

灰院鐘 :首肯する。ちゃんと聞いてます、の合図だ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「手にする機能は『右手を媒介に際限なく分子震動を引き起こす』こと
 その代償は『感情の欠落』。
 
 悲哀を喰らうことで燃え上がり、赫怒を喰うことで膨れ上がる。その感情を遣って、力を後押しするもの」

灰院鐘 :
「感情の……欠落」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
            ・・・・・・・・・・・
「故にかは存じませんが。私には覚醒の記憶がない。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 何時これと契約したか覚えていないんです」

灰院鐘 :
「……記憶が焚べられた可能性もあるのか」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 小さく頷き、続ける。

「私は覚醒に至った経緯を覚えていない。
 ただガーディアンズの戦士、今は世界を護る者として。そのために戦うことを、教官の元で教わってきた。」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「戦う力も。戦うための理念も。今の私を形作ったものは、教官から貰ったものが多い」
 
 そして、それが矜持なのだ、と。勇魚は右手を握りしめて語る。
 或いは、それが、それのみが縁であったのか。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「妄りにその力を振るわないこと。
 Covet      Faith
  欲 に依らず、 信 に準じて力を遣う。

 教官から教わったことの一つです。
 ……私に、それが出来ているか。きっと、それが不十分であるから、この力も名前も禁じられているのかもしれません」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
          Faith
「今の私に、そうした信念があるとは、思えませんから」

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :「……そうか。じゃあ僕たち、少しだけ似た者同士だ」

灰院鐘 :
「僕も覚醒したときのことはあまり憶えてないんだ。というよりも、そうだな。それ以前と今の自分にあまり繋がりを感じない」

「ここにいるのは十何年かの人生を生きた灰院鐘ではなく、目覚めてから出会ったすべての人を記憶に留めてきた"僕"だ」

灰院鐘 :
「戦う力も。戦うための理念も。UGNから多くの物を貰った」

灰院鐘 :
「……でも、信念はない」

灰院鐘 :
「僕はただ、なんでもない人々の営みと……力ない人のために戦う選択をした人が好きなだけだ」

 それは欲には成り得ても、信には至らないと、穏やかに断言する。

灰院鐘 :
「でも君なら大丈夫だよ。自分を顧みて反省できる人は、そう簡単に間違わないさ」

灰院鐘 :
「これは憶測だけどね。リリアさんは付け焼き刃の信念を掲げるより、君自身に見出してほしいんじゃないかな。君が胸を張って戦える理由を」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚はその独白を静かに聞いていた。
 忘却された覚醒と、断絶した自己。焼却された記憶の上から、生まれついての戦士が鍛鉄して生まれたラフメタル。
 
「あなたらしいと言えば、あなたらしい動機ですね」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 芯と呼ぶほどではなくとも、その望みが善き方向に向いていた。その好悪の故にこの場に収まっていると彼は言う。
 純粋であるが故の迷いなき答えだった。

「……一つ伺っても?」

灰院鐘 :「どうぞ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「忘れてしまった自分のこと。気にはならないんですか」

灰院鐘 :
 彼はほんの少し、驚くように目を瞬いて言った。

「考えたこともなかった」

灰院鐘 :
「まあ、そうだね。今は"僕"だし」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……まあ、それもあなたらしい答えだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「けれど、私も実を言えば然程は問題としていない。気になりはすれど、それは自分の責務と秤に掛けるべくもない。
 案外、そういうものなのかもしれません」

灰院鐘 :「だろ。ないならないで、案外なんとかなる」

灰院鐘 :
「それに今回の作戦は他所の人と話すにはいい機会だ。みんなに聞いてみるのはどうかな」

灰院鐘 :
「君、ナタリーくんとは平行線のままだったろ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「彼女に、ですか」
 やや視線を落とす。色々と思うところがある様子だが、それを口に出そうとはしなかった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「考えておきます。どうあれ、彼女と同行する機会は訪れるでしょうから」

灰院鐘 :
「彼女にかぎらず、かな。……うん、そうしてもらえると嬉しい」

灰院鐘 :
「そうだ、水無瀬さんにかけてみる? 彼とはいつでも話せるんだろ。いま何してるのかなあ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「普通に仕事中でしょうに。
 それに私情の悩み相談で掛けるのは憚られます」

灰院鐘 :「いやいや、大事なことだ。なんたって私情が一番モチベーションに関わってくるからね」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私のモチベーションは保たれていますし、何よりあなたに話した意味を考え直して欲しい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私は彼らに関しては扱いを慎重にしたいんです。
 彼ら個人は兎も角、その背景に対して」

灰院鐘 :ション……

灰院鐘 :あ! とてのひらに拳をおく。ポム

灰院鐘 :「──慎重に仲良く!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「………………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「とにかく、このことは一旦あなたにだけ伝えておきます。話して気持ちの良い内容でもありませんから」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そして……
 これから私が力を遣う上で、一つ約束してほしい」

灰院鐘 :「うん」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「もし私があなたを忘れても、あなたも今まで通りに接してほしい。
 あなたには面倒を掛けますが、念のためです。作戦の行動についてはあなたに記録を任せます。
 尤も、私が気付かないだけで既にそうしてきてるのかも分かりませんが……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……記憶の欠損に関しては、覚醒して以来起きてはいない。私の認識する限りにおいては、ですが。
 ただ、これまで以上に力を遣い始めた時、どうなるかは未知数です。それを伝えておきたかった」

灰院鐘 :
「……いや、構わないよ。頼ってくれてうれしい。……」

灰院鐘 :
「"██▅█"──」

灰院鐘 :
「君の懸念する事態が起きなければいいというのは、たぶん楽観なんだろうね」

灰院鐘 :
「……そうだ。習慣をつくろう」

「この作戦の間だけでかまわない。僕は朝と晩、君にメッセージを送ろう。おはようとおやすみを一度ずつ。

 身に覚えがないときが、変化の兆しだ」

灰院鐘 :
「そういう動機があれば、僕も端末の使い方をおぼえられる。どうかな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……私としても異存はありません。お願いします"ラフメタル"。
 苦労を掛けて、すみません。でも……これで気兼ねなく力を遣えそうだ」

 こくり、と首肯する。

灰院鐘 :
「勇魚くん」

灰院鐘 :
「僕は君に気兼ねなく自分を燃料にしてほしくて、そうするわけじゃないよ。
 なくても何とかなるとは言ったけどね。失くさないなら、それにこしたことはないんだ」

灰院鐘 :
「…………」

灰院鐘 :
「──よし決めた。作戦の合間に観光をしよう」

灰院鐘 :
「僕と君だけじゃなく、作戦に参加するみんなに協力してもらうんだ。ディアスさんあたりは乗ってくれそうだし」

灰院鐘 :
「安易に手放せないような思い出をつくろう。最悪、いっそ忘れてしまいたい記憶でもいい。そっちのほうが捨てにくいだろ、君」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「失礼な。自己管理は出来ている方です。
 少なくとも貴方よりは」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ですが……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「観光ですか。どのみち、下見はして回ることになるでしょうし、カヴァーとして旅行者を遣うことになる。
 その案自体には賛成です」

灰院鐘 :
 僕も自己管理くらい……
 いや……そうかな……そうかも……

灰院鐘 :
「知ってた? ルイジアナは世界唯一のタバスコ工場がある場所なんだって」

灰院鐘 :
 こっち
「合衆国に来るのが決まったとき、いろいろ調べたんだ。やっと役に立てられる」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……普段より資料を読み込む時間が長いと思ったら、そんなことを調べていたんですか……」

灰院鐘 :観光雑誌は現地での活動に役に立たないと言われて数週間……! やっと日の目を見るときだ!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……まあいいでしょう。エージェント紅が今は周辺の警護に当たっている筈です。
 一旦ノルマは達成したことですし、彼女と合流する体でパトロールついでに付き合いましょう」

灰院鐘 :「……! ありがとう!」

灰院鐘 :せっかくだし水無瀬さんとも通……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :今から遊びに行くとはいえ、遊びに来たんじゃないんですよ。

灰院鐘 :もちろん!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………本部合流の日程と擦り合わせてスケジュールを作りましょう。下見の範囲は広い方が後続のメンバーの援護になる」
 諦めたように大きなため息

灰院鐘 :(うんうん、と勢いよく頷くスケジュール調整において何の役にも立たない男)

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……では、行きたいところを列挙していって下さい。効率よくパトロールできるルートを構築します」

 言いつつ彼女はペンを取って、ニューオーリンズの地図を卓上に広げる。

灰院鐘 :「沿岸部の湿地にワニがいるんだって」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :「そこまで行く気ですか」
渋々と地図に描き入れ

灰院鐘 :わあい

灰院鐘 :「ガンボも食べてみたいね。蘭芳さんお昼もう食べちゃったかな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ああ、そういえばアレはルイジアナ発でしたね。
 手頃な外食店を見つけておきましょう」

灰院鐘 :わあい

SYSTEM :
 その後……
 現地UGNの支援を為した二人は休暇日として道中のパトロール中の紅を加えて、州の各地の観光……もとい現地の下見……に向かった。
 

SYSTEM :
 都市ニューオーリンズの穏やかな日常を見て回った彼らの様子はここでは割愛する。
 タバスコ工場見学、ワニの湿地のボートツアー、そして風土料理の食事、と……
 灰院鐘がそれに満足したかは分からないが、少なくとも紅は非常に楽しんだ様子で、勇魚はそれに振り回される体で日々を過ごしたのだった。

SYSTEM :
 今はまだ、戦場となる前の薄氷の上に成り立つ日常を、不安定なままの土台の上に築き上げていく。
 それをどう捉えるかは人に依るだろう。
 だが少なくとも……受け取ったものを糧として今から積み上げる彼らにとっては、得難いものであったことは確かだ。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【Information更新!】

 NPCカードの使用できるエフェクトが解放されました

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
勇魚=アルカンシエル
 『極大消滅波』……小規模戦闘エリアを制圧扱いとする/シナリオ1




【Interlude①】

SYSTEM :
【Interlude①】

登場PC: Syou Kain
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ニューオーリンズに来て数日が経つ。
 現地ガーディアンズの支援と情報を取得したメンバーは、観光の体で周辺のパトロールを開始する。
 ニューオーリンズは薄氷の上の平和によって成り立つ場所だが、別段中東の紛争地帯のように絶えず戦火で焼けただれた街並みが広がる訳ではない、寧ろそうであるからこそ邪悪が私腹を肥やしながら潜伏し、偶さかにそれが表に現れるのだ。

SYSTEM :
 ということではあったが、何も起きない限りにおいてはこの街はれっきとした合衆国の州都。主要な港湾都市のひとつということもあり、観光地として見て回るべき場所は多く存在していた。
 であればこそ、幾らか気が緩むのも致し方なく。或いはその街を歩く灰院鐘もそうであったのかもしれない。

灰院鐘 :
 ルイジアナ州、ニューオーリンズ。シャンバラを束ねる男の潜伏先──ではあるが、いまのところ街は静穏そのものだ。人々は昨日と同じ今日のさなかにあり、道行く彼らに紛れ込む戦士たちも観光の日々。

 満喫とはいかないまでも、ちょっと気の緩むそんな午後。

灰院鐘 :
 ふと思い立って、端末を手にとる。道の先には横並びの赤と緑。仲良くしてるかな──と伺おうにも、雑踏に阻まれてお互いの声は届きそうにない。

灰院鐘 :
 なんだか委縮しているふうな一方と、
 いつも通り自他にきびしい片一方。

 ちょっと悩んでから、お互い良い機会だし、と良いように解釈する。向こうは打ち解ける機会で、彼にとっては──

灰院鐘 :
「もしもし水無瀬さん! いま大丈夫かな」

 アポなし突撃のおじかんだ。記憶からひっぱりだした番号にかけて、繋がると同時に第一声を放つ。

SYSTEM :
 あなたは渡された端末を操作して番号を入力する。
 当然ながらこの作戦は極秘任務であり、アメリカ全土を舞台とするとはいえ広くは知られていない。電波を傍受されることも妨害電波によって通信を妨害されることも問題となる。
 その上で素人に対しても運用に失敗しないように、技術職の水無瀬は専用のツールを作成し、各自に手渡していた。

SYSTEM :
 電磁波によるショートや外的な指圧による破壊を防ぐ特製のセラミックスで出来た端末は、番号を通じて各地に敷設した踏み台用のサーバにアクセスし、生態認証及びにRパターンによる認証を経由。
 それが承認されると、本部オペレータに通信が届き、発信ポイントに向けて返信が返されることとなる。

水無瀬 進 :
 暗号化された電子信号が踏み台となるサーバから送信されることで、その電磁波を通して……

『やあ、御呼びかなグリズリーの君。
 ……おっと、グリズリー呼びは宜しくなかったか。失敬失敬』

 このように、発信地点の任意の電子媒体に干渉することが可能となる。尤も、今現在はその急を要する事態とはなっていないと把握していたため、電話機のように音声のみを飛ばしているが。
 これが《サードウォッチ》による通信媒体を用いての遠隔干渉だ。

灰院鐘 :
「……! わあすごい、ほんとに繋がった。セラミックス踏み台ポイント電磁波」

灰院鐘 :
「あ──ぅ」

灰院鐘 :
「うん、できれば灰院鐘──えっと、ショウ・カインのほうが分かりやすいかな。それか"ラフメタル"と呼んでほしい。くまさん……くまさんほどじゃないから」

水無瀬 進 :
『ああ悪かったよショウ君。くまさんはナシってコトで。
 それで何かな、見たところ喫緊の用事でもないみたいだけど? それともレディの相手続きでちょっぴり疲れてきたのかい?
 生憎カウンセリングは専門外だから、話を聞く程度になるけど』
 

灰院鐘 :
「うん、用と言うほどの用はないんだ。ただ、あなたが」

灰院鐘 :
「──いつでも話せるひとって聞いたから!」

 解散前のミーティングからずっと、多大な誤解をしているらしい。通話越しにも伝わる(かもしれない)笑顔!

水無瀬 進 :
               メンタルケア
『君ねえ……まあ、いいさ、一応暇潰しもこの際兼業といこう。
    ダクト
 仕事柄柔軟な対応をすることも多いしね。仕様よくわかってないカスタマーの窓口対応だってするものさ』

灰院鐘 :わあい

灰院鐘 :
「そうそう、水無瀬さんから貰った端末ちっとも壊れなくて──うん、おかげで初めて一台の犠牲も出さず友達にメッセージを送れたんだ。ありがとう」

水無瀬 進 :
『……君毎回壊してたの? マジで?
 そんな気はしてたけどほんとに毎回?』

灰院鐘 :
「うん。どうも意気込むと、こう、力が入ってしまうみたいで……バキっと。あるいはビビっと」

水無瀬 進 :
『そうか……大変だったろう、君も君の上も。
 念を押して軍用に端末をチューンしておいてよかった。ウチのキュマイラでも壊す気で押さない限りは耐えられるよう作ったんだが、どうやら正解だったらしい』

灰院鐘 :
「とても助かってる。いつでも好きなときに連絡が取れるのって便利だね」

 現代人としてもブラックドッグとしてもあるまじき暴言。

水無瀬 進 :
『あっはははははははは……そりゃどうも』
 露骨に反応に困っている……

灰院鐘 :
「おかげでこうしてあなたと話せるし。立場上、外部の人と接する機会ってあんまりないんだ」

灰院鐘 :
「一般の人には"なかったこと"にすればいいとはいえ、接触しないで済むならそれが一番だと言われてるからね。もちろん関わりの断絶は僕たちには致命傷だから、時と場合だけど」

 けーすおあけーす!

水無瀬 進 :
『あー……そうか。
 君学校通ってないんだったね。じゃあ友達なんかもほとんど本部の人なわけだ』
 

水無瀬 進 :
『今17だったよね確か。
 ……ちなみに親御さんは?』

 何となく察しているものの、相手がその辺りを気にしていないと見るや、聞きにくいことでも直接聞きに行けるというのは果たして善い事なのか悪い事なのか。

灰院鐘 :
「どうだろう」

灰院鐘 :
「覚醒してからずっとUGNのお世話になりっぱなしで、そのあたりは考えもしなかったな。戸籍とかの処理はなんとかしてくれたそうだから、うん、話はついてるんじゃないかな」

水無瀬 進 :
『……君、その話するたび今の僕みたいな反応をされてきたろ』

灰院鐘 :
「そうかな。……そうかも」

灰院鐘 :
「まあでも、大丈夫だよ。今の僕にとっても、彼らは大事な人だ。どこにでもいる何でもない誰かを守るために僕たちUGNは戦ってるんだから」

水無瀬 進 :
『成程ねえ』
 感心したような言葉。純粋に相手を褒めているようで、どこか無理に距離を置こうとしているような趣さえあった。

水無瀬 進 :
『それで今はどう? 楽しくやれてる?
 何せ両手に花、二人とも美人さんときた。ディアス辺りなら天にも昇りそうな……ああ、デトロイトもだった。くそ、思えば何故か女子が多いぞこの任務……なんで僕だけ割を食ってるんだ……?』

灰院鐘 :
「いやあ、ははは。僕のほうは両手というよりは前後かな……仲良くしてくれたらいいんだけど」
 微妙な距離感。思えばどちらか一方と話はしても、あの二人だけで会話が弾んだ記憶がないような……。

水無瀬 進 :
『うわあ。
 そ、それは心中お察しする……君も苦労人だねえ』

灰院鐘 :
「難しいね。所属が同じ、目的が同じ、だけではうまくいかないみたいだ。水無瀬さんはそういうの、ある?」

水無瀬 進 :
『近い経験ならまあまあ経験があるね。
 専ら押しの強い相手方に合わせるために何度となく苦労させられてきた』

灰院鐘 :
「……ダンさん? ディアスさん?」
 なんとなくこそっとなる音声。

水無瀬 進 :
『そこは、想像にお任せしよう』
 肩をすくめて

水無瀬 進 :
『けどまあ……楽しかったな。色々と難所を潜ってきたが……』

水無瀬 進 :
『喉元過ぎればってやつかも知れないけど、そいつが生きてりゃ大抵は後で笑い話になる。
 君も大事にしなよ。トータルで見て、或いは終わりを見てハッピーなら後はすべてよしってコトになるもんだ』

灰院鐘 :
「そういうものかな。……ああ、でも」

灰院鐘 :
「苦難の道を、そうと知りながら進もうとする人を知っている。彼らの終わりがそうであるなら、僕もうれしい」

水無瀬 進 :
『……そうだねえ、そりゃそうだ』

水無瀬 進 :
『しかし何ていうか、実際に話してみて思ったが、君は本当にあれだな。
 おおらかっていうか人が好過ぎるっていうか……よく心配されるだろ』

水無瀬 進 :
『先輩風を吹かす気はないけど君は結構そういう子を引き寄せやすいタイプと見た』

灰院鐘 :
「というより、僕を心配してくれる皆が優しいんだと思うよ。ほんとうに良い人たちばかりで、いつも助けられてる」

灰院鐘 :
「UGNの皆だけじゃない。ダンさんが気にかけてくれてるのは何となく分かるし、ディアスさんも励ましてくれたし」グリズリー事件のときに

灰院鐘 :
「あなたもこうやって僕のおしゃべりに付き合ってくれてる」

水無瀬 進 :
『あらら、僕まで勘定に入ってるのか。
 けどまあそういうところが心配な人が多いんだろうね』

灰院鐘 :
「と……そろそろ彼女たちと逸れそうだ。その前に、えっと」

灰院鐘 :
「実はうっかり聞き損ねていたんだ。あなたの下の名前を伺っても?」

水無瀬 進 :
『ああ、僕の名前?』

水無瀬 進 :
『進だ。進むと書いてシンと読む』

水無瀬 進 :
『シン・ミナセだ。改めてよろしく、ショウ・カイン。
 ……といっても日本人同士で苗字逆さにして呼び合うのも何だけど』

灰院鐘 :
「……進さん」
 噛みしめるように名を繰り返す。胸に留め、刻む、儀式にも似た行為。

灰院鐘 :
「……! 言われてみればそうだ。こっちの流儀に合わせなくちゃって肩肘張ってたらつい」
 でっかい笑い声。おそらくそれが、今日彼の見せたしぐさでいちばん年相応のものだった。

灰院鐘 :
「長々とありがとう。……良ければまた話し相手になってもらえないかな」

水無瀬 進 :
『ああ、いつでもどうぞ、だ。
 安全圏でデスクワークさせてもらってる身だ、用があってもなくても気が向いた時にセンドしてくれ』

灰院鐘 :
「せんど!」

灰院鐘 :
「うれしいな。それじゃあ遠慮も気兼ねもなく! またね、進さん!」
 うきうきで通信を終えて、はたと気付く。

灰院鐘 :
「……すごい。一台の犠牲もなく通話を終えられたのは、これが初めてだ」

SYSTEM :
 まじまじと見つめる携帯端末からは、絶えず無邪気な指圧と電磁波に堪えてきた赴きある雄姿が残されていた。
 本来ならイヤーカフス程度のごく小さい端末を、機能を極力排して単純化し堅牢に仕上げた賜物だろう。

SYSTEM :
 そして通話に夢中になっている間に、先を行く二人がずいぶん遠くなっているようだった。
 急がねば本当にはぐれてしまいかねない。

灰院鐘 :
「おっと」
 感心のまなざしを一旦前へ。端末を上着にしまい込んで、慌てて歩を早める。

 二人の様子はどうだろう。横並びのまま、こちらの遅れに気付いた様子はない。もしかしたら会話が弾んでいたりして──なんて淡い期待を抱きながら。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【MIDDLE ② - 流刑人】

SYSTEM :
【MIDDLE ② - 流刑人】

登場PC: ATRA
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ミシガン州デトロイト。自動車産業で有名な街でもあるこの場所は、同様にUGNの進駐が進んでいない地域でもある。
 危険度に関して言うならば、未開の地であるが故に決して低くはないが、敗色が濃厚と言うほどの戦力差がある場所ではない、言うなればトライバルエリアとも言うべき場所だ。

SYSTEM :
 あなたがその場所に向かうことにしたのは、その危険度を鑑みてのもの……というだけではなかっただろう。
 自らの情報筋から、この街の裏で糸を引く人間が"ラクシャーサ"であると判明したからでもあったはずだ。

SYSTEM :
 そして、それはこの街の調査を行うにつれてよりはっきりした。
 自国は丁度二時を回ったころ。
 あなたは雑踏の郊外で、直接コンタクトを取った裏社会の情報筋と接触し、この街の近況に関する話を聞き終えたところであった。

SYSTEM :
 ……犯罪都市としても悪名高きこの都市がUGNの進駐を遠ざけているのには理由があった。
 それは都市の主要工業を担う重工業の財閥による企業間の軋轢である。

SYSTEM :
 UGNは米国に正式に認められてはいるが……その財源の多くは英国の大企業ランカスター・グループから来るものである。
 金融危機の影響で大損害を被ったクライスラー等含めた、このデトロイトを仕切る企業連はランカスター・グループとは対立関係にある。その関連組織でもあるUGNの拡大を警戒するのはある意味では道理であった。

SYSTEM :
 中でもその彼らの不安を焚きつけ、州知事らに圧力をかけているのがデトロイトの大企業O-tec社だった。だが……
 このO-tec社に関して、良くない噂があるという。

事情通な若者 :
「なんでも、そのオーヴァーテック社……O-tecって略されてるんだが、あの辺がギルドなんだって話があるんだよ」

事情通な若者 :
「ギルド。レネゲイド関連技術を売っぱらってる悪い会社ね。
 ほら、この手の力が広まってから甘い汁を吸ってるんは俺らみたいなのだけじゃないっしょ?」
 

事情通な若者 :
「俺らみたいなのはUGNに認められたうえでせこせこと能力で楽させてもらってっけど、あの連中はFH周りと繋がってレネゲイドに関する商売を進めてるらしいんだわ。
 FHのこわーい奴らは天下のデトロイトの大企業、O-tecとがっちり繋がってるって話で……」

事情通な若者 :
「うん、これこれ。
 最近はこんなもんまで輸出し始めてる」
言いつつ見せられたのは、事前調査の際に確認できたあの機体だ。

事情通な若者 :
「これ、分かる? 何でも新型のエンジンを積んだ二脚歩行の戦車……らしいぜ。
 このナリで数十メートルジャンプ出来るって噂だ。どんな荒れ地でもひょいひょい飛び越えて、二対のコイルガンで穴だらけってわけ」

事情通な若者 :
「多分この街にも配備されてるんじゃねえかな。あんま嗅ぎ回らんほうがいいよ。
 そういう面倒なの、本職の人らに任せておきゃあいい。ここはお目付け役もいねえから、結構能力は好きに使っていける方だからさ。もっと楽しくやろうよ」

SYSTEM :
 ……そんな様子のイリーガルの青年は話の後、ほどほどにナンパを続けてきたのを退けて。
 今のあなたは、一通りの情報を纏めて宿に戻ろうとしていたところだった。

アトラ :
「ま~、そうだよなあ。ウチだって運よく良い人らに使って貰えてることが多いだけで、必死に稼ごう!ってなったらそういう危険な橋の方が良いんだろし。
 ……ひえぇ。歩ける戦車とか、ウチらみたいな人っ子が正面切ってぶつかるもんじゃないもんなあ」

アトラ :
 でもそんな簡単に動かしちゃうもん?とか、別に此処に居るのはその関係者だけってわけじゃないだろうに、とか。
 そういった常識の考えは片隅に追いやりつつ、世渡りは上手そうで───……まあうっかり、触れちゃいけないところに触れちゃって二度と日の目をみない可能性もゼロじゃなさそうな……そんな青年からの誘いは笑顔と《竹馬の友》でゆるく躱しておいて。

アトラ :
 そうして、街中を闊歩する。ひっそりと……などと、易しい暮らしをしてきたつもりはないが、事実こういった“街”に暫くとどまって何かしようなどというのは久々な気がするので気にされない程度に辺りでも見てみながら。何せ、この手の都会は留まるにしても色々と都合が悪かったし。
 まあ、そういう事情を置いて此処に居るのも一時とは言え自分を手駒の一つとして数えてくれている、国───あるいは道行く人々、それらの日常を守護する人らに報いるための行動の一環だ。
 勿論、それだけで此処まで出て来たわけじゃない。それは認める。

アトラ :
「いや~。守ります・戦います!って簡単には受け入れられないものなんだなあ。
 そこにお金とか派閥とかが絡んじゃって余計にだし、此処に至っちゃギルドだか何だか……」

 ……大変だな、敵が多いって。うんうん。

SYSTEM :
 そう独り言ちながら、郊外を抜けてメインストリートに戻ろうとあなたは歩を進める。
 現在、テンペストの面々は別の場所を巡回している様子だ。件の二脚戦車が都内に潜伏している情報を受けているため、出現と同時にすかさず足止めに当たれるようにしているのだろう。
 そのリーダーを務めるディアス・マクレーン少尉も、折角の少女たちと両手に花と意気込んでいたところを水を差されて渋々という様子だったが。彼とて見てくれはアレだが立派な軍人であり、仕事には誠実な男だ。私情を挟まず巡回を行うことにしたようだ。

SYSTEM :
 ……それは、アトラにとっては僥倖だっただろう。
 何故なら。

"ラクシャーサ" :
「────あーあ。帰れって言ったのに。
 何で来ちゃうかな、この子は」

 聞き覚えのある声は、すぐ後ろから。
 全く気配なく、戦鬼は裏路地の奥の適当な木箱に腰かけてあなたに話しかけていた。

アトラ :
「うえっ───……」

"ラクシャーサ" :
「間抜けな声出しちゃって。何驚いてんだか。
 あんた、あたしに逢いに来たんでしょ」

アトラ :
「……そ、それはそうだけど。ってか、それ期待してこっちに探り入れようとしてたんだけど。
 幹部だとか、そういうのって言うからにはやっぱ奥の方とかでどかっと待ち構えてるもんかと……」

 似合わなさそうだけど、そういうの。などと気安く出掛かる言葉は噛み潰しておく。

"ラクシャーサ" :
「ここはあたしの庭だし、当然でしょ。
 あたしの能力、知らない訳じゃないでしょ?」

"ラクシャーサ" :
「あたしは何処からでも出てこれるし、どんな隙間からでも移動できる。加えて『アレ』もある。
 独り身ってのはしんどいけど程々に力があったら結構自由にやれるもんだよ。とくにこんな組織だと」

"ラクシャーサ" :
「だいたい、性に合わないし。
 デスクワークなんてガラじゃないし、そういうの代行してくれる奴に任せるに限るわ。あたしは、そういう奴の用心棒みたいなもん」

アトラ :
「……結構好き勝手言われてたけども。推定エグザイルとか、こっちだってボケっと見過ごしてるだけじゃないし。
 …… ……いや、まあ、絶対似合わないもんデスクワークは───……って」

アトラ :
「そうじゃなくて……それはともかく、何で出てきてくれたの?
 言われた通り帰らなかったから、お仕置きってこと?言っとくけど、気になること全部知るまでは叩かれたって逃げないよ」

"ラクシャーサ" :
「簡単に言えばそんなとこかな」

 よっこいしょ、と木箱から立ち上がる。ゆらり、と弛緩した構えで剣の柄頭に、撫でるように細指を這わせて。

"ラクシャーサ" :
「とっとと帰れ、って言って訊かなかったこともそうだし?
 大人しくする気もなさそうだし?
 何より……」

"ラクシャーサ" :
「あんたさ……
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 なんでよりによって連中のとこにいるわけ」

"ラクシャーサ" :
 ・・・・・・・・・・・・・・
「あんた自分の立場わかってんの?」

 冷ややかな声で告げる。明確な怒気が籠った、有無を言わせない声。

アトラ :
「…… ……」

アトラ :
「…… ……ウチだって、急いでんの。焦ってんの。ぎりぎりなんだよ。
 そうじゃなきゃ…… ……もっと、手段選んでるし」

"ラクシャーサ" :
「……そりゃ、そうでしょうね」

"ラクシャーサ" :
 怒気を抑えて、考えるように瞼を閉じる。尤も、だからといって理解したという様子でもない。

「……あの時」

"ラクシャーサ" :
 エヴァンジェリン
「"預 言 者"が共鳴したのは、あの拉致ってきた子だけじゃない。
 あたしと、あんたと、あの子と、"預言者"。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 あの瞬間四人が共鳴してたんだ」

アトラ :
「……うん」

"ラクシャーサ" :
「此処にいれば、多分その先に辿り着ける。
 あいつらがひた隠しにしたもの。
             ネツィヴ・メラー
 あたしの身の内に眠れる"浄 火 の 柱 "の原典について。
 やっと手掛かりが見えてきたんだよ」

"ラクシャーサ" :
「だから、もう暫く大人しくしてて。
 ・・・・・・・・・・・・・
 最悪世界がひっくり返ろうとあんただけは悪くはしないから」

"ラクシャーサ" :
「話せることはそのぐらい。こっちは順調に手が進んでるから。
 それが分かったなら、大人しくしてなさい。不安だろうけど、考えて見なさいよ」

"ラクシャーサ" :
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「世界がどうなろうと大概あたしたちの身の周りなんか変わりやしなかったでしょ」
 

アトラ :
 彼女と自分の共通点……は、分かる。
 ……あの“預言者”と、ナタリー。それらを含んで───……彼女の目指すものへの否定の言葉が出せないから、喉が詰まったような声しか漏らせない。
 彼女は真剣だ。彼女から与えられたものを受け取って、必死に今日を暮らしていた自分よりも余程前にいる。

アトラ :
 世界がどうなろうと身の周りなんか変わりやしなかった。その言葉にも、苦々しく頷く。
 ……訪れる結果が、今の世界にとって最悪であっても、結局……そう変わらないのかもしれないが。

アトラ :
「で、でも。でもさあ…… ……」

 一概に頷けないのは、今こうして果たされている目的のためとはいえ関わってしまっている人たちも居るからだ。
 ……旅する者としての、今日の縁。“長い付き合い”。……物分かりだって良い方じゃない自負があるから、確かに、の一言で自分と彼女の殻に閉じこもれない。

"ラクシャーサ" :
「でも、何よ」

 短く、突き放すように告げる。

"ラクシャーサ" :
「別にあんた一人逃げ出したってあいつらは糾弾したりしないわ。その資格だってない。
 あいつらのしてきたことを思えばおつりがヤマほど帰ってくる」

"ラクシャーサ" :
「……ああ、面倒臭いなもう。
 まだ言うなら、"預言者"の例に倣うとしようか」

アトラ :
「わか、ってるけどさあ……!」

 冷たい声に怯みながら、短く唸る。唸って、己の荷物を握りしめておく。

"ラクシャーサ" :
    ・・・・・・・・・・
 即ち、ふんじばって監禁する。

 右手を剣柄に這わせ逆手に取り、左手を開いて宙にかざす。

"ラクシャーサ" :
 双方の間合いは15mほど。
 抜き打ちで銃を取れば、十分間に合う。
 銃程度まともに受けても殺しはしないことなど、アトラも分かっていたことだろう。どだい、彼女とこういうことは何度も経験してきた。

"ラクシャーサ" :
 だが故に分かるだろう。
 幾ら白兵武器を手に持っていようとも、こんなものはブラフに過ぎない。
 ・・・・・・・・
 既に射程範囲内だ。それどころか、喉元に刃が突き付けられているとさえいえる。

"ラクシャーサ" :
「千刃空夜叉……そういうコードであたしは呼ばれてる。由来を聞いた時は本気でそいつをぶった切ってやろうかって思ったけどね」

"ラクシャーサ" :
 コイツ
「 剣 はブラフよ。無限に伸びる剣なんてのは、あたしの能力の実態を隠すための玩具」

 くい、と左手が動く。
 それに合わせるように……アトラの頬、柔肌に一条の赤い線が延びる。

アトラ :
 ……彼女の動きを見てからの反応は、そう遅くはならなかったはずだ。
 ほとんど反射で縋るように握っていた荷物に手を突っ込み散弾銃を掴み取る───……けど。
 ちゃんとは間に合わない。見た目の射程など当てにならないのは良く知ってる。だから、頬に走った赤い熱に、驚く前に歯を食いしばり。

"ラクシャーサ" :
「もう絲は、あんたの周囲に広がってる」

"ラクシャーサ" :
  ク ラ ウ ン キ ュ ー ビッ ク
「《立方剛晶斬絲圏》……
 こいつで、わがまま言う暇もなく──」

 黙らせてやる、と。その指を動かそうとした。

"ラクシャーサ" :
「──────────」

 した、が。
 その絲がアトラの身体を這うように蠢き、震え、しかし何ら害を及ぼすこともなく。

"ラクシャーサ" :
「……っ」

 矢庭に構えを解き、口を拭う。弛緩した立ち振る舞いと同時に押し付けられるような重圧も解かれる。

「ちぇ。こんな時にか。
 まあ、余裕ないっつったけどさ。
 大概あたしも同じな訳。わかる?」

アトラ :
「……───ちょっ、ちょっと」

 ……己の身体を絡め取るべく這った線は、しかし己を戒めることはない。
 見れば、原因は明白だ。思わずほんの少し駆け寄ろうとしてしまう。

"ラクシャーサ" :
 刀を仕舞い、何事もなかったかのように大きく伸び。何でもないような素振り……まるでアピールするような素振りは、『大丈夫だから来るな』と無言で告げるようだった。
 

"ラクシャーサ" :
「へーきへーき。まだいくらか余裕あるし、アテ外れてなきゃ時間までに何とかなる。
 ……じゃ、あたし帰るわ。何かどっと疲れちゃった、久々にあんたの相手してるとさ」

アトラ :
「な、……なにそれ。そっちこそ大人しくしてればいいじゃん、…… ……」

 そういうわけにもいかないからこうなってる、というのは分かってる。が、それでも言わないわけにもいかなかった。
 ……この場で止めても彼女は止まるまい。自分も、そもそも一人で止められると思っていない。

アトラ :
「…… ……うぐ。こっちだって久々だし」

 ある意味で疲れたのも同じだ。

"ラクシャーサ" :
「はいはい。でも、もう一度伝えたからね。
 これで三度目があったらその時は容赦なし。殺しゃしないけど、結構マジで獲りにいくから」

"ラクシャーサ" :
「あたしは、邪魔する奴等は全員こいつで分からせてきた。昔から、今まで、ずっと。
 今回も、そうするだけ。別に何も変わりゃしないんだから」

 鞘に納めた剣柄を握って、そう嘯きながら。彼女は、アトラから背を向けた。

SYSTEM :
 直後……地面から無数の絲が地面を音もなく貫いて這い出てくる。
 絲が繭のようにラクシャーサを包み、視界から消えると。繭の絲は解れ、その奥には何者の姿も見ることは出来なくなっていた。

アトラ :
「……それだって、さぁ」

 異議の一つでも申し立てたいところだが、……やめておいた。
 今、心中で渦巻いている幾つかの感情が言語化をまごつかせている。そうして。
 迷う間に、這い出た絲が彼女を隠し───……文字通り、姿を消した。

アトラ :
「…… ……ばか。ばぁーか!」

 何処からでも現れられる。何処でも見られている可能性がある。ならまあ、この程度の憎まれ口は聞いてもらえるだろう。
 まあ、あまり意味のある行為でもないが。本人が目の前に居ない中でしか吐けないものもある。

アトラ :
「…………はあ」

ブルー・ディキンソン :ではでは、ちょっとお邪魔しちゃおうかと思うんですけど……。

GM :オッケー了解ですです シーン入りに登場侵蝕はありません

ブルー・ディキンソン :はぁい

:
 こつ、こつ、こつ。

 一悶着があったことも知らず、ただただ、ゆっくりとそいつはやってくる。

:
「アトラさ〜ん?
 顔色が悪いですよ〜、体調不良ですか〜?」

ブルー・ディキンソン :
「……なんちゃって♡」

 ちょこん、と。
 有無を言わさず旅人の右肩に首を乗っけるのはピンク髪のメイド服の変人だ。
 ……大方、近くにいたのかも知れない。

アトラ :
「ぅわー!?出っ……!!?」
 
 声と共に静かに伸し掛かる軽い重みに思わず飛び退く。

アトラ :
「…… ……なんだ、ブルーさんかぁ。普通に驚かせないでよ……!」

ブルー・ディキンソン :「今ゴーストか何かと勘違いしたな〜?」

ブルー・ディキンソン :「てへ。
 まあ驚かすつもりだったのは本当のことなんですがネ……失敬失敬」

ブルー・ディキンソン :

ブリーフィング
「事前作戦会議の時にあんなに良いテンションでいたのに、
 つい後ろから見たらしょぼくれてるもんだから、そりゃあ驚かしてでも元気付けようと思っちゃいますよぅ」

 わ、と両手を広げて大袈裟な仕草。
 作り笑いは大得意だが、今回は作っていない。

アトラ :
「……そ、そりゃあ恥ずかしいところを。いやよく考えたら最初にも見られてたけども……。
 っと、なにやってんすか?……じゃないな。ブルーさんもこっちで動いてたんでしたっけ……」

 ……得体の知れない立ち回りの一人だ。今の話、何処から何処まで知られているのだろうか。
 自分から探る……のは、墓穴を掘りそうだから不味いが。

ブルー・ディキンソン :
「まあ、色々と。
 どちらかというと、荒事でしたが……」

ブルー・ディキンソン :
 ・・・・
「居たんだ? 元カノさん」

 探らないのはいい傾向だ。
 だがこっちは、探らない理由はない。

ブルー・ディキンソン :
 ……まあ、どっちみち。
 "多分そうだろう"と思える雰囲気だったわけだから、鎌かけにすらなってないと思うが。
 いずれにせよ、先程のジャーム討伐において見かけた"猟兵"からして、幹部が一人居座ってるのは確実だ。

「……"猟兵"を見かけてね。多分、誰かいるだろうと思ったんだけど」

アトラ :
「元カノて」

 うぇ~、と。驚きと困惑が混ざったような声音と共に手を振り否定する。

アトラ :
「大体それならまだ、お嬢様とかが言ってたみたいにお姉ちゃんって呼ぶ方が近いかも、っす───…… ……けども えーと……」

 しまった、と漏らす前に無理矢理言葉を繋げようとし、続く中身が浮かばなかったのかそらを見る。
 ……いや、待て待て。彼女が居ること自体に不思議はないのだ。別に、こっちが焦る必要は全くない。

アトラ :
「肯定っす。ウチの調べもののおかげでここがあの人の担当区だってわかったんで……」

ブルー・ディキンソン :「なるほど」
 頷く。
 それから少し、一拍おいて。

ブルー・ディキンソン :
「口論、したようだね。
 ……そういうもんでもないか、最初に会った時みたいな感じだったのかもね」

 サングラスを徐に取り外した。
 その時の目は、ブリーフィングの時の茶化すような目つきでもなんでもなく、
 真剣に───何かを見定めるような目で。

ブルー・ディキンソン :「悩んでるの?
 自分の姉貴分みたいな人と、戦うかもしれないこと」

 ……概ねの内容を照らし合わせた上で、
 取り止めのない疑問を一つ口にする。
 ラクシャーサとの間に並々ならぬ関係があるのは、もはや周知の事実。
 あとはそこに何があるかだが───まあ、予想では詳しく語られることはない。
 ましてや、こんな怪しい女に言えるわけないだろう。

 そういう打算の方が目立つかもしれないが。

「ずいぶんやるせなさそうな背中だったからネ」

アトラ :
「…… ……」

アトラ :
「……別に。ぶつかって、戦うこと自体に何か感じるわけじゃないっすよ。
 喧嘩みたいなもんです。……そういう風になるのだって、分かっててこっちついてるんですから。
 ですけど、…… ……」

アトラ :
「何ていうか……まあ、それでも有り体に言えば悩んでんですよね。
 ……何でもかんでも使ってみて、抱えてる問題が解決するかも〜ってときに邪魔されんの、ブルーさんはどう思います?
 その問題が自分にも影響ありそう、ってときに」

 使うもの、というのを挙げ始めればキリがないし、置いておき。
 彼女がただただ善意でこの状況に巻き込まれているとは思い難いから、ついでにもう少し人柄でも見てもいいかもしれない、などと考えつつやんわりと疑問を返す。

アトラ :
 幸い、此方の陣営は善い人が多く意見が募りやすい。と、思う。自分自身、どうするかについて考えるには良い環境とも言える。
 胸中の感情や、先ほど言われたことの整理もそうだが…… ……それはそれ。後だ。

ブルー・ディキンソン :「いい笑顔で聞く質問じゃあないな〜?
 ふふん、茶化しただけよ」

ブルー・ディキンソン :
「……そうだねえ」
 右手を顎に添えて考える。
 ブリーフィングにおいては多少お喋りだったブルーが、少し押し黙った瞬間でもある。

ブルー・ディキンソン :
「……まあ、感情面の話をするならだけどー。
、   、  、 ・・・・
 そりゃあ、すげ〜ムカつくよね。
 何してくれとんじゃ! って気持ちにもなる」

 一つの目的があるとする。
 その目的を達成すれば、自分を取り巻くしがらみから抜け出せたりする。
 それに手を伸ばして、腕を掴まれたら、そりゃあ嫌な気持ちにもなる。
 必死に追い求めていたものを、お預けされるのだし。

ブルー・ディキンソン :
「……まあ、そう単純に言い切れるのなら人間ってここまで発達してこなかったと思うケド。

 その"抱えてる問題"の内容、邪魔される理由、自分への影響の如何程……状況によっちゃうところも大きいよね」

ブルー・ディキンソン :「ただ……」

ブルー・ディキンソン :
「……それを解決することで、
 ・・・・・・・・・・・・・・
 関係ない人間にまで影響が及ぶのだとしたら、あたしは諦めちゃうな」

ブルー・ディキンソン :
「……まあ、あんまり褒められんことしてる身で言えたことじゃないんだけどネ」

アトラ :
「諦め良いんすねえ、そこはちょっと意外っす」

アトラ :
「まあでも、そんなもんすよね。
 いやウチ、別にブルーさんのこと知ってるわけじゃないんで知ったこと言えないんですけど……」

ブルー・ディキンソン :「いーのいーの、それを言ったらあたしも同じよぅ」

ブルー・ディキンソン :「トラちゃんのこと、表面上の人となりしか知らないもの。
 カイくんにキャプテンにナッちゃんもそう。まだなーんにも知らない」

「むしろ『何偉そうなこと言ってんだ……』って思われないか不安だったのヨ!」

ブルー・ディキンソン :
「ま、諦めがいいのは過去の経験と反省ってやつだよ。
 そういうのがイヤ!って振る舞ってたらダストシュートされちゃってね〜」

アトラ :
「まあ怪しさで言ったらダンチっすもんねブルーさん。それこそウチが言えた話じゃないんだけど。
 UGNのえらい人と繋がってたからウチもあんま気にしなかったっすけども……」

アトラ :
「っていうかダストシュートて もしかして文字通りの意味っすか?」

ブルー・ディキンソン :「うん」

ブルー・ディキンソン :「トラちゃんになら言ってもいいか。
 わたしゴミ箱の中で死んでオーヴァードになったの。

 うへ、いざ自分で言うと最悪だなこれ」

ブルー・ディキンソン :「それがどうしてこんな格好してるのかってのは……長いから今度ね今度!」

アトラ :
「うぇ」

 それは普通に吃驚だ。というか、事も無げに語る内容でもない。
 それがトリガーになる、というのは分かる話だが、経緯が良くない。

アトラ :
「いやそっちの話が長いってことの方がびっくりっすけど……」

ブルー・ディキンソン :「あは!
 それもそうだね」

ブルー・ディキンソン :「今日に至るまで色々〜、そう色々あったのよ〜。
 一時期までは命狙われてたしぃ?」

 思い出したくないわけではないが、苦い記憶ではある。
 一応小さい頃はパパとか呼んでいたクチなのだ。それに殺害命令など下されればこうもなる。

「髪の毛だって染めてるしさ。
 体から生身の部分を削ったりしてこの通り」

ブルー・ディキンソン :「……あ!」

ブルー・ディキンソン :

アトラ :「う?」

ブルー・ディキンソン :「いつの間にかあたしの自分語りになってる!
 そうじゃないそうじゃない!」

ブルー・ディキンソン :「……ごほん。
 話を戻そっか、ええと」

「で……結局トラちゃんは、どういう答えを出すか悩んでるってことでしょ?
 "ラクシャーサ"の欲望(ねがい)を肯定するか否かってところ?」

アトラ :
「いや~でもウチ人の話聞くの嫌いじゃないっすよ!そうじゃなきゃこういう情報収集とか得意になりませんし」

 正しくは旅して回る都合上ある程度できるようになった、が正解なのだが……そこは割愛。
 しつつ、ふむ、と自分の顎に手を添える。

アトラ :
「悩んでは……まあ、いますよ。
 でも次会ったらぶん殴るって宣言されちゃってるんで、あんまり考えてる暇もないんです」

ブルー・ディキンソン :「なんと罰当たりな……こげな可愛いお顔を……」

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :
「トラちゃんは……どっちで考えてるのかな。
 次会ったら、戦いは避けられない。
 キャプテンも言ってた通り、"ラクシャーサ"がシャンバラの計画に加担している以上、全体の方針としては情より理を優先する。
 
 っていうのもあるから……、
 多分───逃げるなら今のうち、なんて言われたんでしょ?
 先のお嬢誘拐事件の時も、そういう感じだったしね」

アトラ :
「…… ……」

 否定も肯定もしない。正しくは、“手を出すな”───……まあ、現状からの逃げではあるから、嘘でもあるまい。
 だから、無言と視線で続きを促しつつ「ああ、」と漏らす。

アトラ :
「……ウチは、納得しきったわけじゃないから。此処から逃げようなんて思ってないっす。本当ですよ?」

 心変わりだってしない、と言い切るのは容易いが、“テンペスト”やUGN以外の人間を前に言っても説得力は怪しい。

ブルー・ディキンソン :「……、…………───」

ブルー・ディキンソン :「……そっか。
 納得は大事だもんね」

アトラ :
「っす。その納得のためにしなきゃいけないこともまあ、まだ、あるっちゃあるんすけど……」

ブルー・ディキンソン :「うーん、そうだなあ……」

ブルー・ディキンソン :
「まあ……怪しさしかないあたしが言ってもアレなんだけどさ。
 一人じゃダメそうだと思ったら、あたしに言ってね」

ブルー・ディキンソン :
「あたしはほら、一応イリーガルではあるけど。
 どっちかっていうと、しがらみのない人間だから。
 これもある意味、自主的に受けたお仕事だしね」

ブルー・ディキンソン :
「カイ君も、前向きな発言をしていたけどね。
、    、    、   、  UGN
 彼個人は善意の塊であっても、彼の属するところがそうとは限らないし。
 
 キャプテンだって、軍人さんだからさ。ああいう物言いにもなるし」

 個人的な所感が第一を占めているが。
 あたしの見立てとしてはこうだ。個人の思想と組織の思想なら、基本は後者が優先される。
 前者が100%優先されるのであれば、それはFHというテロリストと何が違うだろうか。

アトラ :
「まあ……そうっすね」

ブルー・ディキンソン :「まー、本当はそういうのナシで、
 全員でお手手繋げれば一番イイんだけどね」

アトラ :
「それもそうっす。……何やかんや、そういうわけにも行かないってのはあります。
 甘えちゃって、目的のために手ぇ借りといて偉そうに言えた義理じゃないんすけどね~手つなぎ云々って」

 わはは、とわざとらしく笑っておく。本当の意味で繋がるなら、それこそ……自分の中での“納得”が要る。
 彼らのような組織人にならば、余計に。

ブルー・ディキンソン :「まるでこの国の縮図って感じだよね。
 各々の持つ思想、思惑……それらは混ざり合うことはなくて、それぞれがカタチを残して存在する」

ブルー・ディキンソン :「サラダボウルみたいにね」

ブルー・ディキンソン :「ま、そんな状況だからさ。
 群れの中にいるのに孤立する、なんてことも起きかねないから」

ブルー・ディキンソン :「せめて窓口は確保しておいた方がいいと思わない?」

アトラ :
「そんなややこいもんすかね~」

 サラダボウルて。とか、ツッコみ掛けるのは置いておき。

アトラ :
「まあ……確かに。ちなみにそれお互い様だったりしません?」

ブルー・ディキンソン :「あっはっは! ま、打算がないわけじゃないけどね」

ブルー・ディキンソン :「それ以上に……あたしの場合は、情だよ」

アトラ :
「情」

ブルー・ディキンソン :「うん」

ブルー・ディキンソン :「あたしがナッちゃんのことを無理して追いかけたの、半分以上が情だから。
 それとおんなじ」

ブルー・ディキンソン :「なんつーか見捨てられないってヤツ?
 見捨てることもできるし、切り捨ててきたこともあるんだけど──」

ブルー・ディキンソン :「……むず痒くてさ?」

アトラ :
「ほお~」

 それも驚きではある。あんまり、そういうタイプだと思ってなかったというのもあるが。

ブルー・ディキンソン :「意外デショ。よく言われる」

ブルー・ディキンソン :「……社員にもよく言われる!!」

 曰く、「社長ってお人好しなんですね。ゼニゲバのくせに。おもろ」だってさ。

アトラ :「身内にまで!」

ブルー・ディキンソン :「あたし、そんなドライに見えるかな……ってショゲたこともあったナ。
 まあうん、そこはどうでもいい」

ブルー・ディキンソン :「まあ、なんていうかさ」

ブルー・ディキンソン :
「どういう経緯にしろ、すれ違ったままって辛いことしかないし。
 すっきりできるのなら、すっきりさせたほうがいいと思うし。
 それの手伝いくらいは、あたしは出来るよってトコ」

ブルー・ディキンソン :
「次会ったら殴るって、そりゃーもうアナタ。
 うるせえ殴り返すぞ!って勢いじゃないと、納得なんて出来ないぜ〜」

「喧嘩するんなら、した方がいい。
 そうじゃないと、見えてこないものもあるよ」

 しゅっしゅ、とボクシングの構え。
 

アトラ :
「ん~…… ……」

 聞いて、頷く。間違ってるとは思わないから、素直に。
 結局は、まあ、そうなのだ。彼女を止めるのだとしても、そうでなくとも……対峙する以上は、こっちも全力。確かに。

アトラ :
「まあ、覚えときます。
 っていうか元から皆さんをある程度は巻き込む気で来てますからね」

 実力差は良く分かってるから。わはは。

ブルー・ディキンソン :「あは! さっすがあ」

ブルー・ディキンソン :
「そういう強かさがないと、生きていけないものね。
 お互いに」

アトラ :
「わっはっは」

 否定しない。……言われてみれば、此方も大概『何でも使おう』としているのか?
 剣鬼の言葉にあんな難色を示しておいて、と自分で少し可笑しくなった。

ブルー・ディキンソン :「ガラにもなくちょっと心配してみたあたしさんでした。
 なんて、トラちゃんなら見えるものだけ信じるような真似はしないだろうし〜」

アトラ :
「ある意味信用ってことで」

ブルー・ディキンソン :「ま、そうだね。
 そういう意味では、ここで初めて信用したってところかな。
 どれだけ心の強い人でも、知己朋友と刃を交えれば傷んでくるものだから」

 サングラスをかけ直す。
 レンズを通さない語り合いは、一旦おしまい。

ブルー・ディキンソン :
「ぜひぜひ『使って』くださいな♡
 わたくし、出来るメイドですので」

アトラ :「うす」

アトラ :「しかしまあメイドさんて」 絶対こういう場に適してはない業種だろうに。

ブルー・ディキンソン :「うーん……あの、なんでしょ」

ブルー・ディキンソン :「本当は『新聞記者』の名目を使うつもりだったんですが……」

ブルー・ディキンソン :「……カヴァー用の衣装が、勝手にクリーニングに出されてたので……」

ブルー・ディキンソン :「それに……コンセプトカフェのバイト帰りだったし……仮にあっても着替える暇も……」

ブルー・ディキンソン :「……とほほ」

アトラ :「わーお……」

アトラ :
「ま、まあ……似合ってるっすよ!多分ディアスさんとかも喜んでましたって!」

ブルー・ディキンソン :「……あの人、絶対領域でも喜びそうなタチだし!」

アトラ :
「案外他の人らも内心きゃっきゃしてるかもっすよ!」

 うーんどうだろう 全然気にして無さそうだ。

ブルー・ディキンソン :「……キャプテンがもしそうだったら、あたしひっくり返って泡吹いちゃうかも……」

ブルー・ディキンソン :「ごほんごほん」

アトラ :「たしかに~」

ブルー・ディキンソン :「ま、あたしの格好は一種のリラックスだと思って。
 むしろトラちゃんのほうが寒くないか心配なくらいだけど……まあ、まあ」

ブルー・ディキンソン :「ところで、お腹空いてませんか?
 戻りがてら、エネルギー補給しても良いのではないかと」

アトラ :
「言われてみれば」

 まあ普段から割とこの格好だし、そんな風に感じたことはない……こともないが、まあ。

アトラ :
「あ~……確かに。良い考えっすね。
 外回り守ってる人らも一緒に連れて行きますか、折角なんで!お仕事ひと段落してるか知りませんけど!」

ブルー・ディキンソン :「ディアス様が仕事と欲望のどっちを優先するか、見ものですねえ。
 今はきっちり仕事を優先しているようですが……んふ」

アトラ :「流石におしごとじゃないっすか?」

ブルー・ディキンソン :「そうじゃなかったらキャプテンにチクっちゃいましょ♡」

アトラ :「そっすねぇ。ご飯くらいでそこまで言われるかわかんないっすけども」

ブルー・ディキンソン :「いやあ、軍人さんは意外と時間に厳しいですから」

ブルー・ディキンソン :「……じゃ、そろそろ行きますか?」

アトラ :
「うす!」

 ……長丁場にはなるだろうし、その分何方も不利にはなるだろうが。
 今はなるようになる、と思うしかない。考える時間だけはまだまだありそうだし。

SYSTEM :
 その後。
 二人は見回りをしているメンバーと連絡を取る。財布の中身は心細いだろうに見栄を張ったディアスのおごりで、デトロイト出身の隊員がおすすめする地元のレストランで食事となった。
 

SYSTEM :
 何やらあまり明るくない話題の予感を察知してのことだろう。その日の昼食は随分と豪勢に行われた。
 ……少なくとも、このテンペストの面々を見る限り、彼女に悪意や敵意の類は全く見られない。寧ろ庇護する対象として過保護的ですらあった。

SYSTEM :
 そんな彼らは、此処で出会ったラクシャーサとの話を訊くこともしなかった。素性について問い詰めることも。
 このまま進めば、どうあろうとも彼女との対立は避けられない。彼らも必然、それに巻き込むこととなるだろう。

 選択肢が極限まで限られる事態というのは往々にしてあることを、アトラもブルーも、よく知っていた。
 なればこそ今は、その瞬間に備えて、少しずつ腹を決める他はないのだ

SYSTEM :
 今はただ時間が流れるのみ。
 来るべき決戦、対峙のその時まで……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 イベントシーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

アトラ :ウチからは特に変わり無しで~!

ブルー・ディキンソン :そうだなあ……あたしも今のところはナシで。今のところはね。

GM :了解!ではこのままということで……

キオ :

GM :なんか見えたが今日は後回しにしていた判定三つ目……

GM :小規模戦闘をしていただく!

ナタリー・ガルシア :やりますわ~~~~!

ダン・レイリー :ああ よろしく頼む

GM :小規模戦闘の方は戦闘描写したいこともあろうし、簡易的にシーンを展開して戦闘に入っていきます

GM :では暫しお待ちをば
Now Loading……




【MIDDLE ③ - 戦闘-強化猟兵部隊】

SYSTEM :
【MIDDLE ③ - 戦闘-強化猟兵部隊】

登場PC: Natalie , Dan
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 カリフォルニア州ロサンゼルス。その名と知れたニューヨークに次ぐ世界都市であり、米国人なら知らぬものなどいないであろう大都会だ。
 他二つの拠点と違い、こちらへのアクセスは比較的スムーズに進んだ。
 ロスにおいては現地のUGNとロス市警が連携しており、多少の縄張り争いはあれど日夜発生するジャームの討伐などの職務で憎まれ口を叩きながら共闘している仲だ。当作戦への連携も速やかに進められた。

SYSTEM :
 ダン・レイリーとナタリー・ガルシアがそちらの調査に当たったのは、恐らくそうした当面の危険度が低いであろうこともあった。
 調査的にはあまりよろしくはなかろうが、アテが外れて成果がなければそれはそれでナタリーへの危険もないだろうことも要因の一つか。

強化猟兵 :
 ……結論から言って、雷霆精の報告は当たっていた。
 調査を始めて数日、この街に潜伏して秘密裏に破壊工作を進める強化猟兵部隊の居所が明らかとなったのである。
 雑兵ならともかく、彼らが近くを固めているということは、そう遠くない場所に幹部クラスのネームドエージェントが指揮しているということに他ならない。
 

SYSTEM :
 近いうちに大規模襲撃を仕掛けるその決起の時であったのだろう。
 敵は相当数の猟兵を揃えワーディング圏内で待機している。
 現地で調査を続けていたロス市警らと連携することで突き止めたあなたたちは、初陣より少数での一斉検挙作戦を展開するのだった。

ダン・レイリー :
 ───報告を疑う余地はなかった。
 僕の目がまだ凝り固まり、錆び付いていないならの話だ。

 そして少なくとも………そこはまだまだ先の話であってくれたようだ。

ダン・レイリー :
「………不幸中の幸いだな。
 LAの全部を調査するまでもなく、第一歩を捕捉出来た」

ダン・レイリー :
 作戦予定時刻までの間に水無瀬と通信を取りつつ、同伴したガルシアの御息女を見る。
 着いて来てくれていることは間違いないだろう。

 空振りになるとは思っていなかったこのプランに、この若者を連れて行くことを積極的に頷けはしないが、かといって単独で放り出すことは更に悪手だ。何より………。

ダン・レイリー :「情報提供通りか。数が多い」

ナタリー・ガルシア :「ざっと数えて……分隊でしょうか」

水無瀬 進 :
『二個分隊ってところだが、控えてる手勢を含めれば一個小隊はいるね。
 軽率に手を出せばまさにハチの巣をつついた騒ぎになるだろう』
 

ダン・レイリー :
「その認識で正しいようだな………。
 決行前に彼我戦力とプランを確認し直そう、ミナセ。ナタリー」

水無瀬 進 : yes sir
『 了 解 キャプテン!』

ナタリー・ガルシア :「はい!ここから先は連携を密にしなければなりません」

ダン・レイリー :「今の場面では良い落ち着きだ。…さて」 

ダン・レイリー :
「敵の主戦力は想像通り件の強化猟兵。
 ブリーフィングを顧みるに…カミンスキー旅団というやつか」

 戦力は調べのアテがついた限りで一個小隊。
 オーヴァードであることを考えれば、地区一つに物理的かつ破壊的なダメージを与えるに十分だ。

ダン・レイリー :

ナタリー・ガルシア :「……一人でも取り逃がせば、どれだけの被害を生むか、想像したくもありませんわ」

ダン・レイリー :
「ああ。目的は連中の一斉検挙だが………。
 出鼻を挫く以上に、この場で逃がすことは悪手になる。組織的行動を取られても問題だが、散られて潜伏されては長期にわたってリスクと危険が生じる」

ダン・レイリー :
 特に現在はさして目立った危険のないLAに、過剰な戦力は配備出来ない。
 そこよりも優先順位を上回る地域があり、此処に長期の警戒態勢を割いては“コードトーカー”とて手を打たないはずがない。

「対してこちらの戦力だ。
 ミナセ。動かせるのは?」

水無瀬 進 :
『僕と君と彼女。そして退路を包囲してる対ワーディングマスクを装備した精鋭SWAT部隊……ってところかな。
 うち僕はバックアップで端末から電子機器に因子を飛ばしてフォローできるけど、後詰めの部隊にはあんまり期待できない。あんまり多くを配備すると必然向こうに気取られるうえ、向こう一人あたまにつきこっちの隊員五人分の戦力だ。
 ほんとに取りこぼしを拾うのが精一杯さ』

水無瀬 進 :
『だから、必然二人の電撃展開で何処まで削れるかがキモってところだ』

ダン・レイリー :
 テンペストの各部隊については、少尉に指揮権を一時譲渡している。

 理由は先程も述べた通り。
 こちらの戦力を振り分けるにあたって、LAで過剰なほどのリソースを振り分け遊ばせる余裕はない。此処以外の地域状況を鑑みるに、それがベストだ。

ダン・レイリー :
「分かっていたが各個撃破は望むべくもなし。
 ………予定通りのプランが妥当だな。ナタリー・ガルシア」

ナタリー・ガルシア :
「……はい、私の力で制圧します」

僅かに硬い表情は、緊張のためか、あるいは初めての実戦――他者を意識して傷つけることへの抵抗感のためか、判別はつかない。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
「僕に一個小隊と応戦する武器のアテがあり、一個小隊より先んずる手段について自信がある」

ダン・レイリー :
「だが、一個小隊を同時に無力化し、
 尚且つ街に明確な被害を与えない手段はない」

「………ナタリー・ガルシア」

ダン・レイリー :
「………その手段をきみが持っているなら、
      ・・
 僕はきみに命令する。いいね」

ダン・レイリー :
 ………逃げ道は作ってやる。
 目的は無力化、制圧、鎮圧だが、
 これは不足に対する最低限取るべき責任だ。

ナタリー・ガルシア :   
      ・・・・・・・
「――あまり甘やかさないで欲しいですわ」

ナタリー・ガルシア :「大尉――私には、自分で選ばない卑怯も、仕方なかったと言い訳をする逃げ道も必要ありませんわ」

なぜなら、残されていればそちらに流されてしまうと分かっているから――とは、口にしない。

ダン・レイリー :
「それは一人前の兵士が言う台詞だ。
 昨日まで殺気を向けられたことのない人間が吐く台詞としては、少し思い上がりが強いな」

ナタリー・ガルシア :
「一人前にならなければなりませんから――自分自身が大きな目標を掲げるのであれば、相応の責任は背負うべきですわ」

ダン・レイリー :「“大いなる力には大いなる責任が伴う”か?」

ナタリー・ガルシア :「――大いなる力を求めるのであれば、それに応じた責務と努力は果たすべきですわ」

生まれ持った力に、責任が伴うとは思わない。
けれど、自ら進んで力を得ようとするのであれば――理想を掲げるためには、相応の覚悟と責任を負わなければならない。

ダン・レイリー :
「スパイダーマンの振る舞い方はUGNが先輩だ。
 きみがなおもそう返すなら、僕から今更二番煎じを教えてやる時間ではないな」

ダン・レイリー :
「………だが」

ダン・レイリー :
「馴れすぎるなよ。頼まれてもいないものを、引き摺りもし過ぎるな。
 どんなに崇高な目的があろうと、きみの価値を、戦士の価値に限定することだけは避けるべきだ」

ダン・レイリー :
 きみは恐らく…。
 ・・
 それが出来てしまう人間だな。

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :「はい、ありがとうございます――私は、きっと、戦士に“なろうと思ってもなれません”から」

全てを捨てて、己をどこまでも研磨するのが目標への『一番の近道』ではあることを少女は理解していた。
そして、それが多くの人間を悲しませるということも、また。

「私は、誰も悲しませたくありませんから――誰も悲しませない力を得るために、誰かを悲しませるわけにはいきませんわ」

ダン・レイリー :
「分かっているならいい。
 あとの分を甘やかしと感じるなら、その分を見直させてもらうところから始めよう」

ダン・レイリー :
 ………それが分かっていて尚も道を選ぶ理由への疑惑、そんな笑顔で前を向いたティーンを使わざるを得ない現実。まとめて内面に放り込む。 

 時間はそうない。    デッドウェイト
 感傷は散々したのであれば余分な負荷。

ダン・レイリー :
「───こちらのワーディングエフェクト展開および牽制射撃のち、
 きみ
 本命のRCによる制圧を叩き込む。手筈はシンプルで、尚且つきみがメインだ」

ダン・レイリー :
「攻撃範囲が多少広がろうと、此方の手で矯正、最適化する。
 シンプルな作戦だが、拙速と決めた以上、長い手順は使っていられない。異議は?」

ナタリー・ガルシア :「yes sir ですわ――私、少々コントロールが甘いので、そのあたりはよろしくお願いします」

"アダム" :
──可愛がられてるねぇお姫様。まるで割れ物を扱う如き手つきだ。

"アダム" :
 でも、今は感謝しておきなよ。
 少なくともこの状況、彼がキミの能力を巧く"使える"のは確かだ。

ナタリー・ガルシア :(言われずとも、感謝しています――こうして、周囲を気にせず『初めて』全力を出す機会を作ってくれたことに)

"アダム" :
 ああ。キミがいう積み重ねって奴の見せ時だ。やることは単純明快。

 ・・・・・・・・・・
 戦士に劣る積み重ねで。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 命がけの研鑽を踏み潰してやればいい。

"アダム" :
 キミなら、造作もないことだぜ。
 覚悟も努力も足りずとも、修羅場をくぐっただけの凡夫を消し飛ばせる。
 

ナタリー・ガルシア :(…………)

ナタリー・ガルシア :(……やっぱり、そうですのね)

ナタリー・ガルシア :(私には、『力』がある――過信でも、慢心でもなく、事実として)

ナタリー・ガルシア :(――少し、手放しでは喜べませんわね)

数年前までなら、あるいは目を輝かせて喜んでいただろう。けれど、今は――

"アダム" :
 ああ。そして、力に伴う責務なんてものは大抵、自分から背負うまでも無く伸し掛かってくる。
 今、キミがこんな場所に立たされているようにね。

"アダム" :
 ……まあ、今は言葉より実践だな。
 オレにもキミが進んでくれないと困る。こんな雑魚で足止め喰らってる訳にもいかない

"アダム" :
 一思いに吹っ飛ばしてやれよ。
               インパルス
 それこそがキミの魂に刻まれた 衝 動 だろう?

ナタリー・ガルシア :(貴方の口車に乗せられたようで癪ではありますが――)

ナタリー・ガルシア :(ええ、任せて欲しいですわ――ついでに、貴方の驚いた顔も拝んでみたいですし)

"アダム" :
 その意気だお嬢様。
 さあ──オレたちの初陣だぜ

ダン・レイリー :
 任されよう、の一言で彼女の“異議なし”を受け入れる。
 老婆心とお喋りはこの辺りまでだ。

「───時刻合わせ良し。
 作戦開始の通達を恃む、ミナセ」

水無瀬 進 :
               エンゲージ
『了解だ。カウントダウンの後、 出 陣 してくれ』

水無瀬 進 :
『カウント5……4……3……2……1……』

水無瀬 進 :  作 戦 開 始
『MISSION START』──!

SYSTEM :
【戦闘を開始します】

SYSTEM :
《ROUND 1》

SYSTEM :
-SETUP PROCESS-

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :
[Set up]
◇R因子戦闘管制
・《赤方偏移世界Lv5》

ダン・レイリー :
 対象はナタリー・ガルシア。
 このラウンド中、彼女の行動値をLv*2=10増加させる。

ダン・レイリー :
 もちろん行動値もそれに準拠するが…。
 伝え聞いたエフェクト・パターンを加味すると、そちらの部分は蛇足だな。

GM :オーケイ!
これでナタリーの行動値は10点アップして、16!

GM :さて、強化猟兵のセットアップ行動だが……

GM :既にデータで分析済みである通り、なにも、できん!

ダン・レイリー :掛かるコストは此方のエフェクト分だけということだ 事前調査は怠るべきではないな

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 47 → 49

ナタリー・ガルシア :戦いにおいて、情報は何よりも重要だということがよくわかりますわね

強化猟兵 :
セットアッププロセス:
行動なし

SYSTEM :
-SETUP PROCESS-
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Natalie Garcia

ナタリー・ガルシア :私の手番ですわね

GM :ここで敵の宣言、他ユニットの宣言がなければ、だが……

GM :今回は全員の情報が開示済みで、そもそも打てる手段がないことが割れている!

GM :故に、このまま行動値が一番高いナタリーお嬢の攻撃となるわけですな

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie Garcia

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :それでは、まずは<援護の風LV7>+<ウインドブレスLV5>

GM :前言通り、全力行使だ!ゴー!

ナタリー・ガルシア :では、いきますわ
<サイレンの魔女LV10>!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :では命中判定からいきますわ

ナタリー・ガルシア :12DX+25 (12DX10+25) > 10[3,4,4,5,5,6,7,7,8,8,8,10]+3[3]+25 > 3

GM :待った!

GM :今回は待たなくても良かったのでそのままでいいが

GM :侵蝕率は宣言時に増やしましょう
マイナーとかの宣言順の兼ね合いで効果量変わることあるから

ナタリー・ガルシア :では、今回は援護ブレス分も含めてあげてしまいますわ

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 47 → 56

GM :ふむ 中々の数値だ

強化猟兵 :
リアクション:<回避>

強化猟兵 :
【ドッジロール】
《イベイジョン》

SYSTEM :
【強化猟兵A~Hが回避に失敗しました。
ダメージ判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :それでは、ダメージ判定いきますわよ

ナタリー・ガルシア :4d10+30 (4D10+30) > 31[5,8,10,8]+30 > 6

GM :なんという破壊力……

"アダム" :
おーこわ フラストレーション溜まってたんだねぇ

ナタリー・ガルシア :ちょ、ちょっとやり過ぎてしまったような……

SYSTEM :【強化猟兵A~Hが戦闘不能になりました】

SYSTEM :【対立ユニットがフィールドから消滅しました。
戦闘を終了します。】

ダン・レイリー :
            .. エンゲージ
「───“ホワイト・スカイ”、会敵するぞ」

ダン・レイリー :
 一個小隊を一挙に殲滅する術は持たないが、
 一個小隊を上回る術はある。
 オーヴァードの存在は近代的な市街地戦闘さえも、個人の力を優先する時代に遡らせており、その結果の一つが今から運用されるものと言っても過言でなかった。

ダン・レイリー :
 バロール・シンドロームが持つ空間歪曲と、
 エンジェルハイロゥ・シンドロームが持つ感覚強化。
 
 位置をずらし、間合いを遠ざけ、感覚を狂わせる、重力制御の応用系たる空間移動は、前者を基底とし、後者によるオルクス・シンドロームの亜種的運用から来る空間認識能力を掛け合わせて成立する。
 個人戦闘向けの運用においても、こちら用に調整されたガンビットの軌道やパターンを制御するために使うものだが………。

 今回は、集団戦闘向けの用途だ。

ダン・レイリー :
 .Target in Sight
「標的、照準固定………」

ダン・レイリー :

 手にしたターゲットへの牽制射撃。
 己の持つ試製小銃およびガンビットから齎された、弾丸の鉄風雷雨が齎すノイズは、敵の動きをある程度誘導し、また同時に自らが管制可能な領域に足を留めさせるためのものだ。

 それを朝日より多く拝み、また浴び続けてきた猟兵たちにとっては有効打にはなり得ないが、有効打を与えるつもりはない。
 この射撃と同時に───。

ダン・レイリー :
   ・・・・
「───押し込め!」

ダン・レイリー :
 ナタリー・ガルシアの位相に意識を合わせる。

 自分のオーヴァードとしての恩恵は、その空間認識の拡大と、それを伝達する反射神経の強化・加速にある。

 これと重力による時空間制御を掛け合わせた結果は、シンプルな心身の行動スピードの加速と、この行動が齎す結果の再配置───。

ダン・レイリー :
 より、詳しく言ってしまえば。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 数秒先に、加速したオーヴァードの行動を送り出す───そういう使い方が、この組み合わせで出来るというわけだ。

ナタリー・ガルシア :(3…2……1)

カウントが進む。
集中、意識を尖らせる。
思考を目の前のことだけに収束させる。
雑事が頭の隅へと追いやられ、感覚を切り替える。

ナタリー・ガルシア :
「――ッ!」

先んじて飛び出した弾丸の雨が、戦いのために整えられた兵士達を襲う。
徒人であれば惨状が広がるであろう鉄の嵐も、この場にいる超人達にとっては致命打に欠ける。

火力不足――そう勘違いする者は、この精緻極まる射撃と射線による包囲に気づくことすら無いだろう。

ナタリー・ガルシア :
辺りへ広げた風が拾いあげたその結果に、少女は内心で驚愕と称賛を抱く。
その舌を巻く牽制に応えるべく―― 瞬き一つの差を置いて少女は敵の前へとその身を晒す。

ナタリー・ガルシア :「――行きますわ!!」

力を拡げる。
渦巻く風が一処に釘付けにされた敵を取り囲む。

己の力が、外へ出ないように――己の全力で以て、囲いを作る。

風速にして、80m/sを超える暴風が圧縮されて出来上がった檻。
局所的自然災害に匹敵する暴風を以て、その内に生まれる衝撃波を閉じ込める。

ナタリー・ガルシア :乱反射と増幅、至極単純な二つの力が嵐の内側で吹き荒れる。

ハリケーン
超大型台風に匹敵する暴風の檻が軋みをあげるほどに苛烈な衝撃波――内部に取り残された者達が浴びるソレは如何ほどのものか、少女自身にすら予測不能な破壊の嵐。

己の全力を、己の全力で以て抑え込む。
膨れ上がる内圧に対して、渦巻く風が猛り全ての音を塗りつぶしていく。

ナタリー・ガルシア :「――これで、おねんねしてくださいまし!」

臨界点、極限まで高まった内圧が爆ぜる――その直前、嵐の檻に穴が開く。

真上、即ち空への逃げ道。
逃げ場を求めて吹き荒れる力場が一箇所へ殺到し、その内に取り残された者達もろとも全てを上空へと打ち上げる。

ナタリー・ガルシア :暴風が霧散する、その直前――打ち上げられ、重力に引かれて堕ちる敵の体を風が浚う。

いくつもの大きなものが落下する鈍い音が、幾分か和らいだのは、甘さか、あるいは余裕かは分からない。

だが、結果として生み出されたのは、作戦の完璧な成功という戦果だった。

ナタリー・ガルシア :「――ふぅ、少し、手加減できませんでしたわ」

強化猟兵 :
            テンペスト
 ダン・レイリーの携えた 嵐 が銃火を吹き、戦いの火蓋を切り落とす。
 小銃とガンビットから放たれる牽制射撃は、先手を取られたとてこの場にいる誰もが即応するに難しくはなかった。
 
 足止めのための制圧射撃に、すかさず猟兵たちが手に火器を掲げるが……

強化猟兵 :
 猟兵の小銃から銃火が迸る一手前に、それは渦を巻いていた。
   プロスペロー
 宛ら 魔 術 師 の如くに、空間を捻じ曲げて加速されたナタリーの手から、比喩も誇張もない嵐が吹き荒ぶ。

 猟兵の小銃が撃鉄を叩くころには既に。その小隊はスーパーセルの大檻の中に閉ざされ、かき乱された照準が明後日の方向に銃火を放つのみ。

強化猟兵 :
 須臾の隙が戦場で命取りとなること、先手を制した者が戦に勝ること。それは子供ですら知る戦の摂理。
 渦巻く嵐に混乱する暇すらないまま、此処に作られたタイフーンが息吹を上げる。まるでミキサーに掛けられたようにその身を軽く吹き飛ばされた兵士たちは、防ぐことすらままならず空高く打ち上げられる。
 趨勢など最早論ずるまでも無い。

強化猟兵 :
 風が止み、自由落下に任せて烏たちが落ちていく。
 動けるものなどいようはずもなかった。撃ち漏らし一つなく、完全に沈黙。僅か一手で勝敗は決していた。

"アダム" :
 ──ヒュウ。お見事、一発KOだ。

"アダム" :
 ま……よくやった方じゃないの? 概ね上出来だよ

ナタリー・ガルシア :(……私の初陣、嘘でもいいのでもう少し素直に褒めたりはしてくださいませんの?)

"アダム" :
 これでも褒めてるつもりなんだがね。
 でも……

"アダム" :
   ・・・・
 ──簡単だろ?

 敵を黙らせるなんてのは。

ナタリー・ガルシア :(――ええ、簡単ですわね)

だからこそ、と、己に言い聞かせる

ナタリー・ガルシア :(これは最後の手段ですわ)

"アダム" :
 成程そう来たか。

"アダム" :
 ま、それがいいだろう。
 その実感を持って戒めるのと、知らぬまま戒めるのじゃあまるで意味が違う。

"アダム" :
 しっかり手綱を握っておくことだ。
 キミが受け継いだもの。或いは受け継ぐ資格のあるものの巨大さを鑑みれば……
 その大器ですら、容易く零れ落とす。

SYSTEM :
 ……そう意味深に言い残し、少女の中にこだまする声はふっと経ち消えた。

ナタリー・ガルシア :(言いたいことだけ言って勝手に消えないで欲しいですわ……!!)

ナタリー・ガルシア :とはいえ、その忠告めいた言葉はしっかりと胸に刻んでおく。

――それに、初めて『自らの意思で』他人を傷つけたことへの苦しさも幾分か紛れたのもまた事実だった。

ナタリー・ガルシア :(……まあ、感謝なんてしませんが!)

ダン・レイリー :
「(規模………いや、威力の方か。 
  野放しのまま撃たせるなら、流れ弾ならぬ流れ嵐で惨事が起きたな)」

ダン・レイリー :
 純正の血が成せる業か。
 あるいは、本人さえ与り知らぬものがあるのか。
 制圧という形式で打ち込まれる攻撃として、威力を拡散させてなお………。
    マーダー
 一角の戦士が。
 屍山を我が物顔で翔んできたのだろう凶鳥の群れが………嵐を前にして飛ぶ事も叶わず、力なく墜落した。

ダン・レイリー :
 空間歪曲による攻撃規模の再配置と収束は展開速度と余波の抑制を行うものであり、およそ純粋な破壊力において自らが手を入れた覚えはない。

 ………僅か過る思考を遮断する。

ダン・レイリー :
「───良くやった。
 まだ気は抜くな」

ダン・レイリー :
 昨晩の例もある。
 無力化した今、捕縛して漸く作戦終了だ。
 現実的に見て、労いの言葉に本腰をかけるより其方を意識するべきではあった。

ナタリー・ガルシア :「……ええ、余力もまだまだ残していますわ。最後までしっかりと作戦を遂行いたしましょう」

ダン・レイリー :「それでいい。オンオフの切り替え所は大事だ」

ダン・レイリー :では無力化した連中を確認する。ロス市警の到着前に活動出来る奴がいないかどうか、《偏差把握》の使いどころだ。

GM :了解です。では……

ナタリー・ガルシア :私も蝙蝠の耳で警戒しておきましょう

SYSTEM :
 ダン・レイリーは無力化した手勢を確認する。
 先の例もある。注意深く偏差把握によって確認する。
 確認する限り間違いなく全員、戦闘不能となっていることが確認できるだろう。先のタイフーンによって、その手からも武器となる者が失われているのもわかる。罷り間違っても反撃してくることなどない筈だ。
 だが……

SYSTEM :
 既に『それ』を見せられたダンならばすぐに異変に気付くだろう。
 安心もつかの間。その場で倒れ伏している兵士たちの体が、小刻みに揺れ動き出す。
 それは自らの意志など無関係に。まるで何かが内側から溢れ出すように。

ダン・レイリー :
「(やはりか!)」
「───ナタリー!」

ナタリー・ガルシア :「――ッ!?」

"アダム" :
 ──うん、まあ、そういうわけだ。
 
 キミは彼らを傷つけまいとほんの少し気を遣ったようだが……

"アダム" :
 彼らは生きている。生きているし意思もある。
 生存本能があり闘争欲求がある。
      ・・・・・・・・・・・
 ただまあ、始まる前から終わってるってだけだ

強化猟兵 :
「あ、ギ」

 軋むような音は、男の声であったのか。
 ペストマスクをつけた兵士たちの、黒装束の穴から零れ落ちるものがある。
 鮮血だ。

 鮮血は目といわず。口といわず。
 その体の七孔より血を吹き出し続ける。

強化猟兵 :
 それは決してナタリーの疵によるものだけではない。寧ろ、鮮血が肉袋から絞り出されるように。
 その内に潜む朱の意志が、嗤う烏の声と共に発露する。

ダン・レイリー :
「屍肉を貪る鴉の面など、良い皮肉だよ………。
       デ ッ ド マ ン
 貴様ら自身が死にぞこないの屍人じゃあな………!」

SYSTEM :
 さあ──死ね。

 死を想え。死を喰らえ。
 
 Nevermore Die
 二度とない死を謳歌しろ──
 

SYSTEM :
 瞬間、一個小隊規模の兵士たちの内側から、夥しい数の鮮血にまみれた烏たちが、倒れ伏した者達の屍を喰らいながら溢れ出した──!!

SYSTEM :
【Information】
Eロイス《アバドンの顎》が発動しました。
使用者:"ブラックモア"
対象者:ナタリー・ガルシア、ダン・レイリー
効果:死を想えと、凶鳥は鳴く。
   天より屍を晒す者どもを嗤いながら。

 シーン終了時、1d10ダメージを受ける
 ダメージ量分だけ"ブラックモア"のHPが加算される。

SYSTEM :1d10 ダン (1D10) >

SYSTEM :1d10 ナタリー (1D10) >

ダン・レイリー :ツケは高くついたな………いずれ返してもらうまでだ

ナタリー・ガルシア :メモしておきますわ~~!!!

ダン・レイリー :(わりとタフだなこの娘)

GM :これら合計が加算され、またそれぞれのHPから引かれます えいえい

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 25 → 18

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 28 → 22

SYSTEM :
 兵士たちの体を内側から引き裂いた、血潮で編まれた黒き禽獣たち。
                マーダーオブクロウ
 夥しい数の、天を黒く埋め尽くす凶鳥の曇天が、無造作にダンとナタリーの身体を喰い、貪り、去っていく。

SYSTEM :
 飢えに狂い、鮮血に塗れ、血走った烏たちの眼からは正気など感じられない。
 ひたすら死を求めて飢えて渇き、戦場という戦場を飛び続けている。
                     リビングデッド
 決して満たされぬ『二度とない死』を求める 動 く 屍 のように。

ダン・レイリー :
「奴の悪意か! 
 ………こうも数が多いのでは───!」

ナタリー・ガルシア :「――くっ、ぅ」

ダン・レイリー :
 ………炎神の士師の言葉を反芻するならば、
    ・・
 これは収奪だ。
 不幸中の幸いなどと言いたくもないが、少人数であったのはまだしも幸いだった。
 この規模、この展開速度、あの猟兵の抑止とこれはトレードオフだ。

ダン・レイリー :
 ………しかし二度目ともなり、遺憾にも実体験してみたとあれば分かることがある。

 能力の是非などではない。
 其方は複雑怪奇だが、求めるものは分かる。己の見立てが、さほど外れていなかった事実も。

ダン・レイリー :
   ピリオド
「………死に場所がそうまで欲しいか!」

ナタリー・ガルシア :「どうして、そこまで――」

仲間を引き裂き現れた悪意の鴉に、全身を啄まれる。敵意や殺意よりも、強く感じるのは――

「何が貴方を、駆立てているんですの……」

????? :
「それが戦場を飛ぶ屍食鬼の本質だ。アレは最早開き直っているがな。
 忌避するまでも無く、自らの本質が持つ力として振るっている」

 その問いに応えるように。広間の奥から足音を鳴らして近付く者がいる。
 ナタリーの『蝙蝠の耳』は、それをいち早く捉えていた。

????? :
 男は風と共に、そこへ姿を現した。
 ナタリーは、その姿を直接目にするのは初めてとなるが……少なくともダンはそれを知らぬ筈もない。

 先に見たものがタイフーンとするならば、これは病を運ぶミアズマ。

ダン・レイリー :「………ナタリー、下がれ」

ダン・レイリー :
 ………忘れようはない。
 声の主に気付いたのは彼女が先だが、
 風の音色を遡ったのは俺が先だった。

 自動小銃の引き金に指を掛ける。

ナタリー・ガルシア :「―― 一体、どなたですの?」

????? :
 音もなく吹き抜けて、姿なく殺し尽くし、死を残して去っていく。
 破壊に非ず、死をのみ振りまき去っていく凶剣である。

「『罪から出た所業は、ただ罪によってのみ強力になる』。とは……おまえらの国の言葉だったか」

????? :
 銃口を向けられ尚も、男は歩を止める様子がない。
 彼我の差はとても剣の間合いではないが。小銃の間合いを開けているとて、男の前では無に等しい。

「その手の化生は多く斬ったが。
 天命が導く所とは、奇妙なものだ」

 誰何を問われ、男は静かに名乗りを上げる。

"天刑府君"元 天刑 :
「──元 天刑。
 おまえが、約束の地に据えるべき生贄の娘か」

SYSTEM :
【MIDDLE ④ 剣狂】

登場PC: Natalie , Dan
登場侵蝕:なし

ナタリー・ガルシア :「――元 天刑、シャンバラの、剣鬼」

ダン・レイリー :
「海向こうは皆、同じ顔と国にでも見えるか」

ダン・レイリー :
 回想する。

 思えば男は、酔狂を好む人間であった。
 ことに人斬りに悦を見出す人間であり、何かと戦いの最中に会話を求める相手であった。 

ダン・レイリー :
 その発端、その豹変。
 理由など気にするつもりはないが、
 厳然たる事実を一つだけ認識する。
 ・・
 ここはヤツの間合いだ。

ダン・レイリー :
 撃つのに必要な工程は二つ。
 ヤツが殺意を発露させるのに必要な工程はただ一つ。
 ………それを間違えて、命を散らして来た僚友は数多居た。

ダン・レイリー :
      ・・・・・・・・・
 あるいは、俺もそのはずだったわけだが。

ダン・レイリー :
「………その海向こうに見えた星でも追った結果が、“娘”一人か?
 名も知らなかった貴様ほど酔狂な嵐とは、未だ出会えていないよ。元天刑───"天刑府君"」

"天刑府君"元 天刑 :
「それが抱えた"天命"の程を鑑みれば、その価値があると奴らは踏んだのだろうよ。
 哀れな娘だ」

ナタリー・ガルシア :「私について、何か知っているようですが――哀れまれるのは少し心外ですわね」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :「“奴ら”、か」

"天刑府君"元 天刑 :
「誰もが生まれ落ちてより宿星に生まれ、導かれ、征くべき場所に辿り着く。
 天数とはそういうものだ。そして……」

"天刑府君"元 天刑 :
 その剣柄に手が伸びる。緩慢とした動きは、見てから先手を取れるように思えたが。少なくともダンの重ねたシミュレートでは、今赤方偏移による加速を試みても尚、見てから先手を打たれる確信があった。

「シャンバラの望みはおまえの身柄。ならば、此処で立ち合い星が合ったならば、その星に従うべきであろう」

"天刑府君"元 天刑 :
 ・・・・・・
「本来ならばな」

ダン・レイリー :
「解せないな。
 シャンバラもシャンバラだが、貴様は特にそうだ」

ダン・レイリー :
 あのシミュレーターのようには行かない。

 対面したものがそれと同一であるなら尚のこと───この間合いでの戦闘には死の兆しがある。

 そしてヤツは、推定とはいえ紛れもないジャームの情動を抱えた男だった。
 その凶刃を振るわぬ理由はない。本来ならば、だ。

ダン・レイリー :
 ………欲望を優先する無二の道理しか持たぬもの。
 しかしその道理を無視する事情があるとすれば。

ダン・レイリー :「流れに乗るつもりもなければ、臨む星は別か」

"天刑府君"元 天刑 :
「そうでもない。
 俺の向かう先と奴等の向かう先は、結果としては同じ場所に辿り着く」

ナタリー・ガルシア :「では、やはり貴方も『楽園』に用がある、ということですわね」

ダン・レイリー :
「(…楽園)」

 ………あの言葉から、この娘。
 何を見出した?

ダン・レイリー :
「過程が違えば意味も異なる………。
 結果に見出す意味もだ」

ダン・レイリー :
「そんな常識を貴様のようなのに説く理由もないが。
 ………なんであれ、その過程に意味を見出せば応じてやる」

"天刑府君"元 天刑 :
「預言者の語る楽園に用はない。奴の語る約束の地の林檎など、もはや俺には不要の長物。だが……」

"天刑府君"元 天刑 :
 その剣を引き抜き、横薙ぎに振るう。
 その一振りが、此処に吹き乱れる風を水を打ったように鎮めていた。

ナタリー・ガルシア :剣を引き抜き、振るう。
その動作一つが、万の言葉よりも雄弁に男の実力を語っていた。

想像すらつかないほどの研鑽と、己を刃とするほどの練磨――どれほど血を流し、どれほど剣を振ればこの領域にたどり着けるというのだろう。

"天刑府君"元 天刑 :
「──カミンスキーが望む修道には、興味がないでもない」

ダン・レイリー :「………“ブラックモア”………」

ダン・レイリー :
.       リビングデッド
「屍喰らいの………死にぞこないか」

"天刑府君"元 天刑 :
「奴等の作り出す『時代』。
 少なからず、俺の宿星がそこに在ると見做した」

ナタリー・ガルシア :「時代……これから齎される、混乱と混沌に、貴方の居場所があるということですの?」

"天刑府君"元 天刑 :
「そうとも」

 くつ、くつ、と、思い出したように嗤う。
 嗤いながら、続ける

"天刑府君"元 天刑 :
「……何。奴らが剣侠などと呼んだことを、少し思い出してな。
 ──実に馬鹿げた話だ。まことに、馬鹿げた話もあったものだ」

ナタリー・ガルシア :「――――」

ダン・レイリー :「………“神魔狩り”」

ダン・レイリー :
 物語の好漢ならばそれで終わり。
 しかしてその実態は───。
 あるいは、なんてこともなく。

"天刑府君"元 天刑 :
「この俺が?
 この天刑の星が?
 天運にただ剣を運ぶのみの修羅が?」

"天刑府君"元 天刑 :
「──ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
 
 おかしなことだ。
 ・・・・・・・・・・・・・
 俺はただ導きのまま望むまま、悦のまま斬ってきただけであるというのに」

ダン・レイリー :「───そうだろうさ。"天刑府君"」

ナタリー・ガルシア :「それでは、その剣がジャームにのみ向いていたのは……ただの、偶然」

"天刑府君"元 天刑 :
「そうだろうとも、ダン・レイリー。
 ・・ ・・・・・・・・・・・・・
 俺は、人斬りを楽しんでいただけだ」

ダン・レイリー :
「そしてその導きこそが………。
 貴様の言う宿星だった。
 貴様の言う、死の兆しだった」

ダン・レイリー :
「片時も理解出来ないが、
 また片時も忘れてはいない」

 ………なんという皮肉だ。
 なんという零落だ。

 その真実がどうであったにせよ、
 眼前の男を剣侠などと。
 全く笑い話にもならぬ。

ダン・レイリー :
 ・ ・
 剣に狂したこの魔人の何処に───。
 侠などが、あろうものか。 

ナタリー・ガルシア :「では、貴方は――貴方自身の為だけに剣を振るってきた、ということなんですの……?」

これまでも、これからも、ただ己のためだけに……?

"天刑府君"元 天刑 :
「然り」

 言いつつ、男はその刀をゆっくりと刀身を見つめて、続ける。
 ジャーム
「神 魔を斬り、殺し、その血を吸う。
    ・・
 それが彼女が俺に語り掛ける天命に他ならん」

"天刑府君"元 天刑 :
「どだい剣など人を殺すもの。
 その本質は変わらん。
 ならば何故世が乱れることを憂いよう」

ダン・レイリー :
「血を食らい、血と食い合うが望みか。
 とんだ羅睺もあったものだ」

ナタリー・ガルシア :「いいえ、いいえ――力は、力を振るうということは、それだけではないはずですわ」

ダン・レイリー :
「………ナタリー。ナタリー・ガルシア。
 これだけは先に言っておくぞ」

ダン・レイリー :
「嵐を識ろうとすることは良い。
 脅威を学ぶことは生き残る近道だ。それを怠ることが正論などと、
 間違っても口にされたくはない」

ダン・レイリー :
「だがな」

ダン・レイリー :
 ・
「嵐と…分かり合えると思うな」

ダン・レイリー :
    ・・
 これはそれだ。
 どんな理由、どんな動機があり、その剣に血を吸わせる、曰く逸楽を避けたのかは知らないし、知ったことでない。

ダン・レイリー :
 ………知ったところで、何も得ない。
 ただただ、蟻地獄のように、亡者の手に引き摺られるだけだ。

ナタリー・ガルシア :「それでも……!」

反射的にあげた声は、しかし小さく掠れていく。

「相手を理解し、共存を諦めては……いけませんわ」

ダン・レイリー :
 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
「そんなことじゃあ、最初にきみが死ぬぞ」

ナタリー・ガルシア :「………………」

それが分かっているから、少女は視線を落として黙り込むことしか出来ない。

己が掲げる理想を追い求めるには、それこそ英雄に並ぶ程の力が必要だと、誰よりも痛感しているからこそ……諦めて、妥協することは必要だと、理性は訴えている。

"天刑府君"元 天刑 :
「……」

 喜悦ににじんだ顔が、ふと、静まった。
 その眼差しがどこか冷めたようにすぼまり、ダンに向けられる。

"天刑府君"元 天刑 :
「それだけ分かっていながら」

"天刑府君"元 天刑 :
 ・・・ ・・・・・・・
「おまえ、何故生きている」

ダン・レイリー :「………そんな話か」

ダン・レイリー :
「貴様にしては随分と直球の言葉だ。
 ………まあ、いい」

"天刑府君"元 天刑 :
「あの時おまえが取るべき行動は、そうではなかった筈だ。
 兵士であるならば、おまえの為すべきは決まっていた筈だ」

ダン・レイリー :
「そうだな」

 淡々と応じる。
 何を言おうとその方面については、
 議論の余地などない。

ダン・レイリー :
「兵士は戦場を択べない。
 また、任務に異を唱えることはない。

 手足が脳の意に沿わないなど欠陥品だ…」

ダン・レイリー :
「………その俺が生きているのは、単に死に切れるもんじゃないからさ。それ以上でもそれ以下でもない」 

ダン・レイリー :
 事実の確認に大した感情も込めない。
    コト
 そんな理由は、あの瞬間で生き延びてから欲しくてしょうがなかったが。
     ・・
 同時に、それはあの瞬間にケリの付いた答えでしかなかった。

ダン・レイリー :
「だが───几帳面なことだ。
      ・・
 物事全てに何故を付けたかったか」

"天刑府君"元 天刑 :
「…………ならば、おまえが生きていることが既に、おまえの主張を裏切っている」

 問いに応えず、男は冷ややかな言葉で続ける。

"天刑府君"元 天刑 :
「だが、此処で言葉の問答を交わしたところで……俺の望む答えは得られまい。
 故に、おまえが俺の斬るべき星となるよう……」
 

"天刑府君"元 天刑 :
「──外堀を埋めてやろう。
          ジャーム
 おまえが、斬るべき 神 魔 となれるよう」

ダン・レイリー :「───易い挑発だ」

ダン・レイリー :
 ………だから性質が悪い。
 ヤツは(嘗てがどうだかは知らないが)そういう男だった。

「………だが良いだろう。
 ついこの間も、その易い売り言葉に買い言葉で応えてしまったばかりだ。二度目も変わらん」

ダン・レイリー :
「貴様の名を聞いた時から、俺も、あの日にケリをつける為に合衆国に戻って来たのだからな」

"天刑府君"元 天刑 :
「ああ、そうだろうとも。
 俺も、ケリをつけねばならん。
 あの日……おまえへのつまらぬ"こだわり"に」

"天刑府君"元 天刑 :
「これより先。
 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
 俺は如何なる場所、如何なる状況であろうと
 ・・・・・・・・・・・・・・
 会敵次第死ぬまで貴様らを斬る」

"天刑府君"元 天刑 :
    シャンバラ
「これが 奴等 の戦争ではない。
 俺のおまえへの宣戦布告だ。
 私闘を好む奴らの流儀に沿うのは癪だが」

"天刑府君"元 天刑 :
「俺はおまえを否定せねば進めず
 おまえは俺を滅ぼすことが使命。
 此処に星は交わった。倶に天を戴かず、ならば──後は来る死合う刻まで、天命を進めるのみ」

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :
「良い迷惑だ」

 それは恐らく、どちらの意味でも。

ダン・レイリー :
 ………そも、つまらぬ“こだわり”というならば、それは恐らく俺自身を指すものでもあっただろう。
 何処かにはそれがある。俺自身にさえも。

 その結果として銃口を向け合い殺し合う。
   . Destiny
 因縁/または/宿命などと題をつけようものなら、たいそう皮肉で不本意な話だ。

ダン・レイリー :
「受け取ってやる。
 ついでに………貴様の言う“癪”に合わせて返してやろう」

ダン・レイリー :
「自惚れるなよ。“天刑府君”。
 ・・・・・・・・・
 俺の死に損ねた理由が貴様であるものか」

"天刑府君"元 天刑 :
「──ハ、そうだろう。そうであろうよ」

"天刑府君"元 天刑 :
「そして恐らくは、その理由こそが──」

"天刑府君"元 天刑 :
 男はそう言い残し、踵を返した。
 背を向けて、歩み出す。嵐の中に孤影が消える。
 それは……宛ら旅するが如くに、この合衆国を徘徊するのだろう。

SYSTEM :
 そして宿星が合う……その天運が噛み合った時。
 男はその剣狂を振るい、死闘を演じることとなるだろう。
 剣狂。神魔狩り。最速の殺意、遍く神魔を裁く天刑の星。そう呼ばれ、恐れられた四人目の狩人が今、解き放たれた。

SYSTEM :
 男の姿はかき消えた。最早その兆しすら消え失せた。
 彼が姿を見せた理由は不可解ではあったが……或いはそれこそが、彼が既に行くべきところまで行った証だったのかもしれない
 

ダン・レイリー :
「………そうさ。
 貴様はそうするだろう、“天刑府君”」

ダン・レイリー :
 任務で合衆国に舞い戻ってから初めて聞いたこの名前も………。
 案外、口にすれば馴染むものだ。

ダン・レイリー :
 それが今ではないというだけで、そのゆく道の轍にそうではないものがあった“可能性がある”だけであって。

 今のアレは、神も仏も畏れぬ天刑の星。
 海向こうのこちらの言葉で言うなれば、歩くギロチン気取りだ。
 実際にそうと見做せば、どんなものの首も瞬きで落とすから性質が悪い。 

ダン・レイリー :
 ………。
 どうであろうとも………。

ダン・レイリー :
「ある種の懸念が当たった………。
 止めるべきなのは確かだろうな」

ナタリー・ガルシア :「……止めるにしても、私達の力を頼ってもらえると思っても構いませんのよね?」

伺うように、釘を刺すように……あるいは、気遣うように、はっきりと視線を合わせて尋ねる。

ダン・レイリー :
「そうだな。
 僕はテンペストの人間として、
 任務の遂行にあらゆる手段を用いる義務がある」

ダン・レイリー :
「………心配させたか? では、誤解を一つ解く。
 俺は決闘をしに此処に訪れたわけでも、センチメンタルを完遂し身を投げるために此処に来たわけでもないんだ」 

ナタリー・ガルシア :「……それでも、何も感じない、ということではありませんわ」

どんな相手で、どんな勘定を抱いているかまでは少女には分からない――だが、そこにある因縁の深さは、肌で感じ取っていた。

「ですが、ええ……信じます。困難には、私達全員で立ち向かうと、そういうことですわよね?」

ダン・レイリー :「なに。大したことでない───」 

ダン・レイリー :「というのは、今きみが欲した言葉ではないな」

ダン・レイリー :
「後者から応じよう。そうだ。
 オーヴァードなりたての安っぽい特別感と根拠のない自信は、昔に痛い目を見て卒業している」

ダン・レイリー :
「そして前者についてだが………。

 まあな。事情がある。
 僕の中ではもうケリのついている話だが、それが正しかったのかどうかを………誰でもないものに、性懲りもなく聞かれているのかも知れないな」

ナタリー・ガルシア :「私は、その事情については分かりませんが――それを正しかったと、そう思って欲しいですわ」

私が、わざわざ言うまでもないことですが、と付け足す。
己の中で区切りが付いていることを、再度問いただされている気分だという。

――それならば、せめて。

ナタリー・ガルシア :
「なんの担保にもなりませんが、私は信じていますわ――ダン・レイリー大尉?」

ダン・レイリー :なるほどな。敢えてつつくでもないか。 

ダン・レイリー :
「ありがとう。
 そこを否定したら、過去の自分にも、その結果にも笑われてしまうからな」

ダン・レイリー :「覚えなくてもいいが………この年でも、男というのは見栄を張りたいのさ。マクレーン少尉だけの特権ではなくな」

"アダム" :
──行ったか。ああ、上出来だよ。ご苦労様。
 ちゃんと情報が引き出せたじゃないか。

"アダム" :
 そうそう、一応フォローしておこう。大尉殿はキミに対して優しいから、そういうコトをしないけど。
 或いは大尉殿の経験則で、そういうのはヤメにしてるのかもしれないが、キミがあの男の話に乗ろうとした判断自体は間違ってない。
                ・・・・・・・・・・・・・
確かにジャームは話を訊かないが、こちらがその話を訊く分には別だ。

"アダム" :
 基本はヒトのカタチをやめるし理性もなくなるわけだが……
 理性を下手に残してるタイプのジャームは基本、喋りたがりなのさ。自分で繋がりを作れないから、自分を刻みつけようとする奴が多いんだよ。

ナタリー・ガルシア :「殿方は、幾つになっても男の子だとお母様が言っていましたわ」

ナタリー・ガルシア :「大尉も、案外可愛らしいところがあるようですわね?」

"アダム" :
 だから彼らは会話の中で自分の本質が漏れていく。多かれ少なかれ、そいつで相手に自分を残そうとしたがる。
 話の中で敵の衝動や能力のスタイル、所持する武器の性質を読み解いていくんだ。
                              ヒアリング
UGNってのは一応医療目的の組織なんだろ? そいつに属するなら、問診には慣れておくことだ。

ダン・レイリー :
「“可愛らしい”は少々心外だがね。そんなものさ、よく見られている」

ナタリー・ガルシア :(……きちんと相手を識ることこそ、試練を乗り越える糸口になるというわけですわね)

ナタリー・ガルシア :「よく見て、よく聞いて、よく識っていこうと思いますわ――大尉や皆さんのことも、これから対峙する彼らのことも」

理解し合えなくても、相手を識って、己の中に刻んでいくことくらいは出来るだろうから――

ナタリー・ガルシア :(試練を乗り越えるためにも――私が乗り越えた相手を、蔑ろにしないためにも)

ダン・レイリー :
        ・・
 分かり合うから識るに言い変えたか。
 性分なのかも知れないが。

ダン・レイリー :「分かっている内は言わないさ」

"アダム" :
……用が済めば棄てちまえばいいと思うがね、オレは。下手に覚えてもらうよりは。

"アダム" :
そして。キミが掴んだ糸口から情報がやってくる頃だ。
……と、早速だ。

SYSTEM :
 いうが早いか、映像を切りこれまで沈黙を守っていた水無瀬から通信が入った。

水無瀬 進 :
『済まない、解析に集中していた!
 見ての通り、あのカンフー男はもう戦線を離脱したみたいだけど……』

ダン・レイリー :
「ミナセか。嵐は今ぶつかって来なかったよ、問題はない。
 それでヤツが………どうした? もう行動を起こしていなければいいが」

水無瀬 進 :
『奴が剣を引き抜いた時から調査を続けててね。
 本部の面々も直接あれを見るのは初めてだったから、あのEXレネゲイドに関して調べを進めていたんだ』

 恐らく戦闘になると踏み、実際に交戦に入るまでにサポートに回るため急ピッチでの作業だったのだろう。

水無瀬 進 :
『元々中国支部の人たちと関係があったって話だろ? 事前データから懸念されることはあったんだ。
 今回調べてみて、その不安は案の定的中した……』

ナタリー・ガルシア :「あのEXレネゲイドの性質や正体が分かりましたの?あの一瞬で、流石ですわ!」

ダン・レイリー :
「本職だからな。ウチでも、今までの相手でも、そうそう右に出るヤツはいない。
 ………褒めるのは程々にするとして、本題に入ろう」

ダン・レイリー :
「アジア方面…それも中国所縁の懸念だな?
 あっちはその手のブツの枚挙に暇がないが………」

 ………あの剣か。

水無瀬 進 :
 ・・・・・・
『あれは遺産だ。
 遺産にはカテゴリ……つまり大まかな能力の分類分けと、タイプ……つまりそれが伝説でどういう名前の概念として知られているか。この二つによって種類を分けているというんだけど』

水無瀬 進 :
『分かったのはカテゴリだけだ。
 けど、大まかな能力はこれで割れる。その能力についてもね。
 いいかい……』

水無瀬 進 :
『そのカテゴリー名は『鬼斬りの古太刀』。
 得られる効力は……ジャームのみが発動しうる極大な力を断ち切る力。
 その代償は……ジャームに対する殺意、嫌悪感』

水無瀬 進 :
      ・・・・・・・・・・・
『彼は多分……遺産に憑りつかれたんだ』

SYSTEM :
【information更新!】

【アイテム:ストームルーラー】
 TYPE;鬼斬りの古太刀 MODEL:???
 元の有するEXレネゲイド。
 真の名は封じられているが、彼が契約した祖国より出土した契約遺物である朱の刀身を持つ太古の剣。
                      グイ
 天魔覆滅。その業を負い、その刃はカタチなき 鬼 ……中国において鬼とは霊を含めた無形のもの、化外全般を指す……をこそ斬り裂くという。
 故にこそ妖刀はその対価として魔性への嫌悪を促し、ジャームの血を要求し続ける。

ダン・レイリー :
「魔剣に魅入られた、か。
 侠客物語の、めでたしのその続きが的中とはな」

ダン・レイリー :
    ・・
「(………アレはそれだけか?)」

ダン・レイリー :
 いや………僕が遺産というのを測る物差しを持たないだけかも知れない。
 知っていても、内側で感じ取る術などは、当然ながら無い。

ナタリー・ガルシア :「ジャームに対して、だけですの……?それにしては……」

水無瀬 進 :
『シンプルな答えさ』

水無瀬 進 :
『斬られて殺されるとリザレクトする。
 リザレクトすると侵蝕率が上がる。
 侵蝕率が上がると……』

水無瀬 進 :
『そういうわけ。
 はっきりとしたことをここで明確にするわけにはいかないけど。

 彼、ジャームを斬るって結果だけ求めて、過程はもう何でもいいんじゃないか?』

ナタリー・ガルシア :「目的の為なら手段を選ばない、ということですわね――敵を倒すために、自ら敵を作り出すなんて、そんなの……」

ダン・レイリー :
「目的と手段が逆転したようなものだな。

 ジャームを屠るために、屠るためのジャームを作る………その方面が極まると、たまに“そういうの”が出てくる」

ダン・レイリー :
「………何の意味もない徒労だが。
 行きつくところまで行ったのであれば、そんなものも気になりはしないのさ」

ダン・レイリー :
 本当に“そう”ならな。
 ………それにしても。

ダン・レイリー :「皮肉な呼び名だ」

ダン・レイリー :
 人を自閉症の予備軍めいて呼ぶ男が、その手に持つ狂刃が“嵐”と来た。
 皮肉な巡り合わせも、これだけ盛られては辟易を通り越すかもしれない。

水無瀬 進 :
『まったくだ。
 けど……本来この力は曰く見えざるものを斬る……って力だそうだけど。基本的に普通のオーヴァードには大した影響はない』

水無瀬 進 :
『すごくよく斬れるすごく頑丈なだけの剣だ。絡め手はないだろう。
 ……尤も、つまるところ奴さんの強さは遺産のありなしとか関係なしってことでもあるんだろうけど』

ナタリー・ガルシア :「絡繰のない強さが一番厄介ですものね……」

水無瀬 進 :
『まあね。隙が無く、どこでも使えるってのは基本的に自力で勝るしかない。
 ただ行動のメカニズムはそういうコトなんだと思うし』

水無瀬 進 :
『この予想が正しければではあるけど、浸食率が高い人ほど危険だ。とくにその侵蝕率が100%を超えた場合、ジャームと見分けがつかなくなるだろ?』

水無瀬 進 :
『そうなった奴を優先的に狙ってくる……そういう危険性も考慮した方がいい。
 一層、リソースの分配には気をつけなくちゃいけないね』

ダン・レイリー :
「リザレクトの困難さ、オーヴァードとしてのスペック向上………。
 連中に近付くことは事実だな」

ダン・レイリー :
「そうなったメンバーの単独行動には気をつけるとして………。
 ………論じて有効策が出るでもないが、迎撃の必要性については共有しておかねばな」

ダン・レイリー :
 …こちらがバロール・シンドロームの罹患者なのはある意味幸いだ。
 俺自身が第二第三のミイラになるリスクと付き合う必要がある事を考えなければならないが、考えることが多いのは今に始まった話でもなし。

水無瀬 進 :
『そうだね。向こうが無駄に律儀なおかげで助かった。
 推定だけど……ジャームが考えることなんかわからないもんさ。気が変わって戻って斬りかかってくる前に、早い所宿に戻ろうか』
 

SYSTEM :
 その後……あなた達は現場を現地のUGNに任せてロサンゼルス支部へと戻ることとなった。その道中、何の被害も見られなかったのは彼が自分に課した律を護っている故なのか。

 長い時を経た邂逅。かつて過ぎ去ったもう一つの縁、星が再びここに重なる。
 であれば。この平穏は差し詰め、嵐の前の静けさと呼ぶほかなかった。

SYSTEM :
 突然の凶星の襲来。男はあくまで、その場で行動を起こすことはなく、ただ意志を伝えるのみで去って行った。
 しかしそれは、これから先の作戦がより熾烈なものとなるということを示していた……

SYSTEM :
【Information更新!】

 イベント条件が開示されました。
 
イベント:煌々凶星
発生条件:ランダム配置される特定のセクタで探索を行う
内容:判定後、そのセクタに配置されたユニットと敵対ユニット『元 天刑』と戦闘を行う。
終了条件:敵対ユニットがシーンから離脱する
 

SYSTEM :
【Check!】

 2ラウンド目よりハウスルールが追加されます。
 

SYSTEM :
[2-2 EX/セットアッププロセス]

○情報調査
・判定技能:<情報:UGN><情報:テンペスト> <情報:裏社会>
 目標値:12(3段階目)

 三回目に成功した場合、選択したエリア内のユニット『元 天刑』の配置状況を確認することが出来る。

SYSTEM :
【Information更新!】

 NPCカードの使用できるエフェクトが解放されました

紅 蘭芳 :『紅 蘭芳』
 『カウンター』……ユニット『元 天刑』とマッチング時、戦闘を終了させる/シナリオ1

SYSTEM :
エリア内の全ユニットの判定が終了しました。
メインプロセスを終了します

SYSTEM :

-CLEANUP PROCESS-

SYSTEM :
各エリアのエネミーの行動を開始します。

GM :そういうわけでPCのターンが終わった後は

GM :敵のターンだ!
ずんがずんがやってくるFHのカスどもから街を護るのだ!

GM :間が空いたのでルールをおさらいしておこう
簡単に言えば各エリアに配置したエネミーと攻撃判定でダイス勝負を行う!
勝てばそのままクリア 撒けた場合その出目でダメージが発生する

GM :そのダメージをガード等使って耐えきった場合にも成功となります
いずれも満たさなかった場合は判定失敗!リザレクト分の消耗と進行度UPの手痛い洗礼が待っていぞ

GM :さて 各エリアに配置されているエネミーは……

GM :こんな状況ですな 判明している限りでは

GM :ロサンゼルスは小規模戦闘を制したため、強化猟兵二人だったところが一人減りました

ダン・レイリー :ルイジアナは…まだ小規模戦闘の相手が分かっていないことになっていたはずだな

ダン・レイリー :この場合は、此方は何と戦っているのか分からないまま判定で対決を行うのか?

GM :そうなります が

灰院鐘 :が?

GM :当然ながら敵は『攻撃判定』を行います

GM :それを以てどのぐらいの戦力かを推し量ってもらいたい

灰院鐘 :なるほど

灰院鐘 :

ダン・レイリー :使用する武器の傾向で、ある程度“どういう相手”かは分かるというわけだ

アトラ :当たって砕けんことには何ともかんともってことっすね

GM :イエス また軽い描写も行います故

ブルー・ディキンソン :びっくりどっきり〜。

GM :具体的なステータスが割れるまでの判断材料としてってところですな

ナタリー・ガルシア :受け身ではありますが、これも相手の戦力情報を掴む一端として大切なフェーズになりますわね

ダン・レイリー :了解した。次までには事前調査も終わらせておきたいが、先のことを皮算用するわけにもな。先ずは今来る敵部隊の対処だ。

GM :なーに この面子は調子がいいようですからな

GM :既に情報収集でニューオーリンズ以外を抜いたことで、ほぼ確で次が抜けるハズ!

ダン・レイリー :順当に行けばな。さて…。

GM :では早速進めていきましょう
どこからやります?

GM :ではスケジュールの兼ね合いを考えて まずはデトロイトから!

アトラ :うお~~~

ブルー・ディキンソン :いえっさ〜。

ディアス・マクレーン :気楽にやんなお嬢ちゃん!なーに、失敗したら俺達でフォローするぜ!

ナタリー・ガルシア :頼もしい限りですわ

GM :ではまず強化猟兵の判定から!

アトラ :ウオー!

ブルー・ディキンソン :ドン・トコイヤーです

強化猟兵 :11dx+5 《アーマーピアシング弾》 (11DX10+5) > 9[4,4,4,6,6,6,7,7,8,8,9]+5 > 1

GM :雑魚がよ

GM :所詮は雑魚……さあ誰が対処に当たる?

アトラ :ちなみにウチはそんなに自信がありませんが!

ブルー・ディキンソン :フッ……ここは私の白兵技能が、雷の如き輝きを見せる時───(雷霆精だけに)

ブルー・ディキンソン :なんちゃって。私がいきましょう。

GM :了解!さあ来い!強化猟兵はファンブらなければ死ぬぞォォォォォォォ!(ヤケクソ

ブルー・ディキンソン :3dx+27 <肉体:白兵> (3DX10+27) > 10[4,5,10]+7[7]+27 > 4

GM :ひ ひでえ

ブルー・ディキンソン :あらやだ回りましたわ♡

GM :ミンチよりひでぇや

アトラ :でけぇ~

GM :だがそこで運を使い果たしたことを後悔しな!
次は機甲猟兵の攻撃だ!

GM :どちらで受ける?

ブルー・ディキンソン :あんですってぇ……。

ブルー・ディキンソン :フッしかしこの27という固定値を舐めないでください……して、次も私がいっても?

GM :問題ありません!

アトラ :そのつもりしかなかったんで大丈夫っす!(おうえん)

ブルー・ディキンソン :応援ブーーーストっ。

GM :よし ではブルーさんで受けるということで……
判定行きます

機甲猟兵 :10dx8+1 《2連装コイルガン》 (10DX8+1) > 10[1,2,4,5,6,7,7,7,9,10]+10[1,8]+3[3]+1 > 2

GM :優秀な奴だ 期待値ピッタリとはな……

ブルー・ディキンソン :フッ。

GM :相手がブルーさんでなければ……!

ブルー・ディキンソン :では行きましょう……。

GM :ウオオ来いよ!

ブルー・ディキンソン :3dx+27 <肉体:白兵> (3DX10+27) > 9[5,8,9]+27 > 3

ブルー・ディキンソン :フッ……。

GM :グエーー! 固定値の暴力!!

アトラ :でけぇ~(2回目)

ブルー・ディキンソン :膾斬りで〜〜〜〜〜っす☆

ディアス・マクレーン :ジーザス、俺の見せ場ごと切り裂かれちまった! だがナイスだぜ!

アトラ :まーまー、哨戒してくれてたんで!

ブルー・ディキンソン :美味しいご飯を紹介してくれたお礼と言っておきます♡

SYSTEM :
判定に成功しました。
AREA:DETROITの防衛に成功しました。

GM :ということでブルーさんの獅子奮迅の活躍で歩行戦車と猟兵たちの進行を食い止めることに成功しました!お見事!
ということで次は……

GM :予定の流れならニューオーリンズかな

GM :では鐘さん!

灰院鐘 :はい!

GM :防衛判定のおじかんです
此方は必然鐘さんが受けることになるのだが

紅 蘭芳 :あっこれ無理!ってなったらすぐ呼んでね!すぱーんっとやっつけちゃいましょう!

灰院鐘 :……! ありがとう! 頼りにしてます!

GM :ではまずは強化猟兵から!一足先にそのこぎれいな顔をぶっ飛ばしてやる!

灰院鐘 :よし、がんばるよ

強化猟兵 :11dx+5 《アーマーピアシング弾》 (11DX10+5) > 10[1,1,2,2,2,3,3,5,7,7,10]+5[5]+5 > 2

GM :回ったようだな……

灰院鐘 :振るだけ振ってみよう 宣言はなしだ

GM :了解!どーぞ!

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 10[1,1,2,4,8,9,10,10]+9[2,9]+1 > 2

GM :なにィィィィィ

灰院鐘 :わあ!びっくりした

GM :なんてやつだァ……

GM :同値 同値ということは……

GM :成功!成功です!

灰院鐘 :うまくいってよかった 昔取ったナントカってやつだね

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :上出来です

GM :だが余裕こいていられるのも今の内だぜ 第二波だ!

灰院鐘 :いつでもどうぞ、だ!

????? :16dx7+4 (16DX7+4) > 10[1,2,3,3,3,3,4,4,5,6,6,6,7,9,10,10]+10[1,4,5,8]+2[2]+4 > 2

GM :ン!? 今日は調子が悪いようだな……

灰院鐘 :今度も宣言はなし! いつでもいけるよ

GM :ではどーぞ!来いィ!!

灰院鐘 :8dx+1 (8DX10+1) > 7[1,4,4,5,5,5,6,7]+1 >

灰院鐘 :……うん!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :先の攻撃で削られなかっただけ十分です

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :来ます。あなたなら問題ないと思いますが、構えて。

灰院鐘 :了解。ここからが僕の正念場で、得意分野だ。何とかしてみせよう

GM :では行くぜ!喰らえィ!!

????? :3d10+20 (3D10+20) > 20[5,7,8]+20 > 4

灰院鐘 :ガードだ。装甲値は有効かな

GM :有効ですわよ

灰院鐘 :よかった。それじゃあアリベイトスーツの効果も併用して──

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 55 → 37

灰院鐘 :うん、なんとか凌げたみたいだ

紅 蘭芳 :ひゃー……ほんとに防ぎ切っちゃった

灰院鐘 :がんばりました!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :消耗も最小限に抑えられた。上出来です。

灰院鐘 :……!

灰院鐘 :どうだろう 防衛成功の記念にみんなでハグというのは……

紅 蘭芳 :さんせーい!よくできました!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :その調子だと戦闘のたびにソレすることになりますよ。

灰院鐘 :いいことじゃないか 機会は多ければ多いほどいいよ

灰院鐘 :そうだ、クリンナップのうちに《鋼の肉体》を使ってもいいかな

GM :Q&Aで答えた通り、問題ありません!

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] 侵蝕率 : 49 → 51

灰院鐘 :5d10+6 (5D10+6) > 28[10,7,6,1,4]+6 > 3

GM :完治☆だと

system :[ "ラフメタル"灰院鐘 ] HP : 37 → 58

灰院鐘 :ハグのおかげだよ ありがとう

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :…まあ成果が出たなら善しとしましょう。モチベーション管理ということで。

灰院鐘 :わあい

SYSTEM :
判定に成功しました。
AREA:NEW ORLEANSの防衛に成功しました。

GM :鐘さんが敵の攻勢を前線で防ぎ、踏みとどまることで敵の侵攻を抑えることに成功したようだ!見事!

GM :では……最後はロサンゼルス!

GM :アワレにもポッ立ちの強化猟兵が一人…

ダン・レイリー :こちらでは攻撃の出鼻を挫いている。油断は禁物だが…

ナタリー・ガルシア :任せてくださいまし、最後まで抜かりなくいきますわよ

ダン・レイリー :ン。念には念と行こう。張っても意味のない見栄は張れないものだし、ナタリーに恃む。いいかい?

GM :OK!お嬢無双が続く!!

GM :では判定地を出していきます

ナタリー・ガルシア :いつでも構いませんわ、こちらは万全ですわよ

強化猟兵 :11dx+5 《アーマーピアシング弾》 (11DX10+5) > 10[2,5,5,6,7,7,7,7,8,10,10]+8[1,8]+5 > 2

GM :こっ ここで意地を見せた強化猟兵

GM :予想外に大分上振れたぞ!どうするナタリー!

ナタリー・ガルシア :水無瀬さんに強化の雷光を要請しても大丈夫でしょうか?

水無瀬 進 :おや、お困りかな。
待ちくたびれたよ。僕のサポートが必要なら、何時でもどうぞだ!

水無瀬 進 :
メジャーアクション:《強化の雷光 LV5》
対象:ナタリー・ガルシア

効果:次のミドル判定ダイス+5dx

ナタリー・ガルシア :それでは、私は白兵で判定いたします
その際に《援護の風LV7》と《ウインドブレスLV5》を使用したいですわ

水無瀬 進 :……え、白兵なの 殴るの?

ダン・レイリー :なるほど 紅さん…きみの教官は功夫だと聞いていたが

ナタリー・ガルシア :師匠仕込の功夫を見せる時が来ましたわ

ダン・レイリー :(冗談だと思っていたが本気なのか?)

紅 蘭芳 :(心じゃよ……心じゃよ……)
(ほわんほわんほわん)

ナタリー・ガルシア :それでは判定しても宜しいでしょうか?

GM :いいですとも! まさかこんなとこで伏線回収するとは

ナタリー・ガルシア :(3+5+7)DX+15
私の功夫を見せてさしあげますわ!! (15DX10+15) > 10[1,1,1,2,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,10]+10[10]+3[3]+15 > 3

GM :ウオオオオオオ!!!!

GM :お嬢のレイジングストームが炸裂する!!!

ダン・レイリー :(覇我亜怒…)

ナタリー・ガルシア :私の拳は、嵐を切り裂く拳ですわ~~~!!!!

GM :ということで成功!ここにきてまさかの功夫とはこのリハクの目を以てしても見えなんだ……
お見事!

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 56 → 60

SYSTEM :
判定に成功しました。
AREA:LOS ANGELESの防衛に成功しました。

ダン・レイリー :(ハヌマーン・シンドロームは器用だな…)

ナタリー・ガルシア :シュッシュッシュ

SYSTEM :
エリア内の全ユニットの防衛判定が終了しました。
クリンナッププロセスを終了します。

SYSTEM :
【check!】
 イベントシーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ダン・レイリー :
 そういう話だったな。
 では、改めて………。

ダン・レイリー :
「"天刑府君"元 天刑」にロイスを取得する。

ダン・レイリー :
 その内容は、「〇P遺志/N無関心」。
 意味は秘匿する。

ナタリー・ガルシア :私も、『ダン・レイリー』にロイスを取得しますわ

○P信頼/悔悟

GM :了解です!では二人ともキャラシに記載おねがいします

ダン・レイリー :ありがとう。そうさせてもらおう。

ナタリー・ガルシア :記入しましたわ

SYSTEM :
【check!】
 1ラウンド目が終了しました。
 RPしたいシーンがある場合は宣言してください

灰院鐘 :それじゃあお言葉に甘えて。同行している二人と話す時間がほしいな

GM :了解ですです
では戦闘はじめでシーンアウトするか、戦闘終わりの小休止ぐらいのシチュエーションでどうでしょう

灰院鐘 :小休止でお願いするよ ありがとう

GM :了解ですです では

GM :では明日九時から開始しましょー

灰院鐘 :うん、よろしくお願いします

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【Interlude②】

SYSTEM :
【Interlude②】

登場PC: Syou Kain
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ニューオーリンズに来て五、六日経過した頃のことだ。
 現地レジスタンスの要請で一同はミシシッピ川河口まで急行。クレセントシティ接続橋付近にやってきた。

SYSTEM :
 海上輸送を頼みとするレジスタンスらの補給を断つためだったのだろう。付近まで近づくと、丁度レジスタンスの一同が会敵していた段階であった。
 彼らが撤退するまでの時間を稼ぐため、灰院鐘は単独で敵部隊の足止めに打って出る。

SYSTEM :
 戦闘は数十分に及び続き、一同は敵部隊の足止めに成功。
 勇魚、紅の到着と同時に攻勢に転ずるや、敵部隊は深入りはすまいとしてその場から撤退を始めていた。

????? :
「────────────────」

 敵の主力機体……以前、交戦した機械化兵の亜種、或いは新型機であったのか。よく似た流線形のカタチをした、だが確実にそれに勝る性能を有していた敵機。
 防衛戦でも殊更に手を焼いた鋼の巨躯が、噴煙を吐きながら鉄橋を飛び降りる。

SYSTEM :
 ミシシッピ川へと飛び降りた機体はそのまま高速で潜航し、戦線から離脱を始める。
 ……敵の判断は素早い。敵に打撃を与えはしたが、このまま追ったところでより手傷を負うばかりである。今後の作戦行動を考えるに、後手から攻めに転じるにはもう暫く必要だろう

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……敵影ロスト。敵個体の熱源反応、ロスト。
 戦闘エリアのワーディングを解除します」

 接続橋の上で周囲を確認した勇魚は、休息する鐘と周囲を警戒していた紅にそう告げると同時、展開したワーディングを解除する。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「お疲れ様です"ラフメタル"。
 一先ず敵を退けられたようです」

灰院鐘 :
「うん。勇魚く──"炎神の士師"と"飄颻天華"もお疲れさま」

 ワーディングが解かれ、後に流れるのは河のさざなみを乗せた風音だけだ。彼方には夜の気配。日が沈みきるまで、そう長くないだろう。

灰院鐘 :
「案外どうにかなるものだね」

 みんな無事でよかった、とおっとり微笑む。長時間にわたって接敵していたにもかかわらず、その姿は傷ひとつない。

灰院鐘 :
 無傷で済ませた──のではなく、単純に治りが早い。タフネスはキュマイラならば誰もが誇るところではあるが、わけても肉体修復の速度は同種の中でも突出している。

 曰く、特技。死ななければ安いとはよく言ったもので、要するに、とりあえず生きてさえいればリカバーが効く身体なのだ。

紅 蘭芳 :
              リザレクト
「わ、もう治ってる! すごい 代 謝 速度……
 いざという時は私が出る気だったのに、一人で護り切っちゃった!」

 驚き半分でつんつんと疵のあった前腕を指でつつく。あの巨大な機械化兵が振り下ろした武装を素手で受けた腕は、今やすっかり元通りに快復している。

紅 蘭芳 :
「敵わないなぁー、此処まで直りが早い人とか、ウチの内功の巧い子でも早々ないんじゃない?」

灰院鐘 :
「これだけは少し自信があるよ。おおざっぱにやってもなんとかなるし、健康っていいね」

灰院鐘 :
「ないこう? それも功夫?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「気功術、内丹術と呼ばれる技術ですね。オーヴァードの能力をあちらの国では仙道、神通力と結びつけることが多い」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「外傷の回復や内的なダメージを回復する手段は、発症した症状によっては強力な代謝や付帯する効果で回復することが出来る。
 そうした力を体系的に説明したものなのでしょう」

灰院鐘 :
「ふうん。よくわからないけどかっこいいね」

紅 蘭芳 :
「でしょー!?」

灰院鐘 :
「ナタリーくんも使えるの? 内功とか、功夫とか」

紅 蘭芳 :
「ええ、とは言ってもハヌマーンの症状で修められるのは素養に依るから、おまけ程度なんだけど。
 身を軽くする軽功とか、拳法の方も」

紅 蘭芳 :
「ナタリーちゃんはRCで吹っ飛ばすタイプだからね。
 屋内での戦闘に対応できるように、少数なら素早く近付いて無効化出来るように基礎を教えたんだ。RCを練る暇もない時なんかにも役立つし」

灰院鐘 :
「わお、近づいてズドンだ。意外だね」

灰院鐘 :
「……でも、そうか。実戦経験はないんだっけ、彼女。とんでもない初陣だ」

灰院鐘 :
「ちょっと複雑だね。UGN志望だそうだから、遅かれ早かれではあるんだろうけど」

紅 蘭芳 :
「うん……いきなり実戦で、こんな危険な任務に」

紅 蘭芳 :
「…………でも、本当に。
 力自体は多分、私より上だと思うんだ、あの子。
 なんて言うのかな。エンジンからして違うっていうか
 正直言うと、ちょっとびっくりするぐらいの才能の塊なんだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「オーヴァードの能力は必ずしも経験や蓄積とイコールではありませんから。
 その点で言えばあなたと似ている」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
      ・・・・
「ですが……それだけです。
 "飄颻天華"の薫陶が無為ではなかったとは言いませんが、実戦でない以上得られる経験の質は異なる」
 そこが二人の違いであり。恐らくは、とても重要な差異だ

灰院鐘 :
「そういうものかな。……君が言うならそうなんだろうね」

 ……ともすると残酷でさえある勇魚の断定に、積み重ねることには自信があると凛と告げた姿を思い出す。

灰院鐘 :
「だからこそ、彼女はこれから積む経験を大事にするだろう。きっと僕以上に、君の言葉を理解した上で。……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……。
 彼女は」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「教官から、あの言葉を受けた」
 思い返すように、リリアの彼女に向けての態度を回顧する。

「あの人は、伊達や酔狂で言葉を弄する人ではありません。
 あそこであんな、逃げ道を塞ぐような言い方をしたのは、理由があるんだと思います」

灰院鐘 :
「君よ、戦士たれ──か」

灰院鐘 :
「……責務かあ。僕には想像もつかないけど」

「ナタリーくんがあの言葉に"為すべきことを為す"と返した以上、僕たちにできることは応援だけだ。彼女、君と同じくらい頑固さんのようだし」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あなたが言えた口ですか」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……どうあれ。
 我々は彼女を対等な同志として引き入れ、共に戦っている」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そう宣誓した以上、それを裏切ることだけは、出来ない」

灰院鐘 :
「……うん」

灰院鐘 :
「でも僕は…… ……」

灰院鐘 :
「……いや、よそう。それよりも、だ」

 勇魚くん、と向き直る。

灰院鐘 :
「この一週間はどうだったかな。思い出は作れた?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………」

 思い返すように回想する。
 沼地のワニを鑑賞するツアーでは、一番はしゃいでいたのは灰院鐘だった。
 タバスコ工場の見学などは、辛党の様子だった紅蘭芳があれやこれやとはしゃいでいたのを思い出す。
 勇魚は別段、それらに目新しいものを感じることはなかった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 沼地を遊泳するワニなどより遥か巨きい、硬鱗の竜などを見た後では、生態を調べる以上の意味を見出せなかった。
 タバスコ工場に関しては前もって知っていることが大半だ。知見を得られたわけでもない。
 ……ただ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──まあ。
 程々には」

 その渦中を偶さかに思い出し、彼らの顔を回顧する程度には。
 彼女にとって、蓄積になり得たものだった。

灰院鐘 :
「……! よかった!」

灰院鐘 :
「もっと増やしていこう。楽しい記憶は、たぶん多ければ多いほどいい」

灰院鐘 :
(失うのが惜しいと思えるような、そんな思い出を。
 ……それが叶わないのなら、せめて焚べられる分になればいい。彼女にとって本当に大事なものを残しておくための薪になれば……)

灰院鐘 :
「次の任地はどこかな。不謹慎だけど、ちょっと楽しみだね」

紅 蘭芳 :
「うんうん、折角アメリカを旅して回るんだもの! 楽しまなくちゃソンソン!
 美味しいもの食べて、人とふれあって、街を見下ろして、そうやって綺麗なものを集めていく!
 そういうのはきっと、とっても楽しいよ!」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そうですね。
 ですが」

灰院鐘 :ね~っ 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あなたは少し浮かれすぎです」

灰院鐘 :ハイ

紅 蘭芳 :ハイ……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……気を引き締めていきましょう。
 この事件を終わらせない限り、此処で日常を過ごす人たちに朝日は訪れない」

灰院鐘 :
「……うん」

灰院鐘 :

灰院鐘 :
「この一週間、多くの人の営みを見た。海を越えても、土が違っても、あの得難くて脆い世界の尊さは変わらない」

 それが嬉しいと、青年は微笑む。
 異国の料理に顔を綻ばせた時間よりも、見慣れない動物に目を輝かせた瞬間よりも……視界に溢れる、名前も知らない誰かの姿が喜ばしいと。

灰院鐘 :
「彼らを守りたい。そして、彼らのために戦うことを選んだ君たちの力になりたい。

 ──守護者のがんばりどころだ。張り切っていこう」

SYSTEM :
 黄昏時の中、陽が地平線に沈む。ミシシッピ川の潺を耳に三人が見つめるのは、川を隔てたニューオリンズの夜景だった。
 とてもすべてを見通すことは叶わない、幾重も連なる営みの灯がそこにあった。

SYSTEM :
 その日陰で今も尚、戦う力も持たない者達が、欲望の炎に焼かれる者達の餌食となっている。
 今日。護った営みがなければ、一体どれほどの命が彼らの欲望にくべられていたことだろう。助けを求める声すら上げられないまま、文字通りの薪とされ続けていただろう。

SYSTEM :
 この薄氷の上の平和を真実なものとするため。或いは、それを護るために。
 戦士たちはこの地を後にした。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【EXScene③/■■の夢-2】

SYSTEM :
【EXScene③/■■の夢-2】

登場PC: Natalie Garcia
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 沈む。沈む。沈む。

 あなたは、最早見慣れた景色の中で、遠い水面を見上げて沈む。

SYSTEM :
 深い深い海の底へと沈みながら、ゆりかごのように波に揺られて。
 あなたは幾度目か分からない、安らぎの中に沈んでいく。

 これは、夢だ。
 あなたが何度となく見てきた■■の夢。

SYSTEM :
 泡の音を聞く。水面を見上げる。
 海のように見えたそこは、しかし己を除いて誰もいないように思われた。

 だからこそ、”彼”の声はよく響く。

"アダム" :
 ──あれから一週間ってとこか。
   今のところは順調に、順路を巡ってきているようだが……

"アダム" :
 調子がよさそうで何よりだ。
 壊すのが得意なだけある。

ナタリー・ガルシア :「……それは、この間の戦闘のことを言っていますの?」

"アダム" :
 ああ。
 随分と派手にやって気分も晴れたろう。
 将来安泰だ。教えを請うたお師匠殿もさぞお喜びになるだろうさ。

"アダム" :
 どのみちキミが手心を加えていたらハチの巣になるのはどっちだったか。
 そいつを考えれば見事と評するのは妥当と思わないか?

ナタリー・ガルシア :「……はぁ」

溜息を一つ――水中だが、気分としては大きなため息が出た。

「フォローか嫌味か、それとも励ましているのか……もう少し分かりやすく言ったほうが、好かれますわよ?」

ナタリー・ガルシア :「ですが、まあ、良いでしょう……私も、少し悩んでいましたから」

少々癪だということを口にしなかったのは、流石に幼すぎると自制したからで――気を許していることと、捻くれ者の彼に自らの弱みを見せること。

誰かに話したいという気持ちを認めることそれ自体に、ナタリーは少しの悔しさと気恥ずかしさを抱いていた。

ナタリー・ガルシア :「私は、あの時あの戦いで、初めて自らの意志で『誰かを傷つけるために』力を振るいましたわ」

ナタリー・ガルシア :「その結果、私が直接的な原因にはならずとも『間接的に相手が命を落とす』ことも、理解した上で」

ナタリー・ガルシア :「その上で――私は、」

言い淀み、己の心の内を再確認する。

ナタリー・ガルシア :
   ・・・・ ・・・・・・・・・
「――悲しくも、苦しくもないのです」

"アダム" :
 だろうね。

"アダム" :
 だから、オレは別にフォローでも励ましでもなく、言いたいことを言っているだけなんだが。
 まあ、口を開けるきっかけになったなら結構なことだ。

ナタリー・ガルシア :「……では、私も言いたいことを勝手に言いますわ」

"アダム" :
 それでいい。
 アダマー
 ”人間”は元来そうあるべき生き物だ。

ナタリー・ガルシア :「誰かを傷つけること、命を奪うこと、そこに嫌気がないわけではありません――むしろ、これまで以上に避けるべきだと感じていますわ」

ナタリー・ガルシア :「命は尊いものです、とても価値など付けられないほどに――善人、悪人、何を為した人であっても等価であるとされるほどに、命とはかけがえのないものです」

ナタリー・ガルシア :
            ・・・・・・・
「それを私は自らの意志で選び取りました」

自分の中で、大切なものと、そうでないもの。
守りたいものと、諦められるもの。
味方と敵。
自らの中で、尊いはずの命に順位を付けて、大切なものを選び取った。

ナタリー・ガルシア :「私は――」

ナタリー・ガルシア :「私は、きっと、皆さんに思われているよりも『良い子』ではありません――善くあろうと、そう、努力しているだけで」

ナタリー・ガルシア :「私のために、他者を踏みにじるならば――せめて、そのことを悔いてはならないと思っていました」

踏みにじったことを悔いて、踏みにじられたものを哀れんで、踏み台にした上で貶めることなどしてはいけない、と。

ナタリー・ガルシア :「私のために誰かを犠牲にして、勝ち取ったものがあるのならば……せめてそれを享受しなければならない、と」

己の行いを恥ずべきではない、何よりも己が奪った者達のために。
己が為したことを否定してはいけない、否定してしまえば犠牲にしたことすら否定することになる。

「――いつか来る日のために、私はずっと、そう考えていました」

ナタリー・ガルシア :命を奪う責任と、その上で進み続けるためのメンタルコントロール。

責任と業を背負い、それでも前を向いて、誇りを抱いて歩いていけるように――思考法、精神性、何年もかけて積み上げてきた前へ進むための方法。

ナタリー・ガルシア :「お父様にもお母様にも、師匠にも、言ったことはありませんでしたが――私が目指すものの途上に、いつか命を奪わなければいけない日が来ることは分かっていましたから」

ナタリー・ガルシア :「ですから、私は――私は、少し寂しくて、悲しいのでしょうね」

その重さ、責務に『耐えられて』しまうことが。
ただの少女であれば、泣いて、苦しんで、膝を折ってしまうような行為を、それでも選択できてしまえる自分。

――少女であることを、自らの手で捨てることに、名残惜しさと悲しみがある。

ナタリー・ガルシア :それは、不可逆の変化。
日常の中で生きる者から、日常を護る者へ――

クラスメイトとの談笑、先生との会話、近所の知り合いとの挨拶。
そんな日常の輪の中に入ることは出来ても、その中で生きていくことを捨ててしまったという実感。

ナタリー・ガルシア :「――もしかしたら、私が感じているものを、他の方は能力に目覚めたときに感じているのかもしれませんわね」

喪失と、前進。
痛みは伴わず、寂寥と決意が固まる感覚。
別れを告げる寂しさと、進むことへの期待と希望。

ナタリー・ガルシア :「ですから――少し悩ましかったのです。一足先に卒業式を迎えてしまったような感覚で、この感情とどう向き合えばいいのか、と」

"アダム" :
…………

"アダム" :
 よくある話さ。だから『簡単だろ』って言ったろう。
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 キミは生まれた時から普通じゃなかったんだから。

"アダム" :
 そいつを、自覚しただけだ。
 外れていたものが、今その疎外を自覚したに過ぎない。キミの両親は、そうと判っていたからキミに箱庭を用意したのさ。
 ただ……

"アダム" :
 あの一件が起きなきゃ、キミはそいつを或いは自覚せずに一生を過ごせたかもしれないし。
 自分がそういうコトに堪えられるよう生まれたこと、自分の理想とするような生き方がしづらい存在だと気付くこともなかったんだろう。

"アダム" :
 ……ま、全部たらればで、ついでに言うなら野暮な話だ。
 ・・・・・・・・
 そもそも起きない過程を前提とする時点で、この空想に意味はない。

"アダム" :
 だがそこに寂寞を感じるなら、まあそれなりの重さはあったんじゃないか? 
 キミが普通と違う、群れから外れた連中からも外れたイキモノであったとしても。
 それを覚える以上、近似値ではあるんだろう。 

"アダム" :
 痛みを忘れても、気まぐれに思い出す程度には、その疵を確認していくことだね。
 それがキミらのいうところの『ロイス』たりうるもんだ

ナタリー・ガルシア :「……やっぱり素直じゃありませんわね」

言いたいことを言っているだけ、それは嘘ではないのだろうけど――

「ええ、覚えておきますわ――あなたの言葉も、あなたのことも。それもまたロイスというものですわよね?」

ナタリー・ガルシア :「――それと、私のことをオーヴァードからも外れている、と言っていたのを私は聞き逃していませんわよ」

ナタリー・ガルシア :「私の力についても色々と識っているようでしたし、その辺りきっちり話してもらいましょうか」

"アダム" :
 オレのことは忘れてもらって結構だが……うん?
 ああ、言ったね。別に隠すことでもないし、何なら既にあの時話した内容の一部でもある。

"アダム" :
 ……まだ長くなりそうだ。
 少し座学の話でもしようか。
 キミの大好きな積み重ねに関する話だ。

ナタリー・ガルシア :「……大好きというわけではありませんが、ええ、得意ではありますわ」

"アダム" :
 学者さま方が好んで話す、レネゲイドウイルスという存在について……
 その一端を紐解こう。

"アダム" :
 そう。あらゆる生き物の生命活動は、一つの目的を以て営まれている。
                     ゲノム
 種の保存。だがそれはより根源的に言えば『遺伝子の保存』だ。
 生命は遺伝情報を後世に伝えるために自己複製を繰り返し続けている。

ナタリー・ガルシア :「産めよ増やせよ、地に満ちよ……というわけですわね」

"アダム" :
            チムニー
 四十億年もの昔、海底の熱噴出口から発生したコアセルベートの組織体から、今に至るまで……それは変わらない。

 詰まる所人も樹木も虫けらも、この情報を伝える乗り物に過ぎない。

ナタリー・ガルシア :「すべての生物は、情報を後世に伝えるための乗り物……という味方も出来るという話ですわね」

限りある自己を永久に保存することは不可能でも、己の情報を持った複製を後の世に送り出すことで自己保存を計る――生命の原則に踏み込んだ話。

"アダム" :
 その本質は変わらないが、人間という種にだけはそれに留まらない機能が備わっていた。
 高度な知能。より正確に言えば、『情報』を体外に保存する機能だ。そしてその故にソレは生まれた。

"アダム" :
 生命の特徴は遺伝情報によって伝えられる。たとえ死しても。一族が絶滅しても。種が途絶えても。
 発現形として遺伝情報に記録される。
 けれど、それで伝わらないものが人間にはある。
 

"アダム" :
 ゲノム
 遺伝子では伝わらないもの。
 人間の活動によって産み落とされた付加価値。
 言語という法則。
 文化という習性。
 文明という環境。

"アダム" :
 人を構成する多くの要素は人によって作られ、遺伝情報と異なる媒体に記録されて引き継がれた。
 親が子に狩りの手法を伝えるのは他の生物でも行われていることだが、それは遺伝情報によって記された習性に過ぎない。
 この一点において明確に、人間は他の生物と異なっている。

ナタリー・ガルシア :「言葉や文字が文化を作り、文化が文明を作った――そうして人間は他の動物では不可能なほどの情報を蓄え、育むようになったということですわね」

"アダム" :
 ……ある学者は、考えた。
 遺伝子を伝えるために生物が生存している。
 だが「伝え継続する」という観点において……なにも遺伝情報だけを重視する必要があるのか?
 飽く迄それを保持し継承することが生物の目的であるならば、或いは同じ特性を持って適応放散と自然選択を繰り返すならば遺伝子も同じなのではないかとね。

ナタリー・ガルシア :「つまり……文化や文明が生物と同じく、情報の乗り物だと?」

"アダム" :
 というより、人間が乗り物なんだ。
 詰まる所人間は、他の生物と比較して『記録し伝える』分野においてより多面的な存在となっていた。
 そうして遺伝子の外側に記録された、文化、文明を形成する意志の遺伝子。

"アダム" :
            ミーム
 ──これを生物学では、意伝子とよぶ。

ナタリー・ガルシア :「……外付けの情報」

"アダム" :
   ミーム
 この意伝子は、本来人の文明を生物的に理解するために生まれたものだ。たとえ話みたいなものだ。
 だが、それはあくまで人間にとっては、の話でね。

 奇しくも学者の言葉は、別の本質をとらえていた。

ナタリー・ガルシア :「……別の本質?」

"アダム" :
            ・・・・・・・・・・・・
 この星には何時からか、それに乗って生殖する生命が生まれ始めていたんだよ。

ナタリー・ガルシア :「――それが、レネゲイドということですの?」

"アダム" :
 ああ。
 それを既存の生命と一緒くたにするべきか否かは定かではないがね。

"アダム" :
              ゲノム
 この地球上で生まれた生物が遺伝子に情報を記録しながら、蛋白質を生成し続ける形而下の生物であるのに対して。
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 レネゲイドウイルスは、意伝子情報から自らを生成する形而上の生物といえるわけだ。

"アダム" :
 ……生物の定義は、諸説あるが大別して四つ。
 外界と隔離されていること。
 エネルギーを生成すること。
 複製を作り、増殖すること。
 そして、『進化』すること。

"アダム" :
 レネゲイドウイルスは、遺伝情報によって集積するというこの星の生態系の大前提を無視した存在で、生物ではない『ウイルス』の名称の方が適切ではある、が。
 本質的には生物の条件を満たしている。地球上では失われて久しい、遺伝情報以外を母体とする生命、その生き残りさ。
 

ナタリー・ガルシア :「……因果が逆ですものね、普通の生物とは」

けれど、その在り方は生物そのもの。物質でもあり、生物でもある『ウイルス』と名付けられたのも偶然の一致にしてはよく出来ている。

"アダム" :
 勿論レネゲイドウイルスのすべてがそうであったかと言われると否だ。恐らくそうした生命体はホモ・サピエンスが発生する以前から存在していたんだろう。
 時間が経過するにつれ、自然選択によって生き残ったのは意伝子を元にしたウイルスが殆どだったということさ。
 何せ情報の積層速度が従来と比べて段違いだ。

"アダム" :
 遺伝子の情報蓄積と比べて、意伝子の成長速度は物理的制約を無視している。遺伝子で数百万年かけてじっくり行われる情報の伝達が、わずか百年単位で完遂される。生物学で例えりゃ常時カンブリア爆発を起こしてるようなもんだ。

ナタリー・ガルシア :「人の生物的な進化は遺伝子の制限がありますが、文明の発展はその比ではありませんものね……」

"アダム" :
 ああ。とくに1860年代以降、船や飛行機などで物理的な壁を越え始めると、もう歯止めが利かない。
 現代に至っては地球のどんなところとも接続が可能となり、絶えず情報のやり取りが進んでいる。
 

ナタリー・ガルシア :「……そのうち、インターネットの内側からレネゲイドが生まれそうですわね」

"アダム" :
 或いは既に起きているかもしれないぜ?
 長くなりはしたがオレが言いたいのは、自然選択されたレネゲイドはそうした渦中に成長を続けたということだ。

 ……一般的なレネゲイドを除いて。

"アダム" :
 レネゲイドウイルスが拡散したのは2000年代初頭だって話は聞いたことあるだろう? あれは中東の遺跡から発掘されたものが拡散することで世に放たれたわけだが、こいつらはそうした情報社会が出来上がった……つまり生殖に相応しい環境が整ったところに放されたものだ。

"アダム" :
 そうした人為的に撒かれたものでないもの。レネゲイド拡散以前から存在したレネゲイドは、この数千年の人類史の中で自然選択を生き抜き、よりこの星に強く根ざす強力な土台の種だ。
 たとえその個体数が少なかろうとも、生存戦略で過度の拡散が不要と見做されたそれは、単純な一個の能力が大きく異なる

ナタリー・ガルシア :「それが『遺産』というわけですの……?」

"アダム" :
 初めて戦地に立つ徴兵された兵士と、ついさっきまで最前線で戦い続けてきた兵士とじゃ、同じ性質でも性能差は段違いだろう?
 それが『遺産』であり、より広い言い方をするなら『オールド・レネゲイド』だ

"アダム" :
 オールドレネゲイドとは、その進化の激流の生き残りなんだ。
 叩き起こされるまでの間、丁寧に保存されてきた中東の遺跡で眠った連中とは超えてきた場数が違う。
 遺産と呼ばれるEXレネゲイド。或いは現代でも細々と生き続ける太古の巨大生物の名残。それか一子相伝でひそかに受け継がれてきた魔導士たちの血統遺伝子……
 

ナタリー・ガルシア :「それが『遺産』……」

"アダム" :
 総じて拡散する前のレネゲイドは、拡散したネオ・レネゲイドと比較して強力に出来上がるものだ。
 ……ところで

"アダム" :
 キミの能力が発現したのは生まれついてからだよね。
                ・・・・・・・・
 キミという個体が発生したのは、2000年代より前じゃなかったか?

ナタリー・ガルシア :
「……ええ、幼少の頃からこの力に親しんでおりますわ」

"アダム" :
 そういうことさ。
 ウイルスと一言で呼んでもキミが発現したものは古参兵側ということだ。
 キミ自身が素人でも、キミに宿るレネゲイド自体に特別な力があると言ってもいい。

ナタリー・ガルシア :「……それでは、私がこれだけの力を振るえるのも、私に宿るレネゲイドのおかげというわけですわね」

"アダム" :
 ああ。……そしてオレがこうしてここにいる事も、それに関わるポイントなんだろう。

"アダム" :
 強力なレネゲイド、より濃密なレネゲイド。そうした土台には時折こういうことが起きる。
 最初にちらっと話したろ、生物の起源について。遥か深海の海底の火口から噴き出す蒸気の中で、原始の生命は偶然にコアセルベートが集まることで最初のRNAを作り出したと。

ナタリー・ガルシア :「つまり、貴方がそのきっかけになっているということですの?」

"アダム" :
 というよりキミがきっかけといえる。
 キミの宿したモノを媒介として、オレは発生した。……自己分析する限りにおいては。
          MIM
 ニンゲンという形を模倣することで、オレという表現型が表出した。

           ミーム
 元となる教材が人間の意伝子である以上、強力なレネゲイドという力場の中でソレが生まれることに違和感はないだろう?
 

"アダム" :
 まだしっかりと学説としては定着していないようだが、仮にレネゲイドとして存在する者……
  Renegade Being
 レネゲイドビーイングとでも呼んでおこう。

ナタリー・ガルシア :「つまり、貴方は私に宿る遺産から生まれたレネゲイドビーイング……ということですわね」

"アダム" :
 そういうコトだ。
 キミの性能を識っているのも、別に不思議なことじゃないだろ?

ナタリー・ガルシア :「……私の遺産、ひいては私から生まれたのでしたら、もう少し可愛げがあってもいいとは思いますわね」

"アダム" :
 勘弁してほしいね。厳密にはキミのミームの表現型から発生したものだ。
 生物的特徴や精神的ベースも異なる。

"アダム" :
 協力関係にあるとしてもオレはオレだよ。
        ア  ダ  ム
 だからこその"土から採られた者"だ

ナタリー・ガルシア :
「冗談ですわ、この歳でシングルマザーなんてお父様が卒倒してしまいます――ともかく、貴方のことはわかりましたわ」

"アダム" :
 違いない。ただでさえ胃が痛かろうお父様に追い打ちをくれてやることもないだろう。
 ……さて。
 

"アダム" :
 キミ自身がどういう存在かは、あの時教えた通りだが。
 キミの出力がちょっと違っている理由、その説明についてはさっき伝えた通りだ。

"アダム" :
 オレのことについても少しは理解してくれたようで何よりだ。
 他に疑問はない? なければ、そろそろ本番だ。

ナタリー・ガルシア :「ええ、大丈夫ですわ……それで、ここからが本題ですの?」

"アダム" :
 今まで理由なくオレが此処に現れたコト、あった?
 最初に告げたことを思い出しなよ

"アダム" :
 キミは現実で約束の地を目指して進み……
 その折に、キミは夢見に運命のカタチを垣間見る、と。
 オレはそう告げたはずだよ

ナタリー・ガルシア :「つまり、貴方が私の運命を告げる預言者だと?」

"アダム" :
 そういうこと。
 キミが深く眠りに落ちるにつれて落下を続けてきた、夢のカタチ。
 オレを生んだ意伝子が紡ぐキミの運命の故郷
 

"アダム" :
 ──『約束の地』に案内しよう。

ナタリー・ガルシア :「それでは、連れて行っていただきましょうか――私の運命の故郷とやらに」

"アダム" :
 オーケイ。では、より深みに潜ると良い。
 もう、すぐだ。

"アダム" :
 ──────では、話をしよう。
 

"アダム" :
 
 これは運命の熾り、縁の起こり。
 
 キミに纏わる、キミへと繋がる、キミと関わりのない物語。

"アダム" :
 ──忘らるる都に繋がる、二重らせんの紡ぐ夢廻の旅路だ。
 

"アダム" :
 ……では。今はキミが知りたいことを見せてあげよう。
 
 ここなら、それが出来る。

SYSTEM :
 浮上する体が。この時初めて、外気を感じた。
 長い時間、生まれてより海中に沈み続けていた、遠くに感じていた水面に漸く手が届く。
 それはずっと、ずっと、沈み続けていた夢の辿り着く先であるかのように。

SYSTEM :
 あなたは潜り続けた先に、漸くその水面から浮上を果たした。
 その先に、待っていたものは……

SYSTEM :
 ……水面から顔を出し、その景色を目の当たりにする。

 ナタリーが目にしたそれは、綺羅星の如くかが焼ける、地上に降り立った星空だった。

SYSTEM :
 まず目を焼いたのは、無数の光。
 赤焼けの空の下に瞬く街灯に照らされるのは、幾重にも並ぶ白亜の城たち。
 それが無数に連なり合い、並び立ち、一つの街を形成している。
 

SYSTEM :
 そこには道路があり、水道があった。人々の賑やかな雑踏がある。
 ただ、その多くのものが人工物であったことにあなたは気付くだろう。
 人の営みによって築かれた無数の灯は、ニューヨークの夜景もかくやというものだった。

SYSTEM :
 ……あなたが浮上した目の前にあったそこは。
 真実人の手によってのみ造られた……四方を海に隔てられた、鋼鉄の人工島であった。

ナタリー・ガルシア :「――これが、都市」

その規模、その威容、数百数千数万では効かない規模の人々が暮らしていてもおかしくはない、その街並み。

ナタリー・ガルシア :捉えきれぬその全景を掴もうと、ゆっくりと泳いで、その都市へと近づいていく。

SYSTEM :
 ナタリーが長い長い潜航から浮上したのは、この人工島を取り囲む海……しかし、不思議とそれは体や衣服を濡らすことはなかった……のようだった。
 丁度目の前には船着き場らしい場所がある。ナタリーは海岸に向けてゆっくり泳ぎ始めた。

SYSTEM :
 賑やかな人の喧騒はこの奥地から響いている。どうやら何かの催し物に人が集まっているようで、水辺には人気が無い。
 少し高い位置だが、飛び乗って上陸するのは然程難しくはないだろう。

ナタリー・ガルシア :「……誰かいるようですわね。当然と言えば当然ですが」

この規模の都市を維持、運営するには、それこそ数多の人々の営みがあってこそ――先程も今も、目を奪うきらびやかな輝きこそが、この都市に生きる者達の証なのだろう。

SYSTEM :
 そうして水辺から浮上しようとした時のことである。
 遠くから聞こえる楽し気な声とは明確に違う。
 確かにあなたに意志が向けられた、聞き覚えのない女性の声が響く。

????? :
「おや、誰か来たかな。
 こんにちは、そこのあなた。その様子だとあなたも海の奥から漂着してきたのかな?」

 船着き場に向けて、足音が一歩ずつ近づいてくるのが分かる。
 隠れるか、そのまま対話を試みるかはナタリー次第だろう。しかし、声の主からは害意や、外敵への警戒心のようなものが感じられないのは確かだ。

ナタリー・ガルシア :「……ええ、気がつけばここにいましたの。ここは一体、なんなんですの?」

一瞬の逡巡、しかし、投げかけられた声に害意はない。ならば、と、少女は声の主に向き合うことを選んだ。

????? :
「はは。
 驚いた? こんな場所にこんな町があるなんて思いもしなかったろう」

 カツン、カツンと船着き場から歩み寄る。
 姿を現したのは、丁度あなたと同じくらいの背丈をした白髪の少女だった。恐らく年齢も同じぐらいだろう。
 彼女は、岸まで歩み寄ってあなたを見下ろしながら、ゆっくり身を屈める

????? :
「でもここは、まだ名前もない場所でね。
 名前はないけど持て成すものには事欠かない。歓迎するよ、遠い海からやってきた君。
 此処まで遠かったろう?」

ナタリー・ガルシア :「……ええ、随分と長い旅路だったように思いますわ」

その大半が揺蕩い、泡沫の中に消えていたとしても――

「歓迎してくださるんですの?私の素性も知れないのに?」

????? :
「? 稀人をもてなすのは普通のことだろう?」

????? :
「それにここにはあまり人が来ないんだ。
 住民権を獲得した人は外に出れなくなっているから、此処を知る者は殆ど少ない」

????? :
「ああ、けど安心して。
 寂しいことだけど、登録しない限りにおいては君は元の場所に帰ることが出来る。君にも家族がいるだろうしね
 その時は、せめてこの都市の思い出だけでも持ち帰って欲しいな」

ナタリー・ガルシア :「……ええ、流石にまだ終の住まいを見つける気はありませんわ」

とはいえ、と、辺りを見渡す。

「名前がない、と言っていましたわね……ここはいつから、誰が作ったのかわかりますか?」

????? :
「何時から、だったかな。私が生まれる前の頃だけど。少なくとも父さまの代に出来たはずだよ」

????? :
「何を隠そう父さまが、この都の着工を始めたんだからね」

ナタリー・ガルシア :「貴方の、お父様が……?それは、誇らしいですわね」

――私のお父様も立派なのでその気持はわかりますわ、と胸中でうんうんとうなずく。

「でも、なんのために……?これだけの規模となると、大変だったでしょう」

????? :
「うん。自慢の父さまさ。
 かっこいいし、頭も良いし、非の打ちどころのない完璧超人っていうか……おっと」
 

????? :
「うーん、大変ではあったけど、住まいを作るのに理由が居るのかな? 
 より良い暮らし、より良い住まいを求めるため、とか?」

????? :
「おかげでここは農作物もこの島の土から採れるようになったんだ。天気も調整できるし、もう飢饉に怯える心配もない。
 他の部族との争いからも無縁になったし」

????? :
「私たちは私たちなりに、より暮らしやすい街を作ろうとしただけっていうか……うん。言語化が難しいね」

????? :
「まあ、いずれにせよだ」

 すっ、と、水面に浮かぶあなたへ手を伸ばす。

????? :
「上がっておいでよ。いつまでもそこでぷかぷかと浮いてるんじゃあ風邪をひいてしまう」

ナタリー・ガルシア :「より良い暮らし、より満ち足りた生活を求めた結果……ということでしょうか」

と、そういえば、己の今の状況を思い出す。
差し出された手を、躊躇うことなく掴んで、己の体重を預ける。

水面から、陸へ――己の体を引き上げるように、少女の腕を引く。

ナタリー・ガルシア :「ありがとうございます――私はナタリー」

真っ直ぐに、少女の瞳を捉える。

「ナタリー・ガルシアと申します」

????? :
「うん。
 父さまが作って。そして、今は私に受け継がれようとしている。自慢の街さ」

 どこか胸を張るように微笑みながら、ナタリーの身体を引き上げる。
 そこに相手を警戒する余地は欠片もない。感じられるのはただ、自分たちの暮らす世界を見せたいという純粋な気持ちだけだ。

ハーヴァ :
「私はハーヴァ。
 聞き覚えの無い響きの名前だけど……もしかしてクレタから来た人かな?
 そちらの国の読みではゾーイと呼ぶそうだ。
 どっちでも好きな方で呼んでほしい」

ナタリー・ガルシア :「では、ハーヴァ、と。私のことも、ナタリーでも、ナターシャでも、好きに呼んでくださいまし」

それにしても、と、少女――ハーヴァが誇るその都市を見やる。
NYにも劣らない繁栄と栄華。

「それでは、貴方の自慢の街を見て回りたいですわ――案内してくださる?」

ハーヴァ :
「……ああ! 
 それじゃあ、早速案内しよう! 先ずはそうだな、疲れただろうしまずは宿からかな?」

ハーヴァ :
「あ、そうだ。
 どうせならうちに泊まっていくといい! 人口密度が問題になる割には、うちの家は広いからね。
 じゃあ、まずは族長の家まで、その道中を案内しようか」

ハーヴァ :
 少女は元気そうに微笑んで、やってきたあなたを先導するように少し前を歩き始めた。

 ……都市の外観こそニューヨークや、先の一週間で見て回ったロサンゼルスを彷彿とさせるが。
 流線形を基本とした建物の構造も、淀みなく湧き続ける都内を巡る水道も。また街を走る車輛の形状など、細部を観察すればするほど、ここが限りなくそれらの街に似た『違う場所』であることが浮き彫りとなるようだった。

SYSTEM :

ナタリー・ガルシア :その前に、《蝙蝠の耳》を発動して宜しいでしょうか?

GM :ふむふむ、一応訊いとくか、何目的じゃろう

ナタリー・ガルシア :周囲の人々の会話の中から、ここがどこで、あるいはいつなのか、ヒントになる固有名詞や話題を集めたいですわ

GM :ふむふむ 

SYSTEM :
 どうやらここでも能力は使用できるようだ。風を操り流れを読む力を以て、あなたは風に乗る話に耳をたてる。

SYSTEM :
 あなたが注意深く音を拾う限り、ここで話される主要言語は英語のようだ。訛りも北米の標準に近い故、特に苦も無く聞き取れた。それが、却ってこの都市の違和感を引き立てていたともいえるが。

SYSTEM :
 ……あなたは知識の限りで、固有名詞を探ってみる。
 大半は聞き覚えの無いものだが、幾つか聞き覚えのある単語も聞こえ、朧気に分かったことがある。

 それは、ここは『アラバ海』と呼ばれる海に、ひそかに設立された人工の島であることだ。

SYSTEM :
 アラバの海。その言葉を、ナタリーは知識として知っていた。

 それは聖書において、ヨルダンに位置する海の名であり。
 遍く生命が生存することの敵わない、浄化の塩に満ちた海……『死海』に他ならない。

SYSTEM :
 ここの位置は、恐らくそこだ。
 イスラエルの歴史において幾度となく登場するヨルダンの塩湖。そこに隠れ潜むように存在する人工の島。

SYSTEM :
 大人しい口振りに反して、とても元気そうに街を案内するハーヴァ。
 事実、彼女が誇るこの街に住まう人々は、いずれも満ち足りていたように見えた。
 決して苦がない暮らしではなかったろうが、その活気には間違いなく熱があった。それは、或いは黎明を迎えた共同体のみが持つ熱意が、確かにあったのか。

 

SYSTEM :

ナタリー・ガルシア :(ヨルダン……それならば、ここは死海――ということは、ベツレヘムの近くですわね)

ナタリー・ガルシア :(見たこともない様式の建築物に、これだけ整備された都市――正しく夢を見ているようですわね)

"アダム" :
「まるで夢を見ているみたいだろう?
 死せる海に眠れる幽契の街……」

 そうして街を見て回る途中。
 丁度、公園を案内されている時、矢庭にあなたに向けて別の声が掛かった。聞き覚えのある声。
 しかし、今回は心の内から聞こえるような声ではない。

ナタリー・ガルシア :「――ぁ」

思わず、声に出しかけた名前を飲み込む。
自らの内に響く声ではなく、鼓膜を震わせる確かな音。
ならば、これは、実在の人物だ。

"アダム" :
「そして、キミの運命の始まりの地でもある。
 今はそうは見えなくともね」
 
 男は、公園のベンチに腕を掛けて座っていた。
 その声も態度も間違いなく、あなたの内側から声をかけていたものに相違ない。
 あなたが声の方向に振り返ると、そこには濃い緑の髪をした、整った顔立ちをした青年がいた。

ナタリー・ガルシア :「………………私、貴方の名前に心当たりがあるのですが」

不躾な視線を、足の爪先から頭の天辺まできっちり二往復させて、重々しく口を開く。

"アダム" :
「もしかして口説かれてる?
 節操ないね、いきなり男をひっかけて回るとは」

ナタリー・ガルシア :「……そのいやみったらしい話し方」

"アダム" :
「まあこの面自体はそう悪くはないんだが。
 ……しかし、まあ」

"アダム" :
 ・・・・・・・・・
「よりによってこの面で出てくるとはオレも予想してなかったよ。
 巡り合わせってやつは一々、底意地が悪い」 

ナタリー・ガルシア :「……その言い方ですと、その見た目の方とお知り合いなのでしょうか?勝手に人の顔を借りるのは肖像権の侵害ですわよ」

"アダム" :
「生憎とこの都市じゃそういう法律は存在しない。こうして顔も借り放題というワケ」

"アダム" :
「まあ、別にオレのことはどうでもいいんだ。
 で……そろそろ説明が欲しがっている頃だろうから、こうして顔を出したんだが」

ナタリー・ガルシア :「………………まあ、解説は欲しいところでした」

"アダム" :
「結構、素直なのは人の美徳だよ」

ナタリー・ガルシア :「ええ、ええ、そうでしょう……その言葉をそっくりそのまま貴方に返しますわ」

"アダム" :
「話に映る前に確認だが、彼女の言葉は分かるよな?
 ちゃんと現代のアメリカ式英語で変換されているね」

ナタリー・ガルシア :「……これ、翻訳されてましたの?」

"アダム" :
「でなきゃまともに会話なんか出来るかよ。
 彼らはユダヤ人だぞ?」

ナタリー・ガルシア :「……ここは、一体『いつ』なんですの?今では、英語を話せる方だって珍しくはありませんもの」

"アダム" :
「……何時だと思う?」
からかうような、思わせぶりな態度で

ナタリー・ガルシア :「……21世紀、と本心から答えれば貴方を楽しませることになるでしょうね」

"アダム" :
「素直じゃないことだ。宗旨替えが早いぞキミ」

"アダム" :
「まあ、いいさ。でも大方予想はついてるだろ?」

ナタリー・ガルシア :「……紀元前、というところでしょうか」

"アダム" :
「当たりだ。正確な年代が掴めていないところも含めてね」

"アダム" :
「ここが、『都』だ。
      ・・・
 人口たった数十人程度から始まった、一人の遊牧民の手で設立・拡張され、僅か一代で繁栄を築いた……
      ・・・・・・・・
 少なくとも紀元前二千年以前の街だよ」

ナタリー・ガルシア :「かの有名な悪徳の都――ここがそうだと?」

"アダム" :
「歴史のお勉強は得意かな?
 同期の国はエジプト中王国王朝、バビロン第一王朝……目には目を、とかのアレ辺りだな」

"アダム" :
「モーセの時代からすらも、言い伝えでしか人々に伝わらなかった遥か古の都……
 そう、これがあの時話した忘らるる都の正体」

"アダム" :
「後にソドムと伝わるようになる。
 人類最古のアーコロジーだ」

ナタリー・ガルシア :「――ここが」

言い伝えに聞くような、退廃の都にはとてもではないが見えないけれど。

「確かに、納得のいく栄華ですわね」

"アダム" :
「ここが約束の地……の、在りし日の姿ってとこかな」

"アダム" :
 ペットボトルとよく似た、真水の入ったトレイの蓋を開けながら、アダムは続ける。

「ここは現実にある場所じゃない。現実ソックリではあるが、キミは夢という形で仮想体験をしているんだ。
 これが最初に言った話と繋がってくる」

"アダム" :
「これまでキミは時折、海の底へ落ちていくような夢を見てきたが。それも、この景色と繋がるまでの前段階だったのさ。
 レム睡眠には複数の段階がある。
 今はそのより深い眠りの中にいると思えばいい」

ナタリー・ガルシア :「胎児の夢の逆――遥か昔の祖先を見ている、というわけですわね」

"アダム" :
「詳しいね。だいたいそんなところだよ。
 言語が英語で、初見でも会話が出来たのも、キミが夢という形式でこれを見ているからというワケ。
 だから、ほら」

"アダム" :
「夾雑物、或いは本体だからかな? オレは、ここの住人から認識されていない」

 奥で手を振るハーヴァを指さす。しかし、あちらの様子はどうにもアダムの存在に気付いてはいないようだ。

ナタリー・ガルシア :「――ということは、私、今一人で話しているおかしな人になっていませんか?」

"アダム" :
「そうなるね」

 気にせず、開けたトレイの水を喉に流し込む。

ナタリー・ガルシア : 

ハーヴァ :
「??????」

ナタリー・ガルシア :「……ごめんなさい、ハーヴァ。少し腹立たしいことを思い出してしまいまして」

"アダム" :
「まあ今なら、そういう文化の人なんだと言い張りゃ誤魔化せるかもよ?」

 くつくつと含み笑いを浮かべて

"アダム" :
「兎も角……
 ここはそういう夢を追体験する場であると認識してくれりゃいい。だから、此処に触れる限りにおいてはまだセーフだ」

ナタリー・ガルシア :「……まるで、してはいけないことがあるような口ぶりですわね。ヨモツヘグイも夢の中では気にする必要はありませんわよ」

"アダム" :
「ああ、そういう意味じゃない。
 何処までいこうとここは再現で。これ自体が現実に影響を及ぼすことはないってことさ」

"アダム" :
「キミがどういう思索で誰と言葉を交わし何を行動しようとも変わることはない。
 そう設定されてるのだからそれをなぞって行われる。

 こんな風に現実ソックリの仮想現実でもね」

ナタリー・ガルシア :「まるで、よく出来たアトラクションですわね」

"アダム" :
「これも一種のバーチャルリアリティと言えなくもない。
 これが『海底都市の夢』。今は、死海の湖底に眠れる……というより存在するかも定かではない、歴史から抹消された場所から発せられる夢。キミの宿した遺産の実態だ」

ナタリー・ガルシア :「これが、私に……正直、実感が湧きませんわね」

自らの手のひらをしげしげと眺めて、ビルディングの頂上を見やる。

「『遺産』……正直に言って、私にはこれが悪いものには思えませんわ」

"アダム" :
「これ自体がキミに及ぼした影響は、然程大きくないからね。
 ついでに言うとこうして夢に見るのも、これはあくまで効果というより副産物のようなもんだよ。
 色々な事情が積み重なって、一般的な定義づけられるものとはやや異なる形で発現しているんだが……」

ナタリー・ガルシア :「よく話が回りくどいと言われませんの?」

"アダム" :
「面倒だ。とにかく今は「そういう夢を見る体質」とだけわかればいい。然程、大きなリスクもない。
 ……それに、街自体のことを言ってるならキミの感性はそう間違えたものでもない」

ナタリー・ガルシア :「……そうでしょうね、この場所からは悪意を感じませんわ」

グリズリーに似た彼などは、満面の笑みを浮かべそうな場所だ。

"アダム" :
「このソドムは生産活動と消費活動が自己完結している、隔離された環境で設計された古代文明都市。
 アーコロジー
 完全環境都市ってやつさ。

 今の段階では、文明レベルはだいたい2000年代、或いはもう少し進んでるぐらいか」

"アダム" :
「当時の他の国を比べて見りゃ、ここまで物質的に満ち足りた環境に住まえば大抵のコトに満足しちまえる。
 生活環境が満ち足りていれば、市民の精神状態も安定するのは道理だ」

ナタリー・ガルシア :「分け与える余裕のある者、富める者しかいなかれば争いは起きませんから……」

"アダム" :
「それに、住んでる連中は全員同じ『教え』を共有していた。それが彼らの言う住民登録というやつなんだが」
 

ナタリー・ガルシア :「外に出ることのできなくなるという?」

"アダム" :
       ・・・・・・・・・・・・
「早い話、ここ住人すべてがオーヴァードでね。流れ者が時たま来るって言うのは、共同体から疎外されたオーヴァードや、陰性患者が流れ着くことがあるからだ。
 より正確に言えば、共同体が共有するEXレネゲイドを受け入れる事が、この共同体に入る儀式だったんだよ」

ナタリー・ガルシア :「……それなら、納得がいきますわ」

時代にそぐわないほどの技術力を以て築かれた文明――それらが全て、レネゲイドの恩恵だとすれば説明がつく。

"アダム" :
「そうして感染する事によって都市の人間は人と異なる力を得る代償として、都市への奉仕を約束するってわけだ。
 だから、都市から離れることを本能的に拒絶するようになる。というか、普通に考えて出たいとか思わないだろ」

"アダム" :
「考えて見なよ。
 外に出りゃあ原始人に似たり寄ったりの連中が、鉄器すらまともに扱えないまま、痩せた土地で何時飢饉に襲われるかもわからんまま気長に農耕しなきゃならない」

ナタリー・ガルシア :「確かに、ここよりも満ち足りた場所なんて現代にもそうあるかどうか……」

"アダム" :
「こんな狭い場所で、なんていう不満も、当時の人間からすると然程苦にならなかったろう。
 まだまだ人間の『世界』が狭かった頃だ」

ナタリー・ガルシア :今よりも絶対数も遥かに少なく、過酷な世界を考えれば、ここはまさに――

「――ここが彼らにとっての『楽園』というわけですわね」

"アダム" :
「そういうことさ。
 ……さて」
 すっとベンチから立ち上がったアダムは、そうやって話を区切る

"アダム" :
「これから約一週間、キミは夢見にこの時代の夢を見ることになる。
 今はそう、黎明期だ。都市が築かれて間もない頃の時代さ」

"アダム" :
「丁度、次の遠征先に派遣されている間の期間になるかな。
 そこからこれまで通り、夢の深度が深まっていくにつれて時代が進んでいく」

ナタリー・ガルシア :「……末路までを、私に辿れというわけですわね」

"アダム" :
「それが、都市の意志だ。
 ……楽しんでくるといい。彼らもそれを望んでいる」

"アダム" :
 言いつつ、アダムは手を振りながら何処かへと立ち去っていった。
 いつも通り呼び掛ければ、ふと姿を現しはするだろうが。とくに用もなければ表には出てこないだろう。

ナタリー・ガルシア :「……本当に、いつも言いたいことだけ言って」

ナタリー・ガルシア :「ですが、ええ、見届けましょう……ここで何があって、彼ら彼女らがどう生きたのかを」

そして、その果てに――自らにまつわる運命とも呪いとも呼べる因縁が、待ち受けているのかもしれない。

ハーヴァ :
「…………それ、気になった?」

 気が付くと、見送るナタリーの横からハーヴァはひょこっと顔を出していた。

ハーヴァ :
「それ、外の集落じゃあ見たことないでしょ。中に真水が入ってて、何時でも飲めるんだよ?
 でも、よく一目で使い方がわかったね」

 先ほどまでアダムが口にしていたトレイを指さして、彼女は告げる。
 本当にアダムの姿は認識できていないようだ。

ナタリー・ガルシア :「……ええ、似たものを偶然知っていたのものですから」

はるか未来では当たり前の――けれど、この時代ではあまりにもよく出来たソレを見やる。

「他にも、こういったものがあるのでしょうか?

ハーヴァの家に行くまでの道すがらで良いので色々教えてくれませんか?」

ハーヴァ :
「……ああ、お安い御用さ。
 住んでいる私たちですら、新しいものが毎日増えていくようなところなんだ。
 ちょっと慣れるのに時間がかかるかもしれないけれど……それでも、君を飽きさせないだろうことは約束しよう」

ナタリー・ガルシア :「ええ、今からワクワクしています……それに、お友達と街を歩くのに、飽きるだなんてことありませんわ」

ハーヴァ :
「友達……」

 その言葉に、何か琴線に触れることがあったのか。ハーヴァは一瞬だけ固まって目を開いた。

ハーヴァ :
「友達かあ……ふふ、そうだね。
 私たち、もう友達でいいんだ」

 ハーヴァは、胸に手を当てて、それをかみしめるように穏やかに微笑んだ。

ナタリー・ガルシア :それを、その仕草を――眼の前で、確かに生きているようにみえる彼女を見て。

少女は、微かな感情さえも表に出さないように努力する必要があった。

ナタリー・ガルシア :「それでは、友達の証になにか美味しいものでも食べましょう!ハーヴァのおすすめはなんですの?」

ハーヴァ :
「うん、うん! そうしよう
 今は……そういえば今日は燔祭の日だった。
 あっちに羊肉料理のおいしい店があったと思うし、そっちに行こうか」

ナタリー・ガルシア :
 ラム
「羊肉!私も好物ですわ!出来れば仔羊が良いですわね、マトンよりもそちらのほうが好みですの」

ナタリー・ガルシア :「となれば、何か喉を潤すものも欲しいですわね――果実酒、といきたいところですが、私は諸事情により呑むわけにはいきませんので、代わりになにかありませんか?」

ハーヴァ :
「燔祭の日はナハシュへの生贄とした羊肉を振舞うのが、この街での決まりになっていてね。
 今日は色んな羊飼いの家から立派な羊肉が振舞われると思うよ。
 ……果実酒が駄目というのも珍しいね、そういう教えの故郷だったの? んー、酒気が駄目なら、蜂蜜で甘くした葡萄水なんかどうかな」

ハーヴァ :
「果実酒の酔う成分を引き抜いて、甘くなる成分を代わりに入れた、この街で出来た飲み物なんだ。
 作る人によるけど、ものの成分の調整が巧い職人さんが作ると絶品なんだ」

 何とか外の人間に伝えようとしているが、恐らくぶどうジュースのようなものだろう。

ナタリー・ガルシア :「そうなんですの、酒気はもう少し大きくなるまでお預け、と……私の育った場所では、そういう教えがありまして」

そういった場所もある、ということで押し通す。

「なるほど、ジュース……果実水を甘く味付けしたものですわね、それでしたら私も大丈夫、というよりも大好きですわ」

ナタリー・ガルシア :ラムにジュース、とくれば。少しお腹にたまるものも欲しくなる。

「――そういえば、パンはありませんの?あまり売りには出されていないのでしょうか」

ハーヴァ :
「マッツァーのこと? 勿論あるよ!
 生産が安定してるから、今は色んな家で味の研究がおこなわれてるんだ。バターや、果実を潰したものを載せて食べるのがおいしいんだ。
 ラムと一緒に売ってると思うから、一緒に食べようか」

ナタリー・ガルシア :「ラムを挟んで食べるのも良いですわね!バターやチーズもあれば最高ですわ……その辺りも作るのが上手な人がいたりしませんの?」

ハーヴァ :
「勿論いるよ! ここにはいろんな人が色んな『ギフト』で自分の仕事を作って、生活してるんだ。
 ……うん、今日は族長の仕事は"神意"が代行してくれるし……早速料理店に向かおうか」

ハーヴァ :
 言いつつ、ハーヴァはナタリーを連れて近場の都市の施設に向かった。
 この都市は……年代から考えて、近隣の大国が世界で初めて鉄器の生成を始めたばかりであるというにも拘らず……その多くが鋼鉄で築かれている。
 鋼鉄の自動ドアによって区切られた施設の戸を潜り、灯しによって照らされた近代的な意匠の料理店の席につく。

ナタリー・ガルシア :自動で開くドア、灯りと清潔さに保たれた店内。
現代と言われてもなんら遜色のない、時代を遥か彼方に置きざりにしたそれらが、この文明の水準が現代と遜色ないことを知らしめている。

それは、人々が今後歩むはずの数千年を先取りしているようなものだ。

ナタリー・ガルシア :「……凄いですわね、ドアがひとりでに動くなんて。この灯りも、脂による炎ではなさそうですし」

ハーヴァ :
「想像もつかないかもしれないけど、これは雷の力を遣って動いてるんだ。その灯りも、特殊な繊維に雷を当てて灯りにしてるんだ。
 ここは神に愛され、神の力を磨いて扱うことの赦された地だからね」

ハーヴァ :
「本当なら、ずっと雲の上にある力を、この場所では使っている。だからこんな風に、鉄……青銅器よりずっと硬くて重い物質で作られた町の、隅々に動力を行き渡らせることが出来る」

ナタリー・ガルシア :(……電気に、鉄の精製、それが一般的になるレベルで普及しているだなんて)

「……ええ、とても驚いていますわ。確かに、ここは神に愛された場所なのかもしれません」

ナタリー・ガルシア :「だからこそ、この場所にいる皆さんはこんなにも満ち足りているのでしょうね」

ハーヴァ :
「うん。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 人は満たされてこそ善く在ることが出来るものだから」

ハーヴァ :
「だから私……というか私の一族かな。私たちは、この街を築き上げたんだ。
 誰もが善く在れるように。誰もが隣人を愛せるように。
 知識を以て、人々を善く在るよう導く。それがこの街の部族が信じるナハシュの教えだね」
 

ナタリー・ガルシア :「――それは」

それを、実感としてナタリーは知っている。
人は、決して強くはない。
どれだけの人が、己が飢える時に隣人にパンを分け与えられるだろう。
どれだけの人が、己の命が危うい時に他人を助けられるだろう。

人は、賢しくはない、強くはない、善くはない。
おおよそすべての人が――己も含めて、善性も悪性も、後付で与えられるものなのだ。

ナタリー・ガルシア :「それは、とても立派な考えですわ」

人の本質は変わらない、変えられない。だからこそ、『環境』を変える。
人々が奪い合わなくても良い世界――そんなものがあるのであれば、確かに人は善くあれるだろう。

ナタリー・ガルシア :「ハーヴァと、ハーヴァのお父様がの努力が作り上げた『楽園』というわけですわね、この都市は」

ハーヴァ :
「……うん」

 誇らしげに、しかし少し俯き加減に応える。
 テーブルで注文を通し、気前のいい小麦色の肌をした男性の料理人が厨房で器具を振るう中、少し間を開けて言葉を継ぐ

ハーヴァ :
「実は……ちょっとだけ不安なこともあってね。
 父さまの代で、この街の土台は完成したんだけど」

ハーヴァ :
「さっきもちらっと話したでしょ? 
 族長だった父さま。実は、身許へ行ってしまったんだ。今から少し前のことかな」

ハーヴァ :
「今は族長の娘の私が、この都市の族長ってことになる。
           ノ イ マ ン シ ン ドロ ー ム
 私は、娘である以上に頭が良くなる加護を授かっているから、街の『保守』って面では適任だってことで据えられたんだ」

ハーヴァ :
「私はこの、楽園を護り、これを正しく保守運用しないといけない。そういう使命がある。
 それが……情けないことに不安でね」

ナタリー・ガルシア :「ハーヴァの、お父様が……」

彼女は一人、父親の遺したものを守ろうとしている。掲げた理想と、そこに住まう人々の安寧、それをたった一人で。

「いいえ、情けないだなんて――むしろ、ハーヴァはそれだけ深くお父様の目指したものと、この都市のことを考えているということですもの」

ナタリー・ガルシア :「大丈夫ですわ、私が保証します。たとえ、誰がなんと言おうとも、私は胸を張って言いましょう――ハーヴァ、あなたがこの都市で一番、この場所を大切に思っているのですから」

ナタリー・ガルシア :「それに、もしもなにかあった時は私も力を貸しますわ――もっとも、私の力なんて借りずとも上手に収めてしまいそうではありますが」

ナタリー・ガルシア :それは、心からの言葉だった。
この先に待ち受けるものを知っていてなお、本心から眼の前の少女のことを信じていた。

ただ一人で、多くの人々の営みと心を守ろうとする優しい人。きっと、この先で誰かの分まで苦しみ、傷つく人。

そんな人を、たとえ本人が望んですら居なかったとしても――助けたいと思ったのが、ナタリーのオリジンなのだから。

ナタリー・ガルシア :「ですから、忘れないでください――ハーヴァは一人ではありませんわ。必ず、必ず、私や、私以外にも、貴方のことを助けたいと思う人はいますから」

ハーヴァ :
「………………、ありがとう。
 ──えへへ。そんな風に真っ直ぐな目で言われたら、なんだか照れてしまうな」
 
 気恥ずかしい様子で頬を掻いて目を逸らす。
 ノイマンという人の知性を知悉する症状であるが故に、それが本心であるということを見抜いていたのだろう。

ハーヴァ :
「うん。私も、それは分かってるつもりだけれど……ありがとうね。
 実際、この街を大切に思ってる人は私一人ということはない。私はそう信じたい」

ハーヴァ :
「この島への入植が済んで一つの世代が経つ。私たちみたいな帰化世代がこれからどんどん増えてくる。
 時代が変わるにつれて、少しずつ街の模様も変わっていくだろう
 あなたのように、外からの人の価値観によってもそう」

ハーヴァ :
「そんな風に変わっていく中でも。
 善く在ろうと意識していなくても。幸福の中で、誰かに優しくしたいと思えるような。
 これは、父さまの意志というだけじゃない。私の意志で、都市に住む多くの人が抱えている意志だと思う」

ハーヴァ :
「だから……うん。
 みんなにはまだ内緒だけど、ちょっとだけあなたの意見が訊きたいから、話しちゃうね。
 力を貸してくれる。そう言ってくれたから、早速ちょっとだけ借りさせてもらおうかなって。
 この街の、この先で考えていることについて」

 そうしてハーヴァは耳打ちするように、少しだけ声を潜めてあなたの耳元に近付いた。

ナタリー・ガルシア :「そうですわね……ええ、そうですわ。それはとても素晴らしい目標ですわ」

それは、とても難しいことで、それを理解した上で目指そうとすることを、ナタリーは好ましく思う。
だから、近づいたハーヴァの言葉に耳を傾けた。
彼女が考えていることに対して、意見を求められているのであれば全霊を以て応えなければ、と。

ハーヴァ :
     ・・・・・
「私は、『システム化』しようと思ってるんだ」

ハーヴァ :
「この街は、たくさんの意志がある。当初は数十人の規模で運営されていた町だけど、今は五百人を越す勢いだ。このまま続ければ、どんどん医師は増えていく。
 そのたくさんの意志に、レールを敷きたい」

ハーヴァ :
「どんな悪党が座っても。
 どんな力の足りない人間が座っても。
 問題なく経営できる『土台』」

ハーヴァ :
「そこでは、もう『王』や『族長』みたいな単位はなくなる。
 子供は皆、均等に学習し。学びを終えると、そこで学んだ知識と持てる才能によって、適正のある仕事に就く」

ハーヴァ :
「勿論、やりたくない仕事に適性を持つ場合もあるだろう。それに制約を掛けるつもりはないんだ。
 ただ「なりたい自分になれる」ため、「どういう道筋をなぞればいい」のか……」

ハーヴァ :
「今の都市は、その点が問題なんだ。
 各々の能力と熱意でこの都市は完成したけれど
 ・・・・・・・・・
 それが末代まで続くとは、私はあんまり考えてないんだ」

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア :黎明期における発展、拡大、進歩――それは、個々の素質に依るものが大きい。


0を1に、1を100に……そして、100を維持する。それら全て、求められるものが違う要素だ。

ナタリー・ガルシア :「それは、そんなことが可能なんですの……?」

この時代には存在しない、民自らが考え、民自らが己の主として君臨する。それは、己の全てを己が責任を取るということに他ならない。

そして、人々は――数千年の時を経てなお、それを持て余している。

ハーヴァ :
「自由……というのは、人は皆生まれついてから持っている筈なんだ」

ハーヴァ :
「ただ、一人である限り、出来るのは一人の力だけだ。それはこの都市ですら同じことさ。
 一人は、小さく、はかなく、脆い」

ハーヴァ :
「何より一人は能動性が失われるんだ。
 貧しさの故、失敗の恐れの故、自分に枷をかけ保守的になる」

ナタリー・ガルシア :「己を守るだけで、精一杯になる……」

ハーヴァ :
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「だから、流されて生きても人並みの幸福が掴める社会になったら……
 身分の差もなく、選択を致命的に誤ることもなく、多くの意志を活かすことが出来ると思うんだ」

ハーヴァ :
「自分の力で一から十まで考えること。それは、きっと一番難しいことだ。
 根元的な自由の元では、貧しさと恐れが縛りを生む。よしんば活動できても、その道が過ちであったなら……それも、失敗を還元できるような『まだ取り返しのつく失敗』でないのなら」

ハーヴァ :
「それは、あまりに悲しいことだ。
 自分で決めたから、自己責任だから、だからって見捨てていい筈がない」

ナタリー・ガルシア :「……それは、そう、ですが」

それは、少し。

「人の冗長性を切り捨てることになりませんか……?」

ハーヴァ :
「うん……そこが少し懸念点でね。
 枠組みそのものを広く持つことで、選択肢を増やしても、行政がそう誘導している事実は変わらない。
 けど、社会というのはそういう意志を管理して、共同体を成り立たせるためのものじゃないか?」

ナタリー・ガルシア :「……社会を大きな生命として見れば、確かにそうかもしれませんわね」

ハーヴァ :
「うん。
 この街は、たくさんの人の営みで成り立つ、一つの生き物だ」

ハーヴァ :
「私はこの街が好きだ。この街が、長い時間をかけて成長し続けてくれることを祈っている。
 勿論、そこで住まう人たちも、やってくる人たちも。そのルールを受け入れて、幸せになれることを夢見てる」

ハーヴァ :
「けど、うん。冗長性と秩序。その天秤を如何にするか。はっきりと結論が出ない時点で、私の知性では難しいな。
 これから長い時間をかけて考えていくことなんだろうけど」

ハーヴァ :
「いい考えだと思うんだけどなあ。少し、先のことを考え過ぎなのかな?」

ナタリー・ガルシア :「……ええ、そうですわね。ですが、ハーヴァが真剣に考えて、この先もずっと取り組んでいくのであれば、それはきっと悪いものにはなりませんわ」

ナタリー・ガルシア :「幾つかの考えなければならないポイントがあり、その解決策も簡単には出ないでしょう……少なくとも、私には今すぐに全てを丸く納める答えは浮かびませんわ」

けれど、この先、少しずつ形を変えて――人が、善き人でいることの出来る世界を目指して問題に取り組んでいくのであれば。

「良いと思いますわ。どうすれば良いのか、答えを探して皆で頭を悩ませることも必要でしょうし――なにより、誰もが前を向ける社会というのは素晴らしいですわ」

ハーヴァ :
「そうかな。……そうだといいな。私の『意志』だって、何時悪に傾くか分からない。
 豊かであることは善く在れることの十分条件であって、必要条件じゃないものね。

 でも……あなたがそれを保証してくれるなら、ちょっと安心だ。
 聞いてくれてありがとう、■■」

 穏やかな表情で語られる言葉。紛れもなく彼女は、ナタリーの言葉に安堵していたのだろう。
 ──だが、恐らく、あなたを呼んだのだろう。
 その言葉は。何故か正確に聞き取ることが出来なかった。

ハーヴァ :
「はあーあ、難しいなあ、族長の仕事って。
 まだまだ、考える事もやることも山積みだ」

 がくん、とイスに深く腰掛ける

ナタリー・ガルシア :「……その割には、楽しそうですわよ?」

ハーヴァ :
「……そう? そうかもしれない。
 やりがいのある仕事さ。それも、命を掛けても惜しくないぐらいには」

ナタリー・ガルシア :「大げさ……ではありませんわね。私も、その気持は分かりますし」

ですが、と良い置いて、続ける。

「言うまでもないことですし、わかっているとは思いますが、命と自分は大事にするように!」

ハーヴァ :
「わわっ」

ハーヴァ :
「う、うん……
 ビックリしたぁ。それは勿論、そのつもりだよ。
 私が倒れたら、族長が居なくなる。この都を引き継ぐこともできなくなってしまうもの」

ナタリー・ガルシア :(そう言う方に限って、少々頑張り過ぎるきらいがあるのですが……いえ、決めつけるのはよくありませんわね)

ナタリー・ガルシア :「それもありますし、私も悲しいですわ……」

ハーヴァ :
「わわわっ
 そ、そう来られると中々……」

ハーヴァ :
「養生するよ、うんうん。
 ……加護を受けた人の寿命は、統計だと平均して八十から百になるらしい。この都市環境だと外から攻撃に逢うことも少ない。
 私は十五だから、まだ六十年近く時間はある」

ハーヴァ :
「ゆっくり考えるよ。私も、都市の一部だ。
 その私が欠けるときは、出来るだけ悲しませないようにしたい」

ナタリー・ガルシア :「そうしてください、今から最後を考えるなんて少し気が早いような気もしますが……準備をしすぎて損ということはありませんから」

ハーヴァ :
「うん。……ありがとう。おかげで、気分がとても楽になったみたいだ。
 立場上、こういう風に竹を割って話せる相手がいなかったから。本当に、よかった」

ナタリー・ガルシア :「私で良ければ、いくらでも話し相手になりますわ――お友達ですものね」

ハーヴァ :
「……うんっ」

 丁度話が終わったのを見計らって、テーブルに料理が運ばれてきた。
 パンとラム肉を遣った料理と、果実ジュースが一つずつ。

ナタリー・ガルシア :「……これは、想像以上に」

漂う匂い、盛り付けられたそれらは、口に入れる前から美味を確信させる出来の料理たち。夢の中なのに、思わず生唾を飲み込んで、居住まいを正す。

「それでは、いただきましょうか」

ハーヴァ :
「そうしようか。
 その前に、ここでの祈りの作法を教えるね」

 そう言いながら、ハーヴァは身振り手振りで、どのような言葉と共に、どのような手振りで祈りを捧げるのかを教えてくれた。
 それは、ナタリーが現代にて父母から教わった、ガルシア家の宗派のユダヤ教の作法と、よく似ていた。

ハーヴァ :
「──では、いただきます!」

 感謝の言葉と共に、二人は焼きたての羊肉料理に舌鼓を打つのだった……

ナタリー・ガルシア :「はい、いただきます!」

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 シーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ナタリー・ガルシア :そうですわね……今回は無し、でお願いします

GM :了解ですです まだ距離とってましたもんねえ

GM :さて……

GM :現時点では何もなければシーンが終了することになりますが
他にシーン展開したい方がいますでしょうか

ダン・レイリー :…であれば、僕から要請がある。

ダン・レイリー :
 リリア・カーティス。現在のUGN本部を任される代理人だったか。
 ベセスダで彼女とコンタクトを取ることは可能か?

GM :ふむ 問題ありませんが……

GM :そうですね
合流後の会話という展開にする場合はそのままで問題ありませんが
周囲に隠れて、だとか秘かにコンタクトを取る場合はディメンションゲートの使用が必要となります

ダン・レイリー :ン。想定内だ。要は防衛直後の行動だからな。

ダン・レイリー :…密かに取るコンタクトというわけじゃないな。前もって宣言した行いが殆どだ。 

ダン・レイリー :…そして僕自身が外様だ。コンタクトの範囲を限定したところで、“だから”と口が軽くなるようなタイプでもないと思う。

ダン・レイリー :よって使わない。どのみち、今後嫌でも使用するしな。

GM :オーケイ! 慎重にいきましょー

GM :
 では行間の軽い合流を終えた後の会談ということにしましょう よろしいですかな

ダン・レイリー :問題ない。報告も今後の見通しもあるだろうからな。

ダン・レイリー :…ああそうそう、序でにこれも聞いておくが…僕に、局長殿や政府から直接の指示等は来ているか?

GM :
"現在は"まだ来ていませんね。
今はダン・レイリー大尉の裁量に任せる、ということなのかもしれません

ダン・レイリー :了解した。来ていないならば話はシンプルだ。




【Interlude③】

SYSTEM :
【Interlude③】

登場PC: Dan Reilly
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ……当初の攻略作戦の手筈通りに各作戦区域での状況を報告した一同は、現地調査の情報に基づき人員の再配置を行うこととなる。
 その割り振りの仕事のためにダン・レイリーは他のエージェントが束の間に体を休める中、拠点であるベセスダの本部ビルにて業務を続けることとなった。

SYSTEM :
 ダンは既に概ねの作業を終えていた。
 要領よく作業を終えたダン・レイリーは、束の間に用向きを思い出したのか、或いは既にここに来る時点でそれを考えていたのか。
 いずれにせよ、彼には本部に戻った折にやることがあった。
 今は、まさにそれをするのに都合が良い機会だった。

ダン・レイリー :
 ここ一週間においてするべきことは明快であり、ベストとは言い難いがベターではあった。
 パラダイス・ロスト作戦は第一歩から盛大に出鼻を挫かれたものの、懸念されていた足並みは幸か不幸かスムーズに揃い、不足こそあれど作戦活動を行えている。

 ───ベストを尽くす、などと言ったが。
 そも、軍人にとってそれは理想であり、現実は上手くいかない。

ダン・レイリー :
 船は何時だって嵐に見舞われる。
 ・・
 ヤツのこともそうだ。
 我々に求められているのは、その嵐を乗りこなし、航海を成立させる対応力であり………。

 手の届く範囲の最善を求める力だった。

ダン・レイリー :
 そう考えるならば、現在はどうにかやっていけている───そう判断し、緩慢を遠ざけながらも、再配置と状況報告の資料を纏める作業も、ほぼ終わっていた。

ダン・レイリー :
 ───上からの直接指示も、なし。

 あちらはあちらで対応に追われているか、
 今はこちらの自由裁量に任されているか。

 これについて審議の必要はない。
 与えられた任務を遂行するのが自分の役目だ。

ダン・レイリー :
「(………と、なれば)」

 今のうちに疑問は片付けておきたい。
 ミーティングの場で改めて言及するのは憚られた為にしなかったが………。

ダン・レイリー :
「(リリア・カーティスか)」

 確か。
           ・・・
 ナタリー・ガルシアの推薦者だ。

ダン・レイリー :
 であるに、行動は明快。
 どのみち配置状況や今後の展開について、本部を与る彼女と言葉を交える必要性があるのは確かだ。

ダン・レイリー :
「………行くとするか」

 ストライクゾーンの真ん中を衝かれたらしいディアスには悪いが、抜け駆けで会談と行こう。

SYSTEM :
 ダンは本部ビルを練り歩き、本部を預かる彼女の元へ向かった。
 執務室を出て、頭に叩き込んだ地図通りに進む。恐らく指令室にいるのだろうと踏んで地下へ向かおうと廊下を出たところで、偶然にダンはその姿を捉えた。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 金砂のような髪の後ろ姿は、見紛うこともない本部の幹部エージェント"高き者の箴言"に他ならない。
 彼女は、この本部ビルの窓辺から、何処かへ向けて視線を向けていた。
 それは黄昏るようにも、強く警戒しているようにも見えた。

ダン・レイリー :
「───リリア・カーティス」

 その何処かを見る様子は、少なくとも本部エージェントとして振る舞う彼女にしては珍しい黄昏であった。
 本来ならば、気遣って見過ごすも吝かではない、多忙の人間が見せる小休止のようにも思えた。(あるいは、より別の懸念と憂いであるのかもしれないが)

ダン・レイリー :
 ただ………、生憎と此方は政治屋の馬鹿息子以上に軍人だ。
 経験則に、黄昏た視線に気を配って、不確定要素の整理を怠れという話が成功した例は何処にもなかった。ここは無粋で問題ない。

「今後の作戦展開について、其方の意見を伺いたいことがあります。問題は?」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 横から彼女の様子を伺っても、その思索の内側について知ることは難しい。況や外様のダン・レイリーにとっては猶更だ。
 そして、ダンに今それを考慮する必要はなかった。

 呼び掛ける声を聴いて、彼方を見つめる視線がダンに向く。
 どうやらダンが用あってやってきたことについては知覚していたようだった。

「……構いません。
 聞きましょう、ダン・レイリー大尉」

ダン・レイリー :「ありがとう。そう時間は掛けません」

ダン・レイリー :………周辺の人気はないか? あって問題のある話をするつもりはないが。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「……心配ありません。この近辺には私とあなたのみ。
 記録を残すと拙いなら、こちらの一存で取り下げさせましょう」

ダン・レイリー :…成程。まさか此方が気を遣われたか。

ダン・レイリー :
「ならば懸念もありません。
 ………作戦展開とは言いましたが、聞きたいことなど、わざわざ単独で出向いてするものでもない」

 必要があるならブリーフィングで行い、
 取捨選択するための事前情報を収集すればいい。それで十分だ。

ダン・レイリー :
 そうしなかったのは理由があるし、
 そうしなかったから彼女はこの言動に出たのだろう。内心の納得と並行して、話を続ける。

ダン・レイリー :
「二点………いや、早急に判断の必要があるのは一点。単刀直入に伺います。
 ロサンゼルスで共同作戦を展開したUGNイリーガル………ナタリー・ガルシアのことです」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「彼女ですか」

 向き直り、ダンと顔を合わせる。
 リリアは彼女に対して、ある種誘導的な言葉を遣った節はある。何らかの疑問を持つのは当然のことであったし。
 人によっては、単にそれだけの疑問ではなかった筈だ。

「あなたと彼女は、先週までロサンゼルスの調査に向かっていたのでしたね。
 ……そして、敵部隊と交戦した」

ダン・レイリー :
「正確な理解です。
 ロサンゼルスに潜伏する“コードトーカー”およびシャンバラの情報について、真偽調査のため部隊を展開………。
 サボタージュ的活動を行うために配備されていた猟兵部隊と交戦し、これを撃破。撃破の際に活躍したのは彼女のオーヴァードとしての能力だった───」

ダン・レイリー :「というのは、報告書の話ですね」

ダン・レイリー :
「前以て誤解を解くならば、僕は彼女を戦力的な不足などから懸念を持っているわけではないということです」

ダン・レイリー :
 テンペストの人間として考えるのであれば、伺うべきはむしろ指導要領や得意分野等であり、それを伺うならば紅さん………“飄颻天華”の方で良かった。

 ノイマン・シンドロームとの智慧比べになる。傲慢もいいところだが、別に不安はなかった。

ダン・レイリー :

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「存じています」

 目を伏せ、静かに肯定する。

ダン・レイリー :「ええ。………ですから」

ダン・レイリー :
 ・・・・・・・・
「このように伺ったわけです。
 彼女を推薦したというのは貴女ですね」

 他でもない、コードウェル博士から。
 ガーディアンズの主だった男から代理を任されるほどの人間の推薦が、彼女だった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「はい」

 短く、逡巡も言い逃れの様子も見せることなく、そう彼女は断言した。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
「本作戦の参加者について………。
 僕は、ある程度の理解と、それに付随する納得を以て、其方との共同作戦に臨みました」

ダン・レイリー :
  エルヴスプライト
「………“雷霆精”に問題はない。
 細部に関する不審点はあっても、アレの行動には、少なくとも今、此方への不都合と不義理だけはまるでない」

 ダブルクロスだとして、そうであるなら有効な瞬間が幾つもあった。
 これについて彼女に聞くのは、そもそも筋違い。いっそ本人に聞いて踊り方をレクチャーしてもらった方がいい。

ダン・レイリー :
「………“T³”はまだいい。
 ホワイダニットはさておき、定めた方向性が明快だ」

 ダブルクロスに向く性格ではない───見解と結論は出ている。
 見た目ほど明快な思考も、意思表示ほど破天荒な内面もしていない。

ダン・レイリー :
「………“ラフメタル”、“炎神の士師”、“飄颻天華”。
 UGNが定めたエージェントだというなら、僕に前提まで口を出す資格はないし、そのつもりもない」

ダン・レイリー :
「ただ一人だけ。
 ガルシア家の御息女、ナタリー・ガルシア………」

ダン・レイリー :
「それが戦場に居るその意味を、僕は現場で早々に理解出来ましたが。
 理解と納得というのは違う」

ダン・レイリー :
「それ故に………。
 こう、申し上げます」

ダン・レイリー :
「もし───推薦の理由が戦力だけならば。
 そう仰って欲しい。
    ・・・・ ・・・・
 僕は、そう見て、そう扱う」

ダン・レイリー :
 戦場で何故と問うことはなく。
 任務の遂行に支障を来してはならない。

 故にこれは、必要な情報の整理だった。

 ただ心構えがあり、力がある、愛された子供に、その手を血に汚させる必要性───。
 それを、兵器の評価試験めいた理由にせよというならば、テンペストの“ホワイト・スカイ”はそうする。

ダン・レイリー :………。

ダン・レイリー :
    ・
 そして俺もそう判断する。
 “ラフメタル”と“炎神の士師”の時に、問題はないと見逃した結論を、もう一度蒸し返す。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「成程。
 それを私の口から話せと、あなたは語るのですね」

 言葉に淀みはなかった。鋼を打ったかのように、冷たく硬い応答が返るのみだ。
 ナタリー・ガルシアは強者だが、強者として生まれただけだ。分断された本部の人手が足りていないとしても、わざわざ彼らの手で登用する必要がある人物ではない。
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 そうせず、敢えて手を汚させるそれは、少年兵と何が違うのか。
 直接的で無かろうとも。ダンの言葉には、それを問う意志が少なからずともあったように思えた。
           ・・・
「……結論から答えれば、いいえ。
 私は、彼女に望むのは、兵器としての運用でも、兵士としての経験でもない」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「質問を返すようですが。
 ここで私が何も答えなかった場合、あなたは『どう扱う』つもりだったのですか」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「兵士として動くのであれば、ただ与えられた装備を運用する。
 オーダー
 命令を遵守し、最適な運用を行い、最小の犠牲で最大の戦果を出す。そのための『経費』として──

 協力する組織の民間人の少女を、最適な使用方法で『運用』するつもりでしたか」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「この作戦において我々は米軍に協力する立場。主導権は基本的に本国が握っている。
 であるならば、あなたはこちらの運用の方法など問うまでも無く『そう扱う』べきと存じます。
 部隊員の折衝というのも、既に彼らの同意は得られている。あなたの行動に、制限をかけるものなど、本来はない筈です」

ダン・レイリー :
 ・・・・
「その通りです。
 リリア・カーティス」

 僕が伺いを立てる人間は統合作戦本部に居るか、局長の前に“元”の看板を付けた男か、ホワイトハウスの誰より価値のある椅子で、誰より多くの人間を考える人間か。その3点だ。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :七色の直感を使う。要求内容については…。

ダン・レイリー :GM以外には秘匿したい。構わないか?

GM :問題ありません!

ダン・レイリー :
 ………この瞬間に懐いた結論はおくびにも出さない。僅かの沈黙と共に整理し、それで終わりだ。

「………大いなる力には大いなる責任が伴う」

ダン・レイリー :
「僕はテンペストの軍人です。望んで成り、望んで続けた。
 本国の秩序を保つ為に行動し………。
 成すべきと定めた任務の為に尽力する。それ以上でも、それ以下でもありません」

ダン・レイリー :
「───ただ。不躾に戸を叩いた詫びだ。
 もうひとつ加えましょう」

ダン・レイリー :「もしもそうだったなら、」

ダン・レイリー :
 その時は、
    ・・
 自らの誤りを清算するだけです。 

ダン・レイリー :
「ともあれ、先の答えは参考になりました。リリア・カーティス。
 不足する理解は、その結論に込めたもので補いましょう」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「…………」

 相手の答えを吟味するような、鋭い眼差し。
 それは箴言を賜す高みの者を思わせた。
 静かに見定め、裁定を下すような。敵意とは異なる、芯を見抜くような鷹の目の如き眼差しで、彼女はダン・レイリーの言葉を静かに聞いていた。
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「力の責任。何に信を置くか。
 それを自らの意志でそれを選び、続けている。
 あなたはそう語るのですね」

 静かに目を伏せる。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「答えに満足したのであれば結構。
 私も先の言葉で、十分とはいかずとも、あなたについて識ることができました」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「私を含め、我々は……力の責務と、そうした者たちの寄る辺たらんとして、この場所に身を置いている。
 あなた方が我々に信を置いた、その期待を裏切らぬ行いを続けてきたつもりです。

 これまでも、今も、これからも」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「その真偽と是非は、あなたの目で測るとよろしい。
 私も常にそのつもりで、この場に立っています」

ダン・レイリー :
 なるほど。
 師が師ならば、それに倣う者も倣う者か。
 そも測るのはお互い様でもある。当然の事だ。

ダン・レイリー :「そのつもりです」

ダン・レイリー :
 あるいはそれを、自分はどの言葉に対して向けたのか。

「痛くない腹を探って沈没しました、とはいかない………。ただ連中が得をするだけだ。
 そういう意味でも、今、その答え以上を求める気はありません」

ダン・レイリー :
 少なくとも───この分かれ道では、自分はその判断を採る。
 ナタリー・ガルシアについても。このエージェントについてもだ。

ダン・レイリー :
「依って、彼女への対応も現状維持………。
 ただ逸らないようにするだけのつもりです」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「賢明な判断です」

 飽く迄今はそれ以上を問う気はないとするダンに対して、彼女は静かに告げる。
 互いに完全な協力関係にある訳ではないことは周知の事実だ。ダンに思惑があるように、リリアもまた何らかの思惑あって行動していることは、先に口にした通りだろう。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 そして、それを表にする刻ではないことも、互いに承知していた。
 今はただ、それを見極めるために動くだけ……
          Faith
 彼女に言わせれば『 信 』を置くか、否か。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「お願いします。
 己を律する気概は美徳であれ、度が過ぎれば毒となる。
 彼女は彼女の語るように、きっと周囲が思う程善くもなければ強くもない」
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「なればこそ、今はあなたの判断を信用します。レイリー大尉」

ダン・レイリー :
「あれは善く在りたいのでしょうが」

 ただ、戦場では力のない者以上に、善いやつから死んでいった。
 あるいは、替えの利かないものか。それに思うところがないではなかった。

ダン・レイリー :
「それを覆らせぬように尽力しましょう。
 何にとっても。こちらも、名と看板を背負い込んでやって来た身の上だ」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「お願いします。
 ……かつて私は、FHに拉致される彼女の身を助けたことがあります。
 まだこのアメリカでは、ガーディアンズと呼ばれていた頃。同時多発テロ直後で、各地の世論が対テロ戦争に揺れ、先鋭化した頃です」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「私にとっては、苦も無く退けた一幕でしたが。彼女にとっては、それが転機となったといいます。
 彼女は私の姿から、その道を進みたいと口にしていました。彼女の父からそう伺っています」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「──私は人の模範足り得る人間とは思っていません。人を導引する以上は、為すべきを為してきたとて、その自認については変わりません。
 だからこそ私はコードウェル博士を支持し、彼にこの組織を託し。
 そして、エージェント”飄颻天華”を彼女に就かせた」

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「その意図するところを。
 この過酷な嵐の中でも、彼女が見失わないようにしてほしい」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
 成程。
 改めて思うに、切欠はそれか。

ダン・レイリー :
 命の恩人であり、鮮烈な黎明の記憶であり。
 また同時に、恐怖と隣り合わせの経験の瞬間でもある。
 善いもの、悪いもの、同時に向けられたというならば、
 どちらも極端な面が際立ってしょうがないはずだ。

 あの場面でヤツへの理解を欠かそうとしなかった辺り………。 
 存外にフラットな着地点を見出しているようにも思えるが。

ダン・レイリー :
「成程」
 ・・・・・・・
「貴女になりたい、ではなかったことは幸いでしょうが」

ダン・レイリー :
 目指すべきものがあるのは善いとして、それが特定の個人との同一化でないことは幸いだろう。

 憧れを発端にしてそうなることは、
 得てして苦しみの始まりだからだ。

 判断の、能力の差異。理想と現実のギャップ………。
 少なくとも理想が気高く輝かしい時、これを追う道は茨になる。

 結論。志の高いものほど急ぎ過ぎる。

ダン・レイリー :
「要求は理解しました。吝かでない。
 択ぶのは彼女ですが………その過程も、自身に軽蔑されない努力はさせてもらいましょう」

ダン・レイリー :
 ………志と言えば、彼女だ。

 その超越的な能力の話においてなおも驕ることはなく。
 その人間性が教え子の言葉以外で持ち上がることなく。
 UGNの本部代理という、あるいは相当の高位にある立場において、必要以上の意味を持たせることもないように見えた。

ダン・レイリー :
「………彼女に教えるべきものは、貴女よりも”飄颻天華”の方が持っていると?」

ダン・レイリー :
 意図がそうならば。
 これを暗に告げたも同然の話。

 答えるとも思わない、事実認識のための言葉は、僕自身のためのものだった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 静かに頷く。現在の彼女は、切欠がリリアにあっても周囲の環境に依るところが大きい。
 或いはそれが、リリアにとっても幸いであったのだろう。
 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「苦労を掛けます、レイリー大尉」
 
 リリアは最後の質問について、語ることはなかった。彼女の自認するところがどうなのかは推し量るしかないが、これまでの文脈を紐解けば予想できないことでもない。

ダン・レイリー :
「その言葉は期待を果たしてから受け取りましょう。
 リリア・カーティス」

ダン・レイリー :「苦でもありません。それが嫌なら、僕は分かれ道で違う選択を択んでいますよ。ずっと昔にね」 

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
 その言葉にリリアは言葉を返さない。
 ただ静かに、穏やかに微笑んで応えるだけだった。

"高き者の箴言"リリア・カーティス :
「今後も引き続いて、あなたに任せます。レイリー大尉。
 では、ご武運を」

 言いつつ彼女は踵を返す。呼び止めねば、彼女は指令室に向けて歩を進めるだろう。

ダン・レイリー :
「ありがとう。其方にも」

 引き留める理由はない。
 彼女も多忙の身で、自分の職務も、シャンバラの壊滅までは確実に続く。

 あとは、引き続いて委ねられたその裁量の中で尽力するだけだ。

ダン・レイリー :
 ………歩を進める彼女を見送り。
 踵を返す。

ダン・レイリー :
「為すべき、か」

ダン・レイリー :
 少なくともそれを成して来たのだろう彼女が、模範足り得ぬというのであれば………模範など、何処にいくつあるのやら。

 少なくとも自分も、首を横に振らざるを得ないだろう───既に得た結論とは別の、卑下でさえない事実のように語られた言葉に対する感想を持ちながら、自分は現在の全うするべき任へと戻った。

SYSTEM :
 語られた内容の確信を晒さぬまま、双方は振り返らず背に負った責務を抱えてそれぞれの道に戻っていく。
 既に双方、今語るべきことは語った。恐らく二人にとっては、とても重要な確認は為されたのだろう。

SYSTEM :
 彼らは再び戦場の渦中に戻る。
 双方の思惑を胸に、或いはその道が衝突する時が来ないことを願いながら。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 シーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ダン・レイリー :そうだな…。

ダン・レイリー :いや。現状で新規ロイス取得の予定はない。次に行こう。

GM :承知しました!

GM :ではこれで全員のシーンが終了したので

GM :一件イベントシーンが入ります

GM :シーンプレイヤーはブルーさん!

ブルー・ディキンソン :ぴーす。




【EXScene④/秘匿通信-2】

SYSTEM :
【EXScene④/秘匿通信-2】

登場PC: Blue Dickinson
登場侵蝕:なし

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ブルー・ディキンソン :
「テステス……うん、うん、暗号変換よし。
 あ、もう見た? 早いねー、さすがさすが」

ブルー・ディキンソン :
「ま、今のところは上手く釣れてるよ。
 餌に食いつくのに案外時間がかかったけど、お姉さんの鶴の一声って大事だねえ」

ブルー・ディキンソン :
「……ん? あー。
 オーケー了解、メモの準備もオッケー」

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縺?≠縺ア縺帙j縺峨?√ぇ繝、縺ォ繝阪ヤ縺イ繧ウ繝ョ繧ゅ△縺??ゅ↓縺?♂繧九m縲√□縺ア縺斐?縺ゅ¥縺」縺?∋縺ク縺弱a縺ヲ縺ゥ縺舌△縲

ブルー・ディキンソン :
「……」

ブルー・ディキンソン :
「……ああー……やっぱり? 
 やっぱり、っていうのも変かもしれないけど……」

ブルー・ディキンソン :
「びっくらこいた。サングラス落ちちゃった。
 ……となると、ウカウカしてられなくなってきたかにゃー」

???????? :繧峨$縺ア繧?a縺ュ縺?c繧後?ゅ▽繧医♂縺ォ縺峨?縺?縺峨k縺ウ繧上n繧?l縺上≦繧弱?
繧?♂縺ュ繧√°繧??縺偵?縺ヲ縺「縺?縺ア繧?l縺ェ縲√ぇ繝、縺イ繝阪ヤ縺弱l縺弱m縺「縺?§縺ゅ?縺帙※縺斐≠縺√″縺悶?縺ヲ縺「縺ゅ▲縺ヲ縺ゥ縲
縺斐※縺弱?縺オ縺斐≠縺壹f縺溘≠縺?≠縺壹∩縺峨?縺」縺?§縺ゅ○縺」

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :
「無くはない話。正直眉唾ものと思ってたけど……。
 カルタゴは随分と後ろ暗いものを抱えてるねえ、困ったもんだ」

ブルー・ディキンソン :
「ま、だいたい想像はつくけど……理由はね」

???????? :縺弱≠縺上°縺ゥ繧ゅo縺ウ縲√ぇ繝、繝ュ繧ョ縺上Ρ繝舌し繧ァ繝後か繧ァ繝ョ繧シ縺√★繧後?縺弱※縺「縲√?縺ゅ←縺悶↓縺ョ繧?m縺上≦縺ヲ縺「縲
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縺弱o繧後?繧九§縺ゅ=縺舌≠縺壹h縺偵§繧上←縺?△縺壹?√?縺帙j縺峨?縺、縺?§縺ュ縺舌∩縺ェ縺?※縺「縺ォ縺イ縺?°
縺昴※縺ォ縺?縺ア縺斐≠縺舌h縺峨=縺阪*縺ュ縺ヲ縺ゥ縺舌△縲

ブルー・ディキンソン :
「そうだねえ……そうでなければ、ボムがあんなの認めるわけないし」

ブルー・ディキンソン :
「となると、今回の事そのものが少し怪しく思えてくるな。
 元々"そう"だとすれば……、釣り上げられたのはこっちかもしれない」

???????? :繧・繝、縺ォ繝阪ヤ縺上$繧翫♂縺ャ縺峨↑縺斐≠縺舌h縺峨★縺ゥ縺舌△繧??縲
縺?繧上=繝ャ繧イ繧コ繝ヲ繝シ繧ク縺イ縺弱m縺ゥ縲√≦縺、縺悶▽縺ョ繝ッ繝舌し繧ァ繝後?縺「縺?●繧弱℃縺ゅ★繧翫♂縺√″縺悶?縺ヲ縺ゥ繧弱≠縺」縲
縺?l繧峨n繝ッ繝舌し繧ァ繝後=縺弱≠繧阪?√↓縺峨◇縺?●繧弱△繧??縲弱ぜ繧シ繝峨Ε縲上?
縺?繧上¥縲√℃繧上l縺ア縺斐≠縺舌h縺峨●繧弱∋繧?≠縺」縺弱l

ブルー・ディキンソン :
「……なにそれ」

ブルー・ディキンソン :
「馬鹿げた話にも程があるよねえ、それ。
 ……ったく、WTCの一件から世論の傾きがどっちに行ったのかなんて知ってるだろうに」

???????? :繝ャ繧イ繧コ繝ヲ繝シ繧ク縺ア縺イ縺輔≠縺ゥ縺?←縺舌?縺イ縺ゅ∞縺」縺斐〓縺ー縲
繧コ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺ア縺舌j縺ゥ縺ゅ↑縺イ縲√□縺ア縺阪″繧?↓縺上≦縺ヲ縺「縲
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縺弱≠縺溘≠縺九≠縺代¥繧?*縺峨℃縺倥o縺「縲

ブルー・ディキンソン :
「……ふうん」

ブルー・ディキンソン :
「それ、超ヤバいね。
 下手したらこっちがコツコツやってきたことが全部パアだ。
 そこまで隅々に出来てしまうのなら、些細な使用も出来ないってことになる」

ブルー・ディキンソン :
「……こっちにとっても重要になってくるな、その情報は」

???????? :繧?♂縺弱¢縺ァ縺斐l繧上△縺弱e縺壹o縺ュ縺??√※縺ゥ縺?♂縺ア縺イ縲√″繧??縺?繧上?縺槭∞縲
縺弱p縺峨○縺ゥ縲弱△縺?★繧?◇縺?¢繧翫?上?縺ァ縺弱°縺「縺弱l縺ュ縺ゅ↓縺弱@繧√℃縺壹△縺斐〓
縺励a縺弱★縺舌o繧弱e縺ア縺帙f縺ュ縺??ゅi縺ゅ?縺ゥ縺?°縺ゅ★縺ゅ≦縺「繧阪?繧偵△縺壹?繧?=縺ァ縺斐←繧弱b縺「縺??

ブルー・ディキンソン :
「……っは〜。
 思わぬところで尻尾が出た……というか、これ自体は仕方ないことか。
 この前の通信で言ってたことがよく分かったよ、確かにそれは最悪だ」

ブルー・ディキンソン :
「……早めた方が良さそうだね?」

???????? :縺?縺峨★縺ゥ縺偵o繧弱↓縺「縺懊℃繧弱?
縺ェ縲√∞繧√Ξ繧イ繧コ繝ヲ繝シ繧ク縺上←縺ゅ℃縺?★縺ゥ縺?n縺ア窶ヲ窶ヲ縺弱m縺ョ繧ュ繝シ繝九げ繝ヲ繧「繧セ繝ャ繝シ縺ォ繧九≠縺ェ縺阪£縺斐〓
繧偵△縺壹?縺ォ縺悶p縺ョ繧・繝ッ縺上?縺??縺イ縲√?弱じ繝シ繝後ル繝シ繧ョ繝シ縲上?縺帙≠縺弱£縺ョ縲後≦繧上=縺阪∞縺ゥ縺阪£縺ォ繧??縺??阪↓縺懊m縺悶b縺√∞繧上△縺弱l縲

???????? :縺」縺弱l縲√じ繝シ繝後ル繝シ繧ョ繝シ縺イ繧ュ繝シ繝九ぇ繧イ繧コ繝ェ繧「縺ェ縺峨@縺斐n縺ア縺峨m繧翫£縺√″縺阪£縺ァ縺ゅ↑繧弱?
縲翫?繧後d縺舌?縺「縺ゥ縲九↓縺弱?縲

ブルー・ディキンソン :
「……なるほどなるほど。
 確かに、そこにコマンドを一個置いておけばそう認識もするか」

ブルー・ディキンソン :
「ああうん、そうでないと罷り通らないものね。
 ……ある意味では、そこが不審点になっちゃいそうな気もするけど。
 背に腹は変えられないか」

ブルー・ディキンソン :「"OC"……とあたしは呼ぶことにしよう。
 面倒だからね、それ……」

???????? :縺セ縺壹≠縺ゥ縺舌?縺槭∞縺弱£縺√ル繝ッ繝シ繧シ縺壹△縺弱l縺ー
縺イ縺ュ縺壹¥縺?繧上△縺斐〓縲√↓縺ョ縺弱£繧・繝、繝ュ繧ョ縺ォ繝阪ヤ縺イ縺?縺峨★縺「縺代○繧医〒縺√$繧翫♂縺ャ縺峨↑縺斐≠縺舌h縺峨★縺ゥ縲√∞繧√□繧上=縺峨≠繧九♂縺壹←繧弱?
縺「縺」窶ヲ窶ヲ繧・繝、繝ュ繧ョ縺上ぜ繝ヲ繧「繝薙Ξ縺√〒縺ケ縺懊$縺ュ縺ア縺イ繧√▽縺上∞縺ュ縺?b縺「縺??

ブルー・ディキンソン :
「……だろぉなぁ。
 そういうのはお得意だもんねえカルタゴは」

???????? :繧阪i縺峨g縺倥∞縺ケ繧√↑縺イ繧√▲繧偵℃繧後?縺?★縲√□縺悶?繧?*縺峨?縺ォ縺?〒繧?n縺シ縺舌*縺ォ縺」縺ォ縺阪e縺峨?
縺斐〓縲√$縺√〒縺斐←縲
繝峨い繝昴ぞ繝九?繧√▲縺壹e縲√□縺ア縺峨°窶ヲ窶ヲ繝帙Π繝」繝シ繝九?繝帙ぞ縺ォ縺ュ繧弱↓縲√□縺峨↓縺峨$縺ュ縺偵§縺

???????? :縺?m縺上▽縺ュ縺?∞縺弱△縺√●繧弱↓縲√↑縺弱△縺上r繧弱#繧上?縺??縺「縺ア縺セ縺峨e縺斐§繧上n縺弱e

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :「うそ──────ん!!!」

ブルー・ディキンソン :「……ごほん、ごほん。
 ま、まあ……そうなるのも無理はないか……」

ブルー・ディキンソン :「まずいなあ。
 私自身が直接手を入れるのは好ましくないよね。
 となると……焚き付ける相手が必要になるわけだが……ん〜」

ブルー・ディキンソン :「ん〜……」

ブルー・ディキンソン :「……困ったなあ……」

ブルー・ディキンソン :「──……まあいい。
 それについては、まだ少しだけ考える時間はあらあな。
 どうにか上手い落とし所を見つけておくよ」

???????? :縺??縺ー縲ゅr縺「縺壹?縺壹≠縺エ縺?★縺ゥ縺?※縺ゥ繧弱≠縺ェ縺懊#縺ャ?
窶ヲ窶ヲ縺?▽縺阪♂縲√*縺、繧後?繧・繝、繝ュ繧ョ縺ア縺ク縺槭∞縺√≦縺ウ縺偵?繧?★縺励↓縺ア縺峨▽縲
縺?繧上=繝舌モ縺ョ繧峨●繧弱℃縲√r繧弱§縺壹←繧弱∞縺、縺ケ縺ア繧?〒繧後=縺「縺「縺舌▲縺懊℃縲
縺ャ縺ヲ縺、縺ョ縺ュ繧弱℃縺イ縲√a縺」繧偵℃繧後?縺?#縺ャ縲

ブルー・ディキンソン :「あは〜?
 なになに珍しいじゃないそういう反応。
 まあねえ……うん……あたしは……まあうん……こういう時けっこう、ドジるもんねえ……」

ブルー・ディキンソン :「いやあ、大変っすなあ。
 ……まあ、気持ち自体はこっちも同じだからね、そこは言っておくけど」

ブルー・ディキンソン :「……結局身の丈に合わないことしてるのは、お互い変わらないことだしね?
 ……ああいや、こっちの視点で見たらって話ね。
 決して侮辱してるわけじゃないので勘違いしないでよ」

???????? :
縺?°縺ゥ繧弱?

縺ォ縺ョ縺弱£縲√ラ繧「繝昴ぞ繝九?繧九♂縺懊?縺サ縺ゅ℃縺上≦縺ヲ縺「繧後$縺√〒縺斐←縲
縺帙j縺峨∪縺峨=繧?▽縺弱°繧上?縲√□縺ヲ縺、縺ア縺?≠縺溘≠縺イ縺弱£縺セ縺ェ縺舌n縺ォ縺阪e縺峨?
縺懊£縺ュ縺偵↓繧?⊂縺?←縺??縺セ縺峨?縺ー

???????? :縺?○繧翫♂縲√く繝シ繝薙?縲
縺セ縺弱?縺ュ縺ョ縺弱≦繧弱?繧後$縺偵#縺ャ縲√?縺ォ縺ァ縺」縺斐?

ブルー・ディキンソン :「アイ・アイ。
 ……全く、あたしも漂白済みにされときゃよかったかなー、なんて」

ブルー・ディキンソン :「あたしも結構ビックリドッキリなんですから。
 こういうときに義体化をしていてよかったなーって思うんですけどねー……」

ブルー・ディキンソン :「……」

ブルー・ディキンソン :「ん、ああ……そうだなあ、じゃあ最後に一個だけ」

ブルー・ディキンソン :
「愛してるよ♡ 
 じゃ、オーバ〜」

 けらけらけら……。

???????? :縺イ縺??縺??
縺?○繧翫♂縲√く繝シ繝薙?

ブルー・ディキンソン :「あ」

ブルー・ディキンソン :「ちぇ。
 全く冗談が通じないんだから……んもう」

ブルー・ディキンソン :「……はあ、やれやれ。
 社長歴ウン年最大の危機だな……頑張ろ」

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
1ラウンド目の行動が終了しました。
リザルトを確認します。

SYSTEM :
 ─RESULT─

SYSTEM : ─ROUND 1/5 ─

 STAGE『United States』
 MAP Progress:
 LOS ANGELES :1/4 (Safety)
 DETROIT :2/4 (Normal)
 NEW ORLEANS:1/4 (Danger)
 
 ALLY UNIT ;4/4
 ENEMY UNIT:6/6
 
 CAPTURED AREA:1/4

SYSTEM : デバフ状態:
 ・Auto Action Limmiter :ON
 ・Prize Point Canceler :ON
 ・Energy Absorber :ON

SYSTEM :
STAGE『Sodomy City』
STAGE:0⇒1

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【Information】
 開示情報が追加されました。

SYSTEM :
【地名:古代都市ソドム/1】

 死海海底に沈没したとされる、旧約聖書に登場する退廃の象徴たる惑乱の都市。
 現代で魔窟の形容詞として使われるように、伝承においてそこは繁栄と肉欲に爛れ、その故に神の裁きにて滅びた都であったという。
 
 ナタリーが夢見に落下し続けた夢……生物が存在しない死海の夢の果てに辿り着いた都市の正体。その実態とは紀元前20世紀以前もの太古にてオーヴァードの力により繁栄した人工島であった。
 鉄器の加工すらままならない時代にありながら、当時数十人規模の部族がそこに渡り、それぞれ発症したシンドロームの性質を生かすことで、現代では考え難い速度での文明を発展させてきた、オーヴァードたちの秘境である。
 建国より十数年で産業革命を達成し、五十から六十年の月日を経た段階で既に現代と遜色ない文明力を手に入れていたという。
 都市周辺を隔離して外交を拒絶しながらも、人口が少ないこと、それをまかなうに十分な生産力を実現し、ここに人類最古の完全環境都市……アーコロジーを成立させたという。
 




STAGE『United States』 Round2

SYSTEM :
-ROUND 2-

SYSTEM :
-SETUP PROCESS-

SYSTEM :シークレットダイス ??

SYSTEM :シークレットダイス ??

SYSTEM :各PCは行動内容を選択し、判定を行ってください

ダン・レイリー :現状こちらが片手間でも調査と索敵を終えられるような箇所はないが…

ダン・レイリー :
 ………ダメで元々だな。

 情報調査を行うぞ。
 場所はルイジアナの第二段階。使用判定は「情報:軍事」。
 可能ならば「コネクション:傭兵」を使用する。

GM :此方は数で押すわけですな
オーケー、コネクション傭兵の使用も問題ありません

GM :目標値は10 安定はしないとはいえ決して不可能ではない数値です ファイト!

ダン・レイリー :そういうことだ。だが分の悪い賭けじゃない。

ダン・レイリー :3dx+1 情報:軍事 (3DX10+1) > 9[3,6,9]+1 > 1

GM :いったァーーーっ!

ダン・レイリー :このようにな。

GM :ヒュー!!流石大尉だぜ!!

SYSTEM :
【判定:情報判定 ニューオーリンズ-第二段階 に成功しました】

SYSTEM :
【Check!】
ロサンゼルスの小規模戦闘エネミーが開示されました。
ユニット: OTH-24NS "カリギュラ"×1
    強化猟兵×1

市街戦仕様大型機械化兵"カリギュラ" :アラスカの一件で研究されていた機械化兵の新型モデルと、それを援護する歩兵部隊からなる。
大量破壊兵器を抜き、オーヴァードを確実に殺傷する白兵武装と強固な装甲が特徴となる。

市街戦仕様大型機械化兵"カリギュラ" :カリギュラのステータスは以下を参照する。
https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/dx3rd/?id=aT4ys7

灰院鐘 :やったねダンさん! それじゃあ次は僕だ。〈情報:UGN〉で"天刑府君"の居場所を調査するよ!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :ではどのエリアを調査するか選んでください
これは自分の降下するエリアのクリアリングでもありますから

灰院鐘 :……なるほど!

灰院鐘 :じゃあカリフォルニアにしよう こっちなら調子も出るようだしね

GM :おっけえーーい では

GM :判定をどうぞ!

灰院鐘 :3dx+1 (3DX10+1) > 10[7,9,10]+2[2]+1 > 1

GM :いったァーーー! くっ強い

ダン・レイリー :さっきの言葉を僕からも返そう。やったな。

灰院鐘 :やったあ!

灰院鐘 :どうぞ! こちらお祝いのハグです

ダン・レイリー :朝の挨拶というわけだ

灰院鐘 : 

SYSTEM :
【判定:情報判定 ロサンゼルス-第三段階 に成功しました】

SYSTEM :
【CAUTION!】
 エージェント"天刑府君"の所在が判明しました。

"天刑府君"元 天刑 :
敵性ユニット:"天刑府君"
エリア:ロサンゼルス
セクタ:A

GM :さて、元の身許が割れたが

GM :この段階で既に出来ることが……ない……

灰院鐘 :がんばったよ

ナタリー・ガルシア :シャドーでもしておきますわ~~~!!!!!!!!!(シュシュシュ

GM :おまえたちは……優秀過ぎた!!!

アトラ :合法的にサボれちゃったってわけで!

ダン・レイリー :出来るに越したことはないからな。褒められることはあっても責められはしない

ダン・レイリー :問題は奴が未だロサンゼルスに陣取っていることだが…そこはおいおいだ。

GM :ずっと上振れを引いているおかげでちょっとやれることがないくらいのスピードで来てますね
流石だァ

GM :となると もうセットアップから本番に移行することになります
用意はいいですかな

GM :
Los Angeles:
A:
B:
C:CLEAR
D:
DETROIT:
A:CLEAR
B:CLEAR
C:
D
New Orleans:
A:
B:
C:CLEAR
D:

GM :ちなみに、進捗状況はこんな感じです

GM :表にも書いておきました

ダン・レイリー :順調は順調だな。…慢心することのないよう、方針を詰めていこう。

灰院鐘 :はりきっていこう!

SYSTEM :
セットアッププロセス内の全ユニットの判定が終了しました。
各ユニットは配置に就いてください

SYSTEM :
ユニットの配置を確認しました。

Los Angeles:
A:鐘、紅
B:ブルー
C:CLEAR
D:
DETROIT:
A:CLEAR
B:CLEAR
C:アトラ
D:ダン、ナタリー、勇魚
New Orleans:
A:ディアス
B:
C:CLEAR
D:

ディアス・マクレーン :俺、一人かよ!

ダン・レイリー :すまんディアス テンペストの連中を恃む

灰院鐘 :いってらっしゃい!

ダン・レイリー :ちなみにおまえが両手に花だったことはさり気なく さり気なく連中に伝えておいたことを追記しておく

ナタリー・ガルシア :孤軍奮闘獅子奮迅の活躍を期待していますわ

ディアス・マクレーン :ぐっ

アトラ :まあまあ ウチらとの飯の記憶を胸に頑張ってくださいよ

ブルー・ディキンソン :チェキあげますから頑張って♡

灰院鐘 :じゃあ僕もワニの写真渡しておくね

ディアス・マクレーン :仕方ねえ……そう言われちゃ引き下がったら男がすたる!

アトラ :チェキて

SYSTEM :
-MAIN PROCESS-

SYSTEM :
各セクタに配置されたユニットの判定を行います。

GM :今回はダンさんのスケジュールを考えて、判定順が重要になってきます

GM :先にデトロを潰した際の処理もありますからな

ダン・レイリー :そうだな ロサンゼルスの目ぼしいポイントは回ってある 上手く使えるかは状況次第だが…

GM :NPCの分配とかもそうですしね 余った場合とか

GM :まあそういうわけで……

GM :誰から回すか、次はそこですね

GM :というわけで我こそは!という方挙手をどうぞ

灰院鐘 :はい!

GM :oh!鐘さん!

灰院鐘 :ロサンゼルスのセクトAの判定に挑戦するよ

灰院鐘 :免許も持ってないし教習所にも多分行ったことないけど!

GM :何やってんだ鐘ァアアアアアアアアアアアアアアア!

GM :ごほん しかしオーケイ問題ありませぬ
そこには元がいるが、頑張って!

GM :判定内容自体はそう悪い賭けじゃない よろしくおねがいします!宣言をどうぞ!

灰院鐘 :素振りでいくよ

GM :オーケイ!どうぞ!

灰院鐘 :8dx (8DX10) > 9[1,2,3,5,5,6,6,9] >

GM :行った!

灰院鐘 :わあ、すごいね どっちのペダルで止まるんだっけ

紅 蘭芳 :なんで乗ってるの…………!?

ダン・レイリー :(彼の適性を間違えたかもしれん) 

SYSTEM :
判定に成功しました。
LOS ANGELES:sectorAを制圧しました。

SYSTEM :
【CAUTION!】

 イベントフラグを経過しました。
 判定一巡後、イベントシーンを開始します。
 指定PC:灰院鐘

GM :ではイベントが確定したところで

GM :次の判定はアトラちゃん!

GM :止まるんじゃネェゾ

GM :次は……判定内容は知覚か知識〈レネゲイド〉だ

アトラ :しゃー!知覚で行きますよ~!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :仕損じた場合はこちらでフォローします。気軽に振ってください

アトラ :う、うす。(年下なのに畏まっちゃうな……)

GM :では、他に宣言がない場合は

GM :判定をどうぞ!

GM :ちなみに判定シチュエーションは……

GM :セクトC:近辺に通報と思しきワーディング反応が見られたが、その使い手が何処にも見られない。発信源の捜索を試みる

GM :ですね

水無瀬 進 :オッ 僕の出番の予感!

アトラ :目ざといっすね~

水無瀬 進 :御用とあらば参じよう!さあ、何がご入用かな?

アトラ :『強化の雷光』を一丁!ウチひとりだと……不安!

水無瀬 進 :アイサー!お安い御用だ!

アトラ :(うーん親切……)

水無瀬 進 :
メジャーアクション:《強化の雷光 LV5》
対象:アトラ

効果:次のミドル判定ダイス+5dx

水無瀬 進 :これでダイスがプラス5だ。
健闘を祈る!

アトラ :大船に乗ったつもりで行かせてもらいま~す 助かるなぁ

GM :では判定をどうぞ!!

アトラ :8dx+1 知覚! (8DX10+1) > 10[4,5,7,8,8,9,9,10]+6[6]+1 > 1

水無瀬 進 :やりい!大成功だ!

アトラ :しゃー!あざす!

SYSTEM :
判定に成功しました。
DETROIT:sectorCを制圧しました。

GM :イベントフラグは……

GM :立ちません!

アトラ :ひゅ~……

アトラ :バレてない?そんなことないか……

GM :であれば……次はそう

GM :ブルーさんであるな

GM :判定内容は情報<ウエブ>と、知識<機械工学>のいずれかだ
どちらがいい?

ブルー・ディキンソン :さてさて

ブルー・ディキンソン :この場合は情報ですかねえ、あたしらしいし。

GM :適正な判定の固定値を持っていないようだ!已む無しと言いたいところだが

GM :EEの宣言は結構使い処ありそうだぜ!

GM :ちなみにシチュエーションはねえ

ブルー・ディキンソン :ええ

GM :セクトB:ワームウイルスの解析を行っている。オーヴァードの手による調査が必要だろう。

GM :でございます

ブルー・ディキンソン :なるほど? となると……

GM :あと遠い国の蜥蜴から指摘が入りましたね

GM :知識で判定した場合ダイスが4になります そっちがおすすめですわよ

ブルー・ディキンソン :あら〜 確かに

ブルー・ディキンソン :シチュエーション的には……まあそうですね、知識判定にはなりますが《アンテナモジュール》で秘匿性の確保だけしておきたいところですね。

GM :ふむふむ……

GM :他にはどうでしょう

ブルー・ディキンソン :あとはまあ……そうですねえ、《タッピング&オン・エア》ですが……

GM :ウイルスの解析とかもろ暗号解読な気がしますなあ知らんけど~~(覇王樹の真似で口笛を吹く

ブルー・ディキンソン :解釈の深さの差が出てしまいましたわ、面目ない次第。

ブルー・ディキンソン :では《暗号解読》で

GM :なるほど

GM :では
二つ併用することで固定値が2加算できます

ブルー・ディキンソン :なるほど。
あと《タッピング&オン・エア》は……んー、解読の際に何か外部から引用したりヒントにしたいものがあったら受信する、みたいなのは?

GM :……イケますね!

GM :それを併用する場合さらに固定値を+1します

ブルー・ディキンソン :やった♡

GM :という訳で使用する場合は侵蝕率1を加算して固定値を3つ増やして
他に宣言がない場合は判定をお願いします!

ブルー・ディキンソン :はぁい。

system :[ "雷霆精"ブルー ] 侵蝕率 : 58 → 59

ブルー・ディキンソン :では振ります。

GM :どうぞお願いします!

ブルー・ディキンソン :4dx+3 (4DX10+3) > 9[2,3,8,9]+3 > 1

GM :オッホッホ余裕の音だ 馬力が違いますよ

ブルー・ディキンソン :よかった〜

SYSTEM :
判定に成功しました。
LOS ANGELES:sectorBを制圧しました。

SYSTEM :
【CAUTION!】

 イベントフラグを経過しました。
 判定一巡後、イベントシーンを開始します。
 指定PC:ブルー

GM :という訳でお見事!そして次にイベント発生確定でございます

ブルー・ディキンソン :いえい!

SYSTEM :
【information】
 DETROIT:セクタCを攻略したことにより
 開示情報が追加されました。

SYSTEM :
【アイテム:PWE】
アイテム:『PWE』/エフェクト『完全複製』
 ラクシャーサが各地に展開している、重圧による妨害の正体。
 本来は製造コストが非常に掛かる、人工でワーディング効果を発動させる大型設備である。遠隔で起動でき、登録済みの因子を用いた特定の周波数のワーディングエフェクトを発生させることが出来る。

 今回発見されたのは非常に小型化され、さらに重圧付与という付帯効果を持つワーディングエフェクトを発生させるという。
 ……どうやらラクシャーサは『完全複製』によって自身の因子を込めたパラ・ワーディング・エフェクターを大量に複製しているようだ。これを各地に配置することで、各拠点の対抗勢力は苦戦を余儀なくされている。

 解除方法は不明だが、確かなのは使用者であるラクシャーサを倒すか、或いは本人の意志で解除させることだろう。

SYSTEM :
インタールードシーンを開始します。
インタールードを展開しています……




【Interlude④】

SYSTEM :
【Interlude④】

登場PC: Syou Kain.Dan Reilly
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ダンとリリアの会談から翌日。
 現地調査で得た情報を元に一同は各作戦区域に出立する準備を整えていた。

 おおむね順調に作戦は進んでいるが、あくまで先のは前哨戦だ。本格的な敵地の制圧は今日から始まる。
 それはダンが先週に遭遇した、"天刑府君"を含めたFH全体でも指折りの精鋭との対決が間近に迫っていることを意味していた。

SYSTEM :
 であるならば、ダンが懸念を感じた故か、或いは鐘からかは定かではないにしろ
 彼らが出立の際、顔を合わせることになるのは道理であったろう。

灰院鐘 :
「──ダンさん!」

 廊下の奥からでもよく通る声。あんまり早くはない歩みを歩幅で補って、青年は目当ての人物に急接近する。……ぶんぶんと手を振りながら。

灰院鐘 :
「いい朝だね。会えて良かった」

 探していた──というより、たぶん会う人みんなに言っているであろう挨拶のことば。

「せっかくだし、すこしいいかな。ほら、ここを出ていったら何日かは会えないだろ」

ダン・レイリー :
「ン───その声は。
 ショウ・カインか」

ダン・レイリー :
 よく通る声だ───。
 廊下の向こう側から聞こえたその声と、第一印象から決して変わらぬ顔と、駆け寄る大型犬めいた仕草の少年に視線をやる。

ダン・レイリー :
 既にブリーフィングで通達したことではあるが、先日に遭遇した“天刑府君”についての勧告を行い、また配置の確認を終えた。

 懸念はあったが…自分はデトロイトに配置換え。
 他はロサンゼルスの後詰めに割く人員をある程度入れ替え、ルイジアナにはテンペストの特務小隊を配備して迎撃を代行してもらう形でまとめた。

 それを恃んだディアス・マクレーン少尉の反応はまあ、割愛する。想像されたものが恐らく正解だ。

 ………そしてそれを実行する段階、つまり程なくして出立になる。
 だというに、その段階で掛かって来た裏表のない声が彼だ。訝し気に思うことはなかった。

ダン・レイリー :
「どうした?
 出立まで間があるが、不備や疑問………。

 と、いうわけではなさそうだな」 

ダン・レイリー :
「変わらない朝の一部と僕を呼ぶなら、褒め言葉と受け取っておこう。
 実際、会えずともミナセからの端末があるだろうが…面と向かっては少しお預けだ」

ダン・レイリー :「何かあるなら聞くよ」 さっき“そういうわけでない”と言った部分であるなら、尚のことな。

灰院鐘 :
「! やったあ」
わあい、と包みかけた両腕を引っ込める。

ダン・レイリー :「どうした、珍しいな」 この感覚だと抑止しない限り飛び込んでくるものだったが

灰院鐘 :「勇魚くんがね、節度を守ってくださいって。さっそく実践してみました」

ダン・レイリー :
「成程………。
 努力というなら形無しにするわけにもいかないな」 

ダン・レイリー :
「では、そいつは戻って来てから吉報と一緒に恃むよ。時と場所だ、それなら文句ない」

灰院鐘 :わあい!

灰院鐘 :
「ええと、それでね。ダンさんにはいろいろ聞いてみたいことがあったんだ」
 出立前に偶然会えたし、せっかくだから、と。

灰院鐘 :
「"天刑府君"に"ブラックモア"。どうしてあなたはシャンバラに縁が多いのかなと思って」

ダン・レイリー :
「“軍の機密を教えてください”でないなら、
 何にでも応じられるが───」

ダン・レイリー :
「………では結論から喋る前に、前提から話そう。ショウ・カイン。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 僕がそれをブリーフィングで言わなかった理由はなんだと思う?」

灰院鐘 :
「うん? ……うーん」なんだろう、と首を傾げる。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :「分かった。では前提からだな」 

ダン・レイリー :
「しかし誤解を招く前に言っておくが、ヤツらの名前を知った事とて、此方に舞い戻ってからの話だ。
 縁が多いと言っても、一方的な認知みたいなもんだよ」

ダン・レイリー :
「そして前提もそれさ。僕も知らない。
 1名には良い思い出がとんとないのは事実だがね」

灰院鐘 :

灰院鐘 :
「ああ──そういえば、"天刑府君"はそうだったね」

灰院鐘 :
「"ブラックモア"……うん、彼とはどうにもお知り合いのようだったから。ずっと気になってたんだ」

灰院鐘 :
「でもあなたは、あえて触れずにいた。……それは理解した。だけど僕にはその理由が分からない」

ダン・レイリー :
「彼方からの一方的なファンレターだよ。
 触れずにいたのではなく、触れ方も分からないものさ」

ダン・レイリー :
「僕が出向要請を受けた根幹は“天刑府君”にあるが………。
 奴───“ブラックモア”については、どういう男なのかは分かったが、どういう経緯なのかは不明だ。そして───」

ダン・レイリー :
「それについて触れる理由もない。
 僕は探偵じゃないよ、ショウ。識ることは鎮圧の絶対条件じゃない」

灰院鐘 :
「そっかあ。……」

 そういうものらしい、と素直な頷き。

灰院鐘 :
「気にならない?」

ダン・レイリー :「なるべきじゃない」

ダン・レイリー :
「………というのは、まあ僕の個人的考えだな。
 良い機会だ。逆に質問をする」

ダン・レイリー :
「敵の事情はこれこれこうだから、落としどころがあるかもしれない、先ずは話してみましょう───」

「きみのそれは、そういう期待を伴うものか?」

ダン・レイリー :
「そうでないならば、それは責任を持つためのものか? 
 何も知らず、何も考えず、触れずに片付けるのは後味が悪い?」

灰院鐘 :
「いや? だって無理だろう、そういうの」

灰院鐘 :
「そんなことが可能なら、僕以外の誰かがとっくにやってるよ」

灰院鐘 :
「そうかな。……うん、そうなのかもしれない。あんまり理由があって、やってることじゃなかったけど」

灰院鐘 :
「それをしないと……知らずにいるのは後味が悪いから、じゃなくて……なんというか……そうすることで、何かが残るんじゃないかって期待してるんだと思う」

 すこしだけ歯切れのわるい言葉。迷いがあるのではなく、自分の内面を言語化するのにひどく手間取っているような、そんな辿々しさ。

ダン・レイリー :
 ………大抵の場合、それは願望だ。確信や、事実ではない。叶わなかった時は、より傷跡になる。
 そして自らをテロリストと呼んだ人間に、どうあれ退路なんてものはない。

 だから前者でも後者でも、そう言う事に代わりはなかった、が。

「違いない。
 それが罷り通ってくれる人間の歴史は、今とどこかで違っていただろう」

ダン・レイリー :
「………だが」

ダン・レイリー :
「だがそれでも、きみはそうなんだな。
 ショウ」

ダン・レイリー :
   ・・
「その徒労を良しとする、かい?
 あるいは、それを良しとする人間を」

灰院鐘 :
「手厳しいなあ。そうやって割り切るのも、"べき"ってやつ?」

「……でも、そうだな。徒労とか、骨折り損とか。まあ、そういう類のものなんだろうね」

灰院鐘 :
「……うーん」

灰院鐘 :
「逆……かもしれない。僕はたぶん、通り過ぎたくないだけなんだ」

ダン・レイリー :「…通り過ぎたくない?」

灰院鐘 :
「うん。その、うまく言えないけど。道ばたに落ちてる石を気にしないみたいにするのは……」

「……寂しい、と思う」

灰院鐘 :
 悪人の改心を期待するのではなく、
 悪人の人生を考慮するのでもなく。
 ただ、誰かが生きていたことを尊びたいだけだと、つたない言葉が語る。

ダン・レイリー :
「成程な。
 せめて誰かが、そいつの生きていた証を覚えていてやらないと寂しい、か」 

ダン・レイリー :
「僕は“べき”と言ったが………。
 断じて意味がないことではないよ。
 無価値ではないし、無意味でもない。ただ」

ダン・レイリー :
「ただ、その墓標を作るために、自分を削ぎ落としていく………。

 死にゆく人間の祈りを受け取るっていうのは、そういうことだ」

ダン・レイリー :
 それが出来る奴は、大抵“いいやつ”だ。

 ───大抵の場合“いいやつ”は最初に死ぬ。
 今のところ、この仮説が外れてくれたことはない。つまりこれは、大局観に見せかけた個人的見解に過ぎない。

ダン・レイリー :
「そして僕ときみは違う。
 僕の答えは僕の答えであって、きみの人生の答えじゃない。

 だから、やりたいならやってもいいが………。
 もし僕に是非を聞くならば、如何なる時でも同じことを言うよ」

灰院鐘 :
「やっぱりダンさんは優しいね」

 ともすると彼我の厳格な線引きともとれる言葉を、そのように解釈する。尊重──相手の重んずるところを理解し、不用意に立ち入らず、引きずられもしない在り方だと。

灰院鐘 :「……」

灰院鐘 :
「ね、ダンさん。ひとつ立ち入ったことを聞いてもいいかな」
 まるで先の質問がそうではないかのような──彼にとって本当にそんなつもりもなかったらしい──どこか無垢で、ひどく無神経な問いかけ。

ダン・レイリー :
「言っただろう。大人だからさ。
 これでも、この作戦従事者の殆どよりは、長く生きている」

 そう見えるように振る舞うのもわけないことだ、と。
 以前の見栄の話に交えて。

ダン・レイリー :
「それで、言ってみなさい。
 だが、立ち入ったことの内容によっては、僕の話は最初に戻ってしまうかもだぞ」

灰院鐘 :天丼っていうんだってね! ……こほん。

灰院鐘 :「どうして軍人さんになったの?」

灰院鐘 :
    UGN
「ほら、僕たちは逆だろ。戦う理由よりも、戦う力が先にあった」

「レネゲイドもオーヴァードも関係なく、そうすることを選んだ理由が知りたいんだ。国のため、多くの人々のために武器を執る道を選んだ、そのわけを」

ダン・レイリー :
「………本当に立ち入った話を聞いたな」

 何故を問うことはない。
 別に隠すことではなかった。

ダン・レイリー :
「まあ、いいだろう。
 聞いた話は内緒にしてくれよ」

灰院鐘 :「うん」

ダン・レイリー :「よろしい」

ダン・レイリー :
 そう。別に勿体ぶることではない。
 振り返ってみればせいぜいが笑い話だ。

ダン・レイリー :
「僕の親父はな。
Congress
 議会のお偉いさんなのさ」

ダン・レイリー :
「母親は日本人で、海向こうの気風に馴染めなかった。繊細だったんだろう。
 親父も親父で、それを顧みることをしなかった。“押しかけておいて”っていうやつだ」

ダン・レイリー :
「それと同じ道を進む自分に腹を立てて、僕は軍人になった。

 要は、身近な人間一つも守る気がない男に、デカくてえらそうな面をされたくなかったっていうだけでね」

ダン・レイリー :
 後はまあ。

「偶然があって、死神にそっぽを向かれて。
 僕はオーヴァードになり」

ダン・レイリー :
「これまた偶然があって、そいつのことを比較的知っている人間の伝手が出来て………。
 僕は此処にいる。端的に言うとな」

ダン・レイリー :
「もし、何かの理由を期待していたなら悪いが………。

 始めはそうではないんだ。
 始めから大きなものを掲げて生きていけるほど、僕は生まれつき模範的な人間ではない」

灰院鐘 :
 ……死神にそっぽを向かれる、という表現にすこしだけ首を傾げる。意図が分からないのではない。

 ただ、どうしてか。その言わんとすることが、胸に落ちきらずに引っかかった。

灰院鐘 :
「ちょっとびっくりした。でも、同じくらい分かる気がするな」

 反感だとか、反骨心だとか。そんな、当たり前の心の動きが出発点にあったことへ、そう感想をこぼす。

 気にならないではなく、
 気になるべきじゃないと言った彼の姿を、語られた過去から垣間見るように。

灰院鐘 :
「それでも、あなたはここにいる」

 相手の言葉をなぞるように、くりかえす。

灰院鐘 :
「教えてくれてありがとう。……そっか。戦う理由は特別じゃなくたっていいし。あなたがそうだったように、変わることもあるんだ」

ダン・レイリー :
「よしてくれ。
 テンペストの連中はもう知っていることだが、
 コッチ
 UGNにはそういう軍人で通ったんだ」

 だから言いふらすなよ、と冗談交じりに。
 とはいえ………別に言われても困りはしない。
 ただ、ディアスやミナセからのからかいのネタが再燃するだけ。自分の通った道なのだ、笑い話にでもしてくれればいい。

ダン・レイリー :
 …そう。
 僕の場合は笑い話になる。

 いわゆる、若気の至りであり、振り返った時にずいぶん遠くにあるものだからだ。

ダン・レイリー :
「そうだな。僕のは概ね運が良かったのさ。
 特別でない理由を、また別の、特別でない理由に変えることがあった」

ダン・レイリー :
「その命を運んだ人間の頼みもあってね。此処にいるというわけだ。
 ………そして参考になったなら、僕からも質問を返そう。いいかい、ショウ」

灰院鐘 :
「あはは! それはもちろん、約束だし」

灰院鐘 :
 人の縁。時の運。そうしたものがダンをここへ導いた。一連の巡り合わせに意味を見出そうとするのなら、あるいは、それをこそ天命と呼ぶのだろう。

灰院鐘 :
「うん? うん、いいよ。なんでもどうぞ」

ダン・レイリー :「では。誠意に甘えよう」

ダン・レイリー :
「きみの戦う理由は………。
 先程の話で分かった」

ダン・レイリー :
 それについての議論も交わした。
 然るに先のアレはシンプルな形を持った興味本位か、疑問への答えの礎を蓄積する行いなのだろう。

 その是非、危険の多寡………発端などはさておくが。
 ショウは何の為に戦うかに関して空白な男ではなく。
 また彼は自信の有無で進むと退くを変えることのない、透明で誠実な危うさがあった。

ダン・レイリー :
    ・・・・・・・・・
 これは彼自身のための蓄積ではないように思えた。

ダン・レイリー :「誰か、その手の悩みを抱えた者でもいたのか?」

灰院鐘 :「えっ」

灰院鐘 :「…………とお」

灰院鐘 :「そういうことに……なる、なってしまうな。たしかに」むむむ、と悩む眉。

灰院鐘 :「でも、さっきの質問はそんなつもりじゃないよ。むしろ……」

灰院鐘 :「むしろ……なんだろう?」わかんないや、とぶん投げる。

ダン・レイリー :「きみの内側にある答えを覗けるなら、僕はもう少し器用に生きていけるな?」

ダン・レイリー :………そんなつもりではなかったが、そういうことになってしまう心当たりは居るらしい。

灰院鐘 :
 だよねえ、と頷きつつ。

「たぶんだけど。馴れないことが二割……三割? くらい。残りは単純に、僕があなたを知りたかったのかも」

灰院鐘 :
「ダンさんといると考えることがいっぱいだ。自分の気持ちとか、考えとか、あんまり気にしたことなかったし」

灰院鐘 :
「いちばん難しいのは頷く前に考える癖だ。あれだけはどうも、身につきそうにないや」

ダン・レイリー :
「直そうと思うなら二十歳になるまでだぞ。
 自分が固まると、直したい癖も直らない。自分の一部になるんだ」 

ダン・レイリー :
 知りたかった、というのはただの興味本位ではないだろう。
 ………どうも、本気でそれを考える性分ではない、とは言い切れないが。

 しかし“馴れない”と来たか。

ダン・レイリー :
「誰だって生まれてから死ぬまで、“自分の行いが正しい”、と………。
 何も悩まず生きていくことは難しい。正しいことをやっていたってな」

ダン・レイリー :
「勿論、気にならないならそれはそれでいい。足を止めて振り返らず、やりたいことをやろうと出来るのは若いヤツの特権だよ。
 ………そのわりにきみは人の話をよく聞きたがるが、それも“覚えておきたい”の一環だったか?」

灰院鐘 :
「自分が固まる、かあ。なんだかピンとこないけど」
 でも、あなたが言うなら、といつもの調子で頷いて。

灰院鐘 :
「……どうだろう。たぶん、それはあるけど」

灰院鐘 :
「理由はひとつじゃないし……うん、特別でもないと思う。話すのが好きだとか、もっと知りたいだとか。教えてくれるのがうれしい、もあるし。

 いろいろあって、今日はそれがちょっとだけ複雑なんだ」

灰院鐘 :
「……その、すこし話が戻るんだけど」いいかな、と問いかけるまなざし。

ダン・レイリー :
 一度だけ時計を見る。
 時間はさほど緊迫しているわけでもなかったが。

ダン・レイリー :
「構わない。聞いてみよう。
 きみのための蓄積だというならね」

灰院鐘 :
「…………」

灰院鐘 :
「正しいことをやっていても、悩みはなくならない……」

 難しげな顔が、すこしだけ俯く。

「それは……欲に依らず、信に準じても?」

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :「ああ。なくならなかった」

ダン・レイリー :
「結局そんなものだ。
 最善の方法が最善の結果を生むほど、世の中単純に出来ていない」

ダン・レイリー :
「加えてその悩みに従うことが正しいのかも分からない。
 が………そいつを減らすことは出来るし、そいつを解決するために動く事は出来る。なくすことは難しいが、減らすことはそれよりは簡単だ。よくも悪くもね」

ダン・レイリー :
「結局のところ、自分が、その過程で“悩んでも良い”と思えることをするしかないんだな。
 それさえ見つからない時の解決方法も、僕は一つしか知らない」

灰院鐘 :
「……そう。……そっか」

 答えを聞き入れる姿勢は、いつになくおとなしい。どこか諦観にも似て、わずかの失望も含まない響き。

灰院鐘 :
「…… ……」

 じっと俯いて、耳を傾ける。悩みはなくならずとも、減らせること。解決を諦めなくていいこと。

「……悩んでも、いい」

 その中で。
 もっとも難しいと思ったものを、ちいさく復唱する。

灰院鐘 :
「……分からない。そんなものがあるなんて、考えもしなかったから」

灰院鐘 :
「……見つからなかったときは、どうしたら」

ダン・レイリー :
「言っただろう。
 きみの答えはきみの答えだ。僕の言葉を転がしても分からないならば、うなずける部分だけを取り入れていってもいい」

ダン・レイリー :
 これが素面で、本心なんだ。
 嫌いではないが、この自然な無頓着さは、剛さではなく無知の砦に依るものなんだろう。
 思うに、ナタリー・ガルシアとは決して違う強さであり、難さだった。

 僕が初めに懐いた誤解も、打ち明けたならば何人かは賛同してくれるのではないか───と、さえ思う。

ダン・レイリー :
「いや。老人の思い出話めいていて少し気後れするが、そういうことで頭を悩ませた新兵が居たんだよ。
 きみとは似ても似つかないが………そいつに、僕はこういう風に言ったことがある」

ダン・レイリー :
「何処かの誰かから受け取った“良いと思った事”を他人にしてやる。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 それが本当に良い事だったなら、何時か、何処かで自分に帰って来る。
 ………正しさの証明をするやり方の一つだ」

灰院鐘 :
「……なんだか、すごく迂遠だ。だって、それまで生きてる保証なんてどこにもないし」

灰院鐘 :
「だけど……そうなればいいな。他の誰かのために荊の道を進む人が、いつか報われれば」

灰院鐘 :
「…………」

灰院鐘 :
 ずん、と一歩踏み。
 がば、と抱きつく。

ダン・レイリー :「………節度は持つんじゃなかったか?」

ダン・レイリー :
 苦笑いして受け止める。
 自らより背の高い少年の、曰く挨拶だ。

ダン・レイリー :
 ………そこにきみ自身が含まれない自然さは、後天的なものではなかった。
 だからこそ思う。

ダン・レイリー :
「だから、それまでは生きていようと思えるよ。
 未来に希望を持つなんて言葉は、その程度に無責任で、自分のためだ」

ダン・レイリー :
「だからまあ………もしも自分か、気に掛けているやつにそいつが回って来たら、拒まずにバトンを渡させてやれ。
 ニホンにあったろ、そういう言葉」

灰院鐘 :
「ケースバイケース!」最近までちょっと間違えておぼえていた、大変べんりなことば。

灰院鐘 :
ぎゅむう~~~~とあんまり遠慮のない力加減。

ダン・レイリー :
「よろしい。便利な言葉だ」

 ではイーブンということで、僕も“炎神の士師”には黙っておいて………。

ダン・レイリー :やろうかと思ったが存外遠慮がないな 落ち着きなさい

灰院鐘 :おんなのこ相手だとこわいけどダンさんは鍛えてるしきっと大丈夫! でも進さんには今度謝っておこうと思う!

ダン・レイリー :あらゆる意味でそれがいいな

灰院鐘 :ありがとうございました、と解放しつつ。

灰院鐘 :
「僕の答えに、そう意味はないんだ。悩みだって。……」

灰院鐘 :
「だけど……うん、だからこそ、かな。いろいろ勉強になった。あなたが教えてくれることは、僕からは出ない言葉ばかりだったから。
 ダンさんのこともいっぱい聞けたし、すごく充実した朝でした」

ダン・レイリー :
「よろしい。
 朝に聞く感想としては、それが一番だな」

ダン・レイリー :
「………では、これが一日の最高潮にならないように気をつけてくれ。
 戻って来た時に肩を落としていたら、僕も居た堪れなくなってしまいそうだ」

ダン・レイリー :
 ………ブリーフィングで言及はしたことを、
 敢えてこの場でもう一度言う必要は薄い。

 ロサンゼルスに限った話ではないが何処かにヤツがいる以上、この少年にかける保険には、本人より他人を使う方が効果的だ。

ダン・レイリー :
「紅さんと“雷霆精”も一緒だろ?
 ロサンゼルスをよろしくな。ショウ」

灰院鐘 :
「うん! 良い報告をして、またみんなとハグできるよう、いっぱい頑張ってくるよ」

灰院鐘 :
「もちろん! デトロイトは……勇魚くん、アトラくん、ナタリーくんだったね。よろしく伝えておいて」

「……あ! 向こうはサワーチェリーがおいしいって聞いたよ。空いた時間にでもぜひ。思い出作り推進キャンペーン中です」

 こないだ決めたんだ~と補足。

灰院鐘 :
「それじゃあまたね、ダンさん!」

 ぶんぶんと大きく腕を振って、巨体が離れていく。弾んだ足取りは、歩幅の大きさも手伝って、いつにない速さで彼を待ち合わせ場所へ運んでいく。

ダン・レイリー :
「分かった。オーヴァードには普通よりも余裕が要ることだしな………。
 “T³”とは目標ポイントが違うが、きみの勧めだとも話しておく」

 空いた時間が生まれるといいが、そこは時と場合。ケースバイケースと言うヤツだ。 

ダン・レイリー :
 またな、と軽く手を振る。
 上機嫌に見えた足取りは、命のやり取りをする人間とは思えないほど軽やかで、また前向きに思えた。

ダン・レイリー :
 その若さゆえの愚直を好ましく思う自分も。
 それを直さなかったUGNという所に思うものがある自分もいた。

 でなければ、まあ。
 それはそれ、で区分けるべき、違う組織の違う人間に。あのような話はするまい。 

ダン・レイリー :
 あの正しさの証明について言っていないことがあるとすれば………。

 それを言われた新兵から、答えの証明はまだ出ていないことか。

ダン・レイリー :
       ・・
「どうせなら、きみに人生の先輩面をしたまま終われるといいが」

ダン・レイリー :
 端末を見る。時刻は予想の範囲内。作戦となれば、気楽に構えすぎては居られない。

 テンペストの“ホワイト・スカイ”を作った、ある種の恩人………。
 その男から、征く道の矯正を告げる指示も。今のところ出ていない。大目標が同じである以上は、概ね有り得ないことだが。

ダン・レイリー :
「それは正しい。ショウ。
 俺はここにいるんだ」

ダン・レイリー :
 それが任務のためだということは、
 果たして伝わっているのやら。

 どちらでも、あまり反応は変わるまい。
 ───印象と推測に納得してから、自分も踵を返した。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

灰院鐘 :
 浮き足は弾むように。
 硬い床に音と衝撃を吸われながら。

灰院鐘 :
 ──何処かの誰かから受け取った“良いと思った事”を他人にしてやる。
 ──それが本当に良い事だったなら、何時か、何処かで自分に帰って来る。

灰院鐘 :
 青年には考えもつかなかった、ひとつのやり方。
 多くの善き人から、多くの良いことを受けとった。好ましいと思ったそれらを実践はしても、何か求めるようなことはなかった。

灰院鐘 :
「……それはそうだ。だって、失うほうが分かりやすい」

灰院鐘 :
 彼の愛した善き人も、ろくに見返りを求めなかった。それが青年には美しく、同時に痛ましく感じられた。

 だからこそ"いつか、どこかで"……そんな、言った張本人にしても無責任とする希望は、なんだか不思議で、ちょっと魅力的に思えた。

灰院鐘 :
 ……。
 …………。

灰院鐘 :
 じゃあ、もし。
 良いと思ったことをしなければ。あるいは、良いと思い込んでるだけで……そうではなかったとしたら?

灰院鐘 :
 ──ツラ見りゃわかる。
 ──手前は、いい戦奴になれそうだ。

灰院鐘 :
「…………」

 次第に緩んでいく歩調。足が止まりきる瞬間、青年は、ふと硝子に映る己の姿を見た。

灰院鐘 :
「────」

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 イベントシーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ダン・レイリー :…さて。

ダン・レイリー :
 改めて思うところがあってな。
「ヘルムート・ヘス」にロイスを取得する。

ダン・レイリー :内容は〇P信頼/N隔意。

GM :ほう!最後のロイスを!
いいでしょう!

ダン・レイリー :ああ。柔軟な対応は出来なくなるが………ロイスの意味を考えると、適任は此処でな。

GM :ふむふむ……納得ですな、確かに。なるほどぉ
ではロイス欄に記入をお願いします!

ダン・レイリー :了解したよ。

灰院鐘 :では僕はダンさんに……

灰院鐘 :なんと! もう取っています!

GM :既に取っていた……!!ロイスの二度漬けは禁止やでえ!

ダン・レイリー :きみなりに大切にしてくれると嬉しい

灰院鐘 :ぎゅうううううう~~~~~~っっっっ

ダン・レイリー :なるほどベターな解答だ(受け止める)

GM :熱い信頼関係だぁ

GM :では鐘さんの方は変更ナシ!了解ですわよお




【Interlude⑤】

SYSTEM :
イベントシーンを開始します。
イベントを展開しています……

SYSTEM :【Interlude⑤】

登場PC: Dan
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ナタリーとアトラが席を離れた同刻。
 ダン・レイリーはホテルの個室を遣って決戦前の準備に入っていた。
 ことに一度実戦を経て、二度に渡りリザレクトに至るまでの損傷を受けている。装備の不調がないかの確認は外せないだろう。
 勿論体調面でも休息が必要であった。精神的にも肉体的にも、コンディションを整えるだけの十分な時間がある。

SYSTEM :
 ダンが、その折に会話を交わそうとした故は何故であったのか。
 勇魚=アルカンシエルは何をしているのか。周辺の警戒を敷いているか、或いは武器を用いないぶん今は体を休めているのだろうか。
 呼び出せば、粛々とした態度であちらからダンの部屋までやってくるだろう。

ダン・レイリー :
 O-tec社の本社ビルを根城とする“ラクシャーサ”を残すのみとなった現状に対し、
 彼我の戦力および収集された情報から得た脅威を換算した本部からの通達は───現有戦力での突撃。

 その攻略日程と作戦が定まった以上は、尽くせるだけの人事を尽くす必要があった。

ダン・レイリー :
 配備する人員のコンディション調整、UGNの本部の椅子を借りる形で詰めているミナセ等とのバックアップの確認、敵戦力の仮定から来るシミュレーション………時間は一刻を争うほどでないが、さりとて無限ではない。

ダン・レイリー :

 ───このガンビットも、金喰い虫の尻尾だ。

 テンペストはオーヴァードという不確定要素を受け入れたことで生まれる、オーバーテクノロジーの塊を運用するモルモット部隊だ。当然ながらコレも、訓練では数え切れぬほどこなし、対テロ作戦では秘密裏に投入されたこともあったが………。
.   Overed
 自らが超人というものになったことを自覚したころからの付き合い、というわけでなかった。それはどちらかというと、此方のシンドローム解析や研究に併せ、今なお改良を繰り返している“ストームベアラー”の方だ。

 尤も整備にいちいち専属のメカマンの手を借り、それでいて用途が間違いなく“消耗品”である兵器など、正規採用されて7年も経過していれば、先ず間違いなく予算に今よりも凄惨な数字が刻まれていただろうが───割愛する。

ダン・レイリー :
 これらの整備と同様、自己の休息も必要だった。そのための小休止と同時に、得た情報の整理を行う必要も、同様に。
 敵対者へ何故を問うことは愚行であろうが、敵対者の何故を識ることは愚考でもない。

 ………個人ではどうしても視点に穴が生まれるという難点を見過ごすわけにも行かなかったが。

ダン・レイリー :
「(“T³”とのコンタクトは………)」

 ベターではあるが、いい顔はするまい。止めておく。
 僕のそれは“ラクシャーサ”を必ず阻止するためのものではない。必要なら恨まれてやるが、今はそういう時期でもない。

ダン・レイリー :
 また、ナタリーから意見を聞くというのも筋が通らない。彼女にある種の賢明さがあることは事実だが、彼女に期待している方面の知識は、期待するだけ酷だろう。

 となると、ラクシャーサの戦力仮想、今後の展望における餅屋とは消去法で一人だけになる。

ダン・レイリー :
 ………………。
 僅かな沈黙と、体感数十秒の思考があった。

ダン・レイリー :
 此方の部屋に呼び出すのは、“炎神の士師”。
 UGN本部エージェント、遺産継承者という言葉に、あの夜真っ先にリアクションと接点を持った人物だ。

ダン・レイリー :
 だから、“其方の見解を借りたい”という、端末を介した“炎神の士師”へのメッセージと事実に嘘はなかった。そこに関しては。

SYSTEM :
 ダンが端末にメッセージを入力、送信して少し間をおいて。

  了解
 『Copy』
 
 と短いメッセージが返ってきた。
 どうやらまだ就寝に入ってはいなかったようだ。

SYSTEM :
 元々、就寝時刻を決めた時間に決めた分だけ休息できる彼女は、予め伝えた時間よりは眠らないと聞いていた。最近になってからは、何か別に報告を受けてから就寝に入るよう習慣づけているようだが。
 ……どうあれ。それから数分後、あなたの部屋の戸を叩く音と。

「失礼します、大尉」

 と、聞き覚えのある凛とした少女の声が戸の奥から響いた。
 

ダン・レイリー :
「どうぞ。入ってくれ」

 任務中と変わらない凛とした声に応じる。
 あらかじめ伝えられていた時間にはまだ早い頃合いだが、長引かせるわけにも行くまいか。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 声に応じるように、彼女は一声置いて戸を開ける。
 勇魚は毅然とした振る舞いで部屋の中に入り、敬礼で応じる。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「"炎神の士師"罷り越しました、レイリー大尉。
 作戦に関して見解を聞きたい、と伺いましたが」

ダン・レイリー :
「楽にしてくれていい。
 先の制圧作戦ではご苦労だった」

 軽く頷く。
 実際、消去法で今見解を伺えるのは彼女くらいだ。

 尤も都合が良く効率の良いご意見番は本部か、ルイジアナでBullshitの一つや二つを吐いているところだろうし、その二人と僕は、今欲しい知識の分野については確実に同レベルだ。

ダン・レイリー :
「ああ。“ラクシャーサ”のことだ。
 初めての邂逅の折、彼女は遺産継承者だと聞いた」

ダン・レイリー :
「此方はその遺産というのに対しては門外漢でな。
 乗り込むにあたって、疑惑と不確定要素を排除したいが………その分野の知識に当たりがあるのは、デトロイトの担当人員ではきみだけだったはずだ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「承知しました。UGN遺物探索局の、現地で直接検めた人員の意見を聞きたい。そう解釈します。
 とはいえ……
 私が関知したのは、それが存在する事のみ。遺物同士が強力な力を発した際の共振が、こちらにも届いたに過ぎない。
 遺物と一括りにしたところで、その効力は様々です。
 何が由来となった……いや、何の由来となったか、が理解らねば、私からも何とも言えません」
 
 それでもよろしければ、と前置きを置く。

ダン・レイリー :
「ああ、その認識で良い。
 僕もこいつに関しては、本当に未知の領域だ。

 どうも関わっていた数だけはあったようだが、それらがそうだと分かったのもつい最近でな」

ダン・レイリー :
 単純な話、遺産というのの知識は、その性能を示すカテゴリ、概念を示すタイプで区分けする………という程度だ。

 なんとも言えない、という場合でも、具体例を見て来た人間の意見は違って来るだろう。

ダン・レイリー :
「遺産には代償があると聞いている。多くは、拭うことの出来ない規則的なものと。
 ………だがラクシャーサの言動やスタンスから見る傾向はレネゲイドの衝動に依るものが殆どで、これによるオンリーワンのものを感じ取ることは出来なかった」

 唯一気にかかることと言えば………。

 予測されている衝動と、振る舞いがまるで違ったということくらいか。

ダン・レイリー :
「推察は二つある。

 何らかの理由で遺産を有していても“遺産がそいつを択ばない”場合………。
 または、その遺産が対象の人格と望みを無意識に誘導する場合」

ダン・レイリー :
「奴の能力はエグザイル・シンドロームだけの代物とは思えない。“T³”の報告ではこれに加えて、希少性の高いモルフェウス系列に似た能力があったが………それを差し引いても妙なところがある」

ダン・レイリー :
「そこで未知のXに当てはまるものが遺産じゃないかと考えたが………。
 どちらかのケースに前例、類似例の覚えはなかったか?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……はい、遺産に関する理解も概ねその認識で正しい。
 大なり小なり、遺産には代償が付きまとう。それには、様々なパターンがあります。
 既に共有された情報では、元 天刑のカテゴリ:鬼斬りの古太刀などは、ジャームに対する敵対傾向が働くというように。
 "ラクシャーサ"が、それによって誘導されてあの衝動に変じた可能性は確かにある。前例と言うなら、直近はそれに相当するかと思います」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……私の知己にも一人、そのタイプの遺物と契約している人間がいます。
 カテゴリ:誓約の魔眼……。
 それは、人に不信感という形で衝動に干渉すると言います」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「こうした代償の形式は、何より当人に自覚が出ないことが多い。加えて個人差もあるため、潜伏して進んでいるのか、或いは抑え込めているのか……わかることの方が少ない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ただ、ラクシャーサに関してはその兆候は見られないように思えます。
 ……根拠、と呼べるものを提示しにくい、直感的な意見になりますが」

ダン・レイリー :
「絶対的な力は人を孤独にする、か………」

 しかもそれに自覚症状さえ持てないことまであるのが性質が悪い。
 末路は暴君か、あるいは独善的な超越者だ。

「が、ただの『個人の異常・豹変』として処理される状態でもないのだろう?
 きみの友人にとっては、たぶん幸いな話だ」

ダン・レイリー :
「………いや、良い。
 正体を断定しづらい状態だ。直感的な意見の方がいまは重要だよ。

 その線については、僕の空想か、願望だったということに思おう」

ダン・レイリー :
「実際………。
 レネゲイドが宿主に訴えかけるものが、生まれてから死ぬまで変わらないと決まったわけじゃない」

 有り得ないことは有り得ない。
 天地をひっくり返すようなことを起こす側にいるのが、
.  Overed
 我々超人なのだと教わって来たからだ。

ダン・レイリー :
 ………しかし、そうか。知己か………。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……はい。ある程度斟酌されるだけ、未だその余地があるだけ良い。
 それに、まあ」

ダン・レイリー :「…ン…それに?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あまり心配するだけ損したことも多いですから。彼女については」

 珍しく何とも言えなそうな、"ラフメタル"との折に見せる表情を浮かべて

ダン・レイリー :「………………。そうか。息災に越したことはない、くらいにしておくのがいいのかもな」 苦笑いで返す。なかなか癖の強い知己のようだ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……失礼、脱線しました」

 咳払い一つ残して、勇魚は話を続ける。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「先ほど伺った話。どちらかというと、前者が近いかもしれません。
 遺産というものは、そもそも『契約者がいないと発動できない』という訳ではない。これは例外的なものでもなく、普遍的な現象です」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「遺産そのものを所持するか、その影響下にあることで、疑似的に遺産の能力を行使できる状態になる場合もある、ということです。
 ドライバ
 契約者がいる場合といない場合。やはりこれも個人差がありますが、多くの場合は一般的な契約関係より強い負荷に晒されるものです」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「これなら、衝動が変容するだけの干渉を受けたとしても納得がいく。その程度の程は不明ですが
 "T³"への執着を考えるとまだ治療の余地はある……つまり、ジャームでない可能性が高いと思います」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ジャームであったならば、"T³"と接触した段階で早々に力づくで捕らえ、洗脳処置でも施していたでしょうから」

 ジャームのそれは、『執着』である。それを得るための手段は問わない。

ダン・レイリー :
「元よりシャンバラは、遺産周りの技術に長けたところがあるようだからな。
 契約を交わし、その全貌を引き出す間柄でなくともいいわけか」

「そもそも件の“匣”とやら………先に戦った機甲猟兵のような、純粋なエネルギー機関として使っているだけというのもある」

ダン・レイリー :
「あくまで可能性の一つだ………断定はし切れないが、そういう方向性も“ある”という程度には出来るな」

 ………そして。

「ああ。
 そもそもヤツが闘争衝動のジャームならば、あの場でまだるっこしい手は打たん。
 ジャームは直線的だ。回りくどい動きをするには、例外的な何かを果たせる中継役がないとおかしい」

ダン・レイリー :
 ………だから酌量の余地があるのかと言われれば、これは僕の口から答えない話だ。
 そもそも必要性を感じないとも言うが。

ダン・レイリー :
「………となれば、奴の能力が両シンドロームの延長線という線も捨てきれなくなるが。

 難しいものだな。直接戦闘のアテはあるとはいえ………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。件の『キューブ』に関してもその一種ですね。
 量産と加工があの程度で済んでいるならば、未だ良いのですが」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「遺産とは……概して、それ一つで世界を滅ぼしうるだけの力を持つものです。
               スケール
 あれは模造品を量産する……人の規格に留めているからアレで済んでいるに過ぎない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ラクシャーサの有する遺物は、私の見立てでは紛れもない実物。
 正直なところ、とてもシャンバラが御しきれるものか怪しい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ジャーム化していないならば、そうなる前に検挙するに限ります。どのような望みで動いているとしても」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……彼女の能力に関しては、あまり考えたくはありませんが」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
      ・・・・・・・・・・・・・
「そもそも、まだ力の一端も遣っていない。
 という可能性も、あるかもわからない」

ダン・レイリー :「………」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 単純な話、「使っていないなら気付くも何もない」。
 今までの闘いで彼女が遣ってきたのは、遺産というブースター……向上した基礎能力を遣ってきただけで、その本質に関しては今まで敢えて使わず温存してきた。

ダン・レイリー :
「あのワーディング・エフェクトも、神出鬼没の機動性能も、“雷霆精”から伝え聞いた白兵戦能力も。
   ・・・
 全て見せ札であって、伏せ札があるという可能性か」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「恐らくは。
 ……先の仮説を延長して話すなら。反動が厳しいのかもしれません」

 隠しているだけか。或いは、その反動が厳しいから早々に使うことはしないのか。
 仮説に仮説を重ねることはノイズになり得るが、遺物処理においてこの場の誰より卓越した勇魚の読みだ。まったくの的外れにはならないだろう。

ダン・レイリー :
「………能力について説明を行ったのは、
 それがすべてだと見せかけるためのもの」

「周知の事実である好戦性にも関わらず、
 積極的な襲撃を行わないのは、全力に何らかのリスクがあるが故のこと」

 一応、全ての筋は通る。
 示唆していない第三の特性。遺産に関わる伏せ札だ。

ダン・レイリー :
「きみの言うように、遺産の本物が………。
 人が、世界を滅ぼす爆弾のスイッチを手に取っているようなものだとするならば。

 連中は、確かに嵐だ。
 量産と加工が、現在進行形で進んでいないはずがないからな」

ダン・レイリー :
 ………流れが生まれる前に食い止めないといけなかったんだがな。本来は。
 何時までも、絵空事の最善を呟いても仕様がない。

ダン・レイリー :
「参考になったよ、“炎神の士師”。
 少なくともソレは、備えておく意義があると見る」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「本来の遺産の効力、その片鱗が何処かに見えているとするならば」

 少し顎に手を添えて一考するように間をおいて……。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
       プレッシャー
「やはり、件の 重 圧 、あそこが一番怪しい。
  リスク
 『縛り』によって話された内容に虚偽はないにしろ、違和感があったのはあそこです。
 本来、単なるワーディングにそれだけの付加効果を持たせるのは難しい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「絲を展開し、それが絶えず圏内のレネゲイドに干渉するとしても……その中の全員に能力の制御を掛けるのは、現実的ではない。ましてや、それを各所に配置して展開するなど」

 であれば、そこに彼女が契約、ないし間借りしている能力の一端がある。そう考える方が相応しい

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 体を繊維状にし、更に期中の物質と融合して無限に射程を伸ばす。それ自体はいい。
 彼女が上級エージェントに匹敵する能力を持つというならば、考えうるものだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 であればその先。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 接触しているもののレネゲイド。そこに干渉を掛けるもの、であるのかもしれない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。
 だからこそ、回収する必要がある」

 古い時代が残した、今の時代に繋がる遺産。
 それは扱うにふさわしい者。それを御するにふさわしい者の手で、封じられるべき。
 シ ー ラ ー
  封印者 たる勇魚はそう語り、少し間をおいて物憂げな表情で続ける。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「本当は……そんな力は、存在しない方がいいのかもしれませんが」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「どうあれ、曖昧な知見ですが、判断材料になれば幸いです。
 ……他に何か用向きはありますか。私の睡眠時間は『自動体温』によって極小に抑えられますので、大尉の休息の間にでもタスクがあれば請け負いますが」
 

ダン・レイリー :
「そうだな。
 ワーディング・エフェクトは元来、レネゲイドの散布以上の効果を持たない。
 これが同じオーヴァードを抑圧するなんて聞いたこともない………」

 ………それこそ、有り得ないは有り得ない、ということかもしれないが。
 此処の違和感のとっかかりになるものに、心当たりがないではなかった。

ダン・レイリー : 
  ・・・
「(あの女だ)」

 自らの手の傷を、じっと見つめていた、ワーディングをキャンセルしたあの女。
 ………幹部ではない6人目。
 思えばこれも、当たり前の法則を覆してしまう存在だったと記憶している。

ダン・レイリー :
 ………尤もヤツのことより、今はラクシャーサのことだ。
 それについても、ほぼ結論と呼べるものは出切っている。

 一定の意見を交わし終えた自分に、発見と見落としの自覚が出来たことは、無意味ではないだろう。少なくとも己にとっては。

「ああ、助かったよ。タスク自体はもう無い。
 何時も決まった就寝時間ならば、崩さないに越したこともないからな。その手は便利だからと頼るもんでもない」

 用向きが終わったと判断した彼女の言葉に“ご苦労”と返すのが、テンペストのホワイト・スカイの領分であった。

ダン・レイリー :
「………それとな」

「力そのものは悪ではないよ、“炎神の士師”」

ダン・レイリー :
「人間の歴史の別れ目になったのは、何時もその危険を含んだものばかりだ。
 それを持つ人間の存在が罪だったら、俺達軍人は真っ先に墓に入らねばならない」

ダン・レイリー :
「………オーヴァードなんていうのも、要は何十年か立てば追い付くものの先取りだ。

 出過ぎた真似を此方からするなら、その爆弾のスイッチをきみが気に病むことじゃない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……はい」

 目を伏せて一拍置く。何か否定の言葉を継ごうとしていた様子であったが、それは先に口にしたように、同じ立場にいるダン・レイリーや同胞への侮蔑となる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……最後に一つ、伺っても」

ダン・レイリー :「ン………構わないが」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「狡兎死して走狗烹らる、と言います。
 私たちも、軍人も、変わらず……いつの世も。
 やがて時が経ち、時代が追い付いた時。そこに平和があったとしても、我々の居場所が必ずしもあるとは限らない」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「寧ろ……そうした場合に決まって、力持つものが排斥されるもの。
 すべてがすべて、そうでなかったとしても」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「そうした時が来た時のことを。
 軍人であるあなたの所感を、聞かせていただけないでしょうか」

 それは……いつもは事務的で迷いなき勇魚にしては珍しい問いかけだった。
 平和が訪れた時、そこに最も不要なのは平和をもたらした戦士であるということ。それは、時として本人の意向に関わらず、死より惨めな有様を晒すことになるであろうこと。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 何も観念的なことではない。老兵は死なず、ただ消え去るのみ……そうでなければならない。
 武力を以て平定したものがそのまま玉座に就けば、きまって大量虐殺と圧政を敷く暴君に成り下がろう。歴史が、それを証明している。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 命令に従い殺人を犯し、心に傷を負い、祖国に帰って尚も彼らは冷遇され続ける。
 やがて戦争の余熱を求めて、戦争の犬になり果てるものとて、決していない訳ではない。

ダン・レイリー :
「………兵士の居場所は戦場にしかないのかどうか、か?」

ダン・レイリー :
 出過ぎた杭は打たれる、でもいい。
 人間は安心を求める生き物だが、未知を恐れる。

 中世期の魔女狩りがいい例だ。未知を恐れ、悪果には悪因がなければ気が済まず、決まって“目立つ”ものはいい的になる。
 ………オーヴァードがそうでないという保障はないだろう。

ダン・レイリー :
 争いを終わらせるため、眼前の敵を倒すのが兵士のさだめだ。
 だがそれを終えた時、彼らが日常社会の秩序に受け入れられる保証はない。

 人々の恐怖の対象となり、疎外されていく───銃を持ち人を殺すことに慣れ過ぎた、戦場で多くを守って来た英雄が、何気ない生活の一幕にて醜態を晒す事なんて、ないわけでもない。

ダン・レイリー :
「そんな時が何時か来る。そのために戦う。
 ………だが、そんな時が来たのなら、か」

ダン・レイリー :
「考えたことはある。
 正直に言うと………一時期はそれどころじゃなかったんで、敢えて考えないようにしていたんだ」

ダン・レイリー :
 たぶん今回は、実例もいる。

 その軽口はテンペストの連中になら新兵だろうと平然とぶちまけていたが、今は憚られた。

ダン・レイリー :
「対岸は対岸と割り切って、どんなきらびやかさにも遠ざかったまま、世捨て人めいて生きていくか………」

 一人の顔を浮かべる。
 そうならないという保障はなく、UGNというのがそれを強要していないかと疑いかけた原因の顔だ。

ダン・レイリー :
「一度は捨てた社会に、また受け入れられるようにしていくか………。
 ………もう一つあるにはあるが、それはたぶん、次の戦争を生むだろうな」

ダン・レイリー :
「その答えを識ることと実践することの意味は違う。
 だから、一先ず俺の所感だけ話すよ。それでいいか」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 こくん、と、やや物憂げな表情で首肯する。

ダン・レイリー :
「帰るところに帰る」

ダン・レイリー :
「俺にはそこまで好きでない父がいて、その父と不仲な母もいる。

 もしもそんな時が来たら、銃を置いて………連中が俺を受け入れるなら、そこに帰る。
 同じように銃を置いた奴の不平不満でも聞きながら、銃の撃ち方も知らない奴の為に出来ることを捜すよ。見栄で始めた仕事だから、見栄で終わりたい」

ダン・レイリー :
「………だがもし、そうでないなら………」

ダン・レイリー :
 今の言葉は、戦場に生きる兵士を社会が受け入れないことを前提にした言葉だ。

 不完全で不平等な秩序でも、そこには何十億の人間が乗っていて、それを守ったんだから守り通すというような………そうなるまでの多くの兵士が願って来た(おそらくは実行できなかったものの方が多い)話に過ぎない。

ダン・レイリー :
「………受け入れてもらう先を探す。
 駆けずり回って、それでも見つからないならばまあ、作るしかないだろう。
 それが尖って、着陸するところを通り過ぎてしまうと、ただの次の火種になるのが難しい話だ」

ダン・レイリー :
「………。きみのいるUGNというのは、
Overed
 超人の居所なんだろう? 兵士とは違うが、概ね社会の隣人になれるか試さねばならない者らの集まりだ」

ダン・レイリー :
「軍人だってそんなもんだよ。社会の隣人に戻れるか分からない。
 そういう末路になりかねない人間が集まった場所なんだ。少しずつでも、一人ずつでも、社会に馴染む着陸点を作っていくしかない。
 人間にそういう未来が作っていけるのだと、信じられるうちは信じるさ。

 好きで守ったなら………それと向き合えるようにもしなくちゃな」

ダン・レイリー :
「………悪いな。後半は偉そうなことを言った。
 実践したわけでも、その成り立ちを知っているわけでもないのにな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……いえ、参考になります」

 反芻するように、静かに胸に収めるように両眼を閉じる。
 帰るべき場所、帰るべき場所を探すこと。UGNとは本来、そうした逸脱者が世に浸透していけるように作り出されたものだった。
 ……向き合うとは、それと向き合う事に他ならないのだろう。自分たちが守った、あまりに広い世界という砂漠の中で。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 その中でどうやって降り立つかを、探していく他にない。

「私には過去がありません。家族もまた。きっとそんな時が来れば、居場所を捜す側の人間となるでしょう」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……それでも、自分の嗣業を信じて、捜し続けるしかない。
 そうかもしれません」

 自分の手で護ったもの。手を差し伸べたものと向き合い、傷付いてでもそこへたどり着くまで、きっと戦士の闘いが終わることはないのだろう。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……長々失礼しました。今は、目の前の敵のことに集中するべきであろう所を。
 ですが、少しだけ心のしこりが取れた気がします」

ダン・レイリー :
「………いや。
 兵士だって人間なんだ。そういうのも、言ってみるものさ」

ダン・レイリー :
 俺には言うべきでない言葉と、言うべき言葉があった。
 それを整理する姿はおくびにも出さない。

ダン・レイリー :
「俺だって、せいぜい四半世紀を少し飛び越える程度の人生経験だが………。
 その中で、信じられるものは見つけて来たし、この作戦のほとんどの奴より生きてきたつもりだ」

「そいつが参考になるなら、気分はいい。
 その時に、振り返るのか、隣を見るのか、きみに贅沢な悩みが出来るといいな」

ダン・レイリー :
 知己の───恐らくは友人も。
 彼女を気に掛ける人間もいると聞いた。

 そして彼女の師は、それを捜す彼女を否定することはないだろう。直感的な推測だが。

「探すことが困難だったとしても………探すまでの支えは、そう難しい事でもないはずだしな」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……そうですね。
 リリア教官も、アリアも、あの場で訓練を積んできた同期たちも。"ラフメタル"もいます」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 漠然とした不安が、拭いきれた訳ではないのだろう。彼女としては、もう一点自分に関して語るべきでないと口を噤んだ部分もある。
 だが、それぞれの顔を思い出せば、勇魚は誇り高い気持ちになれた。

「けれど、不思議です。普段は臨戦状態でも自分のことを話すことはないのですが、少し口調が弾んでしまったようだ」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ありがとうございました、大尉。
 明日の作戦も、よろしくお願いします」

 言いつつ、敬礼を取る。調子は入室した時と同じように戻ったようだ。
 改めて用向きが無ければ、ダンの指示で彼女は部屋から去るだろう。
 来るべき、血戦に備えて。

ダン・レイリー :
「それを自覚している限りは、お互いに問題ないさ。
.Overed
 超人のメンタルケアの話なんていうのは、たぶん俺がするよりずっと聞かされているはずだからな」

ダン・レイリー :
 ・・・・・・・・・
 その教官にとっても、だ。
 尤もこれは俺が口うるさく言うもんじゃないから言わないが。

ダン・レイリー :
 力があり、責務がある。そんなヤツは………。
 それが巨きければ巨きいほど、独りになりやすい。
 孤独は、そのオーヴァードにとって、どうにも強い毒だ。
 これに打ち克ったやつを、今のところはまだ見ていない。

 ………“炎神の士師”に苦難はあっても、その心配はないだろう。今のところは、そう見えた。

ダン・レイリー :
「そういうもんさ。
 ………俺のことが、通り道で見つけた標になったならいい。その調子で、きみの隣人にも手を差し伸べ合ってやってくれ」

ダン・レイリー :
「では、おやすみ、“炎神の士師”。
 明日は長くなるが、そう簡単に死んでやれん理由も増えた。やってやらねば、だ」

ダン・レイリー :
 ………それを聞き終えて、俺は敬礼と共に戻る彼女を見送る。
 
 UGNのエージェント………守るべきものを守ると教わって来たのだろうその十代前半の矮躯に、友と呼べる人間がいることは、恐らく安堵していいものだったのだろう。 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。おやすみなさい、レイリー大尉」

 勇魚は静かに頷いて、踵を返し部屋を出た。
 その足取りに迷いの影は見られない。或いは、もっと根深いものがあったとて、それに尾を引かれる様子はまだないようだった。

SYSTEM :
 未来への不安に思いを馳せた勇魚も、それに応じたダンも。
 すべて、明日の任務を成功させねば日の目を見ることはない。蜘蛛糸に絡め捕られ、一人の女の欲望のために消費されかけたこの街を護らねば、待つのは日常の崩落だけである。

 故、去っていく勇魚は振り返らない。戦士たちは静かに血戦のため、今はその身を休める。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───




【MIDDLE ④ - 戦闘-機甲猟兵部隊】

SYSTEM :
【MIDDLE ④ - 戦闘-機甲猟兵部隊】

登場PC: Natalie , Dan
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 デトロイト、ハートプラザ。
 デトロイト川を臨む広場であり、芸術の街でもあるデトロイトの様々なオブジェが此処には飾られている。
 アトラが引き続きこちらでの調査を続ける中、ナタリーとダンの一行は街中を神出鬼没に現れるラクシャーサ、およびに彼女の尖兵の出方を伺うために街を見回っていた。

SYSTEM :
 何も起きなければ周囲のレネゲイドの気配をそれとなく探りながら街中を見て回ればよいだけ。
 二人が調査に向かっていないのは、或いは先週に前衛を任せたナタリーに、戦闘による疲労を癒すためだったかもしれない。
 少なくともこのハートプラザの公園の中心、噴水の近辺まで来て、敵の気配は感じられない様子だった

ナタリー・ガルシア :「ここは案外、平和ですわね」

そう言の葉にのせながらも、その表情はどこか硬い。周囲から風で音を拾って、どんな僅かな痕跡も見逃さないように張り詰めていてはそれもやむなしというところだろう。

ダン・レイリー :
 敵影、なし。
 当たり前だが、ラクシャーサの気配もなし。

 結論───変わらぬ風景だ。

ダン・レイリー :
「意外と、何処もこんなものだ」

 あるいは、それを維持する人間の努力の成果と言ってもいいか。

ダン・レイリー :
「気を抜くなとは言わないが、張り詰め過ぎても保たない。
 ───“T³”からラクシャーサの特性は聞いたな? 張り詰め過ぎるのも却って思うツボだよ」

ダン・レイリー :
 まあ、だからと言って噴水であれこれとはしゃぐ年でも間柄でもないが。
 
 ………実際、ロサンゼルスの時と違って、目に見えた作戦行動を起こしている痕跡はなかった。良くも悪くも均衡を水面下で続けているという、このデトロイトならではのものだ。

ナタリー・ガルシア :「ええ、これでも十分気を抜いていますわ―― 一週間だって毎日お散歩できますわよ」

その言葉に嘘はない。肉体と精神、その両方の面において、毎日哨戒を行ったとしてもナタリー・ガルシアは堪えない。

そうなるように、そうあれるように積み上げてきたものがある。

だから、その言葉に嘘はない。
ナタリー自身も、それが虚勢ではないと自覚している。

ナタリー・ガルシア :「ですから、お休みは全て解決した後に――それこそ、バカンスでもどうでしょうか?」

自分よりも遥かに忙しいであろう二人に、笑顔を向ける。そこでなら、この二人も、もう少し本心から話せるのかもしれない――話して欲しい、などと思いながら。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「私のような人間の日常はこちらです」

 そこに、腕を組んだまま勇魚は答える。
 ナタリーとダンが同伴するのは先の戦闘での相性面もあるが、単独でも行動できる彼女は別ルートの巡回路を通っていたのだろう。

「だから、"ラフメタル"は、束の間任務の中で触れた景色を大切にしまうのでしょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「きっとそのバカンスには私は同席出来ない。
 興味の程も然程ありません。
 あなたが欲するなら吝かではありませんが、それを言うなら気を張りすぎないように、と我々の要求も呑んでほしいものです」

ダン・レイリー :
「一週間も同じ場所の散歩などは、日課になるか飽きが来るかのどちらかだな。
 そうするなら担当をその都度変えてやらないと、話の種も尽きるだろう」

ダン・レイリー :
 ………やはりというべき応答だが、“炎神の士師”───つい先ほどまで別ルートの巡回に回っていた───の回答は、UGNのエージェント。
 対岸に見える風景がどれほど美しくても、その内側に入ることはしない。水と油ほど決定的に相容れないかは議論の余地があるが。

「輪の外側か。
 ショウ………“ラフメタル”とも話したが、きみたちはそうだな」

ダン・レイリー :「まあ………どっちみち、卵が孵る前に雛を数えるもんじゃないが。考えること自体は悪くない」

ダン・レイリー :
「それにその“ラフメタル”は、存外そういうのを喜ぶ性質だとは思うがね。
 環の外側を良しとしても、そこで環を作りたがらないやつじゃないのは、きみの方が知っているんじゃないか」 

ナタリー・ガルシア :「ノリが悪いですわ……そういうお年頃なのでしょうか」

孤高に憧れるお年頃、そういうものがあると聞く

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……まあ、そうですね。彼は作った環の中にいるのも好む方でした」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「それに年齢の問題でもありません。
 どういう意味の発言かは聞かないでおきます」

ダン・レイリー :
「だろう。
 ………オーヴァードというのが強力な兵士でも、普通の兵士より余暇の欲しがりなことに代わりはない。
 ナタリーの発言はそういう意味じゃ間違っていない」

ダン・レイリー :ノリの良い悪いはさておく。この話を蒸し返すと徹底したNOが帰って来るだろう。

ナタリー・ガルシア :「そうですわそうですわ!それに、バカンスに行ったことはあるんですの?まさか、経験もしていないことを切って捨てているわけではありませんわよね?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「海外出張なら幾らでもしてきました。北欧、ペルー、カシミール、パキスタン、中国、日本
 私にはその束の間の休息で十分」

ナタリー・ガルシア :「…………」

ダン・レイリー :さては泣き落としか…?

ナタリー・ガルシア :シッ…ばれてしまいますわ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………」
 助けを求めるような目をダンに向ける

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
 ………ことこの面に関しては、存外ショウより彼女の方が固い───あるいは、難いところがあるな。

ダン・レイリー :
「デトロイトでの作戦が終了次第、その束の間の休息の一つも取るよ。UGNでどうなのかは知らないが、超人だって無敵じゃないんだ。休みは要る。
 気が変わっていなければナタリーも、その時に付き合ってやれ」

ダン・レイリー :「…因みに何故チョイスがバカンスなんだ?」

ナタリー・ガルシア :「楽しいものですから!バカンスは」

ダン・レイリー :
「そうか………」 

 まあ、彼女なりの気遣いなのだろうが。

ダン・レイリー :どうでもいいがニホンのオキナワでは現地の人間ほど海に行きたがらなかった

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…………わかりました。
 どうあれ私も、彼に言われたこともあります」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「ただ、そう仰られたところで私にアテがある訳でもありません。
 私などを連れても退屈させるだけになると思いますが」

ナタリー・ガルシア :「……私のプロデュース力が試されていますわね!」

ダン・レイリー :「ちなみに経験と戦績は?」

ナタリー・ガルシア :「任せてくださいまし!抱腹絶倒!驚天動地!大慶至極!そんなバカンスを約束しましょう、ええ……!!」

ナタリー・ガルシア :「……戦績は一度も敗北したことはございませんわ、ええ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「成程」

ダン・レイリー :「そこは無敗の腕前を楽しみにしてやれ、“炎神の士師”」 

ダン・レイリー :
 ………その風景を見ながら、ふと思う。
 
 ロサンゼルスの時はもう少し大人しかった辺りを見ると、彼女から見て“それ”が必要らしいというのは理解出来た。

 自分のためか、僕や炎神の士師のためかは測りかねるが。こっちはこっちで、よく人を見る。

ダン・レイリー :
 ………そこのところ、“教官”の背なのだろう。この二人については。

SYSTEM :
 降って湧いた思い付き、しかし遠くない先の話。
 アテのないバカンスの話に花を咲かせようとしていた時に、それは起こった。

????? :
「ふうん、アテのない旅? 行き当たりばったり、風の向くまま気の向くまま……かあ。
 いいね、私も昔よくしたよ。キミ達程大所帯でも、和やかなモノでもなかったけどね」

SYSTEM :
【Information】
エネミーエフェクト《神出鬼没》が発動しました。
使用者:"ラクシャーサ"
対象者:自身
効果:
 好きなタイミングでシーンを出入りすることが出来る。
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「!」

 女の声に聞き覚えの無いものは、この場にはいない。
 ごく自然な雰囲気で語り掛けてきた女は、全く気配を感じさせないままモニュメントの上に現れ、悠々と座ってそちらを見下ろしている。

ダン・レイリー :
「結構な事だ。
 それで択んだ止まり木が悪趣味でないなら、もう少し話せたかもな」

ダン・レイリー :
 ………お喋りはこの辺りでいいだろう。
 軽くアイコンタクトのち、そのモニュメントの上に視線をやる。
 オンオフの切り替えは疎かに出来ないが、今は前者だ。

ダン・レイリー :
 それにこれだけ便利な脚だ。
 目の前にいること自体が、見せ札の可能性もあるが………。

ナタリー・ガルシア :「ええ、まったくです――どうせなら、私達と一緒にバカンスでもどうですか?貴女が協力してくださるのであれば、バカンスもぐっと近づきますわ」

そうはならないこと知ってなお、己を奮い立たせるために軽口で続く。

"ラクシャーサ" :
「それはお互い様ってとこかな。
 宗教上の理由でコッチの軍人さんはお断りしてるんだ。ホラ、うちの祖国いまジハード真っ最中じゃない?」

 女……ラクシャーサは組んだ足をぶらつかせながら、細い指を顎に当てて頬杖をつく

"ラクシャーサ" :
「それにソレを言うならキミが協力してもらうのが一番手っ取り早いんだけどなあお姫様。
 キミ一人ちょちょいっと動いてくれたら、話は丸く収まるんだケド……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──抜かせ。もっと単純で簡単な方法は、他にある」

 言いつつ威嚇するように構えを取る。
 右手が少しずつ熱を帯び、白く光りながら、油断ない様子で勇魚はラクシャーサを睥睨する。

"ラクシャーサ" :
「それが、できるんならね」

 仮にも遺産の片鱗を翳されて尚、ラクシャーサは余裕げにけらけらと嗤っている。それが本心からの余裕であるのは、読心にエフェクトを裂くまでも無く読み取れただろう。

「ここに来てから、随分体が重いでしょ」

ダン・レイリー :「否定はしない。その名は噂通りということだ」

ダン・レイリー :
「そして残念だ。門前払いとはな。
 その話を解決する手段は、僕の手に何もかも足りていないと見える」

 聖戦真っ最中、内戦続き。
 平和の番人を自称したがるのが合衆国だ。

ダン・レイリー :
「であればまあ、お互い。
 笑って撃ち合いは出来んな」

 人気はない。やってやるには吝かでない。
       ・・
 しかし聊かに備えが悪い。
 悪辣に考えるにも、単純な頭数で考えるにも。………そしてそれ以外の備えを出すにも、僕の出る幕ではないと見える。

ナタリー・ガルシア :「――仕掛けに来たとしたなら、こうして声をかけたというその余裕を慢心に変えて差し上げても良いんですのよ?」

回る口とは裏腹に、プレッシャーでは説明できない重圧が全身に重くのしかかる。
全力を費やしても、普段の半分の力も出せるかどうか――

"ラクシャーサ" :
「差し詰め今の私は、蜘蛛の巣に掛かった蝶に忍び寄る蜘蛛ってとこ。
  ポリ マ ー キ ュ ー ビッ ク
 《立方晶粘絃絡絲圏》の影響下にある限りはね」

"ラクシャーサ" :
「うん……アトラからタネは割れてそうだから、ここで教えといてあげよう。
 この絡繰りの一端を」

"ラクシャーサ" :
 言いつつ、彼女は頬杖をついていた手を放してゆっくりと前へ伸ばす。
 五指を広げて、指を曲げる。それは、あたかも人形を操る傀儡子のよう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 その指の動きに沿うように、指先から何か光が走るのを、勇魚は見逃さなかった。
「……っ、そういうことか……
 既にこの街一帯に《絲》が」

ダン・レイリー :
「(糸、いや………。聞いていた通りか)」

「エグザイル・シンドローム………。
 目撃情報の奇妙さも、その細工を思えば頷ける」

ダン・レイリー :
 さしずめマジシャンだ。
 どんな魔法めいたやり口にもカラクリがあるというが、その仕上げを御覧じる前にやっていたことが“ソレ”だというわけらしい。

"ラクシャーサ" :
「当ったりー!
   シンドローム
 私の 症 状 が得た能力は二つ」

"ラクシャーサ" :
 ・・・・・・・・・・・・・・・
「触れる体を絲状に変質させる能力と
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 触れた物質を絲状に変形させる能力……」

"ラクシャーサ" :
「私はね。この街一帯に私の一部である絲……それもモノカーボン程の細さと、蜘蛛絲の粘質を兼ね備えた生体繊維を展開し続けてるんだ」

"ラクシャーサ" :
「これをワーディングの展開に伴って拡散放射する。
 だから……」

"ラクシャーサ" :
「私の一部を伝うことで、どこにでも出現できるというわけ。
 いつ、いかなる場所でも」

ダン・レイリー :
「表向きの武器がそれならば、
 面ではなく点を見る」
 
 技を見る。鋭利さを見る。
 そして間合いの外と安心して、気付けば蜘蛛糸の中心だ。
         アサッシン
 その実は、究極の奇襲役………

ダン・レイリー :
 ………とも、取れるが。

 それの利便性は奇襲というより、退避の容易さのようにさえ思えた。
 ヤツのこれは、身を隠し、生き延びるためのもの。言うなれば。
 サバイバー
 生存者の手練だ。

「そして間合いに誘い込めば、戦う前から勝負を決めるかを択べる。同じ傾向なら見習う器用さだ」

ナタリー・ガルシア :「私達が相手にするのは貴女個人……ではなく、貴女という『空間』そのものというわけですわね」

"ラクシャーサ" :
「そういうこと」

 ──まあ、未だ一番大事なコトは言ってないんだけどね。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「…であるならば、わざわざ話す理由などない筈。何のつもりだ」

"ラクシャーサ" :
 リスク
「縛りだよ。
            ・・・・・・・・・
 私みたいなタイプはね。自分から追い詰める、退路を削ることで集中力が増すんだ。というか、モチベかな?」

ダン・レイリー :
 ・・・・・・・・・・・・・
「自分は後手に回っても勝てる」

ダン・レイリー :
「………レネゲイドの衝動の中には、そういう傲慢を訴えるやつがいると聞いている。

 随分と前向きに身を任せた言い草だ」

ナタリー・ガルシア : ゲーム
「趣味感覚なのでしょうか?そちらのほうが実力を発揮できる方もいると聞きますが――どちらにせよ、ですわね」

"ラクシャーサ" :
「どっちかというとお姫様のが正しいかな。
  Strife   Rule
 《闘争》は、"法"の周知から始まるものさ。

 こないだ、ちょっぴりモチベが出るコトがあったものだから、先にコナかけとこうってワケ。まあ……」

"ラクシャーサ" :
「勿論、それで終わらせる気はないんだけどね。
 私も下働きで忙しいから、小間使い君とおもちゃを工面して遊びに来たんだ」

ダン・レイリー :
「………“ブラックモア”の無法の下で、ルールなどとよくも言う」

"ラクシャーサ" :
「言うとも。ただそれがキミらと合わないだけ」

"ラクシャーサ" :
「理解される気もないし、されたところで興味もない。敵が多くても、そういう奴等を黙らせられるなら、一々気にすることないからね」
 

ダン・レイリー :
「自覚した自我の押し付けとは、皮肉か欺瞞であってくれた方がまだいいよ」

ダン・レイリー :
「………それだけに聊か小狡い言い方も出来る。
 僕も同じ舞台に乗せられてやるってわけだ」

ダン・レイリー :
    Desperado
 謳われた無法者の理念が怨念返しなのか、ただの自由に渇くものなのか。そもそも理由などないのか。
 ………識ることに然程意味は見出さない。これだけの相手には隙になり、何よりも。

 他人は、他人の原風景を解決できない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 耳打ちするように小さな声で勇魚は二人に告げる

「……情報によると”ラクシャーサ”の衝動は解放だった筈。しかしこの言動と態度……」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「衝動パターンは寧ろ"闘争"に近い。
 解析は進んでいませんが、非ジャームでも衝動に身を任せることでより強力な能力行使を可能とするといいます」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
    リスク
 先の『縛り』もそうだ。あれは解放による余裕を見せる行為とはやや異なる。
 ・・・・・・・
 自分を誇示する、ということに彼女は頓着していないからだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 これは寧ろ戦闘を楽しむという行為のために、自分で対策を打たせて同じ土台に立たせようとしている。
 一方的ではつまらないが、加減してやり合うのも性に合わぬから、同じ土台まで立てるよう譲歩している……勇魚にはそう見えていた。

ナタリー・ガルシア :「では、何故……?まさか、本当に楽しむためだとでも……?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
     リスク
「それが『縛り』という意味でしょう。
 自分を明かすこと。自分に不利な能力情報を開示する事。
 それを相手に知らせる行為が、力を行使することに必要だった。衝動に依存する能力なら、それに抗う行為は出来ない」

ダン・レイリー :
「その誇示性は解放衝動のそれと考えていたが、実際は戦いのためのお膳立て………」

ダン・レイリー :
「………レネゲイドなんてのは言ってしまえば人の意思に乗るものだ。僕はそう認識している。
 モチベーションを意識するというのは、確かに手っ取り早く強い手段だが………」

ダン・レイリー :
 ………そもそも衝動が変わる?
 奇妙なケースだ。

 だが、そう言われてみれば辻褄の合う行動はある。“有り得ない”で切って捨てるよりは建設的な発想だろう。

ナタリー・ガルシア :「足し引き、というイメージでしょうか……有限のリソースをより特化させる、そういう手法でしたら分かりますわ」

あえて歪な短所を作ることで、長所を伸ばすやり方――より遠くまで射程を拡げるために、威力や範囲を犠牲にするのと同じ、差し引きの問題。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「衝動が変化するか、或いは初めからこちらの情報が誤っていたかのいずれかですね。
 ……そして足し引きといっても、リソースの分配というような足し引きとは少し違う」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「能力というリソースを増やすために、行動や思考を制限しているというべきでしょうか。人の想いやイメージ力に依る能力なら、レネゲイドの有する衝動に寄れば寄るだけ能力の切れ味は増す」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……その在り方、衝動に身を委ねる行為は殆どジャームと変わらない。
 ただ、完全にそれ"だけ"になっているか、そうでないかは非常に大きな差です」

そしてそれが、ジャームかそうでないかの決定的な差なのだ、と勇魚は締める。

ダン・レイリー :
「………レネゲイドの衝動に振り回される“だけ”でないかどうか、だな」

ダン・レイリー :
 0と1以外の考えが出来るということだ。
 オンの時に決まりと縛りがあったとて、常にオンオフで居ないことが出来る。

 ………第一………。

ダン・レイリー :
「本当に闘争衝動のジャームだったなら、此処で“玩具を嗾ける”というまだるっこしい行動は取るまいな」

 ルールは周知した、準備は万端。
 こっちの仕込みも終わった、後は不平等に楽しもう───とまあ、そんな形になるだろう。

ダン・レイリー :改めて銃口…を向ける前に偏差把握は使っておこう。その“玩具”が紳士とは限らん。

SYSTEM :
 ダン・レイリーが偏差把握を行い周囲に警戒網を改めて敷く。
 広間にはそれなりの数の人間……観光客やパフォーマー、また失業者などもいたが、その中でも明確にこちらに意識を向けて、隠れ潜む人間が何名か存在しているのを確認した。
 

SYSTEM :
 恐らくは抜かりなく、先ほどまでの会話の間に部隊の展開を進めていたのだろう。
 しかし……

"ラクシャーサ" :
「そろそろかな。じゃあ、いくよ。
 O-tec社の新製品のお試し体験版だ、楽しんでくれ!」

 言いつつ、ラクシャーサが手を高く掲げて指を鳴らす。

ダン・レイリー :「これは───!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「、来ます!」

 気配を探知した勇魚はすかさずワーディングを展開する。この場でやり合うならば必要なものだったが、相手に一々それを気にする倫理などないことは知れていた。
 そして、その判断は正しかったのか。それが表れたのは、遥か上方……

機甲猟兵 :
 遥か上方。
 ビル上の高度から落下し、ハートプラザの広間を踏み砕いたのは鋼の塊……アトラが現地調査で掴んだという、O-tec社の機械化兵……機甲猟兵と呼称される模造遺物エンジンで稼働する二脚戦車であった。

ダン・レイリー :
「チ───展開が早いな………!」

 ………これだけ目立つ“幹部”の存在がデコイであることは承知していたが!

ナタリー・ガルシア :「――――ッ」

"ラクシャーサ" :
 サイフレーム
「機甲猟兵……鋼殻義体に脳部を挿入して運用される機械化歩兵さ。
 ……わかる? コレもパチモンではあるけど、ちょっとしたEXレネゲイドの一種を搭載しててね」

ダン・レイリー :「その手のブツと来たら、セールで売り出されるものじゃないと思っていたんだがね! 羽振りのいい連中だ!」

ナタリー・ガルシア :「……EXレネゲイド、まさか『遺産』を!?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「この波長は……アラスカの時の『キューブ』!
 やはり出所はシャンバラだったか!」
 

"ラクシャーサ" :
「これも"約束の地"から発掘されたロストテクノロジー……まだまだ底を見せないエデンの林檎の一玉。
 いやぁ、果汁の一滴ってとこかな」

ダン・レイリー :
「………ロストテクノロジーだと?」 

 EXレネゲイドについてはそれで説明がつくと納得できようが、それにしたってこれほど近代的なのがか───?

ナタリー・ガルシア :「知恵の実は持ち出し厳禁ですのよ……それも、こんな街中に」

それを行った最初の人間がどうなったか、最も有名な物語で語られているというのに。

"ラクシャーサ" :
「元々はオーヴァードの規格化運用の為に、能力アウトプットを規格化出来る「外殻」……つまりパワードスーツとして設計されたモノでね。尤も、流石に私の複製でもエンジン部まで作るのは難しいんだけど。
 こいつはそのβ版。その火力の程は、これから体験してもらおう」

強化猟兵 :
 それと同時に、戦車を援護する形ですかさず歩兵部隊が物陰から姿を現し、一同に銃口を向ける。
 戦車運用における基本をなぞるように、彼らは歩行戦車の両脇を固めるよう陣取った。

ダン・レイリー : 
 トライアル
「実践テスト気分とは嘗めてくれるよ───まともな評価試験が出来ずとも恨むな!」

ダン・レイリー :
 ………どのみち放置は出来ん。
 ラクシャーサの追撃と対応は、お互いの思惑通り後回しだ。

ナタリー・ガルシア :「こんな街中で、そんなものを振り回す気ですの……ここはハリウッドじゃありませんのよ!!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「行きましょう、今更この程度の代物にてこずる我々ではありません。
 何より、タネが割れている」

機甲猟兵 :
「────」

 着地した猟兵がシステム音を鳴らしながら稼働を始める。
 内に秘めた埒外のエンジンを行き渡らせ、五メートル相当の鋼の塊が熱を帯びる。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「来ます……大尉、号令を!」

ダン・レイリー :
「そうだな───どのみち、こいつらを此処から放り出すことも出来ん」

ダン・レイリー :
「───敵部隊を撃破、制圧する!
 二番煎じと気を抜くなよ………!」

ナタリー・ガルシア :「任せてくださいまし――私も、だんだんとアクセルの踏み方が分かってきました。先週よりも進んだ私をお見せいたしますわ」

ダン・レイリー :「期待はしておくが………燥いで怪我の元を作るんじゃあないぞ、ナタリー!」

ダン・レイリー :………させる気はないが、“先週の話をさっそく反故にしました”では合わす顔もないところだ!

SYSTEM :
【戦闘を開始します】

SYSTEM :《ROUND 1》

SYSTEM :-SETUP PROCESS-

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :
[Set up]
◇R因子戦闘管制
・《赤方偏移世界Lv5》

ダン・レイリー :
 先週のおさらいと行こう。
 このラウンド中、彼女の行動値をLv*2=10増加させる。彼女と言った通り、対象はナタリーだ。

ナタリー・ガルシア :やはり大尉の能力行使には無駄がありませんわね、見習いたいところです

ダン・レイリー :戦うたび生き延びていればこうなる 後天で身に着く以上はいつか追い越せるよ

ダン・レイリー :(好き好んで積む経験じゃない…というのは、今は蛇足だな)

SYSTEM :【宣言を確認しました】

機甲猟兵 :
セットアッププロセス:
行動なし

強化猟兵 :
セットアッププロセス:
行動なし

SYSTEM :-SETUP PROCESS-
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=PSY FRAME

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=PSY FRAME

機甲猟兵 :
マイナーアクション『戦闘システム起動』
 《斥力の矢 LV2》

機甲猟兵 :
メジャーアクション『二連装コイルガン』
《コンセントレイト:バロール LV2》+《コンバットシステム LV4》+《巨人の斧LV3》+《斥力の槌LV3》

DICE:10dx@8+2
DAMAGE:nd10+15
Option:対象を後方に10m移動させる

機甲猟兵 :choice Natalie,Dan

機甲猟兵 :choice Natalie Dan (choice Natalie Dan) > Da

ダン・レイリー :此方に矛先が向いたか!

ナタリー・ガルシア :モテモテですわね

ダン・レイリー :悪くはないがこの場限りの付き合いだ、言葉を交わせる相手が望ましいものだよ!

ナタリー・ガルシア :女泣かせですわね!とはいえ、油断していると泣かされるのは此方になりそうですが

ダン・レイリー :まあ………問題はない! 自分のことに集中しておいてくれ、二発目を断りたいからね!

機甲猟兵 :
「《メインシステム 戦闘モード起動します》」

 システム音と共に、内蔵されたAI代わりの猟兵の意識が躍動し、機械化された悪意たる二門の砲身にエネルギーが充填される。
 バロールによる落下エネルギーを発電機関に利用した二連装コイルガン。それは自由落下を加速させることで車載出来るまでに小型化された戦車砲である。

ダン・レイリー :
「(バロール・シンドロームの歪曲現象!
  まともに受ければ吹き飛ぶな───ならば!)」

ダン・レイリー :
 瞬間的に各武装のロックを解除する。
 応射は一瞬。
 コンセントレイト
 集中状態に入るナタリーと、アタッカーを務める“炎神の士師”の阻害はさせられない。
 単純なドローンの頭ならば、此方に注意を引けるし、引くべきだ───!

機甲猟兵 :10dx@8+2 命中判定 (10DX8+2) > 10[3,3,4,4,5,6,7,8,8,8]+7[4,5,7]+2 > 1

ダン・レイリー :ガードよりはマシだな…ドッジを宣言して一縷の望みにかけるとしよう

GM :了解!来い!

ダン・レイリー :1dx  (1DX10) > 5[5] >

ダン・レイリー :こんなものだ、“来い”は此方の台詞になるな…!

GM :では行くぜオイ!ダメージ計算!

機甲猟兵 :2d10+15 (2D10+15) > 16[7,9]+15 > 3

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 18 → -13

ダン・レイリー :当然…オーヴァードには死へのカウンターがある。

ダン・レイリー :《リザレクト》だ。実体験などするものじゃないが…見ておけよ!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :出目が低くなることを祈ります

ナタリー・ガルシア :大尉の雄姿、刻みますわ……!

後で絆創膏でも貼ってあげますわね

GM :ではどうぞ!

ダン・レイリー :1d10 リザレクト (1D10) >

ナタリー・ガルシア :流石ですわ

GM :ば、莫迦な……

ダン・レイリー :と まあこんな具合だ(スッ…)

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : -13 → 1

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 49 → 50

GM :なんてやつだァ……

ダン・レイリー :やってしまえば出来るということさ

機甲猟兵 :
 銃口を向けた砲門より稲光が走る。エンジンに古代種のオーパーツを組み込むことで出力を底上げしたサイフレームは、基部からして性能の異なる躯体だ。
 射撃体勢に入った機甲猟兵の複合サイトがノイマンの射撃制御によって支えられ、過たず司令官であるダン・レイリーを捉える。

機甲猟兵 :
 充填、発射。
 本来数分単位でのチャージが必要とする筈のコイルガンは、姿勢に入って僅か数秒で射撃準備を完了していた。鈍重に見える巨躯でありながら、その速度は生身の肉体を上回る。これは真実、人の体を拡張して、同等以上の性能で立ちまわるために設計された超人用の外殻……新世代の機械化兵なのだ。
 クイックドロウもかくやとばかりの恐るべきスピードでチャージされた車載砲が、斥力を伴って今打ち出される……!
 

ダン・レイリー :

「───来たか…!」

 目論見通りだ。
 応射の態勢には目もくれず、先の先で此方を潰しに来る。

 事前に察知した予兆通り、バロール・シンドロームが引き起こす歪曲現象が武装の軸。
 それも質量増加とこれに伴う落下エネルギーによる発電機関の超効率展開という、至ってシンプルな“現代兵器の拡張”が、此方の死神候補が持つ得物だった。

ダン・レイリー :
 これでナタリー・ガルシアが余計な気を取られることも、彼女のアシストに“炎神の士師”が手間取ることもない。

 では、俺自身だ。
 ベストの展開である分、計算する犠牲は自分になる。

ダン・レイリー :
.         Overed
 何時かに言ったが、超人などと呼ぶくせ、俺達は無敵じゃない。
 対人をオーバーする戦車砲の直撃を受ければ肉は柘榴のように弾け飛ぶし、身の丈を倍以上越える大質量の落下と直撃に耐えきれるものや、銃火の中に姿を晒し続けて無傷なものは例外と呼ぶ程度に、物理法則に歩み寄る(または歩み寄りたい)半端さがある。

 ましてや、超人性を恃みにした戦いなど、戦術レベル以上の単位には論外だ。

 何が言いたいかと言えば───。

ダン・レイリー :
    Scramble
「(………緊急展開………間に合うか!)」

「チ───ィ………!」

ダン・レイリー :
 このように、対人を想定した超人では、そもそも超人を想定した“兵器”の砲火は、直撃がイコールで即死に繋がる武器になる。

 拙いことにバロールの持つ叩き付けるようなエネルギーは、自らを此処から水平線の彼方まで吹き飛ばし、また粉々に砕いてしまう威力だ。

 当然、これに対抗する術はない。

ダン・レイリー :
 弾け飛ぶ身体。
 しかし───。

ダン・レイリー :
 その砕けた装甲、五体を維持したまま風穴の開いた肉体を、着地地点を出迎えるネットめいて、重力の網が捕まえる。

 何時かに使った“ゲート”の、戦闘用緊急展開だ。
 戦闘用の支援ガンビット、フォールンサラマンダーは自分のレネゲイドに馴染ませた第三の腕に等しい。
 単純な射撃用の展開以外にも、その場しのぎめいてはいるが、このような真似も出来る。

 バロールの持つ斥力により生み出された慣性を、緊急かつ連続の短距離転移で消費させ/押し留め、可能な限り吹き飛ぶ距離を抑えることで戦場からの離脱を阻止し───。

ダン・レイリー :
 そして───。

ダン・レイリー :
「───問題はない!
 振り向かずやれ!」

 射撃の隙は、此方の反撃の好機だ。
 見誤るな、という指示と共に、被害を気に病むなという意思表示。

ダン・レイリー :
 オーヴァードは、
 人間にとっては唯一の“死”に、小賢しくもカウンターを持っている。
             ・・・・・・
 これはワーディングに次ぐ基本中の基本だ。
 開いた風穴を、宿主の危機に反応した健気なレネゲイドが穴埋めし、肉体を再生する。
 文字通り“粉みじん”になっていたとしても、この結果は変わらない。レネゲイドの侵蝕と引換えに、死を遠ざけ、撥ね退け、復活する術を持つ。何度もこなしてきた行いだ。
 何故なら………。

ダン・レイリー :
 オーヴァードというのは、たいてい死神から嫌われるが。
 自分は特に“そいつ”から嫌われている。この程度はワケもないということだ。

ナタリー・ガルシア :「――ッ!!」

僅かに揺らぎかけた精神が、その叱咤のような指示で持ち直す。
ここで、この場で、コレを止める。
そのためには、各々が己に課された役割をこなす必要がある。
十二分にそれを理解し、その上でダン・レイリーは己の役目を全うした。

ナタリー・ガルシア :「――はいッ!!いけますわ!!」

それは、相対する敵をナタリー・ガルシアであればどうにか出来ると、そう任されていると少女は信じた。

ならば、その精神は小揺るぎもしない。
むしろ、猛るように熱く、衝動のような感情を深く押し込んで――今はただ、研ぎ澄ます。

炸薬のように、全てのエネルギーを一点に向けて放つための集中と溜め。
冷徹な程の理性と、衝動のような感情を合わせ呑んで、少女は開放の時を待つ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「迎撃準備! ナタリー、お願いします!」

 背後に弾き飛ばされるダンへ声をかけるのをぐっとこらえて、勇魚もまた己の役割に尽力する。
 ひるまず敵を見据えて、反撃の準備に映る。今、ここで自分が前に出る時ではない。

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=PSY FRAME
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Natalie

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :それでは、《サイレンの魔女LV10》を発動しますわ

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :6DX+10
私は私の役割を全うしますわ! (6DX10+10) > 7[1,3,4,4,6,7]+10 > 1

GM :おお、ギリギリ猟兵の回避値を上回った!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :残り3点で20ですね。
支援は必要ですか

ナタリー・ガルシア :頂きたいですわ!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :了解です。では、お願いします

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
オートアクション:《バディムーブ》
対象:ナタリー・ガルシア

効果:判定後の固定値+3

ナタリー・ガルシア :これでちょうど20!

GM :ぴったリー、です……

強化猟兵 :リアクション:《イベイジョン》

回避判定:失敗

機甲猟兵 :リアクション:回避

機甲猟兵 :4dx <回避> (4DX10) > 10[1,3,3,10]+6[6] > 1

ダン・レイリー :あの巨体で良く動く! だが………

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :此方ですかさず退路を塞ぎました。
逃げられると思うな……!

ダン・レイリー :上出来だ! 

SYSTEM :【強化猟兵A,B、機甲猟兵が回避に失敗しました。
ダメージ判定を行ってください】

ダン・レイリー :
 そして………この間合いからでもやれる小細工というのがある。
 フォールンサラマンダーを使用、ナタリーの与えるダメージを+2dするぞ!

GM :更に2d10のダメージパンプだと!?

ナタリー・ガルシア :これで私の与えるダメージは5d10+30!!

GM :だ、だがっこいつのHPは62もあるんだぜ!そう易々と抜けるものか!

GM :ダメージ判定をどうぞぉ!

ナタリー・ガルシア :5d10
行きますわよ……! (5D10) > 29[7,8,4,7,3] > 2

ナタリー・ガルシア :あっ、+30してくださいまし

GM :了解にごす  なんてパワーだ……

SYSTEM :【強化猟兵A、Bが戦闘不能になりました】

system :[ 強化猟兵A ] HP : 40 → -19

system :[ 強化猟兵B ] HP : 40 → -19

system :[ 機甲猟兵 ] HP : 63 → 4

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 60 → 65

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :残すは一機!

ダン・レイリー :では、仕留め切る時だ…!

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :
[Main]
◇ストーム・ベアラー
Major:《CR:エンジェルハイロゥLv2》《天からの目Lv3》
Minor:Empty

HIT:7dx8+5
ATK:xd10+10
COST:4

ダン・レイリー :
 なお………本来のコストは4だが、セットアップ時点で宣言した《赤方偏移世界》のコストを加算していなかった筈だ。
 悪いが、今このタイミングで計算させて貰えるか?  

GM :問題ありません!

ダン・レイリー :ン。ありがとう。

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 50 → 52

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 52 → 56

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :7dx8+5 射撃 (7DX8+5) > 10[1,2,3,5,8,10,10]+6[1,5,6]+5 > 2

機甲猟兵 :リアクション:<回避>

機甲猟兵 :4dx <回避> (4DX10) > 10[6,7,7,10]+1[1] > 1

ダン・レイリー :侮れんな、量産タイプの安物だと思いたくない

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :どうあれ命中です。大尉、お願いします

ダン・レイリー :了解、有言を実行する…!

SYSTEM :【ユニット:機甲猟兵が回避に失敗しました。ダメージ判定を行ってください】

ダン・レイリー :3d10+10 ダメージ (3D10+10) > 14[1,5,8]+10 > 2

SYSTEM :
【ユニット:機甲猟兵の装甲値:7がダメージから引かれます】

system :[ 機甲猟兵 ] HP : 4 → -13

ダン・レイリー :これでダウンだ…! 願わくば、こいつが世に出回らんようにしたいものだな…!

SYSTEM :【機甲猟兵が戦闘不能になりました】

SYSTEM :【対立ユニットがフィールドから消滅しました。
戦闘を終了します】

ナタリー・ガルシア :風。
ナタリーが最も親しみ、己の手足のように扱うことの出来る力。
動作の補助から能力の補強、それ単体でも無形であるが故に多くの可能性を秘めた力。

ある意味、ナタリーという少女はその力に頼り切っていたとも言える。
だが、これは実戦。
己の長所は潰され、短所を突かれ、相手の長所を押し付けられる。
そもそもの話、ナタリーの手札はそれほど多くはない。
それ自体は強くとも、その存在を知っていれば如何様にも対策してしまえる。

ナタリー・ガルシア :
「――――」

この戦いが始まった瞬間、ナタリーは己の軽口の裏側で己の力を静かに励起していた。その結果は、不発――この空間を支配する主の意にそぐわないものとして、そよ風ほどの力すら現出することはなかった。
動作も、能力も、その全てが糸に絡め取られて封殺される。
とりわけ風はその力の全てを散らされ、ほんの少しも頼ることは出来ない。

ナタリー・ガルシア :
だが、どれだけラクシャーサの糸が空間を支配しようと、そこにある全ての現象を戒めているわけではない。会話は出来る、視界も開けている、緩慢ながらも体は動く――つまり、それは。

「(音や光は、フィルターの外というわけですわね)」

物理的な干渉の中で、リソースが許される限りあらゆるものを排除出来てしまえるのであればそもそも戦いが成り立たない。恐らくは、無意識か、あるいは意識してか、無害なものや影響のないものはラクシャーサが設定したフィルターをすり抜けている。

ナタリー・ガルシア :
で、あれば。

          おと
この場にある、全ての振動を武器にする。

ナタリー・ガルシア :
「――――ッ!!」

故に、ナタリーはその力の全てを一方向に集約した。
環境音、その躯体自身が起こす僅かな動作音、己の起こす小さな音の波。
その全ては、目標に届き――そして、揺らしている。

極々小規模な世界での、戦場には関係のないミクロな話。
ソレを使う。

ナタリー・ガルシア :
ナタリー・ガルシアの能力運用、数年に渡ってトレーニングしてきたそれは我流から教導を経てなんとか形となっている。

そして、その内容は『大きすぎる力をコントロールする』トレーニングにほぼ全てを費やしてきたと言っても良い。巨大な力、周囲や己すら傷つける力をコントロールするべく、ブレーキとハンドリングだけを練習してきた。

故に――
        ・・・・・・・・・・
――ナタリーは、己の力を把握しきれていない。

ナタリー・ガルシア :
だからこそ、先の戦いでは全力に届く前に戦いが終結した。

   スプリンター
それは 短距離走者 が最高速を出す前に50m走を終えてしまうようなもの――初めて踏んだアクセルの感覚に、ナタリー自身が戸惑っていたことが大きい。

ナタリー・ガルシア :
だが、今は違う。
朧気ながらも己の力の根本を理解し、そして一度とはいえ実戦を味わった。
故に、ダンが稼いだ時間全てと因果歪曲による事象の先取りによる集中――その全てを、己の力を増幅させるのにナタリーは費やした。

ナタリー・ガルシア :
   ピアニッシモ
「―― とても弱く 、というところでしょうか」

ナタリー・ガルシア :それは、ほんの僅かな高音。
対象が発する、モスキート音にも似たその振動の証左は、目標が自壊していく悲鳴に等しい。

内側から衝撃が吹き荒れ、砕けていく。僅かな耳鳴りのような音だけを遺して、対象は崩れ、膝を折る。

装甲の厚さなど意味を為さぬ内部破壊。
              ブースター
己の出力に任せて、己自身を増幅装置とする文字通り必殺の一撃。

「ええ、やはり私には力任せしか出来ませんわね――精進あるのみですわ」

"ラクシャーサ" :
「!(成程そう来たか!
 大気操作を細やかにしての疎密波の共振崩壊……!)」

SYSTEM :
 ナタリーの判断は当たっていた。苛烈さを伴わないそれは、純粋な風量操作でなくより精密な操作によって巻き起こる内部破壊。
 物体にそれぞれ存在する固有振動数に合わせ、共振する音波を叩き付けることで内側から破壊するセイレーンの歌声だ。
 

機甲猟兵 :
 ”拙い”と判断したのは、機甲猟兵の戦術支援AIである。
 あらゆる毒素を無力化する厚い特殊装甲も、共振崩壊波を受ければ内臓の脳部とキューブ本体を破壊されかねない。
 搭載したノイマンシンドロームのAIがコンマ数秒でそれに対する回答を導き出す。

機甲猟兵 :
 機甲猟兵がノイマンの戦術支援AIを稼働させ、導き出した退路は上方。両脚に搭載した強化スプリングとスラスターを以て天高く跳躍する。
 高度に飛翔することで敵の射程圏内から逃がれ、そのまま自重に任せて落下し沈黙させようと踏んだのだろう。
 が……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は落ち着いた様子で、その機を待っていた。

 チルドレンの訓練と、実戦経験に裏打ちされた鮮やかなバディムーブ。
 それはナタリー・ガルシアとの連携においても如何なく発揮される。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 敵機が上方へ跳躍する。それを先回りする形で、勇魚の矮躯は宙を舞っていた。
 練磨された肉体は、並のキュマイラを越えて余りある膂力と反射神経を有する。避ける先が上だと当たりをつけた段階で、オブジェを足掛かりに三角飛びの要領でその身を飛翔させていた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

「墜ちろ……!」

 まるでそれ自体が巨大な鋼の砲弾のように跳ぶ機甲猟兵の外殻を、勇魚はひるまず宙返りしながら強かに蹴りつけた。
 蹴撃の瞬間、ブースターのように爆炎を放つ。加速が載った足が敵機の鋼殻を陥没させながら、元居た場所に押し戻す。

機甲猟兵 :
 それ自体は然したる手傷とならなかったが……上空の退路を断たれた敵機は、最早自由落下に任せる他はなく。
 そうなれば、後は直撃を待つのみだ。

ダン・レイリー :
「そのためのチームだ───此方からも仕掛ける………!」

ダン・レイリー :
 体勢を立て直すと同時に、彼我の距離計算を終える。
 演算能力はノイマンの十八番だが、
 この程度の管制と空間認識は超人だけの特権というわけでもない。

 目測で15m強。
 R因子を持つオーヴァード、ひいては自らの有するエフェクトとの連携運用を前提とした試製小銃“ストームベアラー”の有効射程はゆうに200mにも達し、この距離からの射撃に何ら支障を持たない。

ダン・レイリー :
 故に重要なのは、有効打を如何に送り込むかである。

 ナタリー・ガルシアの補佐は“炎神の士師”に委ねて何ら問題ないし、事実そうなった。

 ………初陣から2回目で応用。
 ラクシャーサの仕掛ける重圧に対し、此方が与えた時間をフル活用しての出力解放。
 周囲への余波を考えるとお世辞にもスマートではないが、
 そのための自分であり、そのための“炎神の士師”とも言える今、それがベストだ。

 直撃コースに落下したO-tec社の新型二脚戦車であるが、しかしアレはレネゲイドを内包し、攻防において対人のラインを越えた性能を持つ。

 損傷を加味しても、真正面からの銃弾が通用するほど甘い相手ではないだろう。

ダン・レイリー :
 ………初戦で彼女の基本戦術を見ていたのは幸いだった。
 何処から撃ち込めば阻害し合わないかを学習する時間があったからだ。

ダン・レイリー :
 尤も、内側からの破壊という手段を与えられたリソースでやった以上、支援射撃に気を遣う必要はない。

 銃を構えると同時───。

ダン・レイリー :
 .Reconstruction
「《調律、再構成》───」

ダン・レイリー :
「───沈め!」

ダン・レイリー :
                
 第三海兵遠征軍、
        トイ・ボックス
 テンペストが誇る秘密兵器。
  ニ ュ ー ロ リ ン ク
 脳を駆け巡る電磁波の動きによって制御されたそれは、強化された視野と五感で統率され、
                        
 拡大された空間制御能力で展開および格納される。
 . オールレンジ
 所謂全領域攻撃兵装である。

ダン・レイリー :
 搭載された簡易銃座は対人用の域を出ない支援用の火器に過ぎないが、レネゲイドに感染し、自らのオーヴァード能力をダイレクトに伝達出来るこのガンビットを以てすれば、先程のように自分のエフェクト行使を代替させることもわけはない。

 先程はこれに即席のゲート形成を代替させることで吹き飛ぶ距離を調整。
 先の戦闘等ではこれらのガンビットによるエフェクト展開の補佐を以て、ナタリーの時間拡張や攻撃の再配置を成していた。

 いざ、攻撃に使うとなれば、これの最大の利点は火力ではなく射角だ。

 どの位置、どの時間からでも、此方から打撃力を通せる。
 正面からの撃ち合いよりも、死角や急所を狙い打たせるに持ってこいということだ。

ダン・レイリー :
 展開した都合六機。
 展開と同時に発生するバロールの空間歪曲による“目晦まし”は普段より過剰だが、それはAI駆動となるその機甲猟兵の虚をつくためのもの。

 ただでさえ2つの脅威を認識し明確に手傷を負わされた段階から、追い打ちとばかりに複数個所で発生した重力場と、そこから実際に攻撃を仕掛けてくるR因子の飛翔体。
 有機・無機を問わず、どんな思考にも負荷をかけ、ラグを発生させる。

ダン・レイリー :
 その短時間の隙でこそ、狙うのは奴を駆動させる中心部。
 あのタイプの兵器を見たことはないが………人の作ったものならば、急所は人の発想内だ。

ダン・レイリー :
 損傷個所を目敏く狙って叩き込まれたビットの一斉射撃。
 針のような火力、点のような範囲も使いよう。対処の余地なく損壊部分を短時間で連続して撃ち貫き、そこのみ破壊すればいい………!

強化猟兵 :
 共振現象による破壊は何も鉄機のみによるものではなかった。随伴する強化猟兵たちに対しても同様の内部崩壊が発生していた。
 本来戦車を援護するべき役目を負った彼らは、しかし一人また一人と銃を取り落とし、頭を抱えながら倒れていく。

機甲猟兵 :
 辛うじて機能を保っていた機甲猟兵は、地面に墜落した体を何とか起こそうと体制を整える。しかし、時間が経つにつれて徐々に機能が破損していく鋼の巨体は、外目から分かりにくいとはいえ確実に瀕死の重傷を負っている。

機甲猟兵 :
 そこに叩き込まれる全領域攻撃。展開された六つのガンビットが一斉に火を噴いて、鋼の装甲を削る。
 自らのエフェクトを中継する役割を持つビット兵器は、単純な浮遊銃座という訳ではない。まさしく手の延長線のように、枠組みを超えた柔軟性を見せる。
 たとえばこのように、空間歪曲による無秩序な軌道の制圧射撃をも可能とするものだ。

機甲猟兵 :
 咄嗟に反撃しようと試みる猟兵の出鼻をくじくように、弾丸による制圧を喰らった敵機。縦横無尽に機動し、重力場によってバラストの計器を揺さぶりながら牽制を掛ける。
 その効果は覿面に発揮される。如何なノイマンの知能を持つとて、脳に燃料が行き届かねば思考に隙間が生じるのは道理であった。

ダン・レイリー :
 そして短時間かつ複数の損傷箇所を狙われ、今なおそれが継続するとなれば、高度な戦術AIも、それに伴う回避運動も形無しだ。

 援護を行うはずの猟兵もその戦力を発揮できる状況になく、既に生じていた破損は、此方が送り込む有効打の道筋となってそのまま拡大する。

ダン・レイリー :
 その中でも被害を回避しようとする部分───恐らくは機体中枢───と、弾頭を積載した奴ご自慢の二連装コイルガン。
          チェック
 順当に持ち込まれた詰みならば、

ダン・レイリー :「これでダウンだ───!」

ダン・レイリー :
 外す方が難しいというもの。

 武装の誘爆狙いと、機体中枢狙いの、
     マルチショット
 手慣れた速射撃だ。

機甲猟兵 :
 最後の一撃。ダン・レイリーのストームベアラーが、嵐を征する沈黙の一打を打ち放つ。
 弾頭を搭載した自慢のコイルガン、その機体の中枢を、穿つように真鍮の牙が突き刺さる。

機甲猟兵 :
 機体が一層スパークを起こす。
 紫電を伴い蹲る鋼の機体。回路を閉ざされ、行き場を失ったイミテーション・ミュートスキューブのレネゲイド因子が滞留する。

機甲猟兵 :
 そして……臨界点を超えた機甲猟兵が、遂に耐え切れず爆散した。

"ラクシャーサ" :
「……お見事。ずいぶんあっさりとやっちゃうもんだね」

 燃える炎の中で、戦いの一部始終を見届けていたラクシャーサがくすくすと嗤う。
 オブジェの上にぶらぶらと足をばたつかせながら、依然として余裕の表情は消えない。

ダン・レイリー :
「………本当に様子見とはな。
 前座か試金石とでも?」

 実際、ヤツの気が変わって仕掛けてきたなら、状況は一変する。
 それをしなかったのは、曰くモチベーションのための制約から来るものか?

"ラクシャーサ" :
「ああ、なんで仕掛けてこなかったかって?
 そういうの趣味じゃないし、だいたい相性悪いんだよね」

"ラクシャーサ" :
「元々人の上に立つとかガラじゃないし、基本一人の方が戦いやすいし慣れてる訳。
 だから……キミらがこのまま私の首を狙うなら、こっちは一人でお相手すると約束しようか」

"ラクシャーサ" :
 ひょい、とオブジェの上に立つ。
 同時、彼女の立つオブジェが糸状に変形し、それらが彼女を繭のように包み始める。

ダン・レイリー :
「………」

ダン・レイリー :
「一匹狼というには、子連れだったようだが」

ダン・レイリー :
「まあ、いい。
 どの道、乗せられてやることに変わりはないんだ」

ダン・レイリー :
 ………少なくとも、その辺りの事情を根掘り葉掘りする趣味は僕にはない。
 聞いて応える性格とも思わん。此方からのアプローチなど、精々が“望み通りにニコニコ笑わず殺し合おう”で十分だ。

"ラクシャーサ" :
「…………」

"ラクシャーサ" :
「ま、あんま関係ないことだけど言うだけ言っとくね」

"ラクシャーサ" :
「妙なことは考えない方がいいよ。
         ・・・・・・・
 これでもこっちはやり方選んでるってコト。品のないブラックモアや、おたくらと違ってね」

"ラクシャーサ" :
「最初から全部滅茶苦茶にしてやっても、特に問題はない訳だからね」

ナタリー・ガルシア :「…………」

口を開こうとして、つぐむ。

ダン・レイリー :
「結構だ。
 僕も同じことを二度言うのは憚られる」

ダン・レイリー :
 ………一部に意見の一致を見たが、
 ・・
 そこで威嚇めいて牙を剥くのか。 

ダン・レイリー :
「まあいい。
 蛇足には蛇足だ。一言くれてやろう、ラクシャーサ」

ダン・レイリー :
       ・・・
「貴様の言葉は正しいよ。
 だが、正しさを盾にした癇癪だ」

ダン・レイリー :
「………これを言う僕もまた、正しさを盾にしたエゴで此処に来ているんだ」

 何が理由で一匹狼を止めたのか、
 T³にどんな関係があるのか、

ダン・レイリー :
 ………何故、テンペストは奴と“天刑府君”についてだけ知見を得ていたのか。 

ダン・レイリー :
 全く心当たりはないが………。
 是非もない。

「殺し合う時点で同じ穴の貉だ。
 精々、待っているといい。罵る自由も、殺す権利も、此方から出向いてくれてやる」

"ラクシャーサ" :
「上等。
 こ う な る し か な い
 It Has To Be This Way ……ってのは、何もウチだけの流儀じゃないワケだ」

"ラクシャーサ" :
「ダウンタウンのO-tec本社ビル。今の私の住まいがそこでね。
 待ってるよ。チキらずにやって来れたなら、相手になってあげる。
 別に罵る自由も殺す権利も要らないけど。キミらと死合うのは楽しそうだ」

 言いつつ、女の体が白い絲に包まれ、繭となって覆われていく。神出鬼没に姿を現し、消えていく絲化による移動であろう。

"アダム" :
 ──ああ、そういうこと。
 まあいるよな、現代の連中がそういうコトし始める奴一人ぐらいはいるだろうさ。

"アダム" :
 キミに執着する理由も何となくわかってきたが、こいつは黙っておくか。
 キミ自身が知った方がいい。

ナタリー・ガルシア :

ナタリー・ガルシア : 

"アダム" :
 振り返るなのタブーを犯した女は、その罪の故に塩の柱となった──
 それが彼女なら、まさにキミが直面しなくてはならない相手だ。

"アダム" :
 最初の関門ってとこだ。
 じゃあ……気合を入れていこうか。

ナタリー・ガルシア :(……………)

ナタリー・ガルシア :(ええ、言われずとも――私は止まるつもりはありませんわ)

ナタリー・ガルシア :(貴方にも、私自身にも、その方が都合がいいでしょう?)

"アダム" :
ああ、大変都合が良いね。渡りに船だ。
こいつが運命という奴なんだろう。

"アダム" :
 ・・・・・・・・・・・・・
 まったくもって気に食わないが。
 まあ、その辺りは呑み込むさ

ナタリー・ガルシア :(――――)

ナタリー・ガルシア :謝罪も、弁明も、不誠実な気がして。

少女はただ、曖昧に微笑んだ。

ダン・レイリー :
「その時は、墓に“臆病者”と書いて貰うさ」

 ………消えていく彼女を追う理由はない。
 此処でやり合うよりは、相応に仕込めるだろう本人の根城でやる方が被害もない。

 何より連戦でアレと戦おうなどと、自惚れでこの二人を道連れにするわけにも行かない。銃口を向けたまま、覆われていく”ラクシャーサ”を見届ける。

ダン・レイリー :
 しかし………。

ダン・レイリー :「こうなるしかない、か」 

ダン・レイリー :
 何が正しくて何が間違っているのかなど、決め切れもしない話だ。
 テンペストの“ホワイト・スカイ”の立場でこれを話そうものなら、もうガードを下げて殴り合うことしか意見の一致を見る筈もなかった。

ダン・レイリー :…軽く息を吐く。

ダン・レイリー :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ともあれ、これで敵影はロスト。
 お疲れ様です。……まだ、件の能力による強襲が来るとはいえ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「休息を置いて一旦この土地の面々を集めて突撃するか。配置を変えて万全な戦力を整えてから攻めに入るか。
 再考する必要がありますね」

 言いつつ、勇魚は熱エネルギーを吸収することで燃えさかる戦火を鎮圧に掛かった。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「あちらにペースを奪われたまま戦う事になりますが……情報はある程度集まっている。
 後は限られた時間で、用意をどこまで仕上げるか」

ダン・レイリー :
「そもそもヤツの広域ワーディングを放置しておくのも悪手だ。
 突貫工事でも、やるならやらねばなるまいな」

ダン・レイリー :
「………しかし………」

ダン・レイリー :
「………確認しておこう、“炎神の士師”。
 “ラクシャーサ”の広域エフェクトにも似た重圧は、ニューオーリンズ方面にも発生していたか?」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「はい。あちらでも同様の現象が。
 "ラフメタル"の防衛能力に著しい低下がみられました。幸い、その状態でもしのげはしましたが」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……あれが本当に彼女のワーディングによる付帯能力だとしたら、その射程範囲はどう考えてもおかしい。
 何か仕掛けがあると思います。T³の調査で掴めていればよいのですが」

ダン・レイリー :
「そうだな。
 ロサンゼルス方面でその兆候はなかった。後は彼女次第か………」

ダン・レイリー :
「此処の事後処理を終え次第、一旦の小休止。
 情報整理も込みで方針を決めよう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……了解です」

ナタリー・ガルシア :「……はい、了解いたしましたわ」

SYSTEM :
 白い繭が解れて、風に吹かれて消える。その奥には何者の影もうかがうことは出来なかった。
 だが、これで危険地帯を総べて制圧し、残すは敵の待つ拠点のみとなった。
 目指すはデトロイトのダウンタウンに聳える摩天楼。その奥に座する戦鬼。

SYSTEM :
 如何なる心境で、如何なるものが待ち受けているか定かならぬままに。
 今、デトロイトでの戦いは最後の局面を迎えようとしていた……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【Information】
Eロイス《アバドンの顎》が発動しました。
使用者:"ブラックモア"
対象者:ナタリー・ガルシア、ダン・レイリー
効果:死を想えと、凶鳥は鳴く。
   天より屍を晒す者どもを嗤いながら。

 シーン終了時、1d10ダメージを受ける
 ダメージ量分だけ"ブラックモア"のHPが加算される。

GM :ということで

GM :おまちかねのブラックモア育成タイムですね

ダン・レイリー :こんな迷惑な子供の養育費を2度も払うとはな

GM :それぞれ1d10振っていきます さあ死を謳歌しろ!

ダン・レイリー :やってみるか…

ダン・レイリー :1d10  (1D10) >

ナタリー・ガルシア :1d10
養育費、高くありませんように…… (1D10) >

GM :たっけ

ナタリー・ガルシア : 

ダン・レイリー :手酷くやられたな、もう少しカバーしてやれれば良かったんだが…

GM :金持ちは 税金多う取られますからな

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 1 → -3

ナタリー・ガルシア :私、月々のお小遣いは20ドルですわよ……?

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 22 → 13

ダン・レイリー :残酷だな 金持ちの子供でも小遣いは小遣いか…

ダン・レイリー :ところで僕は先程の戦闘で、行動のための最低限のリザレクトをした。つまりだ。

ダン・レイリー :もう一度《リザレクト》する必要がある。いいかい?

GM :そうなりますな。二度目のリザレク!上振れないことを祈りましょう

ダン・レイリー :よし。では…

ダン・レイリー :1d10 リザレクト (1D10) >

GM :うお

ダン・レイリー :………………(スッ…と復活)

ダン・レイリー :まあこんなものだ。

ナタリー・ガルシア :流石ですわ

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : -3 → 1

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 56 → 57

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :流石です、大尉

GM :身構えていたから死神は来なかった!

GM :護身完成!!!

ダン・レイリー :昔から死神にはそっぽを向かれている 幸いなことにな

SYSTEM :
【check!】
 イベントシーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ダン・レイリー :僕の方は割愛として、選択があるとすればナタリーだな。

ナタリー・ガルシア :そうですわね……今回は見送りとさせていただきますわ

GM :了解!

SYSTEM :
【Information】
 開示情報が追加されました。
 

SYSTEM :

【概念:ラクシャーサの能力/1】
 Dロイス『器物使い』、《デビルストリング》
 ラクシャーサの有する能力。エグザイル・シンドロームとモルフェウス・シンドロームによって作られる固有能力である。
 それは「自らの肉体を絲状に変形させる能力」と「肉体で触れた物体を絲状に変形させる能力」によって構成されている。

 ラクシャーサはエグザイルの能力として自身の身体、及びに自身と同化した物体を、単分子レベルまで分解し絲に変化させられる。そうして体から発した絲の肉体を、モルフェウスの分子構造を変化させる能力で以て変化させる。
 この二つの能力を扱うことで、ラクシャーサは絲状となった自身の肉体の構造を任意に変化させることが出来る。

 その応用性は多岐に渡り、手にしたシミターは自己の肉体と同化することで際限なく刀身を伸ばすことが出来るほか、材質を変えることで装甲を貫通する程の殺傷力を出すことが可能となる。
 加えて絲状に変形する柔軟性と材質を自由に変化させる能力は、護りの面においても如何なる種類の攻撃に対しても応じ事を可能としている。

 これを自身のワーディングに載せて街単位に展開するのが《立方晶粘絃絡絲圏》……蛋白性の蜘蛛絲を再現し、その絲を以て絡め捕り能力に制限を掛ける領域である。
 
 ワーディングが発動できる圏内まで伸びた絲は、ワーディングが閉ざされた後も見えない蛋白性の蜘蛛絲となって滞留している。
 その絲、正確にその絲に含まれるレネゲイドの因子が同化している限り、能力の仕様は著しく制限されることとなる。
 ……尤も、能力に制約がかかるのがそれだけが理由である訳ではないようだが……

SYSTEM :
【WARNING!】

 1エリアのセクタをすべて攻略したことにより、ボスイベントフラグを経過しました。
 イベントシーンの情報が一部開示されます

SYSTEM :
【Information】

 イベント条件が開示されました。
 

SYSTEM :
イベント:血戦、ラクシャーサ
発生条件:エリア『DETROIT』のすべてのセクタを攻略する。
内容:  何らかの条件の下で『ラクシャーサ』と戦闘を行う。
終了条件:敵対ユニットを戦闘不能、或いは戦闘から離脱する。

SYSTEM :
推奨条件……
 ・ユニット三体以上・アタッカー一体以上
 ・装甲値&ガード値無視可能
 ・HP回復技能あり
 ・オートアクションに依存しないユニット

GM :というわけで

GM :デトロイトを粉砕したため、デトロイトのボスイベントが解禁されました!

GM :ボス戦の流れのおさらいというか再確認 いやどっちも同じ意味?だが!

GM :イベント発生時にエリアにいるキャラは参加可能!
だが、ここで突入を見送ることで、次ラウンド目から攻略に当たることも可能だ

GM :後者のメリットは、推奨条件を満たさず『これ詰むくね?』となった際の詰み防止でごわす

GM :特に人数に関して言えばマジでこのぐらい手数がないとヤバいので

GM :ボス戦に入る前に、今の面子で突撃するか否かを確認しておく必要がある訳ですねえ

ダン・レイリー :最低限、彼我の戦力予測を立てて臨めということだな 理解しているよ

ダン・レイリー :………実際デトロイトに出向いている人員は4人(1人サポートNPC)。ミナセの手を引っ張り出すならばもう少し融通を利かせられる。これ以上の戦力を望むかどうか、だな。

ナタリー・ガルシア :質問ですが、このイベントに踏み込んで撤退を選んだ場合はどうなるんですの?

GM :その場合メンバーの消耗はそのまま、ボス建材のまま次ラウンドに持ち越しです

アトラ :おー……

GM :それと防衛判定に関してはボスが矢面に立つようになった段階で停止しますね

ブルー・ディキンソン :持ち越しなるほど。

ダン・レイリー :ボスの消耗もか? どちらにせよ、踏み込んで尚撤退はシンプルに損かも知れんな。

GM :ボスの消耗はそうですなあ そのままにしておくことにします。んが

アトラ :絵面的にド情けないことになっちゃいそうだけど敗走しても死なない限りは再挑戦……ぬ

GM :当然シーンを経てるので、その分エフェクト使用回数が増えます

ダン・レイリー :リソース管理という意味では不利になるか 痛み分けの消耗戦めいてくる

GM :敵が制圧してる限りリソースを吐き出され続けるので、攻めるなら最後まで攻め切るのが基本ですねえ

ダン・レイリー :尤もだ。こちらがガス欠する方が早い

ダン・レイリー :………それも踏まえて考えていくか………

アトラ :まーまー そうだよなぁ~

GM :そして一応、このタイミングでも決戦前にシーンを挟むことも可能です いんたーるーど

GM :処理的にはイベント後なのかね 
敵の本拠地に乗り込む直前ですからな

ナタリー・ガルシア :とりあえず、私は乗り込みたいですわね~~!

アトラ :カチコミ的には~ まあメンバー的には問題ない?のかな?

ダン・レイリー :こちらも異議はない。割けるだけの戦力を割いたつもりだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :余力は残しておきました。こちらも何時でも行けます

水無瀬 進 :僕の方も、未だ残弾が残ってる。必要なら支援を送ろう

ダン・レイリー :ああ、各自当てにしている。総力戦と行くか

GM :最早引く気はないと!オーケイ!

GM :ではそうだな いざデトロイト!に行く前に

GM :シーンを展開したい場合は此処で展開できる どうします?

アトラ :お~

アトラ :ほいじゃ折角だしお話を……しちゃうか?

ナタリー・ガルシア :そうですわね……流れとしては、やはり決戦前夜でしょうか

GM :ふむ!

GM :その二名でのシーン展開を所望か! オーケイだ!

ダン・レイリー :二人でのシーン展開か。手隙になるが…ちょうどよいとも言えるな。

ダン・レイリー :こちらも話がある。“炎神の士師”を呼べるか?

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :? 私ですか?
ええ、構いませんが

ダン・レイリー :ン。ではそうさせて貰いたい。宜しく頼むよ

GM :ということはだ

GM :二人のインタールードのシーンを並行展開、ということになるな

ナタリー・ガルシア :このままでは、二つの領域がせめぎ合ってしまいますわね

アトラ :領域????

ダン・レイリー :僕のは主題というほど主題にはならないと思う。メインは其方に譲りたいが、どうだ?

GM :成程、了承が取れたならメインタブはナタリーアトラ、別タブにダン勇魚で展開といきますか

アトラ :ウチは構わないけども。いや異論出る話でもないし

ナタリー・ガルシア :ええ、ではお言葉に甘えますわ

ダン・レイリー :意見がまとまったなら問題ない。それで行こう

GM :よし、では……

GM :意見が固まったそうなので早速シーンを展開していきましょう!

GM :             コロニー
別タブは結界術に優れた俺が結界を生成する
少し待ってな

SYSTEM :
インタールードシーンを開始します。
インタールードを展開しています……




【Interlude⑥】

SYSTEM :【Interlude⑥】

登場PC: Natalie,ATRA
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ラクシャーサとの決戦を控えた夜。その旨を本部に通達したデトロイト攻略班は、現在配置された戦力での突撃を決定。
 このパラダイスロスト作戦にて、最初に落とすべき一角が決まった。

 結果がどうあろうと、これからラクシャーサと衝突することは避けられないだろう。

SYSTEM :
 ナタリー・ガルシアの人間性、信条というべきものを鑑みれば……それより前にどうしても、逢っておくべき人物がいた。

SYSTEM :
 デトロイト市街、リバーウォーク近辺の高級ホテル。UGNの支援が受けられないため、旅行客のカヴァーを装いとっておいた仮宿にて。
 高層ビルの夜景を背景に、二人はつかの間の休息の傍らで話の機会を得たのだった。

ナタリー・ガルシア :二人の間に、しばしの沈黙が落ちる。
思えば、この作戦が始まってから2週間……二人きりで会話をするというのは初めてだったと、ナタリーは今更ながらに思い至った。

この後に控えたものを考えれば、どうにも口は重くなる――なにせ、これは相手の内側に無遠慮に踏み込む行為に他ならないことだとナタリーは理解していたからだ。

その上で、アトラの部屋の扉を叩いたのは……

ナタリー・ガルシア :「その、すみません……こんな夜更けに、不躾だと思いましたが」

おずおずと口を開き、申し訳無さそうに若干視線を彷徨わせ――意を決して、アトラと視線を合わせる。

「ですが、どうしても知りたいことが、知っておきたいことが、あるのです――ラクシャーサについて」

アトラ :
「ん~…… ……高~」

 呑気に、煌びやかな夜の街を一度見やる。
 嘘偽りのない反応ではあった。稼業柄、身の安全を考えればこの手の施設に足を運ぶのも悪手ではないのだが───……自分のようなものに限ってはそうでもない。
 だから実質初体験だ。普段使うような寝屋を思えば雲泥の差である。……うーん、作戦部隊に片足を突っ込んでいるとこういう恩恵もあるのか。

 ……なんてことは、どうでも良くて、だ。

アトラ :
「……ん~、あー……うん。
 此処でその話題出されないとは思ってないしだいじょぶだけども……?」

 合った視線に、首を傾げてみる。

ナタリー・ガルシア :「そ、それなら良いのですが……その、やはり話しにくいことではないかと」

アトラ :
「むしろあんまり突っ込まれない方が怖いくらいじゃない?
 あの人をどうにかしたら即クビ切られたりしてもおかしくないし……」

ナタリー・ガルシア :「いえ、流石にそんなことは……勿論、アトラさんが降りたいというのであればやぶさかではありませんが」

目的を達成した上でなお、命の危険がある作戦に参加し続けろ……という方が不義理な気もするが。
とはいえ、乗りかかった船から途中で降りてはアトラが不要な不幸に見舞われる可能性もある――勿論、こちらの内情を知る者を自由にするわけにはいかないという側面もあるだろう。

「全てが丸く収まるまで、安全な場所で待機していてもらう――という選択肢もあると思いますわ」

ナタリー・ガルシア :「元々、アトラさんはラクシャーサを捕まえるという目的で作戦に参加していたわけですし……」

アトラ :
「わー。そりゃそういう配慮もあるか。ウチ本来部外者なわけだし。
 ブルーさんみたいにお偉いさんに絡んでたわけでもないし」

 ……まあ、道理としては何も間違っていない。“ラクシャーサ”の関係者として此処に立っている自分が“ラクシャーサ”を一先ず何とかしてしまえば……作戦全体に参加する意味があるかどうかは怪しいから、判断次第で降りることも出来る、と。
 ただ、それでは文字通りに途絶えるものがあるから選べない択だ。

アトラ :
「捕まえる……は、まあ、そうだね。
 キャプテンたちもいるからそこらへんには気を付けなきゃかもだけど……」

ナタリー・ガルシア :「……ラクシャーサ以外にも、目的が?」

若干の歯切れの悪さに、純粋に首を傾げる。

アトラ :
「あっ、いや。此処まで出張って来たのは勿論あの人が目的だし。
 あの人が……危ない組織の幹部とかやって、人さらいしてまでやろうとしてることを知るためなのに違いないんだけども」

アトラ :
「……あの人がナタリーちゃんとかキャプテンに何か言ったから、気になっちゃった……とかではない?もしかして」

        《竹馬の友》
 普段普通の人とはなあなあでやりとりしてるから読み間違ってもしゃあないか、と。
 一先ず相手の話を促してみようと適当を言う。

ナタリー・ガルシア :「……ええ、私がこれまで見てきたのは捉えどころがなく、恐ろしい顔を覗かせるラクシャーサだけですわ」

ナタリー・ガルシア :「けれど…………だからこそ、私は、ラクシャーサのことをよく知りたいと思いました」

もう数時間もしない間に、命を賭けて戦う相手のことを、知る手段があってなお知ろうとしない怠惰をナタリーは許すことが出来ない。

ナタリー・ガルシア :「ラクシャーサは、貴女に何かあれば手段を選ばないと我々を脅しました――私達が、もしもの時はアトラさんを人質にするかもしれないと懸念したのでしょう」

言葉の上で取り繕いはしたが、人質が丁重に扱われるのは条約と多くの人々の視線の中でだけだ。
非常事態、誰の目が届かない場所で行われるソレの悲惨さと醜悪さ、幸いなことに『己は知らない』ことをナタリーは知っている。

ナタリー・ガルシア :「ラクシャーサさは……あの方は、ずっと貴女を気にかけています。ジャームのように欲望に身を委ねても、明確な手綱を手放さず――多くを敵に回しながらも果たしたい目的があるのに、あまりにも無駄が多い」

ナタリー・ガルシア :「私は、その無駄を知るべきなのです――アトラさんが知る、あの方のことを教えていただけませんか?」

アトラ :
「ああ。物理的にも結構捉えどころないからなあ……ズルいよね~」

 そういう話ではないことは理解しているので、咳払いで誤魔化し。

アトラ :
「ナタリーちゃん凄いな。ウチが同じ立場だったら街を脅かす悪い人にそこまで気ぃ回せないよ。
 おまけに……ほら、誘拐されて、“預言者”だか何だかいう女の人にだって何かされかけたわけじゃん。あんまま行ってたら……多分もっと今より酷いことになってたし。
 もっと怒っても良い立場じゃない?」

アトラ :
「でも……うん、まあ、気にされてるのは……分かる。
 前の調査のときにウチも会ったんだけどね?まー、大人しくしてろだの何だの……。
 それが出来ないから此処まで追っかけたっていうのに。
 うーん。悪い人じゃない、って言うと月並みだし一般的には嘘なんだけど……」

 戦って戦って、生きて来たこと自体は事実。彼女がそう生きたのも事実。
 だから、実際……そういう方向での擁護は出来ない。他にどう口にしようかな悩みつつ、再度首を傾ける。

アトラ :
「ウチ、仕事人とも違うから目的に対する“無駄”ってのはいまいち分かんないんだけども……。
 ナタリーちゃん的にはどう?そういうのって単に付け入る隙に見えちゃったり……したら今みたいな質問はしないか……」

ナタリー・ガルシア :「そう、ですね、私は……」

怒っても良い、と、そう言うが――きっと、あの人はそんなことはしなかっただろう、という主観的な意見は一旦脇に置いて、ナタリーは考える。

例えば、見ず知らずの人間に、悪意を以て攫われたら。暴力を振るわれ、痛めつけられたら。

ナタリー・ガルシア :
「……私は、怒っても良かったんですわね」

ナタリー・ガルシア :どこか他人事のように、困ったように笑みを浮かべる。
その場、その瞬間、怒りをモチベーションにすることはきっと出来るだろう。
だが、それでは因果が逆だ。
怒りがあって、モチベーションになるのではなく――合理的な思考、己を律し、コントロールすることを積み重ねていった成果。

無駄がない、遊びがない。どこか歪な『答えから逆算した』行動。

ナタリー・ガルシア :「私は、善い人ではありませんから――けれど、善い人であろうとしています」

それは、何度か口にして、己の中でも常に自戒している言葉。

ナタリー・ガルシア :「けれど、何故、善い人になろうとしているのかは言っていませんでしたわね――ええ、勿論、お父様やお母様の背中を見てきたというのは大きな理由ですわ」

ああなりたい、善人であろうとする人々の気高さに憧れる。
そうありたい、皆が善くあれる世界を目指す姿を誇りに思う。

「けれど、一番大きな理由は――『善い人』でなければ、目指すものに届かないからですわ」

ナタリー・ガルシア :善い人に『なりたい』のではなく。
目的のために、善い人で『なければ』いけない。

それは、己の独善的な夢、欲望のため――ただ、結果として善き人であることが条件だっただけだ。

ナタリー・ガルシアは、その己の醜さを誰よりも自覚している。

ナタリー・ガルシア :「つまりは、そういうことです。私は、私の全ては、夢を叶えるために費やしている――だから、悲しんだり、怒ったり、落ち込んだり、をし続ける『余裕』が無いのでしょう」

遥かな高みを目指すために果てなき努力を己に課した。
その上で、歪まず、健全に、愛を受けて、幸せを享受して育つこともまた、ナタリーは己に課していた。

ナタリー・ガルシア :故に、余分がない。余裕がない。己の心の痛みに対して、許容範囲であれば誤魔化してしまえるほどに。

我慢できるならば我慢してしまう、痛みに泣くことに時間を割くことは出来ないから。

ナタリー・ガルシア :「ですから、私が今の状況に不満を抱えたり、ラクシャーサに怒りを覚えていないのは私の善性ではなく……私が、自分勝手だから、というわけですわ」

ナタリー・ガルシア :「その点で言えば、私の言う無駄というものは……人間的な情、と、言えば良いのでしょうか」

あるいは、ただ単に、言い換えてしまえば。

「アトラさんが、好きだと思うラクシャーサの良いところを教えてほしいのです」

ナタリー・ガルシア :たとえ、この先で対峙し、傷つけ、踏みにじることになったとしても――その時に、より傷つき、より多くの覚悟を必要とすることになったとしても。

「ラクシャーサの可愛いところや、かっこいいところ、優しいところでも構いませんわ――私が知らないラクシャーサ、この場ではアトラさんだけが知るラクシャーサを教えてほしいのです」

アトラ :
「だって、そりゃ……修行をしてたってまだ一般───……は言い過ぎでも、軍の人でもUGNさんでも無いんでしょ。
 命令されて、戦って、奪う、奪われる……って立場じゃないんだから、怒るべきだとは思うけど」

アトラ :
 他人事のように笑う少女の姿に、やや驚いたように呆ける。
 ……ただ、その心持ちの正体は直ぐに自身の口で明かされた。
 傍目に見れば彼女は普通に善人のように思う。が、そうではないらしい。譲れない部分があるのだろう、と。
 彼女の目指すものは、『善い人』でなければ成り得ない。……目指すべき真があるから、そうあらねばならない。

アトラ :
「……だから。その目標に費やしてるから、他の余裕がない、と。
 身にかかる事件だって全部受け入れちゃう……って言うと、違うのか。
 うーん、偉い……っていうのも違うんだよなぁ。凄い?ウチなんてナタリーちゃんくらいの歳の頃は、もう生きることばっかり考えてたって感じで」

アトラ :
 そこ自体は今も変わらないんだけど、と続けつつ、頷いてみせる。
 ……何かしらラインを決めている、のだろうか。あるいは、本当に受け入れて、その上で動くことを決めているのか。
 何方にしても、彼女くらいの年齢で無理してこなすことではないように思う。けど……自分のような浮浪者が言って改めるような安い欲望ではあるまい。
 もしそうなら、彼女の目標たる人物や師匠が既になんとかしてる。

アトラ :
「しかし、そっかぁ。あの人のねえ…… ……会ったならちょっとは分かると思うんだけど、ああ見えてしっかり暴力的、とか?
 捉えどころがないっていうか、思ったよりは子どもっぽくもあるというか。
 ウチだって、大事に大事にされてるってよりかは……まあ、既にそう見られてた気がするけど……姉妹、みたいな。
 だから全然手も出されるし、出すし。力じゃかなわないからそうなると言うこと聞くしかなくなっちゃうんだけど」

アトラ :
 ……うわあ、何か普通に恥ずかしい気がするなこれ。
 既に自分と彼女のやり取りは一度見られているわけで、どういうコミュニケーションをとってきたかは何となく察されてはいそうなのだが。
 改めて口にするとちょっと顔が熱くなる。そも、……。

アトラ :
「話し出しといてなんだけど、ナタリーちゃん的には識っておきたいことなんだよね?
 これから戦うんだとして。あの人が、…… ……まあ、最低でもウチは大丈夫でも、ナタリーちゃんの自由は奪うし、キャプテンたちはどうなるか分かんないとしても。
 ……うーん、この確認も最終的には善い人であるための行動ってことになるの?」

ナタリー・ガルシア :「偉い、のでしょうか……少し珍しい生き方だとは思いますが」

僅かに自嘲の色が浮かぶナタリーの声音は、己の生き方があまり人に誇れるものではないと考えているからだろう。

「それに、私はそれを許してもらえるだけの環境に居ましたから……本当にただそれだけの理由ですわ」

ナタリー・ガルシア :こほん、と、わざとらしく話題転換。親元を離れて暫く、最近あった『色々』の影響もあってどうにも弛んでいるのだろう。己の醜さや恥部を曝け出し、自責するのは堪え難いほど甘美で、だからこそそれに耽溺してはいけない。

「善い人になるため、というよりは悪い人にならないように、でしょうか……私の行動で不幸になる人は当然います。ですから、そこに目を向けるのは他者を押し除ける側の責務ですわ」

無知であっても罰は受けないが、無知であることは罪である──などと、少しばかり聞き齧った言葉を口にする。

ナタリー・ガルシア :「今、こうしてアトラさんの話を聞かなければ、私はラクシャーサに仲の良い姉妹のような方がいるだなんて──姉のように、誰かと深い絆を繋いでいるだなんて実感できませんでしたわ」

己が為すことを、きちんと理解した上で行う。不倶戴天の悪を斃したと己を肯定することよりも、己にも非があることを理解しながらも己の信ずることを行う方がはるかに苦しく難しい。

だからこそ、そこから逃げてはいけない。

ナタリー・ガルシア :「それに、お友達のお姉様の話を聞くのは楽しいですわ。私、一人っ子ですので」

アトラ :
「……ま、ウチにも何とも。自分でもそんな普通じゃないって分かってるだけマシなんかなあ」

アトラ :
「ウチもナタリーちゃんみたいに……まあ、力の使い方?教わってきたからさ。環境って意味じゃ爪先くらいは被って───……いやいや。
 それが何だ、ってくらいの相似でしかないから比較にもならんけど……」

 そういうものか、と。仮に同じ環境で、同じ体験をしてもこうなる自信は全くない。
 ……考え出そうと思ったが、咳払いにワハハと苦笑いで返してその話題の転換に乗っかることにした。
 そういう部分を掘り起こすには、此方の人生経験も足りていないから。困らせてしまってもイヤだし。

アトラ :
「…… ……」

 ……知らないことを当然として、胡坐をかいていることは罪か。
 彼女を止める前に、彼女を知る理由。戦う相手にも“繋がり”があることを確認する作業。その上で、対峙する。
 まあ、理由の方は分かった……納得するように軽く瞑目し頷く。

アトラ :
「……。けど、まあ。うん。別に血のつながった実の家族ってわけじゃないんだよ。
 そういう意味じゃナタリーちゃんともあんまり変わんないよ。ウチとあの人の関係。
 ほら、くだんのお偉いさん……“お姉さま”とか。それそこお師匠さんとかも結構お姉ちゃんっぽいんじゃない?」

 いや、あの人たちのことは其処まで知らんけども。

ナタリー・ガルシア :
「お、お姉様がお姉様に……!?」

――――――――――――めくるめく空想をなんとか振り払う

ナタリー・ガルシア :「そ、そうですわね、師匠(せんせい)は近所のお姉さんのような――憧れと尊敬を抱いていますわ。お姉様はその、とても素晴らしい方ですが、私と姉妹にだなんてそんな、ええ、畏れ多いですわ、ええ、本当に、ええ」

ナタリー・ガルシア :「でも、私、あまり人と喧嘩をしたことがありませんし……ましてや、姉妹で喧嘩しあえるだなんて少し羨ましいですわ」

ナタリー・ガルシア :「喧嘩は、仲が良くないと出来ない、とも言いますし――その点で言えば、アトラさんとラクシャーサは仲良し姉妹だったということですわね」

悪態のような、口のような人物評をしながらも、アトラから感じられたのは決して重く濁った悪意ではなかった。それは、頻繁にぶつかり合うほどの近さで、寄り添って生きてきたことの証左なのかもしれない。

アトラ :
「おー」

 面白いくらい取り乱しおる。少しばかり不敬だと怒られる覚悟もあったのだが、割と好意的に受け取ってもらえたらしい。

アトラ :
「あー。喧嘩してるイメージないもんなあお嬢様。
 まず話聞いちゃう的な。相手が喧嘩腰でも話してるうちに相手側が折れちゃう的な。
 そもそも今の作戦メンバーだとバチバチにやり合いに来る人も居ないもん。大人~だったり、ゆるふわ~っとしてたりで」

アトラ :
「…… ……けどまあ、うん、そうね。
 そう見えてるなら良かったよ。実際会うまではウチもちょっと不安だったりしたし」

 ……恥ずかしげもなく想うなら、“仲良し”でありたいのは今もそう。
 追いかけて此処まで来て、ともすれば見放されても仕方がない位置に居る自分に再三の警告を投げてくれたのだから……まあ、疑いはない。

ナタリー・ガルシア :「……はい、ですから、明日は喧嘩をしに行きましょう」

それは綺麗事で、理想論で、現実はそこまで甘くはないと理解していても――あるいは、目標のためならば、綺麗事を吐くべきだろう。

「――喧嘩をすれば、後は仲直りをするだけです。お互いに仲良しですから、きちんと仲直りできるはずですわ」

アトラ :
「……喧嘩して仲直りかあ。
 それだけで丸く収まるなら良いんだけどね。本当に。
 けど、…… ……まあ、言う通りだわ。大体、次会ったら容赦しないよ~って言われてるんだし。
 強く当たっちゃうぜ、ってことで。…… ……」

 ……でも、それだけじゃ多分叶わないものもあるんだよなあ。

アトラ :
「…… ……これは、まあ。考えたくもないなら聞き流してほしいんだけど。
 例えば───……まあ、例えばね?
 あの人や“預言者”に……向き合って、手を取ってみるっていうのはさあ……お嬢様に何の害もないなら、選択肢に入るの?」

 ……いや、どうだろう。状況で、とか、そういうのではない。
 多分あの場で衝動のまま手を伸ばさなかったのは、彼女の……その、欲だか願いだか、真の部分故だろうし。

ナタリー・ガルシア :「ええ、そのいきですわ!お灸を据えて差し上げましょう!」

アトラが呑み込んだ言葉には気づかないふりをして、ナタリーは明るく振る舞う。

その上で、挙げられた『もしも』の話を考える。

「難しい話ですわね……私の害にならない、譲れないものを尊重してくれるのであれば……」

ナタリー・ガルシア :
「そうですわね、それであれば、きっと手を取り合えるでしょう――けれど、それはもう、預言者やラクシャーサではない、別人ですわ」

譲れない一線、どうしてもぶつかってしまう目的。
大前提を覆さなければ、このもしもは成立しない。

「こんな回答がほしい訳ではありませんわよね、ごめんなさい――ええ、お互いにどちらかが道を譲るのであれば、共に行くことも出来るでしょう」

アトラ :
「…… ……ああ、うん、ごめん。ウチも変なこと言った。
 その一線を越える、…… ……何かでも出てこない限りは平行線だって。そんなもん分かってるのに変な質問しちゃったなぁ」

 ……あの人も、“預言者”も、目の前の彼女も。譲らぬものがあるから此処まで来ている。
 その前提を何も考えず無為に取り払うのは……それこそ夢物語、夢想甚だしい。

アトラ :
「っていうかこんな話するんじゃ『戦う前に相手のこと知ろうとしちゃうの?』って思ってた身としては負けてないじゃんね~」

 呑気さが。……いや、彼女のは呑気でも何でもなかったのだから、この場合自分がちょっと明後日を見ただけか。
 ぶん、と頭を振る。ごめんごめん、と再度謝りつつ。

アトラ :
「気合いっぱいだったのに若干勢い削いじゃったかな~。
 明日殴り込む前にキャプテンたちともっかい気合入れ直しちゃうか」

ナタリー・ガルシア :「いいえ、もしもを考えることは大事ですわ。そのもしもに溺れない限りは、ですが」

可能性を考えても、可能性に囚われてはいけない。それは、今から目を背け、昨日だけを見つめる行為だからだ。

「ええ、円陣でも組みますか?それともやはりえいえいおーでしょうか!」

アトラ :
「円陣組むならもっと人数欲しいかもなあ。
 っていうか言っといてなんだけど、ノッてくれるもん?軍人さんと真面目なUGNさんじゃん」

ナタリー・ガルシア :「………………案外、勢いで押せばなんとかなる方々ですわ!」

アトラ :「そっかなぁ!?」

ナタリー・ガルシア :「ええ!」

アトラ :「そっかぁ……」

ナタリー・ガルシア :「もしも勢いで難しければ……」

ナタリー・ガルシア : 

ナタリー・ガルシア :「これ、ですわ」

アトラ :「…… …………」

アトラ :「……」 良い子がやる手段じゃなくない?

アトラ :「まあナタリーちゃんなら押し切れるかぁ」

ナタリー・ガルシア :「任せてくださいまし、アトラさんも味方をしてくださるなら勝ったも同然ですわ」

アトラ :「勝ち負けの問題だったかぁ……」

"アダム" :
 ──ああ……全く以て悪い子だ。
 
 打算と計算で善行を積む模倣の道か。近い予感な気はしてたが、案の定キミもソドムの末裔というわけだ。

 そして相も変わらず、同じ間違いを犯している

"アダム" :
 だがその点で言うならキミは運がいい。
 善人になりたいならやや需要は異なるが、「正義」になら近いものになれるだろう。

"アダム" :
 何せ『罪人を裁く』などと、これ以上に正義としてふさわしい行いはない。
 だがそれを善人として全うする気なら……

"アダム" :
 キミの積み重ねが試されるだろう。
 尤も、すべてはキミが生きて帰れたら、の話だがね。

SYSTEM :
 男の声が響く。
             アダム
 罪人の末裔にのみ届く、「人間」を名乗りし非人間が、試練の道へ案内する。

SYSTEM :
 そしてラクシャーサは、自らの決して譲れぬ欲望のため、その先で待ち続ける。
 その理由の重さを誰よりアトラは知りながらも、時間は留まることを知らずに流れ続ける。

SYSTEM :
 ──罪人に下される審判の刻は近い。

 その判決が何処かに傾くか。
 まさしく、神のみぞ知ることであった。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :

SYSTEM :
【check!】
 シーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ナタリー・ガルシア :ワタクシはアトラさんに取らせていただきますわ

アトラ :ウチもナタリーちゃんにとっとこう!お話もしたしね

GM :おお 相互に

GM :オーケイ!ではどんな感情なのかしら

ナタリー・ガルシア :○P友情/N不安
ですわ

アトラ :
ウチからは~P:〇尊敬/N:隔意!

GM :オッケイ!女の子同士のあじだねえ

GM :ではキャラシに記載おねがいしまーす

アトラ :おっけ~

SYSTEM :
イベントシーンを開始します。
イベントを展開しています……




【MIDDLE ⑤ - 血戦-千刃空夜叉】

SYSTEM :
         ラ ク シ ャ ー サ
【MIDDLE ⑤ - 血戦-千刃空夜叉】

登場PC: Natalie , Dan , ATORA
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 ──そして、時が満ちる。

 デトロイト・ダウンタウンに屹立するO-tec本社ビル。決戦の舞台となるこの白亜の塔に、一同はやってきた。
 時刻は夜22時を回る。デトロイト川から吹く寒風が静かに吹き抜ける。

SYSTEM :
 だが、潜入の体でビルの付近までやって来たものの、気配を探れば違和感は増すばかりだ。
 ここまで近づいたというのに、何ら敵からのリアクションはない。ばかりか、熱反応らしきものがほとんど見られないのである。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は熱反応を隠して索敵が出来る能力を活かし、先行し道を開いていた。のだが……

「……普通なら、囮に反応して何かしら手駒を寄越してくる頃だとは思いましたが。
 何か、様子がおかしい」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 正門の前、訝しるように腕を組んで勇魚は続ける。

「件の機甲猟兵ならともかく、雑兵の一人すら気配一つ見せない。民間人の一般社員らしき気配もありません。
 ……先約通り、本気で『一人で相手になる』つもり、なのでしょうか」
 

ダン・レイリー :
「あるいは腹の内まで誘っているということも、考えられないことではない、が───」

ダン・レイリー :
 ………熱源探知に引っ掛からなかった、というのは問題だ。
 連中ご自慢の機甲猟兵の、一台たりとも配備されていない、ということになる。

「………その線で見た方がいいかな。とはいえ文字通り単身で出迎えるとして、堂々やってやる意味もない。
 入る前から、違和感は見落とすんじゃないぞ」

ナタリー・ガルシア :「遊びか、足手まといになるのか、はたまた全員巻き込んでしまうからなのか……なんにせよ、良い予感はしませんわね」

アトラ :
「……そもそも、街からして巣みたいなもんだし。どう出てくる気なのか……は、ちょっと分からんっすけど」

 いやいや、楽に越したことはないんじゃないすか。……とか。
 そんなこと言ってたんなら、そうなんじゃないすか?とか。考えてはみたが、口に出さず。ビルを見上げる。

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
「“T³”。
 きみから見た”ラクシャーサ”というのは、どうだ」

ダン・レイリー :
「自分がやらなければいけないことを、
 他人に分担させるようなヤツか?」

アトラ :「……」

ダン・レイリー :
「いや、いい。
はいかいいえ
 Y or N の出ない言葉だな?」

アトラ :
「……そう、だけど。
 少なくとも、やることはやる人だから……」

 うーむ、と首を傾けておく。あっちも切羽詰まってはいるはずで、何をしてきても驚きはしないつもりではあるが……。実際、“わからん”が正だ。

ダン・レイリー :………。逃げ道を用意したつもりだがな。この分だと本当に”判断がつかない”か。

ダン・レイリー :
「分かった。
 何方の可能性も考えるか。どのみち此処でごたついて、先手を取られても事だよ」

ダン・レイリー :
 ………念のためここで偏差把握を使おう。また、暫くこれは可能ならばオンにしておきたい。

 既に件の糸や、何かしらの手掛かりが此方を絡めとる支度をしていてもおかしくない。何もなければそれでいいからな。

ダン・レイリー :もう一つ使うつもりだったが………そっちはいいだろう。余分になりそうだ。

ナタリー・ガルシア :私も蝙蝠の耳をオンにしておきましょう

GM :了解です。範囲は視界でしたな確か

GM :蝙蝠の耳も了解です。では……

SYSTEM :
 突入前にビルの周囲に気配を探ろうとする。
 熱反応が感じられずとも、何かしらの手掛かりが見られるはず。その気配を負い、偏差把握と気流を読み、敵の反応を捜す。

SYSTEM :
 注意深く探ることで、漸く明確な反応が見えた。
 ……というより、恐らくはあちらが今、姿を晒したのだろう。
       メガストラクチャ
 はるか上空。超高層ビルの屋上。
 ヘリポートから崖を見下ろすように、女は立っていた。

"ラクシャーサ" :
 その背格好も、その風体も、見紛う筈もない。
 帯剣したシミターを引き抜いたラクシャーサは、夜風に長髪を靡かせながら高みより一同を見下ろしていた。

"ラクシャーサ" :
「ふうん。
 逃げずに、やって来たみたいだね」

"ラクシャーサ" :
 集まった戦士たちを見下ろして、満足げに嗤いながら呟いて……最後にアトラに視線を向ける。
 女は露骨に嫌そうに顔をしかめて息をつく。

「……あんたは逃げなっつったのに。
 ま、いいや。まだここ嗅ぎまわってるのは話に聞いてたしね」

ダン・レイリー :
「………ああ言った手前もあるのでな。
 自分の墓石が半ばで立つなら、
.. チキン     ドレッドノート
 臆病者よりかは向こう見ずが望ましい」

 ………本当に出迎えは一人。周囲の気配もない。
 あるいは、此方が感知できないだけか。現に、奴が姿を現して漸く”認識”できる状態だ。

アトラ :
「…… ……」

 身を隠すような壁も人もなく、視線を受け止める。
 夜闇を背に立つ女性の表情に、う、と苦悶の声を漏らして。

アトラ :
「……だってまだ“納得”の部分が済んでないんだもん。
 他に理由だって、ないわけじゃないし……」

ナタリー・ガルシア :「私もアトラさんと同じく、ですわ――色々考えましたが、私達と貴女の道は平行線です」

ですが、と、己に体に力を込める。

「ですから、覚悟してくださいまし。今から全力でぶつかりに行きますわ」

"ラクシャーサ" :
「じゃあ墓には立派にそう刻んでおくと約束しよう、剣士の情けだ。
            ブラックモア
 戦いの中で死ねるのは、同類方 みたいなのにとっちゃ名誉なんでしょうよ」

"ラクシャーサ" :
「……あ、そ。
 でも前言った通りだよ、アトラ。またここで会った以上、やることはコッキリ一つ。
 
 今日はあんま加減しないつもり出来てるから、そのつもりでいなさい」

"ラクシャーサ" :
「その点で言えば……成程、そっちはやる気十分。
 いいじゃないお姫様、あたしもそのぐらいのノリが一番いい。
 エヴァンジェリン
 " 預 言 者 "には手ぇ出すなって言われてるけど、これは契約外っしょ」

 とんとん、とシミターを肩に掛けて、犬歯を剥いて嗤う。

"ラクシャーサ" :
         シ ー ラ ー
「おまけにあの時の封印者も。
 あの時は、まあお互いソッチの力には殆ど触れちゃいなかったけど……」

 次いで、勇魚の方を見遣り。

"ラクシャーサ" :
「キミはどうするつもりか知らないけど、私は今日は結構やる気だ。どっちの『遺物』が強いか勝負といこうじゃない」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……生憎、私に戦いに興じる趣味はない。
 ただ、責務を全うするのみ。
 その身に宿った奇跡、その悉くを此処で封印し……シャンバラを、討つ」

ダン・レイリー :あのような真似をしておいて尚も“剣士の情け”とはな。皮肉なだけならそれでいいが………。

ダン・レイリー :
「勿論………刻めたならばだ。
  ブラックモア
 その同類がどうだか知らんが、此方はまだ死神には嫌われているつもりだからね」

アトラ :
「……そりゃ、そっちがずっとずーっと探して辿り着いたんなら、やっぱり機会も“これ”だけなのかもしれないけどさ」

 鞄を引き寄せ、散弾銃を握りしめる。聞こえた“預言者”の名に、一度ナタリーを見やり、今一度ビルを見上げ───……。

アトラ :
「ブッ叩かれて、ふん縛られたって、まだこっちは……抵抗するだけの価値もあるって信じたいし?」

 ……別に?凄まれたって今更怖くないし。……いや、余計な思考だ。虚勢でも何でも、バレるものは直ぐバレる。

ナタリー・ガルシア :「(これが巡礼の旅だというのであれば……この苦難もまた、乗り越えていかねばなりません)」

それに、『預言者』の言葉、その真意。この旅路の先に、きっと再び相まみえるであろう彼女。
その時、ナタリー・ガルシアは何を思うのだろうか。

"ラクシャーサ" :
「死神に嫌われている、ね。
 ……そんなに好かれたいなら、丁度いい……」

 シミターを手元で躍らせ、数回転。
 逆手に取り、腕を十字に交差させる。
 それは宛ら、何かに祈りを捧げる形のようで。

「私の死神を見せてあげる」

"ラクシャーサ" :
「じゃあ──やろうか」

"ラクシャーサ" :
 ドクン。
 拍動が一層強まり、強大なレネゲイドの奔流が解き放たれる。
 既に視覚化されるほどの高密度の力がラクシャーサの周囲を覆い、激発の時を待つように収束していく。

 超巨大なレネゲイドの奔流は、防衛本能が自発的に衝動を励起させた。
 何かが、来る。

SYSTEM :
 しかし、その気迫と共に周囲を覆い始めたものは……
 気迫の烈々しさとはまったく性質を異とするものだった。

SYSTEM :
 ────────雪が、降り注ぐ。

アトラ :「…… ……!」

ダン・レイリー :「………雪? いや違う、こいつは、」 

SYSTEM :
 白く、輝ける粒子が降り注ぐ。
 静かに、浄化を齎す如くに圏内を覆い尽くす。


 それは、原風景。

 あの止むことなき白い雪に埋もれた災厄の具現。

ナタリー・ガルシア :「これは、まるで……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「雪……いや、違う、これは、まるで──」

 いち早くその正体に気付き始めた勇魚は、慄然と呟く。しかし、注意を促すより前に、事態は訪れる。

"ラクシャーサ" :
 降り注ぎ続ける雪の中、目を剥いて戦鬼が吼える。
 己の内に抱えた衝動を剥き出しにして、十字に構えた姿勢から致命的な何かが茨のように超高速で展開される。

「さあ、こっからは手加減抜きだ……!」

"ラクシャーサ" :
    ワ ー デ ィ ン グ - セ ッ ト
「──  聖  別  帯  域  ──」
 

SYSTEM :
 瞬間──。

 ワーディング領域の張られた半径140m、そのすべてが……
     ・・・・・・・・・・・・・
 まるで、凍てつくように晶化していく。

ダン・レイリー :「………これは───!」

ダン・レイリー :
「(サラマンダー・シンドロームの冷却現象………ではない!
  ヤツのシンドロームは二つ、その中のどちらにも“それ”はない!)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「モルフェウスシンドローム寄りの効果……しかし、これはそれだけじゃない!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「その雪を吸い込まないで!
         カウンターレネゲイド
 これは……恐らく 対 抗 種 !」

ダン・レイリー :
   ・・・・・・・
「………レネゲイド殺しか!」

 なるほど、伏せ札なわけだ!
 すぐに片手をあげて、銃を構える。警戒は厳と成し、踏みしめる足場の状況も並行して確認する。

 モルフェウスのものだとしても、明らかな異常………レネゲイドの種別違いが成せる業ではない。
 他に何かがあっても、おかしくはない!

アトラ :
「……どうやってんのよ、これ」

 何か複雑な色の混じった感情の言葉は降り注ぐ“雪”に吸い込まれるように消える。
 張り巡らされた結晶が、辺りを包む───……ぎゅっと、武器の収められた鞄を強く握る。

ナタリー・ガルシア :……場違いにも思い出すのは、夢の中の都市。

あの街が、罪の都だと言うのであれば、これは偶然なのだろうか。

奇しくも、同じ『楽園』を冠する者たち――想起されるのは、その罪の都の最後。

ナタリー・ガルシア :「(塩の柱――あの街が辿ったと言われる結末。それもレネゲイドを滅ぼすレネゲイドの力で)」

飛んだ指示に応えるよりも、息を止めることを優先する。降り注ぐそれは、幻想的であり、どこまでも生を廃した死の景色――清らかで、何者も住まうことの出来ない聖域だ。

ナタリー・ガルシア :「――――」

夢の中で出会った少女の顔が、思考の中に覗く。けれど、意識して眼の前の全てに神経を集中、余計な思考を削ぎ落とす。
感傷も雑念も、今は、目の前の事以外は不要とする。

意思を燃やして、集中力を尖らせる――己の、己達のすべてを賭けて、今、血戦が始まる。

"ラクシャーサ" :
「御名答ォ! もっとも、おたくらの想像の数倍ヤバい代物だけどね……!

 さあ、精々目をかっぴらいてよく見なさい!
 これが私たちが始まりに見た、原風景──」

SYSTEM :
                             サ ン ク タ ム
 凝り、固まる、一切万象を塩の結晶へと変えながら広がり行く絶滅聖域。
 ネツィヴメラー
 浄火の柱。

 その中心でラクシャーサは、自ら負わされた罰のカタチを、こう叫んだ。

"ラクシャーサ" :
 
         ワディ・エル・ミルフ
  ────『 劫  罰  蝕  晶  峪 』ッ!!!


SYSTEM :
 白く降り積もる塩の雪に、背徳のデトロイトが浄化される。
 汝ら罪ありと弾劾し、劫罰を下すが如くに。
 景色を浸食する水晶峡谷で、界を仕切る無数の死晶が花開いた。
 

"ラクシャーサ" :
 ワディ・エル・ミルフ
【劫 罰 蝕 晶 峪】
オートアクション:《ワーディング》
アイテム:《プレイグ》

効果:シーン内のキャラに、邪毒LV3を付与する。(シーン中解除不可)

ダン・レイリー :
 白く降り積もる雪が、見渡す限りの全てを蝕んでいく。
 在る形を、非ざる形に塗り替えていくその様を、現実のものと知っているのは自分達だけだ。これをそうだと、塗り替えられていく側が認識出来るはずがない。

ダン・レイリー :
.   フィクション  リアリティ
「───神の時代が人の時代を蹂躙するのがオーヴァード。
 知ってはいたがな、こんなものとは………」

 絵は人を傷つけられず、
 人は逆に容易く絵を傷つけられる。

 こんなデタラメが街並みを塗り替え、あわよくばこちらも手に掛けようなどというのは、それをアベコベにしたようなものだ。

ダン・レイリー :
「刮目させて貰った。
 であればその嵐、止める義務が出来たな」

SYSTEM :
 物質を結合する白い塩基の雪。
 触れた端から茨に変じ、防護を容易くすり抜けて、白い雪は染み渡り、内側より蝕んでいく。
 それは無論、人も例外ではなかった。ビルを見上げ、立ちはだかる一同に対しても、等しくそれは訪れる。
 少しずつ。だが確実に。その体の表面を。体内を。等しく塩の結晶に変えて蝕んでいく。

SYSTEM :
       ・・・・・・・
 ただ一人……アトラを除いて。
 

SYSTEM :
【ユニット:アトラの邪毒を解除します】

アトラ :
 きらきら煌く死結晶に光が乱反射する。創出されたのは、強く輝く何かがあれば目でも焼かれそうな降り積もる雪の晶。
 そうして現れたのは、雪降る谷。保菌者を死に至らしめる雪。世界を覆う白。“私たちの原風景”───……。

アトラ :
「……普通じゃなさすぎでしょ。
 ちょっと熱、入りすぎじゃないの!?目にも心にも毒だって……!」
 
 これから戦おう、って相手に、平気なのか問うのは躊躇われた、が。
 特に目はウソを吐けない。心底複雑な表情は、崩れない。

ダン・レイリー :
 ………旧き時代に曰く。
 欲望と堕落に満ちた都市に、神は赫怒を以て、それを罰する硫黄と火の雨を放ったという。

 その際にとくべつ信仰の篤かったとある夫婦は逃げる機会を赦されたが、
           メイレイ
 振り返るなという神の忠告を無視したが故に、その姿を塩の柱に変えられたのだと………。

ダン・レイリー :
 影響は体内と体外の両方に出て、その実態は塩の結晶。
 それを思い浮かべたから、尚の事先程の話だ。性質が悪いと毒づいて、周囲の状況を見る。例外なく同化する風景と仲間を見て、それから───。

ダン・レイリー :
「(………“T³”にだけ………影響がない?)」

 それに気付いて、視線が止まる。

ダン・レイリー :
 ………躊躇か?
 いや、そんな器用な能力には思えない。

ダン・レイリー :
 ………そもそもそんな器用が出来るならば、単身で戦う必要はない。
 手を抜いて互角にすることと、手を尽くして互角にすることは違うからだ。

 しかし、

ダン・レイリー :
「(………イヤ。今は、後回しだな)」

 思考を後回しにする。そこで揉めたら仲良く御陀仏だ。
 誰でも御免被るが、この面子を道連れというのは、特に御免被る。

ナタリー・ガルシア :掠れた咳のような呼気が漏れる。
呼吸を止めようと、存在ごと蝕む聖別の雪。
影響は直ちに、内と外の双方が侵される。

白んだ指先は、決して降り注ぐ白が付着しているだけではないのだろう。不快感とも嫌悪感とも付かぬ、ノイズのような感触――それが病巣のように体の奥に巣食っている。

「――寒くて凍えることがないのは救いですわね」

ナタリー・ガルシア :軋みをあげそうになる心に燃料を焚べる。
立ち向かう意味を。
前に進む勇気を。
恐怖と向き合うための信念を。
背けるべきものからは目を背け、反芻と想起によって冷徹さと勇気を両立させる。

「確かに驚異、ですが……すぐさま命を落とすようなものではないようですわね」

それならばやりようはある、はずだと自分に言い聞かせる。発動した瞬間に即死するようなものでないのであれば――

ナタリー・ガルシア :「――ええ、時間があるのであれば、その間せいいっぱい足掻きましょう。そうすれば、貴女にもいつか届くでしょうから」

そう、ラクシャーサを見据える。
瞳に怯えはなく、静かに燃える意思の灯火が相対する彼女を確かに捉えていた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
          チカラ
「成程、それが遺産の能力……
             ・・・・・・・・・・・・・・・・
 契約遺物の能力とは、即ちワーディングにすら致死性を与える程の高密度の対抗種……」

 パキパキ、と結晶化するのを、自らのレネゲイドを高めて辛うじて抑える。
 だが、進行を抑えられるだけだ。それは着実に蓄積し、体を蝕んでいる。

SYSTEM :
 そもそもワーディングエフェクトとは三次元的な空間として表現されるが、厳密には自身の因子を拡散する基礎技能だ。
 RCの巧拙に応じて散布範囲・濃度を自由に設定し、これに対抗できない生物を気絶、ないし除外する基本技能。
 あまりに強力なワーディングの場合は、その力の前に自身のレネゲイドが防衛反応を起こし衝動を掻き立てられることもある。
 

SYSTEM :
 だが……それらはすべて物質的効果を持たない。
 飽く迄それ自体が物質に干渉することはない。
 本来ならば。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 ワディ・エル・ミルフ
「 塩 の 谷 ……ヨルダン由来か。
 それもこれは、創世記に伝わる背徳を罰した塩の浄火……!」

 ──古来よりオリエントには、征服地へ呪いをかける風習として塩を撒く行いがなされた。
 塩を撒くとは絶滅の呪術行為であり儀式。先住民の呪いと、撒いた種のすべてを根絶やしにするための……

"ラクシャーサ" :
「その通り。
 ネツィヴメラー
 浄火の柱……これがあたしの身体に巣食う魔物の力。

 レネゲイドも、そうでないものですら焼き尽くす死神さ」

SYSTEM :
 しかし、オールドレネゲイドの対抗種であり、絶滅を目的として造られたものであるならば話は違う。

 その殺傷力はワーディングに散布されるレネゲイドにすら、致死性の力を与え力の発現に制限する。

 そしてそれは、確実に領域内のオーヴァードを殺傷するために非オーヴァードに対してさえ発生するのだ。

SYSTEM :
 この塩土化の聖域に逃げ場はない。発現すれば、人であろうと人を超えた者であろうと皆殺しにする。
 起動し、拡散する因子は、自動的に接触した物体を結晶化・吸収する。
 
 オーヴァード カウンターレネゲイド
 発症者には 対 抗 種 が。
 
 健常者にはモルフェウスによる物質変換が。
 
 ワディ・エル・ミルフ
 劫罰蝕晶峪 が消えるまで、絶え間なく浴びせられる。

SYSTEM :
 そして特筆すべき点が一つ。

 ・・・・・・・・・・
 この能力に消耗はない。

SYSTEM :
 これは因子の放散に過ぎないからだ。
 少し扱いに慣れれば人に教わるまでも無く身に付く基本的な行為。
 さらにこの発動圏内は既に見せたように、街一つに及び押し広げる事も可能なのだ。

SYSTEM :
 単なるワーディング効果だけで、周囲の環境を塗り替え、領域内のすべてを殺し尽くす。
 それは一切の消耗なく、そこにいるだけで大量虐殺を可能とすることに他ならない。
 

SYSTEM :
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ……極論、ワーディングを垂れ流してこの国を横断するだけで。

 北アメリカ大陸の大半は草木一つ生えない死の大地へと変じる。

SYSTEM :
 殺仏殺祖、一切鏖殺。残るのは晶の山脈の只中に立つ剣鬼のみ。
 
 殺戮性能だけで言うなら、彼女のそれはシャンバラでもトップクラスに位置する。
 ……遺産とは時として世界を滅ぼしうる力となる、と勇魚は言った。
 これはまさに、それだけで地上を滅ぼしうる災厄に他ならない。

ダン・レイリー :
「………そう。
    
 これは、ただ殺傷能力を持ち、
          ・・・・・・
 呼吸に等しいだけのワーディングだ」

ダン・レイリー :
 ………そう。
 これはワーディングさえも殺傷力を持ち得るというだけ。

 レネゲイドウイルスは知っての通り病だが、感染=即死のものではない。
 ………問題は、これが、その保菌者の闊歩だけで遍く人を滅ぼし得るもの。
    プレイグ
 まさに疫病だということだ。そして、

ダン・レイリー :
「………最後まではやり方を択んでくれるとは、良心かセンチメンタルもあったものだな」

ダン・レイリー :
 ………そんなものさえ余技に出来る以上、切らなかった理由があるはずだ。
 歩けば人を殺せるものを、此処まで大事に仕舞い込んでいた理由が───。

 出し惜しみ、伏せていた底こそが。

ダン・レイリー :
「いずれにせよ、長期戦はやっていられんか。
 我々は死ににくいだけだ、自分の命を過信し過ぎるなよ!」

アトラ :
 一度感じた視線にイヤな汗をかいたまま、頷く。
 まあ、……この状況で自分の状態に気付かない者が“専門家”は名乗れまい。傍らに立つ者たちとは違う意味で気分と体調が悪くなりそうだ。が。
 速やかに止めなければならない者がいるのだ。それを、戦う者たちは分かっている───……だから、身体に結晶ひとつ生じなくとも恐らくは触れてこない。
 今は、と頭につくが。

アトラ :
「(……助かる、けど。後が怖いなあ。なんて、言おう)」

 どの道、ダン・レイリーの言うように彼女を乗り越えねば此方のチームには後なんてものはない。
 だからもう一度頷いて、応える。

アトラ :
「……気は強めにもって、頑張りますか。
 ウチらだけじゃ作戦大失敗でした、とか……お仲間さんたちに笑われちゃいますよ~」

 自分以外が、にはなってしまいそうだが。

"ラクシャーサ" :
「そういうこと。
 ……そら、上がっておいでよ。
 このまま、彫像になりたくないんならね……!」
      メガストラクチャ
 遥か彼方。高層建築物の上空100m以上の高みから、ラクシャーサは嗤っている。
 同じステージに上がってこいというかのように。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「すぐさま即死という訳じゃないとはいえ、この侵蝕スピード……ビルの中を悠長に上がってる暇はない……!
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 このままビルの壁面を走破します!」
 
 悠長な真似をしていれば、それだけで体を蝕む塩の結晶に侵され殺される。
 これは別段、自分たちも他人事ではない。ビルの中に突っ込んで階段を駆け上るなどと回りくどい真似をしているだけで、相手が待っていようと逃げようと変わらずに毒殺される。

ダン・レイリー :
       ハヌマーン
「………今だけはヤツが少々羨ましくなったな」

ダン・レイリー :
「了解した───異議など挟む余地はない。
 欠員を出して帰るつもりもないんだ。行くぞ」

ナタリー・ガルシア :「任せてください、木登りなら多少は心得がありますわ!」

アトラ :
「マジっすか」

 いや、合理的ではあるのだが。……本気らしいな、この感じだと。

ダン・レイリー :「ああ、マジだ。代わりに言うが、」

ダン・レイリー :「無茶を通す状況だ。付き合って貰う」

アトラ :「……う、うす」 拒否する気もありはしないし。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「勿論、移動能力が足りない場合こちらからも《氷の回廊》でサポートします」
 

水無瀬 進 :
『そういうことならこっちもサポートしよう!』

 端末から映像越しに水無瀬の言葉が響く

『僕の方からは、自力で走れる子に電磁力をかけて走りやすくしておこう』

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「では……行きます!」

 力強く、地面に右手を当てる。
 当てた炎の回廊は、そのまま地表を這い、ビルの壁面を進み道を作り出した。

 轟々と燃える炎、それがラクシャーサの死闘の開戦の号砲として、遂に剣鬼狩りの血戦が始まる

SYSTEM :
【ボス戦『血戦・ラクシャーサ』を開始します。
 ラクシャーサ戦はFS判定と戦闘によって行われます】

SYSTEM :【FS判定シート】
内容:血戦・千刃の峪
終了条件:5ラウンド経過
完了値:10
難易度:6
判定:【肉体】
支援判定:【感覚】
最大達成値:30
経験点:2

SYSTEM :
内容:
 遂にその能力の本質を見せたラクシャーサ。発動した『劫罰蝕晶峪』は、立ち向かう一同に不可避の侵蝕を始めている。
 体を蝕む結晶の毒は、十分と経たずにその体を犯し尽くし結晶の柱と化すであろう。
 最早一刻の猶予もない。ビルの壁面を一気に駆け上がり、敵の妨害を掻い潜りながら最短距離でラクシャーサの元に辿り着け!

SYSTEM :《ROUND 1》

SYSTEM :-SETUP PROCESS-

SYSTEM :1d100 ハプニングチャート (1D100) > 4

SYSTEM :
【何事も無し】

アトラ :お~ セーフセーフ

GM :ぐぎ 折角作ったのにいきなり何事もねえとは

ダン・レイリー :これならば初動は成功したと思える

ダン・レイリー :………問題は次からだな………

アトラ :何が起こるかわかんないっすね……

ナタリー・ガルシア :とりあえず、最初の一歩は可もなく不可もなくといったところでしょうか

ダン・レイリー :ダメで元々だ。念のため聞くぞ。

ダン・レイリー :《赤方偏移世界》は行動値の増加、移動距離の増加に繋がるエフェクトだ。

ダン・レイリー :セットアップ用のエフェクトだが、これを使用した場合、何かしらの加点があるか?

GM :ふむ……成程

GM :移動距離の増加、それなら確かにアリだと思います

ナタリー・ガルシア :それでは、私の軽功もなにかしらの影響は出る、ということでしょうか?

GM :それは勿論 何せここで使わなきゃ何処で使うんですお嬢!

ナタリー・ガルシア :レッスン4はこのために……!

アトラ :おぉ~……ウチは……特に何もない!足と腰が全て!

ダン・レイリー :遠回りこそが最短の道だった、か…

紅 蘭芳 :軽功修業は、このために!

紅 蘭芳 :あったのかなあ……?あったってコトで!

ダン・レイリー :自信を持ってくれ 教え子は教官の背を見るものだ

GM :では赤方偏移を使用した場合、達成値が+2されるとしましょう

ナタリー・ガルシア :ええ、実際今役に立っていますわ

ダン・レイリー :そして固定値か……… 

GM :軽功を遣った場合は目標値が1下がります

ナタリー・ガルシア :では、私は常時少しだけ簡単な判定に挑めるということですわね

GM :そういうことですな 赤方偏移は達成値が上がるので

GM :10以上のボーナスを狙いやすくなるってところです

ダン・レイリー :その効果ならば…ベターな対象は僕ではないように思える。

アトラ :いいじゃんいいじゃん!

ダン・レイリー :ならば念のため此処で聞くか。

ダン・レイリー :こちらには同じくEEの《偏差把握》というのがある。あれはどういう扱いだ?

ナタリー・ガルシア :支援も含めれば、かなりの援護になりそうですわね

ダン・レイリー :もし機能するならば視野が広がるが、全く機能しないのであれば………予定通りだ。ナタリーにこれを使うのは三度目になるが、やってもらいたい。

GM :んー……偏差把握だと厳しいかもですね

ナタリー・ガルシア :段々と戦法として確立サれてきましたわね

ダン・レイリー :経験はそのまま応用力に直結するからな。

GM :此方は探知がメイン用途ですから厳しいと思います 重力で吸着するような他のエフェクトがあったらばイケたと思いますが

ダン・レイリー :それもそうだ…文句はないよ。

ダン・レイリー :ではナタリーに使う。確実に一手進めよう

アトラ :ヨロシク、木登り名人!

SYSTEM :【宣言を確認しました。
 特殊処理により、判定に固定値+2加算します】

ナタリー・ガルシア :任せてくださいませ!

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 57 → 59

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

ダン・レイリー :情けないことに不得手だが

ダン・レイリー :やるより他にないな。肉体で判定を行う。

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :1dx 肉体 (1DX10) > 4[4] >

ダン・レイリー :む、迂闊を晒したか………!

GM :ダイス1個の壁……!

SYSTEM :
【判定に失敗しました】

SYSTEM :

SYSTEM :
-MAIN PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=ATRA

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA

SYSTEM :【行動を宣言してください】

アトラ :

水無瀬 進 :
おっと!ここは僕の出番かな

ダン・レイリー :おまえの援けも四六時中じゃない、温存しておきたかったが…

ダン・レイリー :二の轍は踏ませられん…二人を頼む!

水無瀬 進 :
     ウィザード
了解だ! 魔術師の手練をお見せしよう!

アトラ :いやはやお世話になりっぱなしで……

水無瀬 進 :
メジャーアクション:《オーバーウォッチ LV2》
対象:ダン、アトラ、ナタリー

効果:次のミドル判定ダイス+3dx

水無瀬 進 :君の道行きを信じよう!なんてね!

アトラ :わお……っと、それじゃあ自信持って……増えたダイスを頼りに肉体で判定をしよう

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

アトラ :4dx 走れ! (4DX10) > 10[5,7,7,10]+5[5] > 1

水無瀬 進 :
ビンゴ!

アトラ :ウオー!足速すぎ!!!

ナタリー・ガルシア :コレは負けていられませんわね

SYSTEM :
【判定成功! 
進行度を+2進めます】

判定値:0⇒2

SYSTEM :
-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Natalie

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :さあ、油断せず行きましょう
軽功は常時ですが、宣言は必要でしょうか?

GM :うむり、処理的に宣言は不要だが
一応言い添えてくれると助かる!

GM :いつ使ったかわからんしな!

GM :常時とはいえ常時カンフーモードというわけでもあるまい なんで常時なんだろうアレ

ナタリー・ガルシア :そうですわね!
では、軽功を使用して判定を行いますわ!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :6DX+2
師匠との修行の成果を見せるときですわ……! (6DX10+2) > 9[2,3,7,7,7,9]+2 > 1

ナタリー・ガルシア :……セーフ!

ダン・レイリー :いい塩梅だ ハヌマーンは伊達ではないな

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :見事です、ナタリー

アトラ :なーいす!

ナタリー・ガルシア :ありがとうございます、ありがとうございます

師匠も喜んでくれているに違いないですわ

紅 蘭芳 :(後方師匠面)

SYSTEM :
【判定成功! 
進行度を+2進めます】

判定値:2⇒4

SYSTEM :
【イベント発生進行値:4に到達しました】

system :[ 水無瀬 進 ] オーバーウォッチ : 2 → 1

SYSTEM :
 ビルの壁面に敷かれた火のレールを、或いは自らの健脚を活かして壁を走り、ビルの壁面を駆け上る。
 重力の抵抗などを無視し、まるで垂直の地平であるかのように月照らす空へ向け疾走する。
 しかし……

SYSTEM :
 その行く手を阻むが如くに、それは襲い掛かる。

 駆け抜けるビルの表面、その足場から、まるで氷柱のように幾重もの結晶の茨が行く手を阻むために発射される。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 あちらは迎え撃つ構えだが、当然ただ見ているだけという訳ではない。
 あの茨に足元から穿ち貫かれれば、必然地に落ちるのみ。

「ただ見てるだけという訳ではないということか……だが!」
 

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 行く手を阻むような水晶の茨に対して、即座に脚部から炎を蹴り上げる。
 自分は一旦全員をポイントに届けるのが先決だとしたのだろう。勇魚は炎の回廊を残し、妨害を潰すことに専念する。

ダン・レイリー :
 ビルの外側に敷かれた火のレール。
 足を掛け、脚力と重力制御を駆使して、垂直に駆け上る。
 それが最善、故に異議の余地なしと同意したものであるが、そもそもがぶっつけ本番であることはおくびにも出さない。

ダン・レイリー :
 ………さりとて此方の対応がそうならば、彼方も指をくわえて見ている道理はないというもの。

ダン・レイリー :「───オルクス・シンドロームが泣くな、これは!」

ダン・レイリー :
 当然、と言えば当然。
 無数にのびる水晶の茨と、“炎神の士師”の脚部から蹴り上げられた炎の衝突が繰り広げられる前面を見て、毒づく。

 今から貴方を殺しに行きます、と宣言した人間を、おいそれと自分の城に上らせる理由は何処にもないものだ。

 ある程度は炎に巻かれて拓かれた血路であるが、これを一息に突破するほど、この手の曲芸に馴れたつもりはない。少なくとも自らが足踏みを強いられるのは明白だった。

ダン・レイリー :
 しかし、それならばそれでやりようというものがある。
 ───事は一刻を争うが、急いて仕損じるよりはマシだ。

 垂直に敷かれた炎のレールを踏みしめ、重力場を展開する。落下速度をぎりぎりまで留めつつ、自らの射程圏内に“茨”を捉える。

ダン・レイリー :
「行けッ!」

 重力場から飛び出したガンビット数機。
 並列して展開したバロール・エフェクトの空間歪曲で、拓かれた血路を更に押し広げつつ、水無瀬のアシストを受けているナタリーに意識を向け、制御できるだけのR因子に干渉。

 最善はそのまま駆け上ることだろうが、適わぬとあらばこうだ。一気に上る準備に並行して、先に進む者の時間を保障・加速することに集中する。

ダン・レイリー :
 相変わらず続く重圧の中だ、片手間で大それたことは出来ないが………。

「先を任せる…受け取り方は分かるな!」

 なにせ三度も、戦い方から因子の使い方を観察した相手だ。
 戦場である以上、その程度の前例があれば十分───この状況でも、片手間の時間で十分な効果が出せるというもの。

ナタリー・ガルシア :走る、という行為は通常『下への重力下』で行うものである。
それ故に大地を蹴って生まれた反作用は正しく推進力へと変換される。

だが、この状況。

電磁力に依って壁面へ取り付くことは容易いが、その上で走り、行動するとなれば話は別だ。

ナタリー・ガルシア :
「――ッ」

ナタリー・ガルシアは、壁面に対して深く体を倒すようにして足を踏み出した。
走るのではなく蹴り跳び上がるようなそれは、連続した跳躍である。
細やかな跳躍の連なりは、しかしブレなくその体を前へと推し進める。

旧い歩法の応用――ナタリーはそれを無意識下で選び取っていた。

ナタリー・ガルシア :そして、与えられた事象の編纂。即ち、ナタリーの固有時間制御もそこに加えれば――

「――ええ!やはり大尉のエスコートは優雅ですわね!」

軽やかとすら呼べるような足取りで、少女は往く。
前方、一旦の安全地帯となった茨が乱立していた樹林を目指し――超える。

ナタリー・ガルシア :
「先行します、引き続きフォローをお願いしますわ!」

次は己が最前線を受け持ち、後から続く者たちが到着するまで矢面に立つ番である。
駆け上がる速度を落とし、その代わりにあらゆる方向への即時の対処――全方位、足元と頭上まで含めて、警戒を強めながら進んでいく。

アトラ :
 異論はない、無いとも。事実、こんな高いビルに飛び込んで駆け上がるのは得策ではない。
 対峙するのは一人、とはいえ。それなりの企業がセキュリティを確保していないはずもない。
 ならば、そんなものが一切関係ない外から往こうというのは当然で。あまり時間も掛けていられないのなら、余計にそう。

アトラ :
 ……でも、足の速さに自信はあっても壁を駆け上がることなど経験がない。
 おまけに、展開された結晶は茨の如く広がって───……蹴り燃やす炎や飛来するガンビットが無ければとんだ障害物レースとなっていただろう。
 いや、垂直に登るのだから難しいことに違いはないのだが。残念ながら、重力の制御も壁を跳躍して登るような歩法にだって明るくない。
 であれば、この身一つで駆け上がる他ない。与えられるフォローの一切合切を利用して、先往くお嬢様にも遅れぬように上へ上へと突き進む。

アトラ :
「…… ……っしゃ、イケるイケる……!あんまり距離空けんのも良くないからね!」

 ……さて、このまま同じ手で上まで行けるなら重畳。
 別のアプローチがあるなら、……やはり、倣って警戒しておくしかない。とは言え、自分がフォローに回れるようなことは多くないのだが!

水無瀬 進 :
 駆け抜ける一同に電磁力を付与しながら、空中をドローンで飛行しながら、水無瀬はアシストに専念する。

『よし、順調だ……!
 そのまま前へ! 観たところ向こうは待ち構えて着地を狩ってくる様子はない!』

水無瀬 進 :
『屋上のヘリポートで、彼女は待っている!
 此処からが本番だ、気を引き締めて!』

SYSTEM :
 …………
 ……
 …

 そして、無数の茨の密林を抜けて、遂に。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 遂にビルを走破する。
 炎の回廊はそのままヘリポートの上まで繋がり、最後に勇魚は炎の回廊を途中から降りて地表に着地する。

 気配なき戦鬼は、しかし逃げも隠れもせずに待っていた。

"ラクシャーサ" :
「漸く来たね……待ちくたびれたよ」

 弛緩した様子で肩に剣を載せて、その闘志を示すように魔性のワーディングを撒きながら女は嗤う。

ダン・レイリー :
 重力フィールドを踏みしめた、射出めいた勢いでの跳躍と急接近。
 ビルの最上階に、先陣二人にやや遅れて辿り着く先に居たのは、あらゆる意味でミナセの忠告通りだ。

ダン・レイリー :
「お蔭様でな───そうそう味わいたくないスリリングだったよ」

ダン・レイリー :
 それに其方も首を洗う時間くらいはあっただろう───軽口叩いて、再分析。

 相変わらずあの重圧を伴うワーディング・エフェクトは止んでおらず、そもそもこれはただの余技だ。
 加えてあの得物が本命に繋がる保証もない。どこが死線か………判断のミスは命取りになるだろう。

アトラ :
「余裕ぶっちゃって……!」

 ちょっとだけ切れた息は隠せず、威嚇に近い唸りと共に相手を見やる。
 ……いや、事実、彼女はこの場を展開し持していただけ───……言葉通りだ。
 此方も、急いだ分だけみんなの身体に結晶化の影響を残さず済んだとも言えるが、……これからぶつかるなら、結局誤差。

ナタリー・ガルシア :「ええ、おまたせした分の満足は約束いたしますわ」

これで、ようやく始まり。
こちらにとっては幾つもの危険を伴った強行軍も、あちらにとってはただ立っていただけ。
ましてやここは、相手の領域内――腹の中にいるも同然のこの場所で戦うなど、そもそもが不利な状況であることは変わりない。

――ですが、ええ。

ナタリー・ガルシア :
           オーヴァード
「試練を乗り越えてこそ超える者――今から貴女を超えます、ラクシャーサ!」

"ラクシャーサ" :
「……上等。
 アレを見てそれだけ吼える気概があるなら、あたしも退屈しなくて済みそうだ」

"ラクシャーサ" :
 太刀を一振り。自らのレネゲイドを吸い、融合した刀は既に一体と化している。
 振った剣が差乍ら触腕のように自在にしなったように見えたのは、決して錯覚ではなかっただろう。

「死合う前に名乗りを上げるのが、うちの師っていうか、色々世話になった人の習わしでね」
  

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「先に名乗っておこう。
 私は……レイラ・イスマーイール。
     ラクシャーサ
 コードは"千刃空夜叉"」

 千の刃。それはこの空域すべてに及ぶ、死の因子と絲に他ならない。
 見えざる千の糸刃を、これまで誰もその実態を捉えることなく死に至った。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「名乗り返す必要はないよ。タイマンしに来たわけじゃないんだから。
 これはあたしのスタンスに筋を通しただけ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「それに、そろそろ蝕晶峪の影響が出てくる頃だ。
 あんまり話してる余裕ないんじゃない?」

ナタリー・ガルシア :「ナタリー!ナタリー・ガルシアと言いますわ。コードネームはまだありませんが、仲の良い方はナターシャと呼んでくれます」

――にっこりと、その言葉を受けて笑う。

「宜しくお願いします、レイラ・イスマーイールさん。お互いに悔いの無いように、全力を尽くしましょう」

ダン・レイリー :
    ・・  ・・
 ならばこれも、これで起こすことも、
 全て、因果の筋を通した結果と?

ダン・レイリー :
 口にしようとした言葉は仕舞った。
 テンペストの”ホワイト・スカイ”が発する意味がなく、
 ダン・レイリーが発する義理も資格もない。必要な台詞は一つでいい。

ダン・レイリー :
「心配無用だ。
 腕が動けば、引金は引ける」

ダン・レイリー :
「───ではやるか。
 墓に刻む名は、そちらで構わんな」

アトラ :
 ……知っている。名前も、コードも。
 それはお互い様で、時間がないという認識自体も変わらない。
 それでもなお名乗るナタリーと、戦う意思を微塵も衰えさせないダンを見やり。

アトラ :

「(……どっちの名だってまだ刻ませてやるもんか。
  時間はないけど、まだ残ってる……)」

 押し通す意地を、此方も見極めなければならない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「これにて幕だ。闘争を望むなら、どちらに秤が傾こうと異存はないな──!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ほんとに名乗り返す子がいるとは思わなかったけどね! 
 いいね、いいよ、その意気だ!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「────さあ、かかってきなよ!」

SYSTEM :【イベント発生進行値:4に到達しました
 判定内容を変更します】
内容:
 ビルを駆け上り、遂に待ち受けるラクシャーサと対峙する。
 戦いはここからだ。
 シーンを一時終了し、"ラクシャーサ"と戦闘を行う。

GM :そして……

GM :戦闘に入る前に、ラウンド終了時の邪毒が発生する!

GM :レベル3,即ち9点ダメージが襲うぜ

ダン・レイリー :さて………意気込みはしたが、それはどうにもならんか

アトラ :み、皆ぁ……

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 1 → -8

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :火の鳥の加護は……まだ温存しますか

ダン・レイリー :便利だからと濫用はさせられないよ。少なくとも僕一人の僅かな延命とそれは天秤に釣り合わない

ナタリー・ガルシア :大尉……

ナタリー・ガルシア :儚い命ですわ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :……承知しました。

ダン・レイリー :もう少し機を待つ。その時は恃むぞ、“炎神の士師”。

ダン・レイリー :(ナタリーを押し流す)

ナタリー・ガルシア :アァ~

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :はい。では……

GM :リザレクトをお願いします!

ダン・レイリー :ああ。やってみるか

ダン・レイリー :1d10 リザレクト (1D10) >

ダン・レイリー :………

ダン・レイリー :本当に嫌われたな

GM :な……

GM :なんてやつだァ……

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : -8 → 1

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 59 → 60

ナタリー・ガルシア :これが、これこそがテンペストの実力ですわ!!!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :見事です

ダン・レイリー :時の運だ。驕れるわけじゃないが、今はありがたい

GM :ではお嬢も邪毒でパキパキ結晶になりましょうねえ

ナタリー・ガルシア :ア゛ァ゛~

アトラ :鳴き声???

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 13 → 4

ダン・レイリー :百歩譲って鳴き声だとしてそれは10代女子の尊厳的に良いのか?

ナタリー・ガルシア :私のすることに、一切の恥はありませんわ!

ナタリー・ガルシア :1d100
恥 (1D100) > 8

アトラ :心強すぎない?

ナタリー・ガルシア :86恥

GM :恥まみれじゃん

アトラ :しかも結構恥じゃない?

ダン・レイリー :一周回って潔いな

ナタリー・ガルシア :旅の恥はかき捨て!!旅の恥はかき捨て!!

ナタリー・ガルシア :この86恥は捨てておきます

ダン・レイリー :不法投棄は止すんだ かき捨てるほどの遠出じゃあないぞ

GM :そしてフィールドはこんなもんかな

GM :というわけで

GM :邪毒の処理が終わり、1ラウンドが経過した段階で
戦闘を開始するぜ!

SYSTEM :《ROUND 1》

SYSTEM :-SETUP PROCESS-

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
セットアップ:なし

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :先手は譲ってあげるよ。ほら、掛かっておいで

アトラ :献血……と言うところだけどウチ以外瀕死なので……セットアップはなし!

ナタリー・ガルシア :これはこれは、ご丁寧に……

ダン・レイリー :此処まで来てやり方を択ぶ余裕があるか。ならば

ダン・レイリー :
[Set up]
◇R因子戦闘管制
・《赤方偏移世界Lv5》

ダン・レイリー :
 念には念を入れよう。
 このラウンド中、彼女の行動値をLv*2=10増加させる。対象はいつもと違って“T³”だ。

ダン・レイリー :異存なければ発動する、よろしいか?

アトラ :わお。

ダン・レイリー :これでも作戦参加者の能力は確認出来る程度に確認してある。一の矢を任せっぱなしというのも恰好よく行かんもんだがね。

SYSTEM :【宣言を確認しました】

GM :ではアトラチャンの行動値を10アップだ!

GM :そして、加速することで行動値がラクシャーサを越えトップの18に

アトラ :ずっとはやい!

ナタリー・ガルシア :速さは力ですわ

GM :大尉のお支払いを確認したら、セットアップはこれで終了だな

ダン・レイリー :ああ。流石に此処に割く妨害などもないだろうしな

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 60 → 62

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=ATRA

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA

SYSTEM :【行動を宣言してください】

アトラ :めいっぱい走っても15mは詰めれないけど、動かなきゃ実は射程に入らないので……

ダン・レイリー :イヤ………15mならば詰め切れるはずだ

GM :行動値18なので

アトラ :あっ移動距離も伸びるんだ!

GM :初期値5+18の23m移動できます!

ダン・レイリー :そう。《赤方偏移世界》は行動値の増加を促すエフェクトだが、そこが伸びたとあらば移動距離もその分増えるということさ。

アトラ :知能が足りない……!

アトラ :へへっどうもどうも……

ナタリー・ガルシア :分け与えておきますわね

アトラ :ですわ~

ダン・レイリー :それほどでもない。先鋒を任せるんだ、貸しとは言いたくないからね。

アトラ :じゃ、なくて……

GM :まずい 本編ならいざ知らず与太ナタリーから分け与えられたら!

GM :茶番は終わりだ(ラスボスになる)

ナタリー・ガルシア :さあ、皆さん、気を引き締めていきますわよ

ダン・レイリー :知恵熱で自爆するだけだぞ…! 

ダン・レイリー :(…変わり身が早い!)

アトラ :つまり……

アトラ :こう!
マイナー:戦闘移動15m
      アクシス・アクト
メジャー:コンボ【A・A】
内容:《コンセントレイト:ブラム=ストーカー/Lv.2》《腐食の指先/Lv.2》《災いの紅/Lv.1》《滅びの一矢/Lv.4》

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :来たね……!どんだけ腕ェ上げたか見せてみな!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

system :[ アトラ ] HP : 0 → -4

system :[ “T³”アトラ ] HP : 24 → 20

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 42 → 51

アトラ :8dx8+3 命中判定! (8DX8+3) > 10[1,1,4,4,5,8,9,9]+10[2,6,9]+10[8]+6[6]+3 > 3

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :へえ!本気だね

アトラ :そっちに距離が関係ないならウチの距離まで詰めるだけだもんね!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
リアクション:《ガード》

SYSTEM :【ユニット:ラクシャーサがガードを宣言しました。
 ダメージ判定を行ってください】

アトラ :ダメージロール時、【対抗種】で+2D!同エンゲージなので散弾銃の威力も+2!つまり……

アトラ :6d10+5 こう (6D10+5) > 36[7,8,5,2,10,4]+5 > 4

アトラ :あっ+2してない 43だ43

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :へえ、やるじゃん……!けどね

アトラ :むっ……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
こっちがガード硬いコト忘れられてもらっちゃ困るよ!

アトラ :
……忘れてないし!《腐食の指先》命中時に装甲値-10!《災いの紅》でダメージが発生したのでG値-3だよ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
接触された段階でFH戦闘服の装甲値10はなくなる。
けど、G値減衰はダメージが発生したことをトリガーとする

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
つまり私の武器のガード値9はそのまま適用される!その分を引いて、34!

アトラ :むう……

アトラ :まあシーン持続だし……一旦ヨシ!

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ちぇ、やるじゃん、アトラのくせに」

 手傷を受けてその体を削られるラクシャーサ。
 しかし、様子がおかしい。防御を貫いて確実にダメージを与え、その体を蝕んでいる筈であるのに……
 窮地に至ったレネゲイドが、一層に振活を始めている。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「けど……残念。
 あたしの能力が何なのかはもう知ってるよね」

 通常のリザレクトを超える速度で、闘志に従い受けた傷がいえていく。
 それはまるで傷と疵を高速で縫合するかのように。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・
「既に絲による自動修復が始まってるってことも」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
イニシアチブアクション:
 Synthesis
【結晶再結合】
《傷塞ぐ錬成 LV3》

Option:HPを4d10回復する

"千刃空夜叉" :4d10 (4D10) > 26[8,4,7,7] > 2

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
               リスク
「これが闘争衝動に従うという『縛り』によって強化された効果……
 モルフェウスの物質精製とエグザイルの生態操作によってリザレクトを強化しているのか──」

 苦虫を噛み潰したような表情で

ダン・レイリー :
.      リザレクト
「………成程、自己再生の域ではないな」

 単身で戦い抜けるわけだ。
 これだけの再生速度ならば、道行くものすべて薙ぎ倒す生き方さえ可能だろう。

 ………瞬間的な逃亡・奇襲能力。
 ………傷を受けたとしてもリカバリーが利き。
 ………なまじ技量があるものだから、それすら出すことはない。

 並べるだけでも厄介だ。
 死神に嫌われているのではなく、嫌わせてきたということなのだろう。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 傷を負った端から、凄まじい速度で自らの肉体の内側が『絲』によって修復されていく。

 まだまだ、この程度では終わってやれない。そう語るように、滾る闘志に従って傷が癒えていく。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「とはいえ、さっきの毒の解毒までは追い付かないけどね。
 こいつでまだまだ遊べるってワケ」
 

アトラ :
「ほん、っとに……ズルい!けど……通しやすくはなったはずだから、……」

ナタリー・ガルシア :「勝つためではなく、『戦う』ために……傷を治す、ということですわね」

ですが、とアトラの言葉にうなずく。

「それも際限のない無敵の能力ではありませんわ――押し通りましょう」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……大尉、こちらも能力を遣います。
 押し通す為ならば、それが最も効果的かと」

ダン・レイリー :
「───了解した。異議はない。
 いま必要なのは打撃力だ。一点突破で行くぞ」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──承知!
 大尉、ナタリー、アトラ、火力支援行きます!!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
メジャーアクション:《ファイアドライブ LV5》
対象:ダン、アトラ、ナタリー

効果:次の攻撃に攻撃力+10

GM :これで全体に、次の攻撃に攻撃力バフが通ります!

GM :「次の」攻撃のため、バフ対象のアトラチャンは次ラウンド或いは次の攻撃が絡む判定まで効果が持続する!

ナタリー・ガルシア :ありがとうございます、これにて百人力ですわ

アトラ :やった!感謝!

ダン・レイリー :結果で返してみせねばな…

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :
[Main]
◇ストーム・ベアラー
Major:《CR:エンジェルハイロゥLv2》《天からの目Lv3》
Minor:Empty

HIT:(8+3)dx8+5
ATK:xd10+(10+10)
COST:4

ダン・レイリー :
 前プロセスでミナセから得たオーバーウォッチの効果を、
 現プロセスで“炎神の士師”から得たファイアドライブの効果を適用する。

 ………タイマンやりに来たのではない、だったな。そこのみ同意するよ。見栄を張らずにやらせて貰う!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :はっ!人便りの力ってワケ!
そいつが何処まで通じるか見ものだね!

ダン・レイリー :軍人というやつなのでな、個人の自惚れは死に直結すると教わっているのさ!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :11dx8+5  (11DX8+5) > 10[1,1,2,2,3,4,6,8,8,9,9]+6[3,5,6,6]+5 > 2

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
リアクション:《ガード》

SYSTEM :【ユニット:ラクシャーサがガードをしました。
 ダメージ判定を行ってください】

ダン・レイリー :やってみるさ…!

ダン・レイリー :3d10+20  (3D10+20) > 23[9,9,5]+20 > 4

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「! 思ったよりヤバいのが来そうだ。けどね──」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ア ル ニ タ ム
「千条絲刃、緊急防護展開!
    ア ラ ク ニ ドキ ュ ー ビッ ク
 ――《立方晶粘絃縛絲圏》!!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 防御姿勢を取ったラクシャーサの周囲から、宛ら蜘蛛の巣のように十重二十重に防護の盾が敷かれる。
 それは放たれる攻撃への防護膜として押し広げられた!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
オートアクション:
  ア ラ ク ニ ドキ ュ ー ビッ ク
【 立方晶粘絃縛絲圏 】
《デモンズウェブ LV2》

Option:ダメージ-4d10カット

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :4d10 立方晶粘絃縛絲圏 (4D10) > 34[8,7,9,10] > 3

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :これによって、ダメージを34点カット。
受けるダメージはガード値を込みで37点カットってコト!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :受けるダメージを、6点まで軽減……
そう簡単に死んではやれないね!

ダン・レイリー :チィ───会心だったのだがな!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :コイツを遣わせたことだけは褒めてあげる。そして……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ・・・・
「動いたね。今」

ダン・レイリー :「───!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 瞬間、レイラの指先から、見えざる何かが光った。
 それは絲状の何かだった。しかし確かに、その絲は既にダン・レイリーに絡みついている

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :

「ここは、私の千条の糸の檻の中。
 あんたは、糸に絡み取られた蝶。
 ……そんな中で先に動いたら、どうなると思う?」

ダン・レイリー :
「───こいつは、」

 先の防御陣形は目晦まし───いや。違う。
 張り巡らせた糸があるその時点で、既に攻撃の準備が終わっているということか!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 にい、と嗤いながら、レイラは浮いた左手の指で糸を引く。
 同時──

 ダン・レイリーが構えた、その僅かな挙措。
 それに反応して絡みついた絲が物質を粘性の糸から剛製の糸へと変化。
 モノカーボンワイヤー……それら絡みついた絲はすべてが刃となり、その全身を膾の如く切り刻んだ!!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
オートアクション:
クラウンキュービック
【立方晶剛絃斬絲圏】
《自動触手 LV3》

Option:ガード時、攻撃PCにダメージ9

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :ワイヤートラップさ!コイツで命、頂戴しようかな!

ダン・レイリー :騙し合いの経験に不足はないつもりだったが…! “チェック”を宣言されたのは此方だったか!

ダン・レイリー :…いいだろう、二言はない。”一つは”くれてやるさ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :はん!そう何度も奇跡が続くとは思わない事だね!

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 1 → -8

ダン・レイリー :…そいつの効果を受けたとあらば、俺自身も再び《リザレクト》の必要がある。

ダン・レイリー :さて、何度もそっぽを向いてくれるとは思えんが…このまま寝転んではいられん

GM :これまで三度連続で1をキメた大尉

GM :今度もキメてくれるか!? どうぞ!

ダン・レイリー :1d10 リザレクト (1D10) >

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :よし

GM :うせやろ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :コイツ!

ダン・レイリー :法螺を吹く身にならなくて安心したよ 僕のお迎えはまだ先だな

ダン・レイリー :………ところで攻撃分のコストを忘れていた。今の分と合わせて加算しておこう。

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 62 → 63

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 63 → 67

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :成程、しぶとさはお互い様ってワケ。
こいつは楽しめそうだ……

ダン・レイリー :そういうことだ。潔く逝くなら、とっくに野垂れ死んでいるものでね…!

system :[ “T³”アトラ ] HP : 20 → 18

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan
 Complete!

アトラ :
 常ならば、他者の血を借り受ける場面だ。
 冗談めいて語るには「ウチの細腕を見ろ」が理由の代償代行行為。無論、それも嘘ではない。人一倍タフネスが足りない自覚はあるし。
 より正しく抱いているのは忌避感に近い感情だが…… ……それは、兎も角。

アトラ :
 ショットガンを右の手に持ちながら、左の腕に歯を立てて噛み付いた。
 最悪の風味が口内に広がるのを認識しながら、吸い出した血を弾ごと銃へと込めるように吹き込み装填する。
 血を操り、自身の力で変質させる。己が血は牙にも毒にも変化し得るのだ。
 そうして生み出したのは即席の毒牙。纏う外装を侵蝕し、身を護る盾に雨垂れ程度の穴を穿つ一点突破の軸攻撃。

アトラ :
      アクシス・アクト
「これこそ《A・A》───……なんつってね……!」

アトラ :
 家族。師。認識は何でもいい。今に至っては対峙する者だ。やらなきゃやられて、縁が繋がった人たちに被害が及ぶ。
 ……共に居たこともある彼女とは異なる力の発露で、立ち向かう。このやり口で今日まで生きてきたのだ。彼女の知らない活かし方など、独りでいるうちに思い至ったわけでもない、が。
 譲られた先手を最大限利用して、後に繋ぐのだ。独りでは踏み込み切れない距離を他者の力で踏み越えて、一気に自分の手の届く距離へと身体を連れて行く。
 そのまま銃口を“ラクシャーサ”……レイラへ、向けて。

アトラ :
「ウチの仕込みも、ちょっとは効いてよね……!」

 祈るような言葉と共に、血で彩られた鉄火が弾ける。
 その行方を確かめる間もなく、迫るであろう“次”のために少しだけ彼女との距離をあけて身構える。

SYSTEM :
 散弾銃の強みは扱いの簡潔さと悪環境での使用に富む点だ。生きるに際して、アトラは最初にそれをくすねて扱った。
 自衛の手段であり、今は悪路を切り開く為の牙として。

SYSTEM :
 赤方偏移によって押し出されたアトラが至近距離にまで肉薄し、その牙を解き放つ。
 ダブルバレル
 水平二連式ソードオフショットガンに吹き込まれた鮮血の息吹が撃ち放たれる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ラクシャーサは躱しもしなかった。
 無論、侮っていたわけではない。
 一々出来もしない躱しに回るより生命力を活かすことに重きを置いた、その故の戦闘スタイルだ。
 そして、だからこそアトラの仕込みは功を奏した。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ちぃ……相変わらず猪口才だけは達者なやつ!」

 剣戟で撃ち払い損じた飛沫が体を穿ち、内側より蝕んでいく。
 ラクシャーサが恃みとしていた耐久力の故は、自身の身体にすら及ぶ材質の高速変換だ。衝撃の瞬間、肉体の組織を変化させることでどのようなパターンの攻撃であろうとも応じることが可能となっていた。
 しかし……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「(……対抗種が撃ち込まれてあちらの身体の動きにも影響が出ている。
 これなら攻撃の通りも、以前よりはよくなる筈……)」

 鮮血と共に籠った対抗種と、蝕む鮮血の因子が撃ち込まれたことで、組織変化が阻害される。
 フルオート
 自動式の防御が今剥がされたことになる。

「なら……!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は攻撃の支援のために体制を固める。
 高速治癒を開始しているラクシャーサを落とすには、短い間に火力を一点集中させ一気呵成に攻めるしかない。
 次の攻撃に合わせるべく、勇魚は腰を深く落として構えを取った。

ダン・レイリー :
 ………呼吸音の途切れ、視線の微かなズレ。警戒の方向の変化。
 当然のように健在の“ラクシャーサ”とて無傷ではなく、
 そもそも再生という行動は、欠けたものがなければ行われない行動だ。

 故に“T³”の射撃に効果があった以上、そこには僅かな揺らぎが生じる。 

ダン・レイリー :
     ・・
 ───故にそこだ。   第二射
 其処を捉えた瞬間こそが“はじめ”の合図。 

ダン・レイリー :
 .Target in Sight
「標的、照準固定………」

ダン・レイリー :
 有効射程距離200m超。
 対オーヴァード用試製小銃“ストームベアラー”の銃口が、ラクシャーサを捉える。

 其処にこの射線/死線を隔てるものはなく、
 故に彼方の視界からも容易く狙いが読める。

ダン・レイリー :
 等身大の人間である限りは、
 誰だろうと握るだけで兵士に変わるもの。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 どんな人間にも実戦値を与えるのが銃だ。

 戦場において、オーヴァードが肩で風を切るようになろうともそれは変わらず。
 故にこんなもので狙われることなど、ファルスハーツの上級エージェントは日常茶飯事。 

ダン・レイリー :
 ………七年で出した結論だ。
.          Overed
 撃てば殺せる弾丸を、超人は防ぐし、躱し、あるいはいなす。

 あらゆる人間に実戦値を与え、兵士にし、戦力化する近代戦術は、それが最初から通用しない上位の存在によって、一旦、完膚なきまでに白紙化されたということだ。
 
 その超人の世界で『撃てば死ぬ』常識のテクスチャを貼り直すには、
 銃の側が、今の“T³”のように、超人の世界の実戦値に近付く必要があった。

ダン・レイリー :
 ………“T³”の射撃に対する迎撃手段を見て得た結論を以て、戦闘プランの誤差を修正。

 あれだけの再生力があっては、少なくとも自分には、今まで通りのアタック・パターンが傷を付ける光景を幻視出来ない。

 必要なものは打撃力だ。

ダン・レイリー :
 そこで打撃力の究極にして基本とは、この場にいない“ラフメタル”のようなのが恐らく最適の、極めてシンプルな理論。

 オーヴァードがこの世の地続きに過ぎないことを教えてくれる、近代的な物理法則である。

ダン・レイリー :
    Contact、Attack
「───調律開始。撃ち貫く………ッ!」

ダン・レイリー :
    ・・・・  ・・・・・・・・・
 即ち、重いものを、可能な限り早い速度でぶつける。

 ………なんだそれはと首を傾げたくなるほど簡単であっけない理屈だが、要するに。
 大きいものは強いという事。要は我々の十八番という訳だ。

ダン・レイリー :
 隔てるものの何もないクリーンな射線に、直列に展開されたガンビットが、
 人ひとりを転移するには小さいが、弾丸を転移させるには十分な即席の“ゲート”を形成。
 
 そのガンビットが形成したゲートめがけて放った弾丸が、重力の網を潜るごとに発生する時間歪曲と重力加算───。

ダン・レイリー :
 速射された弾丸の一つ一つを、人殺しの弾丸から、超人殺しの弾丸へと加工する。

 足りない出力を補う術は、
 何も個人から引き出す必要はない。

 今の此方にはミナセの演算支援と、同じ戦場で戦うエージェントがついている。
 単身ならばいざ知らず、複数いるならば、下手に手を加えた射撃よりは、味方と足並みを揃えられる程度にシンプルな方が都合がいい。

ダン・レイリー :
 それ故、始点と終点はシンプルに。

 結果生まれるものが、これだ。
 数秒飛ばしに錯覚する超速度、空間を歪めて移動する変幻自在の軌道、超重力の連続射撃───。

ダン・レイリー :
                       ・・
 自らその言い方をするのは好きでないが、曰く。魔弾であった。

SYSTEM :
 ダン・レイリー大尉の所持する武装、能力の多くは既存の技術の延長である。それは型通りと言え、今現在生きた大量破壊兵器と化しているラクシャーサの技と比べれば幾らか派手さに欠ける。
 だが……オーヴァードの闘いとはイメージの闘いの側面をも併せ持つ。であるならば常人が生きて、真っ当にまかり通ってきた法則をなぞるのが最も効果的に運用できるのは道理であった。

SYSTEM :
 わけても経験則ならば覿面に効果を発揮する。
 質量の桁が違えば如何なる防御だろうと貫き通せる。実にシンプルな物理学の基本である。
 
 弾丸に重力を載せ、さらに即席のゲートによって加速されたそれは、ライフル弾にあるまじき速度にまで加速して撃ち放たれる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(流石に拙いね、今使いたくなかったケド……!)
 確かにその理屈なら撃ち穿てるかもしれない。だけどさぁ!」

 射撃体勢に入った段階でラクシャーサは五指を広げて絲を操る。先のアトラと異なり、完全な防御姿勢を取り応対する。
 ア ル ニ タ ム
「千条絲刃、緊急防護展開!
    ア ラ ク ニ ドキ ュ ー ビッ ク
 ――《立方晶粘絃縛絲圏》!!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 確かにその理屈は間違っていない。質量が大きく、速度が速ければ十分なパワーが出る。
 ……だがそれに倣う限り、飽く迄物理的な衝撃に過ぎないという枷に縛られ続けることとなる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
           パワー
「質量と速度で得られた打撃力なら!
 ・・・・・・・・・
 展開された絲で分散すりゃあいいでしょうが!」

ダン・レイリー :
「チィ───器用にやってくれる………ッ!」

「(そう、ヤツはエグザイル・シンドローム………。
  剛を制する柔の使い手! 完全な一撃にならんか!)」

SYSTEM :
 ──防弾チョッキがプレートアーマーより効果的に銃撃を防げるのは、特殊繊維自体の硬度だけではない。
 弾丸を受けた折、その衝撃を効果的に糸全体に分散することを要訣としている。
 その為単純な鋼鉄より非常に柔軟性を保ったまま、最低限の防御性能を獲得しているのだ。

SYSTEM :
 これはそれと同じだ。
 立方晶粘絃縛絲圏とは、詰まる所このワーディング圏内に遍在する絲を手繰り防御網を作るもの。

 常に展開されているラクシャーサのワーディング圏内、その内に拡散する絲を収斂し、材質をアルミナウィスカー繊維へ変化。
 加えて絲の領域を押し広げることで拡散する面積を広げる。

 丁度、それは絲が弾丸を絡め捕るように、加速する弾丸に絡みついていく。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(獲った!)」

 と、確信するラクシャーサを。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「──いや、突き抜ける!」

 と、勇魚の号砲が飛ぶ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ッ!?」

 意識の慮外からの攻撃に、ラクシャーサは瞠目する。威力減衰した弾丸が脇腹に突き刺さったが、ダメージ以上に不意を打たれたことへの驚きが勝った。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 単純な物理法則になぞれば、質量と速度のみで決定する。
 だが……それはあくまで机上論。実際の物理学は稠密な摂理の因果関係によって構築されている。
 物理学的に止めるなら、熱力学的に超えるまで。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 勇魚は激発の瞬間、間接的にライフル弾に因子を飛ばすことで弾丸に発生する分子震動を加速的に増幅させていた。
 燃える弾丸と化した銃弾は絲に絡み取られて威力を落としはしたが、糸を焼き切ることによってそれを敵に届かせていた。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 加えて先のアトラの先鋒で傷を負ったラクシャーサは、着弾時の衝撃を体内の繊維で受けきれない。
 ツウ
「痛っ……やってくれるね!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 撃ち穿たれた部位を手でなぞり、鮮血を舌で舐める。生きていることを実感するように。

「ちょっと怒っちゃったかもだ。
 じゃあ今度は、こっちの番……!」

SYSTEM :

SYSTEM :

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「言ったでしょうが、ここはこっちの領域だって!
 当然防御に使えるなら、攻めにも使える!」
  ラ ク シ ャ ー サ     ア ル ニ タ ム
 千刃空夜叉の能力……千条絲刃はすでに説明した通り、多岐に渡る応用幅を持つ。
 それは当然、防御のみに依るものではない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「弾丸を絡め捕るだけじゃない……その体に絡みついた絲を起点にすれば!」

 このように。回避不能・防御不可の必中攻撃へと変じる。
 この場所に足を踏み入れた時点で発動するワイヤートラップ。
 ワーディング圏内に展開された、見えざる因子の絲の物質を単分子アルミナウィスカー繊維へと変形させる。単分子で構成された繊維は、あらゆる物質を切り裂く絲の刃となり、ダン・レイリーの全身を膾の如く斬り刻む!!

ダン・レイリー :
「この間合いからか───!?」

 ヤツの能力の脅威性については、さんざ体感してきたところではある。
 前評判通りの広域攻撃や純粋な破壊力、一方向に極まった技量などではなく、
 恐るべきはその応用力。操るものがシンプルだからこそ、着想次第で如何様にも理論を広げられる。

 百戦やって百回勝つ術ではなく、
 千回戦ってもエラーを起こさない手堅さとでも言うべきか。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :
 ………静止射撃を前提としたアタック・パターンを択んだのは、下手な動きからあの糸に絡め取られないようにするため。
 故にこそ、R因子の戦闘管制で前に送り出した “T³”にも、不必要な動作と干渉は避けた。

 だが、それでもこれだ。
 動作に干渉してきた因子の絲が、文字通りのワイヤーカッターめいて自らの全身の肉を食い込み抉り切ろうとするとき、直感的に自らに迫りくるものを理解した。

ダン・レイリー :───やられる!

ダン・レイリー :
 意識が一度、断絶する。
 厳密には、恐らく瞬き一つした瞬間に“そう”なるだろうというところに来ている。

 珍しくもなんともない、オーヴァードの是非を問わない幕切れの形だ。

ダン・レイリー :
 生物の本能としてダイレクトに脳を駆ける痛覚の電気信号。
 真っ当な人間ならば肉体のダメージが零でも耐えがたい精神的苦痛に膝を折る。
      シグナル
 だからその緊急信号に脳が追いかけられる前に、命令を下す。

 身体ではない。
 切り刻まれるのは確かに全身であろうが、
 オーヴァードにとって動かせるものは身体だけとは限らない。

ダン・レイリー :
 それは患部の一つである脳を通じて、
 第三の腕たるガンビットへと伝達され、断絶する意識の中で最善をこなす。

ダン・レイリー :
 ………即ち、あらかじめ自らのレネゲイドをチャージしたガンビットによる、レネゲイドの最低出力放射だ。

ダン・レイリー :
 肉体の損壊を補うことがリザレクトのメカニズムであるならば、外部からの干渉はそのリザレクトの効率を単純計算で引き上げる。
 同時に己自身のエフェクト行使でかかる負荷は、無意識の行使分、つまり最低限で済む。何度も出来るわけじゃない、ちょっとしたロスタイム短縮を兼ねた小細工だ。

ダン・レイリー :
「───まったく。
 やり返してくれたな“ラクシャーサ”」

ダン・レイリー :
 何時もそうというわけではないが、オーヴァードの死亡なぞはこんなもの。“死を悔やむよりその先”を、などという異常が平然と行える。

 戦闘続行にかけるラグは、その分、仲間の死に繋がるからだ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
             ワイヤーカッター
 十重二十重に、絡みついた絲の千刃がその体を切り刻む。攻撃力こそ低いが、糸はあらゆる隙間を縫い、装甲を破り、防御など望むべくもない。
 着実に命を削り、結晶化によって鈍った敵を刈り取るには十分な威力を持つ。
 それは確実にダン・レイリーの命脈を削っていた筈だった。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 リザレクトによる再生があるとて、レネゲイドの再生にも限度がある。だが……

「……その割には随分楽そうだ。ショボい力の割に使い方はお上手なようで」

 これだけの再生力と、過度の侵蝕を抑えるためのムーブ。相応に戦場慣れてなければなるまい。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「けど、まだまだ!
 コイツ
 得物が玩具じゃないってことをしっかり見せてあげる!」

ダン・レイリー :
「褒め言葉と受け取るよ。
 強いカードというのには恵まれなかったが、その分はこうして生き延びて来られたんだ」

ダン・レイリー :
「そしてその凡庸が“特別”を塵にするのが戦場だ。
 ………来い、教育してやる………!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
                ライミー
「そうやって意気揚々と挑んできた海兵は何人も斬ってきた!
 望み通り見せたげる!」

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=千刃空夜叉

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=千刃空夜叉

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ラクシャーサは既にレイリーが評したように、窮まった武技を修めた武人ではない。能力の行使の巧みさと応用性を広げることで格段に広い対応力を得たオーヴァードである。
 故に攻勢に映る際にも、それは生かされる。

「まずは……」

 弛緩した姿勢。しかし目を凝らせば見えるはずだ。
 ワーディングによって放散した絲の因子が、彼女の四肢に吸い込まれるように繋がっていく。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 絲の使い道は幾らでも。オーヴァードの能力は発想力次第である。

  セ ッ ト
「神経系同調……
   マリオネットキュービック
 《立方晶珪絃操絲圏》」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 カーボンナノチューブ
 炭化珪素繊維、電気信号を送る神経系を外付けで拡張する繊維を、人でなく自身へと接続する
 いわば『自身を操作する絲』である。
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :オートアクション:
マ リ オ ネ ッ ト キ ュ ー ビック
【 立方晶珪絃操絲圏 】
《砂の加護 LV4》

Option:ダイス+5dx

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
     アクセラレーション
 絲による神経加速により、純粋な思考速度、可動域の精密度を増すことで動作の精密性を高め。
 更につかんだ剣柄に自らの糸を送り込む。

「この剣だって、私の一部。
 さあ、受けてみなよ!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
メジャーアクション:
    ゾルファガル
【 穿て、骨喰み 】
《コンセントレイト:エグザイル LV3》+《伸縮腕 LV3》+《ペネトレイト LV1》


DICE:15dx@7+5
DAMAGE:nd10+10
Option:射程(視界)、装甲値無視

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :対象は、アトラ!あんたに決めた!

アトラ :嘘ぉ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :問答無用!攻撃判定!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :15dx@7+5 攻撃判定 (15DX7+5) > 10[1,1,1,2,2,4,5,5,6,7,7,7,8,9,10]+10[3,6,7,9,9,9]+10[1,2,7,7]+10[9,10]+10[5,10]+6[6]+5 > 6

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :おりゃ!

アトラ :ちょっ ちょいちょいちょい…………ええい、回避!

GM :どうぞ!

アトラ :1dx+1 なんか起これ~ (1DX10+1) > 10[10]+1[1]+1 > 1

アトラ :回ってんのに!!!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :足りないねえ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 神経接続によって精度を増した剣を霞の構えで携え持つ。
 その刺突は無限の射程を持ち、如何なる場所に在ろうとも穿ち貫く。
 だが……此度はそれだけではない。

「改めて刻み付けてあげる……」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 金色に煌く、結晶の死の瘴気を散らしながら。
 ラクシャーサの内に潜み、今も苛み続ける死の権化が剣に宿る。

 遍く浄化し、不毛の地へと返す聖絶の塩の呪いが、此処に大挙して襲い掛かる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
      ネツィヴメラー
「遺産──《浄火の柱》を!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
   ネツィヴメラー
【 『浄火の柱』 】
Dロイス:対抗種+オーバーカウンター

Option:ダメージ+4d10 判定後、自身にダメージ2d10+3

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :これでダメージがさらに4d10……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :つまり10d10+10!!
オラッ覚悟なさい!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :10d10+10 ダメージ判定 (10D10+10) > 50[5,6,5,8,9,4,6,2,4,1]+10 > 6

アトラ :…………………

system :[ “T³”アトラ ] HP : 18 → -42

アトラ :《リザレクト》!《リザレクト》します!受けてられるかそんなん!

GM :デスヨネ!ではリザレク判定お願いします!

アトラ :1d10 うお~~~ (1D10) >

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 51 → 58

system :[ “T³”アトラ ] HP : -42 → 7

GM :平均以上!厳しめだ!

アトラ :うぐー!まだセーフ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :痛っ、こっちも反動!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :2d10 反動 (2D10) > 17[9,8] > 1

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :しめて20か…!くそー、気合入れ過ぎた!

アトラ :無理するからぁ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ……ラクシャーサは以前、剣はブラフと称したが、幾つかの語弊がある。
 千の絲を得物とするが、最大の威力を出すためには必然的に高い密度を要する。細く伸ばし、網のように広げるだけでは威力は拡散するばかり。一点集中させるための媒体が要る。
 そうでなくば、自らに直接繋がった遺産の真価を発揮できない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 意より流れ、剣先に集う死の気迫。
 自己操縦の絲に操られ最適な姿勢で刺突の構えを取るラクシャーサは、その剣に自らを込めた。
 ツールマスター
 器物使い。自らの手にした物質と肉体を同化することで、所持物を『自己の延長』とする卓越したエグザイルにのみ使用できる固有能力であった。

 ミルフ
「蝕晶峪の効き目が薄くとも、直刺しでの注入なら話は別……
 こいつは、さっきのお返し!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 そう告げて、レイラは剣を正面に突き入れた。
 射程内にある剣は、しかし伸縮による加速を載せることで更に勢いを増して襲い掛かる。
 ゾルファガル
 脊髄砕きに砕けぬものなし。二股の矛先を持つ曲剣の切先が少女を襲う。

 それはナタリーが初日に見た、ブルーを遠隔距離から貫き穿とうとした技に他ならない。
 自らの腕と同化した妖刀の射程を拡張することで、何処までの延びる超高速の刺突となる。
 それは宛ら、小銃が筒先より息吹を上げるが如くに延びてアトラを撃ち貫いた。

SYSTEM :
 のみならず……
 穿ち貫いた個所からひび割れるように、結晶の華が咲く。
 アトラが宿したものより、より強力に練り上げ、研ぎ澄まされた……それだけの業を負ってきた者の対抗種による責め苦が、リザレクトを阻害するようにアトラの全身を蝕んでゆく。

アトラ :
 背後に迫り生まれた死に、アトラは一度振り向きつつ集中する。
 何も、無縁の話ではない。ワーディングと共に張り巡らされた結晶による悪影響はともかく、この場において自分だけが無視をされる道理はない。
 自分の血が侵し拓けた装甲に、熱を帯びた弾丸は確かに撃ち込まれた───……けれど、当然健在ならば。

アトラ :
「っ、やば」

アトラ :
 初めて手にしたときから今に至るまで握り続けて来た武器のことは、自分が一番よく分かる。だから、(ほぼ人頼りだったが)自分の射程まで身体を持っていったのだ。
 そして、眼前の彼女についても、そう。少なくとも“能力”を介した行動は、全くの無知ではない。
 だからこそ、悟るのも早かった。そも、猪口才と評されたように、真っ向からの撃ち合いなどでストレートに勝てるなどと思ったことは一度もない。

アトラ :
 既に刺突の構えに移った姿を視界に収め、可能な限り身体を逸らす───……が、無駄だ。何処に逃げても彼女の距離で、それを防ぐ手を持ち合わせていない。
 迫る剣が己を貫き。貫かれた傷口から結晶が生じ、痛みが奔った。……痛いどころじゃない。一回死んでいるのだから。

アトラ :
 ……だが、自分たちのような存在にとって死が遠いものであるのは既に実践してみせた男を見れば一目瞭然だ。
 剣から逃れるように勢いのまま倒れ、傷口と眼前の相手を交互に見る。起き上がっても依然痛む───……死を運ぶ浄化の結晶。

アトラ :
「っが、げほ……痛い、なあ!」

 ……まあ、痛くても。立ち上がれはするのだ。完全に死んだわけじゃないのだから。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「チッ……結構がっつり行ったな、今の」

 アトラの背後のクレーンまで延び、風穴を開けた魔剣が再び縮小して手元に戻る。結晶化したクレーンが音を立てて倒れ、地面に落ちて粉みじんに粉砕される。
 その折……レイラはペッと何かを吐き出した。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 脇を撃たれた際の血糊だけではない。それは赤い鮮血に濡れた固形物。今降り注ぎ続ける塩の結晶と同じものであった。

水無瀬 進 :
 ネツィヴメラー
『浄火の柱……そういうことか!
 ラクシャーサの持っている遺産というのは、彼女の言が正しければ旧約聖書に登場するロトの妻が変じたという塩の柱。
 その本質がレネゲイド以外に対してすら発動する規模の超攻撃性を持ったカウンターレネゲイドなら……
 通常を超える破壊力であると同時に、自分自身に掛かる負荷も相当なものとなる!』

アトラ :
「……っ、やっぱり…… ……変なところで我慢しちゃって、……」

ダン・レイリー :「………成程。その罪を問う矛先は、持ち主にさえも及ぶか」 

ナタリー・ガルシア :

ダン・レイリー :
「………使用に反動を伴う力などとは。
 しかしこれで合点が行った」

 ヤツはこれを使わなかったんじゃない。
 使えなかった───使う時は仕留めに行く時でないと“保たない”んだ。

 あるいは、よしんば此方を殲滅した“後”も含めて。

ナタリー・ガルシア :「…………」

人は生まれた瞬間から誰しもが罪を背負うという。故に、その裁きからは逃れられない。
それは、裁きを下す側であっても同じこと。

「……ラクシャーサ、貴女は、今これを『楽しんで』いますの?」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「モチのロンよ」

 じゃないとこんな真似はしない。
 浅くない手傷を負いながら、ゆらりと剣を構え直して告げる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
「私に敵以外、縁を作る手段はないからね。
 憎まれっ子は大変なわけ」

 だから、争う、戦う、剣を交える。
 死と死によってのみ縁が築かれる、それが……あらゆる人間から拒絶され続けた女の道だった。
 僅かな、例外を除いてだが。

アトラ :
「……なにそれ、勝手に敵作っちゃって。
 いや、ウチが言うのも変だけど……ウチのせいでもあるかもだけど、…… ……ウチだって旅して、そうじゃなくても今だって縁を結べるっていうのに、……」

 ……心底、複雑だ。少しぐずるような表情になるが、戦闘中という状況と痛みで上手く近付けない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「いいのよ別に。これでも楽しんでるし、今も楽しんでんだから。
 それに今そういう湿っぽいノリは萎えるから止めて欲しいんだけど」
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「だらだら話してる暇があるなら、ぶつかってきなよ。このまま彫像になるまでおしゃべりしたいワケ?」

ダン・レイリー :「………、」

ナタリー・ガルシア :「――それでは」

ナタリー・ガルシア :「アトラさんとの間に築いた何もかもは、縁ではなかった、と?」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「さてね」

 肩をすくめて皮肉めいた笑みを見せる。

アトラ :
「…… ……そっちがどう思っててもウチの方は変わんないし!こんまま負けてやる気もないし……!」

アトラ :
「やり切った顔してそのままぶっ倒れたら許さないかんね……!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「そいつはあんたがブッ倒すことが出来たらの話だけどね……!」

ナタリー・ガルシア :「……そのために、私達はここにいるのです」

昨晩のことを思い出す。
その横暴さを、不平不満を、しかし毒気なく吐き出していたアトラのことを。
そして、きっと――同じ時を過ごしていた彼女もまた、アトラと同じように、その時間のことを大切にしているのだと思いたい。

ナタリー・ガルシア :
「――通しますわ、私達の意思を!」

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=千刃空夜叉
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Natalie

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :《サイレンの魔女LV10》を宣言しますわ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :来な!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :3DX+10
命中判定 (3DX10+10) > 9[3,8,9]+10 > 1

ナタリー・ガルシア :くっ、あと一つ……

ナタリー・ガルシア :すみません!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :……いえ、まだ触れるダイスは残っている筈

ナタリー・ガルシア :振り直しても宜しいでしょうか!!!ストレンジフェイズを忘れていましたわ!!!

GM :オーケー、追加振りで三つ振ってくだしい!

ナタリー・ガルシア :3DX
ここでジャックポットですわ~~!!! (3DX10) > 6[1,4,6] >

ナタリー・ガルシア :……

GM :一人用のPODでかぁ?

ナタリー・ガルシア :………………

ダン・レイリー :哀しい顔をしてもダイスは二つに割れないし出目は変わらないぞ

ダン・レイリー :やったんだ やってみるしかないだろう 大丈夫だよ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :C値10の壁は高い……

ナタリー・ガルシア :そこをなんとか……

アトラ :ダイスが砕けて……12に!

ナタリー・ガルシア :やりましたわ~~!!!

GM :駄目です。(PODに魔封波で吸収する

ダン・レイリー :PODは電子ジャーだったというのか…? 

ナタリー・ガルシア :キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アトラ :魔封波使えるのも驚きだけど……

ダン・レイリー :追及するな 呑まれるぞ

ダン・レイリー :(乗ったのは僕なことは置いといて)判定に戻ろう(押し流す)

アトラ :もす……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
リアクション:ガード

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :少しガードは厳しくなってきたけど、まだまだヘーキヘーキ!

ナタリー・ガルシア :その余裕がどこまでもつか、見ものですわ!

SYSTEM :【ユニット:ラクシャーサがガードをしました。
 ダメージ判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :それではいきますわ!!

ナタリー・ガルシア :2d10+30+10 (2D10+30+10) > 12[3,9]+30+10 > 5

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :…………

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :うげっ

ナタリー・ガルシア :ふふん

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :計算間違いでガードが6点引かれてたけど、誤差を修正しても……
ガード値の6点を差っ引いて46!

ナタリー・ガルシア :ここまでアトラさんと大尉が削ってくれたおかげですわ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……、まだ、まだ!」

 先の一撃で致命傷を負ったようだ。確実にリザレクト限界まで削り切り、再起不能に追い込んだ……ように、思われた。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「物質複製の応用……!
 PWEみたいな大型の複雑な器物の複製は手間暇と時間がかかるけど……小さく、それも構造を遺伝子が記憶しているもの……
 ・・・・・・・
 体の部位や臓器なら、即座に複製できる!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
オートアクション:
 Reconection
【結晶再構築】
《リヴァイブセル LV3》

Option:HPを40回復し、戦闘不能状態を回復する。

SYSTEM :
【イベント発生条件を満たしました
 判定内容を変更し、FS判定を再開します】

ナタリー・ガルシア :大言を吐いて、向かう相手をしかと見据える。
これから行わなければならないこと、これから超えなければいけない試練、それを考えるだけで目眩がする。

遥かな高みにいる相手に、一足飛びに追いつく手段は無い――あるいは、あったとしても、どこか歪なものになる。

ナタリー・ガルシア :
「(……起きていますか?仕事の時間ですわよ)」

"アダム" :
 ──そのようだ。
 ではそれらしい振る舞いで、キミを旅路へと導こう

"アダム" :
 相も変わらず力は抑圧されたままだが。
 何、やってやれないことはない。

 ────では、オレはキミにこう言おう。

"アダム" :
      לָּ֑יְלָה הֹוצִיאֵ֣ם אֵלֵ֔ינוּ וְנֵדְעָ֖ה אֹתָֽם
     疾く去ね 我、彼等を識らん

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……!(遺産の共振!何か仕掛けてくるな……)」

ナタリー・ガルシア :
  キーワード
その 言葉 は銃爪だ。
ベタ踏みしたアクセル、それによって叩き出された全ての力が空回りだったと思えるほどに――全ての歯車が、噛み合う音がした。

抑えつけられていたはずの風が巻き起こる。
そよ風はやがて、逆巻く風へ――たなびく真紅と両の翠が瞬くように、白い世界の中で燃える。

「――貴女の絲は、確かに脅威ですわ」

ナタリー・ガルシア :「この空間、この領域にいる限り、私達は貴女の掌の上も同然――絡みつくあなたの絲からは逃れられません」

ナタリー・ガルシア :
      ・・・・・・・・
「ですが――条件は貴女も同じですわ」

ナタリー・ガルシア :先の三人が見せた精緻なコントロールや、己の能力を応用した熟練の技――そんなものを少女は持ち合わせてはいない。

故に、その全て、その力を一極化する。


無数に絡みつく極細の絲――それら全てが繋がり、手繰られ、こちらの動きを阻害する。

ナタリー・ガルシア :それは即ち――――

   ・・・
「――捉えているのは、こちらも同じですわ」

ナタリー・ガルシア :絲は衝撃を散らす。
それはラクシャーサの意思を受けて、その身を守ろうとする防衛反応。
無意識であっても自動で作動する反応装甲――一種の完全防御に等しい。

それを意識的に集中させ、束ね、織りなす護りはもはや鉄壁。

それを、真正面から打ち崩すなど――

ナタリー・ガルシア :「――いきますわ!」

挑む。
常にそうであったように、ただ愚直に。
己に絡む絲――伝う振動、即ち伝播する衝撃を増幅する。
端から打ち消され、無力化される。
幾千幾万の波の全てが、届く前に打ち消される。

出力に任せて能力を行使する。
静かに降り積もる白を揺らして、静謐な世界をかき乱す。
いつだってそうしてきたように――少しずつ、一歩ずつ、けれど確実に。

ナタリー・ガルシア :「と、どかせ…ますわ……っ!!」

力技しかない。
そうとわかっているのであれば、後は簡単だ。
打ち消された瞬間に、相殺された波を、けれどそれごと押しつぶすように――衝撃が伝播する。

この領域の全てを相手取る。
思考にすら上らない無謀。
それは、途方もない無茶。
――だが、無駄でも、無理でもない。

ナタリー・ガルシア :分からず屋には、キツイお仕置きが必要だ。

「――貴女の絲/意図は、ここで断ち切りますわ!!」

己の全てを注ぎ込む。

  ・・・・・
この領域の全てを引っ叩く。

ナタリー・ガルシア :衝撃が空間を満たし、殴打にもにた衝撃が飽和する。

視界が真っ白に染まる中、思考だけが怜悧に明瞭さを保っている。
白熱する意識と身体を繋ぎ止め――その力の全てを、打撃力にも似た衝撃としてナタリーは通しに往く。

ナタリー・ガルシア :通す。
通した、という確かな実感と、脱力は同時だった。

ナタリー・ガルシア :崩れ落ちそうになりながらも、ナタリーは必死に己の身体を保つ。

戦いの中でしか縁を紡げないというのであれば――それを繋ぎ、そして手繰り寄せれば良い。

「――これで、おしまいですわ!!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ちい……(そう来ると思った!
 やっぱり大尉殿にアレを遣ったのは拙かったか!)」

 受けに回る間際、ラクシャーサは舌打ち混じりで防御に回る。
 高い柔軟性と防御性能、極めて高い生命力を以て千の刃を振るう不死の戦鬼。
 それらを遺産によるバックアップで能力を底上げし、さらに超強力な対抗種で広範囲に及ぶ殺傷力を身に着けた。
 一見すれば万能で、無数の手札を持つ。そう見えるが……

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「(……やはりそうか。あの防御性能は驚異的だが、絲自体の精製にラグがある!)」

 ナタリーが能力を以て過負荷をかけている中、勇魚は冷静に状況を見ていた。
 ラクシャーサの持つ能力、その欠陥を。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「(あれだけ広範囲をカバーしているんだ。恐らく短時間の間で操れる絲の総量には限りがある。
 考えてみれば当然だ。
              ・・・・
 譬え町全域に及ぶとしても、今この場に持ち込める量は限られる)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「(つまりラクシャーサの能力は、球数が無数にあるとしても一拍の間に使役できるリソースは常に一定!
 その一定の範囲内のリソース配分をして能力を使役している……そして!)」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 既にそのリソースは、この広域攻撃の防御に回せる程に残っていない!
 そう判断した勇魚の行動は早かった。

「援護します、ナタリー!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 絲は材質を変化させることで様々な攻撃の防御に回せる。勇魚の攻撃が熱をベースとすると理解した時点で、それ用の対策を練る余地はあったのだろう。
 だが今、そうする余裕がない限り、絲は絲……この炎で燃やせぬ道理はない。

  コンダクション
「《 奔 れ 》──!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 熱は分子震動。故に媒体がある限り、単純な空気中より余程伝導率が高い。
 音もなく気中の結晶が燃え、見えざる絲を焼きながら燃え広がる。
 ナタリーが力押しで突破しようとした風の震動を後押しするように、炎神の息吹が添えられる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ッッ、か……!」

 ナタリーの力任せの激震。それに抗うのは、まさしく綱引きに等しい。消耗したラクシャーサは辛うじて押し留めていたが。
 そこに後押しする形で、勇魚の炎により絲が次々と散らされていく。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 無数の見えざる防護を超えて。
 壁が突進するかのような空間震と風圧がラクシャーサの全身を襲う。

「ガ────ッッ!!」

 殴りつけるような震動を前に、遂に余裕を保っていたラクシャーサに致命打が入る。

SYSTEM :
 殴りつけるような空間震に打ちのめされたラクシャーサは。
 そのまま、ヘリポートの屋上から突き飛ばされる形で吹き飛んだ。

 確実な致命傷を与えた手応えと共に。

水無瀬 進 :
『やった……のか?』

 吹き飛ばされた様を映像越しで観ながら、水無瀬は快哉の声を上げかけた。
 だが……散布したワーディングの反応はまだ消えていない。衰微する様子もない。
 戦闘継続不能なまでの付加を受ければ、自ずから消えていくはずのものが未だ消えておらず

ダン・レイリー :「………イヤ、まだだ………」

ダン・レイリー :
 死が遠いことが此方の専売特許とは思うな───。
 そう口にして窘める自らも、今のはそう誤認して然るべきと納得していた。

 間違いなく戦闘継続不能だ。だのにワーディングにも、付属する精神的プレッシャーにも、一切衰えの兆しがない。

 ならば信じがたい話だが、ヤツは───。

SYSTEM :
 程なくして、その答えは返ってきた。

 高度100m以上の高みから落下したラクシャーサであったが。秒と経たずして下方から白い空夜叉の影が飛び出してきた。
 
 ──夜叉が、天を舞う。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 虚空から投げ出されたラクシャーサは、まるで発射されるかのように下方から跳ね跳び戦線に復帰していた。
 しかも、彼女が足場とするのは虚空。

 空間の絲を釣り糸とし、さらに一部の絲を縁り合わせて足場としている。

「危ない危ない……
 今のは結構効いたよ」
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「物質複製は複雑なものであればあるほど時間がかかる。けど、自分の臓器や肉体に関して言うなら遺伝子情報を元にすればすぐに複製が出来るんだよね。
 これに回せるだけの絲が残っていて助かったよ」

 こき、と首を回し、血反吐を吐き捨てながら、ラクシャーサは高みより一同を見下ろしていた。
 

ダン・レイリー :
「ましてや宿主の遺伝子など、レネゲイドにとっては勝手知ったる、というわけか………」

 そもそもレネゲイドは例外こそあれど、宿主を生かそうとするものだ。
 遺産などは、自分の浅い認識に限れば、極めて強力なレネゲイドの塊と考える。

 ───ましてやレネゲイドは、宿主を生かすだけではない。
 時に殺してでも宿主の本能を刺激しようとする、荒っぽい同居人なのだ。
 ソレが宿主を生かす力が、並のものより強いのは、当然とさえも言えた。

ダン・レイリー :
「(───だが、対抗種の攻撃性は使用者にさえ及んでいる。
  文字通り死に瀕したところで、あれだけ無謀な自己再生ならぬ複製だ………)」

 二度目はあるまいし、全て元通りとも行かない。
 お互いガス欠には早いというわけだが、彼方に関してはそれが近いと見える。

 故に返答は一つだけだ。
 見下ろす夜叉への手向けなど、銃口以外には思いつかぬ。

アトラ :
「……ウチらが必死に登った高さを、まああんた……」

 心配と、驚きと、焦り。全部混ざって、やや表情が引き攣る。
 ……自分たちの蘇生とはまた違う、能力を使っての補填。……流石に彼方に一家言ある。
 だが、振り出しとは違う。傷は確かに残っていたはずで、能力を回した分の疲労と蓄積だってあるはず。

アトラ :
「……何でも良いけど!それももう結構、やせ我慢なんじゃないの!?」

 それは、まあ。直に突き刺され結晶にされかかった身としては、人のことを言えない部分だが。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「そんな泣きそうな顔して言われても、ちっとも怖くないね。駄々こねたって、こればっかりは譲れない。
 んー、まあ実際? 流石にこのレベルの相手を、相手の土台でやってたら結構キツいな」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 今のペースで死合えば、毒が回るより先に自分が押し倒されるだけ、そんなことは彼女とて判っている。

 幾ら長引いたとて、消耗戦では数に勝るあちらが有利。
 故に…… 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「けどまあ、盛り上がってきたことだし……
 こんな狭い場所でやり合っても仕方ない」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
    ・・・・・
「────広く使おう」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 言いつつ、ラクシャーサの身体がさらに空に跳ねる。
 そして中空で宙返りしながら、その手に携えたシミターに細指を這わせる。

 指になぞり、シミターの刃渡りは爆発的にどんどん伸びていく。
 ──瞬きの内に刃渡り8,90センチ相当の剣は、20メートルを超す怒涛の大蛇と変容していた。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「拙い……!
 大尉、ナタリー、アトラ!
 緊急退避、急いで!」

ダン・レイリー :
「! 間に合うか…!?」

 だが、間に合わせなければやられる。
 この土壇場でのゲート展開に信憑性はないが、やるしか───。

ナタリー・ガルシア :

アトラ :
「……ちょっ、ちょいちょい……!」

ナタリー・ガルシア :「……こ、これは流石に」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :

メジャーアクション:
    ゾルファガル
【 薙げ、骨喰み 】
《コンセントレイト:エグザイル LV3》+《伸縮腕 LV3》+《クリスタライズ LV3》+《怒涛の大蛇 LV1》
(演出上のため判定は行わない)

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「そら、そら、そらっ!!」

 まさに視界を覆うほどの巨大な剣が。
 怒涛の如く殺到する大蛇が、彼ら本人……ではなく。
 ・・・・・・・・・・
 一同が立つヘリポートに向けて、縦横無尽に振るわれる!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 切り裂かれたO-tec社ビル屋上が、巨刃に切り裂かれる度に脆く結晶化していく。
 あっという間にヘリポート全域に及んだ結晶は、そのまま砕け散り崩落を始めた!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「く……ッ!」

 勇魚は緊急用に炎の回廊を各メンバーの足元に発射させ、疑似的なカタパルトを作り即座にビルの屋上から『射出』することで崩落から逃す。

 同時、遅ればせながら勇魚もまた崩れていくビルの瓦礫を、次々と乗り継ぎながら宙に身を投げる。

ダン・レイリー :
「チィ───後先考えず壊してくれる…!」

 ゲートの展開と同時に、ヘリポートをのたうち回る白銀の大蛇が、先程まで自らの立っていた場所を粉微塵に打ち砕く。

 展開された炎の回廊に滑り込むようにして短距離を移動しつつも、迫る余波や、想定される追撃のために身構えて。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「あっはははははははははははははは! やるぅ!
 皆して囲まれたらこっちが不利だからね!
 ナタリー
  お 姫 様 は兎も角、距離が空けば弾は届かないでしょ!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「このまま引き打ちさせてもらおうかな!
 仕留めたいんなら地獄の底まで追いかけてきなよ!」

ダン・レイリー :
「そうかい!
 ………何度も入口を覗いた場所だ、遠慮なく上がらせて貰う!」

アトラ :
「ふっ……ふざけろ!ズルいっての!」

 此方に明確な空中移動手段はない。つまり、自由落下に身を任せる他ない……の、だが。
 先も世話になった炎の回廊が、再びその命を繋ぐ。とは言え落ちることに変わりはない。
 それに、言う通りだ。少なくとも、自分の弾は届かない!

ナタリー・ガルシア :「くっ、ぅ……戦いを楽しむのではなかったのですか!?」

射出されて崩れた姿勢を、危うさを抱えながらもなんとか保つ。

距離を離されては、このままじわじわと嬲り殺しにされるだけだ。こうなってしまっては戦いですら無い。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……! ナタリーは身軽な分このまま追跡が出来ます! 大尉は重力制御で滞空を!
 ミナセはアトラの支援をお願いします!」

水無瀬 進 :
『お、おうっ!?
 了解だ! お嬢ちゃん、捕まって!!』

 勢いで呼び捨てにされた……などと小さく呟きながら、水無瀬はすかさず飛行するドローンをアトラに近づける。これを掴め、ということだろう

アトラ :
「っ……こういうのってひとの体重掛かって良いヤツなんすか!?」

 とは言ってみたものの、落下死など笑えない。迷わず左の手を伸ばしてドローンを鷲掴む。

ダン・レイリー :「保障する! 乗り心地が悪ければ連帯責任で奢るよ!」

ダン・レイリー :「───ヤツのプレッシャーは当然生きている! 追うとなれば何時も以上に制御に気を配るんだ、いいな!」

 当然、それは俺自身にも言えることだが!

ナタリー・ガルシア :「乙女の体重は羽毛より軽いものですわ!!その辺り、ドローンさんも弁えているでしょう!」

水無瀬 進 :
『まあ快適な空の旅とはいかないだろうけどね!
 しかしさらっと言ってくれるねお嬢様も!』

ダン・レイリー :まさか速攻でハードルが上がるとはな

アトラ :「……う、うす!ヨロシクです!」

ナタリー・ガルシア :「それでは、私はこのまま追跡いたします!!尻尾巻いて逃げるのを追い立てるのは気が引けますが――手加減はしてあげませんわ!!」

安い挑発だが、眼下にあるのは無数の人の営みだ。ほんの少しでも注意がこちらに向くのであれば、それに越したことはない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「同じく! 敵影はダウンタウンの上空を滑翔中……ワーディング範囲を絞って下の街に影響が及ばないよう設定されていますが、それでもこちらを常に射程に置いていることは間違いありません……!」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 言いつつ勇魚は、ビルの残骸を蹴って近隣のビルの屋上に飛ぶ。
 そのまま短距離の《炎の回廊》を連続で生成することでカタパルトを生成し、そこからさらに跳躍。これを繰り返しながら、飛翔する敵を追い続ける!

ダン・レイリー :
「此処まで来てやられるわけにはいかん………!
 流れ弾および迎撃に注意───詰め切るぞ!」

ダン・レイリー :
 此方も同様に、未だ残る炎の回廊を踏みしめて跳躍。
 ガンビットを何基か自身の重力制御に回して、ドッグファイトの用意だ…!

ナタリー・ガルシア :炎の回廊を渡り、衝撃波による推力で姿勢制御――空中を駆けるというよりも、翔けながら遠く離れて行くその姿を追う。

「アトラさん、もう少しですわ!!私達であの方をとっちめましょう!!!」

アトラ :
「…… ……もちろん、当然!」

アトラ :
「……よっし、運転たのんますミナセさん!
 その辺ちゃんと信頼してるんで!……ウチらは真っ直ぐ、あのひとの足を止める……!」

水無瀬 進 :
『了解だ! シートベルトがない分、しっかり捕まっててくれよ!』

 言いつつ推力を上げ、水無瀬のドローンはアトラを載せて空を走るラクシャーサを追い突貫する。

SYSTEM :
内容:
 このままではじり貧と見たラクシャーサは一転、距離を開けることで飛行して遠距離戦に転じてきた。
 間合いを開けられればこちらの攻撃は届かず、毒に侵されながら視界の及ぶ限りに射程を持つラクシャーサの良い的となるだけだ。
 このまま逃がす訳にはいかない。すかさず追跡し、ラクシャーサの下までたどり着け!

GM :という具合にFS判定が再開するのですがあ

GM :1ラウンド経ちましたな

ダン・レイリー :…忘れてはいないぞ クリンナッププロセスだ

アトラ :あっ

ダン・レイリー :………“炎神の士師”、この流れで言うのも難だが

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :いえ、弁えています。
回復ですね

ナタリー・ガルシア :骨身にしみますわ~~~

ダン・レイリー :ああ、第一歩でリザレクトおよび墜落では冗談にならない。恃むよ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
──了解!

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
クリンナップ: 《火の鳥の加護》
対象:ダン、アトラ、ナタリー

効果:HPを+15回復する

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :結晶化が遺産によるレネゲイドの侵攻なら、同じ遺産のレネゲイドで進行を遅らせられるはず!

ダン・レイリー :助かる、これならば保つ筈だ

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 1 → 16

アトラ :どもども!ウチもほぼ全快だ

system :[ “T³”アトラ ] HP : 7 → 22

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 4 → 19

ナタリー・ガルシア :これでまだまだやれますわ!

GM :では直後に邪毒ダメージ!9点だ

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 16 → 7

GM :よし 処理が終わった所で

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 19 → 10

GM :判定再開だ!

SYSTEM :《ROUND 2》

SYSTEM :-SETUP PROCESS-

SYSTEM :1d100 ハプニングチャート (1D100) > 6

SYSTEM :
【水無瀬からの支援物資が届いた!
 ラウンド開始時にHPが2D10回復する】

水無瀬 進 :漸く届いたみたいだ!
応急キットを載せたドローンをそっちに送るよ!

ダン・レイリー :受け取りが空中というのは初めてだが、世話になるよ!

GM :というわけでこの出目はHP回復です!
回復のダイスをどうぞ!

ダン・レイリー :では早速だ。拙い状況に変わりはないからな

ダン・レイリー :2d10 回復 (2D10) > 9[5,4] >

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 7 → 16

アトラ :2d10 イェー (2D10) > 15[5,10] > 1

ナタリー・ガルシア :2d10
助かりますわ~ (2D10) > 12[8,4] > 1

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 10 → 22

system :[ “T³”アトラ ] HP : 22 → 24

GM :元気モリモリだねえ!

アトラ :100パーっすね!100パー

ナタリー・ガルシア :私もかなり回復できましたわ

ダン・レイリー :ヨシ…予想以上に良いタイミングだ。リスキーなリザレクトは避けられるな

水無瀬 進 :間に合ってよかったよ! それじゃあ追跡を続けようか!

GM :ちなみに判定内容は前回と変わりないです
今使っておくエフェクトはありますかな

ナタリー・ガルシア :軽功……は先と同じく、自分の番で宣言でしょうか?

GM :そうですな

system :[ 勇魚 ] 火の鳥の加護 : 3 → 2

ダン・レイリー :では《赤方偏移世界》を引き続き運用する。此処を長引かせるわけにはいかんな

system :[ 勇魚 ] ファイアドライブ : 3 → 2

ダン・レイリー :それとだ…今はデトロイト上空での追撃戦だな。ビルの衝突の可能性なども加味して《偏差把握》を使うつもりだが、これが何か効果を発揮することはあるか?

GM :ああ~ 成程
ありですねそれは

GM :うむ いけますなそれなら
目標値を1下げましょう

ダン・レイリー :よし。それならば分は良くなったか。

ダン・レイリー :そして…ここは先程の汚名を返上するか。《赤方偏移世界》は僕に使う。

GM :おお! 攻めに入りますな

SYSTEM :【宣言を確認しました】

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 67 → 69

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :では今度こそ一番槍を務めさせて貰おうか。先の通り《偏差把握》を使用後、肉体で判定を行う。

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :さて…では行くぞ

ダン・レイリー :2dx+2  (2DX10+2) > 4[2,4]+2 >

GM :っっっぶない!!

ダン・レイリー :…上振れは狙えんか! だが…

ダン・レイリー :最低限通りはした………そう見させて貰おう 

GM :辛うじて一歩 しかし確実な一歩!

ダン・レイリー :そう、零ではない…大口は叩きたかったがね 次を恃む!

SYSTEM :【判定成功! 
進行度を+1進めます】

判定値:4⇒5

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=ATRA

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA

SYSTEM :【行動を宣言してください】

アトラ :しゃー!と言ってもウチは自力で進行を伸ばす手が無いので……支援に回ろう!ナタリーちゃんに感覚で!

GM :オーケイだ!ちなみに支援は足場とか行先のあれこれを知覚で判別して皆のサポートするようなRPになるぜ!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

アトラ :3dx 光れウチのT³アイ! (3DX10) > 10[1,4,10]+7[7] > 1

アトラ :光りすぎだよ

水無瀬 進 :うぉっまぶし!

アトラ :ギャー!目が!

水無瀬 進 :こっちがぶつかりかけてどうする!
ウオオ安全運転!

SYSTEM :【判定成功!
 判定値を+3します】

アトラ :うす!もす!よろです!

GM :そうしてお嬢に支援が入るう!

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA
 Complete!

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Natalie

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :それでは私は《軽功》を宣言します!
これで達成値-1ですわ!

GM :オーケイだ!これで勝つる!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ナタリー・ガルシア :3dx+3 (3DX10+3) > 9[6,9,9]+3 > 1

GM :10オーバー!順当に着実に進んでいる

ナタリー・ガルシア :抜かりなく行きましょう

GM :バフがないもののペースは好調!どんどんいこう!

SYSTEM :【判定成功!
 進行度を+2進めます】

判定値:5⇒7

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Natalie
 Complete!

SYSTEM :-CLEANUP PROCESS-

GM :そしてラウンド経過だ。邪毒ダメージが襲う!

GM :回復の甲斐もあってこのラウンドでは誰も落ちぬがな!

system :[ ナタリー・ガルシア ] HP : 22 → 13

ダン・レイリー :ミナセのが間に合っていなければ此処で通算5回目だったな…

ナタリー・ガルシア :まだまだ戦えますわ!

ダン・レイリー :全く命綱が多い 何よりだぞ

system :[ “ホワイト・スカイ” ] HP : 16 → 7

アトラ :まーでもかつかつっすね 早いとこ追い付かにゃ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :とはいえ、あと一踏ん張りです。このまま押し切りましょう

ダン・レイリー :違いない…追跡を続けるぞ 当てもない逃避行にもピリオドを打たねばならん

SYSTEM :《ROUND 3》

SYSTEM :-SETUP PROCESS-

SYSTEM :1d100 ハプニングチャート (1D100) > 3

SYSTEM :【ラクシャーサの妨害!
 〈回避〉か〈知覚〉で難易度8の判定を行い、失敗した場合このラウンドでの行動が出来ない】

ダン・レイリー :来たか…!

ダン・レイリー :………偏差把握の効果はあるか!? 此処でやられるわけにはいかんぞ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :勿論こっちからの攻撃もあるよ!
偏差把握は有効だ!

アトラ :げぇ……どうにかするしかないんだけど!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :なにせこれからするのは「その辺のビルとかタワーをぶった切って投げつける』だからね!

ナタリー・ガルシア :同じく、軽功は……効果がありそうですわね

ダン・レイリー :律儀で有難いことだ、元より彼方はソレが狙いなのだからな

アトラ :言ってることヤバい!

ナタリー・ガルシア :△ スライドターン

ダン・レイリー :審査員は此処にはいないぞ

ナタリー・ガルシア :曰く、万能回避技らしいですわ

GM :さて 偏差把握、軽功はそれぞれ固定値+1としよう

ダン・レイリー :手元にあれば酷使したがね ではやるか…

GM :ではお願いします!今回は知覚技能も遣えるぞ!

ダン・レイリー :上等だ、では其方で振るぞ…!

ダン・レイリー :5dx+2 知覚 (5DX10+2) > 8[1,2,3,5,8]+2 > 1

ナタリー・ガルシア :3dx+2
回避ですわ〜! (3DX10+2) > 9[3,7,9]+2 > 1

アトラ :ウチも~知覚で~

GM :どうぞ!

アトラ :3dx+1 (3DX10+1) > 10[4,6,10]+9[9]+1 > 2

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :うお!

アトラ :調子が良すぎる ミナセさんのドラテクどうなってんの?

水無瀬 進 :このドラテク!
上ボタンを押せ!

ナタリー・ガルシア :運転してるのはアトラさんかもしれませんわ

ダン・レイリー :
タンデム
二人乗りでよくやる、“ラクシャーサ”は勝手知ったる相手ということか

アトラ :才能開花しちゃったな~!

ナタリー・ガルシア :二人で同時にAボタンでダブルダッシュですわ〜!!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :ちぇ、全員回避か!

GM :どうやらうまく躱せたようですな!
これでそのまま判定に進めます!

GM :ちと荒れたものの今がセットアップだ
大尉はエフェクトどうします?

ダン・レイリー :ン………

ダン・レイリー :ここらで決めに行くべきでは…あるな

ダン・レイリー :どのみち乗りかかった船だが、石橋は叩かせて貰おう。僕に再度《赤方偏移世界》を使用!

ダン・レイリー :…此処で詰め切ってバトンを渡すぞ!

GM :追い赤方偏移!そうこなくっちゃ!

SYSTEM :【宣言を確認しました】

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 69 → 71

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=Dan

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=Dan

ダン・レイリー :変わらず行く! 《偏差把握》使用後に肉体で判定だ

SYSTEM :【行動を宣言してください】

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :では…

ダン・レイリー :2dx+2  (2DX10+2) > 9[5,9]+2 > 1

GM :行ったァーッ!

GM :転換ポイントをブチ抜いて……リード!

ダン・レイリー :追い付かせてもらったぞ…!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :詰めて来たね…!

ダン・レイリー :先程は歓待をどうも! 上がらせて貰った以上は、きっちり礼をさせてもらう

SYSTEM :【判定成功!
 進行度を+2進めます】
判定値:7⇒9

SYSTEM :
【イベント発生進行値:8に到達しました】

ダン・レイリー :
 前提として、鳥は泳げないし魚は空を飛ばない。
 鳥には泳ぐための鰓がなく、魚には飛ぶための翼がない。
 
 翻って人間にはどちらもない。物理的にも精神的にも、そこに至れない。
 つまり空は見上げるものであり、ヒトの住む世界として不自然だということだ。

ダン・レイリー :
    .Overed
 …しかし超人には別だ。

 世の中の摂理を踏み躙って生きることを義務付けられた生き物が、
 必然として“ヒトが空を飛べない”という初歩の初歩を破れない理由はない。

ダン・レイリー :

 それは予めガンビットへのモーション・パターンとして打ち込んだものではない。
 ないが、そもそもこれ自体、自分の手足のように動かせるよう訓練し続けてきた兵器だ。この状況になった瞬間から(そもそもエアポートへの移動段階から)即応できるようにシミュレートはしていた。

 後は実戦するだけだ。

ダン・レイリー :
Renegade・Aerial maneuver
「“R因子・空中戦闘管制”………」

 バロール・エフェクトの重力制御による飛行と、それを打ち出す重加速。
 先程弾丸で“殺す”ためにやったことの応用系───ぶっつけ本番ながら、理論が変わらなければそれは難しくない。

 敵を討つためのガンビットは今この時だけ、重力で押し出すブースターであり、また自らの進行を幇助するガイドビーコンになる。

ダン・レイリー :
 四基纏めて一方向に置き、重力の暗色が空に一本の軌跡を引く。
 その自身の動きを誘導し、また最低限の負担に留めるための“誘導”に二機。都合六機で行う空戦フォーメーション。

 重い人間の身体を無理矢理その推力で振り回す、一歩間違えれば墜落かGでやられる身体を、綿密に制御しながら、プレッシャーに満ちた空を泳ぐ………!

アトラ :
「……ふ~」

 “テンペスト”───……ミナセさんのドローンに捕まったまま、距離を開く背中を見据える。
 夜空を駆ける、共に奔る者たちに合わせて。……とはいえ、速度や操縦の部分は自分の領分にない。ドローン任せ、大人任せだ。
 ……そして。だからこそ、見えるものがある。こういうのを表すのに適した言葉があった気がするが、思い出せないので閉口しておいて。

アトラ :
「うし!……操縦の方はミナセさんに全部任せとくんで、ルートの方はちょっくら任せてください!
 いや軌道が読めるとかじゃないんだけど。ウチの方が今、そっちに集中回せそうなんで!」

 ……とはいえ、とはいえだ。彼方がイレギュラーな手を打てば瓦解する指示だ。

水無瀬 進 :
『オーケイ任された! そっちは目の前のことに集中してくれ!』

 言いつつイオノクラフトで滞空する次世代の飛行ドローンは、重量と駆体の限界ギリギリの速度を保ちながら敵影へ肉薄していく。

ナタリー・ガルシア :跳躍、滑空。
空中を進む二人とは違い、飛翔手段を持たないナタリーは点在する高層ビルを足場に進む。

超人の跳躍力と、出力任せに重圧を跳ね除け。風を姿勢制御装置(スラスター)代わりに夜を往く。

ナタリー・ガルシア :「羨ましいと言えば嘘になりますが……コチラの方が、私に合っていますわね」

独り言は夜闇に攫われ、宙へと消える。
思考と神経の殆どをラクシャーサに向けながらも、少し高揚している自分を自覚する。

――夜景、人の営み。

それを眼下に見ながら、夜空を翔ける。まるでコミックの主人公になったような感覚に、そんな場合ではないと分かりながらも心が躍る。

ナタリー・ガルシア :高揚はプラスに。
ここ最近、力を振るう責務を背負い続けてきた少女にとっては、皮肉にも自らの力をしがらみに囚われず使うことが出来ていた。

故に、その足取りは軽く、夜を翔ける姿はどこか楽しそうですらあった。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ラクシャーサは空を勝手知ったる庭のように、夜の摩天楼を人々の灯しを背景に飛び続ける。
 絲で吊り上げて空中ブランコのようにその体を運び、時には硬化させた絲を発条にして飛び跳ね、高速で距離を開け続ける。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 近隣のビルからビルへ、絲から絲へ、次々と飛び乗りながら距離を開けつつ牽制の斬絲を飛ばすが。
 その悉くを勇魚の妨害で崩される。
 元より大したリソースを裂いてなどいない以上、見込める成果も薄い。耐熱の斬絲を生成して放てども、十分な威力を得る前に散らされる。
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(やっぱ対応してきたか。リソースケチった攻撃じゃ削りにもならないのは面倒だな。
 流石に引き打ちはさせてくれない、か)
 だけど……っ!」

 最低限のリソースで火力を出す手段は他にもある。別段オーヴァードは超人でも、物理攻撃が通じないという訳ではない。
 重く、硬いものを迅く当てればそれで殺せる。無論、この場に集まった手合いに関して言えば。それが通じる相手が何人いるかだが……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 先鋒を征くダンが近づいてきたのを見計らい、ラクシャーサに遂に動きが観られた。
 近場の無人ビルの真横を飛び移った彼女は、生成した絲を撒きつけるようにしてその身を躍らせる。
 距離を開け続けていた彼女が一旦その足を止めて、何をするつもりなのか、恐らくこの場の誰もがすかさず理解したことだろう。

ダン・レイリー :「(足を止めた、反撃か? あの位置は───)」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「──こういうのはどうかな!」
 
 言いつつ、彼女は巻き付けた絲の材質を変容。単分子のウィスカー繊維の刃へ変貌させると同時、絲は音もなくするりとビルの構造をすり抜けるように透過。

 まるで藁でも斬ったかのような鮮やかな断面を晒しながら、糸を巻き付けたビルがズレた。
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 瞬時に賽子状に斬り分けられた高層ビル約5階分の鉄の瓦礫。それを、ラクシャーサは蹴り飛ばして追手へ向けてきたのだ。
 それらはさながらビリヤードのように、彼女が蹴り飛ばしたポイントを起点に拡散し、行く手を阻む超大型の散弾として襲い掛かる!

ダン・レイリー :
   ・・・
 ───やはりか!

 Bullshit
「出鱈目を!」 

ダン・レイリー :
 ・・
 それ自体が出来るオーヴァードは決して少なくない。
 出来る彼らに掛かれば、持ち運びに難儀する重機さえ羽毛のようなもの。 

ダン・レイリー :
 ましてや“ラクシャーサ”の得物と来れば、
.                  マン・キラー
 鋼すらバターのように切断する生粋の人喰らい。
 それが出来ない道理はない。
 問題はそれをするのかどうか───呼吸をするような気軽さで、間接的に、石ころでも蹴り飛ばすような感覚で人を殺れるのかどうか───ということだけ。

ダン・レイリー :
「(しかもあの数、逐一止めている時間はないな………では!)」

. Contact
「“調律開始”───!」 

ダン・レイリー :
 ………ビルに偶々紛れていた民間人を助ける術には乏しい。
 俺は色々なことを解決するマシーンの神様ではないからだ。
 
 したがって、その妨害を躱して進む方を優先する。
 推進機関代わりに展開したガンビットの四基を左右に展開、重力による推進ではなく従来通りの“ゲート”を展開させる。

 ………ただ違うのは、それが聊かの質量を伴うこと。

ダン・レイリー :
 つまりは質量を持った非実体のシールド。
 オーヴァードの、特に“ラクシャーサ”のようなのの攻撃に対してコレが役立つわけじゃないが、物理的なものを逸らし、緩め、弾くには十分な強度を持つ。

 これを用いて、賽子めいて分割され、質量弾として放たれたビルの残骸を押し留めつつ───。

 自分の移動には、残るビーコン代わりの二基を使う。

ダン・レイリー :
.  デブリ除け
 この重力の盾はいわば触れたものを浮かせる/反発させる反重力の壁。
 それは展開した自分さえも例外ではない。

 前方に展開したそれを踏みしめ、己を反発させて移動。
 それを繰り返し、隙間がなければ四基の壁で抉じ開け───無理矢理に活路を抉じ開けながら、稲妻めいてジグサグに駆け上がりつつも突き進んでいく。
 少しズレたならば、制御を間違えるか目測を誤るかして、ビルの残骸に押し潰される強行突破だ。

ダン・レイリー :
「足を止めてくれたな───おかげで届く!」

 そして此方の射程は威力こそなくとも、
 二人に比べてピカイチだ。
          ・・・・
 此処まで近付けば、意趣返しが出来る。

ダン・レイリー :
 射角を調節して放たれた牽制に過ぎない“ストーム・ベアラー”の速射撃は、弾き落とさせることを前提とした ”足止め”の連射。

 無視するには鬱陶しく、容易く落とせるが意識を割けば足が止まる───レネゲイドの間接的にしか関与しない武器ならではの取り回しが成せる“嫌がらせ”のやり返しだ。

アトラ :
 いや、これは。限度があるだろうに。
 ぶんぶんと首を振って集中を取り戻し状況を整理───……してる場合でもないのだが、これは。
 簡潔にまとめるならば、カットされたビルの隕石が自分たちに向かって降り注いでいる。普通、起こり得ないことである。
 自分たちが非常識な存在であることを差し引いても普通ではない。まして、自分は普段からそういった方向の戦地に出向いてるわけでもないわけで。

アトラ :
「……ミナセさん!」

アトラ :
 が、やはり。諦められない。わざわざ分が悪いからと戦場を移すのだから、口振り以上には追い詰めているはず。
 ぶら下がっていた身体を持ち上げるべく腕に力を込め上昇。大差はないだろうが、ドローンと自分の肉体の全体の面積を縮めるように身体を運ぶ。
 両足を引っ掛け、ボディにはしがみついたまま。ギリギリ背負われているような様相に見えなくもない姿勢で、ショットガンの銃口で前方を指し示す。
 今しがた目の役はやると言ったのだから変わらない。空中で命を預けているドローンの奥にいる相手に呼び掛けつつ、三度気合を入れ直し。

アトラ :
「こっち飛んでくる分を撃ち落としたり防いだりできるほどパワフルじゃないんで!
 懸かってますよ~、ウチの命!」

 あとはちょっと勇気付けるようなことでも言って、迫るビル群を指示して動いてもらうだけ。そして、追い付くだけだ。
 ……行ける。行けるはず。

水無瀬 進 :
『やってるよ! ああいや、くそ、女の子さんに汚い言葉が出る事だった。
             テンペスト
 かすり傷一つでも付いたらウチの会社の沽券に関わる! やるさ、やりゃあ良いんだろう!』

 慌てた様子でドローンを操縦し、落下する礫をまさに紙一重で躱していく……!

アトラ :「わはは。特別手当とか出るといいっすね!!!」

水無瀬 進 :
『伊達に高い給料もらってないってことさ!
 しかし心臓に悪い! 今のは組んだ火力管制プログラムのテストでバグが何一つ見つからなかった時ぐらい心臓に悪かった!』

アトラ :
「大変そ~ってことだけは分かるっす!
 もうちょっとの辛抱ですし、頑張ってくださいよ~……!」

ナタリー・ガルシア :飛来する、礫と呼ぶにはあまりにも巨大な質量の塊。
コンクリート、鉄、ガラス――合金や建材の複合したそれらは、飛散しながらも一つ一つが数百キロ、数トンの大質量を持っている。
自動車と衝突事故を起こすようなもの、で済めばまだ運が良いだろう。
当たれば超人であってもただでは済まない。ましてや、今こうして必死の追撃を仕掛けている最中では致命的なロスとなり得る。

故に、ナタリー判断を迫られた。
大回りに迂回して回避か、あるいは――

ナタリー・ガルシア :
「最短経路でいきますわよ――!」

ナタリー・ガルシア :
飛礫のそれらは、巨大である。

――巨大であるが故にそれは、確かな足場として機能する。

ナタリー・ガルシア :ビルの屋上を蹴る軽い足音を置き去りに、飛来する質量の塊へ――正面から衝突からほんの僅かに逸れた軌道、業風を肌で感じながらナタリーは瓦礫へ足をかける。

跳躍。

着地、連なる動作で次の跳躍。

己の風で適宜微調整、時には最小限の振動で窓ガラスを蹴破り、ビル内部の机や椅子を弾いて、前へ。
ピンボールのように瓦礫から瓦礫へ、ほんの一呼吸分のズレが致命的なミスに繋がる判断の連続――数十、数百ものそれを、無意識になるまで染み込ませた鍛錬と、強引な能力に依る軌道修正で成立させる。

ナタリー・ガルシア :あるいは、地上から空を見上げれば、瓦礫の間を雷のように飛び跳ねる紅が見えたかもしれない。

床を、天井を、壁を、斬り裂かれた断面、外壁――あらゆる場所を足場として、距離を詰める。

数十に届く散弾が如き飛礫を抜けて、ナタリーはラクシャーサへと距離を詰める。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「時間稼ぎのつもりか……!」

 殺到する瓦礫の山に対して、勇魚もまたトップスピードで突っ込んだ。
 この場で誰より肉体の性能に長けた自分が退く訳にはいかない。
 白熱の右腕を一掃に白く染め上げて、一切止まることなく瓦礫の隙間を走る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 此処で力で押して瓦礫を弾き飛ばせば、回避に専念する味方の軌道計算を狂わせかねない。何より、ここで自分も回避に回れば、かなり危うい軌道で飛ぶドローンにしがみつくアトラたちが不安だった。

 故に腕に収束した分子震動……輻射波動を断片的に開放する。
 ただ躱すばかりが能ではない。落ちてくる瓦礫の中に熱感知で生体反応がないことを確認した勇魚は、降り注ぐ瓦礫の一部にその右手で触れた。
 ……右手が触れた瓦礫は、膨大な熱量を浴びて瞬く間に融解し消し飛んだ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 落下するビルの残骸の中を走りながら、かき分けるように味方の回避√に塞がる瓦礫を消し飛ばしながら、ラクシャーサへと直進する。

 ……そして

SYSTEM :
 そして……
 殺到する瓦礫の幕を掻い潜って先鋒を征くダン・レイリーは、漸くその射線上に敵の姿を捉えた。
 
 ストームベアラーのレティクルは確かに、飛翔するラクシャーサの姿を捉えていた。
 対オーヴァード戦に改修され、有効打となる特殊弾を扱うために独自のチューンが施された試製品。フルオート射撃にて200mまでの集弾性を確保した魔弾の射手であるが、その性能を活かしきるにはやはり六基のガンビットによる連携と、何よりダン・レイリーの空間認識能力が不可欠だった。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 そして、そうであればこそ、空中での高速軌道上でありながら精密な射撃を行える。
 咄嗟の飛行フォーメーションに慣れ、敵の動きが止まり、その身が近づいたならば、無駄撃ちなくストームベアラーは嵐を鎮める。

「ち、そっちもいちいち猪口才な真似するね!」

 足止めの射撃を前に舌打ち混じりに剣で防御に入る

ダン・レイリー :
 人殺しの銃器は超人を殺すには必殺足り得ず、しかしこの有効射程において、機動中に空へマズルフラッシュと共に撒かれた弾丸は本来の役割を十二分に果たした。
   ・・・
 要は足止めだ。逃げる側の動きが鈍れば、進側が追い付く猶予が生まれる。

 なるほど、悠長で猪口才な真似だろう。

ダン・レイリー :
「───空の散歩も飽きた頃だろう! 喜んで貰いたいな…!」

ダン・レイリー :
 だがその小細工こそヒトのやり方だ。
 一周回って誇らせて貰うとも───。

 前進しつつの制圧射撃、後続の位置把握。並列して処理することなど朝飯前だ。このまま詰める!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「余計なお世話! 浪漫を楽しむ余裕もないのかな、アメリカ人ってのは!」

 絲を遣って軌道をずらせば容易くいなせるものだが、そうせず剣を遣って防いだ。
 それは彼女がリソースの消耗を意識している証であり、同時に双方一つの共通認識があったからだ。

「(このまま引き打ちで安定して終い、とはいかなそうだ。まあ、そうなったら興ざめも良い所!
 そろそろ温存したリソースをつぎ込んで、一気に仕留める!)」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 そもそも彼女が退いて距離を置いたのは、撤退することや一方的な片殺しで仕留めるためのものではない。極力有利な戦場を選択するのは闘争において至極道理。よしんば距離を詰められても、この空中というホームグラウンドに敵を引き入れただけでも十分。
 向こうがどの程度動けるのかを確認したラクシャーサは、頃合いと判断したのだろう。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「──ならお望み通り。その命ごと終わらせたげる!」

 後退と牽制を続けていたラクシャーサ。その動きが一転する。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ビルの壁面に着地したラクシャーサは、脚部を発条のように変形させ、そのまま壁を蹴って踊りかかる。
 鞭のようにしなる曲剣と、結晶の絲を操りながら、追跡に精力を注いだ一同に向けて攻勢へ打って出る。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「地の利を生かして仕掛けてきたか……ですが、望むところ!
 空中で身動きに難があるとて、それは本質的に相手も同じこと……ここで一気に仕留めます!」

ダン・レイリー :「ああ、頃合いと見える…! やるぞ!」

アトラ :
「……来るね。だったら───……うん、行こう!
 命だって終わらせないし、此処で勝って止めるだけ……!」

ナタリー・ガルシア :「――その通りですわ!ここでラクシャーサを止めてみせます!!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ははははっ! いいねえ、その意気だよ!
 ──さあ、こいつでフィナーレだッ!」

SYSTEM :内容:
 空中戦にもつれこんだラクシャーサは、その利を生かして攻勢に転じた。
 追跡で疲弊した相手をこのまま打ち落とす腹積もりだろう。
 だが、攻撃に出る分間違いなく隙が生じるのは確実だ。敵に大技を撃たれ、叩き落とされる前に再生した分を削り切れ!

SYSTEM :
【Action!】

 判定が発生しました。
 
   内容:ラクシャーサを迎撃せよ
 成功条件:「①」「②」のどちらかを満たす
    ①:任意戦闘技能を使用した累計40↑のダメージ
    ②:判定の成功⇒白兵or射撃orRC:35↑
 特殊ルール:飛行状態でない限り、ダイス-3
      NPC『勇魚=アルカンシエル』が参加している場合、1キャラのみ飛行状態として扱い戦闘可能となる。
      ラウンド終了時、ラクシャーサの攻撃判定が発生する。

GM :ということで再度判定です

GM :アンフェアなので先に言っておくと
ラクシャーサの攻撃はシーン選択or対象指定最大5まで拡散する攻撃になります

ダン・レイリー :仕留め切れなければやられるのは此方というわけか…

ナタリー・ガルシア :今の私達では十中八九耐えきれませんわね

アトラ :まあワンパンだよねえ

ダン・レイリー :…そしてラウンド終了時、ということは僕は追撃を掛けられんか? 美味しいところを譲ることになりそうだぞ

GM :次ラウンドまで持ち越すなら攻撃は出来ますぞ

GM :持ち越す前にしばかれるということです

ダン・レイリー :では論外だな。代わりにフィナーレと言い返してやってくれ、三人とも!

GM :ちなみに

GM :この判定は『ラウンド計上されない』ため、邪毒ダメージは発生しません

ナタリー・ガルシア :やりましたわ~!

アトラ :おぉ~!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :かわりに全部のダメージが必殺級ってわけ!!

アトラ :まあ一発受けたらもう、みたいなところあるから誤差か~

ダン・レイリー :死なねば安いとは言うがね 喰らわないのが最上だぞ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :……私の〈氷の回廊〉なら、一人なら飛行状態にしてデバフを消すことが出来ます。
どちらに使うか、判断はお任せします

GM :エー失礼訂正事項があります

GM :この処理は『FS判定を中断して別の判定を行う』という、判定外の処理であるため(前回の戦闘と同じ)

GM :ダン大尉も判定に参加できますね

ダン・レイリー :分かった。手は多い方がいいしな ならば臨機応変にやらせて貰おうか

GM :では誰から挑戦する?

アトラ :ほいじゃワンチャン削れるものもあるウチから!《氷の回廊》も借りて…… ……で良い?みんなも

ダン・レイリー :此方もそれがベストだと思う

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :分かりました。
先鋒はお願いします、アトラ

アトラ :此方こそ!

ナタリー・ガルシア :頼みますわ、アトラさんの力でラクシャーサを止めてくださいませ

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
マイナーアクション:《氷の回廊 LV5》
対象:アトラ

効果:飛行状態とする(ダイスのデバフ効果を打ち消す)

SYSTEM :【行動を宣言してください】

GM :ではではアトラチャンン宣言をどうぞ

アトラ :よ~し まあご期待に添えるかは兎も角……いつもの感じで射撃攻撃!行きます!

  アクシス・アクト
メジャー:A・A
内容:《コンセントレイト:ブラム=ストーカー/Lv.2》《災いの紅/Lv.1》《滅びの一矢/Lv.4》

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :よし、来なよ!

system :[ “T³”アトラ ] HP : 24 → 20

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 58 → 64

アトラ :9dx8+3 行くよ! (9DX8+3) > 10[1,3,3,5,7,8,9,10,10]+10[2,4,8,10]+5[2,5]+3 > 2

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :まだまだ、一発で獲るって意気込みが足りないね!
残念だけど一発クリアならずってとこだ

アトラ :ぐぬぬ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :筋は悪くなかったけどね…さて、もう一度この鉄壁のガードで叩き落としてあげる

アトラ :良いし!ダメージロール時、【対抗種】で+2D!この合計5つのダイスで……

system :[ “T³”アトラ ] HP : 20 → 18

アトラ :5d10+5 ずどん! (5D10+5) > 26[4,4,8,3,7]+5 > 3

system :[ “T³”アトラ ] HP : 18 → 17

SYSTEM :【エネミーのG値6ポイントがダメージから引かれ
25ポイントのダメージを与えました】

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :G値も3削れると……結構きついかも

アトラ :流石に一発は無茶……!あとよろしくね……

ナタリー・ガルシア :任せてください!

SYSTEM :【Action!】

 判定が発生しました。
 
   内容:ラクシャーサを迎撃せよ
 成功条件:「①」「②」のどちらかを満たす
    ①:任意戦闘技能を使用した累計40(残15)↑のダメージ
    ②:判定の成功⇒白兵or射撃orRC:35↑
 特殊ルール:飛行状態でない限り、ダイス-3
      NPC『勇魚=アルカンシエル』が参加している場合、1キャラのみ飛行状態として扱い戦闘可能となる。
      ラウンド終了時、ラクシャーサの攻撃判定が発生する。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :結構削られたけど、まだまだ! 次はキミかなお姫様!

ナタリー・ガルシア :ええ、ここで終わらせますわ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :やれるものなら!

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ナタリー・ガルシア :では私は《サイレンの魔女LV10》でいきますわ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :来るか! でも移動しながらの攻撃は結構きついんじゃない?
ダイスは減らさせてもらおっかなあ

ナタリー・ガルシア :どうぞ?この力の扱い方も分かってきたところですわ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :なら見せてみなよ!もっと激しく踊ってみせな!

ナタリー・ガルシア :貴女の敗北まで、エスコートして差し上げますわ

GM :では判定をどうぞ!

ナタリー・ガルシア :3DX+10 (3DX10+10) > 9[3,5,9]+10 > 1

ナタリー・ガルシア :くっ、1足りませんわ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :ハッ!さっきの威勢の良さはどうしたのかな!
さあ来なよ!

ナタリー・ガルシア :2d10+30
これで決めますわ!! (2D10+30) > 7[3,4]+30 > 3

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :本来なら、これでダウン……ってとこだけど!
ア ラ ク ニ ドキ ュ ー ビッ ク
立方晶粘絃縛絲圏 展開!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
オートアクション:
  ア ラ ク ニ ドキ ュ ー ビッ ク
【 立方晶粘絃縛絲圏 】
《デモンズウェブ LV2》

Option:ダメージ-4d10カット

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :キミの出目と私の出目、勝負ってとこかな!

ナタリー・ガルシア :ここで押し切らせてもらいますわ……!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :4D10 立方晶粘絃縛絲圏 (4D10) > 33[9,6,9,9] > 3

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :ハ・・・!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :完・全・無・効!!

ナタリー・ガルシア :くっ……往生際悪い、と言いたいところですが、ただただ感服いたしますわ

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :あたしの勝ちだ!(あれ よく見たら1点は入るな……まあ今から認めるのアレだし、データ的に処理しとけば問題ないっしょ)

ナタリー・ガルシア : 

ダン・レイリー :………決まっていない勝負で勝ち逃げ宣言とは、良い身分になったものだな“ラクシャーサ”!

SYSTEM :
【エネミーのG値3ポイントがダメージから引かれ
1ポイントのダメージを与えました】

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :まさか!あんたのことも忘れてないよ大尉殿!

ダン・レイリー :光栄だよ、白黒つけさせてもらう!

ナタリー・ガルシア :すみません、後を頼みますわ!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :いいね!いいよ、面白い!
くそったれな人生、このぐらいの愉悦が無いとね!

SYSTEM :【Action!】

 判定が発生しました。
 
   内容:ラクシャーサを迎撃せよ
 成功条件:「①」「②」のどちらかを満たす
    ①:任意戦闘技能を使用した累計40(残14)↑のダメージ
    ②:判定の成功⇒白兵or射撃orRC:35↑
 特殊ルール:飛行状態でない限り、ダイス-3
      NPC『勇魚=アルカンシエル』が参加している場合、1キャラのみ飛行状態として扱い戦闘可能となる。
      ラウンド終了時、ラクシャーサの攻撃判定が発生する。

system :[ ナタリー・ガルシア ] 侵蝕率 : 65 → 77

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :さあ、残りはあんた一人……

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :来なよ。これまでの奴等と同じように叩き斬ってあげる

ダン・レイリー :
. It ain’t over ‘til it’s over
“やってみなければわからない”というのさ、戦場なんてのはな…!

SYSTEM :【行動を宣言してください】

ダン・レイリー :
[Main]
◇ストーム・ベアラー
Major:《CR:エンジェルハイロゥLv2》《天からの目Lv3》
Minor:Empty

HIT:(8-3)dx8+5
ATK:xd10+10
COST:4

ダン・レイリー :
 ………付け焼刃の空中管制、この状況で惜しめるものはないな。
 先の頼みには結果で応えてみせる!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

ダン・レイリー :5dx8+5  (5DX8+5) > 10[2,4,5,8,9]+10[5,9]+10[10]+10[8]+4[4]+5 > 4

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :コイツ!

ダン・レイリー :先の攻防で風向きが変わったようだな!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :は、は、は! やるじゃない!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :上等、叩き込んでみせなよ!

ダン・レイリー :お膳立てされたんだ…やってみせるさ!

ダン・レイリー :5d10+10  (5D10+10) > 38[7,10,10,2,9]+10 > 4

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :……!!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :受けきれない…!

ダン・レイリー :その矛を抱えたまま、沈んでもらう!

SYSTEM :【イベント発生条件を満たしました
 判定内容を変更し、FS判定を再開します】

system :[ “ホワイト・スカイ” ] 侵蝕率 : 71 → 75

SYSTEM :
内容:
 猛攻を前にラクシャーサがたたらを踏み、大きく怯んだ。
 隙を晒したラクシャーサだが、もたもたしていると即座に快復して立ち上がるだろう。その隙を与えず、すかさず追撃を放ち止めをさせ!

SYSTEM :
判定を〈白兵〉〈射撃〉〈RC〉に変更
目標値を10に変更します

SYSTEM :-INITIATIVE PROCESS-
NEXT PLAYER=ATRA

SYSTEM :-MAIN PROCESS-
PLAYER=ATRA

SYSTEM :【行動を宣言してください】

アトラ :うす。使用する判定は当然〈射撃〉……!

SYSTEM :【宣言を確認しました。判定を行ってください】

アトラ :射撃……なので《滅びの一矢》を乗せて~……

system :[ “T³”アトラ ] HP : 17 → 15

system :[ “T³”アトラ ] 侵蝕率 : 64 → 66

アトラ :9dx+3 その隙……いただき! (9DX10+3) > 9[1,1,5,8,8,8,9,9,9]+3 > 1

SYSTEM :【判定成功!
 進行度を+2進めます】判定値:9⇒11

SYSTEM :【イベント発生進行値:10に到達しました
 FS判定を終了します】

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 空中という不利な舞台を用意し、リスク承知の切り込みに入ったラクシャーサ。彼女は鞭のようにしなるシミターで球状に斬撃を振り乱しながら予備動作に入った。
 これまで距離を置きながら、一気に攻めに転じた以上、あちらも大技に任せて蹴散らしてくるに違いない。既に移動してリソースの回収を終えたラクシャーサの猛攻となると、既に結晶の侵蝕を受けている一同にとっては致命的だ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 結晶の毒が宿った刃は容易く構造物を真っ二つに引き裂く質量と鋭利さを併せ持ち、それに切り裂かれたものは例外なく結晶化して果てていく。
 ……より縦横無尽な足場を得たラクシャーサは、この機動力と射程と破壊力すべてを自由に扱える。そして広い戦闘範囲を扱えることは、即ちそれだけ膨大なリソースが使用できることを意味する。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 此処から放たれる剣戟は先ほどまでの非ではない。遠心力が乗り、物理的な打撃力が増したラクシャーサの舞い踊る千刃は、致命に至る斬刃を絶え間なく浴びせかけることだろう。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 であれば……出鼻をくじいて推し通るほかはない!

「アトラ!」

 ・・・・・・
 そこから跳べ、と。勇魚は叫んだ。
 ドローンに捕まって、片手で体を支えた状態でまともな射撃など望むべくもない。少なくとも、勇魚には立ち振る舞いからエアボーンの訓練を行っているようには見えなかった。
 だが、最低限の土台を用意することはできる。

アトラ :
「……っ、うす!」

アトラ :
 相手は年下。実戦という意味では明らかに彼方の方が上。
 その辺りを加味して、思わず目上や年上にするような言動を繰り出してしまった、が。
 そこは、それ。意図していることが何となくわかったような気がするので、返事をし。

アトラ :
「ゴメンなさい!」

アトラ :
 先ずドローン───……ひいてはミナセに一言告げる。
 そのまま、勢いをつけるように身体を回転させ、地面を蹴るみたいに、ドローンを踏み台にして飛び出した。
 ……まあ、大丈夫だろう。精密そうな機械とはいえ自律飛行に耐え得るのだ。少しくらい乙女の負荷、もとい衝撃が加わっても墜落することはあるまい。

水無瀬 進 :
『了解だ! どうせこいつも使い捨て……使い捨てる気……だったからね!
 くそうやっぱり勿体ないな! どうあれ此処でジャンクにされるよりはマシさ!頑張って!』

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
 跳ぶアトラの先に、すかさず炎のレールが敷かれる。空中戦を可能とするための、天の道。
 それは散弾の射程迄アトラを導くようにラクシャーサの元へ延びていた。
 ……あとは、いつも通りやるだけだ。

アトラ :
「ありがとね!」

 視線と足が向かう先は、あてがわれた回廊。
 炎で編まれた道に足を踏み入れ、態勢を整える。……もう、彼方の姿勢も変わるまい。流石に無防備とまでは行くまいが、決定的なチャンスではある。
 だから、此処で崩す。用意してもらった道を滑るように駆け、自分の距離へと全てを持っていき。

アトラ :
 再び自身の腕を噛み出血。弾を装填すると同時に血を吹き込み、その弾丸に力を持たせる。
 事此処に至って、何度もあのような情けない面を晒すわけにもいかない。
 それをしたところであの人が止まらなかったのだし。此処で繰り返しても、きっと纏めて叩き落とされるだけ。だから───……。

アトラ :
「避けられないなら、ちょっとは痛いよ!」

アトラ :
 屋上での戦いでは、己が弾丸は装甲と守りを崩す一滴となった。
 それはこの状況でも変わることはない。血によって鋭さと蝕む毒を得た一撃が。彼女がするのと同じく、レネゲイドを殺す力を重ねられ。
 血結晶の流星となり、再度その身を貫かんと迫る……!

ナタリー・ガルシア :
最後の飛礫を蹴り飛ばし、三角跳びの要領で夜空を背に高く飛び上がる。
眼前、ラクシャーサが作り上げた殺戮の舞台で舞を踊るように刃を振るう姿がそこにある。
此方が追いついたのか、あるいはラクシャーサが迎え撃つことを決めたのか――最後の衝突は、その刹那の思考の直後だった。

炎の回廊を滑べるように翔けるアトラの姿を見て、ナタリーは即断した。
己のやるべきこと、この場で求められている役割を――そして為さなければならないことを、理解した。

ナタリー・ガルシア :
「的が大きくて狙いやすいですわね――止めなければ、少し痛いですわよ?」

ラクシャーサとナタリーの距離は、数十メートルを超える。
故に、ナタリーの目には映るラクシャーサとその殺戮領域は、己の視界になんとか収まり切るサイズだった。

それは論理的な思考ではなく、本能的な反射に近い行動――理屈の上で成り立つ結果ではない。

ナタリー・ガルシア :
まず最初にあったのはイメージ。

次いで、思い描いたものを現実に歪めて結実させる力。

最後に、それを少女の望んだスケールで叶えるだけの圧倒的な出力。

全てがナタリーの掌の中にあり、決断は瞬時だった。

ナタリー・ガルシア :
「――――ッ!!!」

振り上げた右手は、指揮を執るように、指差すように。
  
まるで、とてつもなく重いものを支えているかのように、腕全体が震える。
食いしばった歯が、ミシミシと音を立てているような錯覚――全身が軋み、思考が赤熱する中で、ナタリーは全力で掲げた右腕を振り下ろす。

ナタリー・ガルシア :
それは、この夜、気象観測所がエラーを吐き出したのとまったく同じタイミング。
観測員は、計器の故障だと判断したそれは――歴史上類を見ないほどの低気圧が瞬間的に観測されたからだ。

ナタリー・ガルシア :
都市部で突然超大型のハリケーンが生まれるような不自然。

ただのエラーだと、極々一部の人間だけを少し驚かせたに過ぎないそれが、現実だと知る者はこの場に居合わせた数人だけだった。

ナタリー・ガルシア :降り落ちる大気圧。
それはもはや空気という枠を外れ、数百トンをゆうに超える鉄槌に他ならない。
ラクシャーサが防がなければ、アトラどころか周囲の都市まで巻き沿いにするほどの超々高密度かつ大質量の一撃。

ギリシャ神話に於いては、一人の巨人が空を支えているという。

ならばこれは、その再現。

ナタリー・ガルシア :
「――止めてくれると、信じていますわ!!」

ナタリー・ガルシア :ラクシャーサ目掛けて、空が落ちる。

そして、己のすべての力を注ぎ込んだとしてもラクシャーサには届かないということもまた、ナタリーは理解していた。

だが――

「後は、任せましたわ……!」

ナタリー・ガルシア :
振り下ろした右腕が、その負荷に耐えきれずに内側から断裂する。
だらり、と力を失ってぶら下がるだけになった右腕は、結晶化する白に赤い色がよく映えている。

この声は届かずとも、意思は伝わると信じて――己の役割をまっとうした少女は振るえる声を仲間に投げかけた。

ダン・レイリー :「ならば───!」

ダン・レイリー :
 チャンスは一瞬である。
 ラクシャーサが本領を発揮するまでの僅かな間に、
 その再生した生命力を打ち砕けるだけの攻撃をしなければならない。

 その一瞬の中から、更に切り取られた刹那。
 そこ以外では、ラクシャーサは愛刀を振るい、張り巡らされた絲を以て死線を凌ぐだろう。

ダン・レイリー :
 チャンスは一度である。
 ラクシャーサが決定的な機を見せるだろう瞬間に、
 先程以上の会心の手ごたえを以て、一撃を叩き込まねばならない。
 
 択び取った好機から、更に一度だけ。
 そこ以外では、あの《立方晶粘絃縛絲圏》を上回ることは難しいだろう。

ダン・レイリー :
 学ぶべきは二つ。
 ・
 敵である“ラクシャーサ”の………その能力。
 詰め切るために必要なものを理解し、計算する。

ダン・レイリー :

 ───已むを得まい。
 内心で結論を下し、修正を終える。

 最も自信のある攻撃パターンは、今の侵蝕率では不十分かつ、意味がない。
 しかも正直に言えば、対“天刑府君”のためにとっておきたいジョーカーだ。
 ヤツ向けのとっておきを、そのまま“ラクシャーサ”にぶつけたとてミスマッチでしかない。

ダン・レイリー :
 ………つまりダン・レイリーの手札にあるものは、平時のコストパフォーマンスで行えるものでしかない。

 言うなれば“小細工”。“猪口才な真似”がどれほど通用するかに掛かっていた。

ダン・レイリー :
.    コマッタ
 しかし幸いなことに、だ。

ダン・レイリー :
「(カードが揃った───)」

 流れ星のように堕ちる紅。
 振り向かずとも分かる無謀を示す、極大規模の低気圧。

 前者はともかく、後者はこれきりにして貰いたいものだが、今はとやかく言うまい。

ダン・レイリー :
 ..   Checkmate
「───こいつで決まりだ…!」

 そしてその好機が訪れた。
 一呼吸のち、奮起する己を律して、銃口が火を噴いた。

“ストーム・ベアラー”が鎮めるべき嵐の根幹を見出し猛る、その咆哮だ。

ダン・レイリー :
 文字通り、ナタリー・ガルシアの起こした、数百トンをゆうに超える鉄槌。
 そこを縫うようにして放たれた弾丸は、現時点でダン・レイリーが放てる最大質量および最大速度を伴う、重力弾。

 また、同時にガンビット五基による攻撃軌道を取りつつの集中砲火。
 それも自動小銃と簡易銃座程度の火力ではない。放たれたのは、自動小銃からの魔弾と───。
 ・・
 閃光、であった。

ダン・レイリー :
 エンジェルハイロゥ・シンドロームが持つ光熱エネルギーの操作能力。
 さほど強力とは言えない自身のエフェクト能力を後天的な道具でバックアップし、次々と投射する。
 射線を調節し、出力を絞り、街に被害がないように計らいはしたものの、これ自体はヤツとて腐るほど見たことのあるものでしかないだろう。何処までも“ありきたり”だ。

 それ自体は牽制として映る。

 “ラクシャーサ”にとって、威力と手数はあっても無視出来、それゆえに足を止めるが最善でしかないものとして。

 要は、煩わしく視界を埋めるものだ。
 魔弾共々、合わせて防げるものでしかないだろう。

ダン・レイリー :
 しかし此度、揃ったカードは三つ。
 全てに同時対応することが出来ない/または強引に同時対応するしかないからこそ、これが成立する。

ダン・レイリー :
 結論から言うと………。
 本命と呼ぶべき魔弾は、間違いなくラクシャーサを急襲する。

 ただし、正面にその魔弾があるにも関わらず、背後の死角から展開された“ゲート”を介して、だ。

ダン・レイリー :
 何故なら彼女の死角、嵐のぶつかり合うが故に見えなくなる正面広範囲。

 丁寧にそこに潜り込ませ、自身の偽装テクスチャを被せて徹底してカモフラージュした、攻撃に使っていないガンビットの“ゲート”。

 此処に自身の魔弾を叩き込んだと同時、その魔弾を再現するための偽装テクスチャを同時に被せる。
 エンジェルハイロゥが持つ光の操作能力による、所謂“蜃気楼”だ。

ダン・レイリー :
 よって魔弾は正面から向かったまま、
 最後に撃ったにもかかわらず、
 
 誰よりも素早く、防御行動の展開を行うその直前を狙ってラクシャーサに突き刺さる。

ダン・レイリー :
 貫通力とスピードを徹底して特化。
 ガンビットによる調律機能によって重力エネルギーを纏い加速したという意味では、根本において先程凌いだ攻撃と代わりはない。

 歴戦のオーヴァードであれば、単品であれば先のようにわけなく撃ち落とす弾丸でしかない。ここは悲しいかな地力の違いだ。

 しかし。

ダン・レイリー :
「───崩させて貰う。貴様たちから学んだからこその“テンペスト”だ………!」

 均衡を崩せばいい“だけ”ならば、これこの通り。
 どんな力も使いようだというのは、皮肉にも、自らの敵となったテロ屋連中たちこそが教えてくれたことだ。

ダン・レイリー :
 以て結論。

 ヤツの防御を単独で越えられないならば………越えられる打撃力を持つ相手に、その防御を崩させるお膳立てを行えばいい。
             ミスディレクション
 そのための手段などは、手品師の小細工一つで十分だ───。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(来た! アトラのA・A! けどこっちのネタは上がってる……!)」

 ぺろりと舌なめずりをして、迎撃態勢に入る。
 討ち放たれる血結晶の弾丸は、同じ起源を共有するが故の業のカタチ。
 戦いの臨界を通して、アトラの能力も研ぎ澄まされているのだろう。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 己と同質の能力である。その殺傷力は推して図るべし。だが……アトラはまだ、彼女の域に至るまで能力を研ぎ澄ませてはいない。
 ……レイラにとっては幸いなことに。
 
「痛ッ……!」

 血結晶の散弾をしなる曲剣では時期、威力の減衰を試みる。撃ち返しただけこちらの絲の精度が落ちるが……アトラがそうであったように、ラクシャーサにもこの能力に関する耐性がある程度できているのだ。

 確かに殺傷力では随一だが、戦闘とは単純なスペックによって決まる者ではない。性能を知り尽くしているなら、そうと判った上でリソースを配分できる。それがラクシャーサにとっては一番重要なポイントだった。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 撃ち込まれて結晶化の毒を受け入れ、大きく体幹を削られるが……まだ、倒れることはない。
 
「(まだまだ! アトラなんかに獲られてやるほどあたしは落ちぶれちゃいないっての!)」

 問題なのはこの次だ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 都市全域に自らを拡散しているラクシャーサは、その変化をいち早く察知していた。早い段階で攻撃準備に移っていただけに、それによって起こされる災厄の程はすさまじい。
 伸し掛かる超過負荷は流石の大砲。
 この場ですら力を温存している勇魚を除けば、出力で右に出るものはいない。
 が……
 
「はん! 相変わらずの莫迦力!
 気象学は御利巧なようだけど、オーヴァードの闘いの基本がなっちゃいないね!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「規模がデカかろうが面積が広がる分、広げた対抗種は働く!
 次やるんならちったー的絞りな!」
 
 此処に都市規模に及ぶ立方晶粘絃縛絲圏が展開される。絲に対する命令は、自らの体を編む対抗種の力を発現させることのみ。

 攻撃が広範囲に及ぶということは、本来ラクシャーサが防御に当てられる絲が増えるということだ。
 そして最初の弾丸を止めたように、必ずしも物理的なものしか止められないという訳では決してない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 レネゲイドによって起こされる事象は、何処まで行こうとレネゲイドによるもの。重要なのはその密度。
 ナタリーの風量操作は既にラクシャーサの対抗種による封じ手が通じると割れている。それを都市にまで広げようと起きるコトは変わらない。

 一瞬掛かった負荷を、霧散させるように水晶の糸を伝い、死の気迫が解き放たれる

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(後は大尉殿だけど……ここで一番厄介なのはやっぱりアイツか!)」

 皮肉にも嵐を御しながら、嵐を制しに打ち放たれる魔弾の射手を捜す。
 純粋な出力で言えば大きく差があるが、戦い方の巧さで言うなら断然あちらが上だ。そして軍人の闘い方という奴は、別段単騎で圧倒する必要もなく在るものを巧く遣うことに徹底している。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 殺人技巧を凝らした魔弾は過度な破壊を齎さず。防御を削る血晶とリソースを削る暴風によって生じた隙を、確実に刈り取る。

「ッ!?」

 身構えたラクシャーサの、しかし意識の外からそれは訪れた。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 射撃が体に突き刺さる瞬間、状況理解のために周囲に巡らせた絲を伝って瞬時に情報を整理する。
 何処からか撃ち放たれた弾丸の正体は……いつの間にか自らの背面に展開されたガンビットが伝えていた。

「(今のは、何処から跳んできた……いや!
  そう来たか! 最初の弾幕がリソース削りの攻撃と思ったけど、狙いはこっちの背後にリフレクターを形成するため!)」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「(戦いは騙し合い化かし合いしてナンボってコトか……!)けど……!」

 確かに絲の防御は一方向にしか当てられない弱点はあり、その隙を突かれればどうあっても傷を負う。だが、その為の再縫合だ。
 喀血しつつも落ち着いて再縫合を並列で行い、立ち続ける。
 
 迫る血晶の弾丸を、最低限の動きで衝撃を逃がし。

 大気圧の圧は、その威力を対抗種で拡散させた。
 
 後詰めで迫るライフル弾の直撃を受けるも、治癒を始めた体が辛うじて致命を避ける。
 
 いずれも、決して加減した訳ではないのだろう、この一瞬で終わらせる
 その結果としてラクシャーサとて無傷ではなかった。

     ラクシャーサ
 まさしく 鬼 神 の如き立ち回り。これまでがそうであったように。悉くを蹴散らして、彼女は嗤っていた。
 
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 しかし、完全に受けに回った今。
 確実にラクシャーサは隙を露呈していた。
 
 既に消耗しているラクシャーサだ。回復に専念している今なら、回復しきる前に止めを刺すことが出来る。そして……
 

SYSTEM :
 最も警戒視されているダン・レイリーと、先の削りの為の全力行使で体がもたないナタリー。
 これらを除いて効果的な打撃を出せるのは、この場においてアトラを置いて他にない──!

アトラ :
(崩れた!)

 それが隙なのは火を見るよりも明らかで、此処を逃せば彼女が超の付くほどの再生力を用いて向かってくるのは明白で。
 だから、突くべきなのは分かる。少しの逡巡と同時に、手慣れた動作で銃身を折り排莢を行う。

アトラ :
 布石は、全て打たれた。
 ……改めて、とんでもない人たちの場所に身を置いたものだとも思ったが。
 それを活かさないのは、結果的に都合に付き合わせている“テンペスト”にも、UGNにも、檄を寄越してくれたお嬢様にも失礼だ。
 此処を越したら、少しは誠実に立ち回ろう。などと、ちょっとだけ考えて。

アトラ :
 三度、己の腕に歯を立てる必要はない。既に血を垂れ流している傷がある。そこから血を吸い出し、立ち止まること無く弾と共に再装填。
 込めるべき毒はない。ただ、一時でも再生に回る前に一撃を通し───……勝ち切る。

アトラ :
「凌ぎ切ったと思うのは、まだ早いんじゃない?」

 攻めに転じることの出来ない二人……もとい、一人と一機を除き。
 大規模な攻撃を吐き切ったことで、恐らく簡単に次の手に移れない少女を除き。
 既に有効打を与えたことで、最も意識を割かれているであろう強き兵をも除いて。

 今、前に出れるのは業腹ながら力量まで『理解』されている自分のみ。

アトラ :
「どんだけ強くても限界はあるんだって。独りで何でも出来たって、そこはヒトだったら変わんないみたい。
 独りで戦うってそういうことなんだって、ウチも分かったからさぁ…… ……」

 炎の道を駆けて、飛び出す。今は後先より“勝つ”ことを優先だ。そも、これもある意味虚を突く行動たり得るだろう。
 そう信じて、真っ直ぐとレイラの元へ跳び込みながら照準を合わせる。

アトラ :
(血で、弾丸収束させて……集中して、貫くように……)

「此処は……ウチらが、獲ったっ!!!」

 突き立てるように銃口を向け、その胴を撃ち貫くべくトリガーを引く。
 躍り出た空から戻る手段は……まあ、自分では全く考えていないが。勝ちさえもぎ取れば、後はどうにでもなろう。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「!」

 敷かれた炎の道が一層に進んで、アトラの歩みがさらに進む。
 既に周囲を切り飛ばす、鞭の刃もなく、それはあっさりと叶うこととなる。

 他者がかい挟む余地のない距離で、言葉は交わされる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「はン……アトラに出し抜かれる日が来るとはね。
 それに愚問。んなことわかってたから、こっちはこうしたんだっつの」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 激発の瞬間、しかし欠片も気負う様子もなく、童のように笑って。
 ・・・・・・
「あたしの負け! あー楽しかった!」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 直後、銃声が響き、ラクシャーサの身体が宙を憂く。
 その身は近隣のビルに力なく投げ出され、もんどりうって倒れ伏した。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……痛った……! くそ、やられたな今のは……惜しかったんだけどなあ」

 億劫気に置き上がったラクシャーサは、しかし立ち上がる程の余力は残していないように見えた。ワーディングによる効果も今はかき消えている。
 最低でも死んではいないが… 戦闘続行が難しい状態であるのは確実だ。

ダン・レイリー :

ダン・レイリー :
 どうやら。
 これで本当に、彼方も余力ナシのようだ。
 実際、心底手間取らされた。死線であったことを誰が疑おうか。

 ………息を吐くことはない。
 本当に厄介なのはこれからだ。

ダン・レイリー : 
 ………ああ、そうそう。念のために偏差把握をオンにし直す。
...     バルチャー       
 この状況で禿鷹めいた連中に襲われては堪らない。鴉の方なら尚の事ね。

アトラ :
「……」

 ……勝った。勝った、やり切った。
 戦うべき相手は墜ち、満身創痍で倒れている。
 痛そうだ。……いや、感想としては不適だと思う。同じように突き刺されたわけだし。

アトラ :
「認めたね。……いや流石に此処から次ラウンド!って言われたらしんどいよ」

 お互いに。
 例のナントカ言う機械とか、張っている絲とか諸々、穏便に解除してもらわなきゃいけないし。

SYSTEM :
 油断なく偏差把握を行ったところ、ビルの屋上に他の敵影らしき飛行物体は見られない
 幸いにもナタリーの超大気圧によって、斥候の為に飛んでいたであろう赤い烏は悉くが潰れ消えていたのだろう。

SYSTEM :
 ……ところでこれは余談だが。
 その大気圧に巻き込まれたのは黒い烏のみならず……水無瀬のドローンも巻き添えを食い墜落している。彼がこの場に顔を見せないのはそのせいでもあった。

ダン・レイリー :…あのドローン、本当に使い捨てになってしまったか…後でルイジアナを任せたディアス共々労いの一つでもくれてやらんとな

ナタリー・ガルシア :「……っと、とと」

どこか晴れやかな表情さえ見せたラクシャーサ。それを見て緊張の糸を緩めたのがいけなかったのか……あるいは、単に限界だったのか。
一歩遅れてビルの屋上へと到達したナタリーは、着地の体制を崩してよろめいた。

「……さあ、私達の勝ちですわ!ぎゃふんと言った後、ごめんなさいの時間ですわよ!!」

ナタリー・ガルシア :特にアトラさんに!と付け足しながら、キョロキョロと辺りを見回す。

最後の交錯、その寸前までいたはずのミナセの姿を探して視線が彷徨うが……どこまでいっても広がるのは夜空と夜景のみだった

アトラ :(ぎゃふんて)

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 億劫気に息をついて、降りてきたアトラを見上げる。お互いやれることはやり尽くしての死闘だった。
 ラクシャーサの様子は特に変わる様子がない。戦いの中も、平時も、変わることがないように、どこかあどけなさすら残した笑みを浮かべている。
 
「うん、参った!
 そういう訳で白旗をこの辺りで挙げさせてもらおう」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「まあ、ゴメンナサイは言う気はないけど。この国だと公の場でのゴメンナサイは10割敗訴を認める行為なんでしょ」

ナタリー・ガルシア :「ここは私的な場ですわ〜!!」

アトラ :「まあ私的というにはちょっと公な人も居るんだけど……」 一基は行方不明になったが。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……私がいる事もお忘れなく。
 少なくとも私はUGNの一員としてこの場を判断します」

 遅ればせながら、戦闘が終了したことを確認してビルの屋上へと降り立つ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……私的な場が必要か否かはこれから判断するところ。
 それに……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ただ純粋に敗北を認めたという訳ではないな、"ラクシャーサ"」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「そりゃあまあ」

 悪びれる様子もなくけろっと笑って

アトラ :
「……」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :一度“T³”を見る。それは様子を見るのではなく『他に何か言っておくことはないか』だ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「まあ、そういう打算的なコトは置いとくにしても」

アトラ :
「まあまあ。落ち着いてください まだ何も言ってないっすから」

 ……ほら、怖い顔されちゃってるから。
 一応、想定のなかの最悪が訪れないようにレイラの方に寄っておく。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「アトラに初めて一杯食わされたってのはマジの話だよ。
 こういうのは、してやられたと思った方が負けなのよ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「見ないうちに、随分やるようになったじゃん!
 それなりにマシになったんじゃない?」

アトラ :
「伊達にほっとかれてないからね~」

 少し良い気になった。……いや、そういう話をしている場合でもない気もするが。
 視線が痛い……気がする。彼女の今後が決まりかねない場だというのに。

ナタリー・ガルシア :「…………」

視線が行ったり来たり、どうしようか迷っている様子を隠そうともしない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「うん。まあ……それについては色々とあってね。
 取り合えず、謝っとく。ここは私的な場みたいだしね」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ごめんね。……どうしても此処じゃないと見つからなかったんだ。
 それに莫迦みたいに人が良いあんたを一々連れて回るのもキツかったし」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「追って来られても迷惑だし、独り立ちできるの見計らって出た訳だからさ。大丈夫思ったんだよ。
 まあここまで追ってくるぐらいおバカだとは思わなかったけどね! なんでじっとしていないかなあ」

アトラ :
「……お、おう」

 謝罪の言葉には、一先ず驚きを以て応え。
 次いで出た言葉には、何とも言い難い表情でもごもごとした後に。

アトラ :
「…… ……そりゃ、もしかしたらウチもちょっとは?悪いの?その言い草だと」

 でも、放っておいた場合に待っているのは“預言者”絡みの……何某か、だろうし。

「だけど……ほら、前あったときにも言ったけどさ。時間、無くなってきたから来ちゃったわけで。
 だから……こう、あんまりなりふり構ってられなかったわけなんだけど……」

アトラ :
 ……他に手が無かったから、というのはどうも一緒のようなので、強く突っ込めはしないのだが。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……………………んー。まあそうなるか。
 実際こっちも後がないし、そろそろとは思った」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「まだ持つとは思ったんだけど、その辺りは少し話しとくべきだったわ。

 ……それに」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ここで負けてやるのも、その後の話絡みでね。
 うん。確かに戦いでは負けたけど……

 戦争ってのは、寧ろここからが本番でしょ?」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 即ち敗戦処理。
 敵を皆殺しにし、国土に塩を撒いて、村を焼き家を焼き一木一草滅ぼし尽くす……そんな戦争はあり得ない。
 そう語られるのは常に、戦士を鼓舞するための口上であり、概して戦争は政治手段である。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ここらで交渉させてもらおうと思うんだよね。
 私は闘争大好きだけど、死にに行くのが好きって訳じゃない。いつも、いつでも、生きる事だけを考えてきた」

 ね、とアトラに目配せして

アトラ :
「…… ……」

 ……それは、そうだ。一つ頷いて、ややあって全員を見回してみる。
 まずは、そのテーブルに着いてくれるのかの確認。に、なるわけだが……。

ダン・レイリー :
「………………」

ダン・レイリー :
「だろうな。
 でなければ、貴様のレネゲイドはもう少し違う形で能力を作ったろう」

ダン・レイリー :
 ただ敗北を認めて潔くギロチンを待つ性根なら、レネゲイドはああいう能力を作らない。
 逆に、認めないならもっと前のめりな形を磨くはずだ。
 
 その態度に裏があるかとも最初は思ったが、それもない。
 少なくとも“シャンバラ”の手が入り込む余地はない。

ダン・レイリー :
「推定、貴様たちの中でも特にどうしようもない男の台詞だ。
 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
 俺達は国ではない。だから国際法に則ったことはしない」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「鴉頭らしい台詞だね」

ダン・レイリー :
「全くだ」

ダン・レイリー :
「テロリストに譲歩はしない。
 テンペストの“ホワイト・スカイ”に聞ける交渉はない」

アトラ :「…… ……」

ダン・レイリー :………そうだな。ナタリーを一度見る。

ナタリー・ガルシア :「……で、ですが、大尉」

口を挟もうと開きかけた口を、しかし向けられた視線に閉じる。
その言葉の正しさを理解するが故に、その言葉を否定する理由が見つからない。

ナタリー・ガルシア :「……人道と倫理には、則るべきではありませんか?私は、まだ、綺麗事で唇を火傷するようにはなりたくありませんわ」

ダン・レイリー :
「正論だ。
 向こうが守らないのだから、此方が何をしてもいいというのは餓鬼の時分で卒業する話だな」

ダン・レイリー :
 ………僕としては本当にソレでもいい。
 実際のところ、テンペストとして行動する場合、これを聞いて見逃すようなことは、基本的に考慮すべきではない。
          ・・
 が、してはならない理由がある。

 何よりこれはUGNとの共同作戦。其方の流儀を汲み取る必要があるのは言うまでもない。

ダン・レイリー :
 長々と話がしたいわけじゃない。
 待ちくたびれさせて、本当に逃げの一手を打たれても困るしな。

 ………手短に行こう。

ダン・レイリー :
「ではナタリー。
 ・・
 それを赦すか?」

ダン・レイリー :
 見たところ、あの破壊したビル群にも………。
 ・・
 推察だがワーディング・エフェクトの際にも、無用な人死を出した気配はなかった。

 ………捨て置けば本当に一人か二人は出しただろう。そもそもなりふり構わずやれば、四桁は軽く出しただろう。
 端的に酌量の余地はないでもないが、この辺りを“なあなあ”で処すわけにはいかない。それがテンペストの話になる。

ダン・レイリー :
「きみ達の言葉で答えてくれ。
                   ・
 UGNの流儀に照らし合わせて、彼女は何になる?」

アトラ :
 固唾を飲む。喧嘩の部分が勝ちで終わったのだから、今自分の立場は大概蝙蝠じみたものだ。
 ……だから気を揉むしかない。気を揉み、彼女らの出す言葉を待つ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「向こうが守らないのだから、此方が何をしてもいいというのは餓鬼の時分で卒業する、ねえ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 オーバーキル
「 報 復 大好きな米帝様とは思えないしおらしい言葉じゃない。

 キミらに考慮したつもりはないけど、割かしこっちは汲んできたってのに」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
          ルール
「手前が作った手前の都合で手前の承諾なく勝手に裁く。
 そういうお国柄の割には、未だ話をするかもしれない、と……その辺りを汲んでくれるわけだ。少なくともあんたは」

ナタリー・ガルシア :……なぜ素直に、ありがとう、と、言えないのでしょうか?

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :それはねえ
恩着せがましい態度が鼻につくからだよ

ダン・レイリー :
「癪に障るか。イヤ、当然だ。構わん。
 此方は此方の任務を遂行するだけだが、その過程で生じた問題に時間を割く必要性を感じているだけだよ」

アトラ :いやー、まあ、それは……

ダン・レイリー :
 概ね事実だろう。
 言い訳はしていいならいくらだってしてやるが。此方とてこの国が嫌いなつもりは全くない。

ナタリー・ガルシア :「……とりあえず、私個人としては許したいですし、『私達』としては拘束が妥当でしょう」

なにより、個人には収まりきらぬほどの『破滅』をまがりなりにもコントロールし、抑えられている。

「不発弾は慎重に処理しなければなりません……当然、この場で乱暴に信管を抜くというのは止めたいところですわね」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
           ジャーム
「……我々はUGNです。末期症状が確認できない以上、保護の必要がある。加えて飽く迄目的のために動くとは言え……彼女の戦闘行動には自ら枷を掛けていた」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「元より此度の任務は『殺傷』を前提に置いている訳ではありません。その必要があれば保護、拘束するという手法もある。
 あちらが正常な意思決定能力を持ち、その上で自ら縄に掛かると主張するならば、これを我々が害する理由はありません」
 

ダン・レイリー :
 ………此方の言葉に理性で返そうとしたか。
 どちらもそうだが、ナタリーの方はそれが顕著だ。此方の語調に合わせたモノを感じないわけではない。

ダン・レイリー :「そうだな。其方はそうだった」 

ダン・レイリー :「ナタリー」

ダン・レイリー :「………何の為に、何の理由で許す?」

ナタリー・ガルシア :「私個人の理由としては――許すことに、理由は必要ありませんわ」

汝、隣人を愛せよ。
そう嘯くことは簡単だが、誠意を以て応える。

「私達の理由としては世界を護ることが私達であって、敵を討ち滅ぼすことは私達の理念ではありませんわ」

ナタリー・ガルシア :「ですから、私は『許したい』ですし、私達は『許すべき』だと思います――リスクについては、先程も言った通り、ですわね」

だから、この辺りを落とし所にしてくれないだろうか、と。困ったようにナタリーは微笑んだ。

子供のおままごとに付き合ってもらうようで申し訳ないという気持ちがないわけではないが――及第点としてくれることを祈る。

ダン・レイリー :「………………」

ダン・レイリー :
「だから、取り返しがつく限りは許せるように在りたいか」

ダン・レイリー :
 もしもリリア・カーティスならばそうするからそうした、だの宣うならば。
 たとえ話を一度拗らせてでも釘を刺すつもりだった。だから、これはそのまま通したっていい。

 ………。

ダン・レイリー :
 しかし、理由に“自分”とは決して入れなかった。

 困った利巧さだ。
 何の為にそうしたい、ではない。

ダン・レイリー :
 遅まきながら理解してきた。
.    ・・・・・・
 これは“そうするべき”だ。

ダン・レイリー :
「ならば今はいい。その意味は理解しているだろう。
 ………“炎神の士師”の言葉がUGNの流儀であるなら、尚のことな」

ダン・レイリー :
「………“T³”。
 敢えて聞くまいと思っていたが」

アトラ :「う」

ダン・レイリー :
「“ラクシャーサ”が目的なのだろう。そこに縁があることすら分からんほど鈍くはない。
 着地点が見えた以上、その交渉を聞くテーブルは出来たが。立場はそこのままでいいんだな?」

 交渉が決裂すれば………。
 それ以前として拘束する形となったならば、待っているルートが明るくない可能性も低くはない。

アトラ :
「…… ……ウチだってそもそも、この人を殺しに来たわけじゃありませんし。
 この人が何言うつもりかはともかく……狙ってたことの一つくらいは分かるつもりなんで。
 色々、担保が取れるまではこのままで」

 拘束であれば、まだ良い。本人の意向はさておき。なので、多少危うくなろうが今はこれで良い。
 ……交渉結果がダメなら、そもそも自分の立場も無いようなものになるだろうし。

ダン・レイリー :
「分かった。事の事情は………」

ダン・レイリー :
「言える時に、言える相手に口にしろ」

 命令的な言葉と、遠回しの“自分でなくとも構わない”で、話を打ち切る。
 実際のところ、其方───殺害や手荒な手段───に舵を切れば、彼女はそう動いただろう。

 本意ではなかった。不本意でも任務ならばこなすのが軍人とはいえ、だ。

ダン・レイリー :改めて向き直る。

ダン・レイリー :
「失礼した。では、改めて特例だ。
 処遇決定の前に、交渉の前口上から聞くだけ聞いてやる」

 無論それが聞くに値しないとあらば、対応はそうなる。そうするつもりでいる。
 連中はテロ組織だ。“比較的”事情があるとしても───それを忘れて、O-3(大尉)は名乗れない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……」

 勇魚は自身の立場を主張した斬り、そこに異論をかい挟むことはしなかった。
 そうしたい人物と、そうすべきと主張する人物が、この場にはいる。その意志をこそ尊重したいと勇魚は思った。
 ダンがそうあるように、彼女は自分の意志以上に周囲の意志を尊重するように動いていた。

 ……何より勇魚は、ラクシャーサのことを徹底的に『裁きを受けるために処刑台に上っている人間』とは考えていない。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……………………。
 毎度思うんだけど」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「あんたってなんか知らないけどくじ運いいよね。マトモなの引きやすいっつうか
 有無を言わずにブチ抜きに来るところをアトラが抑えてくれるぐらいのコト考えてたんだけどな」

 コソコソとアトラに耳打ちして

アトラ :
「確かに…… ……おかげで今日まで働けてるみたいなところあるかも?」

 ぼそぼそ。

ダン・レイリー :「………」 解答は? と口にする10秒前。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ああごめんごめん。
 じゃあまずは、端的に内容を話させてほしい。ギブアンドテイクと。乗らざるを得ない状況の提示だ」

ダン・レイリー :「乗らざるを得ない状況、か」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「端的にまとめると。

 ギブは、そう「この作戦に関して協力させてもらう事」と
 テイクは「私の身柄と各地のワーディング効果の解除」だ。知ってる情報も含めても良い」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「三つ目の状況……
 これはまあ余談というか、話聞いてもらうって話を纏めてくれたところ水差すみたいだけどさ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 ・・・・・・・・・・・・
「私まだ実はやれるんだよね」

ダン・レイリー :「………………」

ナタリー・ガルシア :「……」

ダン・レイリー :何が“参った”だ この際以後はペテン師と呼んでやろうか

アトラ :「…… ……ちょっ」

ナタリー・ガルシア :「それでは、私達はお眼鏡に適った……ということでしょうか?」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :オートアクション:
 マ リ オ ネ ッ ト キ ュ ービック
【立方晶珪絃操絲圏-自走式】
《魂の錬成 LV3》

Option:HPを4d10回復し、戦闘不能状態を回復する。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
 言いつつ、体を操作する絲が何処からともなく発生し、力なくうなだれていたレイラの身体を動かし始めた。
 ・・・・
「この通り。
 ほんとは引き金に指掛けた瞬間、瞬きするうちに私は逃げ出せるワケ。これ、脅迫材料ね」

ダン・レイリー :「なるほど」

ダン・レイリー :………そのカミングアウトをどう見たものか。何せこれは。

アトラ :
「……ちょっ、ちょいちょいちょい……」

 折角そっちの手助けも出来るかなと思って乗っかったのに脅迫て。
 ……いや、往生際良すぎるなとかちょっと思ったけど!けども!

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「私、交渉するって言ったよね。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 誰が交渉の席で下手に出るのよ」

ダン・レイリー :
「全くだ。
 歎願ではない以上、その権利がある」

アトラ :「そうだけどぉ……!」

ナタリー・ガルシア :「私達を認めた上で、自分の力をアピール……つまり、友達に自分のすごいところを見せびらかそうとする子と同じですわね!」

ダン・レイリー :
「であるに、それをすれば後がないのも分かるな。
 その脚で雲隠れするならまだしも、どこぞにタレ込んで再び陣取りましたと来たら、これからすることが着地ではなく墜落になる」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……何となくそんな気はした。
 『負けを認める』と言っただけで、どうせまだ隠し札を備えていると」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「そりゃ凄い子アピールするよ。
 私は要するに私をあんたたちに買ってもらおうっていうんだから」

ダン・レイリー :
 それをギブと評する事こそ、あるいは目的のための手段と見えるが。

ナタリー・ガルシア :「私としては、もう少し素直にお願いしてもらえれば、更に好感度アップですわ!」

なにせ、皮肉屋とは近頃よく会話しているので。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「私が『参った』って言ったのは勝ち馬に乗るためってのもそうだけど……
 アトラをこのまま無理にひっぺがすより、アトラの傍にいるためにキミらの近くにいた方が賢明と判断したから。

 私の欲望は、叶えるための√を複数用意していたんだ。それがFHでなくちゃならない理由はない」

ダン・レイリー :
「最善が通らない以上は次善を通すか」

ダン・レイリー :
「当然の話だ。そして見返りを考えれば………。
 そこに付き纏う虫の良さを除き、此方に害があると考えにくい」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「塩らしく縄に繋がれてやった方が性に合ったかな? 悪いんだけどおたくらにそれやる勇気ないよ。一度それで死にかけたんだから。
 ……まあ、FHでなくても行けるって分かったのはこっち側に入ってからのコトなんだけど。

 厳密に言えば、あたしが欲しいのはお姫様の力。そしてあんたたちがこのまま『シャンバラ』を殲滅する限り、必ずあの古代都市を目指すことになる」

ナタリー・ガルシア :「…………」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「お姫様をパクって頑張ってもらおうと思ったけど、プランとしてはこのままお姫様をプロデュースする方向でも行けるには行ける。
      エヴァンジェリン
 ホントは、" 預 言 者 "の相手とかしたかないけど」

アトラ :「…… ……」

ダン・レイリー :
「ナタリー・ガルシアの力を利用する見返りがソレということか」

ナタリー・ガルシア :「……やはり、彼女は待っているんですわね。この道行の先で」

独りごちる。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「実際に戦ってみて思ったより全然強いじゃん。
 部の悪い賭けだけど、お姫様があいつをブッ倒す方向でキミらの捕虜になるのがベストと思ったんだ。
 リ エ ゾン エ ー ジェ ン ト
 しょうもない地位なんぞに未練もないしね」

ダン・レイリー :
「相手によってはすぐさま手袋を投げ捨てる発言だな」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「信用できない?」

ダン・レイリー :
「貴様はそうだが」

ダン・レイリー :
「その貴様に繋がりのある“T³”は別だ。
 此方に、そういう器用な真似が出来るとは思わん」

アトラ :
「…… ……。
 ちなみに、そのパターンでの“ねがいごと”が叶う勝算とか確率って……」

 やはり対峙することになるであろう“預言者”による、のだろうが。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「二割……いや一割かな。お姫様次第でもっと上がるとは思うけどね」

ナタリー・ガルシア :「……つまり、私の努力次第というわけですわね!それなら任せてください!」

ダン・レイリー :「こういう娘だ。一つもせんと勝てん相手なのは分かったが、無茶を煽りすぎてはやるな」

ナタリー・ガルシア :「私に投資して頂けるということですから、ええ、決して後悔はさせませんわ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……ま、そっちのこもなかなかやるようだし、まだ全然本気出してないっぽいけどさ」
 チラ、と勇魚に目を向ける。

「この子が何処までやれるかでまだ上がるとしても不安かも。まあ、本当にお姫様がウンと頷いてくれるだけでかなり話は早いんだけど」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「それすると十中八九、この国はおしまいだ。
 いや、アメリカというよりこの時代がかな。
    ヒャクパー
 これは 百 % 。断言できる。
 こっちの方が圧倒的に手っ取り早いとはいえ、キミらの流儀とは合わないし、アトラがそっちに来てる以上もう仕方ない」

ナタリー・ガルシア :「………不安なところ申し訳ありませんが、そういう事情であれば私に全額BETしてもらうしかありませんわね」

ダン・レイリー :
    メカニズム
「どんな過程と結果がそれを生むにせよ、択ばせるわけにはいかない。
 ………確かに次善のようだ」

ダン・レイリー :………

ダン・レイリー :まあいい。蛇足を分かり切っているが………

ダン・レイリー :七色の直感を使わせて貰いたい。

GM :了解です、具体的にどのあたりをチェックします?

ダン・レイリー :対象者はラクシャーサ。要点はただ一つ。

ダン・レイリー :僕はこの女の事情を知る義理も権利もない。今必要なのはそれが信用に値せずとも、その執念を信頼できるかどうかだ。

ダン・レイリー :
 ………であるに、この女にとっての“T³”を知りたい。
 目的の中にいるのかどうか。それが分かるのがベストだが、何も分からんでも構わん。

GM :ふーむ、了解です!
判定は、必要ありません。どうやらその辺り詳しく話したがらない割に、意図は伝えたい様子です

ダン・レイリー :………

SYSTEM :
 その色を見る。そこにアトラの位置が何処にあるのかは、一目でわかった。
 少なくとも彼女がアトラに関して話す際、常に意識はアトラに向けられていた。

 ……或いは、それは自己の保身以上に。あれほどに拘った自己の保身以上に、アトラの身柄を優先している。

SYSTEM :
 尤も、その為に具体的に何を為そうとしているのか、言葉に嘘はないか。そこまでを判別するのは難しい。少なくともレイラ・イスマーイールという女性は、この場で不要な嘘をついている様子はないようだ。
 裏の目的のために体よく出汁に使っているなどという邪な気配はない。

ダン・レイリー :
 予想通りだ。

 ヤツが食らいついたあの瞬間、なりふり構わない得物を見せた瞬間は。
 僕が“T³”を引き合いに出そうとした時だったからだ。 

ダン・レイリー :
 ………問題は、それに頷いて任務を遂行しようと言う時に。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 テンペストの“ホワイト・スカイ”に何が命じられるのか、だが。

ダン・レイリー :
 裁量権はまだ完全に委任されている。
 用立てる理屈も十分だ。
            ・・
 まあ、いよいよとなればソレもいいだろう。

ダン・レイリー :
「良いだろう。
 信用はしないが、その動機を信頼する」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「信用でなく信頼する、ね。
 FHの女の扱いは手慣れてるね、あんた」

ダン・レイリー :
「止して貰おう。
 その関連には懲りている」

ダン・レイリー :
 責任の話はしない。
 誰が持つのかは当然のものだからだ。
 反故にするな、という部分も含めて。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「それじゃ、最低限の条件を呑んでもらったとこで……」

 指をもう一本立てる。

「もう一つ。これは十分条件、必ずしも必要ではないけれど、やっておいた方がこっちとしてはラクな条件ね。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 私が協力していることを上に伏せてほしい。とくにアメ帝の方ね」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「理由は訊く気ないって態度だからそいつはすっとばすけどね。
 此処で私を抹殺しておいたというコトにした方がお互いに都合が良いよ」

アトラ :「…… ……」

ナタリー・ガルシア :「…………」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「というかまあアトラの身もヤバいんだよね。
 そっちの線が繋がると」

ダン・レイリー :「………」

ダン・レイリー :
 ………ミナセのドローンが不幸な事故に遭ったのは、運が良いやら悪いやら。

 普通に考えて“何を馬鹿な”と言い切るような提案だ。彼方をフリーにする理由はない。

ダン・レイリー :
 ない、が。

ダン・レイリー :
 ・・・・
「了解した」

ダン・レイリー :
「………だがUGNまでとなると、僕の一存では決められん。
 そちらについてはもう少し詰めるとして………何より過度な期待はするなよ。だから“必要条件”ではないのだろうがな」

ダン・レイリー :
 嘆息一つ。

 理由を聞く気はないとは言ったが、
 下手に言うべきではなかったかも知れん。

アトラ :
「……」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……本気ですか?」

ダン・レイリー :一度“炎神の士師”の顔を見る。

ダン・レイリー :それから、一度だけ瞑目。

ダン・レイリー :
「本気だよ。
 ああ勘違いするな、同情の類じゃない。絆されたとかでもない」

ダン・レイリー :
「任務遂行のための、僕の都合だ。
 UGNとして不都合を見出すなら、そこについては今から妥協点を模索し直す。いいね」

ナタリー・ガルシア :「……私としては、アトラさんの姉であるレイラ・イスマーイールさんに現地にて協力してもらうことになった、ということにしておきたいですわね」

とはいえ、それを決定とする権利もなければ、実績も実力もない。
だから、チラチラと、盗み見るように一方向へ視線を向ける。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……。
 わかりました。とはいえ……」

 やや考えを巡らせるように目をつむる。
 ちらちらと向けられる視線も、意図は分かる。
 だが……恐らくあちらの要求はそうではない。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……。
 UGNにレイラ・イスマーイールの情報はない。恐らく統合参謀本部にも」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……殺害済みという体で完全にノーマークの状態で放すのは容認し難い。相手がジャームでないにしろ、FHの構成員であるならば猶の事です。
 登録済みのイリーガルとして処理できるか、リリア教官に掛け合ってみます。
 我々の譲渡できる条件はこれが限界」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「その折にこちらで手綱をつけてもらう。
 我々と共同で動くための、最低限の保険です」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……ワシントンの基地が破棄され、活動拠点がUGNの施設に移っていたことが、こんな形で僥倖となるとは思いませんでしたが。
 異存はないな、ラクシャーサ」

ナタリー・ガルシア : 

アトラ :「…… ……お~」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「異存なし、だ。まあ順当な落としどころかな。
 こちとら潜入変相は得意な方でね。向こうの目がキッチリ入って来ないなら誤魔化せる。
 キミらの枷をつけることもモノによるけど異議はないよ」

ダン・レイリー :
「実際、その手のシンドロームの十八番でもあるからな」

ダン・レイリー :
「………ともあれ此方から言う事はない。そうして貰う。
 尤も、ワシントンの基地破棄は不本意なんだがな。当事者には落とし前も付けていない」

アトラ :
「……良かったじゃん。暴れん坊から善良寄りな協力者にジョブチェンジって感じで───……」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「うんうん! では交渉成立だ!
 話が分かって助かるなあ」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「それじゃあ、善良寄りの協力者として少しはらしい働きをしなくちゃね。
 そういう訳で……」

 にっと笑い、手を差し伸べる。
 ラクシャーサ
「 千 刃 空 夜 叉改めレイラ・イスマーイール。暫くの間、そちらと行動をともにさせてもらう。
 今後ともよろしく頼もうか」

ナタリー・ガルシア :「はい、勿論ですわ!私はナタリー、ナタリー・ガルシアですわ!!アトラさんのお友達です!」

そう言って、にっこりと差し出された手を握る。

ナタリー・ガルシア :
     し ん こ う を あ た た め て
そして、ブンブンとシェイクハンドして、くるりと振り返って手を離す。

どうぞ、と、言葉にはせず、笑みの形だけで残る二人に場所を譲る。

ダン・レイリー :一番手は貰われたな。では…。

ダン・レイリー :
「テンペストの“ホワイト・スカイ”………。
 ダン・レイリー大尉だ」

ダン・レイリー :
     .ダブルクロス
「今から隠し事をする悪餓鬼などをやるわけだが………。
 お互い、気が変わらないことを相互に願っておく」

ダン・レイリー :
 少し時間を置いてから、その一声と共に、応じるなら軽く握手。応じないならそれだけだ。

 実際問題、先の信頼は“それ以上の最善手が思い浮かんだ”場合という唯一無二のリスクがある。
 そう思わせないようにするだけで良い/何より“T³”のこともあると言えばそうだが、前口上としてはこんなものだろう。

ダン・レイリー :それだけやったなら、此処はナタリーに倣うか。次にどうぞ、というやつだ。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :「はい、どうもお姫様!」

 ぶんぶん!と握手に応じる。
 振り返る間際、小さくレイラは囁きかける。

「どうかあたしとアトラの為にも死なないよう頼むよお姫様。
 そのぐらいのエスコートはしてあげる」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「それから、レイリー大尉ね」

 握手。心なしか少し力が強い。(※ちなみにレイラの肉体は数値で換算して7にあたる)

「お互い気が変わらないようにね。実際、割とマシな方って印象を裏切らないことを祈ってるよ」

ダン・レイリー :
「見解の一致が得られているようで何よりだよ」 

 生憎だったなラクシャーサ、あるいはレイラ・イスマーイール。
 既にそのオーヴァードの身体能力で無自覚の攻撃を仕掛けてきたティーンがいる、動じるとでも思ったか。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「UGN本部エージェント、勇魚=アルカンシエル。
 ……まだ掛け合うと決めただけだ。それに、すべてが終わった際、然るべき措置は受けてもらうぞ」

 言って握手。相手の右手に対して、左手を差し出す。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「……ああ、その手が鬼札なんだね。
 はいはい、全く可愛げがないの。その辺りをキッチリ受けられるようになったら、応じたげる」

 すぐに意図を察して左手で握手に応じる。

アトラ :
 手を握って離す、所謂握手の様子を珍しいものでも見るように眺めている。
 最も簡単な友好の印。最も簡単な繋がりの在り様。これ以上の戦いは、少なくとも今すぐには起こり得ないことの証明にもなる。それはとても喜ばしいことだ。
 ……こと、なのだが。

アトラ :
「あ~、っと、あの。いや、ウチ的にも全然嬉しい流れなんだけど……」

 すっ、と挙手。これ以上の衝突は一先ず避けられ、おまけに敵対どころか協力者という立ち位置まで手にした。
 ただ、一つ、個人的な『納得』が足りていない、と口をもごもごとさせている。

ナタリー・ガルシア :「?」

ダン・レイリー :「…ン。どうした」

アトラ :
「いや、なんていうか……」

「……割と肝心な部分伏せたまま、命を懸けて一緒に頑張ろう!って……そこまで誠実じゃないっていうか……。
 一応納得してもらってるところ蒸し返すのもちょっとイヤだけど、ウチら揃って“協力”って流れで黙ってるのもイヤというか……」

アトラ :
 ギブ・アンド・テイクは為されている。この場の協力体制は成っている。
 だから、言っても言わなくても良い……の、だろうが。
 言いながら不安げな目で追うのはレイラだ。この場でその手の発言をして最も不利を被るのは彼女だろうし。

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「ああ。まあ話してるわけないか。
 この様子だと」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「いいよ別に、この際訊かれたら答えるつもりだったし。訊かなかったから言わなかっただけでね。
 でも、今ここで良いの? 他にもいるんでしょ面子」

アトラ :
「…… ……それは───……」

 少なくとも今、別の地区で戦っているメンバーも居る。
 ……目の前の彼女は認識しているか怪しいが、この場のキャプテン以外の“テンペスト”だってきっと『マシな方』だろうし。
 彼女ら以外のUGNも、見ていた限りでは人の良いひとで。
 あの場で一番怪しい一人も、話した限りでは『敵』ではない。

アトラ :
「…… ……そうだね。うん。
 言うにしても言質だけじゃなくて完全に取り付けてからの方が良いし……」

 ……いや、これは普通に悪い考えか?

ダン・レイリー :特に口は挟まないが、改めて思う。それを口にする辺り、旅人の強かさと騙しの手口は別のようだ。

ナタリー・ガルシア :「…………」

何かを言おうとしている、それも、恐らく気軽に言えるようなことではないのだろう。
だからこそ、その言葉を待つ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「……無理にとは言いません。
 ただ、この場の皆は既に、あなたについては信頼している筈」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「聞き入れる準備は出来ています。
 どうするかは、アトラ次第です」

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
「だってさ。
     米帝
 あたしは連中に聞かれないなら、それでいいと思う。……最悪置いてくれなくなるかもだけど、筋通しときたいなら仕方ない」

アトラ :
「…… ……」

アトラ :
「そんときは……そんときで。いつも通りといえば、そうだから」

「……じゃあ、とりあえず。
 帰ったら大事な話があります!出来ればショーさんもブルーさんも、他の皆さんにも。
 ウチの“家族”が仲間になりましたついでに、ってことで……いいですか?」

 くじ運が良い、とは言われたが。成程確かに、人との出会いの運は良いらしい。
 最初から、きっと今まで。

アトラ :そういうわけで合流するときとかに開示しますか、RHO!ラウンド終了時とかになるのかな……?

GM :おっと! 了解です

GM :では処理的に合流時での開示としましょう
このラウンドの処理終了後ってとこですな

アトラ :了解!おねがいしまあす

ダン・レイリー :
「了解した。席を外す必要がないのであれば………。
 高いハードルのようだ。何が飛び出そうとも、驚かない心構えだけはしておく」

ダン・レイリー :
 多少ハードルを測り間違えたような軽い発言。大事な話としつつも、塩梅としては気負いたくないものなんだろう。

 ………それに。

ダン・レイリー :
「(………そこが根幹か)」

ダン・レイリー :
 敢えて触れまいと思っていたが………。
 その辺りの懸念と、渦巻く思考を、おくびにも出さずに奥底に仕舞って、表の感情を維持する。

 実際、疑問が杞憂かどうかを探る良い機会だ。

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「分かりました。……あなたの口から話して頂けるなら、私も嬉しい。
 ですが思い直したならば、無理をしなくても構いません」

”炎神の士師”勇魚=アルカンシエル :
「誰しも、秘めておきたい事はあるものです。
 それが疵の類なら、猶の事」

アトラ :
「うす。その辺は……分かってるつもりなんで。
 もしかしたら、ちょっと安心して気が大きくなってるだけなんかもしれないけど……。
 黙ってついていくようなのも、ウチがイヤなんで。折角良い人たちに出会ったんだし」

ナタリー・ガルシア :「お友達の秘密を明かしてもらえるのは、更に仲良くなるための第一歩ですわ!ですから、私はきちんと聞かせていただきます――アトラさんのこと、これまでのこと、アトラさんが話したいと思ったこと全部」

その上で、受け止めきれるとは言えないけれど。
向き合い、対峙することは恐れない。

"アダム" :
 ──また厄介な苦労を拾うもんだ。彼女は兎も角その中身はキミにとっても厄の胤だが……
 ああ分かってるとも。
 

"アダム" :
 "我は汝を識りたい"、か。つくづくキミの好奇心はRB以上だな。
 実際キミは彼女について何も知らん訳だ。無論オレも、その経緯までは知り得ない。

"アダム" :
 だから……キッチリ知っておくといい。
 無知は罪だが無知に対する向き合い方は内面に依る。

"アダム" :
 ・・
 選ぶのは、その後の話だ

ナタリー・ガルシア :「(親しい相手を知りたいと思い、そして識ることは、決して厄介事を背負い込むことではありませんわ)」

ナタリー・ガルシア :「(――ええ、それは幸いなことです。
     ユメ
相互理解が幻想であったとしても、人は夢を追いかけられるのですから)」

ナタリー・ガルシア :「(ご忠告、痛み入りますわ。今回は手助けもしていただきましたし、何かお礼でもしてあげましょうか?)」

"アダム" :
 生憎オレは無欲な方でね。
 キミが真面目に進んでくれるならそれでいい。
 ……が

"アダム" :
 強いて言うなら休暇をくれ。
 キミのお転婆さにはついていけん。

ナタリー・ガルシア :「(…………)」

ナタリー・ガルシア :「(こうして貴方の軽口に付き合ったのがお礼のようなものですわね)」

"アダム" :
 なるほど上流階級らしい搾取の手法だ。

"アダム" :
 だが。軽く流されてもそれはそれで困るんでね。
 オレは勝手に休むからキミも適当に休んでおくといい。

ナタリー・ガルシア :「(ええ、用がある時は叩き起こしますから、それまではご自由にどうぞ?)」

"アダム" :
 お気遣い痛み入る。この調子なら一々休暇届を出すまでも無かったらしい

SYSTEM :
 言って、宣言通りに『じゃあ勝手に寝る』とばかりに声は途絶えた。

ナタリー・ガルシア :「(……いやですわね、私も、素直にお礼が言えなくなってきましたわ)」

ナタリー・ガルシア :「(人のふり見て我が振り直せ、とも言いますし……自省しなくてはいけませんわね)」

SYSTEM :
 ──ラクシャーサとの血戦を制した一同。
 シャンバラの一角の陥落と共に、デトロイトに平穏が齎される。
 追放された楽園への回帰、その巡礼の第一歩。しかしそれは、ラクシャーサとアトラが抱えた秘密と共に、新たな局面を迎えようとしていた……

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 シーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

ダン・レイリー :ロイスを取得するわけではないが…。

ダン・レイリー :
此方が持つ一部ロイスについて、
表裏を変更する。

ダン・レイリー :“T³”:○P尽力/N不信感 だ。不信感の原因についても当面払拭された以上…暫定の変化ではあるが、これでいいだろう。

ダン・レイリー :…それから…ナタリー。

ダン・レイリー :P/Nの感情の表裏はそのままに、Nを「脅威」に変更する。僕がこの娘に感じた懸念点について、測り直す必要があるのかもしれん。

ダン・レイリー :変更内容は以上だ。長々とすまなかったが、確認を頼む。

GM :恐るべきお嬢様!

GM :はともかく 問題ありません
この卓では感情の変更はアリです ルール上ないっぽいんですが長丁場なのでハウスルールとします

ダン・レイリー :ああ…場合によってはタイタスに接触する内容だからな。柔軟で助かるよ

アトラ :
ウチも~ロイス取得!ダンさんにだね。
〇P誠意/N恐怖で。今は何とかなってるしするんだけど、ウチら的に一番味方で怖いのはキャプテンだろうし

GM :おお!了解です!
キャラシートに記載お願いします

GM :お嬢はないっぽいというか もう埋まってますな

ナタリー・ガルシア :そうですわね、変更も特にないですわ

GM :了解だ!

SYSTEM :【Information更新!】

 隠しNPCカードが解放されました
 

"千刃空夜叉"レイラ・イスマーイール :
『レイラ・イスマーイール』
 『神出鬼没』……オートアクションで任意のエリアに登場できる。
 『砂の加護』……任意のダイスを+5/ラウンド1
 『カンビュセスの籤』……エリア内ユニット単体のHP4d10+7回復/ラウンド1
 『デモンズウェブ』……エリア内ユニット単体のダメージ-4d10軽減/ラウンド1

SYSTEM :
イベントシーンを開始します。
イベントを展開しています……




【MIDDLE ⑥ - 煌々凶星】

SYSTEM :
【MIDDLE ⑥ - 煌々凶星】

登場PC: Syou Kain
登場侵蝕:なし

SYSTEM :
 デトロイトにて、幹部"千刃空夜叉"の居所を突き止め、突撃の運びとなった一方。
 他の都市部に関しても手薄にするわけにはいかない。とくに本部メンバーが最初に当たったニューオーリンズなどはその筆頭であり
 最低限戦力を置いて維持に当てなければならなかった。

SYSTEM :
 戦闘員として勇魚はデトロイトに向かう必要があり、相性面で立ち会うことが難しい灰院はこの週のみ一旦別れて行動することとなり
 引き続き、名目上は本部エージェントの監督として付き添う紅と共にL.Aに向かい、同じくL.Aから少し離れたシリコンバレーにてウイルスの調査に赴いたブルーと別れて活動を始めていた。

SYSTEM :
 尤も、ブラックドッグの身ではあれ高度な捜査の経験がある訳でもなく、応用が利くでもない。
 先遣隊の調査の甲斐もあり、シャンバラのメンバーがロサンゼルスに混ざっていること。
またロサンゼルスの大規模攻勢を未然に防ぎ、幹部格の一人コードトーカーが潜伏していることも知ることとなった。
 後はその所在を探るのみ、なのだが。
 本部エージェントとしての裁量権を無暗に振るうより、地元の支部に協力して得た証拠品から手掛かりを探るほうが結果的に良い結果に転ぶだろう……
 と、言い出したのは果たして本人だったか彼女だったか、或いはLAPDの言いくるめの巧い刑事の煽動であったのか。

SYSTEM :
 二人はロサンゼルス支部の面々と協力して、事件の捜査に当たることとなったのである。
 如何せん、人手の足りないロス市警である。ことにオーヴァード関連の仕事となると、一層人手不足の気は否めず。
 監督役の刑事と同伴し、乗り方もろくに分からないパトカーを滅茶苦茶に操作しつつ
 特殊覚醒剤、αトランス系薬物の取引に向かっていた犯人の検挙に成功したのであった。

やり手の刑事 :
「ご苦労さん。
 おかげで助かったよUGNの若いの、パトカーは派手に御釈迦……っつうかフライドチキンになっちまったが、気にするこたあない。

 ほぼそっちの経費持ちだ」

紅 蘭芳 :
「ど、どういたしまして……」

 しょげかえりながら

灰院鐘 :
 不馴れな人探しが都市犯罪の調査協力に発展したのは、一体どのあたりだったか。
 軌道修正と対外交渉のできる相棒はあいにくと不在。それはつまり、口車に乗せるのは簡単でも、張り切った彼──と彼の起こす裏目に次ぐ裏目──を制御するのが困難だという事実を知る者がいないことも意味する。

灰院鐘 :
 かくして短い旅路を共にしたパトカーは走行中に乗り捨て、見事外壁に激突──大破、爆発、炎上、エトセトラ。もはや四輪駆動の名残をわずかも残さない姿は、曰くフライドチキン。確かに似てはいる、こんがりしてるあたりが特に。

灰院鐘 :
 鉄の塊を労わっていた巨体がよいしょと立ち上がって、二人のもとへに戻ってくる。

「えっと……間に合ってよかった!」

灰院鐘 :
「……」

灰院鐘 :
「……反省してます」

 UGNの経済事情は把握しておらずとも、この損失をやむなしで流せるほどでもないことは理解しているらしい。

やり手の刑事 :
「心配すんな。
 ロスじゃ日常茶飯事って奴だ。寧ろ見てて痛快だったぜ坊主」

やり手の刑事 :
「それにまあ、特に出てくる見込みがあったわけじゃないが……コイツも積んだ徳のおかげってとこだな。件の大型犯罪シンジケート絡みの話もちょこちょこ出てきたとこだ」

紅 蘭芳 :
「やっぱり元々そんな見込みなかったんですね……」

やり手の刑事 :
「言葉の綾だよ、聞き流しな」

灰院鐘 :
「何にせよ、力になれたのなら良かった。僕たちも急務だけど、だからって犯罪を見過ごしていいわけではないし」

灰院鐘 :
「結果的に成果もあったのは喜ばしい。いいことは自分に返ってくるって聞いたけど本当だね」

紅 蘭芳 :
「まあ……今回は功徳の賜物! そういうことにしましょう!
 ちょっと寄り道したけど、貴重な経験も出来ましたし」
 

やり手の刑事 :
「不安になるぐらいの人の良さだな。おまえら監督してる奴も大変だろう。四日足らずの俺ですらそうだった」

やり手の刑事 :
「ま……それはそれとして。今回のヤマ調べるにあたって薬の出どころが分かってきた。
 どうにも新薬の実験と検体の確保で、ここの地元の連中に紛れてせこせこやってきたのがいるそうだ」

やり手の刑事 :
「シリコンバレーでよろしくやってる大企業を後ろ盾に、ダウンタウンの方でひっそり実験場をこしらえて随分無茶なことをやってるそうだ。検体候補者の拉致監禁とかな。
 後で詳しい座標はそっちにデータとして送っておく。壊すなよ。
 ……いいか壊すなよ。今度のはフリじゃねえ。頗る機嫌損ねた女を扱うぐらい丁寧に扱え」

灰院鐘 :
「きげんをそこねた……」ものすごくむずかしいかお。

灰院鐘 :
「……その。丁寧にしても、どうにもならない場合は」どうしたら……

紅 蘭芳 :
「わ!私が預かります! ハイ!」

灰院鐘 :
……!

灰院鐘 :
「蘭芳さんがいてくれてよかった……」しみじみ

灰院鐘 :
この二週間でいちばん実感と感謝のこもった声色。

やり手の刑事 :
「おいおい……」

やり手の刑事 :
「ま、とにかく……
 ご苦労さんだ。短い間だったが……いや、"コードトーカー"検挙にあたって俺らも対策を進めてる。
 また世話んなるだろうよ」
 

やり手の刑事 :
「……餓鬼に娘にを駆り出すお回りさん、なんつうのは締まらない話だけどな」

灰院鐘 :
「僕はできることとやりたいことがこれなんだ。気にしないで」

灰院鐘 :
          それ
「あなたが懐に収めた拳銃とあんまり変わらないよ。またうまく使ってほしい」

紅 蘭芳 :
「まあまあ、そこは適材適所ということで。
 それに、お手伝いしてるようなものですから、そんな風にビシバシ使ってください!」

やり手の刑事 :
「おまえらわざと言ってねえか?」

 苦笑い半分で顔を逸らして咥え煙草に火をつけ

やり手の刑事 :
「おまえらのこと、怪物だの人間兵器だの悪く言う奴も大勢いるが。ウチは結構その辺りフラットだ。
 転職をご希望なら席は開けといてやるよ。あんまりL.A支部の奴らにデカいツラさせておくのも癪だしな。

 ……それじゃ、お先。そろそろ、取調室でお見合いの時間だ」

SYSTEM :
 ぷらぷらと手を振って、マイペースながらもどこか面倒見の良い調子の刑事は紫煙をくゆらせて刑事は去って行った。

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :

灰院鐘 :
 トレンチコートの背中が遠ざかっていくのを、おっとりと手を振って見送る。

灰院鐘 :
「……さて。データが送られてくるまで、少し時間がありそうだ。蘭芳さん、このあと何か用事とかあるかな」

紅 蘭芳 :
「ふぃ~……何か色んな意味で疲れた~……
 っとと。用事って程の用は特にないけど……何何?」
 
 大きく伸びをしながら

灰院鐘 :
「うん、実は……」

灰院鐘 :
「……ううん。僕のほうも、用事というほどの用でもないんだけど」

灰院鐘 :
「難しいな。……」

灰院鐘 :
「……ちょっと歩かない? 散歩でも、帰り道でもいいけど」

紅 蘭芳 :
「いいよ! それじゃ、動いてお腹もすいたしダウンタウンの方まで行こっか!
 今日は灰院君が大活躍だったし、私が奢……奢ってあげる!」

 ……一瞬の間が空いたのは手持ちを気にしたが故のことであることは、特に記す必要もないことだろう。

灰院鐘 :
「ほんと? うれしいな」

 ありがとう、と素直に受け取る姿は年相応だ。

 ……そう、年相応だ。ただでさえ食べ盛りの年齢に加えてオーバーサイズ、身体が資本のシンドローム。その手の発言をして少しも後悔をしない人間は、まあ限られているだろう。

紅 蘭芳 :
「(……やってしまったかもしれない……!
 けどもう後には引けない!)」

灰院鐘 :
「……ああ、でも」

「お詫びを兼ねて僕から奢らせてもらう、なんてことになっちゃうかも」

灰院鐘 :
「その、すこし聞いてもらいたい話が合って。……ううん、聞かせてほしい話なのかな」

 彼自身も掴みかねてないのか、ごめんね、と困ったように眉を落とす。

紅 蘭芳 :
「聞かせて欲しい話?」

 小首をかしげる。この二週間行動を共にした仲だ。改まって聞きたい話となると、あまり心当たりがないのだろう。

「はい、なんでもどうぞ? まあ、あんまりためになるお話が聞けるかは保証しないけど……」

灰院鐘 :
「……報告書、あるだろ。僕が書いてる」

「ああいうのはずっと人任せにしてきたから、蘭芳さんに手伝ってもらって。ルイジアナでは勇魚くんの手も借りた」

灰院鐘 :
「それ自体はいいんだ。だんだん慣れてきたし。感想を求められるより、事実を並べるほうが難しくない」

灰院鐘 :
「…………」

灰院鐘 :
「その、」
 やけに歯切れがわるい姿は、内に抱えた悩みよりも、それを打ち明けることに苦悩しているように映る。

紅 蘭芳 :
「……ふむ。大丈夫、ここには私しかいないし。
 何でも言ってみて。色々、口にした方が気分よくなるよ、きっと」

灰院鐘 :
「……うん」

灰院鐘 :
「この二週間、起きたことを記録してきた。感情ではなく、事実を文字と数字にして。……」

灰院鐘 :
   ・・
「なぜ彼らが殺すと被害者で……僕たちが殺すと死傷者なんだろう」

灰院鐘 :
「死体の価値、殺人の重さは変わらないはずなのに」

灰院鐘 :
「……どんなかたちであれ、命を奪うのは悲しいことだ」

紅 蘭芳 :
「それは…………」

紅 蘭芳 :
「……難しい話だね……」

 何か口にしようとして間をおいて、口を噤む。

灰院鐘 :
「うん。……ごめんね」

紅 蘭芳 :
「ううん、いいのいいの。灰院君が何に悩んでるのかって、聞けて良かったな、私」

灰院鐘 :
「……そう、かな。……迷惑になっていないのならよかった」

 ……落ちたままの視線は、ここにいない誰かを見ているように沈痛だ。

紅 蘭芳 :
「けど、そっか。難しいよね、その辺。
 ……私の言葉で参考になるかは、分からないけど」

紅 蘭芳 :
「灰院君の見方は正しいと思う。
 ……命の価値は等しく同じで。だから、力は振るう為の理由を求められるものなんだって」

紅 蘭芳 :
「私たち武辺者で広く伝わる言葉で、武の七徳って言葉があるんだ。
 『暴を禁じ、兵を治め、大を保ち、功を定め、民を安んじ、衆を和せしめ、財を豊かにする』……以て七徳。
 つまり武力を振るう時、その徳目に従うよう律さねばならない、って」

紅 蘭芳 :
「私たちは『道』を作るために、この力を振るうべきなんだ、って。
 まあ、だいたい恩師の先輩からの受け売りなんだけど」

紅 蘭芳 :
「けど、何でもかんでも大儀があれば赦されるのか!っていうのも違うと思う。
 だから、その結果が別のカタチの死であったなら、きちんと忘れないで覚えておくのが、最低限の責任なんだと思うな」

紅 蘭芳 :
「……UGNは、みんながみんないいひとって訳じゃないし。私も結構悪い寄りだし。
 その辺りにごまかしを入れちゃうのは、仕方ないことでもあるんだよ。毎日毎日死面を浮かべながらご飯を食べるなんてコト、私には出来ないし、やるべきじゃないと思うもん」
 

灰院鐘 :
「……うん」

 悲しい、と。そう溢しはしても「いけないこと」だとは言わなかった青年は、静かに頷いた。

紅 蘭芳 :
「でも! 灰院君はそれをしっかり見てる。
 その痛みを知ってる。きっとそれが一番大事なことだよ」

紅 蘭芳 :
「あなたがそれを抱える限り、その重さは消えない。他の誰かにそれを支えてもらうこともできる。
 そうやって、皆で支えながら『道』を作っていくのが、私たちのUGN。私たちの居場所なんだから」

灰院鐘 :
「────」

 私たちのUGN。私たちの居場所。誇らしげな笑顔に、ああ、と揺れる吐息が落とされた。

 眩さか、歓びか。灰色の双眸が穏やかに細められる。

灰院鐘 :
「……でも。知らずに済むなら、それが一番いいんだ」

「受け入れる痛みも、抱えていく重さも」

灰院鐘 :
「きっと勇魚くんは知っている。ナタリーくんも、いずれ直に触れる日が来るだろう。そう遠くないうちに」

灰院鐘 :
「…………」

灰院鐘 :
「支えることが、分かち合うことを意味するのなら。……僕のしたいことは、それではないんだと思う」

灰院鐘 :
「……今の戦い方に馴染めないのも、そのはずだ」

 守るという行為は彼にとって、生かすことでも、傷を負わせないことでもない。
 命を奪うという行為。その重さと痛みを、代わりに引き受けたかったのだと。

灰院鐘 :
「……なんて。うん、ひどい失言をしました」

「今のは……蘭芳さんにも、ふたりにも失礼だったね」

紅 蘭芳 :
「ううん。……優しいんだね灰院君は。
 でも」

紅 蘭芳 :
「そういうカッコつけをされると困る先輩方もいるってコトをわかって欲しいなあ!」

灰院鐘 :「うぐ」

紅 蘭芳 :
「私そんなに頼りなく見える?」

紅 蘭芳 :
「……見えるよなあ……」

紅 蘭芳 :
「ごほん! 兎に角……わかってるならよし。
 そしてあなたの予想通り、大抵の人がこういう反応をします。
 ……そういう「したい」を望むのは良いことかもしれないけど、欲は欲」

紅 蘭芳 :
「それを持つなとは言わないけど、それに流されちゃ駄目。巧く付き合っていかないといけないものだよ。
 うん、だから言ってくれたんだろうけどね」

灰院鐘 :
「……うん。こんなだから僕は信は持てないんだって自覚だけは、けっこう早くにあったな」

灰院鐘 :
「たまに思うんだ。さっきの話じゃないけど、僕と彼らの違いはなんだろうって」

 被害者と死傷者。その両者を分かつ線の、たまたま後者の側にいるだけなのではないかと。

 ……とはいえ、それは彼にとって悩みでも何でもないらしい。ふと思いついた疑問を口にするみたいに軽い声色がその証左だ。

灰院鐘 :
「……でも、きっと大丈夫だよ。あなたたちの作る道を見失わないかぎり、僕は巧くやっていけると思う」

紅 蘭芳 :
「…………」

 飽く迄灰院鐘の言葉は、自分でなく自分の属する組織に信用を置くものだ。
 自らを正しく運用する者に、自分を遣ってもらう。その危うさを。紅はこの時点でわずかばかりには識っていたのだろうか。
 何かを口にしようと、口をそっと開こうとした。

紅 蘭芳 :
「──────!」

 その言葉は口に出ることはなく。
 代わりに口を固く結び、眦を決して、得物を格納しているウェポンケースから咄嗟に取り出した。

紅 蘭芳 :
 直後にワーディングを展開。
 即座に周囲の目を隠して、臨戦態勢に移る。

 その故は何であったのか。それは、突如として凪ぎ、死んだ風が教えてくれた。

灰院鐘 :「っ……」

紅 蘭芳 :
「っ!!!」

 激しい風鳴りと、刃の撃ち合う刃鳴りが聴こえてきたのは、その後のことだ。
 あなたが気付いた瞬間には、三転ほどもんどりうった紅が、軽やかな身のこなしで体制を整え直していた。
 鐘の動体視力で一瞬見失う程の速度。隠密状態からの閃撃、リカバーが間に合わない程の……音を置き去りにした刹那の内の出来事であった。

灰院鐘 :
「……蘭芳さん!」
 後手さえ理解していれば及第点。状況把握を後回しに、紅の前へ立つ。

????? :
「……その気功の練り方は白道峨眉派の流派か。
 それも功徳が足りんと見える」

 ワーディングによって人の気配が立ち消えたダウンタウンの街並みを、悠然と進む影がある。

SYSTEM :
 わかっていたことではあった。少なくともダン・レイリーの忠告から、彼がこの街で見かけられたことを知ってはいたことだ。
 そして、或いはその故に宿星が導いたのか。

"天刑府君"元 天刑 :
「躱したつもりか? 笑止、躱させてやったまでのことだ。
かのじょ
 俺の刃は神魔の血を好む。再生の追い付く前に殺しては意味がない」

 黒い外套と、朱の剣。凪の中を歩む窮奇の剣鬼。
 凶星……天刑星の星辰がここに定まる。
 

"天刑府君"元 天刑 :
 その凶目が、紅の前に庇うように立つ灰院鐘に向けられる。
 "天刑府君"元 天刑。
 男は此処に凶兆通りに、死を運ぶ暗剣殺として顕現していた。

灰院鐘 :
 人の気配が失せた街並み。その混然とした静寂を踏み進み、凶つ星が姿を現した。

「……"天刑府君"」

 曰く、凶手。
 曰く、神魔狩り。
 曰く、魔剣に魅入られた男。

灰院鐘 :
「────」

 深く呼吸する。ルイジアナでは本調子ではなかった身体も、この一週間は何の支障も出ていない。

 新しい戦い方。馴染めない方法。
 ……たとえ、そうだとしても。

灰院鐘 :
「……餌やりならよそでやってほしい。それとも、あなたの仲間は口に合わないのかな」

 ジャームを殺すためにジャームを生む、非生産的な生産活動。そんな真似をせずとも顧みれば得物がすぐ傍にいるのではないかと、緩めた声が問う。

"天刑府君"元 天刑 :
「俺の剣は天命によって振るわれる。
 いずれ奴等をも宿星は導くだろうよ。
 ……此度は貴様が、その星に見えたまで」

"天刑府君"元 天刑 :
「強いて言うなら不運を呪うがいい。
 人は何者であれ、閻魔の文に従い鬼籍に入る。無為に争う人の命の価値など、等しくその筆跡に同じ。
 同じ無ならば今死ぬこと、今死ぬこと。そこに然したる違いはあるまい」

灰院鐘 :
「……驚いた。平等主義者とは思わなかったな」

灰院鐘 :
「そうでもないよ。どっちにしたって同じなら、僕は長く続いてほしい」

 他者にしろ、自己にしろ。命と消耗品の差はあれど、短いよりは長いほうがお得だ。

灰院鐘 :
「それに……良くない星が僕を向いている分には、不運もそう悪くはない」

"天刑府君"元 天刑 :
「……成程。俺の星が導かれるは、その死相の故と見える。業深き男よ。
 ならば或いは、貴様の望み通り、ここでその根を断つべきであろうな」
 

"天刑府君"元 天刑 :
 言いつつ、朱い刃の剣をゆっくりと持ち上げる。幾多の神魔を斬り、その血を吸ってきた魔剣。その切先を突きつける。

「その生き方では楽には死ねんぞ。
 七難八苦に臨み、畢竟その重みに耐えかね呪いを振りまくだけだ」

"天刑府君"元 天刑 :
「疾く死んでおけ。それが貴様に赦される唯一の済度の道だ」

灰院鐘 :
「────」

灰院鐘 :
「……それは困る。自分のために死ぬつもりはないんだ」

 あるいは、それは真に慈悲だったのだろう。そうしておくべきだったと悔いる未来など知らないまま、青年は微笑んだ。

灰院鐘 :
「ああ、でも。……うん、呪いがどうのというのはよくないな」

灰院鐘 :
「そうなったら改めて処理しにきてもらう、というのはだめかな」

"天刑府君"元 天刑 :
「ふざけた小僧だ。
 知らぬなら覚えておけ。
 ──早々、望んだ刻に死に切れる者などいない」

"天刑府君"元 天刑 :
「意のままに操れぬが故、人はそれを天数と呼ぶ。
 そう……人は誰もが、天命の虜囚よ。
 どれだけ力強く足掻こうとも、その営みは無価値に終わる」

"天刑府君"元 天刑 :
「天命。天運。即ち時代という名の潮流。
 善悪正誤も人の意も、凡てその波に揺られる筏のようなもの。幾ら五陰を楽しませようと、瞬きの内に泡と消える。
 おまえも遠くない先に識るだろうよ」

"天刑府君"元 天刑 :
「貴様の天数が、此処で尽きなければの話だがな」

灰院鐘 :
「……そういうものかな。あまり想像はつかないけど」

 青年が積み重ねた十何年間。虫食い穴の蓄積にあるのは、予見もしなかった終わり、望まない最期だ。死に損なうことを不運とする価値観が、彼にはまだない。

灰院鐘 :
「……」

 ……"天刑府君"の言葉は、抗い、逆らうことの無意味を説いているようには聞こえなかった。彼自身から、そうした諦観からくる無気力を感じないためだろうか。

 あるいは単に、足掻けと語りかける声を見出したがっているのか。紅が幼な心に憧れを持ったように。

灰院鐘 :
「……がんばってみよう。用事がつかえているからね」

 ゆるりと垂らされた徒手空拳。わずかの力みもない、自然な立ち姿。
 戦いに際して。構えがあるとするのなら、あるがままの姿こそがそうだった。

灰院鐘 :
「友達とごはんを食べにいくところだったんだ。死ぬにはちょっと早いかな」

"天刑府君"元 天刑 :
  いいだろう
「…… 好 吧 。

 この天刑府君、餓窮奇が、その悪運の程を試そう」

"天刑府君"元 天刑 :
 言いつつ、その剣が構えられる。
 放鬆しきった相手の構え。それが戦の佇まいであることを、元は語られずとも理解していた。
 特に合理性がなかろうと、彼ほどの達人にその意が伝わらぬ筈も無い。

"天刑府君"元 天刑 :
 そして。切先を向け、構えられた紅の剣が……ひとりでに哭く。
 耳を劈くその音は、宛ら餓虎が咆哮するが如し。

 ハヌマーンの震動操作であろう。極めてシンプルな、音響操作。複雑な操作性能でなく、ただ一芸を修めた故の絶招。

"天刑府君"元 天刑 :
「貴様があの男の先触れだ。
 十王審判を待たずして、羅鄷の鬼籍に入るがいい──」

GM :というわけで

GM :本来ならこのまま戦闘になりますが…
効果が遣えるNPCがいるため 此処の戦闘をスキップできます

灰院鐘 :うん、力を借りたい! 蘭芳さん、お願いできるかな

紅 蘭芳 :
……勿論! どうしても、聞いておきたいこともあったから

紅 蘭芳 :
此処は私が引き受けます。
こっちは大丈夫……! 多分!

灰院鐘 :頼りにしてるよ 

紅 蘭芳 :
うん!ここは先輩の良い所を見せちゃいます!

紅 蘭芳 :
リアクション:《カウンター LV1》

効果:ユニット『元 天刑』とマッチング時、戦闘を終了させる

紅 蘭芳 :
これで戦闘をスキップします!
さあ、行って!

紅 蘭芳 :
……出来るだけ早く応援呼んできて!!!

紅 蘭芳 :
 その時、灰院鐘の背後から、得物を構えた紅が姿を見せた。
 灰院が時間を稼いだ……というより、対話する間、精神を集中させていたのだろう。

「……灰院君。天刑府君は、最速の剣仙。私たちじゃ逃げられないし、応援が来るより先にやられる。
 そもそも、この支部の人たちじゃ手に負えないと思う」

紅 蘭芳 :
「先鋒は私が勤めます。
 ……それに」

 彼とは、話したいこともある。
 そう告げて、音もなく鐘の隣の位置に陣取る。油断なく長物を構えて。

灰院鐘 :
「──でも」

 でも、何だろうか。言い淀んだわけも、続きの言葉も持たないまま、青年は並び立つ横顔を見た。

 "……彼は幼い日、あの九龍の貧民たちが憧れた──"

 さすらいの士が人々を救った武侠譚の、その続き。
 知らねばならないと自らに課した少女と、気になるべきではないと結論付けた兵士の姿を脳裏に描く。

紅 蘭芳 :
「……大丈夫。心の準備はしてきたし、最初はこのために彼を追ってたんだ。
 それに、ほら、このまま逃げたんじゃ、教え子に顔向けできません」

紅 蘭芳 :
 無理に笑って見せる。本人だけがその笑顔の強張りに気付かない。
 全身の細胞と、因子が逃げろと叫ぶのを必死に抑える。結果、その大刀携え持つ手には震え一つ起きなかった。
 武の功とは恐怖を律する事。剥き出しの本能に呑まれるようでは、二流にすらなれはしない。呼気を整え、神経を集中させ、理性を以て荒れ震える風を詠む。

灰院鐘 :
「…………」

 青年の瞳は、どこか悲しい。

 立ち向かう姿を好ましく思う感性。
 その懸命さに痛ましさを得る感情。

 矛盾を嚥下するすべはおろか、自らの裡に反発が生じていると理解することさえ彼には一苦労だった。

 ……少女たちの意思を尊重しながら、彼女らの道行きに落ちる影を思わずにはいられないように。

灰院鐘 :
「僕には分からないものだ。その重さも、苦しさも。……いや。理解できないからこそ尊く思えるんだろうね」

灰院鐘 :
「……じゃあ、その前に。僕からも聞かせてほしい」

紅 蘭芳 :
「……?」

灰院鐘 :
「彼を追ってきたって言ったね。それは……紅蘭芳さんとして? それとも"飄颻天華"として?」

紅 蘭芳 :
「……全体的に前者かな。
 八割ぐらい私情だし」

紅 蘭芳 :
「それに……多分訊いたって、どうしようもないことだと思う。どんな答え方されたって、どうしたいかもよくわかんないし…」

灰院鐘 :
「……そっか」

灰院鐘 :
「でも、それをしないと蘭芳さんは前に進めないんだろ? 大事だと思うよ、そういうのって」

灰院鐘 :
「『道』があっても、歩けなかったらどこにも行けないからね」

紅 蘭芳 :
「……そう、だね」

 うん、と頷き気合を入れ直す。
 眦を決して、改めてその意識を元へ向ける。

"天刑府君"元 天刑 :
「──。煩い蝿と思い捨て置いたが。貴様、あの時の女か。
 先で一息に死んでおけば苦痛もなかったであろうに」

 元の態度は億劫げであり、どこか苛立ちに近いものさえうかがわせた。
 敵手を斬る。その一点においてよどみのない男には、珍しい。
 ……逡巡であった。

紅 蘭芳 :
「……餓窮奇、元天刑! 立ち会う前に、聞かせて欲しい。
 一つだけ……」

紅 蘭芳 :
「……十年前のマカオで。
 ガーディアンズの任務に就いていた女エージェント。
 ファン・イーリン
  黄 夜鈴 を……姉弟子を斬った、という話は。
 あれは事実ですか」

"天刑府君"元 天刑 :
「────成程。アレの近縁か」

 道理で覚えのある、型通りの套路をなぞるものだ。
 そう得心の言ったような。やや長い間をおいて。

"天刑府君"元 天刑 :
「ああ。他の愚図と比べればマシな相手だったな。
 ……ならば如何にする。恩讐で俺を斬るか?」

紅 蘭芳 :
「……どうして?」

"天刑府君"元 天刑 :
「宿星が、それを望んだ迄」

 男の回答は短く、そして素早かった。
 静かにそう言い放つ言葉には、逡巡の素振りはない。

灰院鐘 :
「……でも、それは」

 彼の天命が、朱色の"彼女"にあるのならば。宿星の意味するところは──

紅 蘭芳 :
「……何それ。星って、それがあなたの戦う理由なんですか? それだけなんですか?
 あの人は……あの人はあなたのことを信じてたのに」

"天刑府君"元 天刑 :
「だろうな。故に惜しい」

"天刑府君"元 天刑 :
「──彼奴め、情に絆され不覚を取らねばもう少しは楽しめただろうに。
 だが……おまえはどうかな」

紅 蘭芳 :
「…………っ」

 ぎり、と大刀に力がこもる。近縁を侮蔑されたことへの怒りと……それとは別の種類の怒り。
 それらが手から矛へと伝わるようだった。

灰院鐘 :
「──蘭芳さん」

灰院鐘 :
「僕に功夫は分からないけど……そういうのも、あなたたち的にはよくないんだろ」

灰院鐘 :
「分からないと言えば、あなたのこともそうだ。……」

 "天刑府君" 元天刑──伝え聞いた名とそう多くはない情報の他は、ここに相対した僅かな時間しかない。

灰院鐘 :
「戦いやすくしてくれているように見えるのは、僕の思い込みかな」

紅 蘭芳 :
「そう、だけど……!」

 憤る紅 蘭芳の様子は、普段の稚気を交えた大人の雰囲気とは違う。
 寧ろ行き場のない怒りのようなものをかみしめているような印象さえ感じさせた。
 

"天刑府君"元 天刑 :
「そう見えるか」

 冷ややかな声は、特に動揺や図星を突かれた様子ではない。冷笑するように男は続ける。

「俺の寄る辺は、俺の天命は此処に在る。
           ジャーム
 より多く。より数多の神魔を狩り、殺す。
 俺の存在価値など、それで十分。いや……
 俺はただ、その嵐であればよかったのだ」

"天刑府君"元 天刑 :
   ラクシャーサ
「俺は戦 鬼ではない。それを殺戮できれば、それで構わない。

 ……おかげで今、俺は満ち足りている。
 流した血が、より多く朱に染まった剣が、俺を導いてくれる」

"天刑府君"元 天刑 :
「そして、足りない分の血は……これより始まる動乱の時代が捧げてくれよう。
 彼奴等の語る戦士たちの楽園……そこに至れば、俺の天命を全うできるかもしれない」

灰院鐘 :
「私情で戦うのと、私情に吞まれるのは別だよ。……よく考えて。恐怖に打ち克ったあなたが、憤怒に敗ける道理はない」

 それは。
 諭すのでも、責めるのでもなく、
 "あなたを信じている"という、ただの私情だ。

 ……なんてひどい矛盾。棚上げにもほどがある。

灰院鐘 :
「……どうかな。ダンさんが聞いたら、『そうであってほしいという期待を伴うものか』なんて言われてしまうかも」

 そう見えるか、という問いに肩をすくめてみせる。

灰院鐘 :
「……そうか。でも、なんというか」

 神魔狩りの言葉にじっと耳を傾けていた青年が、ゆっくりと口を開く。

「満ち足りていると言うわりに、あんまり楽しそうではないね」

灰院鐘 :
 そうであればいいという祈りと、
 そうでなければいけないという強制。

 ……なんだか息苦しそうだ、と青年は感想する。

"天刑府君"元 天刑 :
「だろうな。実際、欠片も楽しさなど感じない。
 だが俺に残されたものはこの聲だけだ
 俺を突き動かすのはこの聲だけだ」

"天刑府君"元 天刑 :
「俺にはこの刃しか残っていないが。ならばこの刃の為に生きようというだけのことだ。
 元より……剣など、ただ殺すためのもの。
 神魔を斬らば神魔に堕すは道理だろうよ」

紅 蘭芳 :
「……! 
 それって……」

"天刑府君"元 天刑 :
「俺はとうに人間を辞めた身だ。
 そして……俺は嵐となる。

 ……ただ神魔を喰う、本物の四凶の獣となり、灰となるこの時代を灰にし尽くす」

灰院鐘 :
「────」

灰院鐘 :
「……遺産。それとも衝動かな」

 散逸した理性。崩壊した自我。絶え間なく衝動に襲われる袋小路の在りように、青年は表情を曇らせた。

灰院鐘 :
「あなたの剣は……嵐を征する者の名を被せられてると聞いた。なのに、あなたが嵐になろうとするのか」

        モノ
「ただ殺すための道具と嘯いた刃の聲に耳を傾けてまで──」

紅 蘭芳 :
「そんな……
 やっぱり、夜鈴のこと……」

 ……嘗て男が何を思いどのような選択をしたのか。そもそも何時からそうなり果てていたのか。
 仔細など判る筈もない。
 だが……
 少なくとも。紅は、ただ共存しえない人食いの虎となる前があったことを。
 それが人と共に在ったことを、たとえ故人伝えとて知っていた。

紅 蘭芳 :
「……なんで、なんでそうなり果てる前に、誰にも言おうとしなかったんですか。
 なんで……!」

 言うべきでない事と判っていたとて、紅は苦痛に悶えるように斬馬刀を握りしめて口にする。

"天刑府君"元 天刑 :
「さてな。今となっては同じことだ。
 俺の在り様を定めたものが何であろうと俺の征くは修羅道を置いて他にない」

 たとえそれが手に携えた刃のものであろうとも。
 たとえそれが生得的な拭い難い業であろうとも。
 そこに、然したる違いはない。

"天刑府君"元 天刑 :
「俺を導く声が、彼女の声が、血を望む。
 これが真に過去の残影に過ぎぬか、俺自身の衝動の現身に過ぎぬか、いずれにせよ俺にはもはやどうでもよい。

 この天命の導きのまま、天魔覆滅の剣を振るうまでよ──」

灰院鐘 :
「……」

 紅の悲痛な声は、すげなく退けられる。
 今となっては同じこと──何をするにも手遅れであるのなら、過程や要因がどうであれ、結果は揺るがないと。

灰院鐘 :
「……どうしてかな」

「僕はあなたを認めてはいけない気がする」

 胸にわいた反発を、青年は素直に口にする。取り繕うほどの自分というものを、彼はまだ持ち合わせていない。

灰院鐘 :
「あなたの言い分をそれじゃあ仕方ないと受け入れて、あなたの望むようにしてあげるのは……」

「……僕は、いやだ」

 怒りではない。畏れでもない。自分でも言語化できない感情未満の暴論を、感情的に振りかざして。

"天刑府君"元 天刑 :
「ならばねじ伏せてみろ、小僧」

 言いつつその剣の切先を向ける。
 音より迅く閃き、巌すら通す死の穂先。
 目に見えるすべてを晶に変え破砕するラクシャーサのそれとは性質を異とする『力』の具現。

"天刑府君"元 天刑 :
   ・・・・・・・・・・・・・・
「──自らの意志など初めから持たぬ貴様に、それができるのならばな」

灰院鐘 :
「おかしなことを言うね」

灰院鐘 :
「自分の意志である必要はべつにないだろ。あなたなら分かっていると思ったけどな」

 ……始まりに意味を求めず、自分以外の何かに道を委ねる。それが力を揮うのに不都合だったことは一度もない。

"天刑府君"元 天刑 :
「それが貫徹できているのならばな」

"天刑府君"元 天刑 :
「半端に己の欲を優先する貴様に、俺の境涯にはたどり着けん」

"天刑府君"元 天刑 :
 あらし     せんし
「 装 置 になれず。 人 間 になれず。
 その狭間で雨風に打たれて錆び付くだけの鉄屑。
 その生き方では、やはり苦しむだけであろう」

"天刑府君"元 天刑 :
 剣先が鐘に向き、穂先に殺意がともる。

「──今一度言おう。
 これは彼女からの済度の手と知れ」

灰院鐘 :
 ・・・・・・・・・・・・
「幸福の総量は決まっている。僕で釣り合いが取れるなら、それでいい」

灰院鐘 :
「だから、僕からももう一度だ。自分のために死ぬ気はないし、あなたの思い通りにもさせたくない」

 ──誰が知ろう。血に渇いた鬼の慈悲を、これから先、幾度となく焦がれることを。

灰院鐘 :
 朱の剣先が突きつけられる。瞬きのうちに迫る死へ、そうと知りながら青年は半歩前へ出た。

「がんばりどころだね」

 振り返ってみれば、彼なりに頭に血が昇っていたのだろう。
 あの強張った笑顔のために出来ることをすると決めた意思を、鐘はいま自ら放棄した。それこそが、半端に欲を優先する浅慮だと自覚せずに。

紅 蘭芳 :
「っ、待っ──!」

 咄嗟に声を上げる。確かな足取りで進む鐘。
 これまで鐘は、幾度も強大な力を前に正面から向き合い、受け止め、打ち克ってきた。それを識る者からすれば、如何な使い手とて"ラフメタル"の城砦をそう易々と崩し得ぬと見るだろう。

 しかし、紅 蘭芳は識っている。
 あらゆる神魔を殺し、武の極致に至った男の……剣の精髄を。

"天刑府君"元 天刑 :
「ならば、その無力の故に……
 いずれも果たせぬままに死んで行け──」

"天刑府君"元 天刑 :
【絶招・絶影誅仙陣】
セットアッププロセス《スピードスター》

Option:行動値の攻撃力を加算する

"天刑府君"元 天刑 :
【一刀如意の極致】
イニシアチブプロセス《スピードフォース》

Option:メインプロセスを行う

"天刑府君"元 天刑 :
【窮奇吼鳴の構え】
マイナーアクション:ライトスピード

Option:このラウンドでメジャーアクションを二回行う(※演出上のため行動回数は低減しない)

"天刑府君"元 天刑 :
メジャーアクション:
【六合八法流・迅雷徹穿】
《コンセントレイト LV3》+《電光石火 LV7》+《鉄風乱舞 LV1》+《吼え猛る爪 LV7》+《超振動閃 LV4》+《浸透撃 LV5》

DICE:22dx@7+9
DAMAGE:nd10+51
Option:ガード値無視、装甲値無視、ラウンド内ダメージ+12加算

"天刑府君"元 天刑 :
メジャーアクション:
【六合八法流・迅雷徹穿】
《コンセントレイト LV3》+《電光石火 LV7》+《鉄風乱舞 LV1》+《吼え猛る爪 LV7》+《超振動閃 LV4》+《浸透撃 LV5》

DICE:22dx@7+9
DAMAGE:nd10+51
Option:ガード値無視、装甲値無視、ラウンド内ダメージ+12加算

"天刑府君"元 天刑 :
 ……それは瞬きの内の出来事だった。
 紅の制止の声が届く間もなく。刃は、音を置き去りにし、誰よりも迅く閃いた。

"天刑府君"元 天刑 :
 刺突を要訣とする構えから、抜き足と共に駆け抜ける最速の殺意。
 一刀如意の極致。そこに至った剣聖の剣は、意より先に剣が鞘走る。

"天刑府君"元 天刑 :
 意より後に動く限り、たとえ単純に彼の速度を上回ろうとも必ず彼の一歩はそれを上回る。
 中華の秘蹟、仙道の縮地を以てすれば、あらゆる距離の差は一足の元に踏破される。
 そして……その刃が閃き、鐘が防御の姿勢に移らせるより前に剣が臓物を穿ち貫く。

"天刑府君"元 天刑 :
 そして幾ら防ごうとも。幾ら硬い鱗を持とうとも。
 神功と呼ばれた勁力の前では、すべてが無為。
 浸透勁……内功の基本たる内部破壊は、レネゲイドの因子を孕むことで遂に正しく完成を観た。
 物理的・かつ因子的な完全なる防御貫通の技。元は、それを刃に載せて放つことが出来ていた。

 その刃は防御を圧するでなく、鮮やかにそれを浸透して伝わり。
 巨人の圧倒的生命力さえも、一撃で刈り取った。

"天刑府君"元 天刑 :
 剣風が乱れ舞う。
 音すら超えて放たれる刺突の嵐は既にバルカンの連射速度さえ上回る。
 瀕死に至り、活性化された鐘の回復力すら上回る、一発一発が浸透勁による内部破壊の絶死の連撃が鐘を襲う!

灰院鐘 :
 実体の余分を排し、想像の稚拙を補う──磁力操作に肉体的なイメージを持たせる彼にとって、徒手こそが固有の構えだった。

 大量生産された粗鉄の街にあって、彼の護りは万全だ。景観を構成する要素のどれもが盾となり、壁を成しうる。
 たとえ速度で劣ろうとも狙いを鐘に定めるかぎり、その防塞を避けて通ることはかなわない。

 ……本来であれば。

灰院鐘 :
 先んじて放たれた意に応じる護りの手では、意の先を奔る刀には追いつけない。

「づッ……」

 腹腔に深々と突き立つ刃に、鐘の顔が歪んだ。規格外の高周波ブレードを真正面から受けとめた身体が、その十何分の一ほどの剣に貫かれている──

灰院鐘 :
 灰院鐘にとって、護りが間に合わないことはそう問題ではない。対敵に速さで劣ることなど、もはや大前提に等しかった。

 いくら先手を打たれようと、治せば済む。傷の癒せるうちは、そうそう死にはしない。そして、死にさえしなければ大抵の消耗は安くつく。

灰院鐘 :
 単純単色、「耐えた」と「治った」の結果論を振りかざす受動的暴力。

 それが今、根底から狂わされている。

灰院鐘 :
 他者のレネゲイドを帯びた刃が、備える護りに先んじ、備わる守りを突破する。否、その最奥へと直に到達し、内部から破壊したのだ──たった一撃で。

 その一撃が、機関砲すら上回る速度で連続で放たれる。槍衾じみて隙間なく、また絶え間もない。
 すべてが致命のとなりうる刺突の嵐を前に、鐘は為す術を持たなかった。

灰院鐘 :
 死に瀕し、蘇るたび穿たれる。生死の境が曖昧になり、視界が朱に染まった。

 ──それが。
 地に膝をつき、血を吐きだした己の視界だと気付くのに、一体どれだけの時間を要したのか。

"天刑府君"元 天刑 :
 ──元 天刑の能力に、特殊な効力は存在しない。
 能力の応用性と、それを最大限活用してきたラクシャーサに対して、元の力に際立った応用性はない。

 彼自身のオーヴァードとしての能力とは即ち震動操作と速力強化であり、同じ純正ハヌマーンのナタリーと比べて身体能力に特化している。
 身も蓋もないことを言えば、迅いだけであり。震動を操る操作域も非常に狭い。

"天刑府君"元 天刑 :
 これは飽く迄人間の可動域を出ない能力に過ぎない。
            ・・・・・
 だが……男はその無骨な人間の武技、その延長線上にある者を見つめ直し、自らのものとした。

 既存の技術を既存以上に扱い、再解釈し、新たな規格での戦闘技術として消化する。
 
 ──それは、紛れもなく人の技術から派生したものだった。

"天刑府君"元 天刑 :
 即ち格闘、器械を遣う迫撃技法。
 何処まで力や技術が進もうと、人が培ってきたより巧い『人を殺傷する技術』……
 ハヌマーンであることなど、然程関係はない。元の扱うものの本質とは、つまるところ超人でありながら人の技術を最大限に研ぎ澄ました、この一点に尽きるものだった。

"天刑府君"元 天刑 :
 これぞ元氏六合八法流 絶招・絶影誅仙陣。
 震動する魔剣による、疾風怒濤の剣舞。意より迅き内家拳法の精髄であった。

紅 蘭芳 :
「…………!!!」

 僅か瞬きの時間の内に、虫食いのように体を剣にて抉られる鐘。
 朱く染まった視界の奥で、鐘は悲痛に息を呑む紅の声を聴いただろう。
 同じハヌマーンの紅ですら、反応出来ない程の速度差。純粋な速さだけで言えば追い付く筈の紅でも、意より先んじ敵を斬る元を目で追う事さえ叶わない。

"天刑府君"元 天刑 :
「──つくづく業深い男よ。これでまだ死ねんとはな」

 紅に染まる視界の奥で、元は冷ややかに告げる。
 彼とて全力で当たった訳ではないが、間違いなく滅殺する気で剣を振るっていた。そのために入念にリザレクトの上から削り取ったのだ。

"天刑府君"元 天刑 :
 その上で未だ生きているということは、元にとっても驚嘆に値することだった。

「なればこそ、今天刑の星を見たことをせめてもの救いとして逝け」
 

灰院鐘 :
「……っ、は……」

 体が──ひどく重い。
 
 あるべき場所に戻ってきたような、
 生まれる前から知っているような、

 そんな重さ。

 ……だから。ずたずたに裁断された中身よりも、声のない悲鳴のほうが鐘には苦しかった。

灰院鐘 :
「……いや、だ」

「ここで……斃れる気は、ないんだ」

 そうしなれば次は彼女の番だと、動かない身体を奮い立たせる。
 死に救いを求める心境も、いずれ辿る末路も、彼には分からない。青年はただ目に映る誰かの安否と、共に過ごしたひとの安寧を願っていたいだけだ。

灰院鐘 :
 手に力を込める。膝を浮かせて、身体を持ち上げる。たったそれだけのことが、永遠のように遠い。それでも──

「斬り合いは無理でも、根競べなら僕にも分がある。殺すためにジャームに堕とすというなら、まずは僕からやってみせろ──"天刑府君"」

灰院鐘 :
「……敗けるもんか。僕の天命は、僕のためには訪れなくていい」

紅 蘭芳 :
「…………いえ、あなたはそこで休んでいて」

 未だ立ち上がろうとする鐘を制するように。
 華奢な足が一歩、前に出る。
 震える息を整え、意を決した様子で、蹲う鐘の背後から斬馬刀を構える。

 槍先を下段に落とし、左手を逆手に握る。峨眉派棒術の防御の型。

灰院鐘 :
「蘭芳、さん……! でも──」

紅 蘭芳 :
 無造作に突き抜かれた剣刺は、人体の構造的に立ち上がれぬよう狙って閃いたもの。易々と立ち上がれぬことを、ノイマンの分析力を備える紅には理解していた。

「ちょっとの間、バトンタッチってことで。
 大丈夫」

紅 蘭芳 :
 多分、だとか、じゃないかも、だとか。
 この時彼女は珍しく、弱音や予防線を張るような無用なことはしなかった。

紅 蘭芳 :
 目の前には無敵無双を誇る剣狂。多くの侠客たちがその淵に触れることすら出来ず奈落に落ちた化境の域の剣聖。
 勝負にならぬことなど、紅には先刻承知であった。ましてや、護りの上で鐘のそれを上回る技があるでもない。

紅 蘭芳 :
 ──これを前に立てば、即ち死あるのみ。
 窮奇の前に義人が立てば、即ち頭から食い貪られるもの。四凶の伝説になぞるが如く、紅は瞬きのうちに天華と散るだろう。

 だが……

紅 蘭芳 :
「(食われると分かっているからって……
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・
 それで自分の生き方を変えられるわけ、ない!)」

 紅にとって、目指した生き方はこうだった。ふらりふらりと、のらりくらりと、組織の間を渡り歩いて。
 それでも辿り着いたのは、人のために武を遣うという……どこまでも武人としては、純度の低い在り方だった。

"天刑府君"元 天刑 :
「────」

 構えを見て、元の視線が鐘から紅へ向けられる。
 死を覚悟した者の目。何より死を恐れるものが、死を前に奮い立った目。
 それを元はじっと受け止めていた。

"天刑府君"元 天刑 :
 元にはその姿が、過去の残影と被って見えた。
 ……マカオの一夜でその刃を女の血で濡らす前。女は天命を受け入れ、拳士としての死を望んだ。
 竜虎は倶に天を戴かず。
 宿星が導いた先であれば、甘んじて受け入れようと……
 
 血相を変えて、退くことを訴え続けた男を前に、女は決然と立ち続けた。

 そんな、ほだしの残り香を。矢庭に感じ取ったのは、或いは彼女がそのミームを、継承した人間であったからなのか。

"天刑府君"元 天刑 :
「──いいだろう。
 ……何度でも殺してやる。すべての神魔を狩り殺す、その時まで」

 元にとってはすべて過ぎた話であり。
 すべてを振り切るために此処にいる。
 己を肯定するためには、それは避けられぬ道であった。

紅 蘭芳 :
 紅はその言葉の意味を識らない。
 自己完結するジャームの言葉は、彼ら自身にのみの世界で閉じている。通じる筈もない。

 それでも、明確にひりつく殺意を向けられたのは間違いなく。それ以外に思考の余地を残せる程に、紅には余裕がなかった。

紅 蘭芳 :

灰院鐘 :
「……だめだ」

 譫言のように呟く。
 彼自身、何かを理解して発した言葉ではない。

 予感か、直感か……ともすると、天命か。

「蘭芳さん──!」 

 彼女の身を案じる以上に。
 なにか違えているという感覚に駆られて、血に咽た声が呼びかける。

紅 蘭芳 :
 ────紅が、待つ。

 槍の間合いから牽制する棒術の下段構え。
 狙うは意より迅き剣先に合わせ打つ迅疾なる後の先。

"天刑府君"元 天刑 :
 ────元が、来る。
 
 刺突を要訣とした中国剣、その常道に則った切先を向けた剣刺の上段構え。
 意より先に奔るその剣は、殺気を読むことも構えから推察することも出来ない風の如き自在の剣。

SYSTEM :
 瞬きの静寂が周囲を支配する。それは嵐の前の静けさであったか。
 或いは死神が齎す、死の間際の安らぎであったのか──
 

SYSTEM :
 静寂の刻。

 朱に染まる鐘の視界の奥で、錚々と得物のぶつかる金音が響き渡った。

SYSTEM :
 ……………………
 …………
 ……

紅 蘭芳 :
「────、────、」

 鐘の視界が晴れた時。
 彼の目の前に天刑星の姿はなかった。

 代わりに、そこに両膝をついて頽れる、紅の姿だけがあった。
 彼女は、大量の汗を滝のように流しながら、何か信じられないものを見たような表情で目を瞠っていた。

紅 蘭芳 :
「────、────、────……っ、
 あれ、生きてる……?」

 辛うじてこぼれ出た言葉は、やった、でもなく、勝った、でもなかった。
 断じて、勝負で勝った訳ではなかった。
 如何程に覚悟を決めて立ち会おうとも、積み上げた功の差は到底埋められるものではない。ほんの少し凡人が覚悟を決めて命のすべてを投げ出した、その程度で埋まる差ならば彼は剣聖と呼ばれてはいない。

紅 蘭芳 :
 凡才が凡庸な努力を積んだ程度の功が、
 天才が修羅に堕ちてでも重ねた功に届くなど、それこそ紅自身が到底認めるところではない。

 であれば……生かされたとする方が自然だが。

「────、────、なんで……?」

 緊張の余り、間が抜けた言葉を虚空へと返す。誰に問うでもなく、それは自然な疑問として口に出ていた。

灰院鐘 :
「…………、…………」

灰院鐘 :
 ……凶星は去った。
 後に残されたのは、忘我する一人の義人と──

「……よかった」

 ほっと息をつく巨人だけ。

灰院鐘 :
 いろいろあったが彼女は生きている。心身ともに無事で、怪我ひとつない。

 一番だいじなことだ。

紅 蘭芳 :
「────、────、」

 今の見た? と言いたげに口をぱくつかせて、ゆっくりと鐘の方に顔を向く。
 何か意味の通じる言葉を口にしようとしても、のどがカラカラに渇いて言葉にならないようだった。
 状況が掴めないが……また、見逃された。それは確からしい様子だった。

紅 蘭芳 :
 まさに緊張の糸が切れたとでも言うのだろうか。
 怪我も殊更に負っていないが、長い時間プレッシャーに耐え、自死を覚悟で……半分は自棄で……気合を入れた反動か。既に紅は意識を保つのが精一杯という様子だ。

灰院鐘 :
「うん。彼、帰っちゃったね」

 さきほど垣間見せた佇まいもどこへやら。緊張の糸が切れた紅は、いつも以上に年の功を感じさせない姿を晒している。
 なんとなく勇魚の半目を思い出しながら、よいしょ、と立ち上がる。

灰院鐘 :
「お……っと」

 腱の修復は済んだようだ。痛みは断続的で、穴だらけの身体はチーズみたいな有り様だが、歩行するぶんには支障ない。

灰院鐘 :
「……僕たちも帰ろうか。お互いシャワーが必要そうだ」

「立て……なくてもいいか。蘭芳さんなら五人は抱えていけるくらいの元気はあるよ」

紅 蘭芳 :
「……!……!」

 帰ろう、という言葉に兎に角頷く。もう、言葉を発するのさえ億劫という様子だった。
 そしてこの紅 蘭芳という女の数少ない非凡さはその図々しさにあるが故に、自分より遥かに重傷を負った鐘の肩を借りるのを躊躇うような気遣いが回らないのであった。

灰院鐘 :
「よかった」

 先輩を背におぶって、ワーディングの効力が残っている街並みをのんびりと歩きだす。

灰院鐘 :
「……蘭芳さん」

 お互いの表情が窺えなくなって暫くしてから、青年は口火を切った。

「助けてくれてありがとう」

紅 蘭芳 :
「はひぇ……ン゛ン゛っ」

 矢庭に告げられた言葉に間抜けな声を漏らす。が、流石に言葉を効くぐらいの余裕は戻ってきたのだろう。
 相変わらず腰が抜けて体が動けないが、咳払いして息を整える。

紅 蘭芳 :
「……どういたしまして、灰院君!
 ね、頼ってみるもんでしょ? こう見えても結構やるんだから私!」

 お互いの表情は見えないまま。しかし紅はぱっと笑ってみせた。
 それは宛らに、飄颻と風に吹かれて舞う天華のように。

灰院鐘 :
「……うん」

灰院鐘 :
「でも僕は……あなたに命を投げ出してほしくなかった」

 訥々とした口調は、いつもの自分を度外視する彼とは少しだけ違っていた。

灰院鐘 :
「……悔しいな」

「勝てないことも、敵わないことも……いままで気に留めたことなんてなかったのに」

灰院鐘 :
    よわ
「自分の無力さが、どうしようもなく悔しい」

紅 蘭芳 :
「…………そうだね」

 それだけ言って紅は押し黙った。今度は疲弊の故でなく、語る言葉を見つけられなかったために。疲労を体よく理由にして押し黙る。
 仕方ない、そういうこともある、そう言って慰めることを、紅はすべきでないと思った。
 

紅 蘭芳 :
 その苦痛は、紅にもよく馴染みのあるものであったから。
 それは生半可な答えで決着をつけてはならないものだからこそ、押し黙った。

灰院鐘 :
 ……沈黙は重く、夜へ沈んでいく。
 街の音もどこか遠い。帰路につく跫だけが、ふたりの間を満たしていた。

SYSTEM :
─── □ ■ □ ───

SYSTEM :
【check!】
 イベントシーンが終了しました。
 取得したいロイスが存在する場合は宣言してください

灰院鐘 :……"天刑府君"に感服/〇不快感でロイスを取るよ

GM :赦し難き難敵!

GM :オラおめえを絶対許さねぇ!というわけだぁ!
いいでしょう!キャラシートに記入おねがいしまーす

灰院鐘 :……うん、分かったよ

SYSTEM :
【Information】
 開示情報が追加されました。
 

SYSTEM :
【概念:絶招・絶影誅仙陣】
 Dロイス『神速の担い手』、《スピードフォース》
 天刑府君の有する殺戮技法。流派・元氏六合八法流剣術の絶招……即ち奥義の構え。
 純正ハヌマーンの身体能力強化を突き詰めることで会得した天魔覆滅の必殺陣。
 
 元のハヌマーンとしての能力は震動操作と加速化、身体能力強化と、肉体(フィジカル)に特化しており、これを用いての白兵戦を得意としている。
 応用性の面では融通が利かないが、純正ハヌマーンとしての高い能力のすべてをそれに割り振ったことで常軌を逸脱した速度での戦闘を行える。
 
 真に恐るべきは、その強化された体術を最大限に生かすための技であり。
 絶影誅仙陣はその名の如く影すら踏ませぬ速度に加え、意より先んじて剣を奔らせるという……反射の域で戦闘を行える熟達に精髄があった。
 必ず先の先の機を穿つという元の剣を防ぐ手段は殆ど存在しないと言っていいだろう。

SYSTEM :
イベントシーンを開始します。
イベントを展開しています……